IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タレンゲン インターナショナル リミティッドの特許一覧

特許7531080骨粗鬆症を予防及び治療するための薬物およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】骨粗鬆症を予防及び治療するための薬物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20240802BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240802BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
A61K38/48
A61P19/10
C12N9/50 ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019531386
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2017116592
(87)【国際公開番号】W WO2018108165
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110163
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(72)【発明者】
【氏名】李 季男
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155856(JP,A)
【文献】Journal of Bone and Mineral Research 28(7) (2013), 1561-1574
【文献】Haemophilia 14 (2008),1261-1268
【文献】Arthritis and Rheumatology 66 (2014),2222-2233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の骨粗鬆症を予防及び治療するためのプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【請求項2】
前記骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症と継発性骨粗鬆症を含む、請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項3】
前記原発性骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症と老年性骨粗鬆症を含む、請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項4】
前記継発性骨粗鬆症は、内分泌疾患、リウマチ性疾患、及び胃腸疾患に継発する骨粗鬆症、並びに薬物治療によって引き起こされる骨粗鬆症を含む、請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項5】
前記継発性骨粗鬆症は、グルココルチコイド、原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、原発性胆汁性肝硬変、性腺機能低下、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓病、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、骨関節炎、性腺ホルモン治療、抗てんかん薬治療、及び化学療法薬物治療によって引き起こされる骨粗鬆症を含む、請求項4に記載の薬物組成物。
【請求項6】
プラスミノーゲンは骨体積を増加させ、骨構造を改善し、骨密度と骨塩含有量を増加させ、及び/又は骨芽細胞の活性を改善する、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬物組成物。
【請求項7】
被験者の骨芽細胞の活性を増強するためのプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【請求項8】
被験者の骨塩代謝を調節制御するためのプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【請求項9】
前記調節制御は、血中カルシウムレベルを低下させることと、血中リン酸塩レベルを上昇させることと、骨基質におけるカルシウムの沈着を促進すること及び/または血管壁、内臓におけるカルシウムの沈着を低下させることとを含む、請求項8に記載の薬物組成物。
【請求項10】
前記被験者はヒトである、請求項1~9のいずれか1項に記載の薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症及びその関連疾患の予防または治療におけるプラスミノーゲンの用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症(оsteoporosis,OP)は、骨量の減少と骨組織の微細構造の破壊を特徴とし、骨脆弱性の増加を引き起こし、骨折しやすい全身性疾患である。骨粗鬆症が骨強度の低下、骨折リスクの増加を特徴とする骨格系疾患であり、骨強度が、骨密度と骨質量との骨格の二つの主要な面を反映すると、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は2001年に提出した。骨粗鬆症は骨量の減少及び骨微細構造の退化を引き起こし、患者の骨格の脆弱性を増加させ、患者の運動機能及び生活品質を大いに低下させる。
【0003】
哺乳動物の骨格発育は高度に秩序があり、多要素の共同作用によって調整制御される過程である。哺乳動物の骨格発育は主に膜内骨化と軟骨内骨化との二つのメカニズムにより完成し、その中で、四肢骨、脊椎骨などの長骨は主に軟骨内骨化により形成され、頭蓋骨、鎖骨内側部分などの扁平骨は膜内骨化により形成される[1]。骨組織が形成された後は何ら変化もしないわけではなく、骨形成と吸収との安定的な動的平衡にある。この動的平衡の過程において、ホルモン、複数のシグナル経路、骨組織細胞の相乗調節制御及び鉱物塩の安定性が重要な役割を果たしている[2]
【0004】
骨粗鬆症は概ね原発性と継発性との二種類に分けられ、閉経後骨粗鬆症と老年性骨粗鬆症はいずれも原発性骨粗鬆症に属し、しかもよく見られるものである。継発性骨粗鬆症はよく見られる全身性骨疾患であり、既知の疾患及び骨粗鬆症を誘発する薬物の他に、いくつかの新しい薬物と治療手段はすでに継発性骨粗鬆症の重要な病因となっている。
【0005】
疫学調査によると、1型糖尿病患者の骨量減少と骨粗鬆症の発症率は48%~72%であり[3]、2型糖尿病患者について、骨密度が増加し、低下し、または変化がないという結果はいずれも国内外の文献で報告されている[4-6]。近年来、2型糖尿病患者の代謝性骨疾患の発症率と骨粗鬆症の骨折の危険性は明らかに一般人より高く、その骨粗鬆症の発症率が20%~60%に達せることは研究によって発見された[5]。糖尿病による骨粗鬆症は病理的骨折を引き起こしやすく、致傷致死率は高く、糖尿病患者の治療と回復の困難さを増加することができる。
【0006】
百年以上の観察を経て、骨粗鬆症患者は合併された心筋梗塞、脳卒中、突然死のため死亡率が明らかに上昇し、アテローム性動脈硬化症の患者には骨量低下もよく合併され、骨粗鬆性骨折を引き起こすことは発見された[7-9]。アテローム性動脈硬化症と骨粗鬆症は加齢に伴う退行性変化であると考えられていたが、両者に対する長期的臨床観察及び分子メカニズムに対する研究が深まるにつれて、下記のことは発見されている。すなわち、(1)両者には、老衰のような共同の危険要素が存在し、糖尿血管細胞における血管石灰化細胞(Calcifying vascularcells,CVC)の分子特徴と骨生物学の特徴との間はますます一致して平行し、骨代謝に関連する遺伝子がノックアウトされた動物には血管の特徴性表現が現れ、これは、両者間には共同のシグナル経路、転写因子と細胞外基質の相互作用があることを示唆している;(3)活性酸素(reactive oxygen species,ROS)及び酸化型脂質が血管及び骨格に対して共同で影響を与える;(4)内分泌が異常になり、例えば、エストロゲンが減少し、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone,PTH)とビタミンD、カルシトニンの代謝が異常である;(5)この二つの疾患の治療ストラテジーにも密接な関係がある。この二つの矛盾しているように見えるが、常に同一の生体で発生する疾患のメカニズムに対してさらに理解するにつれて、As/OP症候群の予防と治療も深まりつつある。
【0007】
近年の多くの研究によると、心血管系疾患と骨粗鬆症とは関連性があり、両方とも老年期に発生し、常に同一の高齢個体で見られ、しかも発症率は加齢につれて上昇する。高齢は心血管疾患と骨粗鬆症との共通の危険要素であるが、多くの研究によると、年齢という要素を無視した後、この二つの疾患の間には依然として顕著な関係がある。一方、心血管疾患は骨量の損失及び骨折リスクの増加と関連しており、同様に、骨密度の低下により心血管系疾患の発症率と死亡率が増加し得ることを示す証拠がある。さらに、心血管疾患と骨粗鬆症は発症メカニズムで緊密且つ直接な関係があることは研究によって発見されている。アテローム性動脈硬化症は心脳血管疾患の主な病理的基礎であり、動脈石灰化はその主要な表現の一つである。動脈石灰化は、心血管疾患の一つの重要なマーカー及び臨床モニタリングの指標であると考えられている。研究によると、血管石灰化の本質は、血管平滑筋細胞が骨芽細胞表型への転化及び血管組織が骨組織への転化である。血管石灰化の形成は骨塩の損失とも顕著な関連性がある。第三軍医大学周鋭博士[10]は60歳以上の高齢者グループに対して観察して研究し、高齢患者の動脈石灰化と骨粗鬆症及び骨折との関連性について検討した。彼の研究は次の内容を含む。1.2012年1月1日から12月31日まで、医者にかかるために病院に来た60歳以上の適格な患者を選別して研究対象とした。2.腰椎X線側面図を利用して第1~4腰椎に対応する腹大動脈の石灰化沈着物について採点することで、大動脈石灰化の程度の半定量測定を行った。石灰化プラークの長さと係る節分数によって、患者ごとの大動脈石灰化の採点(acs)は0~24点とし、大動脈石灰化がないものは0点とし、最も深刻な大動脈石灰化は24点とした。さらに、acsによって患者について群分けをした。3.骨密度測定は、二重エネルギーX線吸収測定器(dxa)を使用して行われた。骨粗鬆症は、dxaに基づいて測定された骨密度の値が同じ性別、同じ人種である正常成人骨のピーク値より2.5の標準偏差以上低いこととして定義された。4.多変数回帰リスクモデルを用いて大動脈石灰化と骨粗鬆症の発症リスクとの関係を評価した。また、該研究は、1.60歳以上の適格な閉経後女性を選別して研究対象としたこと;2.大動脈石灰化程度の半定量測定;3.X線で椎体形態(胸4~腰5節分)を観察して椎骨骨折の発生(椎体の高さが20%以上下がる)を確定することで椎骨骨折の診断を行ったこと;及び4.多変数回帰分析モデルを用いて大動脈石灰化と椎骨骨折との関係を評価したことを含む。さらに、該研究は、1.医者にかかるために病院に来た60歳以上の適格な患者を選別して研究対象としたこと;2.骨密度測定及び骨粗鬆症の診断;3.64列マルチスライスctで頸動脈と冠状動脈ctaを行い、三次元画像分析ワークステーションであらゆるcta画像を分析し、しかも動脈プラークの成分及び発生範囲について評価したことで、頸動脈とアテローム性動脈硬化症の石灰化プラークの検出を行ったこと;及び4.多変数回帰リスクモデルを用いて骨粗鬆及び骨量の損失と頸動脈及び冠状動脈の石灰化プラークの発生リスクとの関係を分析したことを含む。研究の結果、年齢などその他の混雑要素を調整した後、深刻な骨量損失は頸動脈プラーク、冠状動脈プラーク及び共存する石灰化プラークの発生と顕著な関係があった。結論として、高齢者の中で、深刻な大動脈石灰化と骨粗鬆症の発症とは関連している。骨粗鬆症の発症リスクはアテローム性動脈硬化の増加につれて上昇する。骨密度の低下と血25(OH)Dレベルの降下も骨粗鬆症の発症と関連している。老年閉経後の女性の中で、深刻な大動脈石灰化と椎骨骨折の発生と関連している。骨密度の低下と血25(OH)Dレベルの降下も椎骨骨折の発生と関連している。高齢者の中で、骨粗鬆症、低骨量及び血25(OH)Dレベルの降下は、動脈石灰化プラークの発生と関連している;深刻な骨量損失は、頸動脈プラーク、冠状動脈プラーク及び共存する石灰化プラークのいずれの発生リスクとも関連している。この研究は、高齢者グループに対して観察して研究することによって、老人病のいくつかの共通の危険因子及び内在的な相互関係を明らかにし、骨粗鬆症及び心血管疾患の予防と治療に対して重要な意義を持っている。
【0008】
骨粗鬆症は老衰の関連疾患の中の代表的な症状の一つであり、中高齢者の中で特に多い。骨粗鬆は、生体老衰が骨格における特殊な表現であり、ビタミンDのレベルが低すぎ、または高すぎることは、骨粗鬆症と関係があることは示されている[11]。高齢化社会の到来に伴い、骨粗鬆症の発症率は年々上昇する傾向があり、これによってもたらされる社会経済的負担も大幅に増加している。
【0009】
骨粗鬆症の治療には、正常な骨組織含有量を回復して維持することと、骨折の発生率を低めることは鍵となる。治療の方法は多いが、現在では薬物治療が主とされている。よく使用される薬物として、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、骨塩が挙げられる。骨吸収抑制剤は主に破骨細胞を的とする薬物であり、破骨細胞の働きを抑制することによって骨の再吸収を減少させる;骨形成促進剤は主に骨芽細胞を的とする薬物であり、骨芽細胞の活性を増強して新骨の合成を促進することができる;骨塩は骨粗鬆を治療するための基礎薬であり、カルシウム剤とビタミンDとを含み、骨基質成分を補う役割を果たせる。しかし、現在では、骨粗鬆症を治療するための薬物のほとんどは骨吸収抑制剤(例えば、エストロゲン、ジホスホン酸塩、カルシトニンなど)であり、骨形成促進剤(例えば、副甲状腺ホルモンなど)の種類は非常に少ない。薬物の治療効果から見ると、現在では症状を改善し、病状の進行を遅らせる程度にとどまり、病状を逆転してさらに治癒する効果をまだ収められていないため、新しい治療薬および治療方法を探す必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は下記項に係る。
【0011】
1.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、骨粗鬆症及びその関連疾患を予防及び治療するための方法。
【0012】
2.前記骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症と継発性骨粗鬆症を含む、項1に記載の方法。
【0013】
3.前記原発性骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症と老年性骨粗鬆症を含むである、項1に記載の方法。
【0014】
4.前記継発性骨粗鬆症は、内分泌疾患、リウマチ性疾患、胃腸疾患に継発する骨粗鬆症、及び薬物治療によって引き起こされる骨粗鬆症を含む、項1または2に記載の方法。
【0015】
5.前記継発性骨粗鬆症は、グルココルチコイド、原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、原発性胆汁性肝硬変、性腺機能低下、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓病、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、骨関節炎、性腺ホルモン治療、抗てんかん薬治療、化学療法薬物治療によって引き起こされる骨粗鬆症を含む、項4に記載の方法。
【0016】
6.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、疾患と合併する骨粗鬆症を予防及び治療するための方法であって、前記疾患と合併する骨粗鬆症は、グルココルチコイド、原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、原発性胆汁性肝硬変、性腺機能低下、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓病、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、骨関節炎、性腺ホルモン治療、抗てんかん薬治療、化学療法薬物治療と合併する骨粗鬆症を含む、疾患と合併する骨粗鬆症を予防及び治療するための方法。
【0017】
7.骨粗鬆症に罹患しやすい被験者、骨粗鬆症に罹患するリスクが高い被験者、または骨粗鬆症に罹患していると診断された被験者に、骨折の発生を予防するために有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、骨粗鬆症による骨折を予防するための方法。
【0018】
8.前記被験者は、グルココルチコイド、原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、原発性胆汁性肝硬変、性腺機能低下、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓病、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎または骨関節炎に罹患している被験者を含む、項7に記載の方法。
【0019】
9.前記被験者は、性腺ホルモン治療、抗てんかん薬治療または化学療法薬治療を受けている被験者を含む、項7に記載の方法。
【0020】
10.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、骨芽細胞の活性を増強するための方法。
【0021】
11.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、骨塩代謝を調節制御するための方法。
【0022】
12.前記調節制御は、血中カルシウムレベルを低下させることと、血中リン酸塩レベルを上昇させることと、骨基質におけるカルシウムの沈着を促進すること及び/または血管壁、内臓におけるカルシウムの沈着を低下させることとを含む、項11に記載の方法。
【0023】
13.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0024】
14.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除及び/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0025】
15.前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0026】
16.前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0027】
17.前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0028】
18.前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0029】
19.前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである、項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【0030】
20.前記プラスミノーゲンは、ヒト由来の天然プラスミノーゲンである、項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0031】
21.前記被験者はヒトである、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【0032】
22.前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している、項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【0033】
23.前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である、項22に記載の方法。
【0034】
24.項1~23のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン。
【0035】
25.薬学的に許容される担体及び項1~23のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【0036】
26.(i)項1~23のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キット。
【0037】
27.前記手段はシリンジまたはバイアルである、項26に記載のキット。
【0038】
28.項1~23のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む、項26または27に記載のキット。
【0039】
29.ラベルを含む容器と、
(i)項1~23のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であって、
前記ラベルは、項1~23のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する、製品。
【0040】
30.その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む、項26~28のいずれか1項に記載のキット、または項29に記載の製品。
【0041】
31.前記その他の薬物は、骨粗鬆症を治療するためのその他の薬物または骨粗鬆症と合併するその他の疾患を治療するための薬物を含む、項30に記載のキットまたは製品。
【0042】
32.プラスミノーゲンを含む、骨粗鬆症を治療するための薬剤。
【0043】
33.プラスミノーゲンを含む、骨粗鬆症を治療するための薬物組成物、キット、製品。
【0044】
34.骨粗鬆症の治療に使用されるプラスミノーゲンの用途。
【0045】
35.本発明はさらに、上記項1~23のいずれか1項に記載の方法に使用される薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。
【0046】
本発明の上記いずれか一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除及び/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。
【0047】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は2、6、8、10または12に示される通りである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンである。
【0048】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0049】
一部の実施形態において、前記薬物組成物は、薬学的に許容される担体及び前記方法に使用されるプラスミノーゲンを含む。一部の実施形態において、前記キットは、(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットであってもよい。一部の実施形態において、前記手段はシリンジまたはバイアルである。一部の実施形態において、前記キットは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0050】
一部の実施形態において、前記製品は、ラベルを含む容器と;(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であり、前記ラベルは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0051】
一部の実施形態において、前記キットまたは製品は、その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬からなる群より選ばれる。
【0052】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所投与により投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下という経路により投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは適切なポリペプチド担体または安定化剤と組み合わせて投与する。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm、0.001~800mg/cm、0.01~600mg/cm、0.1~400mg/cm、1~200mg/cm、1~100mg/cm、10~100mg/cm(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0053】
本発明は、本発明に係る実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせた技術構成は前記実施形態が単独且つ明確に開示されているように、本出願で明確に開示されている。また、本発明はさらに各実施形態及び要素のすべてのサブの組み合わせを明確にカバーし、さらに本明細書中において開示され、それぞれのサブの組み合わせが単独且つ明確に本明細書中において開示されているのと一緒である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
「骨粗鬆症」は、骨量が低下し、骨微細構造が損傷して骨脆弱性の増加を引き起こし、骨折しやすいことを特徴とする全身性退行性骨疾患である。一般的には原発性、継発性、及び特発性骨粗鬆症の3種類に分けられる。
【0055】
「原発性骨粗鬆症」はさらに閉経後骨粗鬆症(I型)と老年性骨粗鬆症(II型)に分けられ、閉経後骨粗鬆症は一般的には女性の閉経後5~10年以内に発生する;老年性骨粗鬆症は一般的には、高齢者が60歳以上に発症する骨粗鬆症を指す。原発性骨粗鬆症は主に骨量、骨損失、及び骨構造の重要な役割を強調し、骨量の減少、脆弱性の増加、構造の退化、骨折が発生し易いことをその臨床的特徴とする。
【0056】
「継発性骨粗鬆症」とは、ある疾患、薬物またはその他の原因によって骨量が低下し、骨格の微細構造が変化し、脆弱性骨折が発生し易い疾患のことである。骨粗鬆症を引き起こすよく見られる疾患または薬物は、
1.内分泌疾患:
クッシング症候群、性腺機能低下、甲状腺機能亢進症、原発性副甲状腺機能亢進症、糖尿病
2.リウマチ性疾患:
リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎
3.血液系疾患:
多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、地中海貧血症(サラセミア)、血友病
4.薬物治療:
過量のグルココルチコイド、甲状腺ホルモンの過量代替、抗てんかん薬物、リチウムまたはアルミニウム中毒、細胞毒性または免疫抑制剤(シクロスポリンA、タクロリムス)、ヘパリン、性腺機能低下を引き起こす薬物(アロマターゼ阻害剤、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログなど)
5.胃腸疾患:
慢性肝臓病(特に原発性胆汁性肝硬変)、炎性腸疾患(特にクローン病)、大部分胃切除手術、赤痢
6.腎臓疾患:
腎機能障害または腎不全
7.遺伝性疾患:
骨形成不全症、マルファン症候群、血色素症、ホモシスチン尿症、ポルフィリン症
8.その他の原因:
いかなる原因によるビタミンD不足、過量飲酒、神経性無食欲症、栄養不良、長期褥中、妊娠および授乳、慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害(cerebralvascular accident)、器官移植、アミロイド症、多発性硬化症、後天性免疫不全症候群
を含む。
【0057】
これらの継発性要素は骨芽細胞と破骨細胞の機能を影響することによって骨吸収を増加させ、及び/または骨形成を低下させて骨粗鬆症を引き起こす。
【0058】
本発明の「継発性骨粗鬆症」という用語は、上記各原因による骨粗鬆症をカバーしている。
【0059】
「特発性骨粗鬆症」は主に青少年の中で発生し、一般的には男性の発症年齢が50歳未満、女性の発症年齢が40歳未満の骨粗鬆症であり、潜在的な病気がなく、その原因は不明である。
【0060】
ある疾患または状況と「合併した骨粗鬆症」とは、前記疾患または状況に伴う骨粗鬆症をいう。前記疾患または状況は骨粗鬆症との間にはある内在的な病因または発症メカニズムの関連があり得る。例えば、糖尿病と合併した骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症と合併した骨粗鬆症、慢性腎症と合併した骨粗鬆症、強直性脊椎炎と合併した骨粗鬆症、骨関節炎と合併した骨粗鬆症などが挙げられる。
【0061】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む[12]。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である[13-14]。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳密な制御を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある[15-16]
【0062】
プラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである[17-18]。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である[19-20]。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌されかつ分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす[21]。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同性三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンジオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0063】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理学的血栓の形成を予防するキーポイントである[22]。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している[18、23-24]。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である可能性がある[25]。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する[26-28]。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0064】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0065】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドのヒト由来の天然プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0066】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。δ-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず[29-30]、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり[31]、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノーゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており[31]、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し[32]、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0067】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0068】
本願において、プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0069】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。
【0070】
循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び血液凝固因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0071】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とはプラスミノーゲンタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノーゲンの技術構成に係り、プラスミノーゲン活性フラグメントでプラスミノーゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノーゲンは該プラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノーゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0072】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のプラスミノーゲンはSKの作用下においてプラスミンとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0073】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0074】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、塩基性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性の塩基性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0075】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0076】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0077】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0078】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0079】
そのうちXは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0080】
本文において使用されているように、用語の「治療」及び「処理」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させること。
【0081】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0082】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0083】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0084】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0085】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0086】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列を有してもよい。
【0087】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターはアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0088】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノーゲンの発現および生成に用いることができる(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0089】
一旦合成(化学または組み換え的に)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0090】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0091】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0092】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0093】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0094】
本発明のプラスミノーゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0095】
投与及び使用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0096】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0097】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってに従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性はリアルタイムに評価すべきである。
【0098】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、骨粗鬆症及びその関連疾患を治療するための本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記骨粗鬆症及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【0099】
治療の効力と治療安全性
本発明の一つの実施形態はプラスミノーゲンを用いて被験者を治療した後、治療効力および治療安全性に対して判断を行うことに係る。よく用いられる骨粗鬆症治療効果のモニタリングと評価内容は、定着フォロー(不良反応、規範服薬、基礎措置および骨折リスク因子再評価など)、新発骨折評価(臨床的骨折、身長低下、映像学検査)、骨密度(bone mineral density,BMD)測定と骨代謝回転マーカー(bone turnover markers,BTM)測定、及びこれらのデータに基づく総合的再評価などを含む。その中で、BMDと骨量は現在最も広範に応用されている治療効果のモニタリングと評価方法である。例えば、二重エネルギーX線吸収測定器(dual energy X-ray absorptiometry,DXA)、定量CT(quantitative computed tomography,QCT)、単一光子吸収法(SPA)、または超音波測定法によりBMDを測定することができる。治療開始後、毎年BMDを1回測定し、BMDが安定してから間隔を適切に延長することができ、例えば、2年に1回モニタリングすることができる。BTMについて、現在、血清学指標においてよく使用されている骨形成指標は、血清1型プロコラゲンN末端プロペプチド(procollagen type 1 n-terminal propeptide,PINP)であり、骨吸収指標は血清1型プロコラゲンC末端テロペプチド(serum C-terminal telopeptide,S-CTX)である。研究の進展により、より合理的な測定指標を適時に調整することができる。治療開始前に基線値を測定し、形成を促進する薬物を用いて治療してから3ヶ月、吸収を抑制する薬物を用いて治療してから3~6ヶ月に測定すべきである。BTMは骨格の動態情報を提供することができ、作用と機能ではBMDから独立しているとともに、BMDと相互補完のモニタリング手段となり、両者を結合するとより高い臨床的価値を有する。一般的には、治療後BMDが上昇したり安定したり、BTMには予想される変化があり、しかも治療中に骨折がない場合、治療反応が良好であると考えられる。また、本発明はさらに、プラスミノーゲン及びその変異体を用いて被験者を治療する過程中および治療後に該治療案の安全性に対する判断に係り、これは、被験者体内での薬物の血清半減期、治療半減期、半数中毒量(TD50)、半数致死量(LD50)を統計し、または治療過程においてまたは治療後に発生する、アレルギー反応のような様々な不良事件を観察することを含むが、これらに限定されていない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1図1は15週齢の野生型とプラスミノーゲン欠陥型マウスの膝関節のSafranin Oの染色の代表的な写真を示すものである。Aは野生型マウスであり、Bはプラスミノーゲン欠陥型マウスである。野生型マウスと比べ、プラスミノーゲン欠陥型マウスには広範な骨質減少と骨髄細胞の増加が現れる。
図2図2は15週齢のプラスミノーゲン欠陥型および野生型マウスの血中カルシウムの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン欠陥型(Ko)マウスの血中カルシウムレベルは野生型マウス(Wt)より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが正常なカルシウム代謝を維持することにおいて重要な役割を果たすことを示している。
図3図3はプラスミノーゲン欠陥型(Plg-/-)マウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の膝関節H&Eの染色観察結果を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群は成長板(矢印に表記される)の排列が乱れ、一部の骨髄腔内の骨髄が消えた(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群は成長板(矢印に表記される)の排列が整っている。これは、プラスミノーゲンがPlg-/-マウスの膝関節の成長板の正常な成長を促進することができることを示している。
図4図4はPlg-/-マウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の膝関節の関節軟骨のアルカリフォスファターゼの染色観察結果を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の関節軟骨表面には極少ないアルカリフォスファターゼの着色しかなく、プラスミノーゲン投与群の関節軟骨表面には多くの深紅のアルカリフォスファターゼの着色がある(矢印に表記される)。これは、プラスミノーゲン投与群の関節軟骨表面のアルカリフォスファターゼの活性は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、すなわち、プラスミノーゲンが膝関節の関節軟骨の骨芽細胞の活性の増加を明らかに促進したことを示している。
図5図5はPlg-/-マウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼの染色観察結果を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の成長板の骨芽細胞の活性箇所にはアルカリフォスファターゼの着色があり(矢印に表記される)、浅紅色を呈する;プラスミノーゲン投与群の成長板には多くのアルカリフォスファターゼの着色があり、しかも深紅色を呈する。これは、プラスミノーゲンを投与した後、膝関節の成長板の骨芽細胞の活性の増加を促進することができることを示している。
図6図6は0.5μg/kgビタミンD老衰モデルC57マウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の血清のアルカリフォスファターゼの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は溶媒PBS投与対照群マウスより明らかに高く、しかもその統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスの血清アルカリフォスファターゼの活性はブランク対照群マウスにより近い。これは、プラスミノーゲンがビタミンD老衰モデルマウスの骨芽細胞活性の増加を顕著に促進できることを示唆している。
図7図7は1μg/kgビタミンD老衰モデルC57マウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼ染色の代表的な写真を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼの陽性着色(矢印に表記される)はブランク対照群マウスより明らかに少ない;プラスミノーゲン投与群の膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼの陽性着色は溶媒PBS投与対照群マウスより明らかに高い。これは、プラスミノーゲンがビタミンDにより誘発された老衰モデルマウスの膝関節の成長板の骨芽細胞の活性を改善できることを示している。
図8図8は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの頭蓋骨のMicro CT骨密度の検出結果を示すものである。Aは皮質骨密度であり、Bは頭蓋骨の全骨密度である。その結果、週齢が増えるにつれて、Plg+/+マウスの皮質骨密度と全骨密度はしだいに増加する傾向があるが、Plg-/-マウスの頭蓋骨の皮質骨密度と全骨密度はしだいに低下した。この二種類のマウスの骨密度は20~21週齢において極有意な差があり、29~30週齢においてその差がより有意になる。これは、プラスミノーゲンが頭蓋骨の骨密度の調節において重要な役割を果たし、骨粗鬆と密接な関係があることを示している。
図9図9は20~21週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの頭蓋骨のMicro CT骨塩含有量の検出結果を示すものである。その結果、20~21週齢のPlg+/+マウスの皮質骨と全骨の骨塩含有量はPlg-/-マウスより明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である。これは、プラスミノーゲンが頭蓋骨の骨塩含有量の調節において重要な役割を果たし、骨粗鬆と密接な関係があることを示している。
図10図10は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの大腿骨のMicro CT骨密度の検出結果を示すものである。Aは皮質骨密度であり、Bは海綿骨密度であり、Cは小柱骨密度であり、Dは全骨密度である。その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの大腿骨密度はしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの大腿骨の皮質骨密度、海綿骨密度、小柱骨密度および全骨密度はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの大腿骨密度はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの骨密度の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが大腿骨密度の調節に寄与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
図11図11は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの大腿骨のMicro CT骨塩含有量の検出結果を示すものである。Aは皮質骨塩含有量であり、Bは海綿骨塩含有量であり、Cは小柱骨塩含有量であり、Dは全骨塩含有量である。その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの大腿骨の異なる部分の塩含有量はあまり変化しないかしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの大腿骨の海綿骨と小柱骨塩含有量はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの大腿骨塩含有量はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの大腿骨皮質骨、小柱骨および全骨骨塩含有量の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の骨塩含有量の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが大腿骨骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
図12図12は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの腰椎骨のMicro CT骨密度の検出結果を示すものである。Aは皮質骨密度であり、Bは海綿骨密度であり、Cは小柱骨密度であり、Dは全骨密度である。その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの腰椎骨骨密度はしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの腰椎骨の皮質骨密度、海綿骨密度、小柱骨密度および全骨密度はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの骨密度はPlg-/-マウスより高く、12週齢において二種類のマウスの腰椎骨骨密度の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが腰椎骨密度の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
図13図13は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの腰椎骨のMicro CT骨塩含有量の検出結果を示すものである。Aは皮質骨塩含有量であり、Bは海綿骨塩含有量であり、Cは小柱骨塩含有量であり、Dは全骨塩含有量である。その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの腰椎骨の異なる部分の塩含有量はあまり変化しないに対して、Plg-/-マウスの腰椎骨の皮質骨、海綿骨、小柱骨および全骨塩含有量はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの腰椎骨塩含有量はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの腰椎骨の海綿骨と皮質骨の区域の骨塩含有量の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが腰椎骨骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
図14図14は異なる週齢段階のPlg-/-とPlg+/+マウスの血清のアルカリフォスファターゼの検出結果を示すものである。その結果、12~30週齢において、Plg+/+マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は変動するがその変化が有意ではないに対して、Plg-/-マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は週齢の増加につれてしだいに低下する;Plg+/+マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性はPlg-/-マウスより明らかに高く、二種類のマウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は12週齢においてその差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、その差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが骨芽細胞の活性を促進し、骨再建を促進することができることを示している。
図15図15はApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血中カルシウムの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血中カルシウム濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血中カルシウムの含有量を低下させることができることを示している。
図16図16はApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のアリザリンレッド染色の代表的な写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈洞のカルシウム沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化における大動脈洞の石灰化を改善することができることを示している。
図17図17はアテローム性動脈硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の大腿骨密度の検出結果を示すものである。Aは皮質骨密度であり、Bは海綿骨密度であり、Cは小柱骨密度であり、Dは全骨密度である。その結果、プラスミノーゲンを10日投与した後、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨密度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも海綿骨密度と全骨密度の差が有意である(*は、P<0.05を表す);30日投与した後、プラスミノーゲン投与群マウスの海綿骨密度、小柱骨密度および全骨密度は溶媒PBS投与対照群と比べて明かに上昇し、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。皮質骨密度では二つの群には明らかな差はない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの骨密度の上昇を促進し、アテローム性動脈硬化症による骨粗鬆症を改善できることを示している。
図18図18はアテローム性動脈硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の膝関節のH&E染色の代表的な写真を示すものである。A~Cは溶媒PBS投与対照群であり、D~Eはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の軟骨表面には軽度の繊維化があり(細い矢印に表記される)、小柱骨(三角に表記される)が明らかに細くなり、太さが均一ではなく、軟骨組織(スターに表記される)の排列が乱れ、成長板(太い矢印に表記される)の分層が乱れ、軟骨細胞が軽度に減少し、潮標(tidemark)が基本的に鮮明である;プラスミノーゲン投与群の関節軟骨表面は基本的に正常であり、潮標が鮮明であり、骨小柱の太さが均一であり、成長板の構造がはっきりし、分層が規則して識別できる。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの膝関節の状況を改善できることを示している。
図19図19はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の体重への影響を示すものである。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの体重は正常対照群より明らかに低く、プラスミノーゲン投与群の体重は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(P<0.05)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスの体重の回復を顕著に促進できることを示している。
図20図20はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の大腿骨のMicro CTスキャンの測定結果を示すものである。Aは骨体積の測定結果であり、Bは骨塩含有量の測定結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨の海綿骨、小柱骨および全骨の体積と骨塩含有量は、いずれも溶媒PBS投与対照群より大きく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨塩の沈着と骨体積の増加を促進し、骨粗鬆を改善できることを示している。
図21図21はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の大腿骨のMicro CTスキャンの測定結果を示すものである。 図21Aは大腿骨骨密度の測定結果である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の皮質骨、海綿骨、小柱骨および全骨骨密度はいずれも正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの各部分の骨密度は溶媒PBS投与対照群より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる。 図21Bは大腿骨骨塩含有量の測定結果である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の各部分の骨塩含有量はいずれも正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの各部分の骨塩含有量はいずれも溶媒PBS投与対照群より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる。 図21Cは小柱骨の体積の測定結果である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の小柱骨の体積は正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨の小柱骨の体積は溶媒PBS投与対照より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる。 以上によって、プラスミノーゲンが骨粗鬆を明らかに改善し、大腿骨の各部分の骨密度と骨量の増加を促進することができ、しかも小柱骨に対する改善作用が特に明らかである。
図22図22はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の膝関節のH&E染色とSafranin O染色の代表的な写真を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の骨小柱(矢印に表記される)は明らかに細くなって裂け、大きい面積の無骨小柱骨髄腔が現れ、髄腔が増大し、骨小柱の連接が中断し、成長板下の骨細胞が軽度に減少した(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群の骨小柱部分は細くなり、溶媒PBS投与対照群と比べ、骨小柱の連続性が良く、太く、大きい面積の無骨小柱区域がなく、軟骨組織の分層構造も規則している。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の状況を明らかに改善できることを示している。
図23図23はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の膝関節のアルカリフォスファターゼ染色の代表的な写真を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの膝関節の軟骨組織(細い矢印に表記される)と成長板(太い矢印に表記される)のアルカリフォスファターゼ着色はプラスミノーゲン投与群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞活性の増加を促進できることを示している。
図24図24はPlg+/+卵巣切除により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の血清カルシウムの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清カルシウム濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除された骨粗鬆症モデルマウスの血中カルシウムの濃度を顕著に低下させることができることを示している。
図25図25はPlg+/+卵巣切除により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の血清リンの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清リン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除された骨粗鬆症モデルマウスの血中リンの濃度を顕著に上昇させることができることを示している。
図26図26はプラスミノーゲンを投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの膝関節のアルカリフォスファターゼの染色結果を示すものである。AとC溶媒PBS投与対照群であり、BとDはブランク対照群であり、Eは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの膝関節のアルカリフォスファターゼ着色(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに多く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞の活性を顕著に増加させることができることを示している。
図27図27はC57卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスにプラスミノーゲンを投与した後の膝関節のH&E染色とSafranin O染色の代表的な写真を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の膝関節の骨小柱(矢印に表記される)は明らかに細くなって裂け、大きい面積の無骨小柱骨髄腔が現れ、骨小柱の連接が中断し、関節表面部分には繊維化があり、成長板下の骨形成区域の骨芽組織が明らかに減少した(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群の骨小柱部分は細くなり、溶媒PBS投与対照群と比べ、骨小柱の連続性が良く、ひどい裂けがなく、大きい面積の無骨小柱区域がなく、軟骨組織の分層構造も規則し、潮標も鮮明である。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の状況を明らかに改善できることを示している。
【実施例
【0101】
材料と方法:
動物:C57マウスとPlg+/+およびPlg-/-マウス(Jackson Lab)を相関実験に使用した。動物は中国国家標準に合致する実験動物の使用環境に飼育された。
試薬:ビタミンD(Sigma Aldrich、品目番号D1530)、コーンオイル(Sigma Aldrich、品目番号C8267)、低カルシウムの特殊飼料(0.2%カルシウム、1%リン酸塩、2000UビタミンD3/kg、南通トロフィー飼料科技有限公司、15kg)、カルシウム含有量測定キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C004-2)、ヒトプラスミノーゲン(10mg/ml、健常な血漿献血者から精製された)。
Aloka Micro CTはマウス、ラットの形態観察に専用され、最新の第三代X線測定を採用し、短時間で高品質の断層撮影画像が得られる。骨測定(骨密度、骨塩含有量、骨体積、骨微細構造など)、体脂肪率測定、内臓、皮下脂肪の識別および測定、シンクロ撮影などに使用できる。骨測定はマウスの大腿骨、頭蓋骨または腰椎骨を測定対象とする。マウスを殺処分してから大腿骨、頭蓋骨、及び腰椎骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行い、Micro CT(Aloka、日本HITACHI社製)を採用して骨を測定した。
【0102】
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンの欠乏が骨粗鬆症と密接な関係があることに関するものである。
15週齢の野生型とプラスミノーゲン欠陥型(Plg-/-)マウス各5匹ずつを取った。膝関節を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、10%EDTAにおいて三週間脱カルシウムを行い、段階的にスクロース溶液で洗浄した。以上の操作は4℃の条件下で行う必要がある。そしてパラフィンで包埋し、8μm切片に対してSafranin O染色を行った。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、野生型マウス(図1A)と比べ、Plg-/-マウス(図1B)には広範な骨質減少と骨髄細胞の増加が現れる。
【0103】
[実施例2]
実施例2は、野生マウスとプラスミノーゲン欠陥型マウスのカルシウム流失の対比に関するものである。
15週齢の野生型(wt)とプラスミノーゲン欠陥型(kо)マウス各5匹ずつを取った。二つの群のマウスについて眼球を摘出して採血し、血中カルシウム濃度を検出した。正常な状況下で、体内カルシウムバランスは非常に精密に調節されている。しかし、骨粗鬆症の場合、カルシウム流失は骨粗鬆症の重要な指標の一つである。野生型とPlg-/-マウスにおけるカルシウムのレベルを研究した結果、15週齢において、Plg-/-(kо)マウスの血中カルシウムレベルは野生型マウスより明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)(図2)。
【0104】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンがPlg-/-マウスの膝組織構造に対する保護作用に関するものである。
20週齢のPlg-/-マウス8匹を取ってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で各4匹ずつとした。実験の1日目に体重を測って群に分け、プラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分し、膝関節を取って固定液において4℃で24時間固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、膝関節をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは5umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(H&E染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹化処理した後に中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図3A、C)は成長板(矢印に表記される)の排列が乱れ、一部の骨髄腔内の骨髄が消えた(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群は成長板(矢印に表記される)の排列が整っている。これは、プラスミノーゲンがPlg-/-マウスの膝関節の成長板の成長を促進することができることを示している。
【0105】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンがPlg-/-マウスの膝関節の関節軟骨表面の骨芽細胞活性の増加を促進することに関するものである。
20週齢のPlg-/-マウス8匹を取ってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で各4匹ずつとした。実験の1日目に体重を測って群に分け、プラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分し、大腿骨を取って固定液において4℃で24時間固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、膝関節をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは5umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水して塩化マグネシウム緩衝液で4℃終夜インキュベーションをした。アルカリフォスファターゼ基質溶液で室温で1時間インキュベーションをしてヘマトキシリンで2分間染色した。流水で5分間流してから60℃で30分間乾かし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase,ALP)は骨芽細胞の初期に分化するマーカーである[35]。その結果、溶媒PBS投与対照群(図4A)の関節軟骨表面には極少ないアルカリフォスファターゼの着色しかなく(矢印に表記される)、プラスミノーゲン投与群(図4B)の関節軟骨表面には多くの深紅のアルカリフォスファターゼの着色がある。これは、プラスミノーゲン投与群の関節軟骨表面のアルカリフォスファターゼの活性は対照群より明らかに高く、すなわち、プラスミノーゲンが膝関節の関節軟骨の骨芽細胞の活性の増加を明らかに促進したことを示している。
【0106】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンがPlg-/-マウスの膝関節の成長板の骨芽細胞活性の増加を促進することに関するものである。
20週齢のPlg-/-マウス8匹を取ってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で各4匹ずつとした。実験の1日目に体重を測って群に分け、プラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間連続的に投与し、31日目にマウスを殺処分し、大腿骨を取って固定液において4℃で24時間固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、大腿骨をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは5umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水して塩化マグネシウム緩衝液で4℃終夜インキュベーションをした。アルカリフォスファターゼ基質溶液で室温で1時間インキュベーションをしてヘマトキシリンで2分間染色した。流水で5分間流してから60℃で30分間乾かし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察して撮影した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図5A)の成長板の骨芽細胞の活性箇所にはアルカリフォスファターゼの着色があり(矢印に表記される)、浅紅色を呈する;プラスミノーゲン投与群(図5B)の成長板には多くのアルカリフォスファターゼの着色があり、しかも深紅色を呈する。これは、プラスミノーゲンを投与した後、膝関節の成長板の骨芽細胞の活性の増加を促進することができることを示している。これは、プラスミノーゲンを投与した後、膝関節の成長板の骨芽細胞の活性の増加を促進することができることを示している。
【0107】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンがビタミンDにより誘発された老衰モデルマウスの血清のアルカリフォスファターゼ活性を改善することに関するものである。
5~6週齢のオスC57マウス25匹を取り、体重を測ってからランダムに三つの群に分け、ブランク対照群で5匹、プラスミノーゲン投与群で10匹、溶媒PBS投与対照群で10匹とした。ブランク対照群マウスに毎日50μlのコーンオイルを腹腔注射により投与した;プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群マウスに0.5μg/kg/日でビタミンD(Sigma Aldrich)を腹腔注射により投与して老衰を誘発した[34,35]。これと同時にマウスに投薬し始め、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、ブランク対照群マウスには投薬処理をしなかった。連続して28日間投与してモデルを建築した。投与期間中、ブランク対照群マウスに低カルシウム食を与え、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群マウスに低カルシウム食を与えた。投薬、モデル建築の開始当日を1日目とし、29日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清のアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase,ALP)の活性の測定をした。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は溶媒PBS投与対照群マウスより明らかに高く、しかもその統計学的に有意であり、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性はブランク対照群マウスにより近い(図6)。
血清ALPはイソ酵素糖タンパク質であり、血清ALPは主に肝臓と骨格から由来し、骨格から由来するALPは40%~75%を占める。ALP活性の測定は主に肝胆と骨格系疾患の診断に用いられる。臨床上では、肝臓疾患、妊娠などの要素の他に、血清ALPは骨形成状況をも反映することができる。骨代謝が旺盛である時に骨芽細胞が活躍し、ALP分泌量が増え、骨芽細胞の周りおよび表面に存在し、血液に放出して血清LP活性を上昇しさせやすい。そのため、血清ALPは骨再建の活躍性の変化を示すマーカーの一つである[36]
本研究では、プラスミノーゲン投与群マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は溶媒PBS投与対照群マウスより明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である。これは、プラスミノーゲンがビタミンD老衰モデルマウスの骨芽細胞活性の増加を顕著に促進できることを示唆している。
【0108】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンがビタミンDにより誘発された老衰モデルマウスの膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼ活性の増加を促進することに関するものである。
5~6週齢のオスC57マウス15匹を取り、体重を測ってからランダムに三つの群に分け、ブランク対照群、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群で各5匹ずつとした。ブランク対照群マウスに毎日50μlのコーンオイルを腹腔注射により投与した;プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群マウスに1μg/kg/日でビタミンD(Sigma Aldrich)を腹腔注射により投与して老衰を誘発した[34,35]。これと同時にマウスに投薬し始め、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、ブランク対照群マウスには投薬処理をしなかった。連続して28日間投与してモデルを建築した。投与期間中、すべてのマウスに低カルシウム食(南通トロフィー)を与えた。投薬、モデル建築の開始当日を1日目とし、29日目にマウスを殺処分し、膝関節を取って固定液において24時間固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、膝関節をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは5umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水して塩化マグネシウム緩衝液で4℃終夜インキュベーションをした。アルカリフォスファターゼ基質溶液で室温で1時間インキュベーションをしてヘマトキシリンで2分間染色した。流水で5分間流してから60℃で30分間乾かし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図7B)の膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼの陽性着色(矢印に表記される)はブランク対照群マウス(図7A)より明らかに少ない;プラスミノーゲン投与群(図7C)の膝関節の成長板のアルカリフォスファターゼの陽性着色は溶媒PBS投与対照群マウスより明らかに高い。これは、プラスミノーゲンがビタミンDにより誘発された老衰モデルマウスの膝関節の成長板の骨芽細胞の活性を改善できることを示している。
【0109】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンが頭蓋骨密度に対する影響に関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。頭蓋骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨密度を測定した。
その結果、週齢が増えるにつれて、Plg+/+マウスの皮質骨密度(図8A)と全骨密度(図8B)はしだいに増加する傾向があるが、Plg-/-マウスの頭蓋骨の皮質骨密度と全骨密度はしだいに低下した。この二種類のマウスの骨密度は20~21週齢において極有意な差があり、29~30週齢においてその差がより有意である。これは、プラスミノーゲンが骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
骨粗鬆は、骨量の減少、骨の微細構造の退化を特徴とし、骨の脆弱性を増加させ、骨折しやすい全身性骨格疾患である。WHOは、骨密度(bone mineral density,BMD)の測定結果を用いて骨粗鬆症を診断することを提議している[37,38]。上記実験結果は、プラスミノーゲンが骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
【0110】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンが頭蓋骨骨塩の含有量に対する影響に関するものである。
20~21週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、マウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。頭蓋骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨塩含有量を測定した。
その結果、20~21週齢のPlg+/+マウスの皮質骨と全骨の骨塩含有量はPlg-/-マウスより明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である。これは、プラスミノーゲンが頭蓋骨の骨塩含有量の調節において重要な役割を果たし、骨粗鬆と密接な関係があることを示している。
【0111】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンが欠乏しているマウスの大腿骨骨密度が低下することに関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。大腿骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨密度を測定した。
その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの大腿骨密度はしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの大腿骨の皮質骨密度(10A)、海綿骨密度(図10B)、小柱骨密度(図10C)および全骨密度(図10D)はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの大腿骨密度はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの骨密度の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが大腿骨骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
【0112】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンが欠乏しているマウスの大腿骨の骨塩含有量が減少することに関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。大腿骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨塩含有量を測定した。
その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの大腿骨の異なる部分の塩含有量はあまり変化しないかしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの大腿骨の海綿骨(11B)と小柱骨塩含有量はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの大腿骨塩含有量はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの大腿骨皮質骨(11A)、小柱骨(11C)および全骨(11D)骨塩含有量の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の骨塩含有量の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが大腿骨骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
【0113】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンが欠乏しているマウスの腰椎骨の骨密度が低下することに関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。腰椎骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨密度を測定した。
その結果、12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの腰椎骨骨密度はしだいに増加するに対して、Plg-/-マウスの腰椎骨の皮質骨密度(12A)、海綿骨密度(図12B)、小柱骨密度(図12C)および全骨密度(図12D)はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの骨密度はPlg-/-マウスより高く、12週齢において二種類のマウスの腰椎骨骨密度の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが腰椎骨密度の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
【0114】
[実施例13]
実施例13は、プラスミノーゲンが欠乏しているマウスの腰椎骨の骨密度が低下することに関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。腰椎骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行い、Micro CTスキャンをして骨塩含有量を測定した。
12~30週齢の間、週齢が増えるにつれてPlg+/+マウスの腰椎骨の骨塩含有量はあまり変化しないに対して、Plg-/-マウスの腰椎骨の皮質骨塩含有量(13A)、海綿骨塩含有量(図13B)、小柱骨塩含有量(図13C)および全骨塩含有量(図13D)はしだいに減少する。この間、Plg+/+マウスの腰椎骨塩含有量はPlg-/-マウスより高く、20週齢において二種類のマウスの腰椎骨の海綿骨と皮質骨の区域の骨塩含有量の差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、両者の差がますます有意になる。これは、プラスミノーゲンが腰椎骨骨塩代謝の調節に関与し、しかも一定の時期において重要な役割を果たすことを示している。
【0115】
[実施例14]
実施例14は、プラスミノーゲン欠乏がマウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性はに対する影響に関するものである。
12~13、20~21、29~30週齢のPlg+/+マウスとPlg-/-マウスを各5匹取り、各群のマウスの体重はほぼ同じであった。実験においてマウスに同じ食物と水を与えた。すべてのマウスについて眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、アルカリフォスファターゼ検出キットを用いて血清のアルカリフォスファターゼの活性を測定した。
その結果、12~30週齢において、Plg+/+マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は変動するがその変化が有意ではないに対して、Plg-/-マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は週齢の増加につれてしだいに低下する;Plg+/+マウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性はPlg-/-マウスより明らかに高く、二種類のマウスの血清のアルカリフォスファターゼの活性は12週齢においてその差が有意であり、しかも週齢が増えるにつれて、その差がますます有意になる(図14)。これは、プラスミノーゲンが骨芽細胞の活性を促進し、骨再建を促進することができることを示している。
【0116】
[実施例15]
実施例15は、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症ApoEマウスの血中カルシウム濃度を低めることに関するものである。
6週齢のApoEオスマウス13匹に高脂肪高コレステロール食を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した[39,40]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、マウスをランダムに二つの群に分け、各溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間中にマウスに引き続き高脂肪食を与えた。30日にマウスを16時間禁食した後、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清カルシウム濃度の検出に用いた。カルシウム検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C004-2)を用いてそのプロトコルに記載する方法に従って血中カルシウムを測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血中カルシウム濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図15)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血中カルシウムの含有量を低下させることができることを示している。
【0117】
[実施例16]
実施例16は、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症ApoEマウスの大動脈洞の石灰化を改善することに関するものである。
6週齢のApoEオスマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した[39,40]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、それによってマウスをランダムに二つの群に分け、各溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間中にマウスに引き続き高脂肪食を与えた。投与の31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において脱水して沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、アリザリンレッドSで3分間染色した。切片を光学顕微鏡下で40倍にて観察した。
アリザリンレッド染色は石灰化の程度を示すことができる。その結果、プラスミノーゲン投与群(図16B)マウスの大動脈洞のカルシウム沈着は溶媒PBS投与対照群(図16A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化における大動脈洞のカルシウム沈着を改善することができることを示している。
【0118】
[実施例17]
実施例17は、プラスミノーゲンがAopEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大腿骨骨密度に対する影響に関するものである。
6週齢のApoEオスマウス19匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した[39,40]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、それによってマウスをランダムに二つの群に分け、各溶媒PBS投与対照群で9匹とプラスミノーゲン投与群で10匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間中にマウスに引き続き高脂肪食を与えた。投与の11日目に各群からマウス5匹を取り、殺処分してから大腿骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。投与の31日目に残ったマウスを殺処分して大腿骨を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。取った大腿骨についてMicro CTスキャンをして骨密度を測定した。
アテローム性動脈硬化症と骨粗しょう症との関連性についてはすでに報告があり、高血脂はアテローム性動脈硬化症の重要な致病要素である。近年の研究より明らかに、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)は脂肪代謝を影響するだけではなく、骨密度、骨損失および骨粗鬆性骨折に関係する[41,42]
その結果、プラスミノーゲンを10日投与した後、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨密度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも海綿骨密度(図17B)と全骨密度(図17D)の差が有意である(*は、P<0.05を表す);30日投与した後、プラスミノーゲン投与群マウスの海綿骨密度、小柱骨密度(図17C)および全骨密度は溶媒PBS投与対照群と比べて明かに上昇し、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。皮質骨密度(図17A)では二つの群には明らかな差はない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの骨密度の上昇を促進し、アテローム性動脈硬化症に伴われる骨粗鬆症を改善できることを示している。
研究によると、血管石灰化の本質は、血管平滑筋細胞が骨芽細胞表型への転化及び血管組織が骨組織への転化である。血管石灰化の形成は骨塩の損失とも顕著な関連性がある[10]。上記実施例16と17の実験結果から分かるように、プラスミノーゲンが動脈壁におけるカルシウム沈着を低下させると同時に骨密度を増強することができる。これは、骨粗鬆症および心血管疾患の予防と治療に対して重要な意義を持っている。
【0119】
[実施例18]
実施例18は、プラスミノーゲンがAopEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの膝関節組織構造に対する保護作用に関するものである。
6週齢のAopEオスマウス7匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した[39,40]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、それによってマウスをランダムに二つの群に分け、各溶媒PBS投与対照群で3匹とプラスミノーゲン投与群で4匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間中にマウスに引き続き高脂肪食を与えた。投与の31日目にマウスを殺処分して大腿骨を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。そして酸性脱カルシウム液(超純水で体積分率8%塩酸と10%ギ酸の脱カルシウム液を調製した)で3.5時間脱カルシウムをした。そしてパラフィンで包埋し、8μm切片をH&E染色し、切片を光学顕微鏡下で100倍(A、D)、200倍(B、C、E、F)にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図18A~C)の軟骨表面には軽度の繊維化があり(細い矢印に表記される)、小柱骨(三角に表記される)が明らかに細くなり、太さが均一ではなく、軟骨組織(スターに表記される)の排列が乱れ、成長板(太い矢印に表記される)の分層が乱れ、軟骨細胞が軽度に減少し、潮標が基本的に鮮明である;プラスミノーゲン投与群(図18D~F)の関節軟骨の表面は基本的に正常であり、潮標が鮮明であり、骨小柱の太さが均一であり、成長板の構造がはっきりし、分層が規則して識別できる。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの膝関節の状況を改善できることを示している。
【0120】
[実施例19]
実施例19は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの体重に対する影響に関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス17匹を取って体重を測り、体重によってマウスをランダムに二つの群に分け、正常対照群で3匹とモデル群で14匹とした。モデル群マウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。正常対照群マウスに対してただ同じ位置で切り分け、卵巣の切除をしなかった。卵巣を切除してから14日後に、モデル群マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。モデル群マウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発し[43]、正常対照群マウスに対して注射処理をしなかった。デキサメタゾンを注射すると同時にマウスに投薬し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。正常対照群マウスに対してプラスミノーゲンまたはPBSを注射しなかった。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスの体重を測った。
その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの体重は正常対照群より明らかに低く、プラスミノーゲン投与群の体重は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(P<0.05)(図19)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除およびデキサメタゾン注射により誘発された骨粗鬆症モデルマウスの体重の回復を顕著に促進できることを示している。
【0121】
[実施例20]
実施例20は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨に対する影響に関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス14匹を取って体重を測った。すべてのマウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。卵巣を切除してから14日後に、マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。モデル群マウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発した[43]。モデル建築と同時にマウスに投薬し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスを殺処分して大腿骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。Micro CTスキャンをして大腿骨の各指標を測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨の海綿骨、小柱骨および全骨の体積(図20A)と骨塩含有量(図20B)は、いずれも溶媒PBS投与対照群より大きく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨の海綿骨、小柱骨および全骨の体積の増加および骨塩の沈着を促進し、骨粗鬆を改善できることを示している。
【0122】
[実施例21]
実施例21は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの大腿骨構造を改善することに関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス17匹を取って体重を測り、体重によってマウスをランダムに二つの群に分け、正常対照群で3匹とモデル群で14匹とした。モデル群マウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。正常対照群マウスに対してただ同じ位置で切り分け、卵巣の切除をしなかった。卵巣を切除してから14日後に、モデル群マウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発し[43]、正常対照群マウスに対して注射処理をしなかった。デキサメタゾンの注射が終わった後、モデル群マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。モデル建築後に(デキサメタゾン注射が終わった次の日)、マウスに投薬し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。正常対照群マウスに対してプラスミノーゲンまたはPBSを注射しなかった。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスを殺処分して大腿骨を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。取った大腿骨についてMicro CTスキャンをして大腿骨密度を測定した。
骨密度
その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の皮質骨、海綿骨、小柱骨および全骨骨密度はいずれも正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの各部分の骨密度は溶媒PBS投与対照群より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる(図21A)。
骨塩含有量
その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の各部分の骨塩含有量はいずれも正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの各部分の骨塩含有量はいずれも溶媒PBS投与対照群より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる(図21B)。
骨体積
その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの大腿骨の小柱骨の体積は正常対照群より小さいに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの大腿骨の小柱骨の体積は溶媒PBS投与対照より大きい。その傾向が明確であるが、マウスの数が少ないため、その差が統計学的に有意に近いだけである。マウスの数を増やすと統計学的な差が現れると予測できる(図21C)。
以上によって、プラスミノーゲンが骨粗鬆を明らかに改善し、大腿骨の各部分の骨密度と骨量の増加を促進することができ、しかも小柱骨に対する改善作用が特に明らかである。
【0123】
[実施例22]
実施例22は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の組織構造の状況を改善することに関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス14匹を取って体重を測った。すべてのマウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。卵巣を切除してから14日後に、マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。モデル群マウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発した[43]。モデル建築と同時にマウスに投薬し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスを殺処分して膝関節を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。そして酸性脱カルシウム液(超純水で体積分率8%塩酸と10%ギ酸の脱カルシウム液を調製した)で3.5時間脱カルシウムをした。そしてパラフィンで包埋し、3μm切片をH&E(A、B)とSafrain O染色(C、D)をして、切片を光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図22A、C)マウスの膝関節の骨小柱(矢印に表記される)は明らかに細くなって裂け、大きい面積の無骨小柱骨髄腔が現れ、髄腔が増大し、骨小柱の連接が中断し、成長板下の骨細胞が軽度に減少した(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群(図22B、D)の骨小柱部分は細くなり、溶媒PBS投与対照群と比べ、骨小柱の連続性が良く、太く、大きい面積の無骨小柱区域がなく、軟骨組織の分層構造も規則している。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の組織構造の状況を明らかに改善できることを示している。
【0124】
[実施例23]
実施例23は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞の活性を増加させることに関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス14匹を取って体重を測った。すべてのマウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。卵巣を切除してから14日後に、マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。二つの群のマウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発した[43]。モデル建築と同時にマウスに投薬し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスを殺処分して膝関節を取って固定液において固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、膝関節をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは3umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水して塩化マグネシウム緩衝液で4℃終夜インキュベーションをした。アルカリフォスファターゼ基質溶液で室温で1時間インキュベーションをしてヘマトキシリンで2分間染色した。流水で5分間流してから60℃で30分間乾かし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群マウス(図23A、C)の膝関節の軟骨組織(細い矢印に表記される)と成長板(太い矢印に表記される)のアルカリフォスファターゼ着色はプラスミノーゲン投与群(図23B、D)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞活性の増加を促進できることを示している。
【0125】
[実施例24]
実施例24は、プラスミノーゲンが卵巣切除による骨粗鬆症モデルマウスの血中カルシウム濃度を低下させることに関するものである。
8~10週齢のPlg+/+メスマウス11匹を取った。マウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した[44,45]。卵巣を切除してから65日後に、マウスの体重を測って体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で6匹と溶媒PBS投与対照群で5匹とし、投薬し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して11日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、12日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血中カルシウム濃度を検出した。カルシウム検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C004-2)を用いてそのプロトコルに記載する方法に従って血中カルシウムを測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清カルシウム濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)(図24)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除による骨粗鬆症モデルマウスの血中カルシウムの濃度を顕著に低下させることができることを示している。
【0126】
[実施例25]
実施例25は、プラスミノーゲンが卵巣切除による骨粗鬆症モデルマウスの血中リン濃度を上昇させることに関するものである。
8~10週齢のPlg+/+メスマウス11匹を取った。マウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した[44,45]。卵巣を切除してから65日後に、マウスの体重を測って体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で6匹と溶媒PBS投与対照群で5匹とし、投薬し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して11日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、12日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血中リン濃度を検出した。リン検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号C006-3)を用いてそのプロトコルに記載する方法に従って血中リンを測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清リン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)(図25)。これは、プラスミノーゲンが卵巣切除による骨粗鬆症モデルマウスの血中リンの濃度を顕著に上昇させることができることを示している。
【0127】
[実施例26]
実施例26は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞の活性を増加させることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[46,47]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。20日目にマウスを16時間禁食し、21日目にマウスを殺処分し、膝関節を取って固定液において固定を行った。固定液は、2%パラホルムアルデヒド、0.075mоl/Lリジン、0.01mоl/L過ヨウ素酸ナトリウムを含む。固定後、4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄してから4℃脱カルシウム液において2週間脱カルシウムを行い、5日ごとに脱カルシウム液を置き換えた。脱カルシウムが終わってから4℃ PBS洗浄液で段階的に12時間洗浄し、膝関節をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは3umであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水して塩化マグネシウム緩衝液で4℃終夜インキュベーションをした。アルカリフォスファターゼ基質溶液で室温で1時間インキュベーションをしてヘマトキシリンで2分間染色した。流水で5分間流してから60℃で30分間乾かし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
高脂血症は脂肪代謝障害の一種であり、一系列の合併症を引き起こし得る疾患である。近年の多くの研究によって、高脂血脂は骨粗鬆症とアテローム性動脈硬化症の共同の病因であることは発見された[48,49]
その結果、プラスミノーゲン投与群(図26B、D)マウスの膝関節のアルカリフォスファターゼ着色(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図26A、C)より明らかに多く、しかもその差が統計学的に有意である(図26E)。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの膝関節の骨芽細胞の活性を増加させることができることを示している。
【0128】
[実施例27]
実施例27は、プラスミノーゲンが卵巣切除-デキサメタゾンによる骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の組織構造の状況を改善することに関するものである。
8~10週齢のC57メスマウス14匹を取って体重を測った。マウスに50mg/kg体重でペントバルビタールナトリウムを腹腔注射により投与して麻酔させ、マウスの背部の両側の毛髪を脱いで70%のアルコールとヨードチンキで消毒し、皮膚、背部筋肉および腹膜を切り分け、小さいピンセットでそっと白色の光っている脂肪塊を切り口から引き出し、脂肪塊を分離して卵巣が見えた。卵巣の下部の輸卵管を糸で結んで卵巣を摘出した。切り口を縫い合わせた後、外部に消炎剤粉末を塗布した。同じ方法で反対側の卵巣を摘出した。卵巣を切除してから14日後に、モデル群マウスに125μg/匹でデキサメタゾンを腹腔注射により投与し、5日/週の注射頻度で12日間注射して骨粗鬆症を誘発した[43]。デキサメタゾン注射が終わった後、マウスを体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群で7匹ずつとした。モデル建築後(デキサメタゾン注射が終わった次の日)にマウスに投薬し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して16日間投与した。投与し始めた日を1日目とし、17日目にマウスを殺処分して膝関節を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。そして酸性脱カルシウム液(超純水で体積分率8%塩酸と10%ギ酸の脱カルシウム液を調製した)で3.5時間脱カルシウムをした。そしてパラフィンで包埋し、3μm切片をH&E(A、B)とSafrain O染色(C、D)をして、切片を光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図27A,C)マウスの骨小柱(矢印に表記される)は明らかに細くなって裂け、大きい面積の無骨小柱骨髄腔が現れ、骨小柱の連接が中断し、関節表面部分には繊維化があり、成長板下の骨形成区域の骨芽組織が明らかに減少した(三角に表記される);プラスミノーゲン投与群(図27B、D)の骨小柱部分は細くなり、溶媒PBS投与対照群と比べ、骨小柱の連続性が良く、ひどい裂けがなく、大きい面積の無骨小柱区域がなく、軟骨組織の分層構造も規則し、潮標も鮮明である。これは、プラスミノーゲンが骨粗鬆症モデルマウスの膝関節の組織構造の状況を明らかに改善できることを示している。
【0129】
参考文献:
[1] Long F,Ornitz DM. Development of the endochondral skeleton [J]. Cold Spring Harb perspect biol, 2013,5: a008334.
[2] Ryan JW,Reinke D,Kogawa M,et al. Novel targets of vitamin D activity in bone: action of the vitamin D receptor in osteoblasts,osteocytes and osteoclasts [J]. Curr Drug Targets,2013,14: 1683-1688.
[3] Liu EY,Wactawski WJ,Donahue RP, et al. Does low bone mineral density start in postteenage years in women with type 1 diabetes [J]. Diabetes Care, 2003,26( 8) : 2365-2369.
[4] Dennison EM,Syddall HE,Aihie Sayer A,et al. Type 2 diabetes mellitus is associated with increased axial bone density in men and women from the Hertfordshire Cohort Study: evidence for an indirect effect of insulin resistance [J]. Diabetologia,2004,47 ( 11) :1963-1968.
[5] Schwartz AV,Sellmeyer DE,Strotmeyer ES,et al. Diabetes and bone loss at the hip in older black and white adults [J]. J Bone Miner Res, 2005, 20( 4) : 596-603.
[6] 楊乃龍、王軍、曲寧.女性2型糖尿病患者の骨密度についての調査及び評価[J].中国糖尿病雑誌、2008、16(1):26-28。
[7] Doherty TM,Fitzpatrick LA,Inoue D,et al. Molecular,endocrine,and genetic mechanisms of arterial calcification [J]. Endocr Rev,2004,25: 629-672.
[8] Marcovitz PA,Tran HH,Franklin BA,et al. Usefulness of bone mineral density to predict significant coronary artery disease [J]. Am J Cardiol,2005,96: 1 059-063.
[9] Schulz E,Arfai K,Liu X,et al. Aortic calcification and the risk of osteoporosis and fractures [J]. J Clin Endocrinol Metab,2004,89: 4 246-253.
[10] 第三軍医大学博士論文、周鋭、タイトル:骨芽細胞の骨分化におけるビタミンDの分子メカニズム及び骨粗鬆症と動脈石灰化との関連性についての臨床研究、2015年5月。
[11] Lanske, B. and Razzaque, M.S. (2007). Vitamin D and aging: old concepts and new insights. J. Nutr. Biochem. 18, 771-777.[J].
[12] Alexander CM and Werb, Z. (1991). Extracellular matrix degradation. In Cell Biology of Extracellular Matrix, Hay ED, ed. (New York: Plenum Press), pp. 255-302.
[13] Werb, Z., Mainardi, C.L., Vater, C.A., and Harris, E.D., Jr. (1977). Endogenous activiation of latent collagenase by rheumatoid synovial cells. Evidence for a role of plasminogen activator. N. Engl. J. Med. 296, 1017-1023.
[14] He, C.S., Wilhelm, S.M., Pentland, A.P., Marmer, B.L., Grant, G.A., Eisen, A.Z., and Goldberg, G.I. (1989). Tissue cooperation in a proteolytic cascade activating human interstitial collagenase. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 86, 2632-2636.
[15] Stoppelli, M.P., Corti, A., Soffientini, A., Cassani, G., Blasi, F., and Assoian, R.K. (1985). Differentiation-enhanced binding of the amino-terminal fragment of human urokinase plasminogen activator to a specific receptor on U937 monocytes. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 82, 4939-4943.
[16]Vassalli, J.D., Baccino, D., and Belin, D. (1985). A cellular binding site for the Mr 55, 000 form of the human plasminogen activator, urokinase. J. Cell Biol. 100, 86-92.
[17] Wiman, B. and Wallen, P. (1975). Structural relationship between "glutamic acid" and "lysine" forms of human plasminogen and their interaction with the NH2-terminal activation peptide as studied by affinity chromatography. Eur. J. Biochem. 50, 489-494.
[18] Saksela, O. and Rifkin, D.B. (1988). Cell-associated plasminogen activation: regulation and physiological functions. Annu. Rev. Cell Biol. 4, 93-126.
[19] Raum, D., Marcus, D., Alper, C.A., Levey, R., Taylor, P.D., and Starzl, T.E. (1980). Synthesis of human plasminogen by the liver. Science 208, 1036-1037.
[20] Wallen P (1980). Biochemistry of plasminogen. In Fibrinolysis, Kline DL and Reddy KKN, eds. (Florida: CRC)
[21] Sottrup-Jensen, L., Zajdel, M., Claeys, H., Petersen, T.E., and Magnusson, S. (1975). Amino-acid sequence of activation cleavage site in plasminogen: homology with "pro" part of prothrombin. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 72, 2577-2581.
[22] Collen, D. and Lijnen, H.R. (1991). Basic and clinical aspects of fibrinolysis and thrombolysis. Blood 78, 3114-3124.
[23] Alexander, C.M. and Werb, Z. (1989). Proteinases and extracellular matrix remodeling. Curr. Opin. Cell Biol. 1, 974-982.
[24] Mignatti, P. and Rifkin, D.B. (1993). Biology and biochemistry of proteinases in tumor invasion. Physiol Rev. 73, 161-195.
[25] Collen, D. (2001). Ham-Wasserman lecture: role of the plasminogen system in fibrin-homeostasis and tissue remodeling. Hematology. (Am. Soc. Hematol. Educ. Program. ) 1-9.
[26] Rifkin, D.B., Moscatelli, D., Bizik, J., Quarto, N., Blei, F., Dennis, P., Flaumenhaft, R., and Mignatti, P. (1990). Growth factor control of extracellular proteolysis. Cell Differ. Dev. 32, 313-318.
[27] Andreasen, P.A., Kjoller, L., Christensen, L., and Duffy, M.J. (1997). The urokinase-type plasminogen activator system in cancer metastasis: a review. Int. J. Cancer 72, 1-22.
[28] Rifkin, D.B., Mazzieri, R., Munger, J.S., Noguera, I., and Sung, J. (1999). Proteolytic control of growth factor availability. APMIS 107, 80-85.
[29] Marder V J, Novokhatny V. Direct fibrinolytic agents: biochemical attributes, preclinical foundation and clinical potential [J]. Journal of Thrombosis and Haemostasis, 2010, 8(3): 433-444.
[30] Hunt J A, Petteway Jr S R, Scuderi P, et al. Simplified recombinant plasmin: production and fu-nctional comparison of a novel thrombolytic molecule with plasma-derived plasmin [J]. Thromb Haemost, 2008, 100(3): 413-419.
[31] Sottrup-Jensen L, Claeys H, Zajdel M, et al. The primary structure of human plasminogen: Isolation of two lysine-binding fragments and one “mini”-plasminogen (MW, 38, 000) by elastase-catalyzed-specific limited proteolysis [J]. Progress in chemical fibrinolysis and thrombolysis, 1978, 3: 191-209.
[32] Nagai N, Demarsin E, Van Hoef B, et al. Recombinant human microplasmin: production and potential therapeutic properties [J]. Journal of Thrombosis and Haemostasis, 2003, 1(2): 307-313.
[33].Weinreb M, Shinar D , Rodan G. Different pattern of alkaline phosphatase ,osteopontin ,and osteocalcin expression in developing rat bone visualized by in situ hybridizationJ . J Bone Miner Res ,1990 ,5 (8) :831-842.
[34]. E. DACI, A. VERSTUYF, K. MOERMANS et al. Bone Resorption Induced by 1a,25 Dihydroxyvitamin D3 In Vivo Is Not Altered by Inactivation of the Plasminogen Activator Inhibitor 1. Bone Vol. 27, No. 1 July 2000:97-102.
[35]. Mohammed S. Razzaque, Despina Sitara,Takashi Taguchi et al. Premature aging-like phenotype in fibroblast growth factor 23 null mice is a vitamin D-mediated process. FASEB J. 2006 Apr; 20(6): 720-722.
[36] 劉▲ゆう▼瑜、呉鉄、崔燎ら.卵巣除去ラットの骨形成パラメータと血清アルカリ性フォスファターゼの関連性についての研究.中国老年学雑誌、2004、1(24):49-50)。
[37] Kanis JA,Melton LJ,Christiansen C,et al.Perspective: The diagnosis of osteoporosis.Journal of Bone and Mineral Research,1994,9( 11) : 37-41.
[38] Yu J,Yu XF.The application of the bone metabolic markers and bone mineral density in osteoporosis.J Chin Intern Med, 2009,26( 3) : 155-157.
[39] Yutaka Nakashima, Andrew S. Plump, Elaine W. Raines et al. Arterioscler Thromb. 1994 Jan;14(1):133-40.
[40] Yvonne Nitschke , Gabriele Weissen-Plenz , Robert Terkeltaub et al. Npp1 promotes atherosclerosis in ApoE knockout mice. J. Cell. Mol. Med. Vol 15, No 11, 2011 pp. 2273-2283.
[41] Plu AS,Smith JD,Hayek T et al.Sever hyercholestrolemia and anthero sclerosis in aplipoprotein E-deficient mice creatd by homologpous recombination inES cells. cell.1992;71:343-353.
[42] Zhang SH, Reddick RL, Piedrahita JA et al.Spontaneous hypeicholeserolemia and arterial leision in mice lacking apolipoprotrin E[J].Science.1992;258:468-471.
[43]. Louise Grahnemo,Caroline Jochems, Annica Andersson,Possible role of lymphocytes in glucocorticoid-induced increase in trabecular bone mineral density,,,,Journal of Endocrinology (2015) 224, 97-108.
[44].Gustavo Duque, Dao Chao Huang,Natalie Dion et al. Interferon-g Plays a Role in Bone Formation In Vivo and Rescues Osteoporosis in Ovariectomized Mice. Journal of Bone and Mineral Research, Vol. 26, No. 7, July 2011, pp 1472-1483.
[45]. Min Hee Park, Namoh Kim, Hee Kyung Jin1 et al. Neuropeptide Y-based recombinant peptides ameliorate bone loss in mice by regulating hematopoietic stem/progenitor cell mobilization. BMB Rep. 2017; 50(3): 138-143.
[46] Dominika Nackiewicz, Paromita Dey, Barbara Szczerba et al. Inhibitor of differentiation 3, a transcription factor regulates hyperlipidemia associated kidney disease. Nephron Exp Nephrol. 2014 ; 126(3): 141-147.
[47] Ming Gu1, Yu Zhang., Shengjie Fan et al. Extracts of Rhizoma Polygonati Odorati Prevent High-Fat Diet-Induced Metabolic Disorders in C57BL/6 Mice. PLoS ONE 8(11): e81724.
[48] Ihsane Hmamouchi, Fadoua Allali, Hamza Khazzani et al. Low bone mineral density is related to atherosclerosis in postmenopausal Moroccan women.BMC Public Health. 2009; 9: 388.
[49] Hui Yang, Ahmed Salah Salem Mohamed, Sheng-hua Zhou. Oxidized low density lipoprotein, stem cells, and atherosclerosis. Lipids Health Dis. 2012; 11: 85.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
0007531080000001.app