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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240802BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/302 101R
C23C16/44 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020212653
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098959
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 堅一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彰三
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-184850(JP,A)
【文献】特開平10-240356(JP,A)
【文献】特開平11-307621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23C 16/44
H01L 21/683
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
基板処理室と、
基板が載置されるステージであって前記基板処理室内に配置されたステージと、
前記基板を前記ステージに固定する固定手段と、
前記ステージと前記基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、
前記基板処理室内を減圧するための減圧装置と、を含み、
前記冷却ガス供給部は、
前記空間につながっているガス流路と、
前記ガス流路に供給される前記冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、
前記ガス流路における前記冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、
前記ガス流路における前記冷却ガスの前記圧力を開度によって調節するバルブと、
前記バルブの下流側に配置された排気装置と、を含み、
前記基板処理方法は、
前記基板が前記ステージに固定され、且つ、前記流量を所定の流量とした状態で、前記圧力が所定の圧力となるときの前記バルブの前記開度を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記開度を基準値と比較することによって、前記基準値に対する前記開度の変化を示す値を算出する算出工程と、
前記基板の処理中に前記基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されている前記バルブの前記開度の第1の閾値を、前記変化を示す値に基づいて第2の閾値に変更する閾値変更工程と、
前記冷却ガス供給部によって供給された前記冷却ガスで前記基板を冷却しながら前記基板を処理する基板処理工程と、を含み、
前記基板処理工程において、前記基板の冷却が正常に行われているか否かが、前記バルブの前記開度と前記第2の閾値とに基づいて判定される、基板処理方法。
【請求項2】
前記基準値を決定するための工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板処理工程において、前記基板がプラズマで処理される、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記バルブはピエゾバルブである、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記減圧装置の少なくとも一部が前記排気装置として用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板処理工程は、処理条件が異なる複数の処理ステップを含み、
前記複数の処理ステップのそれぞれの処理条件ごとに前記第1の閾値が設定されており、
前記閾値変更工程において、前記処理ステップごとの前記第1の閾値が、前記変化を示す値に基づいて前記第2の閾値に変更される、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記取得工程から前記基板処理工程までの工程を含む工程群を複数回行うことによって複数枚の前記基板が処理される、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
複数の前記工程群のそれぞれは、前記閾値変更工程の前に、前記閾値変更工程を行う必要の有無に関する更新要否情報を取得する工程をさらに含み、
複数の前記工程群のそれぞれにおいて、前記閾値変更工程を行う必要があるという前記更新要否情報が取得された場合に、前記閾値変更工程を行う、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
2回目以降の前記工程群において、前回の前記工程群の前記取得工程において取得された前記開度を用いて前記取得工程が正しく行われているかを判定する判定工程をさらに含む、請求項7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板処理室と、
前記基板が載置されるステージであって前記基板処理室内に配置されたステージと、
前記基板を前記ステージに固定する固定手段と、
前記ステージと前記基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、
前記基板処理室内を減圧するための減圧装置と、
前記固定手段および前記冷却ガス供給部を制御する制御部と、を含み、
前記冷却ガス供給部は、
前記空間につながっているガス流路と、
前記ガス流路に供給される前記冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、
前記ガス流路における前記冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、
前記ガス流路における前記冷却ガスの前記圧力を開度によって調節するバルブと、
前記バルブの下流側に配置された排気装置と、を含み、
前記制御部は、
前記基板が前記ステージに固定され、且つ、前記流量を所定の流量とした状態で、前記圧力が所定の圧力となるときの前記バルブの前記開度を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記開度を基準値と比較することによって、前記基準値に対する前記開度の変化を示す値を算出する算出工程と、
前記基板の処理中に前記基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されている前記バルブの前記開度の第1の閾値を、前記変化を示す値に基づいて第2の閾値に変更する閾値変更工程と、
前記冷却ガス供給部によって供給された前記冷却ガスで前記基板を冷却しながら前記基板を処理する基板処理工程と、を実行し、
前記制御部は、前記基板処理工程において、前記基板の冷却が正常に行われているか否かを、前記バルブの前記開度と前記第2の閾値とに基づいて判定する、基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記基準値を決定するための工程を実行することによって前記基準値を決定する、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板処理工程において、前記基板がプラズマで処理される、請求項10または11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記バルブはピエゾバルブである、請求項10~12のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記減圧装置の少なくとも一部が前記排気装置として用いられる、請求項10~13のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する方法の1つとして、プラズマで基板を処理する方法が知られている。プラズマで基板を処理する場合、基板が加熱されて不具合が生じる場合がある。そのため、基板を冷却しながらプラズマ処理をするための方法が、従来から提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002-184850号公報)は、「真空チャンバ内でウェハを載置する下部電極を有し、前記ウェハ表面に処理を施すプロセス装置において、前記下部電極とウェハとの間に気体を充填し、前記ウェハ裏面における前記気体の圧力を間接的に求め、該ウェハ裏面の前記圧力が所定の圧力になるように前記気体の充填圧力を調整し、前記ウェハと下部電極との間の熱伝導を制御することにより、前記ウェハ温度を所定の温度に保持することを特徴とするプロセス装置におけるウェハ温度の制御方法。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-184850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、ウェハ裏面の圧力が所定の圧力になるように気体の充填圧力が調整される。しかし、従来の方法では、基板を適切に冷却することが難しい場合があった。このような状況において、本開示は、基板の冷却が正常に行われているか否かを適切に判定できる、新たな基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、基板処理装置を用いた基板処理方法に関する。前記基板処理装置は、基板処理室と、基板が載置されるステージであって前記基板処理室内に配置されたステージと、前記基板を前記ステージに固定する固定手段と、前記ステージと前記基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、前記基板処理室内を減圧するための減圧装置と、を含み、前記冷却ガス供給部は、前記空間につながっているガス流路と、前記ガス流路に供給される前記冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、前記ガス流路における前記冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、前記ガス流路における前記冷却ガスの前記圧力を開度によって調節するバルブと、前記バルブの下流側に配置された排気装置と、を含む。前記基板処理方法は、前記基板が前記ステージに固定され、且つ、前記流量を所定の流量とした状態で、前記圧力が所定の圧力となるときの前記バルブの前記開度を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記開度を基準値と比較することによって、前記基準値に対する前記開度の変化を示す値を算出する算出工程と、前記基板の処理中に前記基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されている前記バルブの前記開度の第1の閾値を、前記変化を示す値に基づいて第2の閾値に変更する閾値変更工程と、前記冷却ガス供給部によって供給された前記冷却ガスで前記基板を冷却しながら前記基板を処理する基板処理工程と、を含み、前記基板処理工程において、前記基板の冷却が正常に行われているか否かが、前記バルブの前記開度と前記第2の閾値とに基づいて判定される。
【0007】
本開示の他の一局面は、基板を処理する基板処理装置に関する。当該基板処理装置は、基板処理室と、前記基板が載置されるステージであって前記基板処理室内に配置されたステージと、前記基板を前記ステージに固定する固定手段と、前記ステージと前記基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、前記基板処理室内を減圧するための減圧装置と、前記固定手段および前記冷却ガス供給部を制御する制御部と、を含み、前記冷却ガス供給部は、前記空間につながっているガス流路と、前記ガス流路に供給される前記冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、前記ガス流路における前記冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、前記ガス流路における前記冷却ガスの前記圧力を開度によって調節するバルブと、前記バルブの下流側に配置された排気装置と、を含み、前記制御部は、前記基板が前記ステージに固定され、且つ、前記流量を所定の流量とした状態で、前記圧力が所定の圧力となるときの前記バルブの前記開度を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記開度を基準値と比較することによって、前記基準値に対する前記開度の変化を示す値を算出する算出工程と、前記基板の処理中に前記基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されている前記バルブの前記開度の第1の閾値を、前記変化を示す値に基づいて第2の閾値に変更する閾値変更工程と、前記冷却ガス供給部によって供給された前記冷却ガスで前記基板を冷却しながら前記基板を処理する基板処理工程と、を実行し、前記制御部は、前記基板処理工程において、前記基板の冷却が正常に行われているか否かを、前記バルブの前記開度と前記第2の閾値とに基づいて判定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る基板処理方法および基板処理装置によれば、基板の冷却が正常に行われているか否かを適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る基板処理装置の一例の構成を模式的に示す図である。
図2】本開示に係る基板処理装置に用いられる基板ステージの一例を模式的に示す上面図である。
図3】本開示に係る基板処理装置の他の一例の一部の構成を模式的に示す図である。
図4】本開示に係る基板処理方法の一例の一部のフローチャートを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値Bの範囲」という場合、当該範囲には数値Aおよび数値Bが含まれる。
【0011】
この明細書において、流体(例えば冷却ガス)が、点A、点B、および点Cの順で流れる場合、点Aの側を点Bの上流側と称する場合がある。また、点Cの側を点Bの下流側と称する場合がある。
【0012】
(基板処理方法)
本開示に係る基板処理方法は、基板処理装置を用いた方法である。当該基板処理方法を、以下では、「基板処理方法(M)」または「方法(M)」と称する場合がある。基板処理装置は、基板処理室と、基板が載置されるステージであって基板処理室内に配置されたステージと、基板をステージに固定する固定手段と、ステージと基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、基板処理室内を減圧するための減圧装置と、を含む。冷却ガス供給部は、上記空間につながっているガス流路と、ガス流路に供給される冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、ガス流路における冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、ガス流路における冷却ガスの圧力を開度によって調節するバルブと、バルブの下流側に配置された排気装置と、を含む。以下では、ガス流路における冷却ガスの圧力を、「圧力(P)」と称する場合がある。
【0013】
基板処理方法(M)は、取得工程(i)、算出工程(ii)、閾値変更工程(iii)、および基板処理工程(iv)をこの順に含む。取得工程(i)は、基板がステージに固定され、且つ、上記流量を所定の流量とした状態で、圧力(P)が所定の圧力となるときのバルブの開度を取得する工程である。算出工程(ii)は、取得工程(i)で取得された開度を基準値と比較することによって、基準値に対する開度の変化を示す値を算出する工程である。当該変化を示す値を、以下では「変化量」と称する場合がある。閾値変更工程(iii)は、基板の処理中に基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されているバルブの開度の第1の閾値を、上記変化量に基づいて第2の閾値に変更する工程である。基板処理工程(iv)は、冷却ガス供給部によって供給された冷却ガスで基板を冷却しながら基板を処理する工程である。方法(M)では、基板処理工程(iv)において、基板の冷却が正常に行われているか否かが、バルブの開度(判定時のバルブの開度、すなわち工程(iv)におけるバルブの開度)と第2の閾値とに基づいて判定される。
【0014】
バルブの開度は、バルブがどれだけガスを透過させるかを示す指標であり、例えば百分率(%)で表される。バルブの開度は、例えば、開度の値(または開度に対応する値)を出力可能な市販のバルブ(バルブ装置)を用いることによって取得(測定)することができる。バルブの開度の取得値には、バルブの開度としてバルブ(バルブ装置)から出力される値を用いてもよい。
【0015】
ステージは、基板とステージとの間に、冷却ガスを保持するための空間(冷却空間)が形成されるように構成されている。例えば、ステージは、基板を支持するための環状の凸部を有してもよい。あるいは、ステージは、その表面に、冷却ガスが供給される溝部を有してもよい。固定手段によって基板がステージに固定された際に、ある程度の気密性が保たれるようにステージおよび固定手段が構成される。
【0016】
当該冷却空間には、ガス流路(例えばガス配管)がつながっている。冷却ガスは、ガス供給源(例えばガスボンベ)から、ガス流路を通って冷却空間に供給される。このとき、流量コントローラによって、供給される冷却ガスの流量がコントロールされる。ガス流路は、排気装置に接続されており、排気装置とバルブとによって、ガス流路における圧力(P)が調整される。冷却ガスの圧力(P)を測定するための圧力計は、例えば、冷却空間と、流量コントローラと、排気装置との間のガス流路に配置される。
【0017】
冷却ガスは、基板ステージと基板との間で熱を伝導する。これによって、基板が効率よく冷却される。冷却ガスの種類に特に限定はなく、任意のガスを用いることができる。冷却効率の観点から、冷却ガスは、原子番号が小さい原子で構成されたガスや、分子量が小さいガスを用いることが好ましい。冷却ガスの例には、ヘリウムガスが含まれる。
【0018】
基板処理時の基板処理室内は、通常、冷却空間よりも低い圧力に維持される。そのため、基板の固定が適切になされていないと、ステージと基板との間から冷却ガスが基板処理室内にリークする。冷却ガスのリークが過剰となると、基板処理が適切に行われなくなるため、不良品となる基板が製造される場合がある。あるいは、他の理由で圧力(P)が不適切な値となって冷却が適切に行われなくなる場合がある。そのため、冷却ガスによる冷却が適切に行われているかどうか(例えば、冷却ガスのリークが過剰となっていないかどうか)の判定を早期に行うことが必要になる。そのためには、バルブの開度に所定の閾値を設けて、バルブの開度が所定の閾値をはずれたときには基板の冷却が正常に行われていないと判定することが好ましい。
【0019】
基板処理を長期間行うと、装置の状態の変化(例えば、減圧装置における排気系統の状態の変化)などから、ガス流路に冷却ガスを設定流量で供給して所定の圧力(P)になるときのバルブの開度が変化している場合がある。バルブの開度と圧力(P)との関係が変化すると、基板の冷却のエラーを検知するために設定している閾値(バルブの開度の閾値)が、適切な閾値からずれる場合がある。基準値に対する開度の変化量に基づいて閾値を変更(校正)することによって、適切な閾値に基づくエラー判定が可能となる。
【0020】
基板処理は、後述するように、プラズマ処理であってもよい。他の基板処理の例には、減圧された状態で基板を処理する基板処理が含まれ、例えば、蒸着やスパッタリングが含まれる。
【0021】
処理される基板に特に限定はない。基板の例には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、セラミクス基板などが含まれる。半導体基板の例には、シリコン基板、III-V族化合物半導体基板、その他の半導体からなる基板が含まれる。なお、これらの基板は、複数の材料で構成されてもよい。例えば、半導体基板は、絶縁部や金属部を含んでもよい。半導体基板は、絶縁部や金属部を含む素子領域を有してもよい。
【0022】
基板処理装置の構成は、実施される基板処理に応じて選択すればよい。例えば、基板処理装置の構成には、プラズマ処理装置などの真空装置に用いられている構成を必要に応じて適用してもよい。基板をステージに固定する固定手段の例には、静電チャック(Electrostatic Chuck)、機械的な固定具(例えばメカニカルクランプ)などが含まれる。減圧装置は、基板処理室内を大気圧よりも低い気圧に減圧する装置である。減圧装置は、例えば真空ポンプを含み、基板処理室内の圧力を調節するための圧力調整バルブなどを含んでもよい。
【0023】
基板処理装置は、冷却層を含んでもよい。冷却層は、基板ステージに配置される。冷却層の一例は、熱伝導性が高い材料(例えば金属材料)で形成されており、内部に冷媒流路を有する。この場合、基板処理装置は、冷媒を冷却して循環させる冷媒循環装置と、冷媒とをさらに含む。冷媒循環装置によって、冷却した冷媒を冷媒流路において循環させることによって、冷却層を冷却できる。冷却層を冷却することによって基板ステージを冷却できる。基板ステージを冷却することによって、基板を効率よく冷却できる。冷却層を用いることによって、基板をさらに効率的に冷却できる。冷媒に特に限定はなく、公知の冷媒(例えば純水やフッ素溶液)を用いてもよい。なお、冷却層は基板ステージに配置される代わりに、基板ステージに隣接して配置されていてもよい。
【0024】
基板処理装置は、基板処理の種類に応じて、基板処理に必要な機器をさらに含む。例えば、基板処理がプラズマ処理である場合、基板処理装置は、プラズマ処理に必要な機器を含む。例えば、基板処理装置は、基板処理室内にプラズマ処理用のガスを供給するためのガス供給部を含む。さらに、基板処理装置は、プラズマを生成するための電極および当該電極に高周波電力を印加するための電源を含む。基板処理装置は、バイアス電圧を印加するための電極および当該電極に電力を印加するための電源を含んでもよい。
【0025】
取得工程(i)では、基板がステージに固定され、且つ、冷却ガスの流量を所定の流量とした状態で、圧力(P)が所定の圧力となるときのバルブの開度が取得される。これによって、そのときの装置の状態における、圧力(P)とバルブの開度との関係についてのデータが取得される。上記の所定の流量および所定の圧力は、例えば、ユーザによって予め設定されてもよい。適正に比較をするために、取得工程(i)における圧力(P)に関する条件(冷却ガスの所定の流量、圧力(P)の所定の圧力、および、排気装置の排気条件)は、過去の取得工程(i)の条件と同じとする。すなわち、取得工程(i)では、排気装置も所定の運転条件で運転される。ただし、運転条件が同じであっても、排気系統のつまりなどによって排気装置の排気能力が変化する場合があり、それが、開度の変化量に影響を与える場合がある。
【0026】
算出工程(ii)では、取得工程(i)で取得された開度を基準値と比較することによって、基準値に対する開度の変化量が算出される。基準値(バルブの開度の基準値)は、予め設定されている。基準値は、ユーザが設定してもよいし、同じ条件で過去に取得されたバルブの開度を基準値としてもよい。
【0027】
基板処理方法(M)では、基板の処理中に基板の冷却が正常に行われているか否かを判定するための閾値(バルブの開度の第1の閾値)が予め設定されている。第1の閾値は、生産用レシピデータに含まれる。生産用レシピデータの詳細は後述する。第1の閾値は、バルブ開度の下限値および/または上限値であってもよい。典型的には、バルブ開度は基板とステージの間からの冷却ガスの漏れによって変化し、冷却ガスの漏れ量が大きくなるとバルブ開度は小さくなる。そのため、通常、第1の閾値として、少なくとも下限値が設定される。閾値変更工程(iii)では、算出工程(ii)で算出された変化量に基づいて、第1の閾値を第2の閾値に変更する。変更するための式は、条件に応じて選択すればよい。そのような式の例については実施形態1で説明する。
【0028】
基板処理工程(iv)では、冷却ガス供給部によって供給された冷却ガスで基板を冷却しながら基板を処理する。基板処理工程(iv)では、基板の冷却が正常に行われているか否かが、バルブの開度と第2の閾値とに基づいて判定される。基板の冷却が正常に行われない原因の一つは、ステージに基板が正常に固定されていないことである。基板がステージに正常に固定されていない場合、減圧されている基板処理室内に冷却ガスが流れる。その結果、正常な冷却ができず、基板処理が正常に行われなくなる場合がある。また、基板処理室内に、基板処理用のガスではない冷却ガスが流れることによって、基板処理に影響が生じる場合もある。
【0029】
基板の冷却が正常に行われていないと判定された場合には、例えば、基板の処理を停止して、基板の固定の状態を修正し、再度基板の処理を行ってもよい。あるいは、基板の処理を停止して基板を基板処理室から排出し、別の基板の処理を行ってもよい。
【0030】
基板処理方法(M)は、基準値を決定するための工程(基準値決定工程)をさらに含んでもよい。基準値決定工程では、例えば、基準値を決定するための条件(例えば、取得工程(i)のレシピ)で取得されたバルブ開度を基準値としてもよい。あるいは、基準値は、過去の取得工程(i)において取得された開度に基づいて設定されてもよい。例えば、最初の取得工程(i)で取得された開度を次回の取得工程(i)における基準値としてもよい。その場合、次回以降の取得工程(i)で取得された開度で、基準値を順次更新してもよい。あるいは、過去の複数回の取得工程(i)で取得された開度の平均値を基準値としてもよい。あるいは、過去の一定期間の間に行われた取得工程(i)で取得された開度の平均値を基準値としてもよい。
【0031】
方法(M)では、基板処理工程(iv)において、基板がプラズマで処理されてもよい。プラズマ処理の例には、プラズマエッチング、プラズマアッシング、成膜(プラズマCVDなど)、プラズマを用いた基板表面の改質、プラズマを用いた基板表面のクリーニングなどが含まれる。プラズマエッチングの例には、基板を切断するプラズマダイシングが含まれる。これらの基板処理の条件に特に限定はなく、公知の条件で実施してもよい。プラズマ処理を行う場合、基板処理室(チャンバ)内には、目的に応じたガスが導入され、当該ガスには、電極から電場および/または磁場が印加される。基板処理がプラズマエッチングである場合、基板処理室内には、プラズマエッチング用のガスが導入される。例えば、シリコン層またはシリコン基板をプラズマエッチングする場合には、フッ素含有ガスなどを用いてもよい。フッ素含有ガスの例には、CF、CHF、XeF、XeF、フッ化硫黄ガス(例えばSF)などが含まれる。
【0032】
上記バルブはピエゾバルブであってもよいし、他のバルブであってもよい。ピエゾバルブ以外のバルブの例には、真空装置の圧力調整に用いられるバルブが含まれる。そのようなバルブの例には、例えば、バタフライバルブが含まれる。
【0033】
基板処理室内を減圧するための減圧装置の少なくとも一部が、バルブの下流側に配置された排気装置として用いられてもよい。この場合、基板処理装置は、排気装置および減圧装置の両方として機能する装置を含む。この場合、減圧装置のすべてが、冷却ガスの排気装置として用いられてもよい。あるいは、減圧装置の一部が、冷却ガスの排気装置として用いられてもよい。例えば、減圧装置が、真空ポンプと真空ポンプの下流側に配置された低真空ポンプとを含む場合、その間に、冷却ガスの流路(バルブの下流側の流路)が接続されてもよい。この場合、低真空ポンプがガス流路の排気装置として機能する。低真空ポンプは、上流側の真空ポンプ(高真空ポンプ)と比較して、高圧の領域の減圧に用いられるポンプ(例えば拡散ポンプ)である。
【0034】
基板処理工程(iv)は、処理条件が異なる複数の処理ステップを含んでもよい。複数の処理ステップのそれぞれの処理条件ごとに第1の閾値が設定されていてもよい。閾値変更工程(iii)において、処理ステップごとの第1の閾値が、上記変化を示す値(変化量)に基づいて第2の閾値に変更されてもよい。
【0035】
通常、方法(M)では、取得工程(i)から基板処理工程(iv)までの工程を含む工程群を複数回行うことによって複数枚の基板が処理される。1つの工程群は、通常、取得工程(i)、算出工程(ii)、閾値変更工程(iii)、および基板処理工程(iv)をこの順に含む。
【0036】
複数の工程群のそれぞれは、閾値変更工程(iii)の前に、閾値変更工程(iii)を行う必要の有無に関する更新要否情報を取得する工程をさらに含んでもよい。そして、複数の工程群のそれぞれにおいて、閾値変更工程(iii)を行う必要があるという更新要否情報が取得された場合に、閾値変更工程を行ってもよい。更新要否情報は、装置のユーザによって入力される。この構成によれば、閾値の変更が必要であるとユーザが判断したときだけ、取得工程(i)~閾値変更工程(iii)を行えばよい。そのため、この構成によれば、基板処理に要する時間を短縮することが可能である。
【0037】
製造方法(M)は、2回目以降の工程群において、前回の工程群の取得工程(i)において取得された開度を用いて取得工程(i)が正しく行われているかを判定する判定工程をさらに含んでもよい。例えば、判定工程では、前回の工程群の取得工程(i)において取得された開度と、今回の工程群の取得工程(i)において取得された開度とを用いて、今回の取得工程(i)が正しく行われているかを判定してもよい。
【0038】
(基板処理装置)
本開示に係る装置は、基板を処理する装置である。当該装置を、以下では、「基板処理装置(D)」または「装置(D)」と称する場合がある。装置(D)は、上述した基板処理方法(M)に用いることができる。方法(M)について説明した事項、および、方法(M)に用いられる基板処理装置について説明した事項は、装置(D)に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。装置(D)について説明した事項は、方法(M)およびそれに用いられる基板処理装置に適用できる。
【0039】
基板処理装置(D)は、基板処理室と、基板が載置されるステージであって基板処理室内に配置されたステージと、基板をステージに固定する固定手段と、ステージと基板との間の空間に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給部と、基板処理室内を減圧するための減圧装置と、固定手段および冷却ガス供給部を制御する制御部と、を含む。冷却ガス供給部は、上記空間につながっているガス流路と、ガス流路に供給される冷却ガスの流量を制御する流量コントローラと、ガス流路における冷却ガスの圧力を測定する圧力計と、ガス流路における冷却ガスの圧力を開度によって調節するバルブと、バルブの下流側に配置された排気装置と、を含む。
【0040】
制御部以外の構成は、上述したため、重複する説明を省略する。制御部は、取得工程(i)、算出工程(ii)、閾値変更工程(iii)、および基板処理工程(iv)をこの順に実行する。制御部は、基板処理工程において、基板の冷却が正常に行われているか否かを、バルブの開度と第2の閾値とに基づいて判定する。取得工程(i)、算出工程(ii)、閾値変更工程(iii)、および基板処理工程(iv)は、基板処理方法(M)に関して説明した工程と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0041】
制御部は、演算処理装置と記憶装置とを含む。演算処理装置および記憶装置には、公知の制御部に利用されているものを利用することが可能である。ただし、演算処理装置で実行される処理(記憶装置に格納されているプログラム)は、公知の制御部とは異なる。
【0042】
制御部の記憶装置には、上記工程を実行するために必要なプログラムおよびデータが格納されている。記憶装置に格納されているデータは、例えばレシピデータを含む。制御部による上記工程の実行には、上記工程が行われるように制御部が、データの取得および/またはデータの出力を行うことや、上記工程が行われるように制御部が装置(D)に含まれる機器を制御すること、などが含まれる。
【0043】
例えば、取得工程(i)と基板処理工程(iv)とは、制御部がレシピデータにしたがって装置(D)に含まれる機器を制御することによって実行される。レシピデータは、生産用レシピデータと基準値作成用レシピデータなどを含む。生産用レシピデータは、或る基板種の基板を或る基板処理装置で処理する方法を記述したデータであり、処理する基板や処理内容に応じて準備される。そのため、様々な生産用レシピデータが存在する。生産用レシピデータは、処理される基板の種類および基板処理装置の機番が新たに指定されると、それらに応じてその都度作成されてもよい。基準値作成用レシピデータは、或る基板処理装置でバルブ開度を取得する方法を記述したデータである。基準値作成用レシピデータには、バルブ開度を取得する際の圧力とガス流量の情報が含まれている。
【0044】
1つの観点では、制御部は、基板処理モード(基板処理工程)での制御と、校正モードでの制御と、基準値作成モード(基準値決定工程)での制御を行うと考えることも可能である。生産用レシピデータは、基板処理するステップと開度を校正するステップにおける圧力と流量の情報を保持している。基板処理モードでは、生産用レシピデータの基板処理ステップにしたがって基板の処理が行われる。その際に、制御部は、冷却ガス供給部によって基板を冷却しながら、冷却ガス供給部による基板の冷却が正常に行われているか否かをバルブの開度と閾値とに基づいて判定しながら基板の処理を行う。校正モードでは、基板がステージに固定され、且つ、冷却ガスの流量を所定の流量とした状態で、生産用レシピデータの開度校正ステップにしたがって、圧力(P)が所定の圧力となるときのバルブの開度を取得し、その開度に基づいて閾値を校正する。
【0045】
上述したように、制御部は、基準値を決定するための工程を実行することによって基準値を決定してもよい。基板処理工程において、基板がプラズマで処理されてもよい。バルブはピエゾバルブであってもよい。上記減圧装置の少なくとも一部が上記排気装置として用いられてもよい。
【0046】
以下では、本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する方法および装置の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。また、以下で説明する方法および装置は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示の方法および装置に必須ではない構成要素は省略してもよい。
【0047】
(実施形態1)
実施形態1では、本開示に係る基板処理方法および基板処理装置の一例について説明する。実施形態1では、基板処理がプラズマ処理である場合について説明する。
【0048】
実施形態1の基板処理装置100を図1に示す。装置100は、チャンバ(基処理室)110、第1電極121、第1高周波電源122、第2高周波電源123、基板ステージ130、冷却ガス供給部150、冷媒循環装置161、減圧装置162、直流電源163、ガス流量制御部170、制御部180を含む。装置100は、図示しない他の機器を含んでもよい。例えば、装置100は、チャンバ110内の圧力を測定するための圧力計や、高周波電源に接続された整合回路などを含んでもよい。本開示の方法を実施できる限り、これらの機器および構成(配置を含む)を変更することが可能である。装置100に含まれる機器には、公知の機器を適用することが可能であるため、詳細な説明は省略する。ただし、本開示に特徴的な部分は、公知の機器とは異なる構成とすることができる。
【0049】
チャンバ110は、内部を減圧状態に保つことが可能なチャンバである。チャンバ110は、ガス導入口110a、ガス排気口110b、誘電体窓111を含む。誘電体窓111は、誘電体(例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、石英など)で形成されている。誘電体窓111に隣接して第1電極121が配置されている。第1電極121は、第1高周波電源122に接続されている。チャンバ110は、開閉機構(図示せず)をさらに含み、基板10の搬入および排出が可能である。
【0050】
ガス導入口110aには、ガス流量制御部170を介してガス源202(例えばガスボンベ)が接続されている。ガス流量制御部170は、ガス源202から供給されるガスの流量を制御する。流量が制御されたガスは、ガス導入口110aからチャンバ110内に供給される。ガス流量制御部170には、例えばマスフローコントローラ(MFC)を用いることができる。ガス源202は、チャンバ内でプラズマを生成させて基板10を処理するために必要なガス(GAS)の供給源である。なお、図1では、3種類のガスを用いる例を示すが、処理に応じて、ガスおよびその流量を制御する機器の数は変更される。
【0051】
ガス排気口110bは、減圧装置162に接続されている。減圧装置162によって、チャンバ110内が、大気圧よりも低い圧力に減圧される。具体的には、減圧装置162によって、チャンバ110内の圧力が、プラズマ処理に適した圧力に調整される。減圧装置162は、真空ポンプを含む。減圧装置162は、チャンバ110内の圧力を調整するためのバルブを含んでもよい。
【0052】
基板ステージ130上には、装置100で処理される基板10が配置される。基板ステージ130は、電極板131、絶縁層132、および絶縁層132内に配置されたESC電極(静電チャック電極)133を含む。電極板131は、第2高周波電源123に接続されており、バイアス電圧を印加するための電極として機能する。
【0053】
電極板131は、熱伝導性が高い材料(例えば金属、具体的にはアルミやアルマイト)で形成されている。電極板131の内部には、冷媒を流すための流路130hが形成されている。冷媒循環装置161は、流路130hで冷媒を循環させるとともに冷媒を冷却する機能を有する。これによって、基板ステージ130全体を効率良く冷却することができる。すなわち、電極板131は、冷却層として機能する。
【0054】
ESC電極133は、静電吸着によって基板10を基板ステージ130に固定するための電極である。ESC電極133は、直流電源163に接続されている。静電吸着が単極型の静電吸着である場合、直流電源163は、1つの直流電源を含めばよい。静電吸着の方式が双極型の静電吸着である場合、ESC電極133は一対の電極を含み、直流電源163は2つの直流電源を含む。2つの直流電源の一方は、一対の電極の一方に接続され、2つの直流電源の他方は、一対の電極の他方に接続される。なお、静電吸着ではなく、機械的に基板10を基板ステージ130に固定してもよい。その場合には、装置100は、ESC電極133および直流電源163の代わりに、固定具(クランプなど)と、固定具を移動させるための移動装置とを含む。
【0055】
基板ステージ130の一例の上面図を図2に模式的に示す。基板ステージ130は、環状の凸部130pを有する。環状の凸部130pは、基板10の外縁と同じかそれよりもわずかに小さい形状を有する。凸部130pの形状は、基板10の外縁の形状に応じた形状とすればよい。基板10は、凸部130p上に配置される。その結果、基板ステージ130と基板10との間には、空間S(冷却空間)が存在する。凸部130pの内側には、基板10を支持するための島状の凸部が形成されていてもよい。ESC電極133によって基板10と凸部130pとが密着することによって、空間Sは気密な状態となる。
【0056】
基板ステージ130のうち空間Sに面する部分には、冷却ガスが供給されるガス供給口151hが形成されている。すなわち、空間Sにはガス流路151がつながっている。図2は、ガス流路151が分岐した複数のガス流路151aが空間Sにつながっている一例を示す。
【0057】
冷却ガス供給部150は、ガス流路151、流量コントローラ152、圧力計153、バルブ154、および排気装置155を含む。ガス流路151は、冷却ガスが流れる流路であり、流量コントローラ152と、バルブ154と、空間Sとの間の流路を意味する。
【0058】
冷却ガスは、冷却ガス源(例えばガスボンベ)201から供給され、流量コントローラ152によって流量が制御される。流量コントローラ152を通過した冷却ガスは、ガス流路151を通って空間Sに供給される。圧力計153は、流量コントローラ152と、バルブ154と、空間Sとの間のガス流路151における冷却ガスの圧力を測定し、測定結果を制御部180に出力する。排気装置155は、バルブ154の下流側に配置され、ガス流路151内の冷却ガスをガス流路151の外部に排気する。
【0059】
バルブ154は、ピエゾバルブであってもよい。バルブ154は、その開度によって、ガス流路151における冷却ガスの圧力(P)を調節する。例えば、正常な運転状態においてバルブ154の開度を大きくすると、排気装置155によって排気される冷却ガスの量が多くなるため、圧力(P)は低下する。一方、正常な運転状態においてバルブ154の開度を小さくすると、排気される冷却ガスの量が少なくなるため、圧力(P)は上昇する。
【0060】
なお、上述したように、減圧装置162の少なくとも一部を排気装置として用いてもよい。その場合の装置100の一例の一部を図3に示す。図3の装置の減圧装置162は、ターボ分子ポンプなどの高真空ポンプ162aと、拡散ポンプなどの低真空ポンプ162bとを含む。バルブ154の下流側のガス流路は、高真空ポンプ162aと低真空ポンプ162bとの間の流路(排気系統)に接続されている。この構成では、低真空ポンプ162bが、ガス流路151の排気装置155として機能する。この場合、減圧装置162とは別に排気装置を設ける必要がないため、装置の構成を簡単にすることができる。
【0061】
制御部180は、制御が必要な機器に接続され、プラズマ処理に必要な制御を行う。図1では、制御部180と機器との接続の図示を省略している。制御部180は、例えば、第1高周波電源122、第2高周波電源123、冷却ガス供給部150(流量コントローラ152、圧力計153、バルブ154、排気装置155)、冷媒循環装置161、減圧装置162、直流電源(固定手段)163、およびガス流量制御部170に接続されてもよい。制御部180は、それらの機器との間で、信号の送受信を行い、機器の制御や測定データの受信を行ってもよい。
【0062】
以下では、装置100を用いたプラズマ処理の一例について説明する。まず、基板ステージ130上に基板10を載置する。次に、取得工程(i)を行う。具体的には、制御部180は、流量コントローラ152を制御して冷却ガスの流量を所定の流量とする。また、制御部180は、圧力(P)が所定の圧力P1よりも高ければバルブ154の開度を大きくし、圧力(P)が所定の圧力P1よりも低ければバルブ154の開度を小さくするようにバルブ154を制御する。バルブ154の開度の増減は、例えば、バルブ154に印加する電圧を変化させることによって行われる。
【0063】
取得工程(i)では、チャンバ110内も所定の圧力となるように、ガス導入口110aからのガスの導入と減圧装置162によるチャンバ110内の減圧とを行ってもよい。このとき、チャンバ110内の圧力は、通常、圧力(P)よりも低圧とする。また、ESC電極133によって、基板10は基板ステージ130に固定される。このとき、静電吸着のために基板10を帯電させる必要がある場合には、基板10を帯電させる処理(例えばプラズマによる帯電処理)が行われる。
【0064】
適正な判定を行うために、所定の圧力P1は、その後の基板処理時におけるガス流路151の冷却ガスの設定圧力Ptと大きくは異ならない値に設定することが好ましい。例えば、所定の圧力P1は、設定圧力Ptの最小値の0.5倍以上であってもよいし、所定の圧力P1は、設定圧力Ptの最大値の2倍以下であってもよい。なお、基板処理時における設定圧力Ptは、複数の圧力を含んでもよい。例えば、基板処理が、条件が異なる複数の処理を含む場合、その処理に応じて設定圧力Ptを変化させてもよい。
【0065】
上記のようにしてバルブ154を制御して、圧力(P)が一定となったと判断されたときのバルブ154の開度を、制御部180は取得してもよい。例えば、冷却ガスを所定の流量で流してバルブ154の開度の制御を開始してから所定の時間が経過したときを圧力(P)が一定となったときと判断してもよい。あるいは、圧力(P)の変動幅が所定値よりも小さくなったときを圧力(P)が一定となったときと判断してもよい。バルブ154は、その開度を制御部180に出力している。制御部180は、圧力(P)が所定の圧力となったと判断されたときのバルブ154の開度R1を取得する。例えば、開度R1を複数タイミングで測定して、開度R1の最小値あるいは開度R1の平均値を取得してもよい。
【0066】
取得工程(i)で取得された開度R1が、過去に同じ条件で取得された開度と比べて大きく値が異なる場合は、正しく取得が行われていない可能性があるため、エラーを報知してもよい。例えば、開度R1と、同じ条件で過去に取得された開度との差が許容値を越えている場合にはエラーを報知してもよい。許容値は、装置の状態に応じて適宜設定可能であり、例えば2~3%の範囲にあってもよい。
【0067】
なお、圧力(P)に応じたバルブ154の開度の制御は、バルブ154に付属した制御部(以下では、「制御部A」と称する場合がある)で行われてもよい。この場合、制御部180は、制御部Aに所定の圧力P1を出力する。圧力計153は、測定した圧力を制御部Aに出力する。制御部Aは、入力された圧力P1と測定された圧力とに基づいてバルブ154の開度を調節する。バルブ154は、開度の値を制御部180に出力する。このようにして、制御部180は、圧力(P)が一定となったと判断されたときのバルブ154の開度を取得する。この場合、制御部Aを、制御部180の一部とみなすことができる。
【0068】
次に、制御部180は、取得工程(i)で取得された開度R1を基準値R0と比較することによって、基準値R0に対する開度R1の変化を示す値(変化量C)を算出する(算出工程(ii))。基準値R0は、バルブ154の開度の基準値であり、制御部180の記憶装置に記憶されている。基準値R0には、例えば、過去において、開度R1の取得条件と同じ条件で制御を行ったときのバルブ154の開度を用いることができる。すなわち、基準値R0には、過去の取得工程(i)で取得された開度を用いることができる。
【0069】
算出工程(ii)における変化量Cは、開度R1(%)と基準値R0(%)との差であってもよいし、開度R1(%)と基準値R0(%)とから算出される他の値(例えば両者の比)であってもよい。
【0070】
次に、制御部180は、バルブ154の開度の第1の閾値T1(%)を、変化量Cに基づいて第2の閾値T2(%)に変更する(閾値変更工程(iii))。第1の閾値T1は、基板10の処理中に基板10の冷却が正常に行われているか否かを判定するために予め設定されている閾値である。最初の第1の閾値T1は、例えば、ユーザによって予め設定された値であり、制御部180の記憶装置に記憶されている。これにより、経年変化等に対して生産用レシピデータの内容(開度の第1の閾値T1)を変更することなく基板処理工程(iv)において正常に冷却されているか否かを判断することができる。
【0071】
変化量C(変化を示す値)が、開度R1と基準値R0との差である場合には、第1の閾値T1に当該差を足して第2の閾値T2としてもよい。その場合、T2(%)=T1+(R1-R0)となる。変化量Cが、開度R1と基準値R0との比である場合には、第1の閾値T1に当該比を乗じて第2の閾値T2としてもよい。T2(%)=T1×(R1/R0)となる。なお、これらは一例であり、第2の閾値T2を適切に変更できる他の式を用いてもよい。ここで設定された変化量は、次回の工程群(次回の工程(i)~工程(iv))の閾値変更工程(iii)において、変化量として用いることができる。
【0072】
次に、制御部180は、冷却ガス供給部150によって供給された冷却ガスで基板10を冷却しながら基板10を処理する基板処理工程(iv)を実行する。具体的には、制御部180は、予め設定された圧力(P)となるように、冷却ガス供給部150を制御する。このとき、バルブの開度が、バルブ154から制御部180に出力される。さらに、制御部180は、基板10の処理に必要な機器を制御する。例えば、制御部180は、プラズマ処理に必要なガスをガス源202から所定の流量でチャンバ110内に導入する。また、制御部180は減圧装置162を制御して、チャンバ110内を所定の圧力とする。さらに、制御部180は、第1高周波電源122(および必要に応じて第2高周波電源123)を制御することによってプラズマを生成させ、それによって基板10をプラズマ処理する。
【0073】
工程(iv)におけるチャンバ110内の圧力は処理によって異なるが、例えば0.3Pa~12Paの範囲にあってもよい。工程(iv)におけるガス流路151内の圧力は、例えば、400Pa~3000Paの範囲にあってもよい。
【0074】
基板処理工程(iv)において、制御部180は、基板10の冷却が正常に行われているか否かを、バルブ154の開度と第2の閾値T2とに基づいて判定する。例えば、バルブ154から出力されるバルブ154の開度が、第2の閾値T2で規定される範囲(正常だと判定される範囲)をはずれたときには、制御部180は冷却が正常に行われていないと判定する。例えば、第2の閾値T2が開度の下限値である場合、バルブ154の開度が第2の閾値T2を下回ったときには、制御部180は冷却が正常に行われていないと判定する。冷却が正常に行われていないと判定された場合、制御部180は、基板10の処理を中止することができる。基板10の処理を中止した後は、装置100の状態を点検して基板10をステージ130に載置し直し、当該基板10の処理を再度行ってもよい。あるいは、基板10を入れ替えて別の基板10の処理を行ってもよい。これによって、基板10の処理の不良を抑制できる。また、不適切な基板処理の時間を低減できる。
【0075】
以上のようにして、基板処理を行うことができる。装置100では、取得工程(i)から基板処理工程(iv)までの工程を含む工程群を複数回行うことによって複数枚の基板10を処理できる。この場合、上述したように、ユーザの要望があるときだけ閾値変更工程を行ってもよい。その場合、制御部180は、複数の工程群のそれぞれにおいて、閾値変更工程(iii)の前に、閾値変更工程(iii)を行う必要の有無に関する更新要否情報を取得する。そして、複数の工程群のそれぞれにおいて、閾値変更工程(iii)を行う必要があるという更新要否情報が取得された場合に、制御部180は閾値変更工程(iii)を行う。また、閾値変更工程(iii)を行わない場合であっても、取得工程(i)は行っていてもよい。さらに、算出工程(ii)を行っていてもよい。取得工程(i)における開度と、算出工程(ii)における変化量は記憶され、装置100の経年変化の影響を推察することができる。
【0076】
実施形態1の方法の一例を表1に示す。なお、理解を容易にするため、説明に必要がない欄の数値や、該当する数値がない欄の数値は省略している。
【0077】
【表1】
【0078】
上記の製造方法は、基準値決定工程と、3つの工程群とを含む。ステップ1は準備ステップに対応し、ステップ2は取得工程に対応し、ステップ3およびステップ4は、基板処理工程に対応する。それぞれのステップの条件は、予めユーザが設定したプロセスレシピで規定されている。工程群1における基板の処理が終了すると、次の工程群2で新たな基板が処理される。このようにして、複数枚の基板が処理される。なお、準備ステップであるステップ1は、所定の条件でガスをガス流路に流すステップを含む。
【0079】
表1に示す製造方法では、最初に、基板がステージに固定された状態で、基準値決定工程が行われる。基準値決定工程では、プロセスレシピで決められたガス流量および圧力(P)におけるバルブ開度が取得される。基準値決定工程のステップ2で取得されたバルブ開度B(表1では57)が、以降の工程群1~3におけるバルブ開度の基準値Aとなる。次の工程群1のステップ2でも、プロセスレシピで決められたガス流量および圧力(P)におけるバルブ開度B(表1では59)が取得される。そして、工程群1において、変化量C(表1では+2)が算出される。この変化量Cを用いて、予め設定されているステップ3およびステップ4の第1の閾値T1を第2の閾値T2に変更する。この一例では、第1の閾値T1に変化量Cを足すことによって第2の閾値T2を求めている。次のステップ3および4では、基板処理が行われる。基板処理の際に、制御部は、バルブ開度Bが第2の閾値T2を下回らないかをモニタすることによって、基板の冷却が正常に行われているか否かを判定する。基板処理が終わると、処理された基板はチャンバから搬出される。次に、新たな基板がチャンバ内に搬入され、工程群2が行われる。その後は、工程群1と同様の処理が行われる。このようにして、複数枚の基板の処理が行われる。
【0080】
各工程群において、前回のステップ2(取得工程)において取得された開度Bを用いて今回の取得工程が正しく行われているかを判定する判定工程を行ってもよい。表1に示す例では、各工程群においてステップ2におけるバルブ開度の下限値Zが設定される。そして、取得工程で取得されるバルブ開度Bが下限値Zを下回った場合には、取得工程が正しく行われていないと判定され、エラーが報知される。表1に示す一例の場合、下限値Zは、前回のステップ2で取得されたバルブ開度Bから許容範囲を示す値α(表1の例では2)を引いた値となっている。この構成によれば、取得工程が正しく行われているか否かを判定できる。取得工程が正しく行われていないと判定された場合には、その後の基板処理を中止してもよい。
【0081】
表1の方法の一部を模式的に示すフローチャートを図4に示す。図4のフローチャートは、工程群2以降の1つの工程群を示している。最初に、取得工程(i)によって、バルブの開度Bを取得する(ステップS101)。次に、取得された開度Bが、設定された下限値Z以上であるかどうかが判定される(ステップS102)。開度Bが設定された下限値Z以上であれば次のステップS103に進み、そうでなければエラーを報知する(ステップS106)。ステップS103では、算出工程(ii)によって変化量Cを算出する。次に、閾値変更工程(iii)によって閾値を変更する(ステップS104)。次に、基板処理工程(iv)で基板を処理する(ステップS105)。基板処理工程(iv)において、閾値変更工程(iii)で変更された閾値と、基板処理工程(iv)の最中に測定される開度とを用いて、基板の冷却が正常に行われているか否かが判定される。基板の冷却が正常に行われていないと判断された場合には、エラーが報知され、必要に応じて基板の処理が中止される。エラーが報知されない場合には、基板の処理が終了するまで基板処理工程(iv)が行われる。このようにして、1つの工程群が実行される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
10 :基板
100 :基板処理装置
110 :チャンバ(基板処理室)
130 :基板ステージ(ステージ)
130h :流路
150 :冷却ガス供給部
151 :ガス流路
152 :流量コントローラ
153 :圧力計
154 :バルブ
155 :排気装置
162 :減圧装置
180 :制御部
S :空間
図1
図2
図3
図4