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特許7531109金属張積層板、配線板、及び樹脂付き金属箔
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】金属張積層板、配線板、及び樹脂付き金属箔
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240802BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/09 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020550404
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038311
(87)【国際公開番号】W WO2020071288
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018190283
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】有沢 達也
(72)【発明者】
【氏名】山口 峻
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文則
(72)【発明者】
【氏名】入船 晃
(72)【発明者】
【氏名】西野 充修
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122249(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033784(WO,A1)
【文献】特開2007-030326(JP,A)
【文献】特開2011-014647(JP,A)
【文献】特開2006-147662(JP,A)
【文献】特開2017-122274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H05K 1/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、
前記金属箔は、
ニッケルを含む防錆層を備え、
前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~2.5原子%であり、かつ、
前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~4.0原子%である金属箔であり、
前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される窒素元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、3.0~7.0原子%であることを特徴とする金属張積層板。
【請求項2】
前記第1のニッケル元素量と前記第2のニッケル元素量との算術平均値が、0.1~3.0原子%である請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項3】
前記金属箔は、クロメート処理及びシランカップリング処理の少なくともいずれか一方で処理されている請求項1又は請求項2に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記金属箔は、銅箔である請求項1~のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項5】
前記絶縁層と接する側の表面の表面粗さが、十点平均粗さで2μm以下である請求項1~のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項6】
配線間距離の最小値が150μm以下である配線板を製造するために用いられる請求項1~のいずれか1項に記載の金属張積層板。
【請求項7】
絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する配線とを備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、
前記配線は、
ニッケルを含む防錆層を備え、
前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~2.5原子%であり、かつ、
前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~4.0原子%である配線であり、
前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される窒素元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、3.0~7.0原子%であることを特徴とする配線板。
【請求項8】
前記絶縁層を複数層有し、
前記配線が、前記絶縁層と前記絶縁層との間に配置される請求項に記載の配線板。
【請求項9】
樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、
前記樹脂層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、
前記金属箔は、
ニッケルを含む防錆層を備え、
前記樹脂層と接触する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~2.5原子%であり、かつ、
前記樹脂層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、0.1~4.0原子%である金属箔であり、
前記樹脂層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される窒素元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、3.0~7.0原子%であることを特徴とする樹脂付き金属箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板、配線板、樹脂付き金属箔、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が急速に進展している。また、各種電子機器に用いられる配線板としては、例えば、車載用途におけるミリ波レーダ基板等の、高周波対応の配線板であることが求められる。
【0003】
配線板に備えられる配線に信号を伝送すると、配線を形成する導体に起因する伝送損失、及び配線周辺の誘導体に起因する伝送損失等が発生する。これらの伝送損失は、配線板に備えられる配線に高周波信号を伝送する場合に、特に発生しやすいことが知られている。このことから、配線板には、信号の伝送速度を高めるために、信号伝送時の損失を低減させることが求められる。高周波対応の配線板には、特にそれが求められる。この要求を満たすためには、配線板を構成する絶縁層を製造するための基板材料として、誘電率及び誘電正接が低い材料を用いることが考えられる。このような基板材料としては、ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物等が挙げられる。
【0004】
このようなポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物を基板材料として用いて得られた金属張積層板としては、例えば、特許文献1に記載の金属張積層板が挙げられる。特許文献1には、ポリフェニレンエーテル化合物を含み、硬化した絶縁層と、前記絶縁層と接合した金属層と、前記絶縁層と前記金属層との間に介在するシラン化合物を含む中間層とを備え、前記金属層は、前記中間層を介して前記絶縁層と接合した接合面を有し、前記接合面の十点平均粗さRzが0.5μm以上4μm以下である金属張積層板が記載されている。特許文献1によれば、信号伝送時の損失を低減させたプリント配線板を製造できる金属張積層板が得られる旨が開示されている。
【0005】
プリント配線板等の配線板には、上述したように、高周波に対応するためにも、信号の伝送速度をより高めることが求められている。また、各種電子機器において用いられる配線板には、隣接する配線間に、イオンマイグレーション等による短絡が起こりにくくするために、絶縁信頼性が高いことが求められる。
【0006】
一方で、配線板は、電気回路の高密度化に伴い、配線幅の細線化や配線間隔の狭化が進んでいる。配線間隔が狭くなるほど、隣接する配線間に、イオンマイグレーション等による短絡が起こりやすくなる。このような電気回路の高密度化に対応するためにも、配線板には、絶縁信頼性がより高いことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-28885号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板、樹脂付き金属箔、及び樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の一局面は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、前記金属箔は、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔である金属張積層板である。
【0010】
また、本発明の他の一局面は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する配線とを備え、前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、前記配線は、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である配線である配線板である。
【0011】
また、本発明の他の一局面は、樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、前記樹脂層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、前記金属箔は、前記樹脂層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記樹脂層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔である樹脂付き金属箔である。
【0012】
また、本発明の他の一局面は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備える金属張積層板に備えられる前記絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテル化合物を含有し、前記金属箔が、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔である樹脂組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る金属張積層板の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るプリプレグの一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る配線板の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る配線板の他の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る樹脂付き金属箔の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、実施例において、耐熱信頼性を測定する際に用いる基板の配線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
金属張積層板に備えられる金属箔を部分的に除去することにより配線形成されて得られた配線板において、その配線形成により露出した絶縁層の表面上に、他の絶縁層が形成されていても、これらの絶縁層間には、金属箔に由来の導体が存在しないと考えられていた。このことから、隣接する配線間に起こる短絡の発生には、配線板を得るために用いられた金属張積層板に備えられる金属箔の種類等はあまり影響されないと考えられていた。
【0015】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、金属張積層板に備えられる金属箔によって、隣接する配線間に起こるイオンマイグレーションの発生しやすさが異なることを見出した。配線形成により露出した絶縁層の表面上に、金属箔に由来の導体が全く存在しないと、隣接する配線間に起こるイオンマイグレーションを充分に抑制でき、絶縁信頼性が充分に高まると考えられる。このことから、金属張積層板における金属箔をエッチングにより除去した際、露出した絶縁層の表面上に、金属箔に由来の金属成分が極わずか残存しうると推察した。その際、残存しうる金属成分としては、金属箔の、平均粗さが大きい面、いわゆるM面側に、防錆剤として使用されるニッケル(Ni)成分が多いと考え、その影響が大きいと考え、Ni元素に着目した。そして、本発明者等は、種々検討した結果、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に接する金属箔として、前記絶縁層と接する側の表面(接触面)と、その接触面からSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタした位置(前記接触面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面)とにおけるニッケル元素量がともに少ない金属箔を用いると、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できることを見出した。このことから、以下のような本発明を相当するに至った。
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0017】
[金属張積層板]
本発明の実施形態に係る金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備える。この金属張積層板11は、図1に示すように、絶縁層12と、その両面に接触して存在する金属箔13とを備えるもの等が挙げられる。また、前記金属張積層板は、前記絶縁層の一方の表面にのみ、金属箔が接触して備えられるものであってもよい。なお、図1は、本実施形態に係る金属張積層板11の構成を示す概略断面図である。
【0018】
前記金属張積層板11は、前記絶縁層12が、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含む。また、前記金属箔13は、前記絶縁層12と接する側の表面(接触面)15における、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により測定される第1のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記接触面15をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、XPSにより測定される第2のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔である。
【0019】
このような金属張積層板は、まず、前記絶縁層が、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含むので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記金属張積層板から製造された配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。
【0020】
金属張積層板から製造された配線板において、前記絶縁層に接する金属箔として、前記金属箔を用いると、前記金属張積層板から製造された配線板における、隣接する配線間に残存するニッケル元素量、すなわち、ニッケル元素を含む化合物の量が少ないと考えられる。このような配線間に、他の絶縁層を形成すると、この配線間に存在する絶縁層と、新たに形成した他の絶縁層との間で、好適に接着されると考えられる。このように、配線間に存在する絶縁層と、他の絶縁層とが好適に接着されると、配線間に存在する絶縁層上に、配線と配線との間を、他の絶縁層で好適に充填できると考えられる。このように、配線と配線との間を、絶縁層で好適に充填すると、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できると考えられる。このことから、前記金属箔を用いることで、金属張積層板から製造された配線板の絶縁信頼性を高めることができると考えられる。
【0021】
また、配線間距離が小さいと、絶縁信頼性が低下する傾向があるが、このような金属張積層板を用いると、配線間距離が小さくても、配線と配線との間を、絶縁層で好適に充填することができ、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できる。
【0022】
以上のことから、前記金属張積層板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができると考えられる。
【0023】
(樹脂組成物)
本実施形態において用いられるポリフェニレンエーテル化合物は、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有していれば、特に限定されない。前記ポリフェニレンエーテル化合物は、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物であってもよいし、未変性のポリフェニレンエーテル化合物であってもよい。前記ポリフェニレンエーテル化合物としては、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物を含むことが好ましく、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物であることがより好ましい。
【0024】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されたポリフェニレンエーテルであれば、特に限定されない。
【0025】
前記炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、特に限定されない。前記置換基としては、例えば、下記式(1)又は下記式(2)で表される置換基等が挙げられる。
【0026】
【化1】
式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を示し、Rは、炭素数1~10のアルキレン基又は直接結合を示す。
【0027】
【化2】
式(2)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0028】
前記式(1)で表される置換基としては、例えば、p-エテニルベンジル基及びm-エテニルベンジル基等のビニルベンジル基(エテニルベンジル基)等が挙げられる。
【0029】
前記式(2)で表される置換基としては、例えば、アクリレート基及びメタクリレート基等が挙げられる。
【0030】
前記変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有しており、例えば、下記式(3)で表される繰り返し単位を分子中に有していることが好ましい。
【0031】
【化3】
式(3)において、mは、1~50を示す。また、R~Rは、それぞれ独立している。すなわち、R~Rは、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R~Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0032】
~Rにおいて、挙げられた各官能基としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0033】
アルキル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0034】
また、アルケニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
【0035】
また、アルキニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0036】
また、アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0037】
また、アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
【0038】
また、アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0039】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。具体的には、500~5000であることが好ましく、800~4000であることがより好ましく、1000~3000であることがさらに好ましい。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物が、式(3)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、mは、変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には、mは、1~50であることが好ましい。
【0040】
変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、ポリフェニレンエーテルの有する優れた低誘電特性を有し、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものとなる。このことは、以下のことによると考えられる。通常のポリフェニレンエーテルでは、その重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。この点、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、末端に不飽和二重結合を有するので、硬化物の耐熱性が充分に高いものが得られると考えられる。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、成形性にも優れると考えられる。よって、このような変性ポリフェニレンエーテル化合物は、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものが得られると考えられる。
【0041】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物における、変性ポリフェニレンエーテル1分子当たりの、分子末端に有する、前記置換基の平均個数(末端官能基数)は、特に限定されない。具体的には、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることがさらに好ましい。この末端官能基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。すなわち、このような変性ポリフェニレンエーテルを用いると、流動性不足等により、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高い配線板が得られにくいという成形性の問題が生じるおそれがあった。
【0042】
なお、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端官能基数は、変性ポリフェニレンエーテル化合物1モル中に存在する全ての変性ポリフェニレンエーテル化合物の1分子あたりの、前記置換基の平均値を表した数値等が挙げられる。この末端官能基数は、例えば、得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数を測定して、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって、測定することができる。この変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分が、末端官能基数である。そして、変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数の測定方法は、変性ポリフェニレンエーテル化合物の溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加し、その混合溶液のUV吸光度を測定することによって、求めることができる。
【0043】
また、本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度は、特に限定されない。具体的には、0.03~0.12dl/gであることが好ましく、0.04~0.11dl/gであることがより好ましく、0.06~0.095dl/gであることがさらに好ましい。この固有粘度が低すぎると、分子量が低い傾向があり、低誘電率や低誘電正接等の低誘電性が得られにくい傾向がある。また、固有粘度が高すぎると、粘度が高く、充分な流動性が得られず、硬化物の成形性が低下する傾向がある。よって、変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
【0044】
なお、ここでの固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値等である。この粘度計としては、例えば、Schott社製のAVS500 Visco System等が挙げられる。
【0045】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、下記式(4)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び下記式(5)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。また、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、これらの変性ポリフェニレンエーテル化合物を単独で用いてもよいし、この2種の変性ポリフェニレンエーテル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
【化4】
【化5】
式(4)及び式(5)中、R~R15並びにR16~R23は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。X及びXは、それぞれ独立して、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。A及びBは、それぞれ、下記式(6)及び下記式(7)で表される繰り返し単位を示す。また、式(5)中、Yは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素を示す。
【0047】
【化6】
【化7】
式(6)及び式(7)中、s及びtは、それぞれ、0~20を示す。R24~R27並びにR28~R31は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。
【0048】
前記式(4)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、及び前記式(5)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物は、上記構成を満たす化合物であれば特に限定されない。具体的には、前記式(4)及び前記式(5)において、R~R15並びにR16~R23は、上述したように、それぞれ独立している。すなわち、R~R15並びにR16~R23は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R~R15並びにR16~R23は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0049】
また、式(6)及び式(7)中、s及びtは、それぞれ、上述したように、0~20を示すことが好ましい。また、s及びtは、sとtとの合計値が、1~30となる数値を示すことが好ましい。よって、sは、0~20を示し、tは、0~20を示し、sとtとの合計は、1~30を示すことがより好ましい。また、R24~R27並びにR28~R31は、それぞれ独立している。すなわち、R24~R27並びにR28~R31は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R24~R27並びにR28~R31は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0050】
~R31は、上記式(3)におけるR~Rと同じである。
【0051】
前記式(5)中において、Yは、上述したように、炭素数20以下の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素である。Yとしては、例えば、下記式(8)で表される基等が挙げられる。
【0052】
【化8】
前記式(8)中、R32及びR33は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。また、式(8)で表される基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、及びジメチルメチレン基等が挙げられ、この中でも、ジメチルメチレン基が好ましい。
【0053】
前記式(4)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(9)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0054】
【化9】
前記式(5)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(10)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物、下記式(11)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0055】
【化10】
【化11】
上記式(9)~式(11)において、s及びtは、上記式(6)及び上記式(7)におけるs及びtと同じである。また、上記式(9)及び上記式(10)において、R及びRは、上記式(1)におけるR及びRと同じである。また、上記式(10)及び上記式(11)において、Yは、上記(5)におけるYと同じである。また、上記式(11)において、Rは、上記式(2)におけるRと同じである。
【0056】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物を合成できれば、特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンエーテルに、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0057】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物としては、例えば、前記式(2)及び(3)で表される置換基とハロゲン原子とが結合された化合物等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられ、この中でも、塩素原子が好ましい。炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物としては、より具体的には、p-クロロメチルスチレンやm-クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0058】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテル化合物を合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。また、2官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に2個有するフェノール化合物であり、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。また、3官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に3個有するフェノール化合物である。
【0059】
変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法は、上述した方法が挙げられる。具体的には、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とを溶媒に溶解させ、攪拌する。そうすることによって、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とが反応し、本実施形態で用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物が得られる。
【0060】
前記反応の際、アルカリ金属水酸化物の存在下で行うことが好ましい。そうすることによって、この反応が好適に進行すると考えられる。このことは、アルカリ金属水酸化物が、脱ハロゲン化水素剤、具体的には、脱塩酸剤として機能するためと考えられる。すなわち、アルカリ金属水酸化物が、ポリフェニレンエーテルのフェノール基と、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とから、ハロゲン化水素を脱離させ、そうすることによって、ポリフェニレンエーテルのフェノール基の水素原子の代わりに、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基が、フェノール基の酸素原子に結合すると考えられる。
【0061】
アルカリ金属水酸化物は、脱ハロゲン化剤として働きうるものであれば、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ金属水酸化物は、通常、水溶液の状態で用いられ、具体的には、水酸化ナトリウム水溶液として用いられる。
【0062】
反応時間や反応温度等の反応条件は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物等によっても異なり、上記のような反応が好適に進行する条件であれば、特に限定されない。具体的には、反応温度は、室温~100℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5~20時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましい。
【0063】
反応時に用いる溶媒は、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とを溶解させることができ、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物との反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、トルエン等が挙げられる。
【0064】
上記の反応は、アルカリ金属水酸化物だけではなく、相間移動触媒も存在した状態で反応させることが好ましい。すなわち、上記の反応は、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させることが好ましい。そうすることによって、上記反応がより好適に進行すると考えられる。このことは、以下のことによると考えられる。相間移動触媒は、アルカリ金属水酸化物を取り込む機能を有し、水のような極性溶剤の相と、有機溶剤のような非極性溶剤の相との両方の相に可溶で、これらの相間を移動することができる触媒であることによると考えられる。具体的には、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液を用い、溶媒として、水に相溶しない、トルエン等の有機溶剤を用いた場合、水酸化ナトリウム水溶液を、反応に供されている溶媒に滴下しても、溶媒と水酸化ナトリウム水溶液とが分離し、水酸化ナトリウムが、溶媒に移行しにくいと考えられる。そうなると、アルカリ金属水酸化物として添加した水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しにくくなると考えられる。これに対して、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、アルカリ金属水酸化物が相間移動触媒に取り込まれた状態で、溶媒に移行し、水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しやすくなると考えられる。このため、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、上記反応がより好適に進行すると考えられる。
【0065】
相間移動触媒は、特に限定されないが、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0066】
本実施形態で用いられる樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル化合物として、上記のようにして得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物を含むことが好ましい。
【0067】
前記未変性のポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール化合物及び3官能フェノール化合物の少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式(12)で表されるポリフェニレンエーテル化合物、及び下記式(13)で表されるポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0068】
【化12】
【化13】
式(12)及び式(13)中、R~R15並びにR16~R23は、式(4)及び式(5)における、R~R15並びにR16~R23と同じである。具体的には、R~R15並びにR16~R23は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。A及びBは、それぞれ、上記式(6)及び下記式(7)で表される繰り返し単位を示す。また、式(13)中、Yは、式(5)におけるYと同じである。具体的には、Yは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素を示し、上記式(8)で表される基等が挙げられる。
【0069】
前記式(12)で表されるポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(14)で表されるポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0070】
【化14】
前記式(13)で表されるポリフェニレンエーテル化合物のより具体的な例示としては、例えば、下記式(15)で表されるポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0071】
【化15】
上記式(14)及び式(15)において、s及びtは、上記式(6)及び上記式(7)におけるs及びtと同じである。また、上記式(15)において、Yは、上記(13)におけるYと同じである。
【0072】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は、重量平均分子量(Mw)が500~5000であることが好ましく、500~3000であることがより好ましい。分子量が低すぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、分子量が高すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られず、成形不良を充分に抑制できない傾向がある。よって、ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
【0073】
なお、ここでの重量平均分子量は、具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0074】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は、分子末端のフェノール性水酸基の1分子当たりの平均個数(末端水酸基数)が1~5個であることが好ましく、1.5~3個であることがより好ましい。この末端水酸基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端水酸基数が多すぎると、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、誘電率及び誘電正接が高くなる等の不具合が発生するおそれがある。
【0075】
なお、ここでの水酸基数は、例えば、使用するポリフェニレンエーテル化合物の製品の規格値からわかる。また、ここでの末端水酸基数としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル化合物1モル中に存在する全てのポリフェニレンエーテル化合物の1分子あたりの水酸基の平均値を表した数値等が挙げられる。
【0076】
(硬化剤)
前記樹脂組成物は、硬化剤を含有してもよい。前記樹脂組成物には、硬化剤を含有しなくてもよいが、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の場合、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物を好適に硬化させるために、硬化剤を含有していることが好ましい。前記硬化剤は、前記ポリフェニレンエーテル化合物と反応して前記ポリフェニレンエーテル化合物を含む樹脂組成物を硬化させることができる硬化剤である。また、前記硬化剤は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含む樹脂組成物を硬化させることができる硬化剤であれば、特に限定されない。前記硬化剤としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、分子中にアクリロイル基を有する化合物、分子中にメタクリロイル基を有する化合物、分子中にビニル基を有する化合物、分子中にアリル基を有する化合物、分子中にアセナフチレン構造を有する化合物、分子中にマレイミド基を有する化合物、及び分子中にイソシアヌレート基を有する化合物等が挙げられる。
【0077】
前記スチレン誘導体としては、例えば、ブロモスチレン及びジブロモスチレン等が挙げられる。
【0078】
前記分子中にアクリロイル基を有する化合物が、アクリレート化合物である。前記アクリレート化合物としては、分子中にアクリロイル基を1個有する単官能アクリレート化合物、及び分子中にアクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物が挙げられる。前記単官能アクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、及びブチルアクリレート等が挙げられる。前記多官能アクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等のジアクリレート化合物等が挙げられる。
【0079】
前記分子中にメタクリロイル基を有する化合物が、メタクリレート化合物である。前記メタクリレート化合物としては、分子中にメタクリロイル基を1個有する単官能メタクリレート化合物、及び分子中にメタクリロイル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物が挙げられる。前記単官能メタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、及びブチルメタクリレート等が挙げられる。前記多官能メタクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物等が挙げられる。
【0080】
前記分子中にビニル基を有する化合物が、ビニル化合物である。前記ビニル化合物としては、分子中にビニル基を1個有する単官能ビニル化合物(モノビニル化合物)、及び分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物が挙げられる。前記多官能ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、及びポリブタジエン等が挙げられる。
【0081】
前記分子中にアリル基を有する化合物が、アリル化合物である。前記アリル化合物としては、分子中にアリル基を1個有する単官能アリル化合物、及び分子中にアリル基を2個以上有する多官能アリル化合物が挙げられる。前記多官能アリル化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアリルイソシアヌレート化合物、ジアリルビスフェノール化合物、及びジアリルフタレート(DAP)、等が挙げられる。
【0082】
前記分子中にアセナフチレン構造を有する化合物が、アセナフチレン化合物である。前記アセナフチレン化合物としては、例えば、アセナフチレン、アルキルアセナフチレン類、ハロゲン化アセナフチレン類、及びフェニルアセナフチレン類等が挙げられる。前記アルキルアセナフチレン類としては、例えば、1-メチルアセナフチレン、3-メチルアセナフチレン、4-メチルアセナフチレン、5-メチルアセナフチレン、1-エチルアセナフチレン、3-エチルアセナフチレン、4-エチルアセナフチレン、5-エチルアセナフチレン等が挙げられる。前記ハロゲン化アセナフチレン類としては、例えば、1-クロロアセナフチレン、3-クロロアセナフチレン、4-クロロアセナフチレン、5-クロロアセナフチレン、1-ブロモアセナフチレン、3-ブロモアセナフチレン、4-ブロモアセナフチレン、5-ブロモアセナフチレン等が挙げられる。前記フェニルアセナフチレン類としては、例えば、1-フェニルアセナフチレン、3-フェニルアセナフチレン、4-フェニルアセナフチレン、5-フェニルアセナフチレン等が挙げられる。前記アセナフチレン化合物としては、前記のような、分子中にアセナフチレン構造を1個有する単官能アセナフチレン化合物であってもよいし、分子中にアセナフチレン構造を2個以上有する多官能アセナフチレン化合物であってもよい。
【0083】
前記分子中にマレイミド基を有する化合物が、マレイミド化合物である。前記マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を1個有する単官能マレイミド化合物、分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物、及び変性マレイミド化合物等が挙げられる。前記変性マレイミド化合物としては、例えば、分子中の一部がアミン化合物で変性された変性マレイミド化合物、分子中の一部がシリコーン化合物で変性された変性マレイミド化合物、及び分子中の一部がアミン化合物及びシリコーン化合物で変性された変性マレイミド化合物等が挙げられる。
【0084】
前記分子中にイソシアヌレート基を有する化合物が、イソシアヌレート化合物である。前記イソシアヌレート化合物としては、分子中にアルケニル基をさらに有する化合物(アルケニルイソシアヌレート化合物)等が挙げられ、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
【0085】
前記硬化剤は、上記の中でも、例えば、前記多官能アクリレート化合物、前記多官能メタクリレート化合物、前記多官能ビニル化合物、前記スチレン誘導体、前記アリル化合物、前記マレイミド化合物、前記アセナフチレン化合物、及び前記イソシアヌレート化合物等が好ましく、前記多官能ビニル化合物、前記アセナフチレン化合物、及び前記アリル化合物がより好ましい。また、前記多官能ビニル化合物としては、ジビニルベンゼンが好ましい。また、前記アセナフチレン化合物としては、アセナフチレンが好ましい。また、前記アリル化合物としては、分子中に2個以上のアリル基を有するアリルイソシアヌレート化合物が好ましく、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)がより好ましい。
【0086】
前記硬化剤は、上記硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されず、例えば、100~5000であることが好ましく、100~4000であることがより好ましく、100~3000であることがさらに好ましい。前記硬化剤の重量平均分子量が低すぎると、前記硬化剤が樹脂組成物の配合成分系から揮発しやすくなるおそれがある。また、前記硬化剤の重量平均分子量が高すぎると、樹脂組成物のワニスの粘度や、加熱成形時の溶融粘度が高くなりすぎるおそれがある。よって、前記硬化剤の重量平均分子量がこのような範囲内であると、硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、前記ポリフェニレンエーテル化合物との反応により、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を好適に硬化させることができるためと考えられる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0088】
前記硬化剤は、前記ポリフェニレンエーテル化合物との反応に寄与する官能基の、前記硬化剤1分子当たりの平均個数(官能基数)は、前記硬化剤の重量平均分子量によって異なるが、例えば、1~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この官能基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0089】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記硬化剤との合計100質量部に対して、30~90質量部であることが好ましく、50~90質量部であることがより好ましい。また、前記硬化剤の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記硬化剤との合計100質量部に対して、10~70質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましい。すなわち、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記硬化剤との含有比が、質量比で90:10~30:70であることが好ましく、90:10~50:50であることが好ましい。前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記硬化剤の各含有量が、上記比を満たすような含有量であれば、硬化物の耐熱性及び難燃性により優れた樹脂組成物になる。このことは、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記硬化剤との硬化反応が好適に進行するためと考えられる。
【0090】
前記樹脂組成物は、シアネートエステル化合物を含有してもよい。前記樹脂組成物には、シアネートエステル化合物を含有しなくてもよいが、前記未変性のポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の場合、前記未変性のポリフェニレンエーテル化合物を好適に硬化させるために、シアネートエステル化合物を含有していることが好ましい。
【0091】
前記シアネートエステル化合物は、1分子当たりのシアネート基の平均個数(平均シアネート基数)が2個以上である化合物を用いることが好ましい。このようにシアネート基数が多いと、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性が高まる点から好ましい。
【0092】
なお、ここでの前記シアネートエステル化合物の平均シアネート基数は、使用する前記シアネート樹脂の製品の規格値からわかる。前記シアネートエステル化合物のシアネート基数としては、具体的には、例えば、前記シアネート樹脂1モル中に存在する全ての前記シアネート樹脂の1分子あたりのシアネート基の平均値等が挙げられる。
【0093】
前記シアネートエステル化合物は、積層板や回路基板の製造に用いられ得る各種基板の原料として用いられるシアネートエステル化合物であれば、特に限定されない。前記シアネートエステル化合物は、具体的には、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン(ビスフェノールA型シアネートエステル化合物)、ノボラック型シアネートエステル化合物、ビスフェノールM型シアネートエステル化合物、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)エタン等が挙げられる。前記シアネートエステル化合物としては、前記各シアネートエステルの重合体であるシアネートエステル樹脂も含まれる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
前記樹脂組成物は、エポキシ化合物を含有してもよい。前記樹脂組成物には、エポキシ化合物を含有しなくてもよいが、前記未変性のポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の場合、前記未変性のポリフェニレンエーテル化合物を好適に硬化させるために、エポキシ化合物を含有していることが好ましい。
【0095】
前記エポキシ化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。すなわち、前記エポキシ化合物は、1分子当たりのエポキシ基の平均個数(平均エポキシ基数)が、2個以上であることが好ましく、2~7個であることがより好ましく、2~6個であることがさらに好ましい。平均エポキシ基数が上記範囲内であれば、得られた樹脂組成物の硬化物の耐熱性が優れる点から好ましい。なお、ここでの平均エポキシ基数は、使用するエポキシ化合物の製品の規格値からわかる。ここでの平均エポキシ基数としては、具体的には、例えば、エポキシ化合物1モル中に存在する全てのエポキシ化合物の1分子あたりのエポキシ基の平均値を表した数値等が挙げられる。
【0096】
前記エポキシ化合物は、積層板や回路基板の製造に用いられ得る各種基板の原料として用いられるエポキシ化合物であれば、特に限定されない。前記エポキシ化合物は、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、及びナフタレン環含有エポキシ化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、前記各エポキシ化合物の重合体であるエポキシ樹脂も含まれる。
【0097】
前記ポリフェニレンエーテル化合物、前記シアネートエステル化合物、及び前記エポキシ化合物を含む樹脂組成物の場合、前記ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、前記ポリフェニレンエーテル化合物、前記シアネートエステル化合物、及び前記エポキシ化合物の合計量100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。前記シアネートエステル化合物の含有量は、前記合計量100質量部に対して、20~40質量部であることが好ましい。前記エポキシ化合物の含有量は、前記合計量100質量部に対して、20~50質量部であることが好ましい。
【0098】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分以外の成分(その他の成分)を含有してもよい。本実施の形態に係る樹脂組成物に含有されるその他の成分としては、例えば、金属石鹸、シランカップリング剤、難燃剤、開始剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、及び無機充填材等の添加剤をさらに含んでもよい。また、前記樹脂組成物には、前記ポリフェニレンエーテル化合物以外にも、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、マレイミド化合物、及び変性マレイミド化合物等の熱硬化性樹脂を含有してもよい。前記変性マレイミド化合物としては、例えば、分子中の少なくとも一部がシリコーン化合物で変性されたマレイミド化合物、及び分子中の少なくとも一部がアミン化合物で変性されたマレイミド化合物等が挙げられる。
【0099】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、金属石鹸を含有してもよい。前記金属石鹸は、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ステアリン酸、ラウリン酸及びリシノール酸、アセチルアセテート等の有機酸と、亜鉛、銅、コバルト、リチウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等の金属とからなる金属石鹸等が挙げられる。前記金属石鹸は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ポリフェニレンエーテル化合物、前記シアネートエステル化合物、及び前記エポキシ化合物を含む樹脂組成物の場合、前記金属石鹸の含有量は、前記ポリフェニレンエーテル化合物、前記シアネートエステル化合物、及び前記エポキシ化合物の合計量100質量部に対して、0.001~0.01質量部であることが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、樹脂組成物に含有してもよいし、樹脂組成物に含有されている無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよい。この中でも、前記シランカップリング剤としては、無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有することが好ましく、このように無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有し、さらに、樹脂組成物にもシランカップリング剤を含有させることがより好ましい。また、プリプレグの場合、そのプリプレグには、繊維質基材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよい。
【0101】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、フェニルアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。すなわち、このシランカップリング剤は、反応性官能基として、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、及びフェニルアミノ基のうち、少なくとも1つを有し、さらに、メトキシ基やエトキシ基等の加水分解性基を有する化合物等が挙げられる。
【0102】
前記シランカップリング剤としては、ビニル基を有するものとして、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、スチリル基を有するものとして、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、及びp-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、メタクリル基を有するものとして、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、アクリル基を有するものとして、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、フェニルアミノ基を有するものとして、例えば、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0103】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、難燃剤を含有してもよい。難燃剤を含有することによって、樹脂組成物の硬化物の難燃性を高めることができる。前記難燃剤は、特に限定されない。具体的には、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を使用する分野では、例えば、融点が300℃以上のエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、及びテトラデカブロモジフェノキシベンゼンが好ましい。ハロゲン系難燃剤を使用することにより、高温時におけるハロゲンの脱離が抑制でき、耐熱性の低下を抑制できると考えられる。また、ハロゲンフリーが要求される分野では、リン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤、及びホスフィン酸塩系難燃剤が挙げられる。リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、ジキシレニルホスフェートの縮合リン酸エステルが挙げられる。ホスファゼン系難燃剤の具体例としては、フェノキシホスファゼンが挙げられる。ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤の具体例としては、キシリレンビスジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。ホスフィン酸塩系難燃剤の具体例としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩のホスフィン酸金属塩が挙げられる。前記難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、開始剤(反応開始剤)を含有してもよい。前記樹脂組成物は、開始剤を含有しなくても、硬化反応は進行し得る。しかしながら、プロセス条件によっては硬化が進行するまで高温にすることが困難な場合があるので、反応開始剤を添加してもよい。反応開始剤は、前記樹脂組成物の硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。また、必要に応じて、カルボン酸金属塩等を併用することができる。そうすることによって、硬化反応を一層促進させるができる。これらの中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、反応開始温度が比較的に高いため、プリプレグ乾燥時等の硬化する必要がない時点での硬化反応の促進を抑制することができ、樹脂組成物の保存性の低下を抑制することができる。さらに、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、揮発性が低いため、プリプレグ乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。また、反応開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記開始剤の含有量は、前記ポリフェニレンエーテル化合物、及び前記硬化剤の合計量100質量部に対して、0.5~5.0質量部であることが好ましい。
【0105】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、無機充填材等の充填材を含有してもよい。充填材としては、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性及び難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。また、充填材を含有させることによって、耐熱性及び難燃性等をさらに高めることができる。充填材としては、具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、充填材としては、この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填材としては、そのまま用いてもよいし、前記シランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。また、充填材を含有する場合、その含有率(フィラーコンテンツ)は、前記樹脂組成物に対して、30~270質量%であることが好ましく、50~250質量%であることがより好ましい。
【0106】
(金属箔)
前記金属箔は、前記絶縁層と接する側の表面(接触面)における、XPSにより測定される第1のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、XPSにより測定される第2のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔であれば、特に限定されない。
【0107】
なお、前記金属箔の、前記絶縁層と接する側の表面とは、前記金属張積層板を構成する前における前記金属箔の表面であって、前記金属張積層板において、前記絶縁層が接触される側となる表面である。具体的には、前記絶縁層と接する側の表面とは、前記金属張積層板を、前記金属箔と前記プリプレグとを積層して製造する場合であれば、前記金属箔の、前記プリプレグを接触させる側の表面であって、前記プリプレグを接触させる前の表面である。前記絶縁層と接する側の表面は、本明細書において、接触面とも称する。また、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの当該表面とは、前記絶縁層と接する前に、前記接触面から前記スパッタした位置である。すなわち、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの当該表面とは、前記接触面からSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタした位置であって、以下、このように称することもある。なお、ここでのスパッタは、真空下でのスパッタである。よって、前記金属張積層板は、金属箔として、前記接触面及び前記位置における、XPSにより測定されるニッケル元素量がそれぞれ上記範囲内である金属箔を用いて製造される金属張積層板である。
【0108】
前記金属箔において、前記接触面における、XPSにより測定される第1のニッケル元素量は、XPSにより測定される全元素量に対して、上述したように、4.5原子%以下であり、3.5原子%以下であることが好ましく、2.5原子%以下であることがより好ましい。また、前記接触面からSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタした位置における、XPSにより測定される第2のニッケル元素量は、XPSにより測定される全元素量に対して、上述したように、4.5原子%以下であり、4.0原子%以下であることが好ましく、3.0原子%以下であることがより好ましい。また、前記第1のニッケル元素量と前記第2のニッケル元素量との算術平均値は、3.0原子%以下であることが好ましく、2.5原子%以下であることがより好ましく、2.0原子%以下であることがさらに好ましい。前記第1のニッケル元素量が少なすぎる、又は、前記第2のニッケル元素量が少なすぎると、絶縁信頼性が低下し、金属張積層板から製造された配線板において、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を充分に抑制できない傾向がある。このため、前記第1のニッケル元素量及び前記第2のニッケル元素量は、ともに少なければ少ないほど好ましいが、実際には、それぞれ0.1原子%程度が限界である。このことから、前記第1のニッケル元素量及び前記第2のニッケル元素量は、それぞれ、XPSにより測定される全元素量に対して、0.1~4.5原子%であることが好ましい。また、前記第1のニッケル元素量と前記第2のニッケル元素量との算術平均値が、0.5~3.0原子%であることが好ましい。
【0109】
なお、XPSとしては、一般的なX線光電子分光法を用いることが測定することができる。具体的には、アルバック・ファイ株式会社社製のPHI 5000 Versaprobeを用いて、真空下で試料にX線を照射し測定することができる。
【0110】
前記絶縁層と接する側の表面(接触面)には、XPSにより確認可能な窒素元素が存在することが好ましい。なお、XPSにより確認可能な窒素元素とは、窒素元素量がXPSの検出限界以上であり、具体的には、0.05原子%以上である。また、前記接触面は、XPSにより測定される窒素元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、2.0原子%以上であることが好ましく、2.5原子%以上であることがより好ましく、3.0原子%以上であることがさらに好ましい。前記接触面上に、前記窒素元素を含む化合物が存在すると、絶縁信頼性がより高まる。一方で、前記窒素元素量が少なすぎると、この窒素元素が存在することによる絶縁信頼性を高める効果を充分に発揮することができなくなる傾向がある。このことから、前記窒素元素量は多ければ多いほどよいが、実際には、7.0原子%程度が限界である。このことから、前記窒素元素量は、2.0~7.0原子%であることが好ましい。
【0111】
前記窒素元素は、アミノ基を有する化合物に含まれる窒素原子由来であることが好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤に含まれる窒素原子由来であることがより好ましい。前記窒素元素が、アミノ基を有する化合物に含まれる窒素原子由来であるということは、前記窒素元素を含む化合物が、アミノ基を有する化合物であると考えられる。このような金属箔としては、具体的には、後述するシランカップリング剤層として、分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤で処理された層を有する金属箔であると考えられる。そして、このアミノ基を有する化合物、すなわち、分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤が、絶縁信頼性を高めるという効果をより効果的に奏すると考えられる。このことから、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板が得られると考えられる。
【0112】
前記絶縁層と接する側の表面(接触面)、及び前記接触面からSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタした位置には、XPSにより確認可能な元素として、ニッケル(Ni)元素及び窒素(N)元素以外に、銅(Cu)元素、炭素(C)元素、酸素(O)元素、ケイ素(Si)元素、クロム(Cr)元素、亜鉛(Zn)元素、及びコバルト(Co)元素等から選択される1種以上が存在してもよい。これらの元素の各元素量は、それぞれ、XPSにより測定される全元素量に対して、例えば、0~90原子%であることが好ましく、0~80原子%であることがより好ましく、0~70原子%であることがさらに好ましい。
【0113】
前記金属箔は、配線板の配線になりうる金属箔であれば、その種類は特に限定されないが、信号の伝送速度を高める点等から、銅箔であることが好ましい。
【0114】
前記金属箔としては、具体的には、配線板の配線になりうる金属からなる箔状基材(金属箔基材)に対して、種々の処理が施された金属箔等が挙げられる。前記処理としては、金属張積層板に用いられる金属箔に施される処理であれば、特に限定されない。前記処理としては、例えば、粗化処理、耐熱処理、防錆処理、及びシランカップリング剤処理等が挙げられる。前記金属箔は、いずれか1つの処理を施したものであってもよいし、2種以上を組み合わせて施したものであってもよい。また、前記処理を2種以上行う場合、前記粗化処理、前記耐熱処理、前記防錆処理、及び前記シランカップリング剤処理の順で行うことが好ましい。
【0115】
前記金属箔基材は、配線板の配線になりうる金属からなる基材であれば、特に限定されない。前記金属箔基材としては、例えば、信号の伝送速度を高める点等から、銅箔基材であることが好ましい。前記銅箔基材は、銅を含んでいればよく、例えば、銅又は銅合金からなる箔状の基材等が挙げられる。前記銅合金としては、例えば、銅と、ニッケル、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト、及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む合金等が挙げられる。
【0116】
前記銅箔基材は、特に限定されないが、信号の伝送速度を高める点や伝送損失を低減できる点から、銅又は銅を含む合金の結晶粒径が大きいことが好ましい。具体的には、銅箔基材は、銅又は銅を含む合金の結晶粒径が、最大粒径で5μm以上の結晶粒を含むことが好ましく、10μm以上の結晶粒を含むことがより好ましい。また、最大粒径が5μm以上の結晶粒が占める面積が、20面積%以上であることが好ましく、40面積%以上であることがより好ましい。なお、ここで最大粒径とは、銅又は銅を含む合金の結晶粒のそれぞれにおいて、最も長い径(長軸径)を指す。
【0117】
前記銅箔基材の結晶粒径を測定する方法としては、特に限定されないが、例えば、電子後方散乱回折法(Electron Backscattered Diffraction:EBSD)を用いて、前記銅箔基材の断面を測定する方法が挙げられる。EBSDを用いて測定する方法としては、具体的には、ショットキー電子銃を搭載した電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(Field-Emission Electron Probe Micro Analyzer:FE-EPMA)を備えた走査型電子顕微鏡(Field-Emission Scanning Electron Microscope:FE-SEM)の、FE-EPMAにEBSD装置を備えた装置を用いて測定することができる。なお、EBSDとは、試料に電子線を照射したときに生じる(電子線照射により得られる)反射電子回析パターン(菊池パターン)を利用して、結晶方位のみならず、結晶分布等を解析する技術である。また、EBSDによる測定位置は、上述したように、前記銅箔基材の断面であり、その位置は特に限定されないが、例えば、前記銅箔基材の断面における厚み方向の中央部付近等が挙げられる。前記測定位置としては、特に限定されないが、例えば、より具体的には、その中心が前記銅箔基材の断面における厚み方向の中心と略一致するような、200μmの範囲等が挙げられる。EBSDによれば、前記菊池パターンをマッピングして、Image Quality(IQ)マップ等が得られます。このIQマップでは、粒界は結晶性が乱れているため暗く表され、その結果として、結晶粒が描かれる。そして、EBSD解析用ソフトを用いると、この得られたIQマップから、結晶粒径及び結晶粒径の分布を導き出すことができる。このようにして、銅又は銅を含む合金の結晶粒径(最大粒径)と、各粒径が占める面積率とを求めることができる。
【0118】
前記粗化処理は、金属箔を製造する際に一般的に行われる粗化処理であってもよく、特に限定されないが、被処理物である前記金属箔基材等の表面に、粗化粒子を形成する処理等が挙げられる。この粗化処理により、前記金属箔基材が銅箔基材である場合、銅箔表面上が、銅又は銅合金からなる粗化粒子で覆われることになる。この粗化粒子からなる領域を、粗化層とも呼ぶ。前記金属箔は、前記粗化処理によって形成された層(粗化層)が形成されたものであってもよい。
【0119】
前記耐熱処理は、金属箔を製造する際に一般的に行われる耐熱処理であってもよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、銅、及び亜鉛の、単体又は合金を含む耐熱層が形成される処理等が挙げられる。この耐熱処理により形成された領域が仮に完全な層状になっていなかったとしても、耐熱層とも呼ぶ。前記金属箔は、前記耐熱処理によって形成された層(耐熱層)が形成されたものであってもよい。
【0120】
前記防錆処理は、金属箔を製造する際に一般的に行われる防錆処理であってもよく、特に限定されないが、ニッケルを含む防錆層が形成される処理であることが好ましい。また、前記防錆処理としては、例えば、クロメート処理等も挙げられる。この防錆処理により形成された領域が仮に完全な層状になっていなかったとしても、防錆層とも呼ぶ。前記金属箔は、前記防錆処理によって形成された層(防錆層)が形成されたものであってもよい。
【0121】
前記シランカップリング剤処理は、金属箔を製造する際に一般的に行われる防錆処理であってもよく、特に限定されないが、例えば、被処理物である前記金属箔基材等の表面に、シランカップリング剤を塗布する処理等が挙げられる。前記シランカップリング剤処理としては、シランカップリング剤を塗布した後、乾燥させたり、加熱させてもよい。シランカップリング剤で処理することで、被処理物である金属にシランカップリング剤の有するアルコキシ基が反応して結合する。この結合されたシランカップリング剤により形成された領域をシランカップリング剤層である。前記金属箔は、前記シランカップリング剤処理によって形成された層(シランカップリング剤層)が形成されたものであってもよい。
【0122】
前記金属箔としては、具体的には、金属箔基材と、前記金属箔基材上に配置される被膜層とを備える金属箔が挙げられる。前記被膜層としては、例えば、前記粗化層、前記耐熱層、前記防錆層、及び前記シランカップリング剤層等が挙げられる。前記金属箔は、前記被膜層として、これらの層を単独で備えていてもよいし、2種以上の層を積層して備えていてもよい。また、前記被膜層が複数層からなる場合、前記金属箔基材から、前記粗化層、前記耐熱層、前記防錆層、及び前記シランカップリング剤層の順で備えていることが好ましい。
【0123】
前記粗化層としては、前記粗化処理により得られた層であり、前記金属箔基材が銅箔基材である場合、例えば、銅又は銅合金からなる粗化粒子を含む層等が挙げられる。前記銅合金としては、前記銅箔基材における銅合金と同じである。また、前記粗化層は、前記銅箔基材を粗化処理して得られる粗化粒子を形成した後に、ニッケル、コバルト、銅、及び亜鉛等の、単体又は合金からなる粒子を、二次粒子及び三次粒子として形成させた層等が挙げられる。すなわち、前記粗化層は、前記粗化粒子だけではなく、ニッケル、コバルト、銅、及び亜鉛等の、単体又は合金からなる粒子を含む層等も挙げられる。
【0124】
前記耐熱層としては、ニッケル、コバルト、銅、及び亜鉛の、単体又は合金を含む層等が挙げられる。前記耐熱層としては、単層であってもよいし、2層以上の層であってもよい。前記耐熱層としては、例えば、ニッケル層と亜鉛層とを積層した層等が挙げられる。
【0125】
前記防錆層としては、例えば、防錆処理により形成された、ニッケルを含む防錆層、及び、クロメート処理により形成された、クロムを含む層等が挙げられる。また、前記防錆層は、例えば、前記耐熱層等を備えた銅箔基材をクロメート処理して得られる。前記防錆層としては、前記ニッケルを含む防錆層が好ましい。なお、前記防錆層として、前記ニッケルを含む防錆層が形成されている場合、前記金属箔は、このようなニッケルを含む防錆層が形成されていても、前記第1のニッケル元素量及び第2のニッケル元素量が上記範囲内になる金属箔である。
【0126】
前記シランカップリング剤層は、シランカップリング剤で処理することにより得られる層である。例えば、前記防錆層等を備えた銅箔基材に対して、シランカップリング剤で処理することにより得られる層等が挙げられる。
【0127】
前記シランカップリング剤としては、アミノ基を分子中に有するシランカップリング剤、及び炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0128】
前記アミノ基を分子中に有するシランカップリング剤は、反応性官能基として、アミノ基を有し、さらに、メトキシ基やエトキシ基等の加水分解性基を有する化合物等が挙げられる。前記アミノ基を分子中に有するシランカップリング剤の具体例としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2-ジアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノ-1-プロペニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル-3-アミノプロピル)トリス(2-エチルヘキソキシ)シラン、6-(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3-(1-アミノプロポキシ)-3,3-ジメチル-1-プロペニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ω-アミノウンデシルトリメトキシシラン、3-(2-N-ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、及び3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0129】
前記炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤としては、具体的には、メタクリロキシ基、スチリル基、ビニル基、及びアクリロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。すなわち、このシランカップリング剤は、反応性官能基として、メタクリロキシ基、スチリル基、ビニル基、及びアクリロキシ基のうち、少なくとも1つを有し、さらに、メトキシ基やエトキシ基等の加水分解性基を有する化合物等が挙げられる。前記炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤としては、例えば、以下のシランカップリング剤等が挙げられる。メタクリロキシ基を分子中に有するシランカップリング剤として、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。スチリル基を分子中に有するシランカップリング剤として、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、及びp-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。ビニル基を分子中に有するシランカップリング剤として、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アクリロキシ基を分子中に有するシランカップリング剤として、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
前記第1のニッケル元素量及び前記第2のニッケル元素量は、例えば、前記被膜層において、ニッケルを含む防錆層等の、ニッケルを含む層の厚みやニッケルを含む層におけるニッケル濃度等を調整することによって、調整できる。
【0131】
前記窒素元素は、シランカップリング剤層として、アミノ基を分子中に有するシランカップリング剤を用いた層とすることで存在させることができる。さらに、その量(窒素元素量)は、シランカップリング剤層として、アミノ基を分子中に有するシランカップリング剤を用いて得られた層の厚み等を調整することによって、調整できる。
【0132】
前記絶縁層と接する側の表面(接触面)の平均粗さは、十点平均粗さで2.0μm以下であり、1.8μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。前記金属箔の、前記絶縁層と接触する接触面の表面粗さは低いほうが、金属張積層板から製造された配線と絶縁層との接触面の平滑性も高いと考えられ、信号伝送時の損失を低減させることができる点で好ましい。その一方で、前記接触面の表面粗さは、低くするとしても、十点平均粗さRzで0.2μm程度が限界である。また、前記接触面の表面粗さが低すぎると、前記金属箔と前記絶縁層との接触面の平滑性も高くなりすぎると考えられ、金属箔と絶縁層との接着性が低下してしまう傾向がある。この点からも、前記接触面の表面粗さは、十点平均粗さRzで0.2μm以上であることが好ましい。よって、前記接触面の表面粗さは、十点平均粗さRzで0.2~2.0μmであることが好ましく、0.5~2.0μmであることがより好ましく、0.6~1.8μmであることがさらに好ましく、0.6~1.5μmであることが最も好ましい。
【0133】
なお、ここでの表面粗さである十点平均粗さRzは、JIS B 0601:1994に準拠したものであり、一般的な表面粗さ測定器等で測定することができる。具体的には、例えば、株式会社東京精密製の表面粗さ形状測定機(SURFCOM500DX)を用いて測定することができる。
【0134】
前記金属箔は、平均粗さが大きい面、いわゆるM面を、前記絶縁層と接触する側の表面とする。すなわち、前記金属箔は、そのM面を、前記接触面とする。そして、このM面側に、上述したような被膜層が形成されていればよい。前記銅箔の、平均粗さが小さい面、いわゆるS面は、M面と同様に、上述したような被膜層が形成されていてもよいが、前記防錆層のみが形成されていてもよいし、前記被膜層が形成されていなくてもよい。
【0135】
前記金属張積層板は、配線間距離の最小値が150μm以下である配線板を製造するために用いられることが好ましい。また、前記配線間距離の最小値は、150μm以下であることが好ましく、10~150μmであることがより好ましく、20~150μmであることがさらに好ましい。なお、配線間距離の最小値が150μm以下である配線板とは、配線の少なくとも一部において、その配線間距離が150μm以下であって、それ以外の配線間距離は、それを越えるものであってもよい配線板である。すなわち、配線間距離は、全てが150μm以下である必要はなく、その最小値が、150μm以下である。前記配線間距離、すなわち、隣り合う配線間に位置する絶縁層の幅が小さいほど、高密度化された配線板を実現できる。その一方で、前記配線間距離が小さすぎると、配線間におけるイオンマイグレーションが発生しやすくなる傾向がある。また、前記配線間距離の最小値が大きいと、配線間におけるイオンマイグレーションの発生を抑制できるが、配線板の高密度化を阻害する。前記配線間距離が上記範囲内であれば、配線板の高密度化を達成できるものの、イオンマイグレーションによる短絡が起きやすい傾向がある。そうであるにもかかわらず、前記金属張積層板から得られる配線板であれば、配線間距離が150μm以下であっても、イオンマイグレーションによる短絡の発生を充分に抑制できる。すなわち、前記金属張積層板であれば、配線間距離が小さくても、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制できる絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる。また、配線間距離が150μm以下であっても、隣り合う配線間においてイオンマイグレーションの発生を充分に抑制できると、高密度化された配線板を好適に実現できる。
【0136】
前記金属張積層板を用いて、配線間距離が80~150μmである配線板を製造した場合、得られた配線板における配線間に100Vの電圧を、85℃、相対湿度85%の環境下で印加したとき、試験(印加)時間が300時間以上で、配線間の抵抗が10Ω以上であることが好ましく、試験(印加)時間が1000時間以上で、配線間の抵抗が10Ω以上であることがより好ましい。また、前記時間は、配線幅/配線間距離(L/S)が100μm/150μmであるときの時間であることが好ましく、100μm/150μmであるときの時間であることがより好ましく、80μm/80μmであるときの時間であることがさらに好ましい。すなわち、配線幅/配線間距離(L/S)が80μm/80μmである配線板における、前記時間が1000時間超であることが最もこのましい。
【0137】
(製造方法)
本実施形態で用いる樹脂組成物は、ワニス状に調製して用いてもよい。例えば、プリプレグを製造する際に、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸することを目的として、ワニス状に調製して用いてもよい。すなわち、樹脂組成物は、ワニス状に調製されたもの(樹脂ワニス)として用いてもよい。このようなワニス状の組成物(樹脂ワニス)は、例えば、以下のようにして調製される。
【0138】
まず、有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて用いられる、有機溶媒に溶解しない成分を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、有機溶媒に溶解できる各成分を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。
【0139】
また、前記絶縁層には、上述したように、前記樹脂組成物の硬化物だけではなく、繊維質基材も含んでいてもよい。この繊維質基材としては、後述するプリプレグに含まれる繊維質基材と同様のものが挙げられる。
【0140】
また、前記樹脂組成物を用いることによって、前記金属張積層板だけではなく、以下のように、プリプレグ、樹脂付き金属箔、及び配線板を得ることができる。この際、樹脂組成物として、上記のようなワニス状の組成物を用いてもよい。
【0141】
前記プリプレグ1は、図2に示すように、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、繊維質基材3とを備える。このプリプレグ1は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2の中に繊維質基材3が存在するものが挙げられる。すなわち、このプリプレグ1は、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2の中に存在する繊維質基材3とを備える。なお、図2は、本実施形態に係るプリプレグ1の一例を示す概略断面図である。
【0142】
なお、本実施形態において、半硬化物とは、樹脂組成物を、さらに硬化しうる程度に途中まで硬化された状態のものである。すなわち、半硬化物は、樹脂組成物を半硬化した状態の(Bステージ化された)ものである。例えば、樹脂組成物は、加熱すると、最初、粘度が徐々に低下し、その後、硬化が開始し、粘度が徐々に上昇する。このような場合、半硬化としては、粘度が上昇し始めてから、完全に硬化する前の間の状態等が挙げられる。
【0143】
また、前記プリプレグとしては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を備えるものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物そのものを備えるものであってもよい。すなわち、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよいし、硬化前の前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよい。具体的には、前記樹脂組成物の中に繊維質基材が存在するものが挙げられる。なお、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物とは、前記樹脂組成物を乾燥及び加熱のいずれか少なくとも一方をしたものであってもよい。
【0144】
前記プリプレグの製造方法は、前記プリプレグを製造することができる方法であれば、特に限定されない。例えば、樹脂組成物、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物を、繊維質基材に含浸させる方法等が挙げられる。すなわち、前記プリプレグとしては、前記樹脂組成物を繊維質基材に含浸させて得られたもの等が挙げられる。含浸する方法としては、繊維質基材に、樹脂組成物を含浸させることができる方法であれば、特に限定されない。例えば、ディップに限らず、ロール、ダイコート、及びバーコートを用いた方法や噴霧等が挙げられる。また、プリプレグの製造方法としては、前記含浸の後に、樹脂組成物が含浸された繊維質基材に対して、乾燥及び加熱のいずれか少なくとも一方をしてもよい。すなわち、プリプレグの製造方法としては、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、乾燥させる方法、ワニス状に調製された樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、加熱させる方法、及びワニス状に調製された樹脂組成物を、繊維質基材に含浸させ、乾燥させた後、加熱する方法等が挙げられる。
【0145】
プリプレグを製造する際に用いられる繊維質基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、液晶ポリマー(Liquid Crystal Plastic:LCP)不織布、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。前記ガラスクロスとしては、特に限定されず、例えば、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Lガラス、及びQガラス等の、低誘電率ガラスからなるガラスクロスが挙げられる。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、繊維質基材の厚みとしては、例えば、0.01~0.3mmのものを一般的に使用できる。
【0146】
樹脂組成物(樹脂ワニス)の繊維質基材への含浸は、浸漬及び塗布等によって行われる。この含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂組成物を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び含浸量に調整することも可能である。
【0147】
前記樹脂組成物(樹脂ワニス)が含浸された繊維質基材を、所望の加熱条件、例えば、80~180℃で1~10分間加熱する。加熱によって、樹脂ワニスから溶媒を揮発させ、溶媒を減少又は除去させて、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
【0148】
本実施形態に係る金属張積層板の製造方法としては、前記金属張積層板を製造することができれば、特に限定されない。前記金属張積層板の製造方法としては、例えば、前記樹脂組成物及び前記金属箔を用いること以外は、一般的な銅張積層板の製造方法と同様にして、金属張積層板を得ることができる。例えば、前記プリプレグを用いる方法等が挙げられる。プリプレグを用いて金属張積層板を作製する方法としては、プリプレグを1枚又は複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に、前記金属箔と前記プリプレグとが接触するように、前記金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化する方法等が挙げられる。すなわち、前記金属張積層板の製造方法としては、前記樹脂組成物を得る工程と、前記樹脂組成物を繊維質基材に含浸させて、プリプレグを得る工程と、前記プリプレグに前記金属箔を積層して、加熱加圧成形することによって、前記樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備える金属張積層板を得る工程とを備える。この方法によって、両面に金属箔を備える金属張積層板又は片面に金属箔を備える金属張積層板を作製することができる。また、加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みやプリプレグに含まれる樹脂組成物の種類等により適宜設定することができる。例えば、温度を170~210℃、圧力を3.5~4MPa、時間を60~150分間とすることができる。また、前記金属張積層板は、プリプレグを用いずに、製造してもよい。例えば、ワニス状の樹脂組成物等を前記金属箔上に塗布し、前記金属箔上に樹脂組成物を含む層を形成した後、加熱加圧する方法等が挙げられる。
【0149】
[配線板]
本発明の他の実施形態に係る配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する配線とを備える。すなわち、この配線板は、前記絶縁層の表面上に配線を有する。この配線板21は、図3に示すように、絶縁層12と、その両面に接触するように配置される配線14とを備えるものが挙げられる。また、前記配線板は、前記絶縁層の一方の面上にのみ、配線が接触して備えられるものであってもよい。なお、図3は、本実施形態に係る配線板21の構成を示す断面図である。
【0150】
前記絶縁層12としては、前記金属張積層板の絶縁層と同様の層が挙げられる。
【0151】
前記配線14は、前記絶縁層12と接する側の表面(接触面)15における、XPSにより測定される第1のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記接触面15をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面(前記接触面15からSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタした位置)における、XPSにより測定される第2のニッケル元素量が、XPSにより測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である配線である。また、前記配線14としては、例えば、前記金属張積層板の金属箔を部分的に除去して形成された配線等が挙げられる。また、このような配線としては、例えば、サブトラクティブ、アディティブ、セミアディティブ(Semi Additive Process:SAP)、モディファイドセミアディティブ(Modified Semi Additive Process:MSAP)、化学機械研磨(CMP)、トレンチ、インクジェット、スキージ、及び転写等を用いた方法により形成された配線等が挙げられる。
【0152】
この配線板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い。
【0153】
このことは、以下のことによると考えられる。この配線板において、前記絶縁層に含まれる前記硬化物は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であるので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記金属張積層板から製造された配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。また、前記配線板において、前記絶縁層に接する配線として、前記配線を用いることで、絶縁信頼性を高めることができると考えられる。よって、前記配線板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高いと考えられる。
【0154】
本実施形態に係る配線板は、図3に示すように、前記絶縁層を1層有するものであってもよいし、図4に示すように、前記絶縁層を複数有するものであってもよい。また、前記絶縁層を複数有する場合、図4に示すように、前記配線が、複数の前記絶縁層の表面上に配置されていてもよいし、前記絶縁層と前記絶縁層との間に配置されていてもよい。本実施形態に係る配線板31は、図4に示すように、前記絶縁層12を複数層有する。そして、前記配線板31において、前記絶縁層12と前記絶縁層12との間に、配線14を配置する。なお、図4は、本発明の実施形態に係る配線板31の他の一例を示す概略断面図である。
【0155】
図4に示すような配線板は、例えば、以下のように製造する。図3に示すような配線板の少なくとも片面に、前記プリプレグを積層し、さらに、必要に応じて、その上に金属箔を積層して、加熱加圧成形する。このようにして得られた積層板の表面の金属箔をエッチング加工等して配線形成をする。このようにして、図4に示すような、多層の配線板を製造することができる。
【0156】
このような配線板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い、多層の配線板である。
【0157】
前記配線板は、上述したように、前記絶縁層を複数有するものであってもよく、前記絶縁層と前記絶縁層との間に配置される配線及び前記絶縁層上に配置される配線の合計数(配線層の層数)が、10層以上であることが好ましく、15層以上であることが好ましい。これにより、多層配線板において、配線をより高密度化でき、複数の絶縁層でのより低い誘電特性と、配線間での絶縁信頼性と、層間回路間での絶縁性をより向上できると考えられる。さらに、多層配線板における信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減できる等の効果も得られる。
【0158】
前記配線板であれば、多層配線板において、導電性のスルーホールを備えた場合でも、導電性のビアを備えた場合でも、その両方を備えた場合でも、隣り合うスルーホールやビア間でも優れた絶縁信頼性を維持することができる。
【0159】
前記配線板であれば、配線間距離の最小値が150μm以下であっても、優れた絶縁信頼性を確保することができる。このような配線間距離の最小値が150μm以下である配線板、すなわち、配線間距離を150μm以下となる箇所を少なくとも一部に含む配線を有する基板にすることで、基板内の配線をより高密度にすることができ、例えば、配線板を小さくすることができる。また、配線幅の最小値も150μm以下である配線板、すなわち、配線幅を150μm以下となる箇所を少なくとも一部に含む配線を有する基板にすることで、基板内の配線をさらに高密度にすることができる。配線幅の最小値も150μm以下であると、配線の一部を短くすることができる場合があり、この場合、伝送損失をより低くすることができ、より高速な伝送が可能となる。ここで配線間距離は、図6に示すように、隣り合う配線と配線との間の距離(S)であり、配線幅は、配線の長手方向に垂直な距離(L)である。
【0160】
[樹脂付き金属箔]
本発明の他の実施形態に係る樹脂付き金属箔は、樹脂層と、前記樹脂層の一方の表面に接する金属箔とを備える。この樹脂付き金属箔41は、図5に示すように、樹脂層42と、その一方の面に接触するように配置される金属箔43とを備えるものが挙げられる。なお、図5は、本実施形態に係る樹脂付き銅箔41の構成を示す断面図である。
【0161】
前記樹脂層42としては、上記のような、前記樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)、又は、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)を含むものである。また、前記樹脂層としては、前記樹脂組成物、又は、前記樹脂組成物の半硬化物を含んでいればよく、繊維質基材を含んでいても、含んでいなくてもよい。また、繊維質基材としては、プリプレグの繊維質基材と同様のものを用いることができる。また、金属箔43としては、前記金属張積層板に備えられる銅箔と同様のものである。
【0162】
このような樹脂付き金属箔は、信号の伝送速度がより高く、かつ、耐熱性のより高い配線板を好適に製造することができる。
【0163】
このことは、以下のことによると考えられる。前記樹脂層に前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物が含まれることから、配線板を製造する際に前記樹脂付き金属箔が用いられると、前記樹脂層が硬化して得られる絶縁層には、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物が硬化した硬化物が含まれることになる。この硬化物は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であるので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。また、前記樹脂層に接する金属箔として、前記金属箔を用いることで、樹脂付き金属箔を用いて製造された配線板における、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できると考えられる。このことから、前記金属箔を用いることで、樹脂付き金属箔から製造された配線板の絶縁信頼性を高めることができる。これらのことから、前記樹脂付き金属箔は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができると考えられる。
【0164】
本実施形態に係る樹脂付き金属箔の製造方法は、前記樹脂付き金属箔を製造することができる方法であれば、特に限定されない。前記樹脂付き金属箔の製造方法としては、前記樹脂組成物及び前記金属箔を用いること以外は、一般的な樹脂付き金属箔の製造方法と同様にして、樹脂付き金属箔を得ることができる。例えば、前記樹脂組成物、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物を、前記金属箔上に塗布する方法等が挙げられる。すなわち、本発明の実施形態に係る樹脂付き金属箔としては、前記樹脂組成物を前記金属箔に塗布させて得られたもの等が挙げられる。塗布する方法としては、金属箔に、樹脂組成物を塗布させることができる方法であれば、特に限定されない。例えば、ロール、ダイコート、及びバーコートを用いた方法や噴霧等が挙げられる。また、樹脂付き金属箔の製造方法としては、前記塗布の後に、樹脂組成物が塗布された金属箔に対して、乾燥及び加熱の少なくともいずれか一方をしてもよい。すなわち、樹脂付き金属箔の製造方法としては、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物を、金属箔上に塗布させた後、乾燥させる方法、ワニス状に調製された樹脂組成物を、金属箔上に塗布させた後、加熱させる方法、及びワニス状に調製された樹脂組成物を、金属箔上に塗布させ、乾燥させた後、加熱する方法等が挙げられる。なお、樹脂組成物が塗布された金属箔は、所望の加熱条件、例えば、80~180℃で1~10分間加熱されることにより、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)の樹脂付き金属箔が得られる。
【0165】
本発明は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0166】
本発明の一態様に係る金属張積層板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、前記金属箔は、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔であることを特徴とする。
【0167】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。
【0168】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0169】
まず、前記絶縁層に含まれる前記硬化物は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であるので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記金属張積層板から製造された配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。
【0170】
金属張積層板から製造された配線板において、隣接する配線間に起こる短絡の発生には、上述したように、配線板を得るために用いられた金属張積層板に備えられる金属箔に影響されることを、本発明者等は見出した。このことから、本発明者等は、種々検討した結果、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に接する金属箔として、前記絶縁層と接する側の表面と、その絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面とにおけるニッケル元素量がともに、上記のようにX線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔を用いると、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できることを見出した。すなわち、前記金属箔を用いることで、金属張積層板から製造された配線板における、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できると考えられる。このことから、前記金属箔を用いることで、金属張積層板から製造された配線板の絶縁信頼性を高めることができる。
【0171】
以上のことから、前記金属張積層板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができると考えられる。
【0172】
また、前記金属張積層板において、前記第1のニッケル元素量と前記第2のニッケル元素量との算術平均値が、3.0原子%以下であることが好ましい。
【0173】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。このことは、前記金属箔を用いることで、金属張積層板から製造された配線板における、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生をより抑制できることによると考えられる。
【0174】
また、前記金属張積層板において、前記金属箔は、前記絶縁層と接する側の表面にX線光電子分光法により確認可能な窒素元素が存在することが好ましい。
【0175】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。
【0176】
また、前記金属張積層板において、前記金属箔は、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される窒素元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、2.0原子%以上であることが好ましい。
【0177】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。
【0178】
また、前記金属張積層板において、前記金属箔は、ニッケルを含む防錆層を備えることが好ましい。
【0179】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。また、前記金属箔は、ニッケルを含む防錆層を備えることによって、金属張積層板から製造された配線板における配線の耐久性等を高めることができる。このようなニッケルを含む防錆層を備える金属箔であっても、金属箔における、前記第1のニッケル元素量及び前記第2のニッケル元素量が上記範囲内であれば、得られた金属張積層板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる。
【0180】
また、前記金属張積層板において、前記金属箔は、クロメート処理及びシランカップリング処理の少なくともいずれか一方で処理されていることが好ましい。
【0181】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性のより高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。また、金属張積層板から製造された配線板における配線の耐久性等も高めることができる。
【0182】
また、前記金属張積層板において、前記金属箔は、銅箔であることが好ましい。
【0183】
このような構成によれば、信号の伝送速度がより高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。このことは、配線板の配線が、銅箔由来となるため、伝送損失をより低減できることによると考えられる。
【0184】
また、前記金属張積層板において、前記絶縁層と接する側の表面の表面粗さが、十点平均粗さで2μm以下であることが好ましい。
【0185】
このような構成によれば、信号の伝送速度がより高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板を提供することができる。
【0186】
このことは、以下のことによると考えられる。前記金属箔の、前記絶縁層と接する側の表面の、表面粗さが低いことから、前記金属張積層板から製造された配線板に備えられる配線と絶縁層との接触面の平滑性も高いと考えられる。配線を伝送させる信号は、表皮効果により、配線を構成する導体の表面付近に集中すると考えられる。この効果は、配線を伝送させる信号が高周波になるほど、顕著になると考えられる。そして、前記配線と前記絶縁層との接触面が平滑になると、前記配線を流れる信号が、平滑性の高い表面付近を流れることになるので、伝送距離が短くなる。このことから、この配線板は、配線を形成する導体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。
【0187】
また、前記金属張積層板において、配線間距離の最小値が150μm以下である配線板を製造するために用いられることが好ましい。
【0188】
配線間距離、すなわち、隣り合う配線間に位置する絶縁層の幅が、150μm以下であると、イオンマイグレーションによる短絡が起きやすい傾向がある。そうであるにもかかわらず、前記金属張積層板であれば、このような短絡の発生を抑制できる絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる。また、配線間距離が150μm以下であっても、隣り合う配線間においてイオンマイグレーションの発生を充分に抑制できると、高密度化された配線板を好適に実現できる。これらのことから、前記金属張積層板は、配線間距離の最小値が150μm以下である、高密度化された配線板を製造するために好適に用いることができる。
【0189】
また、本発明の他の一態様に係る配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する配線とを備え、前記絶縁層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、前記配線は、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である配線であることを特徴とする。
【0190】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を提供することができる。
【0191】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0192】
まず、前記絶縁層に含まれる前記硬化物は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であるので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。
【0193】
前記配線板において、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に接する配線として、前記絶縁層と接する側の表面と、その絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面とにおけるニッケル元素量がともに、上記のようにX線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である配線を用いることで、絶縁信頼性を高めることができると考えられる。
【0194】
以上のことから、前記金属張積層板は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高いと考えられる。
【0195】
また、前記配線板において、前記絶縁層を複数層有し、前記配線が、前記絶縁層と前記絶縁層との間に配置されることが好ましい。
【0196】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い、多層の配線板を提供することができる。
【0197】
また、本発明の他の一態様に係る樹脂付き金属箔は、樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備え、前記樹脂層は、ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含み、前記金属箔は、前記樹脂層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記樹脂層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたとき、当該表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔であることを特徴とする。
【0198】
本発明によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる樹脂付き金属箔を提供することができる。
【0199】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0200】
まず、前記樹脂層に前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物が含まれる。このことから、配線板を製造する際に前記樹脂付き金属箔が用いられると、前記樹脂層が硬化して得られる絶縁層には、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物が硬化した硬化物が含まれる。すなわち、この硬化物は、前記ポリフェニレンエーテル化合物を含有する樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物であるので、誘電率及び誘電正接が低い。このことから、前記配線板は、配線周辺の誘電体に起因する伝送損失を低減でき、信号の伝送速度を高めることができると考えられる。
【0201】
前記樹脂層に接する金属箔としての、前記樹脂層と接する側の表面と、その樹脂層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面とにおけるニッケル元素量がともに、上記のようにX線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔は、前記樹脂付き金属箔が用いて得られた配線板において、前記絶縁層と接する側の表面と、その絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面とにおけるニッケル元素量がともに、上記のようにX線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔となる。このような金属箔を用いることで、樹脂付き金属箔を用いて製造された配線板における、隣接する配線間における、イオンマイグレーションの発生を抑制できると考えられる。このことから、前記金属箔を用いることで、樹脂付き金属箔から製造された配線板の絶縁信頼性を高めることができる。
【0202】
以上のことから、前記樹脂付き金属箔は、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができると考えられる。
【0203】
また、本発明の他の一態様に係る樹脂組成物は、絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一方の表面に接する金属箔とを備える金属張積層板に備えられる前記絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテル化合物を含有し、前記金属箔が、前記絶縁層と接する側の表面における、X線光電子分光法により測定される第1のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下であり、かつ、前記絶縁層と接する側の表面をSiO換算で3nm/分の速度となる条件で1分間スパッタしたときの表面における、X線光電子分光法により測定される第2のニッケル元素量が、X線光電子分光法により測定される全元素量に対して、4.5原子%以下である金属箔であることを特徴とする。
【0204】
このような構成によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる樹脂組成物を提供することができる。
【0205】
本発明によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板、樹脂付き金属箔、及び樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を提供することができる。
【0206】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【実施例
【0207】
[実施例1~9、及び比較例1~3]
本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いる各成分について説明する。
【0208】
(ポリフェニレンエーテル化合物)
変性PPE-1:
ポリフェニレンエーテルとクロロメチルスチレンとを反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテルである。
【0209】
具体的には、以下のように反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテルである。
【0210】
まず、温度調節器、攪拌装置、冷却設備、及び滴下ロートを備えた1リットルの3つ口フラスコに、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、末端水酸基数2個、重量平均分子量Mw1700)200g、p-クロロメチルスチレンとm-クロロメチルスチレンとの質量比が50:50の混合物(東京化成工業株式会社製のクロロメチルスチレン:CMS)30g、相間移動触媒として、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド1.227g、及びトルエン400gを仕込み、攪拌した。そして、ポリフェニレンエーテル、クロロメチルスチレン、及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイドが、トルエンに溶解するまで攪拌した。その際、徐々に加熱し、最終的に液温が75℃になるまで加熱した。そして、その溶液に、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20g/水20g)を20分間かけて、滴下した。その後、さらに、75℃で4時間攪拌した。次に、10質量%の塩酸でフラスコの内容物を中和した後、多量のメタノールを投入した。そうすることによって、フラスコ内の液体に沈殿物を生じさせた。すなわち、フラスコ内の反応液に含まれる生成物を再沈させた。そして、この沈殿物をろ過によって取り出し、メタノールと水との質量比が80:20の混合液で3回洗浄した後、減圧下、80℃で3時間乾燥させた。
【0211】
得られた固体を、H-NMR(400MHz、CDCl、TMS)で分析した。NMRを測定した結果、5~7ppmにビニルベンジル基(エテニルベンジル基)に由来するピークが確認された。これにより、得られた固体が、分子末端に、前記置換基としてビニルベンジル基を分子中に有する変性ポリフェニレンエーテルであることが確認できた。具体的には、エテニルベンジル化されたポリフェニレンエーテルであることが確認できた。この得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物は、上記式(10)で表され、Yがジメチルメチレン基(式(8)で表され、式(8)中のR32及びR33がメチル基である基)であり、Rが水素原子であり、Rがメチレン基である変性ポリフェニレンエーテル化合物であった。
【0212】
また、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数を、以下のようにして測定した。
【0213】
まず、変性ポリフェニレンエーテルを正確に秤量した。その際の重量を、X(mg)とする。そして、この秤量した変性ポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させ、その溶液に、10質量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液(TEAH:エタノール(体積比)=15:85)を100μL添加した後、UV分光光度計(株式会社島津製作所製のUV-1600)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した。そして、その測定結果から、下記式を用いて、変性ポリフェニレンエーテルの末端水酸基数を算出した。
【0214】
残存OH量(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×OPL×X)]×10
ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。また、OPLは、セル光路長であり、1cmである。
【0215】
そして、その算出された変性ポリフェニレンエーテルの残存OH量(末端水酸基数)は、ほぼゼロであることから、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基が、ほぼ変性されていることがわかった。このことから、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数からの減少分は、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数であることがわかった。すなわち、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数が、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数であることがわかった。つまり、末端官能基数が、2個であった。
【0216】
また、変性ポリフェニレンエーテルの、25℃の塩化メチレン中で固有粘度(IV)を測定した。具体的には、変性ポリフェニレンエーテルの固有粘度(IV)を、変性ポリフェニレンエーテルの、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計(Schott社製のAVS500 Visco System)で測定した。その結果、変性ポリフェニレンエーテルの固有粘度(IV)は、0.09dl/gであった。
【0217】
また、変性ポリフェニレンエーテルの分子量分布を、GPCを用いて、測定した。そして、その得られた分子量分布から、重量平均分子量(Mw)を算出した。その結果、Mwは、2300であった。
【0218】
変性PPE2:
ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル(式(11)に示す構造を有し、式(11)中、Rがメチル基であり、Yがジメチルメチレン基(式(8)で表され、式(8)中のR32及びR33がメチル基である基)である変性ポリフェニレンエーテル化合物、SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA9000、25℃の塩化メチレン中で固有粘度(IV)0.085dl/g、重量平均分子量Mw2000、末端官能基数1.8個)
未変性のポリフェニレンエーテル(未変性PPE):ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、固有粘度(IV)0.083dl/g、末端水酸基数1.9個、重量分子量Mw1700、上記式(15)で表され、Yがジメチルメチレン基(式(8)で表され、式(8)中のR32及びR33がメチル基である基)であるポリフェニレンエーテル)
【0219】
(硬化剤)
DVB:ジビニルベンゼン(炭素-炭素不飽和二重結合を分子末端に2つ有する熱硬化性硬化剤、新日鐵住金株式会社製のDVB810、分子量130)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(炭素-炭素不飽和二重結合を分子末端に3つ有する熱硬化性硬化剤、日本化成株式会社製のTAIC、重量平均分子量Mw249)
アセナフチレン:JFEケミカル株式会社製のアセナフチレン
【0220】
(その他)
Ricon181:スチレンブタジエン共重合体(クレイバレー社製のRicon181)
エポキシ化合物:ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂(DIC株式会社製のHP-7200)
シアネートエステル化合物:ビスフェノールA型シアネートエステル化合物(2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ロンザジャパン株式会社製のBADCy)
フェノールノボラック樹脂:フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製のTD2131)
【0221】
(開始剤)
PBP:α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製のパーブチルP(PBP))
金属石鹸:オクタン酸亜鉛(DIC株式会社製のZn-Octanate
イミダゾール化合物:2-エチル-4-イミダゾール(四国化成工業株式会社製の2E4MZ)
【0222】
(充填材)
シリカ1:ビニルシラン処理された球状シリカ(株式会社アドマテックス製のSC2300-SVJ)
シリカ2:エポキシシラン処理された球状シリカ(株式会社アドマテックス製のSC2300-SEJ)
【0223】
[樹脂組成物の調製方法]
次に、樹脂組成物の調製方法について説明する。
【0224】
まず、開始剤以外の各成分を下記表1に記載の配合割合で、固形分濃度が60質量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その混合物を、80℃になるまで加熱し、80℃のままで60分間攪拌した。その後、その攪拌した混合物を40℃まで冷却した後、開始剤を下記表1に記載の配合割合で添加することによって、ワニス状の硬化性組成物(ワニス)が得られた。その混合物を、60分間攪拌することによって、ワニス状の樹脂組成物(ワニス)を調製した。
【0225】
[金属張積層板の調製方法]
次に、得られたワニスをガラスクロスに含浸させた後、100~170℃で約3~6分間加熱乾燥することによりプリプレグを作製した。上記ガラスクロスは、具体的には、日東紡績株式会社製の♯1078タイプ、NEガラスである。その際、樹脂組成物の含有量(レジンコンテント)が約65質量%となるように調整した。
【0226】
次に、製造したプリプレグを2枚重ね合わせ、その両側に、それぞれ表1に示す下記金属箔を配置して被圧体とし、温度200℃、圧力3MPa(メガパスカル)の条件で100分加熱・加圧して両面に金属箔が接着された金属張積層板を作製した。
【0227】
(金属箔)
銅箔-1:分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤で全面を表面処理した銅箔(南亜プラスチック社製のTLC-V1、アミノシラン処理を施した銅箔、第1のニッケル元素量:0.1原子%、第2のニッケル元素量:2.0原子%、M面の十点平均粗Rz:1.3μm、厚み:18μm)
銅箔-2:分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤で全面を表面処理した銅箔(長春ジャパン株式会社製のVFPR1、アミノシラン処理を施した銅箔、第1のニッケル元素量:0.7原子%)、第2のニッケル元素量:4.4原子%、M面の十点平均粗Rz:1.3μm、厚み:18μm)
銅箔-3:分子中にビニル基を有するシランカップリング剤で全面を表面処理した銅箔(古河電気工業株式会社製のFV-WS、第1のニッケル元素量:1.2原子%、第2のニッケル元素量:5.0原子%、M面の十点平均粗Rz:1.3μm、厚み:18μm)
銅箔-4:分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤で全面を表面処理した銅箔(古河電気工業株式会社製のFV-WS(アミノ)、アミノシラン処理を施した銅箔、第1のニッケル元素量:1.2原子%、第2のニッケル元素量:5.0原子%、M面の十点平均粗Rz:1.3μm、厚み:18μm)
【0228】
[第1のニッケル元素量及び第2のニッケル元素量]
前記第1のニッケル元素量は、以下のようにして測定した。
【0229】
M面(接触面:絶縁層と接する側の表面)に対して、XPSによる表面元素分析を行った。なお、この表面元素分析は、M面(接触面)に、下記条件のX線を、真空下でM面に対して垂直方向から照射し、照射高さを調整し、試料のイオン化に伴い放出される光電子が最も強い強度で検出できる位置で行った。XPSとしては、アルバック・ファイ株式会社社製のPHI 5000 Versaprobeを用いて、下記の条件で測定した。
【0230】
使用X線:モノクロAl-Kα線
X線ビーム径:約100μmφ(25W、15kV)
分析領域:約100μmφ
上記測定により得られた値を、上記装置に備えられる解析ソフトに組み込まれた相対感度係数を用いて、定量換算した。
【0231】
この結果、XPSにより測定される全元素量に対するニッケル元素量を測定した。このニッケル元素量を、第1のニッケル元素量(M面最表面におけるニッケル元素量)とした。
【0232】
前記第2のニッケル元素量は、以下のようにして測定した。
【0233】
まず、Arイオン銃(2kV、7mA)で、Si上にSiOを100nm製膜したウエハを真空下でスパッタした。その際、スパッタにより、Siが露出するまでの時間を測定した。この時間から、スパッタによりSiOが除去される速度を算出した。そして、この速度が3nm/分の速度となる条件に調整した。この3nm/分の速度となる条件に調整されたArイオン銃で、金属箔のM面(接触面)を1分間真空下でスパッタした位置におけるニッケル元素量を、上記第1のニッケル元素量の測定方法と同様の方法で測定した。このとき得られたニッケル元素量を、第2のニッケル元素量(スパッタ後の位置におけるニッケル元素量)とした。
【0234】
なお、表1における「平均値」は、第1のニッケル元素量と第2のニッケル元素量との算術平均値である。
【0235】
[窒素元素量]
金属箔のM面(接触面)に対して、前記第1のニッケル元素量の測定方法と同様、XPSによる表面元素分析を行い、窒素元素量を測定した。
【0236】
[評価]
前記金属張積層板(評価基板)を、以下に示す方法により評価を行った。
【0237】
[伝送損失]
評価基板(金属張積層板)の一方の金属箔(銅箔)を加工して、線幅100~300μm、線長1000mm、線間20mmの配線を10本形成させた。この配線を形成させた基板の、配線を形成させた側の表面上に、前記プリプレグ2枚及び金属箔(銅箔)を2次積層することによって、3層板を作製した。なお、配線の線幅は、3層板を作製した後の配線の特性インピーダンスが50Ωとなるように調整した。
【0238】
得られた3層板に形成された配線の20GHzでの伝送損失(通過損失)(dB/m)は、ネットワーク・アナライザ(キーサイト・テクノロジー株式会社製のN5230A)を用いて測定した。
【0239】
[絶縁信頼性]
評価基板(金属張積層板)の両面にドライフィルムを貼り付け、所定の配線が形成されるように露光を行った後、塩化銅水溶液によって金属箔(銅箔)をエッチングした。そうすることによって、絶縁層上に、所定の配線が形成された。この配線としては、図6に示すように、一対の対向した櫛歯状配線51である。この一対の櫛歯状配線51は、まず、櫛歯状配線51における櫛歯を構成する配線52の配線幅(L)が等しい。そして、この櫛歯状配線51は、一対の対向した櫛歯状配線51における、それぞれの配線52が離間して交互に配置され、前記配線52が交互に配置される領域(ライン重なり部)53において、配線間距離(S)が等しい。このような配線が形成された基板のそれぞれの表面上に、前記プリプレグ2枚及び金属箔(銅箔)を2次積層することによって、3層板を作製した。この3層板としては、前記配線における、配線幅/配線間距離(L/S)が、80μm/80μm、100μm/100μm、100μm/150μm、及び100μm/200μmとなるものをそれぞれ用意した。なお、表1においては、それぞれを、80/80、100/100、100/150、及び100/200と表記する。
【0240】
得られた3層板における前記対向した櫛歯状配線間に100Vの電圧を、85℃、相対湿度85%の環境下で印加した。その配線間の抵抗値を、1時間毎に測定した。その結果、この抵抗値が、印加時間が1000時間までに10Ω未満にならなければ、「○」と評価した。前記抵抗値が10Ω未満になるまでの印加時間が、300時間以上1000時間以下であれば、「△」と評価し、前記抵抗値が10Ω未満になるまでの印加時間が、300時間未満であれば、「×」と評価した。
【0241】
[耐熱性]
前記評価基板を作製する際に、プリプレグを重ねる枚数を4枚にすることによって、両面に銅箔が接着された銅箔張積層板を得た。この形成された銅箔張積層板を50mm×50mmに切断し、両面銅箔をエッチングして除去した。このようにして得られた評価用積層体を、288℃の半田槽中に10秒間浸漬した。そして、浸漬した積層体に、膨れの発生の有無を目視で観察した。この観察を2つの積層体に対して行った。膨れの発生が確認されなければ(膨れの発生数が0であれば)、「○」と評価した。また、膨れの発生が確認されれば、「×」と評価した。
【0242】
上記各評価における結果は、表1に示す。なお、それぞれの金属張積層板は、表1の金属箔の欄において、「○」を付した銅箔を用いたことを示す。
【0243】
【表1】
表1からわかるように、第1のニッケル元素量(M面最表面におけるニッケル元素量)及び第2のニッケル元素量(スパッタ後の位置におけるニッケル元素量)が、ともに4.5原子%以下である金属箔を用いた場合(実施例1~9)は、そうではない金属箔を用いた場合(比較例1~4)と比較して、絶縁信頼性が高かった。また、実施例1~9は、絶縁層として、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物の硬化物を含む層ではない場合(比較例5)と比較して、伝送損失が少なかった。
【0244】
この出願は、2018年10月5日に出願された日本国特許出願特願2018-190283を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0245】
本発明を表現するために、上述において実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板を好適に製造することができる金属張積層板、樹脂付き金属箔、及び樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、信号の伝送速度が高く、かつ、絶縁信頼性の高い配線板が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6