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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】全館空調システム、及び、その制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/32 20180101AFI20240802BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240802BHJP
   F24F 11/39 20180101ALI20240802BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20240802BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F3/044
F24F11/39
F24F11/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021026123
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127893
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古門 健
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-014967(JP,A)
【文献】特開2010-198362(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138534(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/193714(WO,A1)
【文献】特開平09-184652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00ー11/89
F24F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、
吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、
前記空調装置及び前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記施設の温度と、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、前記空調装置から前記複数の部屋までの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定し、
前記第1異常があると判定された場合に、前記第1異常に関する情報を出力する
全館空調システム。
【請求項2】
さらに、吹出された前記空気を濾過するエアフィルタを備え、
前記搬送装置は、濾過された前記空気を前記複数の部屋のそれぞれに搬送し、
前記第1異常は、前記エアフィルタ又は前記搬送装置の故障である
請求項1に記載の全館空調システム。
【請求項3】
前記施設の前記温度は、前記複数の部屋のうち前記空調装置が配置された位置に最も近い部屋の温度である
請求項1又は2に記載の全館空調システム。
【請求項4】
全館空調システムの制御方法であって、
前記全館空調システムは、
吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、
吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、を備え、
前記制御方法は、
前記施設の温度と、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、前記空調装置から前記複数の部屋までの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定し、
前記第1異常があると判定された場合に、前記第1異常に関する情報を出力する
全館空調システムの制御方法。
【請求項5】
吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、
吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、
前記空調装置及び前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度と前記空調装置の設定温度との差、及び、前記空調装置が吹出す空気の温度である吹出温度と前記吸込温度との差に基づいて、前記空調装置の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定し、
前記第2異常があると判定された場合に、前記第2異常に関する情報を出力する
全館空調システム。
【請求項6】
前記制御装置は、さらに、前記空調装置の風量に基づいて、前記第2異常があるか否かを判定する
請求項5に記載の全館空調システム。
【請求項7】
前記制御装置は、さらに、
前記施設の温度と前記吸込温度との差に基づいて、前記空調装置から前記複数の部屋までの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定し、
前記第1異常があると判定された場合に、前記第1異常に関する情報を出力する
請求項5又は6に記載の全館空調システム。
【請求項8】
全館空調システムの制御方法であって、
前記全館空調システムは、
吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、
吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、を備え、
前記制御方法は、
前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度と前記空調装置の設定温度との差、及び、前記空調装置が吹出す空気の温度である吹出温度と前記吸込温度との差に基づいて、前記空調装置の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定し、
前記第2異常があると判定された場合に、前記第2異常に関する情報を出力する
全館空調システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全館空調システム、及び、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1台の空調装置により、複数の部屋を空調する全館空調システムが提案されている。このような全館空調システムとして、特許文献1には、複数の部屋を効率よく空調しうる換気空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-109410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の全館空調システム(換気空調システム)では、複数の部屋の温度(部屋温度)と複数の部屋の設定温度とが比較され、部屋温度が設定温度に達していない場合に、全館空調システムの異常があると判定される。しかし、異常があると判定された時点では、複数の部屋の部屋温度が設定温度とは異なる値になっており、つまりは、既に複数の部屋の部屋温度が不快な状態になっている。
【0005】
本発明は、部屋温度が不快な状態になる前に異常があることを判定し、ユーザに対処を促すことを可能とする全館空調システム及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る全館空調システムは、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、前記空調装置及び前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記施設の温度と、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、前記空調装置から前記複数の部屋までの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定し、前記第1異常があると判定された場合に、前記第1異常に関する情報を出力する。
【0007】
本発明の一態様に係る制御方法は、全館空調システムの制御方法であって、前記全館空調システムは、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、を備え、前記制御方法は、前記施設の温度と、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、前記空調装置から前記複数の部屋までの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定し、前記第1異常があると判定された場合に、前記第1異常に関する情報を出力する。
【0008】
本発明の一態様に係る全館空調システムは、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、前記空調装置及び前記搬送装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度と前記空調装置の設定温度との差、及び、前記空調装置が吹出す空気の温度である吹出温度と前記吸込温度との差に基づいて、前記空調装置の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定し、前記第2異常があると判定された場合に、前記第2異常に関する情報を出力する。
【0009】
本発明の一態様に係る制御方法は、全館空調システムの制御方法であって、前記全館空調システムは、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置と、吹出された前記空気を施設の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、を備え、前記制御方法は、前記空調装置が吸込む空気の温度である吸込温度と前記空調装置の設定温度との差、及び、前記空調装置が吹出す空気の温度である吹出温度と前記吸込温度との差に基づいて、前記空調装置の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定し、前記第2異常があると判定された場合に、前記第2異常に関する情報を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の全館空調システム及びその制御方法は、部屋温度が不快な状態になる前に異常があることを判定し、ユーザに対処を促すことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、全館空調システムの動作例1のフローチャートである。
図4図4は、全館空調システムの動作例2のフローチャートである。
図5図5は、変形例1に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
図6図6は、変形例2に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0014】
(実施の形態)
[全館空調システムの構成]
以下、本実施の形態に係る全館空調システム10の構成について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る全館空調システム10の概略構成を示す図である。図2は、本実施の形態に係る全館空調システム10の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図1及び図2が示すように、全館空調システム10は、1台の空調装置21を用いて、施設90内の複数の部屋90a~90cの温度を調整することができるシステムである。複数の部屋の数は特に限定されない。全館空調システム10は、全館空調装置20と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50と、複数の温度センサ60と、制御装置80とを備える。全館空調装置20、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、及び、複数の温度センサ60のそれぞれは、制御装置80と通信する機能を有する。
【0017】
全館空調装置20は、施設90の外から取り入れた空気(外気)、又は、施設90の中から取り入れた空気(内気)の温度を調整して複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送することにより、複数の部屋90a~90cの温度を制御する。全館空調装置20は、空調装置21と、エアフィルタ22と、搬送装置23とを備える。
【0018】
空調装置21は、いわゆるエアーコンディショナである。空調装置21は、制御装置80の制御に基づいて、空調装置21の吸込口から空気を吸込んで、この吸込んだ空気の温度を調整する。さらに、空調装置21は、制御装置80の制御に基づいて、温度が調整された空気を、空調装置21の吹出口から吹出す。なお、空調装置21が吸込む空気は、施設90の外から取り入れた空気、又は、施設90の中から取り入れた空気である。また、空調装置21は、センサなどにより、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度と、吹出す空気の温度である吹出温度と、を計測する。
【0019】
エアフィルタ22は、全館空調装置20内に取り入れられた空気(外気又は内気)を濾過する。また、エアフィルタ22は、空調装置21から吹出された空気を濾過する。エアフィルタ22としては、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどが例示される。
【0020】
搬送装置23は、制御装置80の制御に基づいて、空調装置21によって温度が調整され吹出された空気であってエアフィルタ22によって濾過された空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。搬送装置23は、搬送ファン23aと、分岐チャンバ23bと、複数のVAV(Variable Air Volume)ダンパ23cと、複数の送風口23dとを備える。搬送装置23は、1つの部屋に対して、VAVダンパ23c、及び、送風口23dを1組備える。
【0021】
搬送装置23において、分岐チャンバ23bは、複数の部屋90a~90cのそれぞれに向けて分岐された複数の通風管(いわゆるダクト)を含む。VAVダンパ23cは、分岐チャンバ23bに含まれる複数の通風管のそれぞれに設けられる。
【0022】
また、空調装置21から吹出された空気が、エアフィルタ22及び搬送装置23を経由して、複数の部屋90a~90cに至るまでの経路を、空調装置21から複数の部屋90a~90cまでの空気の搬送経路とする。つまり、この空気の搬送経路とは、空気の通り道を意味する。
【0023】
外気取入ファン30は、制御装置80の制御に基づいて、施設90の外の空気を施設90内に取り入れて全館空調装置20に搬送する。
【0024】
内気取入ファン40は、制御装置80の制御に基づいて、施設90の内の空気(より詳細には、施設90内の部屋90a~90cを含む施設90内を循環した空気)を内気取入ファン40が有する内気取入れ口から取入れ、全館空調装置20に搬送する。内気取入ファン40によって全館空調装置20に搬送される空気は、加湿装置50によって湿度が調整されていてもよい。
【0025】
なお、図1及び図2では、内気取入ファン40を用いて、全館空調装置20に取り入れる構成を記載しているが、本構成例は一例である。全館空調システム10は、内気取入ファン40を備えず、搬送ファン23aにより発生する気圧差で施設90内の空気を取入れる構成としてもよい。
【0026】
加湿装置50は、施設90内の空気(より詳細には、施設90内の部屋90a~90cを含む施設90内を循環した空気)の湿度を上昇させる。
【0027】
また、図1及び図2では、加湿装置50は、空調装置21の吸込み側に設置される例が記載されているが、これに限られない。加湿装置50は、エアフィルタ22と搬送ファン23aとの間など、空調装置21の吹出口より下側(つまり、空調装置21から吹出された空気を加湿することができる位置)に設置される構成でもよい。このように構成することで、加湿を使用する暖房運転時に、温められた空気を加湿することが可能となり、効率的な加湿を実行できる。
【0028】
温度センサ60は、施設90内に配置され、当該温度センサが配置された場所の温度を計測する。より具体的には、温度センサ60は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに1つずつ配置され、当該温度センサ60が配置された部屋の中の温度である部屋温度を計測する。さらに、温度センサ60は、施設90内の複数の部屋90a~90cを除く他の場所(廊下及び階段など)に配置されてもよく、当該温度センサ60が配置された他の場所の温度を計測してもよい。温度センサ60は通信機能を有し、計測された施設90の温度(部屋温度又は他の場所の温度など)を示す温度データを制御装置80に送信することができる。
【0029】
制御装置80は、全館空調装置20(つまりは、空調装置21、エアフィルタ22及び搬送装置23)と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50とを制御する制御装置である。制御装置80は、操作受付部81と、制御部82と、記憶部83と、通信部84とを備える。
【0030】
操作受付部81は、ユーザの操作を受け付けるユーザインターフェース部である。操作受付部81は、例えば、タッチパネルによって実現されるが、タッチパネル以外に、ハードウェアボタンを含んでもよい。なお、制御装置80は、液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される表示部85を備え、操作受付部81及び表示部85はGUI(Graphical User Interface)を構成してもよい。また、操作受付部81は、ユーザから、複数の部屋90a~90cのそれぞれの設定温度(言い換えれば、目標温度)である第1設定温度を決定する操作を受付ける。
【0031】
制御部82は、通信部84に制御信号を送信させることにより、全館空調装置20、外気取入ファン30、内気取入ファン40、及び、加湿装置50を制御する。また、制御部82は、空調装置21の設定温度である第2設定温度を決定する。制御部82は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0032】
記憶部83は、制御部82が実行する制御プログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部83は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0033】
通信部84は、制御装置80が局所通信ネットワークを介して、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、及び、温度センサ60のそれぞれと通信を行うための通信モジュール(通信回路)である。通信部84によって行われる通信は、例えば、無線通信であるが、有線通信であってもよい。通信に用いられる通信規格についても、例えば、ECHONET Lite(登録商標)などの規格であってもよいが、特に限定されない。
【0034】
[動作例1]
次に、全館空調システム10の動作例1について説明する。
【0035】
図3は、全館空調システム10の動作例1のフローチャートである。
【0036】
まず、通信部84は、施設90の温度を示す温度データと、吸込温度を示す温度データとを取得する(S10)。
【0037】
より具体的には、通信部84は、温度センサ60から、施設90の温度を示す温度データを取得する。ここでは、施設90の温度として、複数の部屋90a~90cのうち空調装置21が配置された位置に最も近い部屋の現在における部屋温度(以下、当該部屋温度と記載)が用いられる。つまり、通信部84は、当該最も近い部屋の温度センサ60から、当該部屋温度を示す温度データを取得する。また、通信部84は、空調装置21から、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度を示す温度データを取得する。取得された2つの温度データは、記憶部83に記憶される。
【0038】
次に制御部82は、記憶部83に記憶されている施設90の温度と吸込温度との差を算出する(S20)。以下では、施設90の温度と吸込温度との差をTsとする。また、Tsは、空調装置21が暖房運転する場合には下記の式(1)を、空調装置21が冷房運転する場合には下記の式(2)を満たす。
【0039】
(1) Ts = 吸込温度 - 施設90の温度(当該部屋温度)
(2) Ts = 施設90の温度(当該部屋温度) - 吸込温度
【0040】
本実施の形態においては、上記の通り、当該部屋温度が施設90の温度として利用される。
【0041】
さらに、制御部82は、算出されたTsに基づいて、第1異常があるか否かを判定する(S30)。第1異常とは、空調装置21から複数の部屋90a~90cまでの空気の搬送経路に関する異常である。ここでは、制御部82は、算出されたTsが所定の値以内か否かを判定することで、第1異常があるか否かを判定する。所定の値とは、例えば、1℃であるが、これに限られず2℃であってもよく、3℃であってもよい。
【0042】
ここで、空気の搬送経路に関する異常である第1異常に関して説明する。
【0043】
空気の搬送経路に関する異常とは、例えば、エアフィルタ22の故障又は搬送装置23の故障である。エアフィルタ22の故障とはエアフィルタ22の目詰まりなどであり、搬送装置23の故障とは搬送ファン23aの故障又は分岐チャンバ23bの複数の通風管の折れ曲がりなどである。このような空気の搬送経路に関する異常である第1異常が起こると、空気の搬送経路に圧損が生じる場合がある。
【0044】
この圧損が生じた状態では、空調装置21から吹出された空気が複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送され難くなる。また、空調装置21から吹出された空気の一部は、空調装置21の吸込口側に回り込んでしまい、空調装置21によって再度吸込まれる。つまり、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度が、暖房運転時には高くなり易く、冷房運転時には低くなり易くなる。この場合には、Tsが大きくなる。
【0045】
つまりは、第1異常が起こると、Tsが大きくなる。この現象を利用して、制御部82は、Tsが所定の値より大きいと第1異常があると判定し、Tsが所定の値以下であると第1異常がないと判定する。
【0046】
また、上記の通り、第1異常が発生した状態においては、複数の部屋90a~90cには温度調整された空気が搬送され難くなる。しかし、温度調整された空気が搬送され難くなったとしても、暖房運転時に複数の部屋90a~90cの部屋の温度がすぐに低下するわけではなく、また、冷房運転時に複数の部屋90a~90cの部屋の温度がすぐに上昇するわけではない。つまり、第1異常が発生しても、複数の部屋90a~90cの部屋温度が、すぐに、第1設定温度とは大きく異なる値になるわけではない。つまり、本実施の形態においては、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に、制御部82はTsに基づいて第1異常があるか否かを判定することができる。
【0047】
さらに、第1異常があると判定された場合(S30でyes)には、制御部82は、第1異常に関する情報をユーザに報知する(S40)。つまり、制御部82は、第1異常に関する情報を出力する。ここでは、制御部82は、表示部85に、第1異常に関する情報を表示させる。より具体的には、制御部82は、表示部85に、第1異常があることを示す情報を表示させる。ここでは、第1異常があることを示す情報とは、「空気の搬送経路に関する異常が発生しています」又は「エアフィルタの掃除をしてください」などの文字が記載された画像であってもよい。これにより、全館空調システム10を利用するユーザに、第1異常への対処を促すことができる。
【0048】
第1異常がないと判定された場合(S30でno)又はステップS40の処理が行われた後に、制御部82は、ステップS30の処理が行われてから所定時間が経過したか否かを判断する(S50)。所定時間(例えば10分間)が経過していなければ(ステップS50でno)、ステップS50の処理が繰り返される。また、所定時間が経過していれば(ステップS50でyes)、ステップS10から処理が繰り返される。
【0049】
[動作例2]
次に、全館空調システム10の動作例2について説明する。
【0050】
図4は、全館空調システム10の動作例2のフローチャートである。
【0051】
まず、通信部84は、吸込温度を示す温度データと、吹出温度を示す温度データと、空調装置21の設定温度(第2設定温度)を示す温度データとを取得する(S11)。より具体的には、通信部84は、空調装置21から、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度を示す温度データと、空調装置21が吹出す空気の温度である吹出温度を示す温度データと、空調装置21の第2設定温度を示す温度データとを取得する。取得された3つの温度データは、記憶部83に記憶される。
【0052】
なお、第2設定温度は、複数の部屋90a~90cのそれぞれの部屋温度と、複数の部屋90a~90cのそれぞれの第1設定温度と、吸込温度と基づいて、予め決定され、記憶部83に記憶されていてもよい。第2設定温度が予め記憶部83に記憶されている場合、通信部84が空調装置21から第2設定温度を取得する必要はない。
【0053】
次に制御部82は、記憶部83に記憶されている、吸込温度と第2設定温度との差、及び、吹出温度と吸込温度との差を算出する(S21)。以下では、吸込温度と第2設定温度との差をTp、吹出温度と吸込温度との差をTaとする。また、Tp及びTaは、空調装置21が暖房運転する場合には下記の式(3)及び(4)を、空調装置21が冷房運転する場合には下記の式(5)及び(6)を満たす。
【0054】
(3) Tp = 第2設定温度 - 吸込温度
(4) Ta = 吹出温度 - 吸込温度
(5) Tp = 吸込温度 - 第2設定温度
(6) Ta = 吸込温度 - 吹出温度
【0055】
Tpは、空調装置21の空調負荷を示す値に相当する。さらに、Taは、空調装置21が生み出した熱量を示す値に相当する。
【0056】
さらに、制御部82は、算出されたTp及びTaに基づいて、第2異常があるか否かを判定する(S31)。
【0057】
第2異常とは、空調装置21の空調能力に関する異常である。より具体的には、第2異常とは、空調装置21が吸込んだ空気の温度を調整する能力に関する異常である。第2異常がある場合とは、例えば、空調装置21の冷媒ガスが不足しているため空調装置21が空気を加熱又は冷却し難くなっている場合を示す。
【0058】
ステップS31では、より具体的には、制御部82は、Tpと当該TpについてのTaの範囲とが対応付けられた表を参照することで、第2異常があるか否かを判定する。表1は、Tpと当該TpについてのTaの範囲とが対応付けられた表である。この表は、記憶部83に、予め記憶されている。
【0059】
【表1】
【0060】
制御部82は、Taの値が表1が示すTaの範囲内である場合には第2異常がないと判定し、Taの値が表1が示すTaの範囲外である場合には第2異常があると判定する。つまり、空調装置21が生み出した熱量を示す値(Ta)が、空調装置21の空調負荷を示す値(Tp)に対応した値(表1のTaの範囲)を満たさない場合には、第2異常があると判定する。換言すると、ステップS31では、空調負荷(Tp)に応じて熱量を示す値(Ta)の適正条件が設けられ、制御部82はTaが適正条件を満たしているか否かを判定する。Taが適正条件を満たしていない場合とは、空調装置21の空調能力が低下しており、つまりは、空調装置21が吸込んだ空気を十分に加熱又は冷却できていない場合に相当する。この場合、制御部82によって第2異常があると判定される。なお、Tp≦0の場合には、Taの値に関係なく第2異常がないと判定される。
【0061】
また、空調装置21が吸込んだ空気を十分に加熱又は冷却できていない場合でも、暖房運転時に複数の部屋90a~90cの部屋の温度がすぐに低下するわけではなく、また、冷房運転時に複数の部屋90a~90cの部屋の温度がすぐに上昇するわけではない。つまり、第2異常が発生しても、複数の部屋90a~90cの部屋温度が、すぐに、第1設定温度とは大きく異なる値になるわけではない。つまり、本実施の形態においては、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に、制御部82はTa及びTpに基づいて第2異常があるか否かを判定することができる。
【0062】
さらに、第2異常があると判定された場合(S31でyes)には、制御部82は、第2異常に関する情報をユーザに報知する(S41)。つまり、制御部82は、第2異常に関する情報を出力する。ここでは、制御部82は、表示部85に、第2異常に関する情報を表示させる。より具体的には、制御部82は、表示部85に、第2異常があることを示す情報を表示させる。ここでは、第2異常があることを示す情報とは、「空調装置21の空調能力に関する異常が発生しています」又は「保守者に連絡をしてください」などの文字が記載された画像であってもよい。これにより、全館空調システム10を利用するユーザ又は保守者に、第2異常への対処を促すことができる。
【0063】
第2異常がないと判定された場合(S31でno)又はステップS41の処理が行われた後に、制御部82は、ステップS31の処理が行われてから所定時間が経過したか否かを判断する(S51)。所定時間(例えば10分間)が経過していなければ(ステップS51でno)、ステップS51の処理が繰り返される。また、所定時間が経過していれば(ステップS51でyes)、ステップS11から処理が繰り返される。
【0064】
なお、本動作例では、制御部82は、算出されたTp及びTaに基づいて、第2異常があるか否かを判定したが、これに限られない。例えば、制御部82は、算出されたTp及びTaと、空調装置21の風量(つまり空調装置21が吹出す空気の量)とに基づいて、第2異常があるか否かを判定してもよい。この場合には、例えば、空調装置21の風量ごとに、互いにTaの範囲が異なる上記の表が用いられるとよい。この複数の表は、予め記憶部83に記憶されているとよい。一例として、表1が示す場合よりも空調装置21の風量が高い場合の表について、表2を用いて説明する。表2は、Tpと当該TpについてのTaの範囲とが対応付けられた他の例の表である。
【0065】
【表2】
【0066】
つまり、空調装置21の風量が高くなると、Taの下限値が低くなる。このようにして、制御部82が第2異常があるか否かを判定してもよい。
【0067】
また、動作例1の処理と動作例2の処理とが同時に行われてもよく、どちらか一方が先に行われた後に他方が行われてもよい。例えば、動作例1の処理が行われた後に動作例2の処理が行われた場合について説明する。この場合、図3が示すステップS50でyesのとき、次に図4が示すステップS11~ステップS51の処理が行われてもよい。さらに、このステップS51でyesのとき、次に図3が示すステップS10の処理が始まってもよい。
【0068】
なお、動作例2においては、Tp、Ta及び空調装置21の風量などに基づいて、第2異常があるか否かが判定されたが、これに限られない。例えば、制御部82は、外気温、空調装置21が吸込んだ空気の湿度等が用いられて、第2異常があるか否かが判定されてもよい。
【0069】
[変形例1]
以下、変形例1に係る全館空調システム10aの構成について説明する。
【0070】
図5は、変形例1に係る全館空調システム10aの概略構成を示す図である。
【0071】
図5が示すように、全館空調システム10aは、全館空調装置20に代えて全館空調装置20aを備える。全館空調装置20aは、空調装置21と、エアフィルタ22と、搬送装置24とを備える。
【0072】
搬送装置24は、制御装置80の制御に基づいて、空調装置21によって温度が調整された空気であってエアフィルタ22を通過した空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。搬送装置24は、複数の搬送ファン24aと、複数のダクト24bと、複数の送風口24cとを備える。搬送装置24は、1つの部屋に対して、搬送ファン24a、ダクト24b、及び、送風口24cを1組備える。
【0073】
このような全館空調システム10aは、全館空調システム10と同様に、上記の動作例1及び動作例2の動作を行うことができる。
【0074】
[変形例2]
以下、変形例2に係る全館空調システム10bの構成について説明する。
【0075】
全館空調システム10bは、クライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
【0076】
図6は、変形例2に係る全館空調システム10bの機能構成を示すブロック図である。
【0077】
全館空調システム10bは、空調装置21及び搬送装置23(つまり、全館空調装置20)と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50と、複数の温度センサ60と、制御装置80と、ルータ100と、サーバ装置110とを備える。
【0078】
ここでは、空調装置21、搬送装置23、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の温度センサ60、及び、制御装置80のそれぞれは、ルータ100を介してインターネットなどの広域通信ネットワーク120に接続可能である。空調装置21、搬送装置23、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の温度センサ60、及び、制御装置80のそれぞれは、具体的には、ルータ100を介してサーバ装置110と通信が可能である。サーバ装置110は、施設90外に設置されるクラウドサーバである。
【0079】
このような全館空調システム10bにおいては、動作例1及び動作例2において制御装置80が行うと説明された処理の一部又は全部をサーバ装置110が実行することができる。
【0080】
また、本変形例においては、制御装置80は、異常(第1異常又は第2異常)があると判定した場合に、広域通信ネットワーク120を通じて、異常内容を示す情報を、全館空調システム10bの保守者に送信する。全館空調システム10bの保守者とは、例えば、全館空調システム10bのメーカであり、制御装置80は、異常内容を示す情報を当該メーカが保有するサーバ装置などに送信する。
【0081】
これにより、全館空調システム10bが異常内容を示す情報を保守者に送信することが可能となるため、ユーザ自身が保守者に保守依頼などの通知を行わなくても、異常に対して素早く適切な対応を行うことが可能になる。
【0082】
記憶部83には、異常判定に用いる情報(吸込温度、吹出温度、第2設定温度、外気温、空調装置21の風量、空調装置21が吸込んだ空気の湿度など)の履歴が記憶されているとよい。制御装置80が異常内容を示す情報を全館空調システム10bの保守者に送信する際に、記憶部83に記憶されている異常判定に用いる情報も送信されるとよい。
【0083】
これにより、ユーザ自身が保守者に保守依頼などの通知を行った場合に、保守者は、送信された異常判定に用いる情報を問題解析に活用することが可能となる。
【0084】
なお、全館空調システム10bは、全館空調システム10にサーバ装置110が追加された構成であるが、本発明は、変形例1に係る全館空調システム10aにサーバ装置110が追加された構成のクライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
【0085】
[効果など]
以上説明したように、本実施の形態に係る全館空調システム10は、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置21と、吹出された空気を施設90の複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する搬送装置23と、制御装置80と、を備える。制御装置80は、空調装置21及び搬送装置23を制御する。制御装置80は、施設90の温度と、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、空調装置21から複数の部屋90a~90cまでの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定する。制御装置80は、第1異常があると判定された場合に、第1異常に関する情報を出力する。
【0086】
また、本実施の形態においては、制御方法は、全館空調システム10の制御方法である。全館空調システム10は、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置21と、吹出された空気を施設90の複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する搬送装置23と、を備える。制御方法は、施設90の温度と、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度との差に基づいて、空調装置21から複数の部屋90a~90cまでの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定する。制御方法は、第1異常があると判定された場合に、第1異常に関する情報を出力する。
【0087】
上記の通り、第1異常が起こると、Tsが大きくなる。この現象を利用して、制御部82は、Tsが所定の値より大きいと第1異常があると判定する。また、複数の部屋90a~90cが不快な状況になる前に、制御部82はTsに基づいて第1異常があるか否かを判定することができる。
【0088】
さらに、第1異常があることが出力されるため、ユーザに第1異常を解消するための対処を促すことができる。
【0089】
以上まとめると、本実施の形態に係る全館空調システム10及び制御方法は、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に異常があることを判定し、ユーザに対処を促すことができる。
【0090】
また、本実施の形態においては、全館空調システム10は、さらに、吹出された空気を濾過するエアフィルタ22を備える。搬送装置23は、濾過された空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。第1異常は、エアフィルタ22又は搬送装置23の故障である。
【0091】
これにより、本実施の形態に係る全館空調システム10は、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に、エアフィルタ22又は搬送装置23の故障(つまりは、異常)があることを判定し、ユーザに対処を促すことができる。
【0092】
また、本実施の形態においては、施設90の温度は、複数の部屋90a~90cのうち空調装置21が配置された位置に最も近い部屋の温度である。
【0093】
これにより、より正確なTsの値が得られるため、制御装置80が第1異常があるか否かを判定することが容易になる。
【0094】
また、本実施の形態においては、全館空調システム10は、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置21と、吹出された空気を施設90の複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する搬送装置23と、制御装置80と、を備える。制御装置80は、空調装置21及び搬送装置23を制御する。制御装置80は、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度と空調装置21の設定温度との差、及び、空調装置21が吹出す空気の温度である吹出温度と吸込温度との差に基づいて、空調装置21の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定する。制御装置80は、第2異常があると判定された場合に、第2異常に関する情報を出力する。
【0095】
また、本実施の形態においては、制御方法は、全館空調システム10の制御方法である。全館空調システム10は、吸込んだ空気を温度調整して吹出す空調装置21と、吹出された空気を施設90の複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する搬送装置23と、を備える。制御方法は、空調装置21が吸込む空気の温度である吸込温度と空調装置21の設定温度との差、及び、空調装置21が吹出す空気の温度である吹出温度と吸込温度との差に基づいて、空調装置21の空調能力に関する異常である第2異常があるか否かを判定する。制御方法は、第2異常があると判定された場合に、第2異常に関する情報を出力する。
【0096】
上記のように、空調負荷(Tp)に応じて熱量を示す値(Ta)の適正条件が設けられ、制御部82はTaが適正条件を満たしているか否かを判定する。Taが適正条件を満たしていない場合とは、空調装置21の空調能力が低下している場合に相当する。この場合、制御部82によって第2異常があると判定される。
【0097】
さらに、第2異常があることが出力されるため、ユーザに第2異常を解消するための対処を促すことができる。
【0098】
以上まとめると、本実施の形態に係る全館空調システム10及び制御方法は、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に異常があることを判定し、ユーザに対処を促すことができる。
【0099】
また、本実施の形態においては、制御装置80は、さらに、空調装置21の風量に基づいて、第2異常があるか否かを判定する。
【0100】
これにより、より正確に第2異常があるか否かを判定することが容易になる。
【0101】
また、本実施の形態においては、制御装置80は、さらに、施設90の温度と吸込温度との差に基づいて、空調装置21から複数の部屋90a~90cまでの空気の搬送経路に関する異常である第1異常があるか否かを判定する。制御装置80は、第1異常があると判定された場合に、第1異常に関する情報を出力する。
【0102】
上記の通り、第1異常が起こると、Tsが大きくなる。この現象を利用して、制御部82は、Tsが所定の値より大きいと第1異常があると判定する。また、複数の部屋90a~90cが不快な状況になる前に、制御部82はTsに基づいて第1異常があるか否かを判定することができる。
【0103】
さらに、第1異常があることが出力されるため、ユーザに第1異常を解消するための対処を促すことができる。
【0104】
以上まとめると、本実施の形態に係る全館空調システム10は、複数の部屋90a~90cの部屋温度が不快な状態になる前に異常があることを判定し、ユーザに対処を促すことができる。
【0105】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0106】
また、上記実施の形態及び変形例において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態及び変形例における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間では、無線通信が行われてもよいし、有線通信が行われてもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。また、上記実施の形態において2つの装置が通信を行う場合、2つの装置間には図示されない中継装置が介在してもよい。
【0108】
また、上記実施の形態及び変形例のフローチャートで説明された処理の順序は、一例である。複数の処理の順序は変更されてもよいし、複数の処理は並行して実行されてもよい。
【0109】
上記の表1及び表2においては、Taの範囲のそれぞれには、下限値のみが設けられていたが、これに限られない。例えば、Taの範囲のそれぞれは、表1及び表2に示す下限値に加え、上限値が設定されていてもよい。上限値は、例えば、対応する下限値に2℃足した値でもよく、4℃足した値でもよく、6℃足した値でもよい。
【0110】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0111】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0112】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0113】
例えば、本発明は、コンピュータによって実行される全館空調システムの制御方法として実現されてもよいし、このような制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、全館空調システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。全館空調システムは、例えば、制御装置に相当する単一の装置として実現されてもよいし、サーバ装置に相当する単一の装置として実現されてもよい。全館空調システムが複数の装置によって実現される場合、全館空調システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0115】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10 全館空調システム
20 全館空調装置
21 空調装置
22 エアフィルタ
23、24 搬送装置
80 制御装置
90 施設
90a、90b、90c 部屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6