(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理の異常判定システムおよび異常判定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240802BHJP
H05H 1/00 20060101ALN20240802BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 103
H01L21/31 C
H05H1/00 A
H05H1/46 A
(21)【出願番号】P 2021550460
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033110
(87)【国際公開番号】W WO2021065295
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019180533
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々村 勝
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-363405(JP,A)
【文献】特開2019-133785(JP,A)
【文献】国際公開第2004/019396(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0086063(KR,A)
【文献】特開2018-041217(JP,A)
【文献】特開2008-016517(JP,A)
【文献】特開2002-093676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0159439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/00-21/02
H01L 21/04-21/16
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、
前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、
前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値を記憶する記憶部と、
前記監視データと前記閾値とに基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える、プラズマ処理の異常判定システム。
【請求項2】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記閾値から外れた前記監視データに基づいて前記レシピの変更が必要であるか否かをさらに判定する、請求項1に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項3】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記閾値から外れた前記監視データに基づいて、前記プラズマ処理装置のメンテナンスが必要であるか否かをさらに判定する、請求項1または2に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項4】
さらに報知部を備え、
前記メンテナンスが必要である場合、前記報知部は、前記プラズマ処理装置をメンテナンスするよう通知する、請求項3に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項5】
さらに発注部を備え、
前記メンテナンスが必要である場合、前記発注部は、異常を生じさせた前記プラズマ処理装置の部品を発注する、請求項3または4に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項6】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記閾値から外れた前記監視データに基づいて、前記プラズマ処理を中止するか否かをさらに判定する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項7】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記閾値から外れた前記監視データと、前記第1処理態様とは前記ワークの枚数が異なる第2処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に前記センサで取得され、かつ、前記監視データに対応する参考履歴と、に基づいて、前記プラズマ処理の異常の原因が前記ワークであるか否かをさらに判定する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項8】
前記ワークに対する前記プラズマ処理が適正であったか否かの評価情報を、前記プラズマ処理後に取得する取得部をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記評価情報に基づいて、前記閾値の変更が必要であるか否かをさらに判定する、請求項8に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項10】
レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、
前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、
プラズマ処理される前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に前記センサで取得され、かつ、前記監視データに対応する監視履歴を記憶する記憶部と、
前記監視データと前記監視履歴との差に基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える、プラズマ処理の異常判定システム。
【請求項11】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記差に対して予め設定されている許容値を超えた前記監視データに基づいて、前記レシピの変更が必要であるか否かをさらに判定する、請求項10に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項12】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記差に対して予め設定されている許容値を超えた前記監視データに基づいて、前記プラズマ処理装置のメンテナンスが必要であるか否かをさらに判定する、請求項10または11に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項13】
さらに報知部を備え、
前記メンテナンスが必要である場合、前記報知部は、前記プラズマ処理装置をメンテナンスするよう通知する、請求項12に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項14】
さらに発注部を備え、
前記メンテナンスが必要である場合、前記発注部は、異常を生じさせた前記プラズマ処理装置の部品を発注する、請求項12または13に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項15】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記差に対して予め設定されている許容値を超えた前記監視データに基づいて、前記プラズマ処理を中止するか否かをさらに判定する、請求項10~14のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項16】
前記プラズマ処理に異常があると判定された場合、
前記判定部は、前記差に対して予め設定されている許容値を超えた前記監視データと、前記第1処理態様とは前記ワークの枚数が異なる第2処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に前記センサで取得され、かつ、前記監視データに対応する参考履歴と、に基づいて、前記プラズマ処理の異常の原因が前記ワークであるか否かをさらに判定する、請求項10~15のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項17】
前記ワークに対する前記プラズマ処理が適正であったか否かの評価情報を、前記プラズマ処理後に取得する取得部をさらに備える、請求項10~16のいずれか一項に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項18】
前記判定部は、前記評価情報に基づいて、前記差に対して予め設定されている許容値の変更が必要であるか否かをさらに判定する、請求項17に記載のプラズマ処理の異常判定システム。
【請求項19】
複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、
前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、
前記監視データと、前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値とに基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える、プラズマ処理の異常判定方法。
【請求項20】
複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、
前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、
前記監視データと、プラズマ処理される前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に取得され、かつ、前記監視データに対応する監視履歴と、の差を算出する算出工程と、
前記差に基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える、プラズマ処理の異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理の異常判定システムおよび異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、プラズマを用いてウエハや基板の表面改質やクリーニングを行うプラズマ処理技術が知られている。適切なプラズマ処理を行うために、特許文献1には、プラズマ放電の変化に応じて誘発される電位変化を監視し、この電位変化から異常放電の有無を判定することが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエハや基板の表面改質やクリーニングを目的とするプラズマ処理では、スループットを高めるため、複数枚のワークあるいは複数種のワークが一度に処理される場合がある。ワークの枚数および種類によって、プラズマ処理装置の高周波回路におけるインピーダンスは変化する。さらに、プラズマ処理の異常発生メカニズムには、ワークの材質や形状、吸湿状態などのコンディションやプラズマ処理装置の汚染等、複数種類の要因が影響する。そのため、プラズマ処理の異常を高精度で判定することは、極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値を記憶する記憶部と、前記監視データと前記閾値とに基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える、プラズマ処理の異常判定システムに関する。
【0006】
本発明の他の一局面は、レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、プラズマ処理される前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に前記センサで取得され、かつ、前記監視データに対応する監視履歴を記憶する記憶部と、前記監視データと前記監視履歴との差に基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える、プラズマ処理の異常判定システムに関する。
【0007】
本発明のさらに他の一局面は、複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、前記監視データと、前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値とに基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える、プラズマ処理の異常判定方法に関する。
【0008】
本発明のさらに他の一局面は、複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、前記ワークおよびプラズマ処理中の前記プラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、前記監視データと、プラズマ処理される前記ワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に取得され、かつ、前記監視データに対応する監視履歴と、の差を算出する算出工程と、前記差に基づいて、前記プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える、プラズマ処理の異常判定方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異常判定の精度が向上する。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラズマ処理のフローと取得される監視データの種類との関係を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態に係る第1の異常判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る第1の異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る第1の異常判定方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る第1の異常判定方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る第1の異常判定方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る第2の異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る第2の異常判定方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る第2の異常判定方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係る第2の異常判定方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態では、プラズマ処理の異常判定に、ワークの枚数およびその種類によって規定される処理態様を加味して設定された閾値、あるいは、同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に取得されたデータ(監視履歴)が用いられる。処理態様に応じた基準を用いることにより、プラズマ処理に異常(以下、処理異常と称す場合がある。)があるか否かの判定の精度が向上する。これにより、プラズマ処理の品質が安定化し、不良品の発生が抑制される。さらに、この判定に基づき、プラズマ処理装置の清掃、部品の交換あるいは修理等のメンテナンスを行う時期を把握することが容易になる。よって、プラズマ処理装置の稼働率を向上することができる。
【0012】
すなわち、本実施形態の第1の異常判定システムは、レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値を記憶する記憶部と、監視データと閾値とに基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0013】
本実施形態の第1の異常判定方法は、複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、監視データと、ワークの枚数および種類を含む第1処理態様に応じて設定される閾値とに基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える。
【0014】
本実施形態の第2の異常判定システムは、レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、プラズマ処理されるワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中にセンサで取得され、かつ、監視データに対応する監視履歴を記憶する記憶部と、監視データと監視履歴との差に基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0015】
本実施形態の第2の異常判定方法は、複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、監視データと、プラズマ処理されるワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に取得され、かつ、監視データに対応する監視履歴と、の差を算出する算出工程と、差に基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える。
【0016】
(A1)第1の異常判定システム
本実施形態にかかる異常判定システムは、プラズマ処理装置と、センサと、記憶部と、判定部と、を備える。記憶部および判定部は、例えばサーバ内にある。サーバを保有する管理者とプラズマ処理装置(以下、単に装置と称する場合がある。)のオーナーとは、それぞれ異なっていてよい。上記のサーバと装置とは、コンピュータネットワークにより接続されている。サーバは、後述する記憶部、演算部等をさらに備える。
【0017】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置は、ワークをプラズマ処理することができる限り、特に限定されない。プラズマ処理装置は、例えば、反応室と、反応室にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、反応室の内部に設置され、基板が載置されるステージと、ワークを反応室に搬出入する搬送レールと、を備える。プラズマ発生部は、例えば、反応室の上部および下部にそれぞれ設置された電極と、プラズマ発生用ガス(プロセスガス)を反応室内部に供給するプロセスガス源と、により構成される。反応室にプロセスガスが供給された状態で、各電極に高周波電力が供給されることにより、反応室内にプラズマが発生する。
【0018】
プラズマ処理に用いられるレシピには、反応室内の圧力、プロセスガスの種類や流量、高周波電力の出力、高周波の周波数、処理時間等が定められている。レシピは記憶部に格納される。
【0019】
(センサ)
センサは、ワークおよびプラズマ処理中の装置に関する各種のデータ(監視データ)を取得する。センサは、装置の内部および/または外部に取り付けられている。ワークに関する監視データは、プラズマ処理中にリアルタイムで取得されたり、プラズマ処理後に取得される。装置に関する監視データは、プラズマ処理中にリアルタイムで取得される。監視データは記憶部に記憶される。
【0020】
監視データは特に限定されず、例えば、搬送アームの駆動トルク、搬送アームに加わる負荷、搬送アームの移動速度等の搬送に関するデータ;反応室内の到達圧力、大気圧から所定圧力に到達するまでの減圧速度および所要時間、所定圧力から大気圧に到達するまでの昇圧速度および所要時間、処理中に反応室に供給されるプロセスガスの流量、処理中の反応室内の圧力、処理中の圧力調整バルブの開度等の排気特性に係るデータ;高周波電源の出力、処理時間、整合器の整合ポジション、整合器の負荷インピーダンス、RF反射波および/または入射波、セルフバイアス電圧(Vdc)、高周波電圧の振幅(Vpp)、発光スペクトル、反応室内に設置されたプローブ電極間の電位変動(以下、プラズマモニタ波形と称する場合がある。)等の放電状態に関するデータが挙げられる。
【0021】
監視データには、さらに、リアルタイムに取得されるデータあるいはプラズマ処理後に取得されるデータから算出できるデータも含まれる。例えば、プラズマモニタ波形に現れる微小アーク放電に伴う電圧変化の発生頻度等も、放電状態に関する監視データに含まれる。プラズマ処理前後に測定されるワークの膜厚から算出されるエッチングレートも、放電状態に関する監視データに含まれる。ワークの膜厚は、例えば、光干渉型膜厚測定器、蛍光X線膜厚計により計測される。
【0022】
監視データは1つ以上取得されればよく、複数が取得されることが好ましい。少なくとも放電状態に関するデータが取得されることが望ましい。放電状態に関するデータとして、プラズマモニタ波形が取得されることが望ましい。特に、放電状態に関するデータの中から1つ以上、および、排気特性に係るデータおよび/または搬送に関するデータの中から1つ以上、取得されることが望ましい。異常判定の精度がより向上するとともに、処理異常の原因が特定され易くなるためである。
【0023】
(ワーク)
エッチングの対象となるワークは特に限定されない。例えば、電子機器の製造に用いられる基板、基板上に回路が形成された回路基板、回路基板に電子部品が実装された実装基板、ウエハ等が挙げられる。ワークは、例えば、搬送アームによって押されて搬送レール上を摺動し、反応室に搬入されたり、反応室から搬出されたりする。
【0024】
プラズマ処理装置で一度に処理されるワークの枚数は特に限定されない。ワークは、1枚あるいは2枚以上がステージに載置される。後述する参考履歴を取得するために、ワークがステージに載置されていない状態で、プラズマ処理装置を稼働させる場合もある。つまり、参考履歴にはワークが0枚のときの監視データも含まれる。
【0025】
(第1処理態様)
第1処理態様は、ワーク(以下、リアルワークと称す。)がプラズマ処理されるときの状態を示しており、リアルワークの枚数および種類を含む。リアルワークの枚数および種類は、上記監視データに与える影響が大きい。そのため、処理態様に応じて設定される閾値を基準とすることにより、異常判定の精度が向上する。第1処理態様は、第1取得部により取得される。
【0026】
処理態様としては、リアルワークの枚数および種類の他、リアルワークのサイズ、ロット番号、プラズマ処理前に行われた加工の条件等が挙げられる。リアルワークに処理態様を示すバーコードあるいは二次元コードが付されている場合、プラズマ処理装置内あるいはプラズマ処理装置に搬入されるまでの工程において、自動的にあるいはオペレータの操作によって上記コードが読み取られる。読み取られたコードは、第1取得部において第1処理態様として取得される。第1処理態様は、オペレータによって第1取得部に入力されてもよいし、予め記憶媒体に記憶されていてもよい。第1取得部で取得された第1処理態様は、記憶部に記憶される。
【0027】
(記憶部)
記憶部には、処理態様に応じて設定される閾値が記憶されている。閾値は、上記の監視データごとに設定されており、処理異常の有無を判定する基準である。監視データが閾値から外れる場合、処理異常があると判定される。
【0028】
閾値は、過去に、リアルワークと同じ第1処理態様でプラズマ処理する際に取得された、装置およびワークに関するデータ(監視履歴)に基づき、当該ワークに対するプラズマ処理が適正であったか否かの処理評価を考慮して設定される。
【0029】
閾値は、演算部において算出されてもよい。この場合、監視履歴を記憶部に記憶させておく。第1処理態様が取得されると、演算部は、記憶部から第1処理態様に対応する監視履歴を読み出し、処理評価を考慮して設定された所定のアルゴリズムを用いて閾値を算出する。算出された閾値は、記憶部に記憶される。
【0030】
(判定部)
判定部は、監視データおよび閾値に基づいて、処理異常の有無を判定する。同じ処理態様で処理されて得られた現在のデータと過去のデータとを比較することにより、高精度の異常判定を行うことができる。
【0031】
監視データは、リアルワークの搬入動作の開始直後から、リアルワークの搬出動作の終了までの間、取得される。プラズマ処理は、例えば、
図1に示すフローで行われる。
図1は、プラズマ処理のフローと取得される監視データの種類との関係を示すフローチャートである。
【0032】
まず、リアルワークの搬入動作が開始される(S01)。リアルワークは、例えば、プラズマ処理装置の外部に設置された外部レールから、プラズマ処理装置の内部に設置された搬送レールに受け渡された後、搬送レール上を搬送アームによって押されながら移動する。リアルワークが所定の位置に配置されると、搬入動作は完了し(S02)、反応室内の排気が開始される(S03)。反応室は、リアルワークが搬送レールに受け渡された後、密閉される。排気は、リアルワークの搬出動作が開始されるまで行われ、プラズマ処理の間、反応室内は減圧される。
【0033】
反応室内が所定の圧力になると、プロセスガスが反応室内に供給される(S04)。続いて高周波電源が入って(S05)、プラズマが発生する。これにより、リアルワークがプラズマ処理される。所定の時間の経過後、高周波電源が切られ(S06)、プロセスガスの供給が停止する(S07)。続いて、排気を停止して(S08)、反応室内の圧力を大気圧まで上昇させる。最後に、リアルワークの搬出動作が開始される(S09)。リアルワークは、搬入時と同様、搬送アームによって搬送レール上を押されながら移動する。リアルワークがプラズマ処理装置の外に搬出されると、搬出動作は完了し(S10)、プラズマ処理が終了する。
【0034】
リアルワークの搬入動作の開始(S01)から完了(S02)までの間は、上記の搬送に関する監視データが取得される。反応室が密閉されると、反応室内の圧力の取得が開始される。排気が開始されると(S03)、上記の排気特性に係る監視データが取得される。
【0035】
排気が開始されてから(S03)停止されるまで(S08)の間は、排気特性に加えて、上記の放電状態に関する監視データが取得される。
【0036】
さらに、高周波電源が入る(S05)少し前から、切られた(S06)少し後までは、放電状態に関する監視データとして、プラズマモニタ波形が取得される。
【0037】
高周波電源が切られる(S06)前から反応室が大気に開放されるまでの間は、上記の排気特性に係る監視データが取得される。リアルワークの搬出動作の開始(S09)から終了(S10)までは、同様に、上記の搬送に関する監視データが取得される。
【0038】
判定部は、また、処理異常の原因が、プラズマ処理装置、ワークおよびレシピのいずれにあるのかを判定することができる。これにより、処理異常に対して適切な対処を行うことが容易となって、稼働率が向上するとともに、プラズマ処理の質が向上する。
【0039】
処理異常の原因の判定は、閾値から外れる監視データ(以下、NGデータと称す。)の種類に基づいて行われる。例えば、NGデータが排気特性に係る場合、排気ポンプの不具合、反応室の密閉不良、反応室内の汚染等が疑われる。よって、この場合の処理異常の原因は、プラズマ処理装置にあると判定される。
【0040】
NGデータが放電状態に関する場合、レシピの不適合、反応室内部(特に電極)の汚染、高周波電源の故障、リアルワークの形状および/またはコンディション(例えば、汚染状態や吸湿状態)の変化が疑われる。よって、この場合の処理異常の原因は、レシピ、プラズマ処理装置の特定の部分(具体的には、高周波回路または反応室内部の部品)、あるいはリアルワークにあると判定される。
【0041】
NGデータが搬送に関する場合、搬送レールの位置ズレ、ワークの変形や位置ズレ、ワークの過剰吸湿、ワーク摺動面の汚染等が考えられる。よって、この場合の処理異常の原因は、装置あるいはワークにあると判定することができる。
【0042】
複数種のNGデータを参照することにより、処理異常の原因をさらに絞り込むことができる。例えば、放電状態に関するデータおよび排気特性に係るデータがいずれもNGデータを含む場合、装置の故障ではなく、反応室内の汚染が処理異常の原因である可能性が高い。
【0043】
NGデータに加えて、閾値内に収まっている監視データ(以下、OKデータと称す。)を参照することによっても、処理異常の原因をさらに絞り込むことができる。例えば、放電状態に関するデータがNGデータを含む一方、排気特性に係るデータがOKデータを含む場合、反応室内の汚染ではなく、高周波電源等の装置を構成する部品の故障やリアルワークのコンディション変化が処理異常の原因である可能性が高い。
【0044】
処理異常の原因の判定には、NGデータの種類に加えて、リアルワークと同種のワークであって、処理枚数のみが異なっている第2処理態様で過去に行われたプラズマ処理中に取得された監視データ(参考履歴)を用いてもよい。これにより、処理異常の原因がワークにあるか否かを判定できる。参考履歴は、例えば記憶部に記憶されている。
【0045】
NGデータにおいて、監視データにおける異常の頻度や程度が、参考履歴における異常の頻度や程度と大きく異ならない場合、処理異常はワークの枚数に依存していないと言える。つまり、処理異常の原因はプラズマ処理装置あるいはレシピにあると判定できる。一方、NGデータにおいて、監視データにおける異常の頻度や程度が、参考履歴における異常の頻度や程度と大きく異なる場合、処理異常はワークの枚数に依存していると言える。つまり、処理異常の原因はワークにあると判定できる。処理異常がワークの枚数に依存しているか否かの判断基準は、NGデータに応じて適宜設定される。
【0046】
判定部はまた、NGデータの種類に基づいて、プラズマ処理を停止するか否かをさらに判定することができる。例えば、NGデータが搬送に関するデータを含む場合、プラズマ処理を続行すると、プラズマ処理装置あるいはワークが損傷することがある。そのため、このような場合には、プラズマ処理を停止する。
【0047】
その他の場合、処理異常があると判定されても、プラズマ処理は続行されてよい。ただし、所望のプラズマ処理が行われるよう、レシピの変更が検討される。レシピの変更によってプラズマ処理を正常化することができる場合、判定部は、レシピの変更が必要であると判定する。例えば、NGデータが反応室内の減圧速度である場合、演算部は、排気時間や高周波電源を入れる際の圧力の設定値の異なる、新しいレシピを生成する。レシピの生成には、所定のアルゴリズムが用いられる。
【0048】
新しいレシピは記憶部に記憶され、プラズマ処理装置にフィードバックされる。リアルワークは新しいレシピに基づいて処理される。
【0049】
レシピ変更の要否は、リアルワークが適正にプラズマ処理されたかどうかの追跡結果(評価情報)を加味して判定されてもよい。これにより、レシピ変更の要否判定の精度が向上する。実際の処理が適正だったと評価される場合、処理異常があると判定されていても、レシピの変更は不要だと判定される。一方、実際の処理が不適正だったと評価され、かつ、レシピの変更によってプラズマ処理が正常化する場合、レシピを変更する必要があると判定される。後者の場合、新しいレシピが生成され、プラズマ処理装置にフィードバックされる。
【0050】
レシピの変更によってもプラズマ処理を正常化することができないか、あるいは、変更されるレシピが変更可能な範囲を逸脱する場合、レシピの変更は不要であると判定される。この場合、判定部は、プラズマ処理装置のメンテナンスの要否を判定することができる。メンテナンスの要否も、NGデータの種類に基づいて判定される。例えば、NGデータが放電状態に関するデータを含む場合、判定部は、メンテナンスが必要であると判定する。
【0051】
メンテナンスの要否もまた、上記の評価情報を加味して判定されてよい。これにより、メンテナンスの要否判定の精度が向上する。実際の処理が適正だったと評価される場合、処理異常があると判定されていても、メンテナンスは不要であると判定される。これにより、メンテナンス頻度を下げ、稼働率を向上することができる。一方、実際の処理が不適正だったと評価される場合、メンテナンスの必要があると判定される。後者の場合、演算部によってメンテナンス時期あるいは不具合の進行度が算出され、さらに異常を生じさせた部品(以下、交換部品と称す。)が指定される。メンテナンス時期の算出等には、所定のアルゴリズムが用いられる。これにより、最適な時期にメンテナンスを行うことができて、稼働率を向上することができる。
【0052】
判定部に、閾値の変更が必要であるか否かを判定させてもよい。閾値変更の要否は、上記の評価情報に基づいて判定される。例えば、処理異常無しと判定されたにもかかわらず、実際の処理が不適正だったと評価される場合、より厳しい条件になるように閾値が変更される。逆に、処理異常ありと判定されたにもかかわらず、実際の処理が適正だったと評価される場合、条件が緩和されるように閾値が変更される。これにより、装置が異常判定によって停止される頻度が低減されて、稼働率が向上するとともに、異常判定の精度がさらに向上する。新しい閾値は演算部によって生成されて、記憶部に記憶される。処理異常の判定は、新しい閾値に基づいて行われる。
【0053】
(報知部)
プラズマ処理装置のメンテナンスが必要である旨は、報知部によって通知される。
報知部は、例えば、メンテナンス時期等を表示するための表示部、あるいは、メンテナンス時期等を上位システムに伝達するための信号出力部を備える。報知部は、表示あるいは出力信号により、サーバの管理者、あるいは装置のオーナーまたはオペレータにメンテナンス時期等を通知する。報知部は、プラズマ処理装置に設置されてもよいし、判定部を備えるサーバに設置されてもよい。メンテナンス通知を受けて、装置のオーナーまたはオペレータは、反応室内を清浄化し、あるいは部品の交換等を行う。これにより、プラズマ処理装置の予知保全が可能となって、稼働率が向上する。
【0054】
(発注部)
異常判定システムは、さらに、交換部品を自動発注する発注部を備えてもよい。例えば、報知部によってメンテナンス時期等が通知されるとともに、発注部によって交換部品が発注される。これにより、プラズマ処理装置の予知保全が可能となって、稼働率が向上する。
【0055】
(第2取得部)
上記の評価情報は、取得部(第2取得部)によって取得される。評価情報は、プラズマ処理直後のワークを分析して取得されてもよいし、プラズマ処理後、他の工程が行われた後のワークを分析して取得されてもよい。評価情報はさらに、他の工程が行われた後のワークによる不良発生頻度(例えば、ワイヤボンディング不良)を分析して取得されてもよい。プラズマ処理後の工程としては、例えば、ワイヤーボンディング、リフロー、モールディング、樹脂塗布が挙げられる。評価情報は、例えば、オペレータによって第2取得部に入力される。入力された評価情報は、記憶部に記憶される。
【0056】
従来、プラズマ処理装置の汚染や劣化等の不具合を定量的に評価する具体的な基準はない。そのため、清掃や部品交換等のメンテナンスを定期的に行うことにより、プラズマ処理装置の品質管理および保全を行っている。しかし、プラズマ処理装置の汚染は処理されるワークや処理条件に大きく依存する上、装置の経年的な変化や劣化も生じる。よって、定期的に行われるメンテナンスが間に合わずに、処理異常が発生する場合がある。処理異常の多くは、上記のような後工程において不具合が生じることにより発覚する。つまり、処理異常が発生してから、それが認識されるまでの期間が長く、歩留まりが低下し易い。また、実際に装置に不具合が発生してから対処することになるため、メンテナンス費用が増大したり、稼働停止期間が長くなり易い。一方、不要な定期メンテナンスが行われることで、装置の稼働率が低下する場合もある。本実施形態によれば、適切な時期にメンテナンスを行ったり、交換部品を適切なタイミングで準備することができるため、生産計画が立て易くなるとともに、費用および期間が削減される。
【0057】
図2は、本実施形態に係る異常判定システムの構成の一例を示すブロック図である。
第1の異常判定システム1000は、プラズマ処理装置100と、センサ200と、第1取得部300と、サーバ400と、第2取得部500と、報知部600と、発注部700と、を備える。サーバ400は、判定部401と、記憶部402と、演算部403と、を備える。記憶部402は、処理態様が格納される第1データベースと、閾値が格納される第2データベースと、レシピが格納される第3データベースと、監視データが格納される第4データベースと、評価情報が格納される第5データベースと、を備える。記憶部402はさらに、監視履歴が格納される第6データベースと、許容値が格納される第7データベースと、を備えてもよい。
【0058】
プラズマ処理装置100は、第3データベースに格納されたレシピに基づいて、リアルワークに対してプラズマ処理を施す。センサ200は、プラズマ処理中のプラズマ処理装置100およびワークに関する監視データをリアルタイムに取得する。監視データは第4データベースに格納される。第1取得部300は、リアルワークの枚数および種類を含む第1処理態様を取得する。第1処理態様は、第1データベースに格納される。第2データベースには、様々な処理態様に対応する閾値が格納されている。判定部401は、取得された第1処理態様に対応する閾値を第2データベースから読み出し、その閾値および監視データに基づいてプラズマ処理に異常があるか否かを判定する。
【0059】
判定部401はさらに、レシピの変更、閾値の変更、メンテナンス通知、部品発注の要不要を判定する。これらの判定には、第2取得部500で取得されたリアルワークに関する評価情報が用いられる場合がある。レシピの変更が必要である場合、演算部403によって新しいレシピが生成される。新しいレシピは第3データベースに格納される。閾値の変更が必要である場合、演算部403によって新しい閾値が生成される。新しい閾値は第2データベースに格納される。メンテナンスが必要である場合、演算部403によってメンテナンス時期あるいは不具合の進行度が算出されるとともに、交換部品が指定される。メンテナンス時期等は、報知部600によって、サーバ400の管理者あるいはプラズマ処理装置のオーナーまたはオペレータに通知される。発注部700は、必要に応じて、交換部品をメーカーに発注する。
【0060】
(A2)第1の異常判定方法
本実施形態にかかる異常判定方法は、プラズマ処理工程と、監視データ取得工程と、判定工程と、を備える。本実施形態にかかる異常判定方法は、上記の第1の異常判定システムにより実行される。ただし、本実施形態にかかる異常判定方法は、これに限定されない。
【0061】
以下、本実施形態に係る異常判定方法を、異常判定がリアルタイムで行われる態様A2-1、異常判定がプラズマ処理終了後に行われる態様A2-2、異常判定後にさらに追跡評価が行われる態様A2-3および態様A2-4に分けて説明する。
【0062】
[態様A2-1]
本実施形態では、異常判定がリアルワークの処理中にリアルタイムで行われ、判定結果が処理中のリアルワークのプラズマ処理にフィードバックされる。これにより、歩留まりが向上する。
図3は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0063】
(1)プラズマ処理工程
まず、取得部によってリアルワークに関する処理態様が取得されて、第1データベースに格納される。判定部は、第2データベースから閾値を読み出す(S101)。続いて、処理態様に対応するレシピが第3データベースから読み出され、レシピに基づくプラズマ処理が開始される(S102)。プラズマ処理は、例えば
図1に示されるフローに従って行われる。
【0064】
(2)監視データ取得工程
プラズマ処理が開始されると、センサによる監視データの取得が開始される(S102)。監視データは、第4データベースに格納される。取得される監視データの種類と取得されるタイミングは、例えば、
図1に示されている。監視データの取得は、プラズマ処理が終了するまで行われる。
【0065】
(3)判定工程
取得された監視データと閾値とが、リアルタイムに比較される(S103)。監視データと閾値との比較は、プラズマ処理が終了するまで行われる。
【0066】
監視データと閾値とを比較した結果、プラズマ処理に異常がないと判定されると、そのままプラズマ処理は続行される。そして、レシピに設定された所定の処理時間が経過した後(S104)、プラズマ処理は終了する(S105)。プラズマ処理が終了すると、監視データの取得も終了する(S105)。
【0067】
一方、プラズマ処理に異常があると判定されると、判定部はさらにプラズマ処理を続行するか否かを判定する(S106)。プラズマ処理を続行すると判定される場合、プラズマ処理は続行され、上記と同様に、センサによる監視データの取得(S102)および取得された監視データと閾値との比較(S103)が行われる。
【0068】
プラズマ処理を続行しないと判定されると、プラズマ処理は終了する(S105)。その後、装置のメンテナンスの要否について判定されてもよい。
【0069】
例えば、監視データと閾値とを比較した結果、搬送アームの駆動トルクが閾値を越える場合、判定部は、プラズマ処理の停止を決定する。プラズマ処理の停止後、報知部によって、搬送レールの位置調整を行うようメンテナンス通知が行われる。駆動トルクが大きく変動する場合にも、判定部はプラズマ処理の停止を決定する。この場合、搬送レールの位置調整に加えて、ワークの寸法や変形、汚染等のチェックを行うようメンテナンス通知が行われる。
【0070】
[態様A2-2]
本実施形態は、異常判定がリアルワークのプラズマ処理終了後に行われ、判定結果がリアルワーク以降のワークのプラズマ処理にフィードバックされること以外、態様A2-1と同様である。この場合、多様な処理異常に対処可能であり、プラズマ処理の質がより向上する。
図4は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0071】
取得された監視データは、プラズマ処理の終了後に閾値と比較される(S104)。監視データと閾値とを比較した結果、プラズマ処理に異常がなかったと判定されると(S104での判定がNOの場合)、プラズマ処理は終了する。一方、処理異常があったと判定されると(S104での判定がYESの場合)、続いて、レシピの変更が必要であるか否か(S105)、メンテナンスが必要であるか否か(S106)が順次判定される。レシピを変更する場合、次のワークに対するプラズマ処理が新しいレシピに基づいて行われるようにフィードバックされる。メンテナンスされる場合、報知部によってメンテナンス通知がなされ、必要に応じて交換部品の発注が行われる(S107)。
【0072】
例えば、監視データと閾値とを比較した結果、排気速度が閾値を下回っている場合、判定部は、装置のメンテナンス通知を決定することができる。この場合、反応室内の清掃、排気ポンプの動作の確認等を行うようメンテナンス通知が行われる。また、放電状態に関する監視データが閾値から外れている場合、高周波電源、整合器等の部品の動作確認等を行うようメンテナンス通知が行われる。
【0073】
[態様A2-3]
本実施形態は、評価情報を加味して、異常判定が適切であったか否かを検証する。異常判定が不適切である場合、閾値が変更される。これにより、異常判定の精度が向上する。
図5は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。異常判定までのステップは、態様A2-2と同様である。
【0074】
異常判定(S104)の後、評価情報が取得される(S105)。続いて、異常判定と評価情報とが対応しているか否かが判定される(S106)。異常判定で処理異常有りと判定され、実際の処理も不適正だったと評価される場合、異常判定と評価情報とは対応しており、異常判定は適切であったと判断される。
【0075】
一方、異常判定で処理異常有りと判定されたにもかかわらず、実際の処理が適正だったと評価される場合、逆に異常判定で処理異常無しと判定されたにもかかわらず、実際の処理が不適正だったと評価される場合、異常判定と評価情報とが対応していない。つまり、異常判定で用いた閾値が不適切であったと判断される。この場合には、異常判定が評価情報に対応するように、閾値が変更される(S107)。変更された閾値は、判定部にフィードバックされる。
【0076】
[態様A2-4]
本実施形態では、処理異常有りと判定され、実際の処理も不適正だったと評価される場合、レシピ変更およびメンテナンス通知の要否が順次判定される。異常判定までのステップは、態様A2-2および態様A2-3と同様である。これにより、より適切な処置が可能となって、生産性がさらに向上する。
図6は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0077】
処理異常有りと判定され(S104)、実際の処理も不適正だったと評価されると(S105)、レシピの変更が必要であるか否か(S106)、メンテナンスが必要であるか否か(S107)について、順次判定される。レシピを変更する場合、次のワークに対するプラズマ処理が新しいレシピに基づいて行われるようにフィードバックされる。メンテナンスされる場合、報知部によってメンテナンス通知がなされ、必要に応じて部品の発注が行われる(S108)。
【0078】
(B1)第2の異常判定システム
本実施形態にかかる異常判定システムは、閾値に替えて、第1処理態様と同じ態様で行われた過去のプラズマ処理中に、センサで取得されたプラズマ処理装置およびワークに関する監視履歴を用いて、プラズマ処理に異常があるか否かが判定されること以外、第1の異常判定システムと同様である。
【0079】
すなわち、第2の異常判定システムは、レシピに基づいて複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得するセンサと、プラズマ処理されるワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中にセンサで取得され、かつ、監視データに対応する監視履歴を記憶する記憶部と、監視データと監視履歴との差に基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0080】
記憶部には、様々な処理態様に対応する監視履歴が記憶されている。第1処理態様が取得されると、演算部は、記憶部から第1処理態様に対応する監視履歴を読み出し、監視データとの差を算出する。この差が、予め設定されている許容値の範囲内である場合、判定部は、処理異常無しと判定する。一方、上記差が予め設定されている許容値を超える場合、判定部は、処理異常ありと判定する。許容値は、過去の第1処理態様でのプラズマ処理が適正であったか否かの評価履歴を考慮して設定されている。許容値は、記憶部に記憶されてもよい。
【0081】
判定部は、第1の異常判定システムと同様、処理異常の原因が、プラズマ処理装置、ワークおよびレシピのいずれにあるのかをさらに判定することができる。この判定は、許容値を超える監視データ(以下、NGデータと称す。)の種類に基づいて行われる。判定の手順は、第1の異常判定システムと同様である。
【0082】
処理異常の原因は、NGデータと、許容値内に収まっている監視データ(以下、OKデータと称す。)、または、上記の第2処理態様における参考履歴とを参照することにより、さらに絞り込まれる。絞り込みの手順は、第1の異常判定システムと同様である。
【0083】
また、判定部は、プラズマ処理を停止するか否か、レシピを変更するか否か、メンテナンス通知を行うか否かについて、さらに判定することができる。これらの判定は、上記NGデータの種類、さらには、リアルワークに対する評価情報に基づいて行われる。メンテナンスが必要である場合、演算部によってメンテナンス時期あるいは不具合の進行度が算出され、交換部品が指定される。
【0084】
判定部はさらに、許容値を変更するか否かを判定することができる。許容値変更の要否は、評価情報に基づいて判定される。例えば、処理異常無しと判定されたにもかかわらず、実際の処理が不適正だったと評価される場合、許容値は狭くなるように変更される。逆に、処理異常ありと判定されたにもかかわらず、実際の処理が適正だったと評価される場合、許容値は広くなるように変更される。これにより、装置が異常判定によって停止される頻度が低減されて、稼働率が向上するとともに、異常判定の精度がさらに向上する。処理異常の判定は、新しい許容値に基づいて行われる。
【0085】
第2の異常判定システムは、
図2に示される第1の異常判定システムと同様の構成を有している。すなわち、第2の異常判定システム1000は、プラズマ処理装置100と、センサ200と、第1取得部300と、サーバ400と、第2取得部500と、報知部600と、発注部700と、を備える。サーバ400は、判定部401と、記憶部402と、演算部403と、を備える。記憶部402は、処理態様が格納される第1データベースと、レシピが格納される第3データベースと、監視データが格納される第4データベースと、評価情報が格納される第5データベースと、監視履歴が格納される第6データベースと、許容値が格納される第7データベースと、を備える。第2の異常判定システム1000はさらに、閾値が格納される第2データベースを備えていてもよい。
【0086】
プラズマ処理装置100は、第3データベースに格納されたレシピに基づいて、リアルワークに対してプラズマ処理を施す。センサ200は、プラズマ処理中のプラズマ処理装置100およびワークに関する監視データをリアルタイムに取得する。監視データは第4データベースに格納される。第1取得部300は、リアルワークの枚数および種類を含む処理態様を取得する。処理態様は、第1データベースに格納される。
【0087】
処理態様および監視データが取得されると、演算部403は、取得された第1処理態様に対応する監視履歴を第6データベースから読み出し、監視データとの差を算出する。判定部401は、算出された差に基づいてプラズマ処理に異常があるか否かを判定する。算出された差には、評価履歴を考慮した許容値が設定されている。差が許容値の範囲内である場合、処理異常無しと判定される。
【0088】
判定部401はさらに、レシピの変更、許容値の変更、メンテナンス、部品発注の要不要を判定する。これらの判定には、第2取得部500で取得されたリアルワークに関する評価情報が用いられる場合がある。レシピの変更が必要である場合、演算部403によって新しいレシピが生成される。新しいレシピは第3データベースに格納される。許容値の変更が必要である場合、演算部403によって新しい許容値が生成される。新しい許容値は第7データベースに格納される。メンテナンスが必要である場合、演算部403によってメンテナンス時期あるいは不具合の進行度が算出されるとともに、交換部品が指定される。メンテナンス時期等は、報知部600によって、サーバ400の管理者あるいはプラズマ処理装置のオーナーまたはオペレータに通知される。発注部700は、必要に応じて、交換部品をメーカーに発注する。
【0089】
(B2)第2の異常判定方法
本実施形態にかかる異常判定方法は、閾値に替えて、リアルワークと同じ第1処理態様でプラズマ処理する際に取得された、装置およびワークに関するデータ(監視履歴)を用いて異常判定が行われること以外、第1の異常判定システムと同様である。
【0090】
すなわち、第2の異常判定方法は、複数枚のワークを一度に処理することのできるプラズマ処理装置を用いて、ワークにプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、ワークおよびプラズマ処理中のプラズマ処理装置に関する少なくとも1つの監視データを取得する監視データ取得工程と、監視データと、プラズマ処理されるワークの枚数および種類を含む第1処理態様と同じ処理態様で過去に行われたプラズマ処理中にセンサで取得され、かつ、監視データに対応する監視履歴と、の差を算出する算出工程と、差に基づいて、プラズマ処理に異常があるか否かを判定する判定工程と、を備える。
【0091】
本実施形態にかかる異常判定方法は、上記の第2の異常判定システムにより実行される。ただし、本実施形態にかかる異常判定方法は、これに限定されない。
【0092】
以下、第2の異常判定方法を、第1の異常判定方法と同様、異常判定がリアルタイムで行われる態様B2-1、異常判定がプラズマ処理終了後に行われる態様B2-2、異常判定後にさらに追跡評価が行われる態様B2-3および態様B2-4に分けて説明する。
【0093】
[態様B2-1]
本実施形態では、異常判定がリアルワークの処理中にリアルタイムで行われ、判定結果が処理中のリアルワークのプラズマ処理にフィードバックされる。これにより、歩留まりが向上する。
図7は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0094】
(1)プラズマ処理工程
まず、取得部によってリアルワークに関する第1処理態様が取得されて、第1データベースに格納される。記憶部から第1処理態様に対応する監視履歴が読み出される(S201)。続いて、処理態様に対応するレシピが第3データベースから読み出され、レシピに基づくプラズマ処理が開始される(S202)。プラズマ処理は、例えば
図1に示されるフローに従って行われる。
【0095】
(2)監視データ取得工程
プラズマ処理が開始されると、センサによる監視データの取得が開始される(S202)。監視データは、第4データベースに格納される。取得される監視データの種類と取得されるタイミングは、例えば、
図1に示されている。監視データの取得は、プラズマ処理が終了するまで行われる。
【0096】
(3)算出工程
リアルワークに関する監視データと監視履歴との差が算出される(S203)。
【0097】
(4)判定工程
監視データと監視履歴との差が、予め設定されている許容値の範囲内にあるか否か、リアルタイムに検証される。上記の検証は、プラズマ処理が終了するまで行われる。
【0098】
監視データと監視履歴との差が許容値の範囲内であると、プラズマ処理に異常がないと判定されて(S204でNOと判定されて)、そのままプラズマ処理は続行される。そして、レシピに設定された所定の処理時間が経過した後(S205)、プラズマ処理は終了する(S206)。プラズマ処理が終了すると、監視データの取得も終了する(S206)。
【0099】
一方、プラズマ処理に異常があると判定されると(S204でYESと判定されると)、判定部はさらにプラズマ処理を続行するか否かを判定する(S207)。プラズマ処理を続行すると判定される場合、プラズマ処理は続行され、上記と同様に、センサによる監視データの取得(S202)と、取得された監視データと監視履歴との差の算出(S203)および検証(S204)が行われる。
【0100】
プラズマ処理を続行しないと判定されると、プラズマ処理は終了する(S206)。その後、装置のメンテナンスの要否について判定されてもよい。
【0101】
[態様B2-2]
本実施形態は、異常判定がリアルワークのプラズマ処理終了後に行われ、判定結果がリアルワーク以降のワークのプラズマ処理にフィードバックされること以外、態様B2-1と同様である。この場合、多様な処理異常に対処可能であり、プラズマ処理の質がより向上する。
図8は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0102】
取得された監視データと監視履歴との差は、プラズマ処理の終了後に算出される(S204)。監視データと監視履歴との差が許容値の範囲内であると、プラズマ処理に異常がなかったと判定され(S205での判定がNOの場合)、プラズマ処理は終了する。一方、処理異常があったと判定されると(S205での判定がYESの場合)、続いて、レシピの変更が必要であるか否か(S206)、メンテナンスが必要であるか否か(S207)が順次判定される。レシピを変更する場合、次のワークに対するプラズマ処理が新しいレシピに基づいて行われるようにフィードバックされる。メンテナンスされる場合、報知部によってメンテナンス通知がなされ、必要に応じて交換部品の発注が行われる(S208)。
【0103】
[態様B2-3]
本実施形態は、評価情報を加味して、異常判定が適切であったか否かを検証する。異常判定が不適切である場合、許容値が変更される。これにより、異常判定の精度が向上する。異常判定までのステップは、態様B2-2と同様である。
図9は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0104】
異常判定(S205)の後、評価情報が取得される(S206)。続いて、異常判定と評価情報とが対応しているか否かが判定される(S207)。異常判定で処理異常有りと判定され、実際の処理も不適正だったと評価される場合、異常判定と評価情報とは対応しており、異常判定は適切であったと判断される。
【0105】
一方、異常判定で処理異常有りと判定されたにもかかわらず、実際の処理が適正だったと評価される場合、逆に異常判定で処理異常無しと判定されたにもかかわらず、実際の処理が不適正だったと評価される場合、異常判定と評価情報とが対応していない。つまり、異常判定で用いた許容値が不適切であったと判断される。この場合には、異常判定が評価情報に対応するように、許容値が変更される(S208)。変更された許容値は、判定部にフィードバックされる。
【0106】
[態様B2-4]
本実施形態では、処理異常有りと判定され、実際の処理も不適正だったと評価される場合、レシピ変更およびメンテナンスの要否が順次判定される。これにより、より適切な処置が可能となって、生産性がさらに向上する。異常判定までのステップは、態様B2-2および態様B2-3と同様である。
図10は、本実施形態に係る異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0107】
処理異常有りと判定され(S205)、実際の処理も不適正だったと評価されると(S206)、レシピの変更が必要であるか否か(S207)、メンテナンスが必要であるか否か(S208)について、順次判定される。レシピを変更する場合、次のワークに対するプラズマ処理が新しいレシピに基づいて行われるようにフィードバックされる。メンテナンスされる場合、報知部によってメンテナンス通知がなされ、必要に応じて部品の発注が行われる(S209)。
【0108】
以上、本実施形態に係る異常判定システムおよび異常判定方法を具体的な態様を挙げて説明したが、本実施形態にかかる異常判定方法システムおよび異常判定方法は、これに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の異常判定システムおよび異常判定方法によれば、プラズマ処理の質が向上するため、本発明の異常判定システムおよび異常判定方法は、種々のプラズマ処理装置に好適に用いられる。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0110】
1000:第1の異常判定システム、第2の異常判定システム
100:プラズマ処理装置
200:センサ
300:第1取得部
400:サーバ
401:判定部
402:記憶部
403:演算部
500:第2取得部
600:報知部
700:発注部