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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】投光装置、および移動体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/295 20060101AFI20240802BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G02F1/295
G01S7/481 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021570650
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020040011
(87)【国際公開番号】W WO2021145045
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020005282
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 建治
(72)【発明者】
【氏名】橋谷 享
(72)【発明者】
【氏名】清原 督三
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-075030(JP,A)
【文献】特開平05-205199(JP,A)
【文献】実開平03-014477(JP,U)
【文献】国際公開第2019/187777(WO,A1)
【文献】特開2008-102191(JP,A)
【文献】GU, Xiaodong et al.,Beam-steering in hollow ZrO2/SiO2 distributed Bragg reflector waveguides for one-dimensional RGB imaging,Japanese Journal of Applied Physics,日本,The Japan Society of Applied Physics,2014年01月30日,Vol. 53,030302-1 - 030302-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
G02B 6/35
G02B 26/00-26/08
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00-3/32
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光偏向装置を備える投光装置であって、
前記光偏向装置は、
互いに対向し、第1方向に沿って延びる第1ミラーおよび第2ミラーと、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に位置し、前記第1方向に沿って光を導波させる光導波層であって、屈折率および/または厚さを変化させることが可能な構造を有する光導波層と、
を備え、
前記第1ミラーは、前記第2ミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬した前記光の少なくとも一部を外部に出射する光出射面を有し、
前記光導波層の前記屈折率および/または前記厚さを変化させることにより、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光の出射角度を、角度θから、前記角度θよりも大きい角度θの範囲で変化させることが可能であり、
前記光偏向装置は、前記光出射面から出射角度θで出射された第1の光が、前記光出射面から出射角度θで出射された第2の光より鉛直下方に向けて投光されるように配置される、
投光装置。
【請求項2】
前記第1ミラーの前記光出射面から出射された前記光の光路上に配置され、前記第1の光が前記第2の光よりも鉛直下方に向くように、前記光の方向を変化させる光学素子をさらに備える、請求項1に記載の投光装置。
【請求項3】
前記光学素子は、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光を屈折させる、請求項2に記載の投光装置。
【請求項4】
前記光学素子は、前記光出射面から出射される前記光の広がり角を拡大または縮小させる1以上のレンズを含む、
請求項3に記載の投光装置。
【請求項5】
前記光学素子は、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光を反射させる、
請求項2に記載の投光装置。
【請求項6】
前記光学素子は、前記光出射面から出射される前記光の広がり角を拡大または縮小させる1以上のミラーを含む、
請求項5に記載の投光装置。
【請求項7】
前記光導波層の前記屈折率および/または前記厚さを変化させる制御装置をさらに備える、
請求項1から6のいずれかに記載の投光装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の投光装置を備える移動体であって、
前記投光装置は、前記第1ミラーの前記光出射面から、前記移動体の前方に向けて前記光を出射する、
移動体。
【請求項9】
光偏向装置を備える投光装置であって、
前記光偏向装置は、
第1方向に沿って配列され、各々が第2方向に延びる複数の光導波路と、
前記複数の光導波路にそれぞれ接続される複数の位相シフタと、
を備え、
前記第1方向および前記第2方向に平行な光出射面から出射される光の前記第1方向に沿った出射角度を、角度θから、前記角度θよりも大きい角度θの範囲で変化させることが可能であり、
前記光偏向装置は、前記光出射面から出射角度θで出射された第1の光が、前記光出射面から出射角度θで出射された第2の光より鉛直下方に向けて投光されるように配置される、
投光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投光装置、および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーンを投光ビームによってスキャンし、シーンに含まれる対象物からの反射光を検出して対象物までの距離を計測する種々のデバイスが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-128663号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0224709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、遠距離の対象物の検出可能な距離を長くでき、かつ近距離の対象物の検出信号が飽和することを抑制できる投光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る投光装置は、光偏向装置を備える投光装置であって、前記光偏向装置は、光出射面を備え、前記光出射面に交差する方向に向けて光を出射し、前記光出射面から出射される前記光の前記第1方向に沿った出射角度を、第1角度から、前記第1角度よりも大きい第2角度の範囲で変化させることが可能であり、前記光偏向装置は、前記光出射面から前記第1角度で出射された第1の光と、前記光出射面から前記第2角度で出射された第2の光とのうち、遠方における前記第1方向のスポット幅が大きい一方が、他方より鉛直下方に向けて投光されるように配置される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の技術によれば、遠距離の対象物の検出可能な距離を長くでき、かつ近距離の対象物の検出信号が飽和することを抑制できる投光装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、例示的な実施形態による投光装置が備える構造の例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す構成を+Y方向に沿って見た図である。
図3A図3Aは、伝搬角度が相対的に小さい場合において、光出射面から光が出射される様子を模式的に示す図である。
図3B図3Bは、伝搬角度が相対的に大きい場合において、光出射面から光が出射される様子を模式的に示す図である。
図4図4は、伝搬長と出射光のX方向の広がり角との関係の一例を示す図である。
図5A図5Aは、本開示の実施形態における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図5B図5Bは、本開示の実施形態における投光装置の例を模式的に示す側面図である。
図6図6は、本実施形態の投光装置が近距離または遠距離の対象物を検出する動作を説明するための図である。
図7A図7Aは、本実施形態の第1変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図7B図7Bは、図7Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。
図8A図8Aは、本実施形態の第2変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。
図9A図9Aは、本実施形態の第3変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。
図10A図10Aは、本実施形態の第4変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す構成を+Y方向に沿って見た図である。
図11A図11Aは、本実施形態の第5変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図11B図11Bは、図11Aに示す構成を+Y方向に沿って見た図である。
図12図12は、本実施形態の第6変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図13A図13Aは、本実施形態の第7変形例における投光装置の例を模式的に示す斜視図である。
図13B図13Bは、図13Aに示す構成を+Y方向に沿って見た図である。
図14A図14Aは、本実施形態における投光装置を車両に搭載した第1応用例を模式的に示す斜視図である。
図14B図14Bは、本実施形態における投光装置を車両に搭載した第1応用例を模式的に示す側面図である。
図15図15は、本実施形態における投光装置を監視システムに搭載した第2応用例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
【0009】
図1は、例示的な実施形態による投光装置100が備える構造の例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す構成を+Y方向に沿って見た図である。参考のために、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が模式的に示されている。本明細書では、軸の矢印が向く方向を+方向とし、その反対の方向を-方向とする。ただし、これらの呼称は説明の便宜上用いられるに過ぎず、これらの呼称は光偏向装置10が実際に使用されるときの姿勢を限定しない。また、図面に示されている構造物の全体または一部分の形状および大きさも、現実の形状および大きさを制限するわけではない。
【0010】
投光装置100は、少なくとも1つの光偏向装置10を含む。光偏向装置10は、不図示の光源から発せられた光ビームを所定の方向に向けて出射する。光偏向装置10は、第1ミラー30、第2ミラー40、および光導波層20、を備える。第1ミラー30および第2ミラー40は、互いに対向し、X方向に延びている。第1ミラー30は、第2ミラー40よりも+Z方向の位置に配置されている。第1ミラー30の透過率は、第2ミラー40の透過率よりも高い。第1ミラー30および第2ミラー40の少なくとも一方は、例えば、複数の高屈折率層および複数の低屈折率層が交互に積層された多層反射膜から形成され得る。第1ミラー30および第2ミラー40は、同じ高屈折率層および同じ低屈折率層を含む多層反射膜から形成され得る。この場合、第1ミラー30の積層数を第2ミラー40の積層数よりも少なくすれば、第1ミラー30の透過率は第2ミラー40の透過率よりも高くなる。光導波層20は、第1ミラー30と第2ミラー40との間に位置する。
【0011】
第1ミラー30は、光導波層20とは反対の側に、XY平面に平行な光出射面30esを有する。光22は、光導波層20内を第1ミラー30および第2ミラー40によって反射されながらX方向に沿って伝搬する。その際、光22の一部が光出射面30esから、光ビーム22bとして外部に出射される。光ビーム22bの中心軸の方向は、光導波層20の屈折率および/または厚さに依存する。本明細書では、光ビーム22bの中心軸の方向を、単に「光ビーム22bの出射方向」と称する。
【0012】
光導波層20は、印加される駆動電圧の変化に応じて屈折率および/または厚さが変化する構成を有し得る。図2に示す例において、光導波層20は液晶材料を含み、光導波層20の反射面30sおよび反射面40sには駆動電圧を印加するための2つの電極10eが設けられ得る。不図示の制御装置からの制御信号の入力によって駆動電圧が変化すると、光導波層20の屈折率が変化し、光出射面30esから出射される光ビーム22bの出射方向がX方向に沿って変化する。他の例において、光導波層20は気体または液体を含み、第1ミラー30および/または第2ミラー40には、駆動電圧が印加されたときに変形するアクチュエータが取り付けられ得る。不図示の制御装置からの制御信号の入力によって駆動電圧が変化すると、アクチュエータの変形によるミラー間隔の変化に伴って光導波層20の厚さが変化し、光出射面30esから出射される光ビーム22bの出射方向がX方向に沿って変化する。以上のように、光偏向装置10は、外部からの制御信号に応答して、光出射面30esから出射される光ビーム22bの出射方向をX方向に沿って変化させることができる。図1のX方向に平行な太線は、光ビーム22bのスキャン方向を表す。
【0013】
光偏向装置10から空気中に出射される光の出射角度θは、以下の式(1)によって表される。
【数1】
【0014】
ここで、nは光導波層20の屈折率、λは空気中での光の波長、dは光導波層20の厚さ、mは次数である。式(1)からわかるように、λ、nまたはdのいずれかを変えることで光の出射方向を変えることができる。
【0015】
投光装置100は、光導波層20の屈折率および/または厚さを変化させる不図示の制御装置を備える。
【0016】
光偏向装置10の動作原理、および動作方法などの詳細は、米国特許出願公開第2018/0224709号に開示されている。この文献の開示内容全体を本明細書に援用する。
【0017】
<出射角度と出射光の広がり角>
光偏向装置10から出射される光の広がり角は、対象物に照射されるビームスポットのエネルギー密度を決定する。広がり角が狭くなると、ビームスポットのエネルギー密度は向上し、広がり角が広くなると、エネルギー密度は低下する。以下、従来の光偏向装置10から出射される光の広がり角と、出射角度との関係を説明する。
【0018】
光偏向装置10から出射される光のファーフィールドパターンは、図2に示す光出射面30esでの電界分布のフーリエ変換に相当する。光22は光導波層20の内部で伝搬するので、光偏向装置10が単独で存在する場合、出射光の遠方でのY方向の広がり角は、主として光導波層20の幅に依存する。
【0019】
一方、出射光の遠方でのX方向の広がり角は、主として光22の伝搬長に依存する。すなわち、光導波層20を伝搬する光22の伝搬長が長くなるほど、出射光の遠方(すなわち、ファーフィールド)でのX方向の広がり角は狭くなる。逆に、光導波層20を伝搬する光の伝搬長が短くなるほど、出射光の遠方(すなわち、ファーフィールド)でのX方向の広がり角は広くなる。ここで、伝搬長とは、光導波層20を減衰しながら伝搬する光22の強度が1/e倍に減少する距離を意味する。eは自然対数の底である。広がり角とは、出射角度θを中心に両側に広がる角度Δθを意味する。具体的には、広がり角は、角度スペクトルにおける出射光の半値全幅として記述される。
【0020】
一般的には、光導波層20の幅よりも伝搬長の長さが長い場合には、出射される光の遠方でのスポットはライン形状に近くなる。
【0021】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ、伝搬角度φが相対的に小さい場合と相対的に大きい場合とにおいて、光出射面30esから光が出射される様子を模式的に示す図である。簡単のため、第1ミラー30および第2ミラー40の反射率は、伝搬角度φによらず一定であると仮定する。図3Aに示す例では、伝搬角度φが小さいことから、反射面30sおよび反射面40sが単位長さ当たりに光22を反射する回数が多くなる。したがって、伝搬長Lは短くなる。図3Bに示す例では、伝搬角度φが大きいことから、反射面30sおよび反射面40sが単位長さ当たりに光22を反射する回数が少なくなる。したがって、伝搬長Lは長くなる。伝搬角度φと出射角度θとの間には正の相関関係があることから、出射角度θが大きくなるほど、伝搬長Lも長くなる。なお、図3Aおよび図3Bにおいて両矢印によって示された伝搬長Lは、模式的に表されており、実際の長さを表しているわけではない。
【0022】
図4は、伝搬長Lと出射光のX方向の広がり角Δθとの関係の一例を示す図である。図4に示すグラフは、各構成要素の寸法および誘電率などの条件が適切に設定された1つの光偏向装置10から出射される光ビームの線幅を、伝搬長を様々に変更して計算した結果を示している。図4に示すように、伝搬長Lが長くなるほど、出射光の広がり角Δθが狭くなる。前述のように、出射角度θが増加すると、伝搬長Lが増加することから、出射角度θが増加するほど、出射光の広がり角Δθは減少する。このように、出射角度θが変わると、出射光の広がり角Δθが変化することがわかった。
【0023】
本発明者らは、この現象を地面に対して垂直な方向にスキャンする投光装置に応用すれば、比較的簡単な構成で、遠距離の対象物の検出可能な距離を長くでき、かつ近距離の対象物の検出信号が飽和することを抑制できることを見出した。以下に説明する本開示の実施形態は、当該知見に基づいている。
【0024】
第1の項目に係る投光装置は、光偏向装置を備える投光装置である。前記光偏向装置は、互いに対向し、第1方向に沿って延びる第1ミラーおよび第2ミラーと、前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に位置し、前記第1方向に沿って光を導波させる光導波層であって、屈折率および/または厚さを変化させることが可能な構造を有する光導波層と、を備える。前記第1ミラーは、前記第2ミラーよりも高い光透過率を有し、前記光導波層内を伝搬した前記光の少なくとも一部を外部に出射する光出射面を有する。前記光導波層の前記屈折率および/または前記厚さを変化させることにより、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光の出射角度を、角度θから、前記角度θよりも大きい角度θの範囲で変化させることが可能である。前記光偏向装置は、前記光出射面から出射角度θで出射された第1の光が、前記光出射面から出射角度θで出射された第2の光より鉛直下方に向けて投光されるように配置される。
【0025】
この投光装置では、遠距離の対象物の検出可能な距離を長くでき、かつ近距離の対象物の検出信号が飽和することを抑制できる。
【0026】
第2の項目に係る投光装置は、第1の項目に係る投光装置において、前記第1ミラーの前記光出射面から出射された前記光の光路上に配置され、前記第1の光が前記第2の光よりも鉛直下方に向くように、前記光の方向を変化させる光学素子をさらに備える。
【0027】
この投光装置では、光学素子を介して、第1の光を第2の光よりも鉛直下方に向けることができる。
【0028】
第3の項目に係る投光装置は、第2の項目に係る投光装置において、前記光学素子が、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光を屈折させる。
【0029】
この投光装置では、光に屈折により、光出射面から出射される光の方向および/または広がり角を調整することができる。
【0030】
第4の項目に係る投光装置は、第3の項目に係る投光装置において、前記光学素子が、前記光出射面から出射される前記光の広がり角を拡大または縮小させる1以上のレンズを含む。
【0031】
この投光装置では、出射光の広がり角を拡大させることにより、近距離の対象物の検出信号が飽和することをさらに抑制できることができ、出射光の広がり角を縮小させることにより、遠距離の対象物の検出可能な距離をさらに長くできる。
【0032】
第5の項目に係る投光装置は、第2の項目に係る投光装置において、前記光学素子が、前記第1ミラーの前記光出射面から出射される前記光を反射させる。
【0033】
この投光装置では、光に反射により、光出射面から出射される光の方向および/または広がり角を調整することができる。
【0034】
第6の項目に係る投光装置は、第5の項目に係る投光装置において、前記光学素子が、前記光出射面から出射される前記光の広がり角を拡大または縮小させる1以上のミラーを含む。
【0035】
この投光装置では、出射光の広がり角を拡大させることにより、近距離の対象物の検出信号が飽和することをさらに抑制できることができ、出射光の広がり角を縮小させることにより、遠距離の対象物の検出可能な距離をさらに長くできる。
【0036】
第7の項目に係る投光装置は、第1から第6の項目のいずれかに係る投光装置において、前記光導波層の前記屈折率および/または前記厚さを変化させる制御装置をさらに備える。
【0037】
この投光装置では、制御装置によって光導波層の屈折率および/または厚さを変化させることにより、光出射面から出射された光の方向を調整することができる。
【0038】
第8の項目に係る移動体は、第1から第7の項目のいずれかに係る投光装置を備える移動体である。前記投光装置は、前記第1ミラーの前記光出射面から、前記移動体の前方に向けて前記光を出射する。
【0039】
この移動体では、地面などの近距離の対象物、および人などの遠距離の対象物の情報を正確に得ることができる。本開示において、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部、またはブロック図における機能ブロックの全部または一部は、例えば、半導体装置、半導体集積回路(IC)、またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路によって実行され得る。LSIまたはICは、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、1つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、もしくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0040】
さらに、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部の機能または動作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは1つまたは複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システムまたは装置は、ソフトウェアが記録されている1つまたは複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、および必要とされるハードウェアデバイス、例えばインターフェースを備えていてもよい。
【0041】
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。
【0042】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するわけではない。以下の説明において、同一のまたは類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0043】
(実施形態)
まず、図5Aおよび図5Bを参照して、本開示の実施形態における光デバイスの基本的な構成例を説明する。図5Aおよび図5Bはそれぞれ、本開示の実施形態における投光装置100の例を模式的に示す斜視図および側面図である。これらの図では、前述したX軸、Y軸、およびZ軸に加えて、互いに直交するU軸およびV軸が模式的に示されている。U軸は地面に対して平行な成分を表し、V軸は地面に対して垂直な成分を表している。U軸は、Y軸に対して平行である。投光装置100は、地面の上方に位置する。光ビーム22bは、微視的にはXY平面に平行な平面内に面積を有する光出射面30esから出射されるが、説明を簡単にするために1点から出射されるように記載されている。
【0044】
本実施形態における投光装置100は、少なくとも1つの光偏向装置10を備える。光偏向装置10については、図1および図2を参照して説明した通りである。前述した光源は、例えば半導体レーザ素子を含み得る。光源から発せられる光ビームの波長は、用途に応じて選択され得る。対象物までの距離を赤外線によって計測する場合、光ビームの波長は、例えば700nm以上2.5μm以下であり得る。光ビームの波長は、可視域の波長、すなわち、約400nm以上約700nm以下であってもよい。光ビームの波長は、2.5μm以上であってもよい。
【0045】
光偏向装置10は、そのスキャン方向がV方向の成分を含むように配置される。図5Aおよび図5Bに示す例において、光偏向装置10は、X軸がV軸に対して傾斜するように配置されている。X軸は、光偏向装置10内を光が伝搬する方向に対して平行である。図5Bに示すように、光偏向装置10は、出射角度θと、出射角度θよりも大きい出射角度θとの間でスキャンする。光偏向装置10は、出射角度θで出射された光が、出射角度θで出射された光よりも鉛直下方に向けて投光されるように配置されている。これは、図5Bに示す配置において、光源からの光が光導波層20の下方の端面から地面に入射することを意味する。鉛直下方は、-V方向に相当する。
【0046】
スキャンの範囲は、例えば出射角度θ=5°から出射角度θ=35°であり、光出射面30esとV軸のなす角度は、例えば35°であり得る。この場合、出射角度θで出射された光は地面に入射する一方、出射角度θで出射された光は地面に対して平行に伝搬する。
【0047】
光偏向装置10をこのような配置にすると、出射角度θで出射された光の広がり角Δθは、出射角度θで出射された光の広がり角Δθよりも大きくなる。すなわち、出射角度θで出射された光は、X方向に相対的に太いスポットを形成する。地面に対して垂直なV方向はスキャン方向に平行なX方向の成分を含むので、-V方向に出射された光は、相対的に太いスポットを形成する。
【0048】
図6は、本実施形態の投光装置100が近距離または遠距離の対象物を検出する動作を説明するための図である。図6に示す例において、近距離の対象物は地面であり、遠距離の対象物は人である。本実施形態の投光装置100から出射された光のスキャン方向は、地面に対して垂直な方向である。光のスキャン方向は、太い両矢印によって表されている。地面または地面に近い部分を照射する光は、相対的に太いスポットを形成する。本実施形態の投光装置100が近距離の対象物を照射する場合、その反射光の強度は、遠距離の対象物と比較して増加する。従来、近距離の対象物からの反射光をフォトディテクタまたはイメージセンサで検出すると、検出信号が飽和して、近距離の対象物に関する距離および形状などの情報を正確に得られない課題が存在した。
【0049】
しかしながら、本実施形態の投光装置100によれば、-V方向にスキャンする場合、光のスポットが相対的に太くなることから、近距離の対象物に照射される光のエネルギー密度を低下させることができる。これにより、反射光の強度を低下させて検出信号の飽和を抑制し、近距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0050】
逆に、本実施形態の投光装置100が遠距離の対象物を照射する場合、その反射光の強度は、近距離の対象物と比較して減少する。従来、対象物が遠くなるほど検出信号のS/Nが低下して、遠距離の対象物の情報を正確に得られない課題が存在した。
【0051】
しかしながら、本実施形態の投光装置100によれば、+V方向にスキャンする場合、光のスポットが相対的に細くなることから、遠距離の対象物に照射される光のエネルギー密度を向上させることができる。これにより、検出信号のS/Nの低下を抑制して、遠距離の対象物の情報を正確に得ることができる。
【0052】
また、従来、遠距離の対象物は検出画像では小さく見えるので、遠距離の対象物の情報を正確に得ることは容易ではない。しかしながら、本実施形態の投光装置100によれば、遠距離の対象物を照射する場合、光のスポットを細くできる。これにより、地面に対して垂直な方向における検出分解能が向上し、遠距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0053】
(変形例)
次に、図7Aから図12を参照して、本実施形態における投光装置100の第1変形例から第6変形例を説明する。これらの図では、説明のわかりやすさのために、構成要素が分離した状態で示されているが、これらの構成要素は接触していてもよい。
【0054】
図7Aは、本実施形態の第1変形例における投光装置110の例を模式的に示す斜視図である。図7Bは、図7Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。第1変形例における投光装置110が本実施形態における投光装置100とは異なる点は、光学素子50が、光偏向装置10の光出射面30esから出射された光の光路上に配置されていることである。光学素子50は、光偏向装置10の光出射面30esから出射される光を屈折させ得る。
【0055】
図7Bに示す例では、光学素子50は、少なくともX方向の成分を含む所定の方向において曲率を有するシリンドリカル凹レンズを有する。この凹レンズでは、少なくとも光スキャンの範囲内で、-X方向における曲率が大きくなり得る。凹レンズの曲率半径は、例えば、1mm以上100mm以下であり得る。光偏向装置10から出射角度θで出射された光の、X方向における広がり角は、光学素子50によって拡大されてΔθ1Aになる。これにより、近距離の対象物に照射される光のエネルギー密度をさらに低下させることができる。その結果、反射光の強度を低下させて検出信号の飽和を抑制し、近距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0056】
図8Aは、本実施形態の第2変形例における投光装置120の例を模式的に示す斜視図である。図8Bは、図8Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。第2変形例における投光装置120が第1変形例における投光装置110とは異なる点は、光学素子50が、少なくともX方向の成分を含む所定の方向において曲率を有するシリンドリカル凸レンズを有することである。この凸レンズでは、少なくとも光スキャンの範囲内で、+X方向における曲率が大きくなり得る。凸レンズの曲率半径は、例えば、1mm以上100mm以下であり得る。光偏向装置10から出射角度θで出射された光の、X方向における広がり角は、光学素子50によって縮小されてΔθ2Bになる。これにより、遠距離の対象物に照射される光のエネルギー密度を向上させることができる。その結果、検出信号のS/Nの低下を抑制し、より遠い対象物の情報を正確に得ることができる。
【0057】
図9Aは、本実施形態の第3変形例における投光装置130の例を模式的に示す斜視図である。図9Bは、図9Aに示す構成を-Y方向に沿って見た図である。第3変形例における投光装置130が第1変形例における投光装置110とは異なる点は、光学素子50が複数の凹レンズを含むレンズアレイを有することである。複数の凹レンズは、少なくともX方向の成分を含む所定の方向に沿って配列されている。このレンズアレイは、光スキャンの範囲の少なくとも一部をカバーしている。個々の凹レンズの曲率は、少なくとも光スキャンの範囲内で、-X方向において大きくなってもよい。これにより、前述した第1変形例と同様に、近距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0058】
第1変形例から第3変形例における光偏向装置10の配置は、本実施形態と同様である。光偏向装置10から出射される光のスポットは、-V方向にスキャンすると太くなり、+V方向にスキャンすると細くなる。小さい曲率半径の凹レンズにより、近距離の対象物を照射するための光のスポットをさらに太くする効果が実現できる。小さい曲率半径の凸レンズにより、遠距離の対象物を照射するための光のスポットをさらに細くする効果が実現できる。第1変形例における投光装置110から第3変形例における投光装置130は容易に作製することができる。
【0059】
また、第1変形例から第3変形例において、光学素子50は地面に対して垂直に配置されているが、傾斜していてもよい。また、レンズは光学素子50の出射面ではなく入射面に設けられていてもよく、入射面と出射面の両方に設けられていてもよい。
【0060】
図10Aは、本実施形態の第4変形例における投光装置140の例を模式的に示す斜視図である。図10Bは、図10Aに示す構成を+Y方向に沿って見た図である。第4変形例における投光装置140が第1変形例における投光装置110とは異なる点は、光学素子50がミラーを有することである。この第4変形例では、光偏向装置10を、光の出射角度を厳密に考慮して配置する必要がない。すなわち、光偏向装置10の配置の自由度を高めることができ、第4変形例における投光装置140は、第1変形例における投光装置110から第3変形例における投光装置130よりも容易に作製することができる。また、光偏向装置10が誤差を持って配置された場合、光学素子50が有するミラーの配置を微調整することにより、所望の方向に光を投光することが可能である。例えば、光偏向装置10が所定の位置からY軸に対してψ°回転して配置された場合、ミラーの角度をY軸に対して(ψ/2)°回転させて配置することにより、投光の角度のずれを補償することができる。
【0061】
図11Aは、本実施形態の第5変形例における投光装置150の例を模式的に示す斜視図である。図11Bは、図11Aに示す構成を+Y方向に沿って見た図である。第5変形例における投光装置150が第4変形例における投光装置140とは異なる点は、光学素子50が、少なくともX方向の成分を含む所定の方向において曲率を有するシリンドリカル凸ミラーを有することである。この凸ミラーでは、少なくとも光スキャンの範囲内で、-X方向において曲率半径が大きくなり得る。凸ミラーの曲率半径は、例えば、1mm以上100mm以下であり得る。光偏向装置10から出射角度θで出射された光の、X方向における広がり角は、光学素子50によって拡大されてΔθ1Dになる。これにより、光偏向装置10の配置の自由度を高められるだけでなく、近距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0062】
図12は、本実施形態の第6変形例における投光装置160の例を模式的に示す斜視図である。第6変形例における投光装置160が本実施形態における投光装置100とは異なる点は、複数の光偏向装置10がY方向に沿って配列されていることである。複数の光偏向装置10には、複数の位相シフタ60がそれぞれ接続されている。複数の光偏向装置10の個数は、例えば8以上64以下であり得る。第6変形例における投光装置160では、複数の光偏向装置10から出射された光の干渉によって光ビームが形成される。光ビームは、複数の光出射面30esを含む広い光出射面から外部に出射されるということもできるが、前述の実施形態および変形例と同様に、図12では説明を簡単にするために1点から出射されるように記載されている。図12に示す例において、光ビームのY方向における幅は、前述した例と比較して狭くなり得る。これは、上記の広い光出射面のY方向におけるサイズが、前述した例における光出射面30esのY方向におけるサイズよりも大きいからである。
【0063】
位相シフタ60は、印加される駆動電圧の変化に応じて屈折率が変化する構成を有し得る。ある例では、位相シフタ60は、温度変化によって屈折率が変化する熱光学材料から形成され得る。位相シフタ60は、熱光学材料の温度を変化させる不図示のヒータを備える。不図示のヒータには、駆動電圧を印加するための2つの電極が設けられている。他の例として、位相シフタ60は、駆動電圧の変化によって屈折率が変化する電気光学材料から形成され得る。位相シフタ60には、電気光学材料に駆動電圧を印加するための2つの電極が設けられている。不図示の制御装置からの制御信号の入力によって駆動電圧が変化すると、位相シフタ60の屈折率が変化して位相シフタ60を通過する光の位相が変化する。第6変形例における投光装置160では、制御信号に応答して、駆動電圧が変化し、複数の位相シフタ60から複数の光偏向装置10にそれぞれ入射する光の位相が、複数の光偏向装置10が並ぶ順に一定量ずつ変化する。この位相シフトにより、光ビームの出射方向をY方向に沿って変化させることができる。これにより、光をUV平面上で2次元的にスキャンすることが可能になる。
【0064】
図13Aは、本実施形態の第7変形例における投光装置170の例を模式的に示す斜視図である。第7変形例における投光装置170が本実施形態における投光装置100とは異なる点は、光偏向装置11が、X方向に沿って配列された複数の光導波路12と、複数の光導波路12の各々に接続される複数の位相シフタ60とで構成される点である。複数の光導波路12の各々は、光を導波させる光導波領域12wと、光を出射させる光出射領域12rとを備える。また、複数の光出射領域12rの各々には、グレーティング12gが設けられている。このような構成により、光出射面30esから出射する光をV方向に沿ってスキャンすることができる。光出射領域12rは、グレーティング12gの代わりに、上述の実施形態における光偏向装置10と同様に、2つのミラーとその間に存在する光導波層から構成されるものとしてもよい。このような構成により、V方向に加えて、U方向に沿っても光をスキャンすることができる。
【0065】
光導波領域12wをY方向に沿って伝搬する光は、グレーティング12gによる回折に起因して、YZ平面に平行な複数の回折光として光出射領域12rから外部に出射される。光出射領域12rのY方向における長さは、例えば1μm以上10μm以下であり得る。グレーティング12gにおける凹部の個数、例えば4個以上16個以下に設定され得る。グレーティング12gにおける、1周期当たりの凹部のY方向の長さ、すなわちデューティ比は、グレーティングの凹部の深さおよび個数によって適宜変更してもよい。第7変形例における光偏向装置11では、複数の光導波路12から出射された光の干渉によって光ビームが形成される。光ビームは、複数のグレーティング12gを含む光出射面30esから外部に出射されるということもできるが、前述の実施形態および変形例と同様に、図13Aでは説明を簡単にするために1点から出射されるように記載されている。
【0066】
第6変形例と同様に、位相シフタ60は、印加される駆動電圧の変化に応じて屈折率が変化する構成を有し得る。不図示の制御装置からの制御信号の入力によって駆動電圧が変化すると、位相シフタ60の屈折率が変化して位相シフタ60を通過する光の位相が変化する。第7変形例における投光装置170では、制御信号に応答して、駆動電圧が変化し、複数の位相シフタ60から複数の光導波路12にそれぞれ入射する光の位相が、複数の光導波路12が並ぶ順に一定量ずつ変化する。この位相シフトにより、光ビームの出射方向をV方向に沿って変化させることができる。
【0067】
第7変形例におけるV方向のスポットの幅は、光出射領域12rの出射部における光ビーム22bの幅に依存する。図13Bは、複数の光導波路から出射される光ビーム22bと出射角度との関係を微視的に(すなわち1点ではなく、幅を持ったビームが出射される形態で)示した図である。図13Bの左図では出射角度がθ の場合を、右図は出射角度がθ よりも大きなθ の場合を示す。ここで、光出射面30esに対して垂直な出射角度をゼロ度とする。図13Bに示されるように、出射方向から見たときの出射部の光ビーム22bの幅は出射角度θに依存する。光出射領域の幅をdとすると、出射部の光ビーム22bの幅はdcosθで表される。言い換えれば、出射角度が大きいほど、出射方向から見たときの出射部の光ビームのX方向の幅は小さくなる。従って出射角度が大きいほど、遠方(すなわち、ファーフィールド)におけるV方向のスポットの幅は大きくなる。
【0068】
投光装置170では、複数の位相シフタ60が光の位相を変化させることにより、光出射面30esから出射される光の出射角度を角度θ1から、角度θ1よりも大きい角度θ2の範囲で変化させることが可能であり、光出射面30esから出射角度θ1で出射された第1の光が、光出射面30esから出射角度θ2で出射された第2の光より鉛直下方に向けて投光されるように配置されている。これにより、上述の実施形態と同様に、反射光の強度を低下させて検出信号の飽和を抑制し、近距離の対象物の情報をより正確に得ることができる。
【0069】
前述した第1変形例から第7変形例において、光学素子50は、光出射面30esから出射角度θで出射された光が、出射角度θで出射された光よりも鉛直下方に向くように、光の方向を変化させると言うことができる。光学素子50は、光学素子50に入射した光を、光学素子50に入射した角度とは異なる角度で出射させ得る。
【0070】
前述した例の他に、第2変形例における投光装置120において、光学素子50は、複数の凸レンズを含むレンズアレイを有していてもよい。複数の凸レンズは、少なくともX方向の成分を含む所定の方向に沿って配列されていてもよい。この場合には、遠距離の対象物に照射される光のエネルギー密度を向上させることができる。これにより、検出信号のS/Nの低下を抑制して、より遠距離の対象物の情報を正確に得ることができる。
【0071】
また、第5変形例における投光装置150において、出射角度θの光に対する凸ミラーを、出射角度θの光に対する凹ミラーに置き換えてもよい。あるいは、出射角度θの光に対する凸ミラーに加えて、出射角度θの光に対する凹ミラーを設けてもよい。これらの場合には、より遠距離の対象物の情報を正確に得ることができる。光学素子50は、少なくともX方向の成分を含む所定の方向に沿って配列された複数のミラーを含んでいてもよい。
【0072】
(応用例)
次に,図14Aから図15を参照して、本実施形態における投光装置100の第1応用例および第2応用例を説明する。
【0073】
図14Aおよび図14Bは、それぞれ、本実施形態における投光装置100を車両100Vに搭載した第1応用例を模式的に示す斜視図および側面図である。図14Aに示す例では、車両100Vは、その前面に投光装置100を備える。投光装置100は、前方に向けて光を出射する。このように、投光装置100は移動体に搭載され得る。移動体は、車両100Vの他に、例えば、船舶、または電車であってもよい。図14Bに示す例において、車両100Vは、近距離における地面、および遠距離における人の情報を正確に得ることができる。車両100Vの運転手は、これらの情報から周辺の状況を正確に把握し、安全に運転することができる。
【0074】
図15は、本実施形態における投光装置100を監視システム100Sに搭載した第2応用例を模式的に示す斜視図である。図15に示す例では、監視システム100Sは、円柱状の形状を有する。監視システム100Sは、その側面に投光装置100を備える。監視システム100Sの形状は任意である。監視システム100Sは、例えば、建築物またはその周辺に取り付けられ得る。建築物内の人は、監視システム100Sから得られた近距離および遠距離の対象物の情報から、建築物の周辺における不審者または不審物の有無を正確に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示における投光装置は、例えば車両、AGV(無人搬送車)、船舶、電車などの移動体、および、UAV(無人飛行機)などの飛行体に搭載されるLiDARシステムなどの用途に利用できる。また、建築物に取り付ける監視システムなどにも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
10 光偏向装置
10e 電極
20 光導波層
22 光
22b 光ビーム
30 第1ミラー
30es 光出射面
30s、40s 反射面
40 第2ミラー
50 光学素子
60 位相シフタ
100、110、120、130、140、150、160、170 投光装置
100V 車両
100S 監視システム
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15