(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】携帯電灯
(51)【国際特許分類】
F21L 4/00 20060101AFI20240802BHJP
F21V 31/03 20060101ALI20240802BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20240802BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20240802BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240802BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240802BHJP
【FI】
F21L4/00 411
F21V31/03
F21V3/00 510
F21V3/02 200
F21V3/00 320
F21V3/00 340
F21V17/00 152
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023134114
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2019013356の分割
【原出願日】2019-01-29
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 克昌
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511101(JP,A)
【文献】特開2007-250817(JP,A)
【文献】特開2004-228143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21L 4/00
F21V 31/03
F21V 3/00
F21V 3/02
F21V 17/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と発光部とをケース内に有し、前記ケースの前側に透明レンズが取り付けられ、
前記発光部は、光源を基板上に実装し、前記光源に伏せて配され、前記光源の光放射範囲の全域を覆う中空半球状の透光性カバーと、前記透光性カバーの周囲に配され、お椀形の底付近に一つの焦点を有する反射鏡とを有し、前記反射鏡のお椀形の底部に形成された穴部に前記透光性カバーを配置したことで前記光源と前記反射鏡の焦点とを合致させ、前記反射鏡に照射される光線は前記透光性カバーを透過した光線とし、前記反射鏡の作用によって前記透明レンズを通して前方に略平行光を照射するように構成し、
前記透光性カバーはその材質または表面処理による光拡散手段であって、前記透光性カバーの表面に施された梨地加工で構成される光拡散手段を有し、
前記光源と前記透光性カバーの間は空間を持ち、前記透光性カバーは、前記光源の発光中心との距離が一定な中空半球状であり、
前記透光性カバーの大きさは、前記反射鏡の前記穴部の内径よりも小さく構成し、かつ前記透光性カバーと前記基板との間には隙間を有し、前記透光性カバーに覆われた空間を任意の1箇所または複数箇所で開放し
、
前記発光部は、前記反射鏡および前記透光性カバーは前記基板とは接触しない、または前記反射鏡あるいは前記透光性カバーの一部突出片のみが前記基板に接するよう構成したことを特徴とする携帯電灯。
【請求項2】
前記発光部は、前記基板上の前記光源の周囲面のうち少なくとも前記透光性カバーで覆われた範囲は、光反射可能な面であることを特徴とする請求項
1に記載の携帯電灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を電源とし、夜間もしくは暗所にて使用される携帯電灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然災害や大地震などの災害リスクに伴い、安価で気軽に買い求めやすい携帯電灯の需要が高まっている。
【0003】
近年、携帯電灯などの照明器具に使用する光源としてはLED(発光ダイオード)が主流となっており、前方に向けて投光するためLEDに反射鏡や光学的なレンズなどの集光手段を組み合わせるのが一般的である。中でも比較的簡易に製造でき安価でありながら高い前方照度を得られる集光手段として、LEDを基板上に実装し、略お椀形の反射鏡を光源に近づけて発光部としたものが実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
光源に用いられるLEDとしては、現在、青色発光する半導体チップの上に黄色系蛍光体を被せて白色の光に変換する方式が主流である。青色半導体チップからの放射方向に関わらず蛍光体の濃度を一定にするのは難しく、そのためLEDの発光点を細かく捉えると、発光点の中央からは白い光が、発光点の中央を外れた部分からは黄味がかった光が放射される現象が生じる。前述のような反射鏡とLEDを組み合わせた発光部では、光源の発光点に生じた放射色の不均一さ(以下、単に放射色不均一と称す)に起因し前方の照射に色ムラが現れやすく、照射対象物をきれい照らすことができないため快適性、安全性を損なう。
【0005】
LEDはメーカーや構造によって形状は様々であり、それぞれのLEDに対して色の放射特性は異なる。また、携帯電灯などの照明器具は概して小ロット生産であるため、製品要求に合わせて発光部の仕様を変更すべく大きな投資を行うのは現実的ではない。
【0006】
また、災害などもしもの場合に備え携帯電灯全体の構成を考えると、できるだけ明るいことや簡素で壊れにくい構造が求められる。器具の明るさを確保するため光源に多くの電流を供給し高光束化していくと、光源の過熱によって器具本体の光源周辺の樹脂材料などを痛めかねないため、光源の放熱に配慮しなければならない。
【0007】
さらに、災害時の雨中での使用を想定すると、万一器具内に湿気がこもった状態でも器具の作動に支障をきたさないことなど、これらの課題にも対応した携帯電灯の発売が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、光源と略お椀形の反射鏡を組み合わせた安価な構成の携帯電灯において、簡易でしかも光源の形状によらず汎用性の高い方法で光源の放射色不均一を解消し色ムラ無く前方を照射することを可能とし、また、簡素で壊れにくく、できるだけ明るくかつ光源の放熱や湿気の多い環境での使用も考慮した、快適で安全に使用できる携帯電灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述のような課題を解決するために本発明では、電池と発光部とをケース内に有し、前記発光部は、光源を基板上に実装し、前記光源には光源の光放射範囲の一部または全域を覆う透光性カバーと、前記透光性カバーの周囲に反射鏡を配し、前記透光性カバーを通過した光が前方方向やあるいは反射鏡の受光面を照射するように構成する。そして、前記透光性カバーはその材質または表面処理による光拡散手段を有し、前記光源と前記透光性カバーの間は空間を持ち、前記透光性カバーに覆われた空間を任意の1箇所または複数個所で開放した構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板上に実装した光源と反射鏡を組み合わせた一般的な携帯電灯の構成において、光源から放射された光を透光性カバーで分散しそれを反射鏡の受光面などに向けて放射するため、光源の照射色不均一を解消し反射鏡を介して前方に色ムラの無い照射を得ることができる。光源と透光性カバーの間を空間とし光源自体には手を加えることがないため、光源自体の光取り出し効率や信頼性を損ねることがないし、光源の種類や形状によらず汎用性が高い。
【0012】
透光性カバーに覆われた空間を任意の1箇所または複数箇所で開け放っている、すなわち開放している構成であるため、光源から熱が発生し透光性カバーに覆われた空間が熱せられても、空間の空気が随時入れ替わることで熱を透光性カバーの外部に逃がし携帯電灯の高光束化の要望に応えられる。雨中での器具使用で万一ケース内に湿気がこもった場合でも、透光性カバーに覆われた空間の空気が随時入れ替わることで透光性カバー内での湿気の滞留をなくし、結露による点灯異常や光源の電気接点の錆びを防止するので器具の作動に支障をきたさない。加えて、光源より透光性カバーに入射させずに、透光性カバーに覆われた空間を開放した部分から器具前方に向かわせることにより透光性カバーによる減衰を極力少なくすることができ器具の全光束を高く保つ効果がある。
【0013】
さらに望ましくは、前記発光部において、反射鏡の焦点を光源に合わせ、さらに光源を概ね中心とした中空半球状の透光性カバーを基板上に伏せて配し、光源と透光性カバーの間が空間となるように構成すると、半球状の透光性カバーは、反射鏡の焦点から発する光源本来の放射方向を損なわず集光度を保ちやすいので前方の照度が高く保てる。
【0014】
また、前記発光部において、反射鏡および透光性カバーは基板とは接触しない、または、反射鏡あるいは透光性カバーの一部突出片のみが基板に接するよう構成すると、透光性カバーに覆われた空間を大きく開放できるので通気がしやすくなるとともに、基板上の光源周辺面で点灯中に高温となる部分と反射鏡や透光性カバーの接触を避け、反射鏡や透光性カバーの材料を痛めることがない。
【0015】
さらに望ましくは、前記発光部において、基板上の光源の周囲面のうち少なくとも透光性カバーで覆われた範囲は光反射可能な面とすると、透光性カバーに向けて光源より放射されるも透光性カバー界面で反射し光源方向に戻ってきた光を再び器具前方に向かわせることができる。あるいは、LEDの側方に漏れて透光性カバーに向けて入射できなかった光を基板の反射面を介して、透光性カバーに覆われた空間を開放した部分より器具前方に無駄なく出て行くことで器具の全光束を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1における携帯電灯の発光部方向から見た正面図
【
図2】同実施の形態1における携帯電灯のスイッチ操作面から見た上面図
【
図8】外観正面のレンズを外した状態にて
図4に示す矢視E方向から見た図
【
図9】レンズと反射鏡を外した状態にて
図4に示す矢視F方向から見た図
【
図10】
図4のうち発光部の断面のみを拡大するとともに、この発光部による前方照射形を簡易的に表示した図
【
図11】
図10から半球カバーを外した状態での発光部の断面のみの拡大図と、この発光部による前方照射形を簡易的に表示した図
【
図12】本発明の実施の形態2における半球カバーの別形態で、部分的に梨地加工を半球カバーに施した状態を示す発光部のみの断面の拡大図
【
図13】同実施の形態2における半球カバーの別形態で、半球カバーの天部を部分的に開放した状態を示す発光部のみの断面の拡大図
【
図14】
図13において、透光性カバー界面で反射した光や、LEDの側方に漏れて透光性カバーに入射できなかった光の行き先を矢印で示した図と、同発光部を器具正面方向から見た姿を追加記載した図。
【
図15】本発明の実施の形態3における基板と半球カバーの別形態を示した図と、理解を助けるため基板を光源の背面方向から見た姿を追加記載した図。
【
図16】本発明の実施の形態4における基板と半球カバーの別形態を示したもので、発光部および周辺の断面を拡大した図
【
図17】本発明の実施の形態5における透光性カバーの別形態を示したもので、発光部のみの断面の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における携帯電灯の発光部方向から見た正面図、
図2は同実施の形態1における携帯電灯のスイッチ操作面から見た上面図、
図3は同実施の形態1における携帯電灯の側面図である。
【0019】
また、
図4は
図2に示すA-Aの方向に見た断面図、
図5は
図3に示すB-Bの方向に見た断面図、
図6は
図4に示すC-Cの方向に見た断面図で、
図7は
図4に示すD-Dの方向に見た断面図である。
【0020】
さらに
図8は、外観正面のレンズを外した状態にて
図4に示す矢視E方向から見た図である。
図9は、レンズと反射鏡を外した状態にて
図4に示す矢視F方向から見た図である。
【0021】
本発明の実施の形態1の携帯電灯は、
図1~
図3に示すように、前ケース1と電池ケース2、レンズ3とスイッチツマミ4で外観が構成されている。
【0022】
図4、
図5、
図7で示すように、電池ケース2の中には、電池5および電池5と導通をとるための電池ばね6、センターばね7が配置されている。
【0023】
さらに
図4、
図5、
図6、
図9で示すように、前ケース1の中には、中ケース10が固定配置されていて、光源であるLED8が基板9に実装された状態で中ケース10に搭載されることで前ケース1内の定位置に収まっている。中ケース10には電池5と導通をとるためのプラスリード11と中継リード12、さらにスイッチリード13とコンタクトリード14が固定されている。
【0024】
基板9には、点灯回路の正極端であるプラスリード11と負極端であるコンタクトリード14が半田付けされていて、プラスリード11は電池5のうち1本の正極に通じ、電池ばね6、中継リード12を通じて、3本の電池を直列につないだ後、センターばね7がスイッチリード13に通じ、スイッチリード13がコンタクトリード14に通じる回路となっている。スイッチツマミ4を前方にスライドさせると、スイッチツマミ4がスイッチリード13を押し下げコンタクトリード14と接触し回路が閉じるのでLED8が点灯する仕組みである。
【0025】
本発明の実施の形態1の発光部は、
図4で示すように光源であるLED8の前方に略お椀形の反射鏡15の底部を基板9に近づけることでLED8と前記反射鏡15の焦点を合わせ、さらにLED8に対して光放射範囲の一部または全域を覆う透光性カバーの一形態である半球カバー16が光源を中心とした中空半球状にて基板9に伏せて配置され、半球カバー16を通過した光が反射鏡15の受光面15aに照射されるよう構成している。
【0026】
では、半球カバー16の形態について詳細を説明する。
図10は、
図4のうち発光部の断面のみを拡大するとともに、この発光部による前方照射形を簡易的に表示した図である。まず、半球カバー16の形状を説明する。
【0027】
図10および
図8、
図9で示すように半球カバー16は、その中空形状によってLED8との間に空間を有していて、半球カバー16は基板9と対峙する第2の対峙面16bに、放射状に細い4本の接地足16aを有していて、接地足16aのみが基板9と接している。これにより半球カバー16における基板9と対峙する第2の対峙面16bは、基板9とは接地足16aの厚み分の隙間を隔てている。さらに、反射鏡15における基板9と対峙する面である第1の対峙面15bは前述の接地足16aの上に乗っているため、反射鏡15と基板9も同様の隙間を保っている。ここで、通気経路17としては、反射鏡15と基板9の隙間を通る経路と、反射鏡15と半球カバー16の隙間を通る経路の2つを有し、これにより透光性カバーに覆われた空間を開放したことと同意である。
【0028】
LED8が発熱しても、通気経路17より通気し放熱することができる。また、LED8の点灯により一旦熱せられたLED周辺が冷えたとき、半球カバー16内に湿気が滞留していると半球カバー内面や、LED8、基板9面に結露が生じる可能性があるが、通気経路17より外部と通じているので湿気を滞留させず結露やLED8の端子錆びの心配がない。LED8の発熱に伴いLED8に給電する基板9上の銅箔パターンが過熱した場合も、接地足16aを避けて銅箔パターンを引き回せば反射鏡15や半球カバー16の材料に過熱の影響を及ぼさない。
【0029】
このように、反射鏡および透光性カバーは基板とは接触しない、または反射鏡あるいは透光性カバーの一部突出片のみが基板に接する構成とすると、通気がしやすくなるとともに、基板上の光源周辺面で点灯中に高温となる部分と反射鏡や透光性カバーの接触を避け、反射鏡や透光性カバーの材料を痛めることがない。
【0030】
本発明の実施の形態1では、LED8のチップサイズは縦3mm、横3mm、厚み0.6mmのものを使用しており、その際の基板9と、反射鏡15および半球カバー16の隙間は約1mmとしている。基板9表面の発熱部が対峙する部品に影響を及ぼさないこと、通気性を考慮して少なくとも1mm程度の隙間を設けるのが望ましい。
【0031】
では、半球カバー16の光拡散作用について説明していく。まず、
図11を参照してLED8の放射色不均一について原因の考察を述べる。
図11は、
図10から半球カバーを外した状態での発光部の断面のみの拡大図と、この発光部による前方照射形を簡易的に表示した図である。
【0032】
図11に示すLED8は、バスタブ型の枠8aの中央に青色光を発する半導体チップ8bがあり、その上に黄色系の蛍光体8cを塗布した構成である。光の放射方向によって蛍光体8cの厚みに違いがあるため、LED8の発光点を細かく捉えると発光点の中央からは白い光8wが、発光点の中央よりわずかに外れた部分からは黄味がかった光8yが放射される現象が生じる。例えば、本発明の実施の形態1では反射鏡15の焦点15fをLED8の中央に合わせて、LED8の中央からの白い光8wを略平行光線に変換し前方を白い光で照射しようとしている。しかし、焦点からわずかに外れた位置から放射される黄味がかった光8yは、受光面15aを介して完全な平行光線にはならず、前方照射において中央を外れた部分に集まりやすく、
図11に表示した前方照射形のように黄色い輪を形成する。これが前方照射への色ムラの出かたの一例である。以上に述べたような平型のLEDに限らず、LED光源の形状や製造方法によって放射色不均一の出かたは様々である。
【0033】
それに対し、本発明では光拡散手段を有した透光性カバーを利用した。
図10に示すように半球カバー16は、透明の樹脂で成形され、表面には光拡散手段として梨地(シボ)加工されている第1の梨地加工16cが施されている。半球カバー16によって拡散させると、放射光は反射鏡15の受光面15aを介して拡散された光となる。
図10に表示した前方照射形のように、
図11よりは全体に大きな照射形となるが照射域では色が平均化されて照射される。
【0034】
透光性カバーとしては、集光度の確保の観点では本発明の実施の形態1のように光源を中心とした半球形状が最適である。光源からの放射方向に垂直で一様なカバーであるから、拡散手段によって光線が拡散されても概ね基本の放射方向は変わらず、色が分散されながら集光度を損ないにくいため前方に高照度の投光が可能である。
【0035】
前方照射色の改善度合いは透光性カバーの光拡散の強さで調整できる。どの程度の拡散が必要かは使用する光源によって変わるため、例えば透光性カバーの表面の梨地加工の粗さなどで調整すればよい。
【0036】
なお、透光性カバーによる光分散を強めると前方の中心照度は低くなるが、同時に照射範囲は広くなる。言い換えれば広範囲に照らす携帯電灯となるため、目的に応じ照射を調整する手段と考えて利用すれば便利である。
【0037】
他の拡散手段としては、樹脂材料自体に拡散材を練りこんで透光性カバーを成形する方法でもよい。拡散材を練りこんだ場合、前述の梨地加工よりは拡散が強くなる傾向で広範囲に照射するタイプの携帯電灯として利用できる。
【0038】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、
図12と
図13を参照して説明する。
図12と
図13は、本発明の実施の形態2における半球カバーの別形態を示したもので、
図10と同じく発光部の断面のみの拡大図である。
【0039】
ここでは、発明の効果の中で述べた、光源より透光性カバーに入射させずに、透光性カバーに覆われた空間を開放した部分から器具前方に向かわせることにより透光性カバーによる減衰を極力少なくすることができる効果についてさらに詳しく説明する。
【0040】
本発明の実施の形態1では、
図10に示したように半球カバー16の表面には第1の梨地加工16cが半球カバー16の全体に施されているが、これは必ずしも表面全体に必要ではない。
図12と
図13のように、LED8からの光放射の方向によっては反射鏡15の受光面15aに当たらない光8oがあり、それら光線は器具前方においては広く散光してしまうため、前方での照射形や色には大きな影響を与えない。そのため、
図12のように反射鏡15の受光面15aに当たる放射方向のみに第1の梨地加工16cを施してもよい。
【0041】
または、
図13のように反射鏡15の受光面15aに当たらない照射方向を開放して半球カバー16に第1の天穴16dを明けてもよい。この場合、第1の天穴16dの開放により新たに通気経路17が追加されるため半球カバー16内の空間の通気はさらに良くなる。
【0042】
本発明の実施の形態1のように半球カバー16の表面全体に第1の梨地加工16cを施した場合、点光源が半球全体の面光源へと拡大されるため光源方向を外部から目視した際の輝度が下がり目に眩しくない効果がある。一方、本発明の実施の形態2のように半球カバー16の一部を梨地無しや開放の状態とすると全光線透過率が上がり器具としての全光束が落ちにくいという利点があるため、器具の要求仕様により使い分けるのが良い。
【0043】
図14は、
図13において、透光性カバー界面で反射した光や、LEDの側方に漏れて透光性カバーに入射できなかった光の行き先を矢印で示した図と、同発光部を器具正面方向から見た姿を追加記載した図である。
図14で示すように、半球カバー16は前述のとおり第1の天穴16dを1箇所と、第1の側方穴16eを4箇所有している。
【0044】
光源方向に戻ってきた光8pあるいはLED8の側方に漏れて透光性カバーに向けて入射できなかった光8qは基板9の表面にて再反射し、半球カバー16の第1の天穴16dあるいは第1の側方穴16eから器具前方に出て行くことができる。第1の天穴16dあるいは第1の側方穴16eは開放穴であるために通過の際に光束を減衰することがない。
【0045】
このように、第1の天穴16dあるいは第1の側方穴16e、つまり透光性カバーに覆われた空間を開放した部分から、光源より透光性カバーに入射させずに器具前方に向かわせて器具の全光束を高く保つ効果がある。
【0046】
本発明の実施の形態2のように第1の側方穴16eを有する場合、第1の側方穴16eの幅は、光源の側方に漏れる光が器具前方に出て行きやすいように、また反射鏡15の受光面15a方向の空間への通気の面でも、少なくとも反射鏡15と基板9の隙間と同等かそれよりも大きくするのが望ましい。本発明の実施の形態2ではLED8のチップサイズは縦3mm、横3mm、厚み0.6mmのものを使用しており、その際の反射鏡と基板のすきまを1mmとしていて、第1の側方穴16eの幅は1.8mm程度とした。
【0047】
ここで基板上の光源の周囲面のうち少なくとも透光性カバーで覆われた範囲は、光反射可能な面とするとより効果的である。
図14では、基板9の光源周囲面は白色のシルク印刷で反射面9bを配した。反射材としては、銀地のシールを用いるなど他の手段でも構わないが、白色のシルク印刷であれば基板の製造工程上に普通に含まれているので追加コストがかからないし器具外観正面から見ても見栄えが良い。基板面に反射材を配すと、基板の反射面を介する際に光束減衰が少なく透光性カバーに覆われた空間を開放した部分より器具前方に無駄なく出て行くことで器具の全光束を高めることができる。
【0048】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、
図15を参照して説明する。
図15は、本発明の実施の形態3における基板と半球カバーの別形態を示した図と、理解を助けるため基板を光源の背面方向から見た姿を追加記載した図である。
【0049】
LED8と透光性カバーである半球カバー16の間の空間と外部を通気させるため、基板9の銅箔パターンの構成上可能であれば基板9に穴9aを明けて通気しても良い。例えば、
図15のように基板9に、穴9aを加工し通気経路17を確保し、穴9aを利用して半球カバー16より突出させた爪16hを基板9に引っ掛けるなどで取り付けてもよい。穴9aの大きさは他の実施の形態と同様に少なくとも1mm程度の幅を確保して、LED8の周囲にわたって広げた。このように透光性カバーに覆われた空間の任意の一箇所または複数箇所を開放し通気可能に設計すればよい。
【0050】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、
図16を参照して説明する。
図16は、本発明の実施の形態4に係る基板と半球カバーの別形態を示したもので、発光部および周辺の断面を拡大した図である。
【0051】
ここで、半球カバー16は反射鏡15に接着等で固定し、さらに反射鏡15はレンズ3に接着等で固定している。一方、基板9は中ケース10に固定されているので、反射鏡15における基板9と対峙する第1の対峙面15b、および半球カバーにおける基板9と対峙する第2の対峙面16bは、基板9とは一切接することなく、通気経路17を確保している。このように、基板と対峙する面の全面が基板とは接しないように設計してもよい。
【0052】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5を、
図17を参照して説明する。
図17は、本発明の実施の形態5における透光性カバーの別形態を示したもので、発光部のみの断面の拡大図であり、透光性カバー界面で反射した光や、LEDの側方に漏れて透光性カバーに入射できなかった光の行き先を矢印で示すとともに、同発光部を器具正面方向から見た姿も記載している。
【0053】
本発明の実施の形態5は、透光性カバーとして筒形カバー18を配置した例である。筒形カバー18は、反射鏡15より一体的に突出させた支持片15cに支持される形で反射鏡15の中央に固定されている。これにより筒形カバー18は、第2の天穴18dを1箇所と、第2の側方穴18eを4箇所備えている。
【0054】
筒形カバー18の表面には第2の梨地加工18cが施されており、LED8より放射された白い光8wと、黄味がかった光8yを分散し、反射鏡15を介して前方で色を平均化した照射を得ることができる。このように、前述の実施の形態1~4よりもさらに簡易な筒形部品でもLED放射色不均一は解消することができて、かつ反射鏡15の受光面15aに当たらない光8oや、透光性カバーに向けて光源より放射されるも透光性カバー界面で反射し光源方向に戻ってきた光8pや、あるいは光源の側方に漏れて透光性カバーに向けて入射できなかった光8qも、第2の天穴18dや第2の側方穴18eによって器具前方に向かわせることができる。また、通気と放熱性に関しても同様である。
【0055】
ただ、筒形であるために光源本来の放射方向を損ないやすいこと、カバー内側界面での反射が増えることで、反射鏡15を介した前方の中心照度は低くなる。
【0056】
前述のとおり、光源を中心とした半球形状のカバーの方が光源の放射を垂直に透過するので器具としては集光度を保ちやすいと言えるが、器具の要求仕様として必ずしも前方に尖った照射形を望まない場合はこのように安価で済む設計を選択してもよい。
【0057】
以上に述べたように、本発明によれば、光源と略お椀形の反射鏡を組み合わせた安価な構成の携帯電灯において、簡易でしかも光源の形状によらず汎用性の高い方法で、光源の放射色不均一を解消し色ムラも無く前方を照射することを可能とするものである。また簡素で壊れにくい構成で、器具の高光束化に対応すべく光源の放熱性や光を無駄なく前方に照射できる工夫を備え、湿気の多い環境での使用も考慮した、快適で安全に使用できる携帯電灯を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ごく簡単な構成で光源の形状によらず適用できるので汎用性が高い。そのため携帯電灯に限らずLED光源を利用した電灯全般の前方照射色の改善や明るさ確保、信頼性の向上に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 前ケース
2 電池ケース
3 レンズ
4 スイッチツマミ
5 電池
6 電池ばね
7 センターばね
8 LED
8a バスタブ型の枠
8b 半導体チップ
8c 蛍光体
8w 白い光
8y 黄味がかった光
8o 当たらない光
8p 光源方向に戻ってきた光
8q 入射できなかった光
9 基板
9a 穴
9b 反射面
10 中ケース
11 プラスリード
12 中継リード
13 スイッチリード
14 コンタクトリード
15 反射鏡
15a 受光面
15b 第1の対峙面
15c 支持片
15f 焦点
16 半球カバー
16a 接地足
16b 第2の対峙面
16c 第1の梨地加工
16d 第1の天穴
16e 第1の側方穴
16h 爪
17 通気経路
18 筒形カバー
18c 第2の梨地加工
18d 第2の天穴
18e 第2の側方穴