(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】窒化ガリウム半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240802BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20240802BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20240802BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240802BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/304 611Z
H01L21/78 Q
C30B29/38 D
C30B33/00
B23K26/57
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2020073158
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0030837(US,A1)
【文献】特開2003-197963(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215831(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/098215(WO,A1)
【文献】特開2010-114375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
H01L 21/301
C30B 29/38
C30B 33/00
B23K 26/57
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムで構成される半導体素子を形成する窒化ガリウム半導体装置の製造方法であって、
一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有する窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、前記窒化ガリウムウェハと前記エピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記加工ウェハにおける前記エピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、前記半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、
前記表面側プロセスを行った後に、前記加工ウェハのうちの前記窒化ガリウムウェハを剥離することで、前記加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)と前記窒化ガリウムウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハのうちの前記表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、裏面電極となる金属膜(61)を形成することと、を含み、
前記分割することは、
前記加工ウェハに対してレーザ光(L)を照射して、前記エピタキシャル成長膜と前記窒化ガリウムウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、
前記変質層を形成することの後に、前記加工ウェハをチップ構成ウェハと前記リサイクルウェハとに分割することと、を含み、
前記金属膜を形成することは、
前記分割することの後に、前記チップ構成ウェハの他面側に、断面台形状を成す複数の凸部および該凸部の間に位置する凹部による凹凸を残しつつ、前記複数の凸部それぞれが構成する断面台形状の上底面が、前記チップ構成ウェハの一面に対向するように平坦化することと、
前記凹凸が残る前記チップ構成ウェハの他面に前記金属膜を形成することと、を含む、窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記変質層を形成することは、前記レーザ光の照射によって窒化ガリウムを窒素と液状のガリウムにすることである、請求項
1に記載の窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記変質層を形成することは、第1レーザ照射と該第1レーザ照射の後に行う第2レーザ照射とによって行われ、前記第1レーザ照射にて前記第2レーザ照射よりも高いエネルギーで大打痕を形成し、前記第2レーザ照射にて前記第1レーザ照射よりも低いエネルギーで小打痕を形成することで前記変質層を形成する、請求項
1または
2に記載の窒化ガリウム半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)にて構成されるGaN半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縦型GaNデバイスの製造プロセスでは、n型のGaN基板上にエピタキシャル膜を形成して加工ウェハを形成した後、加工ウェハの表面側にデバイス構造を作製し、さらに、加工ウェハの表面側の表面電極および裏面側の裏面電極を形成する。これにより、縦方向に電流を流す縦型GaNデバイスが製造される。この縦型GaNデバイスの動作時の素子特性を向上させるためには、熱抵抗を低減することが重要である。したがって、実際の縦型GaNデバイスの製造においては、加工ウェハの表面側のデバイス構造および表面電極形成を含めた表面側プロセスの後に、GaN基板を裏面から薄化し、薄化したGaN基板の裏面に裏面電極を形成している。さらに、縦型GaNデバイスのうち裏面電極側がはんだ層を介してヒートシンクに実装される構造とされる。このような構造とされることから、(1)裏面電極のコンタクト抵抗を低減すること、(2)縦型GaNデバイスを構成する素子の熱抵抗を低減すること、(3)裏面電極をはんだ層に接合した後にもGaNと裏面電極との密着性を確保すること、が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるように、GaNのインゴットに対してレーザ照射を行うことで、GaN基板とインゴットの残りのGaNとを剥離する技術が検討されている。この剥離技術では、レーザ照射を行うことで、窒素がガスとして蒸発すると共に液体ガリウムが析出された変質層が形成されるため、この変質層を利用してGaN基板をインゴットから剥離させる。
【0005】
本発明者らは、このレーザ照射による剥離技術を用いて、縦型GaNデバイスにおける裏面電極形成前の薄化を行った後、CMP(chemical mechanical polishing)などによる平坦化工程を行い、裏面電極を形成するというプロセスを検討している。レーザ照射による剥離技術を用いる場合、薄化後に剥離したGaN基板の残りの部分を再利用することが可能となるという効果も得られる。
【0006】
一方で、デバイス作製時に、レーザ剥離面に電極を形成することから、良好な裏面コンタクト抵抗を実現すること、さらにはヒートシンクへの実装で素子剥がれが無いように密着性を確保することが必要になる。しかしながら、CMPなどによって裏面電極の作成前にレーザ剥離面を平面とする平坦化処理を行うと、高い密着性を得ることができないという課題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、縦型GaNデバイスにおける裏面電極の高い密着性を得ることができるGaN半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、GaNで構成される半導体素子を形成するGaN半導体装置の製造方法であって、一面(1a)と該一面の反対面となる他面(1b)とを有するGaNウェハ(1)を用意することと、GaNウェハの一面上にエピタキシャル成長膜(3)を形成することで、GaNウェハとエピタキシャル成長膜とを含むと共に、複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、加工ウェハにおけるエピタキシャル成長膜側の一面(10a)側に、半導体素子のうち該加工ウェハの一面側に対する半導体プロセスとなる表面側プロセスを行うことと、表面側プロセスを行った後に、加工ウェハのうちのGaNウェハを剥離することで、加工ウェハをチップ構成ウェハ(30)とGaNウェハを含むリサイクルウェハ(40)とに分割することと、分割することの後に、チップ構成ウェハのうちの表面側プロセスが行われた一面(30a)の反対面となる他面(30b)側に、裏面電極となる金属膜(61)を形成することと、を含んでいる。
【0011】
そして、分割することとして、加工ウェハに対してレーザ光(L)を照射して、エピタキシャル成長膜とGaNウェハとの少なくとも一方に変質層(15)を形成することと、変質層を形成することの後に、加工ウェハをチップ構成ウェハとリサイクルウェハとに分割することと、を行っている。また、金属膜を形成することとして、分割することの後に、チップ構成ウェハの他面側に、断面台形状を成す複数の凸部および該凸部の間に位置する凹部による凹凸を残しつつ、複数の凸部それぞれが構成する断面台形状の上底面が、チップ構成ウェハの一面に対向するように平坦化することと、凹凸が残るチップ構成ウェハの他面に金属膜を形成することと、を行っている。
【0012】
このように、レーザ照射によってチップ構成ウェハとリサイクルウェハとに分割している。このため、薄化後に剥離したリサイクルウェハを再利用することが可能となる。また、レーザ照射による分割後に、チップ構成ウェハの他面側の凹凸を残しつつ、複数の凸部が断面台形状となり、断面台形状の上底面が平坦化された状態となるようにして、その上に金属膜を形成するようにしている。
【0013】
これにより、チップ構成基板の他面に凹凸がある状態で裏面電極となる金属膜を密着させることができる。そして、チップ構成ウェハの他面の凹凸における凸部を断面台形状として、各凸部の上底面を略同一平面にすることで、凸部の高さを揃えつつ、凹部の深さが異なった構造となるようにできる。したがって、縦型GaNデバイスにおける裏面電極の高い密着性を得ることが可能となる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】第1実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1B】
図1Aに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1C】
図1Bに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1D】
図1Cに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1E】
図1Dに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1F】
図1Eに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1G】
図1Fに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1H】
図1Gに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1I】
図1Hに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1J】
図1Iに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【
図1K】
図1Fに続くリサイクルウェハの製造工程を示す断面図である。
【
図2】レーザ照射の照射位置を示したマップである。
【
図3】
図2に示すレーザ照射の照射位置の一部を拡大した図である。
【
図4A】平坦化工程前のチップ構成ウェハの他面の断面を誇張して示した図である。
【
図4B】平坦化工程後のチップ構成ウェハの他面の断面を誇張して示した図である。
【
図5A】第1実施形態のGaN半導体装置を構成する半導体チップのI-V特性を示した図である。
【
図5B】比較例におけるGaN半導体装置を構成する半導体チップのI-V特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、半導体材料としてGaNを用いて半導体素子を形成したGaN半導体装置の製造方法について説明する。
【0018】
まず、
図1Aに示されるように、一面1aおよび他面1bを有し、バルクウェハ状とされるGaNウェハ1を用意する。例えば、GaNウェハ1には、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×10
17~5×10
19cm
-3とされた高不純物濃度のn型ウェハが用いられる。GaNウェハ1の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものを用意している。そして、必要に応じ、GaNウェハ1の他面1b等に、酸化膜等で構成される保護膜を形成する。なお、本実施形態のGaNウェハ1は、一面1aがGa面とされ、他面1bがN面とされている。また、このGaNウェハ1は、下記半導体チップ100の製造工程を行った後では、後述する
図1Kのリサイクルウェハ40を再利用することで用意される。
【0019】
次に、
図1Bに示されるように、GaNウェハ1の一面1a上に、10~60μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜3を形成することにより、複数のチップ形成領域RAを有する加工ウェハ10を用意する。本実施形態では、エピタキシャル膜3は、第1GaN層に相当するn
+型エピタキシャル層3aと、第2GaN層に相当するn
-型エピタキシャル層3bとがGaNウェハ1側から順に成膜されて構成される。例えば、n
+型エピタキシャル層3aは、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×10
17~1×10
18cm
-3程度とされる。n
-型エピタキシャル層3bは、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×10
17~4×10
17cm
-3程度とされる。ここでは、n
+型エピタキシャル層3aについては電極材料とオーミック接触させられる不純物濃度とされ、n
-型エピタキシャル層3bよりも高不純物濃度とされている。
【0020】
なお、n-型エピタキシャル層3bは、後述する拡散層12等の一面側素子構成部分11が形成される部分であり、例えば、厚さが8~10μm程度とされる。n+型エピタキシャル層3aは、例えば、厚さが数μm~50μm程度とされる。n+型エピタキシャル層3aとn-型エピタキシャル層3bとの厚みの大小については任意であるが、ここでは半導体チップ100の厚みを確保できるようにn+型エピタキシャル層3aをn-型エピタキシャル層3bよりも厚くしてある。以下では、加工ウェハ10のうちのエピタキシャル膜3側の面を加工ウェハ10の一面10aとし、加工ウェハ10のうちのGaNウェハ1側の面を加工ウェハ10の他面10bとする。また、一面10aと他面10bとの間を側面10cとする。そして、各チップ形成領域RAは、加工ウェハ10の一面10a側に構成される。
【0021】
次に、
図1Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスのうちの一面10a側に対するプロセスである表面側プロセスを行う。具体的には、表面側プロセスとして、各チップ形成領域RAに、拡散層12やゲート電極13、図示しない表面電極や配線パターンやパッシベーション膜等の半導体素子における一面側素子構成部分11を形成する工程を行う。なお、ここでの半導体素子としては、種々の構成のものが採用され、例えば、縦型MOSトランジスタ等のパワーデバイスや、発光ダイオード等の光半導体素子、半導体レーザ等が採用される。その後、必要に応じ、加工ウェハ10の一面10a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0022】
続いて、
図1Dに示されるように、加工ウェハ10の一面10a側に支持部20を配置する。ここでは、支持部20を支持台21と接着層22とによって構成しており、接着層22を介して支持台21を加工ウェハ10に貼り付けることで構成している。支持台21は、加工ウェハ10が薄厚になった後にもハンドリングできるように加工ウェハ10を支持するためのものであり、製造工程中に反り難い材料、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。接着層22は、加工ウェハ10への支持台21の貼り付けと、加工ウェハ10からの支持台21の剥離を行える材料であればどのようなものでも良く、例えばUV(Ultra Violet)硬化樹脂、ワックス、両面テープなどとされる。ここでは接着層22をUV樹脂接着剤としている。
【0023】
続いて、
図1Eに示されるように、加工ウェハ10の他面10bからレーザ光Lを照射し、加工ウェハ10の一面10aから所定深さDとなる位置に、加工ウェハ10の面方向に沿ったウェハ用変質層15を形成する。
【0024】
具体的には、レーザ光Lを発振するレーザ光源、レーザ光の光軸、すなわち光路の向きを変えるように配置されたダイクロイックミラーおよびレーザ光を集光するための集光用レンズ、すなわち集光光学系、変位可能なステージ等を有するレーザ照射装置を用意する。そして、ウェハ用変質層15を形成する際には、レーザ光Lの集光点が加工ウェハ10の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。これにより、加工ウェハ10には、面方向に沿ったウェハ用変質層15が形成される。より詳しくは、レーザ光Lを照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出されたウェハ用変質層15が形成される。
【0025】
特に限定されるものではないが、本実施形態では、ウェハ用変質層15を形成する際には、レーザ光Lとして、固体レーザ光であって、波長が532nmのグリーンレーザを用いている。また、レーザ光Lのパルス幅を500ps、周波数を50kHz、加工速度を500mm/sとしている。そして、無色透明のGaNに対して照射したレーザ光Lが吸収されるように、レーザ光Lのエネルギーを異ならせた2段階のレーザ照射によって、ウェハ用変質層15を形成するようにしている。
【0026】
ここでは、2段階のレーザ照射として、大打痕を形成してGa析出領域が形成されるようにする第1レーザ照射と、Ga析出領域をレーザ光吸収のきっかけとして小打痕が形成されるようにする第2レーザ照射とを行うようにしている。例えば、レーザ照射装置として、レーザ光Lが6点分岐されるものを用いる場合、所定深さDとして100μmを狙うのであれば、6点分岐合計のエネルギーを第1レーザ照射では1.6μJ、第2レーザ照射では0.3μJとする。これら第1エネルギー照射と第2レーザ照射というエネルギーの異なる2段階のレーザ照射を行うことでウェハ用変質層15を形成する。
【0027】
無色透明のGaNに対して照射したレーザ光Lが好適に吸収されるようにするには、レーザ光Lのエネルギーを高めることが有効である。このため、第1レーザ照射では好適にレーザ光Lが吸収されるようにして大打痕を形成している。ただし、ウェハ用変質層15を形成する領域全域においてレーザ光Lのエネルギーを大打痕が形成可能な程度まで高くすると、ウェハ用変質層15の形成工程に高エネルギーが必要になる。このため、大打痕を形成する第1レーザ照射に対して、第1レーザ照射よりも低エネルギーによる小打痕を形成する第2レーザ照射を組み合わせるようにし、ウェハ用変質層15の形成工程のエネルギー低減を図れるようにしている。第2レーザ照射のエネルギーが低くても、第1レーザ照射によって析出したGaでレーザ光Lの吸収が促進され、小打痕を形成することが可能となり、容易に剥離させるためのウェハ用変質層15を形成できる。そして、大打痕だけではなく、主に小打痕によってウェハ用変質層15を形成できることから、剥離面の凹凸の低減が可能になると共に、剥離の成功率の向上を図ることも可能になる。
【0028】
例えば、第1レーザ照射と第2レーザ照射の照射位置は
図2のマップのように示される。紙面左右方向をX方向、紙面上下方向をY方向として、X方向およびY方向にレーザ照射装置におけるレーザ照射口を走査することによって第1レーザ照射および第2レーザ照射を行う。
【0029】
ここでは、レーザ照射装置として、レーザ光LとしてY方向に6点分岐したものを用いており、分岐間隔を8μmとしている。そして、第1レーザ照射については、X方向に一方向にレーザ照射口を走査したのち、Y方向において所定間隔ずらし、その後再びX方向にすることで行っている。例えば、
図3に示すようにX方向に10μm、Y方向に2μmの間隔となるように第1レーザ照射を行って大打痕が形成されるようにしている。また、
図2に示すように、第2レーザ照射については、第1レーザ照射が行われた位置の間を埋めるように行っている。具体的には、第2レーザ照射については、
図3に示すようにY方向の第1レーザ照射が行われた間の位置に行っており、その位置において、X方向に沿って連続的に、例えば1μm間隔で行っている。これにより、第1レーザ照射が行われた位置の間を埋めるように第2レーザ照射が行われることになり、第2レーザ照射によって広範囲のGaNの略全域に小打痕することができる。
【0030】
第1レーザ照射や第2レーザ照射のエネルギーについては任意に設定可能である。ここでは、第1レーザ照射についてはGa析出領域が形成されるエネルギー、第2レーザ照射については第1レーザ照射によるGa析出領域が無いとGaNに吸収されにくいエネルギーに設定することで、エネルギー低減を図っている。例えば、上記したレーザ条件とする場合、無色透明のGaNに打痕を形成するのに必要な加工閾値が6点分岐合計で1.2~1.4μJとなるため、それよりも若干大きな1.6μJのエネルギーで第1レーザ照射を行っている。また、第2レーザ照射については、無色透明のGaNに対して照射されたとしたら打痕を形成できなくても、第1レーザ照射によるGaN析出領域が存在していたら打痕を形成できる程度の小さなエネルギーとして、1.2μJ未満となる0.3μJとしている。
【0031】
このようにして、第1レーザ照射と第2レーザ照射を行うことで大打痕および小打痕を形成しているが、大打痕や小打痕の形成位置についてはランダムになる。つまり、第1レーザ照射や第2レーザ照射が所望位置で行われるようにしているが、レーザ光Lは50kHzの周波数で発振しているため、GaNに突入したタイミングによって大打痕や小打痕の中心位置が変化し、ランダムな位置になる。
【0032】
なお、ここでは6点分岐のレーザ照射装置を用いているが、その分岐する各点の中心位置については揃うため、部分的に打痕が周期的な配置になり得るが、全体的にはランダムな配置になる。
【0033】
以上、レーザ条件の一例について説明したが、ここで示した例はあくまで一例であり、他の条件とされていても良い。本発明者らは、レーザ光Lの加工点出力がさらに低い場合やパルス幅がさらに短い場合、上記した波長以外、例えばレーザ光Lを赤外とした場合等においても、適切にウェハ用変質層15が形成されることを確認している。また、本発明者は、レーザ光Lの加工点出力がさらに高い場合やパルス幅がさらに長い場合等においても、適切にウェハ用変質層15が形成されることを確認している。
【0034】
また、ウェハ用変質層15を形成する際の所定深さDとして100μmを狙う場合を例に挙げたが、所定深さDは、半導体チップ100のハンドリングのし易さや耐圧等に応じて設定され、10~200μm程度とされる。この場合、ウェハ用変質層15は、エピタキシャル膜3の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜3の内部、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界、またはGaNウェハ1の内部のいずれかに形成される。なお、
図1E中では、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界にウェハ用変質層15を形成する例を示している。
【0035】
但し、後述するように、加工ウェハ10におけるGaNウェハ1の少なくとも一部は、リサイクルウェハ40として再利用される。このため、ウェハ用変質層15は、エピタキシャル膜3の内部、またはエピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界に形成されることが好ましい。また、ウェハ用変質層15がGaNウェハ1の内部に形成される場合には、ウェハ用変質層15は、GaNウェハ1の一面1a側に形成されることが好ましい。
【0036】
なお、ウェハ用変質層15がエピタキシャル膜3の内部に形成される場合、ウェハ用変質層15は、半導体素子を構成するn-型エピタキシャル層3bではなく、n+型エピタキシャル層3aの内部に形成される。以下では、加工ウェハ10のうちのウェハ用変質層15より一面10a側の部分をチップ構成ウェハ30とし、加工ウェハ10のうちのウェハ用変質層15より他面10b側の部分をリサイクルウェハ40として説明する。
【0037】
次に、
図1Fに示されるように、加工ウェハ10の他面10b側に補助部材50を配置する。補助部材50は、
図1Fでは簡略化して示しているが、例えば、基材と、粘着力を変化させることのできる粘着剤とで構成される。この場合、補助部材50における基材は、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成され、補助部材50における粘着剤は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。そして、支持台21および補助部材50を把持して加工ウェハ10の厚さ方向に引張力等を印加し、ウェハ用変質層15を境界、すなわち分岐の起点としてチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割する。つまり、ウェハ用変質層15にて、n
+型エピタキシャル層3aからGaNウェハ1を剥離する。このとき、上記したように、ウェハ用変質層15は、GaNへのレーザ照射によって形成されており、窒素がガスとして蒸発し、ガリウムが析出されて構成されている。このため、引張力等を印加することでチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割できる。
【0038】
なお、以下では、チップ構成ウェハ30のうちの一面側素子構成部分11が形成されている側の面を一面30aとし、チップ構成ウェハ30のうちの分割された面側を他面30bとし、リサイクルウェハ40のうちの分割された面側を一面40aとして説明する。また、
図1G以降の各図では、チップ構成ウェハ30の他面30bおよびリサイクルウェハ40の一面40aに残存するウェハ用変質層15等を適宜省略して示している。
【0039】
その後、
図1Gに示されるように、残りの半導体製造プロセスとして、チップ構成ウェハ30の他面30bに、裏面電極を構成する金属膜61等の半導体素子における他面側素子構成部分60を形成するという裏面側プロセスを行う。金属膜61には、他面30bを構成するn型のGaN、つまりn
+型エピタキシャル層3aもしくはGaNウェハ1とオーミック接触可能な材料が用いられ、例えばTi/Al/Ni/Auを用いており、TiをVに代えたV/Al/Ni/Auなどを用いても良い。
【0040】
このとき、他面側素子構成部分60を形成する工程の前に、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等でチップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化するための平坦化工程を行うようにしている。また、必要に応じて、平坦化工程後に洗浄工程を行って、他面30bの表面洗浄を行うと好ましい。
図4Aは、平坦化工程前の他面30bの断面を誇張して示しており、
図4Bは、平坦化工程後の他面30bの断面を誇張して示している。
【0041】
図4Aに示すように、平坦化工程前の状態においては、他面30bは断面三角形の多数のランダムな大きさの凸部と、その凸部の間に形成された断面三角形の凹部とによって構成されている。これは、レーザ照射によってチップ構成ウェハ30からリサイクルウェハ40を剥離させたためである。上記したように、レーザ照射を行った場合、大打痕や小打痕を形成することで窒素がガスとして蒸発し、Gaが析出されることで、ウェハ用変質層15が形成されるため、ウェハ用変質層15にてチップ構成ウェハ30からリサイクルウェハ40が剥離させられる。このため、チップ構成ウェハ30の他面30bは、大打痕や小打痕による凹凸が形成された状態となっており、そのために凹凸が断面三角形になる。そして、凹凸の深さについては場所毎に異なっていて様々な深さになっており、深いものと浅いものが混在した状態になっており、凹凸の高さがランダムな状態になっている。これは、レーザ照射時にレーザ光Lが発振してランダムな位置に大打痕や小打痕が形成されるためであり、大打痕や小打痕がランダムな位置に形成されるため、凹凸の高さもランダムになる。また、ウェハ用変質層15での剥離の際の歪みが残ることからも、より凹凸の高さがランダムになる。
【0042】
完成後のGaN半導体装置を使用する際には、例えば金属膜61で構成される裏面電極側がはんだ層を介してヒートシンクに実装される構造とされる。このため、(1)裏面電極のコンタクト抵抗を低減すること、(2)縦型GaNデバイスを構成する素子の熱抵抗を低減すること、(3)裏面電極をはんだ層に接合した後にもGaNと裏面電極との密着性を確保すること、が必要とされている。
【0043】
裏面電極のコンタクト抵抗を低減するためには、他面30bと金属膜61との接触面積が多い方が好ましい。接触面積を大きくするためには、他面30bが平坦面ではなく、凹凸が形成された状態である方が好ましい。この点で言えば、レーザ照射によるウェハ用変質層15で単に剥離させただけの状態においては、他面30bに凹凸が形成された状態になっているため、接触面積を大きくすることは可能である。しかしながら、凹凸の高さがランダムであると、凸部が低いところへのはんだの回り込みが悪くなるため、はんだ層を介して完成後のGaN半導体装置をヒートシンクに実装した場合に、他面30bと裏面電極との密着性が低下することがある。また、凹凸の高さがランダムだと、チップをはんだで固定した時に、ヒートシンクからチップ表面までの高さがチップごとに異なり、組み立て歩留まりが低下する可能性がある。
【0044】
これに対して、本実施形態のようにCMPなどによる平坦化工程を行うと、
図4Bに示すように、他面30b凹凸の高さを揃えることが可能となる。具体的には、平坦化工程を経ることで、他面30bは断面台形状の多数のランダムな大きさの凸部と、その凸部の間に形成された断面三角形の凹部とによって構成される。そして、断面台形状の各凸部の先端となる上底の表面が略同一平面で、一面30aと略平行に対向した面となって、凹部の深さはランダムになるものの各凸部の高さが揃った状態になる。実験により確認したところ、凸部の高さ、換言すれば上底からの凹部の深さが5~30μmの範囲で、各凸部の上底は略同一平面になっていた。なお、高さの低い凸部に関しては、断面三角形のままのものも残るが、その高さが断面台形状の凹部の高さ以下になっていて、断面台形状の凸部の上底よりも内側に位置した状態になる。
【0045】
このように、平坦化工程を行いつつも、平坦化工程後にも他面30bに凹凸が残されることで、他面30bと金属膜61との接触面積を大きくできる。また、凹部の深さがランダムであるため、金属膜61のうち凹部内に入り込んだ部分が異なる高さの楔として機能して、高い密着性を得ることが可能となる。特に、各凸部の側面についてはあまり平坦化されず、レーザ照射による窒素空孔や打痕による微細な表面荒れが残った状態になっていることから、他面30bと金属膜61との接触面積がより大きくなるし、より高い密着性が得られる。したがって、縦型GaNデバイスを構成する素子の熱抵抗を低減することが可能になり、上記した(2)が実現される。また、他面30bにおける各凸部の高さが揃った状態にできることから、はんだ層を介して完成後のGaN半導体装置をヒートシンクに実装した場合に、他面30bと金属膜61との密着性が低下することを抑制でき、上記した(3)も実現される。
【0046】
また、平坦化工程をCMPによって行う場合、より好ましくはCMP後に洗浄工程を行う場合、他面30bの表面から液体状のGaが除去されて無くなる。このため、Gaが介在しないGaNと金属膜61との密着となり、より他面30bと金属膜61との密着性を高めることが可能となる。また、Gaが介在していると、Gaと金属膜61との仕事関数差に基づいてコンタクト抵抗を大きくしてしまうが、Gaが介在しないGaNと金属膜61との接触により、コンタクト抵抗の低減を図ることも可能となる。したがって、上記した(1)、(3)がより実現される。
【0047】
さらに、他面30bの表面がGaの介在しないGaNとなっていること、つまり高不純物濃度のn+型エピタキシャル層3aで構成されるn型層で構成されることから、裏面電極はコンタクト抵抗の小さなオーミック接触させられたn型電極となる。さらに、他面30bと金属膜61との接触面積が大きくなることも、裏面電極のコンタクト抵抗の低減に寄与する。したがって、上記した(1)も実現される。
【0048】
なお、
図1Gは、チップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化した後の様子を示しており、図では凹凸の無い平坦面になっているが、上記したように、実際には他面30bには微小な凹凸が形成されている。
【0049】
続いて、
図1Hに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの他面30b側、つまり金属膜61側に保持部材51を配置する。保持部材51には、例えば、基材52と粘着剤53とを有するダイシングテープ等が用いられる。なお、粘着剤53は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。
【0050】
その後、
図1Iに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの他面30b側に貼り付けてある支持台21を剥離する。ここでは、支持台21をチップ構成ウェハ30に貼り付けている接着層22の接着力を低下させる処理、例えば接着層22をUV樹脂接着材で構成している場合にはUV照射を行う。
【0051】
続いて、
図1Jに示されるように、ダイシングソーもしくはレーザダイシングなどにより、チップ構成ウェハ30をチップ単位に個片化することで、各半導体チップ100を構成する。このとき、チップ構成ウェハ30をチップ単位に分割しつつも、保持部材51については切断されること無く繋がったままの状態となるように、ダイシング深さを調整している。
【0052】
この後の工程については図示しないが、保持部材51をエキスパンドし、ダイシングカットした部分にて各半導体チップ100の間隔を広げる。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤53の粘着力を弱まらせ、半導体チップ100をピックアップする。これにより、半導体チップ100が製造される。
【0053】
上記のように製造される半導体チップ100は、GaNで構成され、一面110a、一面と反対側の他面110b、一面110aと他面110bとを繋ぐ側面110cを有するチップ構成基板110を備えた構成となる。チップ構成基板110の一面110aおよび他面110bは、チップ構成ウェハ30における一面30aおよび他面30bに相当する。また、チップ構成基板110は、GaNで構成されるエピタキシャル膜3を有し、一面110a側に一面側素子構成部分11が形成され、他面110b側の他面側素子構成部分60が形成されている。
【0054】
また、
図1Kに示されるように、
図1Fで構成されたリサイクルウェハ40には、一面40aに対して研磨装置70等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面40aを平坦化する。そして、平坦化したリサイクルウェハ40をGaNウェハ1とし、再び上記
図1A以降の工程を行う。これにより、GaNウェハ1は、半導体チップ100を構成するのに複数回利用されることができる。
【0055】
以上のようにして、GaN半導体装置を構成する半導体チップ100を製造することができる。このようにして製造された半導体チップ100では、チップ構成基板110の他面110bに凹凸がある状態で裏面電極となる金属膜61が密着させられている。そして、他面110bの凹凸における凸部を断面台形状として、各凸部の上底面を略同一平面にすることで、凸部の高さを揃えつつ、凹部の深さが異なった構造となるようにしている。
【0056】
したがって、(1)裏面電極のコンタクト抵抗を低減すること、(2)縦型GaNデバイスを構成する素子の熱抵抗を低減すること、(3)裏面電極をはんだ層に接合した後にもGaNと裏面電極との密着性を確保すること、が可能となる。
【0057】
具体的に、本実施形態のようにして得たGaN半導体装置を構成する半導体チップ100と比較例として従来のように他面110bを凹凸のほぼ無い平坦面とした場合それぞれについてI-V特性を調べた。その結果、
図5Aおよび
図5Bに示す結果が得られた。なお、この実験では、
図6に示すように、
図1Iの工程まで行ったのちに保持部材51から剥がした試料を用意し、ゲート電圧を印加したときに流れるソース電流を測定するというI-V評価系を用いている。
【0058】
比較例のように、他面110bを平坦面とした場合において、単に他面110bの表面に金属膜61を形成しただけの状態であると、他面110bと金属膜61とが密着性の低い接触になると共にコンタクト抵抗も低くできない。また、後述するアニール処理も行っていないことから、他面110bは平坦化工程を行ったままの状態となっており、平坦化工程の際に生じていたダメージ層が残っていて、よりコンタクト抵抗が高くなっている。このため、
図5Bに示すように、I-V特性がショットキー接触に近似した指数関数的な特性を示すことになる。
【0059】
これに対して、本実施形態のように、他面110bに凹凸がある状態で裏面電極となる金属膜61を密着させた場合には、
図5Aに示すように、I-V特性が比例的な特性を示していた。このことは、他面110bと金属膜61とが密着させられていて、裏面電極のコンタクト抵抗を低減できていることを意味している。本実施形態の場合でも、平坦化工程を行っているため、他面110bの凸部の上底面にはダメージ層が残った状態になっていると考えられるが、凹部内にはダメージ層があまり形成されておらず、高い密着性と低コンタクト抵抗が図れていると考えられる。
【0060】
このように、本実施形態のGaN半導体装置によれば、他面110bと金属膜61との間の高い密着性が得られると共に、裏面電極のコンタクト抵抗の低減を図ることができ、良好なI-V特性を得ることが可能となる。また、他面110bと金属膜61との間の高い密着性が得られることから、縦型GaNデバイスを構成する素子の熱抵抗の低減を図ることも可能となる。
【0061】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0062】
例えば、上記第1実施形態では、他面側素子構成部分60を形成する工程として、他面30bに対して平坦化工程を行った後に金属膜61を形成しただけだが、金属膜61を形成した後にアニール処理を行うようにしても良い。つまり、第1実施形態ではアニール処理を行わずにノンアロイの金属膜61と他面30bとを密着させているが、アニール処理を行って他面30bと金属膜61とを反応させたアロイによる界面反応層にて金属膜61と他面30bとを密着させても良い。例えば、金属膜61として、Ti/Al/Ni/Auを用いる場合には、窒化チタン(TiNx)やチタン酸ガリウム(Ti3Ga)で構成される界面反応層が構成される。これにより、より密着性を高めることが可能になるし、裏面電極のコンタクト抵抗の低減を図ることも可能になる。
【0063】
ただし、アニール処理については、表面側プロセスの後に行う場合、一面側素子構成部分11に熱ダメージを与える可能性があることから、加工ウェハ10の全体に対して行うのは好ましくない。これを考慮して、アニール処理についてはレーザアニールによる局所的な加熱とすると好ましい。
【0064】
なお、第1実施形態のようなアニール処理を行わない場合でも、高い密着性を得ることができることから、その場合にはアニール処理を行わなくて良い分、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。逆に、アニール処理を行う場合、製造工程が増えるが、より高い密着性を得ることが可能となる。アニール処理を行った場合、界面反応層が形成されることになるが、他面30bの表面の凹凸は残された状態となる。
【0065】
また、上記実施形態では、6点分岐のレーザ照射を行っているが、6点未満もしくはそれより多数に分岐できるレーザ照射装置を用いても良い。また、上記実施形態で挙げた第1レーザ照射が行われる位置と第2レーザ照射が行われる位置については一例を示したに過ぎず、異なる位置にレーザ照射が行われるようにしても良い。
【0066】
また、上記実施形態において、エピタキシャル膜3は、n-型エピタキシャル層3aのみで構成されていてもよい。
【0067】
さらに、上記各実施形態において、
図1Bのエピタキシャル膜3を形成する工程では、GaNウェハ1の他面1b側にもエピタキシャル膜が形成されるようにしてもよい。これによれば、例えば、ウェハ用変質層15をGaNウェハ1内に形成する場合においても、リサイクルウェハ40として所定以上の厚さを残し易くなり、再利用できる回数の増加を図ることができる。
【0068】
また、上記第1、第2実施形態において、
図1Dの支持部20を配置する工程の前に、
図1Eのウェハ用変質層15を形成する工程を行うようにしてもよい。この場合、レーザ光Lは、加工ウェハ10の一面10a側から照射するようにしてもよい。但し、加工ウェハ10の一面10aからレーザ光Lを照射する場合、一面10a側に形成される表面電極や配線パターン等によってレーザ光Lの集光点の位置がばらつく可能性がある。このため、加工ウェハ10の他面10bからレーザ光を照射することが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 GaNウェハ
1a 一面
1b 他面
3a n+型エピタキシャル層
3b n-型エピタキシャル層
10 加工ウェハ
11 一面側素子構成部分
15 ウェハ用変質層
60 他面側素子構成部分