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7531169物品レイアウトの改善方法、および、改善装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】物品レイアウトの改善方法、および、改善装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B65G1/137 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024001987
(22)【出願日】2024-01-10
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】63/602,542
(32)【優先日】2023-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大東 寛典
(72)【発明者】
【氏名】佐東 和樹
(72)【発明者】
【氏名】松崎 潤
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057252(JP,A)
【文献】特開2021-125071(JP,A)
【文献】特開2016-052938(JP,A)
【文献】特開2022-178183(JP,A)
【文献】国際公開第2021/152800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
G06Q 10/08
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が配置されている複数の棚それぞれに設けられた複数のスロットの情報を取得する取得工程と、
前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、前記複数の棚のうち1つまたは2つの棚に沿う通路であり、ピッキングの際に一方向にのみ通過可能かつ分岐のない複数の通路それぞれに対応する複数の通路グループに分けるグルーピング工程と、
前記物品のピッキングの際に通過する複数の通路の合計距離が短いほど評価が高くなるよう、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価工程と、
所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の前記評価工程による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替工程と、
を有する、物品レイアウトの改善方法。
【請求項2】
前記所定の規則は、異なる通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行う規則である、請求項1に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項3】
前記所定の規則は、前記異なる通路グループをランダムに選択する規則である、請求項2に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項4】
前記所定の規則は、同じ通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行われない規則である、請求項2に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項5】
前記入替工程は、前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも、前記物品の位置を入れ替えた後の評価が改善していない場合、前記入れ替えを確率的に採用する、請求項2に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項6】
前記グルーピング工程において、1つの通路グループに対応する1つの通路の距離が一意に定まるようにグルーピングされる、請求項1に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項7】
前記グルーピング工程において、1つの通路を通過した際にピッキングが可能な位置のスロットを当該1つの通路に対応する通路グループにグルーピングする、請求項1に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項8】
前記入替工程は、前記複数の通路グループ間の距離に基づいて、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行い、
前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えて前記評価を行い、
前記物品の位置を入れ替えた後の物品レイアウトの評価に基づいて物品の位置を入れ替える工程を繰り返す、
請求項1に記載の物品レイアウトの改善方法。
【請求項9】
物品が配置されている複数の棚それぞれに設けられた複数のスロットの情報を取得する取得部と、
前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、前記複数の棚のうち1つまたは2つの棚に沿う通路であり、ピッキングの際に一方向にのみ通過可能かつ分岐のない複数の通路それぞれに対応する複数の通路グループに分けるグルーピング部と、
前記物品のピッキングの際に通過する複数の通路の合計距離が短いほど評価が高くなるよう、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価部と、
所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の前記評価部による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替部と、
を有する、物品レイアウトの改善装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品レイアウトの改善方法、および、改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットショッピングの大幅な普及により、宅配に需要が高まり、倉庫の人手不足が問題となっている。倉庫内での出庫業務の1つとして、倉庫内にある商品の中から出荷指示があったものを集める「ピッキング」という作業がある。ピッキング作業は、多くの時間と労力がかかる作業のため、これを効率化することにより、運用コストを削減することが求められている。
【0003】
従来、上記のような効率化のために、倉庫内における商品の配置、移動経路、ピックリストの生成などの様々な観点からの最適化問題に対する手法が検討されている。例えば、非特許文献1では、PF/PAという目的関数を利用した局所探索ベースのアルゴリズムを用いた手法を提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Monika Kofler, “Optimising the storage location assignment problem under dynamic conditions”, [online], 2015年5月, [令和5年11月10日検索], インターネット<URL:https://www.researchgate.net/publication/280157450_Optimising_the_storage_location_assignment_problem_under_dynamic_conditions>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、倉庫におけるピッキング作業の効率化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、物品が配置されている複数の棚それぞれに設けられた複数のスロットの情報を取得する取得工程と、前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、前記複数の棚のうち1つまたは2つの棚に沿う通路であり、ピッキングの際に一方向にのみ通過可能かつ分岐のない複数の通路それぞれに対応する複数の通路グループに分けるグルーピング工程と、前記物品のピッキングの際に通過する複数の通路の合計距離が短いほど評価が高くなるよう、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価工程と、所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の前記評価工程による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替工程と、を有する、物品レイアウトの改善方法を提供する。
【0007】
また、本開示は、物品が配置されている複数の棚それぞれに設けられた複数のスロットの情報を取得する取得部と、前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、前記複数の棚のうち1つまたは2つの棚に沿う通路であり、ピッキングの際に一方向にのみ通過可能かつ分岐のない複数の通路それぞれに対応する複数の通路グループに分けるグルーピング部と、前記物品のピッキングの際に通過する複数の通路の合計距離が短いほど評価が高くなるよう、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価部と、所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の前記評価部による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替部と、を有する、物品レイアウトの改善装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、倉庫におけるピッキング作業の効率化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るシステムにて利用可能な情報処理装置のハードウェア構成の例を示すブロック図
図2】本発明の一実施の形態に係るピッキング作業を説明するための概念図
図3】本発明の一実施の形態に係るピッキング作業の改善を説明するための概念図
図4】本発明の一実施の形態に係るピッキング作業を説明するための概念図
図5】本発明の一実施の形態に係るオーダー情報およびピックリストの構成例を示す表図
図6】従来の手法であるPF/PAスコアを用いた目的関数を説明するための概念図
図7】本発明の一実施の形態に係る倉庫内の商品レイアウトおよび経路を説明するための概念図
図8】本発明の一実施の形態に係る倉庫内の商品レイアウトおよび経路を説明するための概念図
図9】本発明の一実施の形態に係るグルーピングを説明するための概念図
図10】本発明の一実施の形態に係るグルーピングの例を示す概念図
図11】本発明の一実施の形態に係る全体処理のフローチャート
図12】本発明の一実施の形態に係る距離行列作成処理のフローチャート
図13】本発明の一実施の形態に係る決定変数作成処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
実際の倉庫においては、出荷対象の物品である商品を収容・保管する棚や商品を搬送する搬送車の構成や動作に関連していくつかの制約が生じる。そのため、そのような制約を考慮してピッキング作業に対する最適化問題を解決することが求められている。例えば、非特許文献1に示されるPF/PAスコアによる局所探索ベースのアルゴリズムを、一定の規模以上の倉庫における最適化問題にそのまま適用すると、計算時間や、ピッキング作業におけるピッキング主体の移動距離の距離削減率などで課題が生じる。そのため、従来の最適化問題に対し、倉庫内の構成を考慮した物品レイアウトの改善手法が更に求められている。
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る物品レイアウトの改善方法、および、改善装置の構成および作用を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
<実施の形態1>
[装置構成例]
図1は、本発明の実施の形態1に係る物品レイアウトの改善方法を実行可能な情報処理装置10のハードウェア構成の例を示すブロック図である。なお、情報処理装置10は、ピッキング作業が行われる倉庫にオンプレミス型の装置として設置され、当該倉庫を管理するシステム(以下、「倉庫システム」とも称する)の一部にて構成されてもよい。もしくは、情報処理装置10は、倉庫システムとネットワークを介して接続されるクラウド型の装置として構成されてもよい。以下の説明では、出荷対象である物品を「商品」として記載して説明するが、これは倉庫内におけるレイアウトの改善対象を限定することを意図するものでは無い。
【0013】
倉庫システムは、例えば、倉庫管理システム、倉庫運用管理システム、倉庫制御システム、自動倉庫、搬送車などを含んで構成される。倉庫システムに含まれる各種システムや装置は、有線/無線のネットワークを介して互いに通信可能に構成される。倉庫管理システムは、倉庫内の物流を管理、制御するシステムであり、例えば、倉庫内における物の在庫管理や、物の出入り(入荷や出荷)や移動を管理する。倉庫管理システムは、Warehouse Management System(WMS)などと称される場合がある。
【0014】
倉庫運用管理システムは、倉庫内の作業を管理、制御するシステムであり、例えば、倉庫管理システムの下位に位置する。倉庫運用管理システムは、Warehouse Execution System(WES)などと称される場合がある。倉庫運用管理システムは、例えば、倉庫内における各種作業主体の作業内容や、倉庫内の設備に対する包括的な制御を行う。
【0015】
倉庫制御システムは、倉庫内の様々な設備それぞれに対応して、これらを管理、制御する。倉庫制御システムは、Warehouse Control System(WCS)などと称される場合がある。
【0016】
自動倉庫は、例えば、後述するような棚を複数含み、棚に設けられた複数のスペース(以下、「スロット」と称する)それぞれには収納ケース(不図示)が設置される。1つの収納ケースには、1種類また複数種類の商品が、1つまたは複数収納される。ここでは、説明を簡単にするため、スロットに設置された1つの収納ケースには、1種類の商品が1つまたは複数収納されているものとする。また、自動倉庫は、倉庫システムの制御下において、各スロットに対して商品を移動、収納、保管が可能なように構成される。自動倉庫における商品の移動は所定の装置が実行可能なように構成されてもよいし、人手による作業時より実現されてもよい。
【0017】
搬送車は、作業者(以下、「ピッカー」とも称する)が操縦し、所望の商品(ピッキング対象)が収納された棚のスロットの位置に移動して、当該所望の商品をピッキングする際に用いられる。搬送車の構成は特に限定するものではない。例えば、フォークリフト等を搬送車として用いてもよいし、ピッキングした商品が収納される収集ボックス(不図示)が搭載される台車等であってもよい。なお、搬送車は、作業者の操縦による走行に限定するものではなく、後述する搬送経路に従って自動走行するような構成であってもよい。例えば、Automatic Guided Vehicle(AGV)やAutonomous Mobile Robot(AMR)などが考えられる。また、ピッキングの作業は、人間である作業者によって行われてもよいし、搬送車に備え付けられたロボット等によって自動的に行われてもよい。なお、以下では説明を簡単にするため、搬送車を用いたピッキングが行われる例を説明するが、搬送車を用いず、人間である作業者が後述する搬送経路に従って商品をピッキングする構成であってもよい。
【0018】
本実施の形態に係る情報処理装置10は、処理装置11、記憶装置12、通信装置13、入力装置14、表示装置15、および外部インタフェース16を含んで構成される。各部位は、内部インタフェース17を介して通信可能に構成される。処理装置11は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Graphical Processing Unit(GPU)、Micro Processing Unit(MPU)、Digital Signal Processor(DSP)、またはField-Programmable Gate Array(FPGA)などを用いて構成されてよい。処理装置11は、例えば、記憶装置12に記憶された各種データベース(以下、DB)を参照したり、プログラムを読み出したりすることで、後述する各種機能を実現する。記憶装置12は、各種データやプログラムなどを記憶するための記憶部であり、例えば、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、Hard Disk Drive(HDD)などの揮発性/不揮発性の記憶装置から構成されてよい。
【0019】
通信装置13は、ネットワーク35を介して外部装置と通信するためのインタフェースである。通信装置13にて対応可能な通信規格は特に限定するものではなく、有線/無線も問わない。また、複数の通信規格に対応可能であってもよい。したがって、ネットワーク35は、複数の通信規格によるネットワークが組み合わせて構成されてよい。
【0020】
入力装置14は、倉庫の利用者(例えば、管理者やピッカー)による操作や指示を受け付ける。入力装置14は、マウス、キーボード、タッチパネルディスプレイなどから構成されてよい。表示装置15は、利用者に対し、各種ユーザインタフェースを表示する。表示装置15は、液晶ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、ランプなどから構成されてよい。外部インタフェース16は、外部システム20と通信するためのインタフェースである。なお、外部システム20とは、通信装置13およびネットワーク35を介して通信可能に接続されてもよい。外部システム20は、倉庫システムを構成する各システムや装置に限らず、他のシステムや装置であってもよい。
【0021】
[ピッキング作業]
図2は、本実施の形態に係るピッキング作業を説明するための概念図である。ここでは、説明を簡略化するために、倉庫300を上面から見た例を示している。倉庫300には、複数の棚400が設置され、ここでは、4つの棚400a~400dが配置されている。1つの棚400は、2×9個のスロット401を有する。なお、図2の例では、高さ方向は省略しているが、実際の棚には、高さ方向にも複数のスロットが設けられてよい。
【0022】
本例では、搬送車200によるピッキング作業の開始位置(すなわち、搬送経路の始点)、および、終了位置(すなわち、搬送経路の終点)が予め規定される。ピッキング対象となる商品が収納されたスロットの前を巡回して当該商品を収集することで、一連のピッキング作業が行われる。搬送車200が通過可能な搬送経路は、棚400に沿って規定される。つまり、搬送車200を用いてピッキング作業を行う際に通過可能な搬送経路は、1つまたは複数の通路から構成され、1つの通路は1つまたは2つの棚に沿って規定される。このとき、搬送車200の動作の制約として、搬送車200は一方通行のみが可能であるものとする。例えば、複数台の搬送車が存在する場合に、同一の通路にてすれ違いのための後進等や衝突事故の発生を抑制するためである。また、図2の例では、各棚は、2列のスロットを有しているが、スロットを跨いで商品のピッキングはできず、各列のスロット正面に位置することで商品のピッキングが可能とする。
【0023】
また、棚400に含まれる複数のスロットそれぞれは、空のスロットが生じていてもよい。例えば、新たな種類の商品が入荷した場合や、商品の補充や配置変換を考慮して、一定割合の空スロットが設けられてよい。
【0024】
図2の例では、5つの商品402a~402eをピッキング対象とする。商品402a(p3)と商品402b(p1)は、棚400aに収納されている。商品402c(p5)と商品402d(p7)は、棚400bに収納されている。商品402eは、棚400cに収納されている。このように配置された5つの商品をピッキング対象としてピッキング作業を行う場合、搬送経路410が規定される。
【0025】
図2に示す搬送経路410に対して、ピッキング作業の効率化、すなわち、搬送距離を削減するための物品レイアウトの改善処理について考える。図3は、改善処理の一例を説明するための概念図である。
【0026】
例えば、棚400cに配置された商品402e(p8)を棚400bに移動させたとする。これにより、全てのピッキング対象を収集するための搬送経路には変化が生じ、搬送経路411となる。搬送経路410と搬送経路411とを比較した場合、搬送経路411の方が、より短い距離となる。
【0027】
本実施の形態では、複数の出荷作業に対応する複数のオーダーがオーダー情報として取得される。各オーダー情報では、ピッキング対象となる商品が指定される。1つのオーダー情報は、1つまたは複数のピックリストに分割される。分割の例については、図5を用いて後述する。図4は、複数のピックリストそれぞれに対応した商品の配置および搬送経路の例を示す。
【0028】
倉庫内において、図4に示すように商品p1~p9が配置されている。また、ピックリストAには、ピッキング対象として、5つの商品p3,p1,p5,p7,p8が指定されている。ピックリストBには、ピッキング対象として、3つの商品p3,p1,p9が指定されている。ピックリストCには、ピッキング対象として、4つの商品p1,p2,p6,p4が指定されている。この場合において、商品p1と商品p3が複数のピックリストにて重複している。
【0029】
図4に示すような商品レイアウトの場合、ピックリストA,B,Cそれぞれに対応する搬送経路は、搬送経路421,422,423となる。なお、ピックリストA,B,Cにて指定されている商品の並びは、ピッキングを行う順に対応している。
【0030】
図5は、本実施の形態に係るオーダー情報とピックリストの例を示す図である。オーダー情報500は、商品の発注者からの出荷要求に応じて生成される。オーダー情報500は、倉庫システムを構成するいずれかのシステムにて生成されてもよいし、外部システムから取得してもよい。オーダー情報500は、オーダーを一意に識別するためのオーダーID、発注者を一意に識別するための顧客名、発注日を示す日付、および、発注対象(すなわち、ピッキング対象)を示す商品名を含んで構成される。なお、オーダー情報500の構成は一例であり、他の項目が含まれてもよい。
【0031】
本実施の形態では、1つのオーダー情報から、倉庫内における商品の配置や予め規定されたピッキング条件などに基づいて1つまたは複数のピックリストを生成する。ピックリストは、ピックリストを一意に識別するためのピックリストID、ピッキング対象である商品を示す商品名を含んで構成される。なお、ピックリストの構成は一例であり、他の項目が含まれてもよい。
【0032】
ピックリスト510は、図5に示すオーダー情報500のオーダーID「order001」に基づいて生成された4つのピックリストの例を示す。オーダーID「order001」のオーダー情報には、15個の商品p01~p15が指定されている。ピックリストの生成では、まず、着目するオーダー情報にて指定された商品を倉庫内の商品レイアウトに基づいて並び替える。例えば、始点に近い棚に配置された商品の順に並び替えてよい。更に、並び替えられた複数の商品を予め規定されたピッキング条件にて分割する。ピッキング条件は、例えば、1回のピッキング作業で搬送車に収納可能な商品の体積上限、重量上限、緊急度などに基づいて定義されてよい。
【0033】
生成されたピックリスト510において、ピックリストID「ピックリストA」では、4つの商品p15,p14,p13,p12が指定されている。ピックリストID「ピックリストB」では、6つの商品p11,p10,p09,p08が指定されている。ピックリストID「ピックリストC」では、3つの商品p05,p04,p03が指定されている。ピックリストID「ピックリストD」では、2つの商品p02,p01が指定されている。ピックリストA~Dにて指定されている商品の並びは、ピッキングを行う順に対応している。
【0034】
[倉庫情報]
本実施の形態にて扱う各種情報(以下、まとめて「倉庫情報」とも称する)の例を示す。なお、以下に示す倉庫情報は一例であり、これに限定するものではない。本実施の形態に係る倉庫情報は、スロット配置情報、商品格納情報、交差点情報、入口情報、出口情報、商品情報、ピッキングルール情報などを含む。
【0035】
スロット配置情報は、倉庫内における棚を構成するスロットに関する情報を示す。スロット配置情報は、スロットを一意に識別するためのスロット名、倉庫内のスロットの位置座標(x,y,z)、スロットが属する通路を一意に識別するための通路ID、属する棚が位置する通路においてピックされる順序を示すピック順路番号、属する棚が位置するゾーン(例えば、冷蔵エリアや冷凍エリアなど)を一意に識別するためのゾーンIDなどを含む。本例での位置座標は、倉庫内における絶対座標系(X軸,Y軸,Z軸の3軸)にて示される例を示すがこれに限定するものではない。例えば、倉庫内のエリアごとに相対座標系にて示されてもよい。
【0036】
商品格納情報は、棚に格納されている商品に関する情報を示す。商品格納情報は、格納されている商品を一意に識別するための商品ID、商品が格納されているスロットを一意に識別するための格納スロット名などを含む。
【0037】
交差点情報は、倉庫内における複数の棚の周辺に規定される通路の交差点に関する情報を示す。交差点情報は、交差点を一意に識別するための交差点ID、倉庫内の交差点の座標を示す交差点座標(x,y)、搬送経路上での交差点の位置づけを示す交差点詳細情報(入口/出口)などを含む。
【0038】
入口情報は、倉庫内における入口、すなわち、搬送経路の始点の座標(x,y)を示す。出口情報は、倉庫内における出口、すなわち、搬送経路の終点の座標(x,y)を示す。
【0039】
商品情報は、各商品の特性に関する情報を示す。商品情報は、商品の体積、商品の重さなどを含む。
【0040】
ピッキングルール情報は、商品のピッキング作業に係る条件を示す。ピッキングルール情報は、例えば、上述したようなピックリストを生成する場合、搬送経路を決定する場合、各オーダー情報の処理順序を決定する場合などに用いられる。ピッキングルール情報は、例えば、搬送車積載上限体積、搬送車積載上限重量、ピックリスト分割条件などに基づいて規定されてよい。
【0041】
[PF/PAスコアを用いた局所探索ベースのアルゴリズム]
本実施の形態では、非特許文献1に示されるPF/PAスコアによる局所探索ベースのアルゴリズムをベースとし、更なる物品レイアウトの改善手法を提案する。ここで、局所探索ベースのアルゴリズムについて簡単に説明する。
【0042】
図6は、非特許文献1に記載の手法による商品レイアウトの最適化を説明するための概念図である。これは、注文頻度が高い商品は出入口近くに配置し、また、併売率(同時に購入される確率)が高い商品同士は近くに配置する、という方針に基づく最適化アルゴリズムである。図6に示される各符号は以下を示す。
A,B1,B2,C:商品
I/O:出入口
PF:注文頻度×出入口からの商品の距離
PA:併売率×商品間の距離
【0043】
PFおよびPAは以下の式(1)、(2)にて算出できる。そして、α・PF+β・PAにて示されるPF/PAスコアが最小となるような商品の配置を探索することで最適化を行う。ここでのα、βは重みである。なお、式(1)、式(2)に含まれる各パラメータの詳細は、非特許文献1に記載されているため、ここでは省略する。
【0044】
【数1】
【0045】
上記式(1)、式(2)を計算する場合、以下の式(3)~式(12)ように注文頻度、併売率、距離が行列化して計算される。各変数は、以下のように定義される。
p:商品
s:スロット
N:商品の総数
M:スロットの総数
O:オーダーの総数
F:N×1の頻度行列。ある商品の出荷頻度の割合を示す。
A:N×Nの併売行列。ある商品とある商品が同じオーダーに入る割合を示す(併売率)。
D:M×Mの距離行列。あるスロットとあるスロットのスロット間距離を示す。
X:N×Mの決定変数行列。要素は0か1の値をとる。
n(p,p):商品pと商品pの両方を含む注文の数
【0046】
【数2】
【0047】
【数3】
【0048】
【数4】
【0049】
ここで、決定変数行列Xの各行は商品p1,p2,…に対応し、各列はスロットs1,s2,…に対応する。
【0050】
【数5】
【0051】
【数6】
【0052】
上記式(7)に示す決定変数行列Xでは、「1」は商品の位置(スロット)を示す。例えば、商品pがスロットsに配置されていることを示している。商品の配置を変更する場合、決定変数行列Xにおいて、変更前後の位置に対応する行を入れ替える。また、dist(s,s)は、通路に沿って移動した場合の位置sと位置sの距離を示す。したがって、位置sと位置sの直線距離とは異なる。
【0053】
PFスコアを算出する式(11)では、値が小さくなるようにすることで、出荷頻度の高いアイテムが出入口に近いスロットに置かれるように配置される。PAスコアを算出する式(12)では、値が小さくなるようにすることで、併売率が高い商品ほど商品間の距離が小さくなるように配置される。
【0054】
図7は、本実施の形態に係る商品の配置の変更による搬送経路の距離の変化を説明するための概念図である。ここでは、5つの通路701a~701eを例に挙げて説明する。また、通路701aの上側に搬送経路の始点があり、通路701eの下側に搬送経路の終点があるものとする。なお、図7の右上に示すように、実際の通路の少なくとも一方には棚が配置されている。ここでは説明を簡略化するために棚は省略し、通路の左右の棚に配置された商品を通路上に配置して説明する。通路を通ることで、その両側の棚に位置する商品をピッキングすることが可能である。なお、図7の右上の例では、右棚と左棚の両方にピッキング対象の商品が配置されているが、いずれか一方の棚にのみピッキング対象の商品が配置されている場合も、同一の簡略化した表現を採用してよい。通路からピックアップ可能な商品は、両側の棚に分散されて配置されている場合も片方の棚にのみ配置されている場合も同一となるためである。
【0055】
図7の上側の配置例では、通路701cにピッキング対象である商品702aおよび商品702bが配置されている。図7の上側の配置の場合、搬送経路703aのように進むことで、商品702b、商品702aの順にピッキング作業を行うことができる。
【0056】
図7の下側の配置例では、通路701cにピッキング対象である商品702aが配置され、通路701dに商品702bが配置されている。図7の下側の配置の場合、搬送経路703bのように進むことで、商品702a、商品702bの順にピッキング作業を行うことができる。
【0057】
図7に示すような2つの配置例において、従来のPF/PAスコアを用いた最適化アルゴリズムでは、下側の方が低いスコア、すなわち、より最適化されているとの評価が得られる。これは、下側の配置における商品702aと商品702bの搬送経路上の距離が、上側の配置における商品702aと商品702bの搬送経路上の距離よりも小さいためである。
【0058】
しかしながら、搬送経路703aと搬送経路703bを比較すると、図7の上側の方が経路全体の距離は短くなる。これは、搬送車の搬送に係る制約(通路は一方通行)に起因する。そのため、図7に示すような配置例の場合、従来のPF/PAスコアを用いた最適化アルゴリズムでは適切な最適化が行われないことが想定される。
【0059】
本実施形態の形態では、図7にて説明したような事象に対応するための構成を有する。従来の手法では、スロット間の距離を用いていた。これに対し、本実施の形態では、スロットが属する通路間の距離を定義し、更なる改善を行う。より具体的には、各スロットを通路にてグルーピングすることで、距離を計算する対象となる単位を規定し、更に通路を通る搬送経路を考慮して通路間の距離を定義する。
【0060】
図8は、本実施の形態に係るグルーピングを説明するための概念図である。ここでは、5つの通路を例に挙げて説明する。ここでは、各通路の通路長をlにて示し、通路間の距離をwにて示す。通路1には商品801aが配置され、通路5には商品801bが配置されている。
【0061】
本実施の形態では、スロット間の距離ではなく、スロットが属する通路間の距離を用いる。例えば、搬送経路802aは、商品801aをピックアップする搬送経路を示し、その距離は(l+4w)となる。また、搬送経路802bは、商品801aと商品801bをピックアップする搬送経路を示し、その距離は(3l+4w)となる。これらの距離はそれぞれ、搬送経路が特定された時点で計算されるものとする。このような通路単位での距離を用いることで、商品の配置によって通路を跨いだ際にピッキング作業のコスト、すなわち、距離の値が増加するという実際の倉庫における制約(性質)を反映させることが可能となる。
【0062】
図9図10は、棚における各スロットのグルーピングの例を説明するための図である。図9において、3列の棚903a~903cを示し、各棚は2×4個のスロットから構成されている。また、各棚の上下には、倉庫情報における交差点などのレイアウト情報に基づいて、通路出入口901a~901c、および通路出入口902a~902cが規定される。これらの情報に基づいて、各スロットの通路グループが設定される。本例では、4つの通路グループが設定される。一例として、通路グループ905が設定される。これは、入口901cと出口902cにて示される通路に対応し、棚903bのスロット列904eと棚903cのスロット列904fから構成される。各通路グループには、一意に識別するための通路IDが割り当てられる。
【0063】
グルーピングは、通路入口~商品~通路出口までの距離が一定の場合に同じグループとして規定できる。そのため、縦方向もしくは横方向にスロットが連続して並んでいる配置であれば適応可能である。
【0064】
図10は、グルーピングの他の例を示している。同じグループのスロットは、同じハッチング等にて表している。レイアウト1000は、2×3個のスロットを有する棚が、6つ配置されている。この場合には、8つの通路グループが設定されている。レイアウト1010は、4×2個のスロットを有する棚が、6つ配置されている。この場合には、8つの通路グループが設定されている。
【0065】
レイアウト1020は、不適切なグルーピングの例を示す。レイアウト1020において、4つの通路グループが設定されている。この場合、商品A、商品B、商品Cをピッキングする最短の搬送経路は、搬送経路1112となる。また、商品A、商品Cをピッキングする最短の搬送経路は、搬送経路1112となる。この場合、同じ通路グループを利用しているにもかかわらず、距離が一意に定まっていない。これに対し、レイアウト1030のように規定することで、距離を一意に定めることが可能となる。レイアウト1030では、8つの通路グループを設定している。搬送経路1131と搬送経路1132はそれぞれ、異なる通路グループを利用することで距離を一意に定めている。言い換えると、1つの通路グループに対応する1つの通路の距離は、固定となる。
【0066】
このようなグルーピングを用いる場合、上記の式(7)に示す横軸において、スロットに代えて、通路グループが割り当てられる。また、スロット数ではなく、通路グループ数に置き換わることで、行列の要素数が減少し、計算量も削減される。
【0067】
[処理フロー]
図11は、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善処理の全体フローチャートである。本処理フローは、例えば、情報処理装置10の処理装置11が、記憶装置12に格納されたプログラムやデータを読み出して実行することにより、情報処理装置10の各部位を制御することで実現されてよい。本処理フローは、情報処理装置10のユーザが本実施の形態に係る物品レイアウトの改善処理の開始を指示した際に開始されてよい。また、倉庫内において商品の移動作業は、倉庫内の所定のエリアごとに行われてもよいし、所定の時間帯に行われてもよい。
【0068】
情報処理装置10は、出荷要求に対応するオーダー情報を取得する(ステップS1101)。ここでのオーダー情報は、図5に示したような構成にて取得される。オーダー情報は、外部システムから自動的に送信されてきてもよいし、情報処理装置10が問い合わせを行って取得してもよい。オーダー情報は、これから出荷するオーダー情報を用いるものとして説明する。しかし、これに限定するものではなく、これから出荷するオーダー情報に加え、過去に既に処理したオーダー情報を含んでもよい。例えば、過去のオーダー情報は、後述する処理において統計的な処理を行う場合に用いてもよい。また、本工程において、オーダー情報を取得した後、図5を用いて説明したようにピックリストを生成する処理を行ってもよい。もしくは、オーダー情報に基づいて生成されているピックリストを取得するような構成であってもよい。
【0069】
情報処理装置10は、予め規定された倉庫情報を取得する(ステップS1102)。倉庫情報には、上述したような各種情報が含まれる。本工程の後、ステップS1103~ステップS1106の処理を行う。ステップS1103~ステップS1106の各種処理は同時並行的に行われてもよいし、所定の順序にて行われてもよい。
【0070】
情報処理装置10は、併売行列の作成を行う(ステップS1103)。併売行列は、上記の式(4)に相当する。併売行列は、2つの商品間の併売率を示し、例えば、オーダー情報から作成される。
【0071】
情報処理装置10は、距離行列の作成を行う(ステップS1104)。距離行列は、上記の式(8)に相当する。本処理工程の詳細は、図12を用いて説明する。
【0072】
情報処理装置10は、決定変数の作成を行う(ステップS1105)。本処理工程の詳細は、図13を用いて説明する。
【0073】
情報処理装置10は、頻度行列の作成を行う(ステップS1106)。頻度行列は、各商品の出荷頻度を示し、例えば、オーダー情報から作成される。
【0074】
ステップS1103~ステップS1106の処理が完了した後、情報処理装置10の処理はステップS1107へ進む。情報処理装置10は、商品の配置をランダムに入れ替える(ステップS1107)。具体的には、上記の式(7)に示す商品の配置を示す行列の行を入れ替えることで、配置の入れ替えを行う。ここでの入れ替えは、同じ通路グループに属するスロット間での商品の入れ替えではなく、異なる通路グループに属するスロット間の商品の入れ替えに相当する。本実施の形態に係る手法において、同じ通路グループに属するスロット間での商品の入れ替えの場合、PF/PAコストに変化は生じないためである。なお、本例では配置の入替をランダムとしたが、所定の規則に基づいて入替を実行してもよい。例えば、ここでの近傍探索は、公知のSwap近傍が用いられてよい。
【0075】
情報処理装置10は、ステップS1107にて入れ替えたレイアウトのPF/FAスコアを計算する(ステップS1108)。ここでの計算方法は、非特許文献1の手法に基づき、上記の式(11)、式(12)を用いて行われる。本実施の形態では、膨大な商品の種類に対応した計算負荷の低減のために、一部の評価値の計算結果を再利用する。例えば、商品の配置の入れ替えを行った場合、2つの行のみが変化する。つまり、この変化した行以外の計算結果は入れ替え前と同じであるため、前の結果を再利用することができる。本実施の形態では、このような再利用により、改善処理のコストを低減し、計算時間の短縮を行う。
【0076】
例えば、商品の位置の入れ替えにおいて、下記の式(13)の行列式の1行目と2行目の2つの行が入れ替えられる。この場合に、3行目以下は変更が無いため、これらの値は入替前の計算の値をそのまま利用することが可能である。よって、3行目以下の計算は省略することができる。
【0077】
【数7】
【0078】
情報処理装置10は、直前にステップS1108にて計算したPF/PAスコアと、それ以前に計算したPF/PAスコアとを比較し、直前に計算した値が改善しているか否かを判定する(ステップS1109)。ここでの改善とは、PF/PAスコアが小さくなっていることを意味する。PF/PAスコアが改善している場合(ステップS1109:YES)、情報処理装置10の処理はステップS1110へ進む。一方、PF/PAスコアが改善していない場合(ステップS1109:NO)、情報処理装置10の処理はステップS1111へ進む。
【0079】
情報処理装置10は、PF/PAスコアが改善したことに伴い、これに対応する商品の入れ替えを採用する(ステップS1110)。具体的には、入替後の商品の配置に対応する決定変数を更新する。このとき、入替後の商品が、通路グループに属するどのスロットに配置されるかを更に決定してよい。例えば、属する通路グループのうちの空スロットに配置させてもよいし、所定の条件に基づいて具体的なスロットを決定してもよい。そして、情報処理装置10の処理は、ステップS1112へ進む。
【0080】
情報処理装置10は、商品の入れ替えを確率的に採用する(ステップS1111)。ここでの確率は、予め規定されていてもよいし、過去のオーダー情報の処理結果に応じて変化させてもよい。したがって、PF/PAスコアが改善されていない場合には、確率的に商品の入れ替えを採用するか否かが決定される。入れ替えを採用する場合には、入替後の商品が、通路グループに属するどのスロットに配置されるかを更に決定してよい。例えば、属する通路グループのうちの空スロットに配置させてもよいし、所定の条件に基づいて具体的なスロットを決定してもよい。なお、ステップS1111において、PF/PAスコアが改善されていないにもかかわらず、商品の入れ替えを採用することがある理由は、局所探索のアプローチでは、敢えてスコアが改善されない解も採用することで、後続する繰り返しで得られる解がより改善されることがあるためである。そのため、より改善された結果よりも早く結果を得ることを目的とする場合には、ステップS1111において商品の入れ替えを一切採用しないようにしてもよい。この場合、PF/PAスコアが改善される入れ替えのみが採用されるため、PF/PAスコアが局所的な最小値に収束する速度が早まる。そして、情報処理装置10の処理は、ステップS1112へ進む。
【0081】
情報処理装置10は、ステップS1107~ステップS1111の処理が所定の試行回数繰り返されたか否かを判定する。ここでの所定の試行回数は予め規定されていてよい。所定の試行回数繰り返された場合(ステップS1112:YES)、情報処理装置10は、現在の商品レイアウトを確定させ、本処理フローを終了する。一方、所定の試行回数繰り返されていない場合(ステップS1112:NO)、情報処理装置10の処理は、ステップS1107へ戻り、処理を繰り返す。
【0082】
ステップS1107~ステップS1111の処理は、局所探索のアプローチであり、焼きなまし法(SA:Simulated Annealing)が用いられている。
【0083】
(距離行列作成)
図12は、本実施の形態に係る距離行列の作成処理のフローチャートであり、図11のステップS1104の工程に対応する。
【0084】
情報処理装置10は、倉庫情報に基づいて、図9図10を用いて説明したようにスロットのグルーピングを行う(ステップS1201)。ここでのグルーピングには、倉庫情報として取得された、スロット配置情報、入口情報、出口情報、交差点情報などが用いられる。
【0085】
情報処理装置10は、ステップS1201にて得られた各通路グループに対して、通路間の距離を算出する(ステップS1202)。通路間の距離は、上記の式(9)、式(10)を用いて、図8に示すように定義することで算出できる。
【0086】
情報処理装置10は、ステップS1202にて得られた通路間の距離に基づいて、距離行列を作成する(ステップS1203)。距離行列は、上記の式(8)のように構成される。そして、本処理フローを終了する。
【0087】
(決定変数作成)
図13は、本実施の形態に係る決定変数の作成処理のフローチャートであり、図11のステップS1105の工程に対応する。
【0088】
情報処理装置10は、グルーピングに基づく、各スロットに対する商品の割り当てを行う(ステップS1301)。ここでの割り当ては、倉庫情報のうちの商品格納情報に基づいて行われる。なお、ここでの処理が実行される前に、図12のステップS1201の工程にて各スロットのグルーピングが完了しているものとする。
【0089】
情報処理装置10は、ステップS1301の工程における割り当ての結果に基づいて、これに対応する決定変数を作成する。具体的には、上記の式(7)に示す決定変数行列Xが生成される。そして、本処理フローを終了する。
【0090】
[計算量の削減]
非特許文献1の最適化アルゴリズムは、PF/PAスコアを算出するに際し、以下の式(13)にて計算量が定義される。
【0091】
【数8】
【0092】
一方、本実施の形態に係る手法では、次数の削減と差分計算の利用を行うことで、非特許文献1による手法よりも計算量の削減を行う。本実施の形態に係る倉庫では、同じ通路上に配置された商品は、どのスロットに配置しても搬送距離に影響を及ぼさない。本実施の形態では、スロットをグループ化し、通路グループとして計算を行うことで、次数の削減を行う。この場合、計算量は以下の式(15)で定義される。
【0093】
【数9】
【0094】
更に、図11のステップS1107の工程において、式(13)を用いて説明したように、商品の配置の入替前後において変化しない箇所の計算を省略することで差分計算を行っている。この場合、計算量は以下の式(16)で定義される。
【0095】
【数10】
【0096】
式(14)の計算量と、式(16)の計算量を比較した場合、倉庫の構成によって計算量の差は異なるが、本実施の形態に係る手法による式(16)の計算量の方が小さくなる。つまり、従来の手法に比べ、計算コストを低減することが可能となる。
【0097】
以上、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、物品が配置されている複数のスロットの情報を取得し、情報に基づいて、複数のスロットを、ピッキングの際に通過可能な複数の通路に対応する複数の通路グループに分け、複数の通路グループ間の距離に基づいて、複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行い、所定の規則に基づいて複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の評価が物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、評価が改善する場合に物品の配置の入れ替えを採用する。この構成により、倉庫におけるピッキング作業の効率化を行うために物品レイアウトを改善することが可能となる。また、改善のための計算コストを低減することが可能となる。
【0098】
また、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、所定の規則は、異なる通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行う規則である。また、所定の規則は、異なる通路グループをランダムに選択する規則である。また、所定の規則は、同じ通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行われない規則である。この構成により、同じ通路グループに属する商品間の入れ替えに係る計算を省略することが可能となる。
【0099】
また、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、物品の位置を入れ替える前の評価よりも、物品の位置を入れ替えた後の評価が改善していない場合、入れ替えを確率的に採用する。この構成により、局所探索のアプローチにおける、ある時点での改善が得られない場合でも、後続の繰り返しで得られる解がより改善される特性を反映させることが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、1つの通路グループに対応する1つの通路の距離が一意に定まるようにグルーピングされる。この構成により、通路グループに対応する通路の距離を一意に特定することができ、例えば、倉庫の現場における搬送車の動作制約を考慮して物品レイアウトを改善することが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、1つの通路を通過した際にピッキングが可能な位置のスロットを当該1つの通路に対応する通路グループにグルーピングする。この構成によれば、複数のスロットをまとめて1つのグループとして扱って距離の計算を行うことが可能となり、計算コストを削減しつつ、倉庫の現場における制約を考慮して物品レイアウトを改善することが可能となる。
【0102】
また、本実施の形態に係る物品レイアウトの改善方法では、複数の通路グループ間の距離に基づいて、複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行い、複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えて評価を行い、物品の位置を入れ替えた後の物品レイアウトの評価に基づいて物品の位置を入れ替えることを繰り返す。この構成によれば、通路グループ間の距離に基づく評価を繰り返し行うことで、倉庫の現場における制約を考慮して物品レイアウトを改善することが可能となる。
【0103】
(その他の変形例)
本実施の形態では、局所探索のアプローチを採用しているため、必ずしもすべての商品レイアウトのうちから真に最適な結果が得られるとは限らない。また、商品の入れ替えによりスコアが改善されていれば少なくとも入れ替え前よりはレイアウトは改善されているため、必ずしも局所的な最適解が得られるまで処理を繰り返す必要はない。すなわち、本実施の形態に係る方法は、レイアウトの改善方法であればよく、必ずしも最適化方法である必要はない。つまり、本明細書における「最適化」とは、ある時点での最適解を求めることであってもよいし、一定条件下において相対的に改善された解を求めることであってもよいことを含むことを意図する。
【0104】
また、本実施の形態において、商品間の入れ替えが決定した後の、実際の商品の入れ替えを行うタイミングは任意でよい。例えば、既にスロットに入っている商品を入れ替えず新たに入庫した商品のみを入れ替えるようにしてもよいし、スロットに入っている商品を随時入れ替えてもよい。後者の場合は、商品の入れ替えの効果はすぐには発生しない場合があるが、倉庫の入出庫作業が進むにつれて、倉庫のレイアウトに最終的には本実施の形態による改善処理の結果が反映されることとなる。
【0105】
また、本実施の形態における改善の基礎となる商品のレイアウトは現実の倉庫に配置された商品のレイアウトであってもよいし、仮想的な商品のレイアウトであってもよい。仮想的な商品のレイアウトを用いる場合は、現実の倉庫におけるレイアウトを初めて決定する際のシミュレーション等の用途で本実施の形態に係る処理を行ってもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、商品を取り扱う倉庫を対象としたレイアウトの改善方法を説明したが、レイアウト改善の対象は商品に限る必要はない。本実施の形態の思想は、商業的な流通の対象とならない試作品や、材料、部品など、様々な物品を取り扱う倉庫を対象にも適用することができる。
【0107】
また、本実施の形態では、同じ通路グループに属する商品間の入れ替えは行わないものとして説明した。しかし、同じ通路グループに属する商品間の入れ替えも行うように構成してもよい。この入れ替えは通路グループの観点からはレイアウトの改善には繋がらないが、例えば、同じ高さの商品が近い高さの棚に配置されている方がピッキングの効率が向上する等、他の観点でのレイアウトの改善に繋がる可能性はある。
【0108】
また、本発明において、上述した1つ以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0109】
また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0110】
なお、本実施の形態において、用語「第1の」、「第2の」といった表現は、他の要素と便宜的に区別するために用いている。そのため、これらの表現は固有の要素に限定的に解釈されるべきでなく、構成要素などの変更に応じて適宜読み替えられてよい。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0112】
(付記)
以上の実施の形態により、下記の技術が開示される。
(技術1)
物品が配置されている複数のスロットの情報を取得する取得工程と、
前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、ピッキングの際に通過可能な複数の通路に対応する複数の通路グループに分けるグルーピング工程と、
前記複数の通路グループ間の距離に基づいて、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価工程と、
所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合に前記評価工程による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替工程と、
を有する、物品レイアウトの改善方法。
【0113】
(技術2)
前記所定の規則は、異なる通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行う規則である、技術1に記載の物品レイアウトの改善方法。
【0114】
(技術3)
前記所定の規則は、前記異なる通路グループをランダムに選択する規則である、技術2に記載の物品レイアウトの改善方法。
【0115】
(技術4)
前記所定の規則は、同じ通路グループに属するスロット間での物品の入れ替えを行われない規則である、技術2に記載の物品レイアウトの改善方法。
【0116】
(技術5)
前記入替工程は、前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも、前記物品の位置を入れ替えた後の評価が改善していない場合、前記入れ替えを確率的に採用する、技術2から技術4のいずれかに記載の物品レイアウトの改善方法。
【0117】
(技術6)
前記グルーピング工程において、1つの通路グループに対応する1つの通路の距離が一意に定まるようにグルーピングされる、技術1から技術5のいずれかに記載の物品レイアウトの改善方法。
【0118】
(技術7)
前記グルーピング工程において、1つの通路を通過した際にピッキングが可能な位置のスロットを当該1つの通路に対応する通路グループにグルーピングする、技術1から技術5のいずれかに記載の物品レイアウトの改善方法。
【0119】
(技術8)
前記入替工程は、前記複数の通路グループ間の距離に基づいて、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行い、
前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えて前記評価を行い、
前記物品の位置を入れ替えた後の物品レイアウトの評価に基づいて物品の位置を入れ替える工程を繰り返す、
技術1から技術7のいずれかに記載の物品レイアウトの改善方法。
【0120】
(技術9)
物品が配置されている複数のスロットの情報を取得する取得部と、
前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、ピッキングの際に通過可能な複数の通路に対応する複数の通路グループに分けるグルーピング部と、
前記複数の通路グループ間の距離に基づいて、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行う評価部と、
所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合に前記評価部による評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する入替部と、
を有する、物品レイアウトの改善装置。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示は、倉庫内のピッキング作業において、物品レイアウトの改善を行う改善方法、および改善装置として有用である。
【符号の説明】
【0122】
10…情報処理装置
11…処理装置
12…記憶装置
13…通信装置
14…入力装置
15…表示装置
16…外部インタフェース
20…外部システム
35…ネットワーク
200…搬送車
300…倉庫
400…棚
401…スロット
【要約】
【課題】倉庫におけるピッキング作業の効率化を実現する。
【解決手段】物品レイアウトの改善方法は、物品が配置されている複数のスロットの情報を取得し、前記情報に基づいて、前記複数のスロットを、ピッキングの際に通過可能な複数の通路に対応する複数の通路グループに分け、前記複数の通路グループ間の距離に基づいて、前記複数のスロットにおける物品レイアウトの評価を行い、所定の規則に基づいて前記複数のスロットに配置されている物品の位置を入れ替えた場合の評価が前記物品の位置を入れ替える前の評価よりも改善するか否かを判定し、前記評価が改善する場合に前記物品の配置の入れ替えを採用する。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13