(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240802BHJP
H02P 6/20 20160101ALI20240802BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
H02P6/20
(21)【出願番号】P 2019074387
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2021-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-7784(JP,A)
【文献】特開2012-726(JP,A)
【文献】特開2009-50932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H02P 6/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を駆動するブラシレス方式のモータと、
前記モータの回転速度を制御するための操作が入力される操作部と、
前記モータの起動開始時は、一定の駆動電圧である起動用電圧パターンの電圧を前記モータに印加し、印加した前記起動用電圧パターンを、前記モータの前記起動開始時から回転開始時までの間、前記モータに印加し続け、前記モータの回転開始後は、前記モータの回転速度を前記モータの目標回転速度に一致するように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記モータの前記起動開始時に前記操作部に入力された操作量
が大きいほど、前記モータの前記起動開始時に前記モータに印加される前記起動用電圧パターンを
、より高い駆動電圧の電圧パターンに変化させる、
電動工具。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作量に応じて前記目標回転速度を設定し、前記モータの前記起動開始時に設定された前記目標回転速度に応じて、前記モータの前記起動開始時に前記モータに印加される前記起動用電圧パターンを変化させる、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、異なる前記操作量に対応した複数の起動用電圧パターンを有し、
前記制御部は、前記複数の起動用電圧パターンの中から、前記モータの前記起動開始時の前記操作量に対応した起動用電圧パターンを選択し、選択した前記起動用電圧パターンの電圧を前記モータの前記起動開始時に印加する、
請求項1又は2に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具に関し、より詳細には、操作部の操作量でモータの回転速度を変化させる電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のモータ駆動制御装置(電動工具)は、モータと、トリガ(操作部)と、トリガの操作量に応じてモータを制御する制御手段(制御部)とを備えている。このモータ駆動制御装置は、モータ起動開始時は、モータを確実に起動させるためにソフトスタート制御を行い、モータ起動後は、トリガの操作量に応じた回転速度となるようにモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータ駆動制御装置では、モータ起動開始時にモータに印加される駆動電圧は、ソフトスタート制御用の低い電圧に固定されている。このため、上記のモータ駆動制御装置では、使用者がトリガを一気に引き込んでモータを素早く高速回転させようとしたとき、モータの回転速度を使用者の望む高回転速度に素早く到達させることができない。
【0005】
本開示は、使用者がモータを低速回転させるときは、モータを滑らかな低速回転で制御でき、使用者がモータを高速回転させるときは、モータの回転速度を素早く高回転速度に制御できる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具は、モータと、操作部と、制御部とを備える。前記モータは、先端工具を駆動するブラシレス方式のモータである。前記操作部には、前記モータの回転速度を制御するための操作が入力される。前記制御部は、前記モータの起動開始時は、一定の駆動電圧である起動用電圧パターンの電圧を前記モータに印加し、印加した前記起動用電圧パターンを、前記モータの前記起動開始時から回転開始時までの間、前記モータに印加し続ける。前記制御部は、前記モータの回転開始後は、前記モータの回転速度を前記モータの目標回転速度に一致するように制御する。前記制御部は、前記モータの前記起動開始時に前記操作部に入力された操作量が大きいほど、前記モータの前記起動開始時に前記モータに印加される前記起動用電圧パターンを、より高い駆動電圧の電圧パターンに変化させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使用者がモータを低速回転させるときは、モータを滑らかな低速回転で制御でき、使用者がモータを高速回転させるときは、モータの回転速度を素早く高回転速度に制御できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動工具の模式的な構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具の回路構成図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具の転流制御を説明するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、同上の電動工具のトリガスイッチをゆっくりと引き込んだときの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、同上の電動工具のトリガスイッチを一気に引き込んだときの動作を説明するタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、変形例2の電動工具のデューティ比の時間変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について説明する。下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の例に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0010】
(実施形態)
図1~
図5を参照して、本実施形態に係る電動工具10について説明する。
【0011】
図1を参照して、電動工具10の概要を説明する。
図1に示すように、電動工具10は、先端工具7をモータ1の駆動力で駆動することで、電動で先端工具7を駆動する工具である。電動工具10は、モータ1と、電源3と、駆動伝達部4と、出力軸部5と、チャック6と、先端工具7と、トリガスイッチ8(操作部)と、制御部9とを備えている。
【0012】
モータ1は、先端工具7を駆動する駆動源である。モータ1は、例えば複数相(例えば3相)の固定子巻線を有するブラシレスモータである。電源3は、モータ1を駆動する電流を供給する直流電源であり、例えば2次電池等で構成されている。駆動伝達部4は、モータ1の出力(駆動力)を減速して出力軸部5に出力する。出力軸部5は、駆動伝達部4から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される部分である。チャック6は、出力軸部5に固定されており、先端工具7が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具7は、ドライバ、ソケット又はドリル等、用途に応じた形に形成されている。各種の先端工具7のうち用途に応じた先端工具7が、チャック6に取り付けられて用いられる。
【0013】
なお、この実施形態の電動工具10はチャック6を備えることで、先端工具7が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具7が交換可能である必要はない。例えば、電動工具10は、特定の先端工具7のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0014】
トリガスイッチ8は、モータ1の回転速度を制御するための操作が入力される操作部である。トリガスイッチ8でモータ1のオン又はオフが切替可能である。また、トリガスイッチ8の操作量(トリガ操作量)によって、出力軸部5の単位時間当たりの回転速度、つまりモータ1の回転速度が調整可能である。トリガスイッチ8が基準位置から操作力を受けて変位する際の変位量が操作量に該当する。このトリガスイッチ8では、操作量をポテンショメータなどで電圧に変換して取り込み、その電圧を、トリガスイッチ8に入力された操作量として制御部9に出力する。
【0015】
制御部9は、トリガスイッチ8の操作に応じて、電源3からモータ1に印加される電圧を制御することで、モータ1の回転速度を制御する。制御部9は、トリガスイッチ8への操作の入力の有無に応じて、モータ1を回転又は停止させる。制御部9は、トリガスイッチ8の操作量に応じて、モータ1の回転速度を制御する。トリガスイッチ8の操作によってモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具7の回転速度が制御される。
【0016】
より詳細には、制御部9は、モータ1を回転駆動するとき、モータ1への電圧印加開始時からモータ1の回転開始時までの間(初期起動期間)、予め決められた起動用電圧パターンの駆動電圧をモータ1に印加する。そして、制御部9は、モータ1が回転開始すると、モータ1が回転駆動されている間(速度制御期間)は、モータ1の回転速度がトリガ操作量に応じて設定された目標回転速度に一致するように、モータ1に印加される駆動電圧を制御する速度制御を行う。
【0017】
ここで、「初期起動期間」とは、モータ1は回転するが、間欠的な回転であり連続的に滑らかに回転しない期間である。「モータ1が回転開始する」とは、モータ1が連続的に滑らかに回転し始めることである。起動用電圧パターンは、モータ1を起動させるためにモータ1に印加する電圧パターンである。
【0018】
更に詳細には、制御部9は、モータ1の起動開始時にモータ1に印加される駆動電圧の電圧パターン(起動用電圧パターン)を、モータ1の起動開始時(すなわちモータ1への電圧印加開始時)のトリガ操作量に応じて、変化させる。そして、制御部9は、モータ1の起動開始時にモータ1に印加した起動用電圧パターンを、初期起動期間の間、モータ1に印加し続ける。すなわち、制御部9は、複数の起動用電圧パターンを択一的に選択可能に構成されている。複数の起動用電圧パターンは、互いに異なる駆動電圧に対応し、かつ、互いに異なるトリガ操作量に対応している。制御部9は、複数の起動用電圧パターンの中から、モータ1の起動開始時のトリガ操作量に対応した起動用電圧パターンを選択し、選択した起動用電圧パターンの駆動電圧を、モータ1の起動開始時にモータ1に印加する。そして、制御部9は、その選択した起動用電圧パターンの駆動電圧を、初期起動期間の間、モータ1に印加し続ける。
【0019】
本実施形態では、複数の起動用電圧パターンは、第1の電圧パターンと第2の電圧パターンとで構成されている。第1の電圧パターンは、モータ1の起動開始時のトリガ操作量が閾値操作量未満の場合の電圧パターンであり、比較的小さい駆動電圧の電圧パターンである。第2の電圧パターンは、モータ1の起動開始時のトリガ操作量が閾値操作量以上の場合の電圧パターンであり、第1の電圧パターンの駆動電圧よりも高い駆動電圧の電圧パターンである。
【0020】
そして、制御部9は、モータ1の起動開始時のトリガ操作量が閾値操作量未満であるときは、使用者がトリガスイッチ8をゆっくりと引き込んだと判断する。この場合は、制御部9は、モータ1をゆっくりと滑らかに回転させるために、モータ1の起動開始時に第1の電圧パターンの駆動電圧をモータ1に印加する。これにより、使用者は、トリガスイッチ8の操作の入力時から、モータ1を滑らかに(すなわちコッキングや高回転速度側へのオーバーシュートを発生させることなく)低回転速度で回転駆動させることができる。また、制御部9は、モータ1の起動開始時のトリガ操作量が上記の閾値操作量以上であるときは、使用者がトリガスイッチ8を素早く引き込んだと判断する。この場合は、制御部9は、モータ1の回転速度を素早く(すなわち比較的短い時間で)上昇させるために、モータ1の起動開始時に第2の電圧パターンの駆動電圧をモータ1に印加する。これにより、使用者は、トリガスイッチ8の操作によって、モータ1を素早く使用者の望む高回転速度に到達させることができる。
【0021】
なお、本実施形態では、トリガスイッチ8への操作入力時からモータ1の起動開始時までの間には、一定時間間隔が設定されている。これにより、使用者がトリガスイッチ8をゆっくりと引き込んだときは、モータ1の起動開始時のトリガ操作量は、比較的小さい操作量となる。また、使用者がトリガスイッチ8を素早く引き込むと、モータ1の起動時のトリガ操作量は、比較的大きい操作量となる。これにより、制御部9は、モータ1の起動開始時のトリガ操作量によって、使用者がトリガスイッチ8をゆっくりと引き込んだか、素早く引き込んだかを判断することができる。
【0022】
図2を参照して、電動工具10の回路構成を説明する。
図2に示すように、電動工具10は、回路的には、モータ1と、電源3と、トリガスイッチ8と、制御部9とを備えている。
【0023】
モータ1は、回転子1aと固定子1bとを有する。固定子1bは、複数相(例えば3相、より詳細にはU相、V相及びW相)の固定子巻線U1,V1,W1と、固定子コア1cとを有する。3相の固定子巻線U1,V1,W1は、互いに結線(
図2の例示では星形結線)されている。固定子コア1cは、3相の固定子巻線U1,V1,W1が巻かれる鉄心である。回転子1aは、複数組(例えば2組)のN極及びS極を含む永久磁石を有する。2組のN極及びS極は、回転子1aの回転方向に90度毎に交互に配置されている。回転子1a及び固定子1bは、回転子1aの回転軸の径方向において相互に対向している。
【0024】
制御部9は、インバータ回路15と、ドライブ回路18と、位置検出回路19と、制御回路20とを備えている。
【0025】
インバータ回路15は、ドライブ回路18からの制御電圧H1~H6に応じて、電源3から供給された電圧から3相(U1相、V1相、W1相)電圧を生成し、生成した3相電圧をモータ1の固定子巻線U1,V1,W1に供給する。これにより、モータ1が回転駆動される。
【0026】
インバータ回路15は、6個のスイッチング素子Q1~Q6を備えている。スイッチング素子Q1~Q6は、例えばN型のMOSFETである。スイッチング素子Q1~Q6は、互いに3相ブリッジ形式に接続されている。スイッチング素子Q1~Q6の各ゲートは、ドライブ回路18に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2の間の接続点は、固定子巻線U1に接続されている。スイッチング素子Q3,Q4の間の接続点は、固定子巻線V1に接続されている。スイッチング素子Q5,Q6の間の接続点は、固定子巻線W1に接続されている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5の各ソースは、往路22を介して電源3の正極に接続されている。スイッチング素子Q2,Q4,Q6の各ドレインは、復路23を介して電源3の負極に接続されている。
【0027】
以下の説明では、電源3の正極に接続されたスイッチング素子Q1,Q3,Q5を上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5とも記載し、電源3の負極に接続されたスイッチング素子Q2,Q4,Q6を下段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5とも記載する。固定子巻線U1に接続されたスイッチング素子Q1,Q2をU1相のスイッチング素子Q1,Q2とも記載する。固定子巻線V1に接続されたスイッチング素子Q3,Q4をV1相のスイッチング素子Q3,Q4とも記載する。固定子巻線W1に接続されたスイッチング素子Q5,Q6をW1相のスイッチング素子Q5,Q6とも記載する。
【0028】
ドライブ回路18は、制御回路20の制御(転流制御)に応じて、スイッチング素子Q1~Q6のゲートに制御電圧H1~H6を印加する。この電圧印加によって、スイッチング素子Q1~Q6が所定の順番でオンオフ制御される。このオンオフ制御によって、電源3から供給された電圧から3相電圧(駆動電圧)が生成され、生成された3相電圧がモータ1に印加されることで、3相電圧に基づく電流がモータ1の固定子巻線U1,V1,W1に流れて、回転子1aが回転する。すなわちモータ1が回転駆動する。
【0029】
ドライブ回路18は、制御回路20の制御(速度制御)に応じて、上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに、制御電圧H1,H3,H5として、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)された制御電圧を印加する。ドライブ回路18は、制御回路20の制御に応じて、下段のスイッチング素子Q2,Q4,Q6のゲートに、制御電圧H2,H4,H6として、パルス幅変調されていない矩形波の制御電圧を印加する。ドライブ回路18は、上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加されたパルス幅変調された制御電圧のデューティ比を変化させることで、モータ1への電力供給量を制御し、モータ1の回転速度を制御する。デューティ比とは、制御電圧におけるパルス周期とパルス幅との比である。
【0030】
なお、上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに、制御電圧H1,H3,H5として、パルス幅変調されていない矩形波の制御電圧が印加されてもよい。また、下段のスイッチング素子Q2,Q4,Q6のゲートに、制御電圧H1,H3,H5として、パルス幅変調された制御電圧が印加されてもよい。
【0031】
位置検出回路19は、モータ1の回転子1aの回転位置を検出する。位置検出回路19は、複数(例えば3つ)のホール素子19a,19b,19cを有する。ホール素子19a,19b,19cは、例えばホールIC(Integrated Circuit)である。ホール素子19a,19b,19cは、回転子1aの近傍に配置されている。ホール素子19a,19b,19cは、永久磁石に対向して回転方向に60度毎に配置されている。ホール素子19a,19b,19cは、電磁結合方式により永久磁石からの磁力を検出し、回転子1aの回転位置を検出する。
【0032】
制御回路20は、例えばマイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。ROMは、処理プログラム及び制御データを記憶するための記憶部である。RAMは、データを一時記憶するための記憶部である。
【0033】
制御回路20は、位置検出回路19の検出結果及びトリガスイッチ8の操作量(トリガ操作量)に基づいて、ドライブ回路18を制御する。制御回路20は、モータ1を回転駆動させる転流制御と、モータ1の回転速度を制御する速度制御とを行う。転流制御では、制御回路20は、位置検出回路19の検出結果に基づいて、上述のように3相電圧に基づく電流が固定子巻線U1,V1,W1に流れて回転子1aが回転するように、スイッチング素子Q1~Q6のゲートに印加される制御電圧H1~H6を制御する。これにより、モータ1が回転駆動する。また、速度制御では、制御回路20は、上述のように上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに印加される制御電圧H1,H3,H5のデューティ比を、トリガ操作量に応じて変化させる。これにより、トリガ操作量に応じてモータ1の回転速度が制御される。
【0034】
制御回路20による速度制御は、初期起動期間と速度制御期間とで構成されている。初期起動期間は、上述の通り、モータ1の起動開始時からモータ1の回転開始時までの期間である。速度制御期間は、上述の通り、初期起動期間以降の期間(すなわちモータ1の回転開始時以降の期間)であって、モータ1が滑らかに連続的に回転する期間である。
【0035】
初期起動期間では、制御回路20は、モータ1の起動開始時に上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに印加される制御電圧のデューティ比(起動用デューティ比)を、モータ1の起動開始時のトリガ操作量に応じて変化させる。これにより、モータ1の起動開始時にモータ1に印加される駆動電圧の電圧パターン(起動用電圧パターン)が、モータ1の起動開始時のトリガ操作量に応じて変わる。そして、制御回路20は、初期起動期間の間、電圧印加される上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに、上記の変更後の起動用デューティ比の制御電圧を印加する。
【0036】
すなわち、制御回路20は、複数の起動用デューティ比を保有している。複数の起動用デューティ比は、制御回路20に設けられた所定の記憶部に記憶されている。複数の起動デューティ比は、互いに異なるトリガ操作量に対応し、かつ上記の複数の起動用電圧パターンと一対一に対応している。制御回路20は、複数の起動用デューティ比のうち、モータ1の起動開始時のトリガ操作量に対応したデューティ比を選択する。そして、制御回路20は、選択したデューティ比の制御電圧を、モータ1の起動開始時に電圧印加される上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに印加する。そして、制御回路20は、初期起動期間の間、電圧印加される上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5に、上記の選択した起動用デューティ比を印加する。
【0037】
なお、起動用電圧パターンは、起動用デューティ比でPWM制御されるスイッチング素子Q1,Q3,Q5がモータ1に印加する駆動電圧である。このため、起動用電圧パターンは、起動用デューティ比と同じPWM変調された波形である。また、起動用電圧パターンは起動用デューティ比に基づいて形成されるため、制御回路20が複数の起動用デューティ比を保有するということは、制御回路20が複数の起動用電圧パターンを保有することと同じである。
【0038】
速度制御期間では、制御回路20は、トリガ操作量に応じてモータ1の目標回転速度を設定し、モータ1の回転速度が目標回転速度に一致するように、各スイッチング素子Q1~Q6に印加される制御電圧のデューティ比を制御する。
【0039】
図3は、制御部9の動作を説明するタイミングチャートである。
【0040】
図3の上段の3つのグラフは、ホール素子19a,19b,19cから出力される位置検出信号Sa,Sb,Scの波形と、固定子巻線U1,V1,W1に発生する誘起電圧Va,Vb,Vcとを示す。
図3の下段の6つのグラフは、ドライブ回路18からスイッチング素子Q1~Q6に印加される制御電圧H1~H6の波形を示す。
【0041】
各ホール素子19a,19b,19cは、回転する回転子1aの永久磁石からの磁力を検出し、「1」又は「0」の信号値の位置検出信号Sa,Sb,Scを出力する。本実施形態では、回転子1aは2組4極の永久磁石を有するため、各ホール素子19a,19b,19cから出力される位置検出信号の信号値は、回転子1aが90度回転する毎に「1」又は「0」に切り替わる。各ホール素子19a,19b,19cから出力される位置検出信号の信号値の切り替わる切替タイミングは、互いに30度ずつずれている。各ホール素子19a,19b,19cの位置検出信号Sa,Sb,Scの信号値は、誘起電圧Va,Vb,Vcのゼロクロス点で切り替わる。ゼロクロス点とは、誘起電圧Va,Vb,Vcがゼロを通過する時点である。
【0042】
位置検出回路19は、位置検出信号Sa,Sb,Scの信号値の切替タイミングに基づいて、回転子1aの回転位置を回転角30度毎に検出する。
図3には、回転角30度毎に位置検出信号Sa,Sb,Scの信号値の切り替わる様子が図示されている。
【0043】
制御回路20は、位置検出回路19の位置検出信号Sa,Sb,Scに基づいて、回転子1aの回転角が30度回転する毎に、ドライブ回路18を介してスイッチング素子Q1~Q6に印加する制御電圧H1~H6を変化させる。
【0044】
図3の例では、時点T0でモータ1が起動開始され、時点T2でモータ1が回転開始する場合を想定する。この場合、時点T0がモータ1の起動開始時となり、時点T2がモータ1の回転開始時となる。すなわち、時点T0~T2の期間が初期起動期間となり、時点T2以降が速度制御期間となる。制御回路20は、時点T0から、スイッチング素子Q1~Q6を転流制御する。その際、制御回路20は、時点T0~T2の期間(初期起動期間)では、ドライブ回路18を介して、PWM制御すべき上段のスイッチング素子(例えばQ5)に、複数の起動用デューティ比のうち、モータ1の起動開始時(T0)のトリガ操作量に対応した起動用デューティ比の制御電圧(
図3の例ではH5)を印加する。
【0045】
そして、時点T2以降の期間(速度制御期間)では、モータ1が滑らかに連続的に回転し始めるため、制御回路20は、位置検出回路19の位置検出信号Sa,Sb,Scからモータ1の回転速度を適切に検出可能になる。このため、制御回路20は、ドライブ回路18を介して、モータ1の回転速度が目標回転速度に一致するようにスイッチング素子Q1~Q6に対して速度制御を行う。すなわち、制御回路20は、トリガ操作量に応じてモータ1の目標回転速度を設定する。そして、制御回路20は、ドライブ回路18を介して、PWM制御すべき上段のスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加される制御電圧H1,H3,H5のデューティ比を、モータ1の回転速度が目標回転速度に一致するように制御する。
図3の例では、時点T2~T4の期間は、制御回路20は、ドライブ回路18を介してスイッチング素子Q3に印加される制御電圧H3のデューティ比を、モータ1の回転速度が目標回転速度に一致するように制御する。また、時点T4~T6の期間は、制御回路20は、ドライブ回路18を介してスイッチング素子Q1に印加される制御電圧H1のデューティ比を、モータ1の回転速度が目標回転速度に一致するように制御する。
【0046】
図4及び
図5を参照して、制御部9の動作を更に詳しく説明する。
【0047】
図4及び
図5の上段のグラフは、トリガ操作量の時間変化を示す。
図4及び
図5の中段のグラフは、スイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加される制御電圧H1,H3,H5のデューティ比の時間変化を示す。
図4及び
図5の下段のグラフは、モータ1の回転速度の時間変化を示す。
【0048】
以下の説明では、スイッチング素子Q1~Q6の制御については、PWM制御されるスイッチング素子Q21,Q3,Q5の制御のみ説明する。
【0049】
まず
図4を参照して、使用者がトリガスイッチ8をゆっくり引き込む場合の動作を説明する。使用者がトリガスイッチ8をゆっくりと引き込む場合のトリガ操作量は、一例として、トリガスイッチ8の操作開始時(時点t0)から時点t2までゆっくりと単調増加し、時点t2以降は一定のトリガ操作量L2になる。
【0050】
制御回路20は、トリガ操作量に応じて、モータ1の目標回転速度を設定する。モータ1の目標回転速度は、例えば、トリガ操作量に比例する。
【0051】
この動作説明では、トリガスイッチ8の操作が入力開始された時点t0から一定時間経過した時点t1で、制御回路20が、モータ1を起動開始し、時点t3でモータ1が回転開始する場合を想定する。この場合、時点t1がモータ1の起動開時となり、時点t2がモータ1の回転開始時となる。従って、時点t1~t3までの期間が初期起動期間となり、時点t3以降が速度制御期間となる。
【0052】
時点t1では、制御回路20は、複数の起動用デューティ比の中から、モータ1の起動開始時t1のトリガ操作量L1に対応するデューティ比ET1を選択する。このデューティ比DT1は、モータ1の起動開始時(時点t1)のトリガ操作量L1が比較的小さいため、比較的小さいデューティ比である。そして、制御回路20は、モータ1の起動開始時(時点t1)に、選択した起動用デューティ比DT1の制御電圧を、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加開始する。そして、制御回路20は、モータ1が回転開始するまで、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに起動用デューティ比DT1を印加する。
【0053】
そして、時点t3でモータ1が回転開始すると、制御回路20は、モータ1の回転速度が目標回転速度ω2に近づくように、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加される制御電圧H1,H3,H5のデューティ比をデューティ比DT2まで一定の割合で上昇させる。なお、目標回転速度ω2は、操作量L2に対応する目標回転速度である。そして、時点t4でモータ1の回転速度が目標回転速度ω2に到達すると、制御回路20は、デューティ比をデューティ比DT2に維持する。これにより、モータ1の回転速度は、回転速度ω2に維持される。
【0054】
この場合の動作では、初期起動期間で用いられる起動用デューティ比DT1が比較的小さいデューティ比である。このため、モータ1が起動開始したとき、モータ1がコックングや高回転速度側へのオーバーシュートを生じることなく滑らかに低回転速度で回転駆動可能である。
【0055】
次に
図5を参照して、使用者がトリガスイッチ8を一気に引き込む場合の動作を説明する。
図5の上段、中段及び下段において実線で示すグラフは、本実施形態の電動工具10に対応するグラフであり、
図5の中段及び下段において点線で示すグラフG1,G2は、比較例の電動工具に対応するグラフである。
【0056】
本実施形態の電動工具10では、使用者がトリガスイッチ8を一気に引き込む場合のトリガ操作量は、一例として、トリガスイッチ8の操作開始時(時点t0)から時点t2aまで急増して単調増加し、時点t2a以降は一定のトリガ操作量L4になる。
【0057】
制御回路20は、トリガ操作量に応じて、モータ1の目標回転速度を設定する。モータ1の目標回転速度は、例えば、トリガ操作量に比例する。
【0058】
この動作説明では、トリガスイッチ8の操作が入力開始された時点t0から一定時間経過した時点t1で、制御回路20が、モータ1を起動開始し、時点t3aでモータ1が回転開始する場合を想定する。この場合、時点t1がモータ1の起動開時となり、時点t2がモータ1の回転開始時となる。従って、時点t1~t3aまでの期間が初期起動期間となり、時点t3a以降が速度制御期間となる。
【0059】
時点t1では、制御回路20は、複数の起動用デューティ比の中から、モータ1の起動開始時t1のトリガ操作量L3に対応するデューティ比ET3を選択する。このデューティ比DT3は、モータ起動開始時(時点t1)のトリガ操作量L3が
図4の場合のトリガ操作量L2よりも大きいため、
図4の場合の起動用デューティ比DT1よりも大きいデューティ比である。そして、制御回路20は、モータ1の起動開始時(時点t1)に、選択した起動用デューティ比DT3の制御電圧を、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加開始する。そして、制御回路20は、モータ1が回転開始するまで、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに起動用デューティ比DT3を印加する。
【0060】
そして、時点t3aでモータ1が回転開始すると、制御回路20は、モータ1の回転速度が目標回転速度ω4に近づくように、PWM制御すべきスイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加される制御電圧H1,H3,H5のデューティ比を、デューティ比DT4まで一定の割合で上昇させる。なお、目標回転速度ω4は、トリガ操作量L4に対応する目標回転速度である。そして、時点t4aでモータ1の回転速度が目標回転速度ω4に到達すると、制御回路20は、デューティ比をデューティ比DT4に維持する。これにより、モータ1の回転速度は、回転速度ω4に維持される。
【0061】
この場合の動作では、初期起動期間で用いられる起動用デューティ比DT3は、ある程度高いデューティ比(起動用デューティ比DT1よりも大きいデューティ比)である。このため、初期起動期間でのモータ1の回転速度ω3は、或る程度高い回転速度(回転速度ω1よりも速い回転速度)である。このため、スイッチング素子Q1,Q3,Q5に印加する制御電圧H1,H3,H5のデューティ比を、起動用デューティ比DT3からデューティ比DT4に素早く(比較的短い時間)に上昇させることができる。これにより、モータ1の回転速度を、回転速度ω3から回転速度ω4に素早く上昇させることができる。この結果、使用者がトリガスイッチ8を一気に引き込んだとき、それに合わせて、モータ1の回転速度を素早く使用者が望む高速回転速度ω4に上昇させることができる。
【0062】
これに対し、
図5の点線のグラフG1,G2に示すように、比較例の電動工具(すなわち従来の電動工具)では、初期起動期間で用いられる起動用デューティ比(
図5の中段のグラフG1)は、トリガ操作量に関係なく一定のデューティ比(例えばDT1)である。このため、使用者がトリガスイッチ8を一気に引き込んでも、初期起動期間で用いられる起動用デューティ比は、デューティ比DT1である。従って、速度制御期間で用いられるデューティ比を、モータの回転開始時(t3a)からデューティ比DT4へと一定の割合で上昇させると、デューティ比は時点t5にデューティ比DT4に到達する。すなわち、比較例の電動工具での到達時点t5は、本実施形態の電動工具10の場合の到達時点t4aよりも遅い。この結果、比較例の電動工具では、使用者がトリガスイッチ8を一気に引き込んでも、モータの回転速度(
図5の下段のグラフG2)が使用者の望む回転速度ω4に到達する時点t5が本実施形態の電動工具10の場合の到達時点t4aよりも遅い。
【0063】
(変形例)
以下、上記の実施形態の変形例を説明する。上記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。また、以下に説明する変形例では、上記の実施形態と同じ点については同符号を付して説明を省略し、上記の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
(変形例1)
上記の実施形態では、制御部9は、モータ1の起動開始時にモータ1に印加する起動用電圧パターンを、モータ1の起動開始時のトリガ操作量に応じて変化させるが、モータ1の起動開始時のモータ1の目標回転速度に応じて変えてもよい。なお、モータ1の目標回転速度は、制御部9によって、トリガ操作量に応じて設定される。例えば、モータ1の目標回転速度は、トリガ操作量が大きいほど速い回転速度に設定され、トリガ操作量が小さいほど低い回転速度に設定される。このため、モータ1の起動開始時にモータ1に印加する起動用電圧パターンを、モータ1の起動開始時の目標回転速度に応じて変えても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(変形例2)
上記の実施形態では、初期起動期間にモータ1に印加される起動用電圧パターンは、一定である。すなわち、初期起動期間にPWM制御されるスイッチング素子Q1,Q3,Q5のゲートに印加される起動用デューティ比は、一定である。ただし、初期起動期間の途中で、起動用電圧パターンを変化させもよい。すなわち、初期起動期間の途中で、起動用デューティ比を変化させてもよい。
【0066】
例えば、モータ1の起動開始時に印加された起動用デューティ比によって、モータ1が全く回転しない場合を想定する。この場合は、
図6に示すように、モータ1の起動開始時(t1)から一定時間経過毎に、起動用デューティ比を徐々に(すなわち一定量ずつ)大きくなるように変化させてもよい。
図6の例では、初期起動期間の起動用デューティ比は、モータ1の起動開始時(t1)ではデューティ比DT3であり、一定時間経過後の時点t6ではデューティ比DT3a(>DT3)に変化される。なお、
図6の例では、起動用デューティ比を徐々に大きくなるように変化させるが、起動用デューティ比を徐々に小さくなるように変化させてもよい。
【0067】
この変形例によれば、初期起動期間の途中で起動用電圧パターンを変化させることで、モータ1の起動開始後にモータ1に印加される駆動電圧を、モータ1が回転し始めるのに適した電圧に調整できる。
【0068】
(変形例3)
変形例2において、初期起動期間の途中で起動用電圧パターンを変化させるとき、その起動用電圧パターンをトリガ操作量に応じて変えてもよい。すなわち、初期起動期間の途中で起動用デューティ比を変化させるとき、その起動用デューティ比をトリガ操作量に応じて変えてもよい。例えば、トリガ操作量が一気に引き込まれたときは、初期起動期間において、起動用デューティ比を、より速くより大きなデューティ比になるように変えてもよい。また、トリガ操作量がゆっくりと引き込まれたときは、初期起動期間において、起動用デューティ比を、よりゆっくりとより大きなデューティ比になるように変えてもよい。この変形例によれば、モータ1の起動開始後に、起動用電圧パターンをトリガ操作量に応じて変化させることができる。
【0069】
(まとめ)
第1の態様の電動工具(10)は、モータ(1)と、操作部(8)と、制御部(9)とを備える。モータ(1)は、先端工具(7)を駆動するブラシレス方式のモータである。操作部(8)には、モータ(1)の回転速度を制御するための操作が入力される。制御部(9)は、モータ(1)の起動開始時(t1)は、起動用電圧パターンの電圧をモータ(1)に印加する。制御部(9)は、モータ(1)の回転開始後(t3以降)は、モータ(1)の回線速度をモータ(1)の目標回転速度(ω2,ω4)に一致するように制御する。制御部(9)は、モータ(1)の起動開始時(t1)に操作部(8)に入力された操作量(L1,L3)に応じて、モータ(1)の起動開始時(t1)にモータ(1)に印加される起動用電圧パターンを変化させる。
【0070】
この構成によれば、モータ(1)の起動開始時(t1)にモータ(1)に印加される起動用電圧パターンを、モータ(1)の起動開始時(t1)の操作量(L1,L3)に応じて変化させることができる。これにより、使用者が操作部(8)をゆっくり引き込んでモータ(1)を低速回転させるときは、モータ(1)の回転速度を、モータ(1)の回転開始時(t3)からコッキングや高速回転側へのオーバーシュートを発生させることなく滑らかな低速回転に制御できる。また、使用者が操作部(8)を一気に引き込んでモータ(1)を高速回転させるときは、モータ(1)の回転速度を使用者の望む高回転速度(ω4)に素早く到達させることができる。
【0071】
第2の態様の電動工具(10)では、第1の態様において、制御部(9)は、操作部(8)の操作量(L1~L4)に応じて目標回転速度(ω1~ω4)を設定し、モータ(1)の起動開始時(t1)に設定された目標回転速度(ω1,ω3)に応じて、モータ(1)の起動開始時(t1)にモータ(1)に印加される起動用電圧パターンを変化させる。
【0072】
この構成によれば、モータ(1)の目標回転速度(ω1,ω3)に応じて、起動用電圧パターンを変化させることができる。
【0073】
第3の態様の電動工具(10)では、第1又は第2の態様において、制御部(9)は、モータ(1)の起動開始時(t1)から回転開始時(t3,t3a)までの初期起動期間の途中で起動用電圧パターンを変化させる。
【0074】
この構成によれば、初期起動期間の途中で起動用電圧パターンを変化させることで、モータ(1)の起動開始後(t1以降)にモータ(1)に印加される駆動電圧を、モータ(1)が回転し始めるのに適した電圧に調整できる。
【0075】
第4の態様の電動工具(10)では、第3の態様において、制御部(9)は、初期起動期間の途中で、操作部(8)に入力された操作量に応じて、起動用電圧パターンを変化させる。
【0076】
この構成によれば、モータ(1)の起動開始後(t1以降)に、起動用電圧パターンを、操作部(8)の操作量に応じて変化させることができる。これにより、使用者が操作部(8)を一気に引き込んでモータ(1)を高速回転させるときは、起動用電圧パターンの電圧を操作部(8)の操作量に応じて大きくできる。この結果、モータ(1)の回転開始時(t3a)を早めて、モータ(1)の回転速度を使用者の望む高回転速度(ω4)により素早く到達させることができる。
【0077】
第5の態様の電動工具(10)では、第1~第4の態様の何れか1つの態様において、制御部(9)は、異なる操作量に対応した複数の起動用電圧パターンを有する。制御部(9)は、複数の起動用電圧パターンの中から、モータ(1)の起動開始時(t1)の操作量(L1,L3)に対応した起動用電圧パターンを選択し、選択した起動用電圧パターンをモータ(1)の起動開始時(t1)にモータ(1)に印加する。
【0078】
この構成によれば、簡単な処理で、操作量に応じて起動用電圧パターンを変化させることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ
7 先端工具
8 操作部
9 制御部
10 電動工具
L1~L4 操作量
t1 モータの起動開始時
t3,t3a モータの回転開始時
ω1~ω4 目標回転速度