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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】移動体無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/16 20090101AFI20240802BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20240802BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20240802BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20240802BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H04W48/16 134
H04W4/42
H04W4/44
H04W84/00 110
B61L3/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020173332
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064609
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】伊深 和雄
(72)【発明者】
【氏名】川崎 耀
(72)【発明者】
【氏名】柴原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 文俊
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-235849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119196(WO,A1)
【文献】特開2020-28055(JP,A)
【文献】特開2015-76758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
B61L3/12
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の移動体が外部の地上無線局との間で無線通信する移動体無線通信システムにおいて、
上記移動体は、
上記地上無線局との間で伝送情報を無線通信するためのアンテナと、
走行方向に向けてn(nは2以上の整数)箇所に位置し、上記アンテナに対して上記伝送情報をそれぞれ送受信する端末装置と、
現在の走行位置を取得する走行位置取得手段と、
上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置と、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択する選択手段とを備えること
を特徴とする移動体無線通信システム。
【請求項2】
上記選択手段は、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた上記各端末装置の位置を複数回に亘り取得し、取得した各端末装置の位置(x、x、・・・、x)から下記式(1)又は(2)に基づいて算出位置Sを求め、求めた算出位置Sと、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択すること
S=a×x+a×x+・・・+a(1)
S=a×x×a×x×・・・×a(2)
(a~aは、予め決定された係数、nは端末装置の位置の取得回数)
を特徴とする請求項1記載の移動体無線通信システム。
【請求項3】
上記選択手段は、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた上記各端末装置の位置に基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm個の端末装置を選択すること
を特徴とする請求項1又は2記載の移動体無線通信システム。
【請求項4】
上記移動体内を移動可能な上記端末装置の位置を検出する端末位置検出手段を更に備え、
上記選択手段は、上記端末位置検出手段により検出された上記端末装置の位置に基づいて上記端末装置を選択すること
を特徴とする請求項3記載の移動体無線通信システム。
【請求項5】
上記選択手段は、予め取得した一又は2以上の端末装置の位置と上記地上無線局の位置との相対位置関係を参照し、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた一又は2以上の端末装置の位置が、上記地上無線局の位置との間で上記相対位置関係をほぼ満たす場合に、当該一又は2以上の端末装置を選択すること
を特徴とする請求項1~4のうち何れか1項に記載の移動体無線通信システム。
【請求項6】
走行しながら外部の地上無線局との間で無線通信する移動体において、
上記地上無線局との間で伝送情報を無線通信するためのアンテナと、
走行方向に向けてn(nは2以上の整数)箇所に位置し、上記アンテナに対して上記伝送情報をそれぞれ送受信する端末装置と、
現在の走行位置を取得する走行位置取得手段と、
上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置と、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択する選択手段とを備えること
を特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の移動体が外部の地上無線局との間で無線通信する移動体無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電車や車両等の移動体が外部の地上無線局との間で無線通信を行う移動体無線通信システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
この移動体無線通信システムは、例えば移動体が電車である場合において、電車が走行する線路に沿って予め地上無線局を点在させておく。そして、線路上を走行する電車に対して、地上無線局から伝送情報を無線通信により配信し、或いは走行する電車から発信される伝送情報を無線通信により地上無線局により送信する。これにより、電車を運転する運転士や電車内を掌握する車掌に地上無線局からの伝送情報を介して必要な情報を送ることができ、また電車内において発生した様々な事象や出来事に関する情報をこの伝送情報を介して地上無線局へ送信することが可能となる。
【0004】
特に地上無線局と電車間の無線通信はミリ波帯域を利用する場合が多い。ミリ波帯域は、直進性が強いため、サービスエリアが直線状に長い鉄道に適しており、利用できる周波数幅が広く、しかも大量の情報を短時間で伝送できる特徴がある。このため、ミリ波帯域の無線通信を活用することにより、電車の制御や車両の状態監視を行う上で多くの情報を伝送する必要があり、しかも乗客への大量の通信リソース確保と充実した情報提供を実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】立石幸也、服部鉄範、川崎邦弘、“鉄道におけるミリ波通信”、信学技報、MWP2013-48,pp.7-12,Nov.2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電車は、走行方向に向けて複数の車両が何両にも亘り連結されている。このため、上述した移動体無線通信システムを実現する場合、地上無線局と無線通信を行う上で、電車の先頭から最後尾に至るまで相対的な通信時間差が発生してしまう。この相対的な通信時間差が発生する場合、特に地上無線局からリアルタイム性の高い伝送情報を無線通信により送信する場合において不具合が生じてしまう。
【0007】
例えば、地上無線局から絶景ポイントが見える旨を伝送情報として含めて電車に配信することで電車内に設置されたディスプレイ端末に表示する等して乗客に知らせることができる。しかしながら、電車の先頭近くのディスプレイ端末と、最後尾付近のディスプレイ端末間で、地上無線局との間で相対的な位置の差が発生する場合、このようなリアルタイム性の高い情報を、全ての乗客に対して適切に配信することができなくなる。
【0008】
このため、特に電車のように走行方向に向けて長く連なる移動体において、当該走行方向に向けて複数の端末装置を設置し、その端末装置に対して地上無線局との間で伝送情報を送受信する場合において、上述した地上無線局との間で相対的な位置の差を考慮した伝送情報の配信形態を採用する必要があるが、従来においてこれを実現することができる技術は未だ提案されていないのが現状であった。
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、特に電車のように走行方向に向けて長く連なる移動体において、当該走行方向に向けて複数の端末装置を設置し、その端末装置に対して地上無線局との間で伝送情報を送受信する場合において、各端末装置に対して上述した地上無線局との間での相対的な位置の差による問題をクリアすることが可能な移動体無線通信システムを提供することにあり、これにより、リアルタイム性の高い情報を、各端末装置を介して全ての乗客に対して適切な配信を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、走行中の移動体が外部の地上無線局との間で無線通信する上で、走行方向に向けてn(nは2以上の整数)箇所に端末装置を設置し、移動体の現在の走行位置と、地上無線局の位置とに基づいて、アンテナに対して伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択する移動体無線通信システムを発明した。
【0011】
第1発明に係る移動体無線通信システムは、走行中の移動体が外部の地上無線局との間で無線通信する移動体無線通信システムにおいて、上記移動体は、上記地上無線局との間で伝送情報を無線通信するためのアンテナと、走行方向に向けてn(nは2以上の整数)箇所に位置し、上記アンテナに対して上記伝送情報をそれぞれ送受信する端末装置と、現在の走行位置を取得する走行位置取得手段と、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置と、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択する選択手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る移動体無線通信システムは、第1発明において、上記選択手段は、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた上記各端末装置の位置を複数回に亘り取得し、取得した各端末装置の位置(x、x、・・・、x)から下記式(1)又は(2)に基づいて算出位置Sを求め、求めた算出位置Sと、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択すること
S=a×x+a×x+・・・+a(1)
S=a×x×a×x×・・・×a(2)
(a~aは、予め決定された係数、nは端末装置の位置の取得回数)
を特徴とする。
【0013】
第3発明に係る移動体無線通信システムは、第1発明又は第2発明において、上記選択手段は、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた上記各端末装置の位置に基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm個の端末装置を選択することを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る移動体無線通信システムは、第3発明において、上記移動体内を移動可能な上記端末装置の位置を検出する端末位置検出手段を更に備え、上記選択手段は、上記端末位置検出手段により検出された上記端末装置の位置に基づいて上記端末装置を選択することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る移動体無線通信システムは、第1発明~第4発明の何れかにおいて、上記選択手段は、予め取得した一又は2以上の端末装置の位置と上記地上無線局の位置との相対位置関係を参照し、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置に応じた一又は2以上の端末装置の位置が、上記地上無線局の位置との間で上記相対位置関係をほぼ満たす場合に、当該一又は2以上の端末装置を選択することを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る移動体は、走行しながら外部の地上無線局との間で無線通信する移動体において、上記地上無線局との間で伝送情報を無線通信するためのアンテナと、走行方向に向けてn(nは2以上の整数)箇所に位置し、上記アンテナに対して上記伝送情報をそれぞれ送受信する端末装置と、現在の走行位置を取得する走行位置取得手段と、上記走行位置取得手段により取得された現在の走行位置と、上記地上無線局の位置とに基づいて、上記アンテナに対して上記伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置を選択する選択手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地上無線局により近接する端末装置にのみ伝送情報を配信し、逆に近接しない端末装置には伝送情報を配信しない制御を行う。これにより、地上無線局により近接する端末装置のみにこのようなリアルタイム性の高い伝送情報を配信することができることから、地上無線局との間で相対的な位置の差による不具合を解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明を適用した移動体無線通信システムの全体概略図である。
図2図2は、移動体内部のブロック構成を示す図である。
図3図3は、本発明を適用した移動体無線通信システムの動作について説明するための図である。
図4図4は、本発明を適用した移動体無線通信システムの動作について説明するための他の図である。
図5図5は、伝送情報を同時に送受信する端末装置の数mに対する信号配信パターンの数をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した移動体無線通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0020】
図1は、本発明を適用した移動体無線通信システム1の全体概略図である。移動体無線通信システム1は、走行方向Aに向かって走行する移動体2と、移動体の走行方向Aに沿って点在させてなる複数の地上無線局3と、各地上無線局3との間で有線又は無線により通信可能な中央制御局4とを備えている。
【0021】
移動体2は、以下の説明において線路5上を走行する電車を例に上げて説明をするが、これに限定されるものではなく、モノレール、乗用車やバス、トラック等の車両、二輪車、航空機等、あらゆる移動体が含まれる。移動体2は、走行方向Aに向けて互いに異なるn箇所に位置する複数の端末装置6が内部に設定されている。
【0022】
地上無線局3は、移動体2が電車であると仮定した場合、その電車が走行する線路5の路肩等に配置されている固定基地局である。地上無線局3は、走行する移動体2に対して伝送情報を無線通信により送信する。また地上無線局3は、走行する移動体2から伝送情報を無線通信により受信する。地上無線局3は、移動体2との無線通信につき、ミリ波帯域を利用してもよい。この無線通信についてミリ波帯域を利用することにより、大量の情報を短時間で伝送することができ、電車の制御や車両の状態監視を行う上で多くの情報を伝送する必要ができ、移動体2に設置された端末装置6による大量の通信リソース確保と充実した情報提供を実現することが可能となる。この地上無線局3は、マイクロセルと呼ばれる小規模のサービスエリアを構成してもよく、それぞれから移動体2に対してサービスエリア特有のコンテンツを伝送情報として送信するようにしてもよい。
【0023】
中央制御局4は、地上無線局3から送信されてくる情報を受信してこれを蓄積するサーバである。地上無線局3では、多数の移動体2からの情報が送られ、当該情報が中央制御局4へ送られる。このため、中央制御局4は、各移動体2において取得された情報を一極に集中させることができる。中央制御局4は、このような情報を一極集中させることで、移動体2により取得された、各地域、各時間帯におけるより詳細な状況を示す情報を一つのデータベースに纏め上げることができ、様々な用途へ活用することが可能となる。
【0024】
また中央制御局4は、移動体2に対して配信すべきコンテンツや情報を地上無線局3へ送信する。これにより、地上無線局3は、中央制御局4から送信されてきた情報等を伝送情報化し、無線通信を介して移動体2へ配信することができる。特に各地における災害情報やリアルタイム性の高い情報等は、中央制御局4において一括して取得又は生成し、必要に応じてその情報等を地上無線局3の各拠点ごとにアレンジした方が配信の利便性を高くすることができる。
【0025】
次に、移動体2の詳細な構成について説明をする。図2は、移動体2内部のブロック構成を示している。
【0026】
移動体2は、アンテナ20と、このアンテナ20に対してそれぞれ情報の送受信が可能な端末装置6a~6cと、アンテナ20に対して伝送情報を送受信する端末装置を選択する選択部24と、選択部24に接続された端末位置検出部22及び走行位置取得部23と、移動体2自体の運転を制御するための運転制御部21とを備えている。
【0027】
端末装置6は、移動体2の内部において走行方向Aに向けた互いに異なる位置において予め配設された電子機器であり、例えば、スマートフォン、タブレット型端末、PC、ディスプレイ端末等、乗客や乗員に情報を表示し、或いは命令を入力するためのユーザインタフェースが実装された機器で構成されているが、これに限定されるものではない。この端末装置6は、ユーザインタフェースが一切が設けられていない各種電子機器やデバイス、センサ等で構成されていてもよい。また端末装置6は、移動体2の内部に予め配設されているものに限定されることなく、乗客や乗員が携帯するモバイル型の端末で構成されるものであってもよい。このモバイル型の端末の例としては、スマートフォン、タブレット型端末、ノートPC、ウェアラブル端末等が挙げられる。
【0028】
ちなみに、この端末装置6が予め配設されて固定されている場合、各端末装置6の走行方向Aにおける位置に関する位置情報は既知となっており、これらが全て選択部24に記憶されていることが前提となる。これに対して、端末装置6がモバイル型の端末で構成される場合、乗客等の乗車位置に応じて端末装置6の走行方向Aにおける位置が都度異なるため、後述する端末位置検出部22を介して各端末装置6の位置情報を都度取得する。
【0029】
運転制御部21は、移動体2の運転を制御するあらゆる構成を含み、ハンドル、アクセル、ブレーキ、ギア等で構成され、運転士による運転操作が移動体2の移動に反映される。この運転制御部21は、自動操縦、自動運転の機能が実装される場合もあることは勿論である。
【0030】
端末位置検出部22は、上述したように端末装置6がモバイル型の端末で構成される場合において、乗客等の乗車位置に応じた端末装置6の走行方向Aにおける位置を取得するためのデバイスである。この端末位置検出部22は、例えばビーコンを通じてモバイル型の端末装置6の位置を検出するようにしてもよい。端末位置検出部22は、モバイル型の端末装置6の位置を検出した場合に、これを選択部24へ送信する。
【0031】
走行位置取得部23は、この運転制御部21による運転により移動した移動体2の現時点における走行位置を取得するものである。この取得すべき走行位置は、走行方向Aに長く連なる移動体2のいかなる位置にするかは、都度システム側において設定してもよく、或いは移動体2の先頭や最後尾、先頭から2両目の車両の先頭等、少なくとも1箇所は設定しておく必要がある。走行位置取得部23は、移動体2の走行位置を例えばGPS(Global Positioning System)を利用することで取得するようにしてもよいし、ビーコンを通じて取得してもよいし、キャリア基地局としての地上無線局3からの電波による位置測位により取得してもよい。走行位置取得部23は、現在の走行位置を連続して取得し続けるようにしてもよい。その走行位置を取得する時間間隔は、秒単位、ミリ秒単位、マイクロ秒単位、ナノ秒、ピコ秒単位等、いかなる時間間隔であってもよい。走行位置取得部23は、このようにして取得した移動体2における現時点における走行位置を取得する都度、選択部24へ送信する。
【0032】
アンテナ20は、地上無線局3からミリ波帯域の伝送情報を含む無線信号を受信し、これを電気信号に変換する。アンテナ20は、この電気信号に変換した伝送情報を各端末装置6へ配信する。またアンテナ20は、端末装置6から送信されてくる電気信号からなる伝送情報を無線信号に変換し、これを地上無線局3へ送信する。
【0033】
選択部24は、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報を同時に送信する1又は2以上の端末装置6を選択する。この伝送情報を送信する端末装置6を選択する方法としては、端末装置6とアンテナ20とをそれぞれ接続する接続回路をオン又はオフを切り替えるようにしてもよいし、送信すべき伝送情報を一度選択部24が受信し、選択部24が自ら選択した端末装置6に改めて配信するようにしてもよい。選択部24は、アンテナ20から端末装置6に対して伝送情報が近距離無線通信により配信される場合には、これを制御することにより、送信すべき伝送情報を選択するようにしてもよい。
【0034】
選択部24は、端末装置6において生成された伝送情報をアンテナ20を介して地上無線局3へ送信する際に、その伝送情報を同時に送信する1又は2以上の端末装置6を選択することも行う。この伝送情報の送信を受け付ける端末装置6を選択する方法としては、端末装置6とアンテナ20とをそれぞれ接続する接続回路をオン又はオフを切り替えるようにしてもよいし、端末装置6から送信される伝送情報を一度選択部24が受信し、選択部24が自ら選択した端末装置6の伝送情報のみをアンテナ20へ送信するようにしてもよい。選択部24は、端末装置6から伝送情報が近距離無線通信により送信される場合には、これを制御することで、伝送情報を送信する端末装置6を選択するようにしてもよい。
【0035】
更に選択部24は、各地上無線局3の走行方向Aにおける位置が記憶されている。選択部24は、走行位置取得部23により取得された移動体2の現在の走行位置が送られてくる。選択部24は、端末装置6の走行方向Aにおける位置に関する位置情報は既知となっており、これらを全て記憶しているか、或いは端末位置検出部22を介して取得することができる。このような走行位置取得部23により取得された移動体2の現在の走行位置と、端末装置6の走行方向Aにおける位置と、地上無線局3の位置とに基づいて、アンテナ20に対して伝送情報を同時に送受信するm個の端末装置6を選択する。以下、その選択部24による詳細な動作について説明をする。
【0036】
図3(a)~図3(c)は、本発明を適用した移動体無線通信システム1の動作を説明する上で、移動体2における各端末装置6a~6cとアンテナ20、地上無線局3との位置関係のみを抽出して記載したものである。
【0037】
移動体2は、走行方向Aに向けて走行する過程で、ある地上無線局3へ接近してきたものとする。この地上無線局3からアンテナ20を介して各端末装置6a~6cに伝送情報を送信する場合、選択部24は、走行位置取得部23により取得された移動体2の現在の走行位置を把握する。移動体2の実際の地図上の走行位置を取得することができれば、各端末装置6a~6cにおける移動体2内における位置情報を既に取得しており、既知であることから、各端末装置6a~6cにおける走行方向Aにおける実際の地図上の位置を取得することができる。
【0038】
また選択部24は、各地上無線局3の走行方向Aにおける実際の地図上の位置が記憶されていることが前提となっている。このため、選択部24は、各端末装置6a~6cにおける走行方向Aにおける実際の地図上の位置と、地上無線局3の走行方向Aにおける実際の地図上の位置との位置関係を把握することができる。そして、この各端末装置6a~6cと、地上無線局3の走行方向Aの位置関係を、走行位置取得部23により移動体2の位置を検出する都度、把握することができる。走行位置取得部23による移動体2の現在の位置検出を時系列的に連続して取得し続けることにより、各端末装置6a~6cと、地上無線局3の走行方向Aの位置関係を時系列的に連続して把握することが可能となる。
【0039】
選択部24は、この時系列的に連続して把握した位置関係が例えば図3(a)に示すように、地上無線局3に対して端末装置6aが最も近い場合、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報の配信先を端末装置6aのみ選択し、他の端末装置6b、6cは配信先として選択しないようにする。選択部24は、この時系列的に連続して把握した位置関係が例えば図3(b)に示すように、地上無線局3に対して端末装置6bが最も近い場合、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報の配信先を端末装置6bのみ選択し、他の端末装置6a、6cは配信先として選択しないようにする。選択部24は、この時系列的に連続して把握した位置関係が例えば図3(c)に示すように、地上無線局3に対して端末装置6cが最も近い場合、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報の配信先を端末装置6cのみ選択し、他の端末装置6a、6bは配信先として選択しないようにする。
【0040】
つまり、移動体2が走行方向Aへ移動していく過程で、地上無線局3に近接する端末装置6も端末装置6a~端末装置6cへと変化する。そして、地上無線局3に近接する端末装置6が端末装置6a~端末装置6cへ変化する過程で、当該地上無線局3から送信する伝送情報の配信先となる端末装置6の選択を入れ替える。つまり、地上無線局3により近接する端末装置6にのみ伝送情報を配信し、逆に近接しない端末装置6には伝送情報を配信しない制御を行うことで、本発明は以下に説明する優れた効果を奏する。
【0041】
例えば地上無線局3から絶景ポイントが見える旨を伝送情報として含めて移動体2に配信し、これを各端末装置6a~6cに表示する等して乗客に知らせるサービスを行う場合を考える。このような地上無線局3からリアルタイム性の高い伝送情報を配信する場合、端末装置6a~6cとの間では、走行方向Aにおいて位置が互い相違するため、これを同時に配信した場合には、地上無線局3との間で相対的な位置の差による不具合が生じる。つまり、端末装置6cがちょうど絶景ポイントの位置にある場合、端末装置6aはその絶景ポイントを通り過ぎてしまうことが起こり得る。
【0042】
しかしながら、本発明によれば、地上無線局3により近接する端末装置6にのみ伝送情報を配信し、逆に近接しない端末装置6には伝送情報を配信しない制御を行う。これにより、地上無線局3により近接する端末装置6のみにこのようなリアルタイム性の高い伝送情報を配信することができることから、地上無線局3との間で相対的な位置の差による不具合を解消することが可能となる。
【0043】
特に上述した効果を更に増強するためには、取得した移動体2の現在の走行位置に応じた一の端末装置6の位置が、地上無線局3の位置と略同一である場合に、当該一の端末装置6を選択するようにしてもよい。例えば、図3(a)に示すように、端末装置6aの位置が地上無線局3の位置と略同一である場合に、当該端末装置6aが選択されている。図3(b)に示すように、端末装置6bの位置が地上無線局3の位置と略同一である場合に、当該端末装置6bが選択されている。図3(c)に示すように、端末装置6cの位置が地上無線局3の位置と略同一である場合に、当該端末装置6cが選択されている。
【0044】
このように、取得した移動体2の現在の走行位置に応じた一の端末装置6の位置が、地上無線局3の位置と略同一である場合に、当該一の端末装置6を選択することで、地上無線局3に最近接する端末装置6との間で時間的なずれを無くした、よりリアルタイム性の高い伝送情報の配信を実現できる。
【0045】
なお、上述した例では、地上無線局3により近接する端末装置6にのみ伝送情報を配信し、逆に近接しない端末装置6には伝送情報を配信しない制御を行う場合を例に挙げて説明をしたが、これに限定されるものではなく、地上無線局3に対して最も離間している端末装置6にのみ伝送情報を配信し、逆に近接する端末装置6には伝送情報を配信しない制御を行うようにしてもよい。つまり、本発明によれば、移動体2の現在の走行位置を介して把握可能な各端末装置6の位置と、地上無線局3の位置とに基づくものであれば、アンテナ20から伝送情報を受信するいかなる端末装置6を選択するようにしてもよい。
【0046】
これに加えて、本発明によれば、移動体2の走行位置の検出を連続して取得し続け、この連続して取得した複数の走行位置に基づいて、伝送情報を送受信する端末装置6を選択し、切り替えるようにしてもよい。
【0047】
かかる場合において、仮にある期間に亘り、複数の走行位置を取得した場合、各走行位置に応じた各端末装置6における移動体2内における位置情報も同様に取得することができる。仮に所定期間内に2つの走行位置を取得した場合には、各走行位置に応じた端末装置6における移動体2内における位置情報P1、P2を取得することができる。この取得した端末装置6の位置情報P1、P2を演算式に基づいて演算する。これを一の端末装置6aのみならず、他の端末装置6b、6cについても同様に実行する。そして、各端末装置6の位置情報の演算結果と、地上無線局3との位置関係に基づいて、その地上無線局6との間で伝送情報を送受信する端末装置6を選択するようにしてもよい。この演算式は従来のいかなる演算式を利用してもよいが、より単純化し、各端末装置の位置情報P1、P2を平均化した位置を演算結果として出力してもよい。また演算式は、位置情報を平均化する以外に、例えば最初に取得した位置情報、又は後に取得した位置情報のみを採用する式で構成されていてもよいし、位置情報P1、P2の何れかに所望の重み続けを設定した演算式で構成してもよい。また走行位置を所定期間内に3以上取得した場合には、同様に各端末装置6の位置情報も3以上取得できることになる。かかる場合には、この3以上の位置情報を演算式に導入し、演算結果に基づいて各端末位置6の位置を把握するようにしてもよい。
【0048】
このとき、現在の走行位置に応じた各端末装置6の位置を複数回に亘り取得し、取得した各端末装置6の位置(x、x、・・・、x)から下記式(1)に基づいて算出位置Sを求めるようにしてもよい。
S=a×x+a×x+・・・+a(1)
(a~aは、予め決定された係数、nは端末装置6の位置の取得回数)
【0049】
そして、求めた算出位置Sと、地上無線局3の位置とに基づいて、アンテナ20に対して伝送情報を同時に送受信するm(<n)個の端末装置6を選択する。
【0050】
例えば、単位時間について各端末装置6について単位時間当たり、2回に亘り位置を取得する場合には、上記(1)式は、S=a×x+a×xで表される。仮に各端末装置6の位置x、xの平均を求めるのであれば、a、aともに1/2、換言すれば1/nとなる。また、各端末装置6の位置x、xの何れか一方を採用するのであれば、a又はaの何れか一方が0となる。更に、各端末装置6の位置x、xに所望の重み付けをするのであれば、aとaにそれぞれ重み付けを予め設定することができる。
【0051】
ここでa~aは、予めシステム側、或いはユーザ側において決定しておくことにより、各車両について、統一した運用の下で端末装置6の算出位置Sを求めることができる。
【0052】
なお、本発明は、算出位置Sの算出は、上述した実施の形態に限定されるものでは無く、下記(2)式に基づくものであってもよい。
S=a×x×a×x×・・・×a(2)
かかる(2)を利用しても同様に、算出位置Sを求めることが可能となる。
【0053】
図4(a)、(b)は、地上無線局3から伝送情報を受信する端末装置6を1つではなく2つ選択する例を示している。
【0054】
選択部24は、この時系列的に連続して把握した位置関係が例えば図4(a)に示すように、地上無線局3に対して端末装置6a、6bがより近い場合、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報の配信先を端末装置6a、6bを選択し、他の端末装置6cは配信先として選択しないようにする。選択部24は、この時系列的に連続して把握した位置関係が例えば図4(b)に示すように、地上無線局3に対して端末装置6b、6cがより近い場合、地上無線局3からアンテナ20を介して受信した伝送情報の配信先を端末装置6b、6cを選択し、他の端末装置6aは配信先として選択しないようにする。
【0055】
移動体2が走行方向Aへ移動し、地上無線局3に近接する端末装置6も端末装置6a~端末装置6cへと変化する過程で、当該地上無線局3から送信する伝送情報の配信先となる2つの端末装置6を選択する。同じリアルタイム性の高い伝送情報であっても、例えば車内運転広告の更新や、障害物に関する情報、更には天候や災害に関する情報は、伝送情報を配信する端末を都度1つずつ絞らなくても2以上まとめて配信してもよい場合があり、係るケースにも本発明を適用することが可能となる。
【0056】
この図4に示す例においても同様に、取得した移動体2の現在の走行位置に応じた何れか一の端末装置6の位置が、地上無線局3の位置と略同一である場合に、上述した2以上の端末装置6を選択するようにしてもよい。例えば、図4(a)に示すように、端末装置6bの位置が地上無線局3の位置と略同一である場合に、端末装置6a、端末装置6bを選択するようにしてもよい。図4(b)に示すように、端末装置6cの位置が地上無線局3の位置と略同一である場合に、端末装置6b、端末装置6cが選択されるようにしておよい。
【0057】
これに加えて、本発明によれば、端末装置6の位置と地上無線局3の位置との相対位置関係を予め取得しておくようにしてもよい。ここでいう相対位置関係は、端末装置6の位置と地上無線局3の位置がA方向において略同一である場合に限定されるものでは無く、互いに斜め方向とされていてもよい。例えば図3(a)に示すように、端末装置6bと、地上無線局3との相対位置関係は、斜め方向となっている。このような互いに斜め方向の相対位置関係であってもよいし、例えば図3(a)に示す端末装置6aと地上無線局3の相対位置関係のようにA方向において略同一である場合であってもよい。相対位置関係は、端末装置6の位置と地上無線局3の位置との位置座標の関係やこれらの位置座標間を結ぶ線分の角度等で規定されるものであってもよい。
【0058】
このような相対位置関係を予め取得しておき、実際に端末装置6の選択をする場合には、この取得した相対位置関係を参照する。そして、新たに取得した現在の走行位置に応じた一の端末装置6の位置が、地上無線局3の位置との間で、参照する相対位置関係をほぼ満たす場合に、当該一の端末装置を選択するようにしてもよい。このとき、新たに取得した一の端末装置6のみならず、他の端末装置6も選択するようにしてもよい。
【0059】
これに加えて、2以上の端末装置6と地上無線局3の相対位置関係を予め取得しておくようにしてもよい。例えば、2つの端末装置6であれば、地上無線局3との間でそれぞれ位置座標間を結ぶことにより、その相対位置関係は三角形の形状を介して取得することもできる。このような相対位置関係を予め取得しておき、実際に端末装置6の選択をする場合には、上述した2以上の端末装置6と地上無線局3からなる相対位置関係を参照する。これと共に新たに取得した現在の走行位置に応じた2以上の端末装置6の位置を取得する。そして、新たに取得した現在の走行位置に応じた2以上の端末装置6の位置が、地上無線局3の位置との間で、参照する相対位置関係をほぼ満たす場合に、当該2以上の端末装置6を選択するようにしてもよい。この選択する端末装置6の数は、地上無線局3との間で相対的位置関係を取得した端末装置6の数に応じたものとなる。
【0060】
上述した例では、2つの端末装置6と地上無線局3との間である三角形の形状からなる相対位置関係を取得したのであれば、実際に端末装置6の選択をする場合には、これに応じて2つの端末装置6と地上無線局3を取得する。そして、予め取得した三角形の形状からなる相対位置関係を参照し、新たに取得した2つの端末装置6と地上無線局3がこれをほぼ満たすか否かを確認する。
【0061】
地上無線局3と伝送情報を同時に送受信する端末装置6は、1又は2以上であればよい。端末装置6の総数がnであり、走行方向Aに向けてn箇所に亘りこれらが配置されている場合、地上無線局3と伝送情報を同時に送受信する端末装置6は、m(<n)個とされていればよい。
【0062】
上述した例では、地上無線局3から伝送情報をアンテナ20を介して受信し、これを配信する各端末装置6を選択する場合を例に取り説明をしたが、これに限定されるものではない。逆にアンテナ20を介して地上無線局3へ伝送情報を送信する各端末装置6を選択する場合も同様である。例えば、各端末装置6において取得した各センシング情報や、各端末装置6側においてコンテンツが上手く受信できていない旨を伝送情報化し、地上無線局3に送信したい場合、上述と同様に移動体2の現在の走行位置を介して把握可能な各端末装置6の位置と、地上無線局3の位置とに基づくものであれば、アンテナ20から伝送情報を受信するいかなる端末装置6を選択するようにしてもよいことは勿論である。
【実施例1】
【0063】
図5は、伝送情報を同時に送受信する端末装置6の数mに対する信号配信パターンの数をシミュレーションした結果を示している。端末装置6の総数nが8と16の場合において、それぞれ伝送情報を同時に送受信する端末装置6の数mを上げた場合、信号配信パターンが増加することが示されている。特に端末装置の総数nが大きいほど、その信号配信パターン数の増加が顕著になることが示されている。
【符号の説明】
【0064】
1 移動体無線通信システム
2 移動体
3 地上無線局
4 中央制御局
5 線路
6 端末装置
20 アンテナ
21 運転制御部
22 端末位置検出部
23 走行位置取得部
24 選択部
図1
図2
図3
図4
図5