(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】撤去方法、及び撤去システム
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E01D24/00
(21)【出願番号】P 2021015739
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596069911
【氏名又は名称】盟和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】井原 啓知
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真康
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-102900(JP,A)
【文献】特開2020-204920(JP,A)
【文献】特開2005-273312(JP,A)
【文献】特開平06-049810(JP,A)
【文献】特開平02-074704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる軌道に対して横方向に延びると共に、前記長手方向に互いに離間して複数設けられる第1の桁と、及び複数の前記第1の桁間に配置される第2の桁と、を備える撤去対象物を撤去する撤去方法であって、
前記軌道の前記横方向の外側の構造物に支持されて前記長手方向に延びる走行路、及び当該走行路に沿って移動する撤去装置を準備する準備工程と、
前記撤去装置を撤去区間の前記長手方向における一方の端部へ移動させる移動工程と、
前記撤去区間の前記一方の端部において、前記撤去装置で前記撤去対象物の撤去桁を保持して、搬送台車へ載せる撤去工程と、
前記撤去桁を受けた前記搬送台車が、前記軌道に沿って、前記長手方向における他方側へ移動することで、前記撤去桁を撤去位置まで搬送する搬送工程と、を備え、
前記撤去区間の前記一方の端部側から順に前記撤去桁を撤去するように、前記撤去工程、及び前記搬送工程を繰り返
し、
前記走行路を支持する前記構造物は、前記軌道の前記横方向の外側に設けられる土留めである、撤去方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記軌道の上側の構造物との接触を回避できる位置に、前記撤去装置が配置される、請求項1に記載の撤去方法。
【請求項3】
前記準備工程では、前記横方向の外側の構造物との接触を回避できる位置に、前記撤去装置が配置される、請求項1又は2に記載の撤去方法。
【請求項4】
前記撤去対象物には、前記長手方向から見て、前記走行路を支持する支持部材に対して、前記横方向の両端部が重なる前記第1の桁が設けられており、
前記第1の桁の前記横方向における一方の端部と重なる支持部材は、当該端部に対して、長手方向の一方側に配置され、
前記第1の桁の前記横方向における他方の端部と重なる支持部材は、当該端部に対して、長手方向の他方側に配置される、請求項1~3の何れか一項に記載の撤去方法。
【請求項5】
前記撤去対象物には、前記長手方向から見て、前記走行路を支持する支持部材に対して、前記横方向の端部が重なる前記第1の桁が設けられており、
当該第1の桁の上端に対して、前記走行路の下端が上方に配置されるように、前記走行路の上下方向の寸法を調整する、請求項1~4の何れか一項に記載の撤去方法。
【請求項6】
新たな線路を地下に設けるために、既設の線路を支持する工事桁、及びかんざし桁を撤去する撤去システムであって、
前記既設の線路の横方向の外側の構造物に支持されて長手方向に延びる走行路と、
前記走行路に沿って移動し、前記工事桁及びかんざし桁を撤去する撤去装置と、
前記既設の線路に沿って移動し、撤去装置で撤去された前記工事桁及びかんざし桁を搬送する搬送台車と、を備え
、
前記走行路を支持する前記構造物は、前記既設の線路の前記横方向の外側に設けられる土留めである、撤去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撤去方法、及び撤去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、長手方向に延びる軌道を形成するための構造物が構築される場合がある。特許文献1では、地下に軌道が構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、構築された軌道は、例えば、新たな軌道を近くに作り直す場合などでは、既設の軌道に係る部材を撤去する必要が生じる。軌道の周辺環境に広いスペースが存在する場合などは、大型のクレーンを軌道の横側に配置するなどして、容易に既設の部材を撤去することができる。しかしながら、軌道の周辺環境に広いスペースがない場合などは、大型のクレーンを配置することができないため、撤去が困難になることがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、周辺の状況に関わらず、撤去対象物を容易に撤去することができる撤去方法、及び撤去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撤去方法は、長手方向に延びる軌道に対して横方向に延びると共に、長手方向に互いに離間して複数設けられる第1の桁と、及び複数の第1の桁間に配置される第2の桁と、を備える撤去対象物を撤去する撤去方法であって、軌道の横方向の外側の構造物に支持されて長手方向に延びる走行路、及び当該走行路に沿って移動する撤去装置を準備する準備工程と、撤去装置を撤去区間の長手方向における一方の端部へ移動させる移動工程と、撤去区間の一方の端部において、撤去装置で撤去対象物の撤去桁を保持して、搬送台車へ載せる撤去工程と、撤去桁を受けた搬送台車が、軌道に沿って、長手方向における他方側へ移動することで、撤去桁を撤去位置まで搬送する搬送工程と、を備え、撤去区間の一方の端部側から順に撤去桁を撤去するように、撤去工程、及び搬送工程を繰り返す。
【0007】
本発明に係る撤去方法において、移動工程では、撤去装置を撤去区間の長手方向における一方の端部へ移動させる。また、撤去工程では、撤去区間の一方の端部において、撤去装置で撤去対象物の撤去桁を保持して、搬送台車へ載せる。これによって、撤去区間の一方の端部に存在する撤去桁が、搬送台車にて搬送可能な状態となる。そして、搬送工程では、撤去桁を受けた搬送台車が、軌道に沿って、長手方向における他方側へ移動することで、撤去桁を撤去位置まで搬送する。これにより、撤去区間から撤去桁を撤去することができる。そして、撤去区間の一方の端部側から順に撤去桁を撤去するように、撤去工程、及び搬送工程を繰り返す。すると、撤去対象物を構成する第1の桁、及び第2の桁は、撤去区間の一方側から、順次撤去されていく。このように、撤去装置及び搬送台車のシンプルな動きの繰り返しによって、容易に撤去対象物を撤去することができる。ここで、撤去装置は、軌道の横方向の外側の構造物に支持された走行路に沿って、移動するものである。また、搬送台車は、軌道に沿って移動するものである。このように、撤去に用いられる装置は、大型のクレーンなどのように、軌道の周辺環境に広いスペースが必要となる装置ではなく、軌道に沿った限られたスペースがあれば、周囲の状況によらず、撤去作業が可能となる装置である。以上より、軌道の周辺の状況に関わらず、容易に撤去対象物を撤去することができる。
【0008】
準備工程では、軌道の上側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置が配置されてよい。この場合、撤去装置は、上側の構造物との接触を回避しながら、上下方向の限られたスペースにて、撤去作業を行うことができる。
【0009】
準備工程では、横方向の外側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置が配置されてよい。この場合、撤去装置は、横方向の外側の構造物との接触を回避しながら、横方向の限られたスペースにて、撤去作業を行うことができる。
【0010】
撤去対象物には、長手方向から見て、走行路を支持する支持部材に対して、横方向の両端部が重なる第1の桁が設けられており、第1の桁の横方向における一方の端部と重なる支持部材は、当該端部に対して、長手方向の一方側に配置され、第1の桁の横方向における他方の端部と重なる支持部材は、当該端部に対して、長手方向の他方側に配置されてよい。この場合、第1の桁の両側の端部が支持部材から遠ざかるように第1の桁を回転させることで、支持部材との干渉を回避することができる。
【0011】
撤去対象物には、長手方向から見て、走行路を支持する支持部材に対して、横方向の端部が重なる第1の桁が設けられており、当該第1の桁の上端に対して、走行路の下端が上方に配置されるように、走行路の上下方向の寸法を調整してよい。この場合、走行路の上端の上下方向の位置の変動を抑制しながら、第1の桁を走行路の下方に配置して互いの干渉を回避することができる。
【0012】
本発明に係る撤去システムは、新たな線路を地下に設けるために、既設の線路を支持する工事桁、及びかんざし桁を撤去する撤去システムであって、既設の線路の横方向の外側の構造物に支持されて長手方向に延びる走行路と、走行路に沿って移動し、工事桁及びかんざし桁を撤去する撤去装置と、既設の線路に沿って移動し、撤去装置で撤去された工事桁及びかんざし桁を搬送する搬送台車と、を備える。
【0013】
撤去装置は、既設の線路の横方向の外側の構造物に支持された走行路に沿って、移動するものである。また、搬送台車は、既設の線路に沿って移動するものである。このように、撤去に用いられる装置は、大型のクレーンなどのように、軌道の周辺環境に広いスペースが必要となる装置ではなく、既設の線路に沿った限られたスペースがあれば、周囲の状況によらず、撤去作業が可能となる装置である。新たな線路を地下に設ける場合は、限られたスペースにて撤去作業を行うことが求められるが、当該状況にも対応することが可能となる。以上より、軌道の周辺の状況に関わらず、容易に撤去対象物を撤去することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周辺の状況に関わらず、撤去対象物を容易に撤去することができる撤去方法、及び撤去システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る撤去システムを示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る撤去システムを示す正面図である。
【
図3】長手方向の他の箇所における撤去システムを示す正面図である。
【
図4】かんざし桁と支持部材との関係を模式的に示す模式図である。
【
図6】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【
図7】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【
図8】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【
図9】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【
図10】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【
図11】撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る撤去システム100を示す平面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る撤去システム100を示す正面図である。撤去システム100は、新たな線路RW2(
図2参照)を地下に設けるために、既設の線路RW1(軌道)を構成する工事桁2(第2の桁)、及びかんざし桁3(第1の桁)を撤去するシステムである。撤去システム100においては、既設の線路RW1が撤去対象物101となる。なお、線路RW1が延びる方向を長手方向D1と称する。長手方向D1と直交する水平方向を横方向D2と称する。なお、長手方向D1においては特に前後が限定されるものではないが、本明細書では、説明のために長手方向D1の一方を「前」とし、他方を「後」とする。詳細は後述するが、撤去の順序は後側から前側へ進んでいく。また、当該前後関係を基準として、横方向D2について「右」「左」を設定する。
【0018】
まず、撤去システム100の撤去対象物101について説明する。
図1に示すように、撤去システム100の撤去対象物101は、レール4と、当該レール4を支持する工事桁2及びかんざし桁3と、を備える。本実施形態では、二車線の線路RW1が設けられている。レール4は、各線路RW1に対して一対ずつ設けられている。かんざし桁3は、長手方向D1に延びる線路RW1に対して横方向D2に延びると共に、長手方向D1に互いに離間して複数設けられる。工事桁2は、複数かんざし桁3間に配置される。工事桁2は、二車線の線路RWに対応して、横方向D2に二列に並ぶように配置されている。工事桁2は、一対のかんざし桁3間に架け渡されており、各かんざし桁3の側面において、長手方向D1の端部が支持されている。一対のレール4は、かんざし桁3の上端より高い位置にて、工事桁2の上端に固定されている(
図2参照)。
【0019】
図2に示すように、かんざし桁3は、既設の線路RW1に対応する高さ位置にて、横方向D2に延びている。かんざし桁3の横方向D2の端部3aは、それぞれ柱部6によって下方から支持されている。なお、かんざし桁3の下側の空間であって、一対の柱部6間の空間に、新設の線路RW2が設けられる。線路RW1の横方向D2の両外側には、長手方向D1に沿って延びる構造物7が設けられている。構造物7は、線路RW1の周囲に設けられる躯体や土留めなどの既設物である。構造物7は、かんざし桁3の両端部3aから、横方向D2の外側に離間した位置に設けられる。また、線路RW1の周囲の既設物として、電線の支持体8が設けられる。支持体8は、かんざし桁3よりも横方向D2の両外側の位置にて上方へ延びる柱8aと、一対の柱8aの上端にて、横方向D2に架け渡されるビーム8bと、を備える。
【0020】
撤去システム100は、走行路11と、撤去装置20と、搬送台車30(
図1参照)と、を備える。撤去システム100は、既設の撤去対象物101、構造物7、及び支持体8に対して、撤去対象物101の撤去のために設けられる。
【0021】
走行路11は、既設の線路RW1の横方向D2の両外側の構造物7に支持されて長手方向D1に延びる部材である。走行路11は、既設の線路RW1に対応する高さ位置にて、構造物7付近の位置で長手方向D1に延びている(
図1も参照)。本実施形態では、走行路11は、上面11aが、撤去装置20が走行するための走行面として構成される。走行路11は、支持部材12によって下方から支持されている。支持部材12は、構造物7に固定された状態で、横方向D2における内側へ延びるように設けられている。支持部材12は、長手方向D1において、互いに間隔をあけて複数設けられている(
図1参照)。これにより、支持部材12は、上単に走行路11を載置させた状態で当該走行路11を支持することができる。
図1に示す走行路11及び支持部材12は、横方向D2において、かんざし桁3の端部3aと構造物7との間に設けられている。これにより、かんざし桁3は、長手方向D1から見たときに、支持部材12と重ならないように設けられている。
【0022】
撤去装置20は、走行路11に沿って移動し、工事桁2及びかんざし桁3を撤去する装置である。撤去装置20は、吊具で工事桁2及びかんざし桁3を吊り上げることによって、これらの桁を撤去する。撤去装置20は、門型のクレーンによって構成される。具体的に、撤去装置20は、走行部21と、脚部22と、ガーダ部23と、吊部24と、を備える。
【0023】
走行部21は、走行路11の上面11aを走行する機構である。走行部21は、複数の車輪によって構成される。これによって、横方向D2の両側の走行部21が走行路11上を走行することによって、撤去装置20全体が移動する。脚部22は、横方向D2の両側の走行部21から上方へ延びる部材である。ガーダ部23は、一対の脚部22の上端にて、横方向D2に架け渡される。吊部24は、ガーダ部23に対して横方向D2に移動可能に設けられ、ガーダ部23の下方において工事桁2及びかんざし桁3を吊り下げ可能な機構である。吊部材26は、吊部24から下方に延びて、工事桁2及びかんざし桁3を吊り下げる部材である。撤去装置20は、横方向D2に四セットの吊部24を有している。なお、一セットあたり、長手方向D1に並ぶように一対の吊部24が設けられている(
図1参照)。このうち、右側の吊部24は、右側の工事桁2を吊りあげて撤去する。左側の吊部24は、左側の吊部24を吊りあげて撤去する。中央側の二セット(合計四つ)の吊部24は、かんざし桁3を吊りあげて撤去する。なお、中央側の二セットの吊部24は、ターンテーブル式の吊具27を吊り下げている。従って、吊具27がかんざし桁3を吊り上げるときは、水平面内で回転させ、長手方向D1に延びる状態とする(
図4参照)。
【0024】
走行路11に設置された状態では、線路RW1の上側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置される。ここでは、支持体8のビーム8b、及び電線8cが、撤去装置20の上下方向の位置を規制する構造物となる。撤去装置20は、吊部24がビーム8b及び電線8cよりも低い位置となるように、配置される。また、走行路11に配置された状態では、横方向D2の外側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置される。ここでは、支持体8の柱8aが、撤去装置20の横方向D2の位置を規制する部材となる。撤去装置20は、脚部22が柱8aよりも横方向D2の内側の位置となるように、配置される。
【0025】
図1に示すように、搬送台車30は、既設の線路RW1に沿って移動し、撤去装置20で撤去された工事桁2及びかんざし桁3を搬送する装置である。搬送台車30は、一対の線路RW1のそれぞれに対して配置される。搬送台車30は、載置部31と、走行部32と、を備える。載置部31は、桁を載置するための部材である。走行部32は、レール4上を走行可能な機構である。
【0026】
ここで、
図3に示すように、撤去対象物101には、長手方向D1から見て、走行路11を支持する支持部材12に対して、横方向D2の両端部3aが重なる第1の桁3が設けられる場合がある。すなわち、左右両側の支持部材12の離間距離が、かんざし桁3の横方向D2の長さよりも短い場合、当該関係が成り立つ。
【0027】
この場合、
図4に示すように、かんざし桁3の横方向D2における右側の端部3aと重なる支持部材12は、当該端部3aに対して、長手方向D1の後側に配置される。また、かんざし桁3の横方向D2における左側の端部3aと重なる支持部材12は、当該端部3aに対して、長手方向D1の前側に配置される。従って、かんざし桁3を撤去するときは、半時計回りに回転することで、左右両側の支持部材12と干渉することを回避できる。
【0028】
また、かんざし桁3の端部3aと支持部材12が重なる場合、
図5(b)に示すように、かんざし桁3の上端3bに対して、走行路11の下端11bが上方に配置されるように、走行路11の上下方向の寸法が調整される。すなわち、
図5(a)に示すように、かんざし桁3と支持部材12が重ならないときは、かんざし桁3の上端3bが走行路11の下端11bより上方に配置されても、かんざし桁3と走行路11とは干渉しない。その一方、かんざし桁3と支持部材12が重なる場合、かんざし桁3の上端3bが走行路11の下端11bより上方に配置されると、かんざし桁3と走行路11とが干渉してしまうことがある。しかし、走行路11の上面11aは、撤去装置20の走行部21の走行面となるため、上下方向の基準位置SLを変動させることができない。従って、
図5(b)の走行路11の上下方向の寸法が、
図5(a)の走行路11の上下方向の寸法よりも小さくなるように設定することで、下端11bの位置を
図5(a)の場合より上方へ配置できる。そのため、かんざし桁3が、走行路11の下端11bの下方に潜り込むような配置にすることができる。
【0029】
次に、
図6~
図11を参照して、本実施形態に係る撤去方法について説明する。
図6~
図11は、撤去方法の手順を模式的に示す平面図である。本実施形態に係る撤去方法は、準備工程と、撤去工程と、搬送工程とを備えている。また、撤去区間REの後側の開始位置104側から順に撤去桁を撤去するように、撤去工程、及び搬送工程を繰り返す。撤去桁とは、撤去対象となる桁のことであり、工事桁2及びかんざし桁3の何れかである。なお、
図6に示すように、撤去区間REとは、撤去システム100によって撤去対象物101を撤去すべき対象となる範囲を定めた区間である。撤去区間REは、線路RW1に沿って長手方向D1に所定の距離だけ設定されている。撤去区間REの前側の端部側には、搬送した桁を撤去区間REから撤去する撤去位置102が設けられている。また、撤去区間REの前側の端部側には、撤去区間REへの設置前の撤去装置20を配置しておく、配置スペース103が設けられている。一方、撤去区間REの後側の端部は、撤去対象物101の撤去作業を開始する開始位置104として設定されている。
【0030】
準備工程は、前述の走行路11、及び当該走行路11に沿って移動する撤去装置20を準備する工程である。準備工程では、撤去区間REの構造物に対して、長手方向D1に延びるように走行路11が設けられる。そして、準備工程では、
図6に示すように、配置スペース103に配置しておいた撤去装置20を横方向D2へ移動させることによって、撤去区間RE内に進入させて、走行路11上に撤去装置20を配置する。これによって、撤去装置20が、走行路11に沿って長手方向D1に移動する準備が整う。また、準備工程では、搬送台車30をレール4上に載せる。これによって、搬送台車30が、レール4に沿って長手方向D1に移動する準備が整う。
【0031】
なお、準備工程では、前述の通り、線路RW1の上側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置される。また、準備工程では、横方向D2の外側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置される。
【0032】
移動工程は、撤去装置20を撤去区間REの長手方向D1における前側の端部の開始位置104へ移動させる工程である。
図7に示すように、移動工程では、撤去装置20は、長手方向D1の最も後側の工事桁2、すなわち開始位置104における工事桁2の位置まで移動する。また、移動工程では、搬送台車30は、撤去装置20に対して、長手方向D1の前側で隣り合う位置まで移動する。
【0033】
撤去工程は、撤去区間REの後側の端部において、撤去装置20で撤去対象物101の撤去桁を保持して、搬送台車30へ載せる工程である。まず、
図7に示すように、切断位置CLに示す位置にて、レール4を切断する。これによって、工事桁2を切断後のレール4ごと、吊り上げることができる。従って、撤去装置20の右側の吊部24が右側の工事桁2を切断したレール4と共に、吊り上げる(
図3の仮想線を参照)。撤去装置20の左側の吊部24が左側の工事桁2を切断したレール4と共に、吊り上げる(
図3の仮想線を参照)。そして、
図8に示すように、撤去装置20は、工事桁2を保持した状態で、搬送台車30の位置まで、長手方向D1の前側へ移動する。そして、撤去装置20は、吊っている工事桁2を降ろして搬送台車30上に載せる。なお、
図8及び
図9では、撤去された工事桁2及びレール4がグレースケールで塗られている。
【0034】
搬送工程は、撤去桁である工事桁2を受けた搬送台車30が、線路RW1に沿って、長手方向D1における前側へ移動することで、工事桁2を撤去位置102(
図6参照)まで搬送する工程である。
図9に示すように、搬送台車30は、工事桁2を載せた状態で、線路RW1に沿って長手方向D1における前側へ移動している。
【0035】
その一方、撤去装置20は、かんざし桁3を撤去するための移動工程及び撤去工程を行う。すなわち、撤去装置20は、再び長手方向D1の後側へ移動して、最も後側のかんざし桁3の位置まで移動する。次に、
図10に示すように、吊部24は、ターンテーブル式の吊具27でかんざし桁3を吊り、水平面内で回転させる。撤去装置20は、長手方向D1に延びた状態のかんざし桁3を吊具27によって更に上方へ吊り上げる。そして、
図11に示すように、撤去装置20は、かんざし桁3を保持した状態で、当該かんざし桁3を搬送台車30の位置まで移動させる。そして、搬送台車30は、撤去位置102(
図6参照)まで、かんざし桁3を搬送する搬送工程を行う。
【0036】
その次は、未撤去のものの中で、最も長手方向D1の後側に存在する工事桁2及びかんざし桁3を撤去するために、上述と同趣旨の撤去工程及び搬送工程を繰り返す。このような工程を撤去位置102(
図6参照)に至るまで繰り返して、長手方向D1の後側の端部から工事桁2及びかんざし桁3を順番に撤去していくことで、撤去区間REの全ての工事桁2及びかんざし桁3を撤去することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る撤去方法、及び撤去システム100の作用・効果について説明する。
【0038】
本実施形態に係る撤去方法において、移動工程では、撤去装置20を撤去区間REの長手方向D1における後側の端部へ移動させる。また、撤去工程では、撤去区間REの後側の端部において、撤去装置20で撤去対象物101の撤去桁を保持して、搬送台車30へ載せる。これによって、撤去区間REの後側の端部に存在する撤去桁が、搬送台車30にて搬送可能な状態となる。そして、搬送工程では、撤去桁を受けた搬送台車30が、線路RW1に沿って、長手方向D1における前側へ移動することで、撤去桁を撤去位置102まで搬送する。これにより、撤去区間REから撤去桁を撤去することができる。そして、撤去区間REの後側の端部側から順に撤去桁を撤去するように、撤去工程、及び搬送工程を繰り返す。すると、撤去対象物101を構成する工事桁2、及びかんざし桁3は、撤去区間REの前側から、順次撤去されていく。このように、撤去装置20及び搬送台車30のシンプルな動きの繰り返しによって、容易に撤去対象物101を撤去することができる。ここで、撤去装置20は、線路RW1の横方向D2の外側の構造物7に支持された走行路11に沿って、移動するものである。また、搬送台車30は、線路RW1に沿って移動するものである。このように、撤去に用いられる装置は、大型のクレーンなどのように、軌道の周辺環境に広いスペースが必要となる装置ではなく、線路RW1に沿った限られたスペースがあれば、周囲の状況によらず、撤去作業が可能となる装置である。以上より、線路RW1の周辺の状況に関わらず、容易に撤去対象物101を撤去することができる。
【0039】
準備工程では、線路RWの上側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置されてよい。この場合、撤去装置20は、上側の構造物との接触を回避しながら、上下方向の限られたスペースにて、撤去作業を行うことができる。
【0040】
準備工程では、横方向D2の外側の構造物との接触を回避できる位置に、撤去装置20が配置されてよい。この場合、撤去装置20は、横方向D2の外側の構造物との接触を回避しながら、横方向D2の限られたスペースにて、撤去作業を行うことができる。
【0041】
撤去対象物101には、長手方向D1から見て、走行路11を支持する支持部材12に対して、横方向D2の両端部3aが重なるかんざし桁3が設けられており、かんざし桁3の横方向D2における後側の端部3aと重なる支持部材12は、当該端部3aに対して、長手方向D1の後側に配置され、かんざし桁の横方向D2における前側の端部3aと重なる支持部材12は、当該端部3aに対して、長手方向D1の前側に配置されてよい。この場合、かんざし桁の両側の端部3aが支持部材12から遠ざかるようにかんざし桁を回転させることで、支持部材12との干渉を回避することができる。
【0042】
撤去対象物101には、長手方向D1から見て、走行路11を支持する支持部材12に対して、横方向D2の両端部3aが重なるかんざし桁3が設けられており、当該かんざし桁3の上端に対して、走行路11の下端が上方に配置されるように、走行路11の上下方向の寸法を調整してよい。この場合、走行路11の上端の上下方向の位置の変動を抑制しながら、かんざし桁を走行路11の下方に配置して互いの干渉を回避することができる。
【0043】
本実施形態に係る撤去システム100は、新たな線路RW2を地下に設けるために、既設の線路RW1を支持する工事桁2、及びかんざし桁3を撤去する撤去システム100であって、既設の線路RW1の横方向D2の外側の構造物7に支持されて長手方向D1に延びる走行路11と、走行路11に沿って移動し、工事桁2及びかんざし桁3を撤去する撤去装置20と、既設の線路RW1に沿って移動し、撤去装置20で撤去された工事桁2及びかんざし桁3を搬送する搬送台車30と、を備える。
【0044】
撤去装置20は、既設の線路RW1の横方向D2の外側の構造物7に支持された走行路11に沿って、移動するものである。また、搬送台車30は、既設の線路RW1に沿って移動するものである。このように、撤去に用いられる装置は、大型のクレーンなどのように、周辺環境に広いスペースが必要となる装置ではなく、既設の線路RW1に沿った限られたスペースがあれば、周囲の状況によらず、撤去作業が可能となる装置である。新たな線路RW2を地下に設ける場合は、限られたスペースにて撤去作業を行うことが求められるが、当該状況にも対応することが可能となる。以上より、軌道の周辺の状況に関わらず、容易に撤去対象物を撤去することができる。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
上述の実施形態では、撤去対象物として線路を構成するかんざし桁、及び工事桁が例示されていた。また、線路の地下化のための既設の線路の撤去の作業を例示した。これに代えて、他の工事の場面で本発明が採用されてよい。
【0047】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない限り、詳細な構成については適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0048】
2…工事桁(第2の桁)、3…かんざし桁(第1の桁)、7…構造物、11…走行路、12…支持部材、20…撤去装置、30…搬送台車、100…撤去システム、101…撤去対象物、102…撤去位置。