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特許7531189生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 1/00 20060101AFI20240802BHJP
   C22C 23/04 20060101ALI20240802BHJP
   C22C 23/06 20060101ALI20240802BHJP
   C22F 1/06 20060101ALI20240802BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20240802BHJP
   B21B 1/38 20060101ALI20240802BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20240802BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20240802BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240802BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20240802BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20240802BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
B21C1/00 L
C22C23/04
C22C23/06
C22F1/06
B21B3/00 L
B21B1/38 Z
A61L31/02
A61L31/08
A61L31/12
A61L31/10
B23K20/12 310
C22F1/00 604
C22F1/00 613
C22F1/00 623
C22F1/00 624
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 640A
C22F1/00 675
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022574551
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2020094573
(87)【国際公開番号】W WO2021243683
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】522094967
【氏名又は名称】中国科学院金属研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】522470390
【氏名又は名称】四川▲めい▼合医療器械有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN MEGALL MEDICAL DEVICES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】DU, Langyu Tianfu International Bio-Town No. 618, Fenghuang Road Shuangliu District, Chengdu, Sichuan 610200, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馬 政
(72)【発明者】
【氏名】譚 麗麗
(72)【発明者】
【氏名】楊 柯
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111229855(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106521250(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110144534(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103184397(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106917022(CN,A)
【文献】特開2012-143811(JP,A)
【文献】特許第6698927(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00 - 19/00
C22C 23/04
C22C 23/06
C22F 1/06
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
A61L 31/02
A61L 31/08
A61L 31/12
A61L 31/10
B23K 20/00 - 20/26
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法であって、
A、重量パーセントで、合金元素がZn:0.2%~2.5%、Nd:0.2%~2.5%であり、残部がMgであるマグネシウム合金板材に対して機械的撹拌工程を行い、マグネシウム合金板材と同等の厚さの撹拌塑性変形領域を作成する工程と、
B、撹拌塑性変形領域を切断し、前記切断された撹拌塑性変形部分を直径Φ2~8mmの棒材に作成する工程と、
C、棒材をワイヤに引抜加工する工程と、を含んで
前記機械的撹拌工程において、機械的撹拌の方向が板材の圧延方向に沿い、円筒状で一端面の底部がマグネシウム合金板材に接して回転可能に構成されている下凹ショルダであって直径15~25mmの下凹ショルダの底部の中心に設けられた直径1~5mmの撹拌針の進行速度が80~120mm/分であり、回転速度が400~1200rpmであり、撹拌針の軸線とマグネシウム合金板材の表面の法線との傾斜角が2.6~3°であり、撹拌中の押し下げ量が0.1~0.2mmに保つことを特徴とする生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法。
【請求項2】
工程Aにおいて、機械的撹拌工程の前記撹拌塑性変形領域が機械加工され得られたワイヤは、最終製品としてもよく、或いは中間製品として更に複数パス引抜加工を行ってワイヤに製造してもよく、工程Cにおいて、15~25%の1パスあたりの変形量、0.01~0.05m/sの引抜速度で複数パス引抜加工しつつ、280~320℃の温度で10~60minアニール熱処理することを特徴とする請求項1に記載の生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記マグネシウム合金板材の製造方法は、
(1)純マグネシウムと他の合金元素を液体金属に溶解、製錬し、均一に撹拌し、スラグを除去する工程と、
(2)工程(1)における液体金属をスラブに鋳造し、表面欠陥および不純物を除去する工程と、
(3)工程(2)におけるスラブを、250~400℃の温度で2~5時間均質化熱処理する工程と、
(4)工程(3)のスラブを470~510℃の金属出炉温度で3~6時間熱間圧延することにより、厚さ70~100mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(5)工程(4)のマグネシウム合金板材を、440~470℃の金属出炉温度で2~5時間熱間圧延することにより、厚さ10~20mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(6)工程(5)のマグネシウム合金板材を、380~440℃の金属出炉温度で2~4h熱間圧延することにより、厚さ2~8mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、を含んでいる請求項1に記載の生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料であるマグネシウム合金の製造技術分野に関し、特に、生体マグネシウム合金ワイヤの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金ワイヤは、分解性及び生体安全性に優れた材料として、移植機能を実現した後、体内で徐々に分解、代謝、消失することができ、二次取出手術を回避することができるため、バイオメディカル分野で広く応用される見込みがあり、心臓外科的胸骨結合、整形外科的軟骨結合、一般外科の胃腸吻合術、気管支持用ステント、食道支持用ステント、十二指腸食物ろ過などのインプラント材料に用いられている。
【0003】
マグネシウム合金ワイヤの強度、塑性、および腐食速度は、医療用途を可能にするキーポイントである。マグネシウムワイヤは、引抜加工によって成形されるものであり、そのミクロ組織、力学的性能、耐食性が引抜加工中に改善されず、また、マグネシウム合金ワイヤの引抜成形性能が、異なる添加元素によって影響される。中国特許出願番号201810068159.5は、小さいワイヤ直径で、ミクロ組織が均一で且つ機械的特性が良好なMg-Zn-Mn-X(X=Ag、Sr、Ca、Bi)合金ワイヤを製造できる大押出比破壊結晶粒結合引抜加工法を開示する。中国特許出願201710159114.4は、単なる引抜加工によって得られたものよりも、機械的特性且つ腐食性に優れたマグネシウム亜鉛合金サイヤを創造できる、等径角押出と複数パス引抜加工が組み合わせた製造方法を開示されている。ところが、等径角押出工程で製造されたマグネシウムワイヤの寸法に限界があり、そして、材料の加工ロスが大きく、量産に適するものではない。本発明は、従来のマグネシウム合金ワイヤ引抜加工に基づき、材料サイズが大きい一次加工時に引抜加工に代えて圧延加工を施すことにより、塑性変形における材料の応力状態を変化させ、マグネシウム合金の成形性と加工能率をある程度向上させるものである。マグネシウム合金を薄板に圧延する際には、図1に示すように、板材の一端部の中心から他端部の中心までネジ付き円柱体の撹拌子で機械的に撹拌することにより、撹拌子と材料との相対運動を利用して、材料を強く塑性変形させることで、材料のミクロ組織及び特性を改善するという原理で、機械的撹拌工程をさらに導入する。機械的撹拌工程が完成された部分に対して機械加工処理を行ったものは、ワイヤの最終材料としてもよく、後続の引抜加工を実施してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、マグネシウム合金ワイヤの成形加工に困難があり、強度、塑性、耐食性等の最終的な使用性能が医療用ワイヤの要求を満たさないという問題に対して、医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法は、従来の金属ワイヤの引抜工程を変え、圧延、機械的撹拌及び引抜工程を組み合わせることにより、マグネシウム合金ワイヤの製造の最適化及び全体的な使用性の向上を実現するものであり、
(1)純マグネシウムと他の合金元素を液体金属に比例的に溶解製錬し、均一に撹拌し、スラグを除去する工程と、
(2)工程(1)における液体金属をスラブに鋳造し、表面欠陥および不純物を除去する工程と、
(3) 工程(2)におけるスラブを250~400℃の温度で、2~5時間均質化熱処理する工程と、
(4) 工程(3)におけるスラブを、470~510℃の金属出炉温度で3~6時間熱間圧延することにより、厚さ70~100mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(5)工程(4)におけるマグネシウム合金板材を、440~470℃の金属出炉温度で2~5時間熱間圧延することにより、厚さ10~20mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(6)工程(5)におけるマグネシウム合金板材を、380~440℃の金属出炉温度で2~4時間熱間圧延することにより、厚さ2~8mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(7) 工程(6)におけるマグネシウム合金板材を機械的撹拌工程により加工することで、マグネシウム合金板材と同等の厚さの撹拌塑性変形領域を作成する工程と、
(8) 工程(7)におけるマグネシウム合金板材の撹拌塑性変形領域を切断して、直径Φ2~8mmの棒材に機械加工する工程と、
(9)工程(8)における棒材を、15~25%の1パスあたりの変形量、0.01~0.05m/sの引抜速度で複数パス引抜加工しつつ、280~320℃の温度で10~60minアニール熱処理する工程と、を含んでいる。
【0006】
前記生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法において、工程(1)における他の合金元素は、重量パーセントで、Zn:0.2%~2.5%、Nd:0.2%~2.5%である。
【0007】
前記生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法において、工程(7)の機械的撹拌工程には、機械的撹拌の方向が板材の圧延方向に沿い、直径15~25mmの下凹ショルダ底部の中心に設けられた直径1~5mmの撹拌針の進行速度が80~120mm/minであり、回転数が400~1200rpmであり、撹拌針の軸線とマグネシウム合金板材の表面の法線との傾斜角が2.6~3°であり、撹拌中の押下げ量が0.1~0.2mmに保つ。前記生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法において、工程(7)には、機械的撹拌工程の撹拌塑性変形領域が機械加工され得られたワイヤは、最終製品としてもよく、或いは中間製品として更に複数パス引抜加工を行ってワイヤに製造してもよい。
【0008】
前記生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法において、工程(7)には、機械的撹拌工程の撹拌塑性変形領域が機械加工され得られたワイヤは、最終製品としてもよく、或いは中間製品として更に複数パス引抜加工を行ってワイヤに製造してもよい。
【0009】
本発明の発想としては、従来のマグネシウム合金の引抜成形性が悪いため、最終製品の性能が医用材料の所望の力学的性能と耐食性能に達せないなどの問題を解決しようとする。本発明において、従来の引抜加工工程を変え、圧延、機械的撹拌処理工程を導入し、まずは、圧延加工によりマグネシウム合金の成形困難性を低減し、材料の量産を保証し、後続の機械的撹拌処理工程に有利である。それで、機械的撹拌工程によって、合金のミクロ組織をさらに改善し、合金の強度、塑性、耐食性、及び引抜特性を改善し、最後に、引抜加工により最終目標のワイヤを作成する。以上の相乗効果により、ワイヤの良好な塑性成形性、医療用の力学的強度および耐食性が保証される。
【0010】
本発明はさらなる生体医療用マグネシウム合金ワイヤの製造方法を提供し、
A、マグネシウム合金板材に対して機械的撹拌工程を行い、マグネシウム合金板材と同等の厚さの撹拌塑性変形領域を作成する工程と、
B、撹拌塑性変形領域を直径Φ2~8mmの棒材に作成する工程と、
C、棒材をワイヤに引抜加工する工程と、を含んで
前記機械的撹拌工程において、機械的撹拌の方向が板材の圧延方向に沿い、直径15~25mmの下凹ショルダの底部の中心に設けられた直径1~5mmの撹拌針の進行速度が80~120mm/minであり、回転速度が400~1200rpmであり、撹拌針の軸線とマグネシウム合金板材の表面の法線との傾斜角が2.6~3°であり、撹拌中の押し下げ量が0.1~0.2mmに保つ。
【0011】
本発明は、さらなるマグネシウム合金板材の製造方法を提供し、
(1)純マグネシウムと他の合金元素を液体金属に比例的に溶解、製錬し、均一に撹拌し、スラグを除去する工程と、
(2)工程(1)における液体金属をスラブに鋳造し、表面欠陥および不純物を除去する工程と、
(3)工程(2)におけるスラブを、250~400℃の熱処理温度で2~5時間均質化熱処理する工程と、
(4)工程(3)のスラブを470~510℃の金属出炉温度で3~6時間熱間圧延することにより、厚さ70~100mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(5)工程(4)のマグネシウム合金板材を、440~470℃の金属出炉温度で2~5時間熱間圧延することにより、厚さ10~20mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、
(6)工程(5)のマグネシウム合金板材を、380~440℃の金属出炉温度で2~4h熱間圧延することにより、厚さ2~8mm、幅540~730mm、長さ400~1200mmのマグネシウム合金板材に加工する工程と、を含んでいる。
また、本発明は、マグネシウム合金板材の製造方法により製造したマグネシウム合金板材を提供する。
【0012】
本発明は、原料が前記マグネシウム合金板材、または前記マグネシウム合金板材により直接的もしくは間接的に製造された材料を含む体内インプラントをさらに提供する。
【0013】
本発明は、原料が前記マグネシウム合金ワイヤ、又は前記マグネシウム合金ワイヤにより直接的若しくは間接的に製造された材料を含む体内インプラントをさらに提供する。
【0014】
そのうち、体内インプラントは、ステープル、外科用縫合糸、吸収性縫合糸、皮膚ステープル、神経治療用ガイドワイヤ、非血管ステント、末梢血管ステント、パッチ、血管用ステープラー、骨ねじ、骨プレート、血管クリップを含む。そのうち、骨プレートと血管クリップは主にマグネシウム合金板材を原料として製造されるものである。
【0015】
また、体内インプラントの原料は、コーティング材料を含んでも良い。
【0016】
コーティング材料は、体内でのワイヤ材料の分解速度を調節するためのものである。前記コーティング材料は、リン酸マグネシウムコーティング、酸化マグネシウムコーティング、炭酸マグネシウムコーティング、又は分解性高分子コーティングを含むが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、圧延、機械的撹拌及び引抜加工を組み合わせることにより、マグネシウム合金ワイヤを大規模で微細に製造でき、最終的に超微細等軸晶が得られ、材料の第2相の数量と寸法が大幅に減少し、且つマグネシウムマトリックスに多く固溶し、ワイヤの強度、延性及び耐食性が大幅に向上される。これにより、塑性が向上されることで、室温でも後続の引抜加工が容易にできる。マグネシウム合金ワイヤは、臨床的使用の要求を満たす良好な強度、延性および耐食性を有し、マグネシウム合金ワイヤの臨床的応用範囲を広げられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は機械的撹拌工程の概略図であり、符号1がマグネシウム合金板材であり、符号2が撹拌塑性変形領域であり、符号3が撹拌子である。
図2図2は、マグネシウム合金ワイヤで製造されたステープルの形態を示す。
図3図3は、マグネシウム合金ワイヤの金属組織である。
図4図4は、マグネシウム合金ワイヤのTEM像である。
図5図5は、下凹ショルダを有する撹拌子構造の端面の模式図であり、そのうち、(a)下凹ショルダの底部端面が階段状であり、(b)下凹ショルダの底部端面が螺旋状であり、符号3が撹拌棒であり、符号4が下凹ショルダである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願実施形態においては、マグネシウム、亜鉛、ネオジム合金を溶解、製錬、鋳造、圧延などの工程により板材に制作し、前記板材の特殊な機械的撹拌工程により制作された同等の厚さの加工領域に対して機械加工処理を行ったものは、ワイヤの最終製品としてもよく、または所望の径のワイヤになるように複数パス引抜加工を行ってもよい。本願は、マグネシウム合金ワイヤの成形加工に困難があり、強度、塑性、耐食性等の最終的な使用性能が医療用ワイヤの要求を満たさないという問題に対して、グネシウム合金ワイヤの製造過程における従来の引抜加工工程を変え、圧延と機械的撹拌工程を導入し、後続の引抜加工と組み合わせて、マグネシウム合金ワイヤの成形性を向上させ、最終的に最小直径0.1mmのワイヤを加工することができる。また、機械的撹拌に伴う激しい塑性変形により、材料の微細な等軸粒が得られ、転位強化材を導入し、第二相の固溶により材料の塑性及び合金の耐食性を向上させる。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的思想を前提に実施した実施例は、詳細な実施形態と具体的な操作過程を示すものであり、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
【0021】
本実施例では、Mg-2Zn-0.5Nd合金を、重量パーセントで、2%Zn、0.5%Nd、及び残部のMgからなる組成とする。
【0022】
製造方法は以下の通りである。純マグネシウム、2重量パーセントのZn、0.5重量パーセントのNdを液体金属に溶解、製錬し、スラブを鋳造して、表面欠陥や不純物を除去し、300℃の温度で5時間均一化熱処理され、熱間圧延(出炉温度480℃、加熱時間4h)により、厚さ70mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工する。続いで、熱間圧延(出炉温度440℃、加熱時間4h)により、厚さ10mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工する。それで、板材を熱間圧延(出炉温度440℃、加熱時間2h)により、厚さ2mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工する。
【0023】
図1に示すように、マグネシウム合金板材1に対して、以下のように機械的撹拌を行う。機械的撹拌の方向が板材の圧延方向に沿い。直径20mmの下凹ショルダの底部中心に設けられた直径2mmの撹拌子3の水平撹拌進行方向に沿う移動速度が100mm/minであり、回転数が800rpmであり、材料の内部での摩擦、撹拌をしやすいように、軸線とマグネシウム合金板材1の表面の法線との傾斜角をほぼ2.8°とし、撹拌子3の傾斜方向を撹拌進行方向と逆方向とし、撹拌中の押し下げ量を0.15mmに保つ。これにより、激しく塑性変形した帯状領域(撹拌塑性変形領域2)を作成し、これを切断して、径Φ2mmの棒材に機械加工する。当該棒材に対して引抜加工しつつ、280℃の温度で20分アニールし熱処理を行い、1パス当たりの変形量をほぼ20%とし、引抜速度を0.05m/sとし、最終的に直径0.3mmの線材を作成した。
【0024】
図2は当該ワイヤから作製したステープルであり、図3は結晶粒が等軸晶であるワイヤのミクロ組織であり、図4は線材の透過電子顕微鏡の形態である。合金の結晶粒の大きさは微細で、500nm~1μmの間にあり、内部に転位が形成されることで、合金がさらに強化され、生じた第2相のサイズが極めて小さい50~100nmである。
【0025】
図5に示すように、下凹ショルダ4の底部端面の中心に撹拌子3を取り付け、下凹ショルダ4と撹拌子3との境界が凹んで嵌合し、下凹ショルダ4と板材表面との接触面積を増大させることで、下凹ショルダ4の端部の下方で軟化された材料に内方向の力を作用させ、下凹ショルダ4と可塑化材料とを緊密に結合させることができる。
【0026】
引張特性(GB/T228-2002):引張強さ320MPa、伸び率15%。
分解速度(ハンクス液、浸漬30日、37℃):0.33mm/年。
実施例2
【0027】
本実施例では、Mg-0.2Zn-2.0Nd合金を、重量パーセントで、0.2%Zn、2.0%Nd、残部Mgからなる組成とする。
【0028】
製造方法は以下の通りである。純マグネシウム、0.2重量パーセントのZn、2.0%重量パーセントのNdを液体金属に溶解、製錬し、スラブを鋳造し、表面欠陥や不純物を除去し、320℃で5時間均一化熱処理し、熱間圧延(出炉温度480℃、加熱時間4h)により、厚さ70mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工する。続いで、熱間圧延(出炉温度440℃、加熱時間4h)により、厚さ10mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工し、次いで板材を熱間圧延(出炉温度440℃、加熱時間2h)により、厚さ2mm、幅540mm、長さ400mmのマグネシウム合金板材に加工する。
【0029】
図1に示すように、マグネシウム合金板材1に対して、以下のように機械的撹拌を行う。機械的撹拌の方向が板材の圧延方向に沿い、直径20mmの下凹ショルダの底部中心に設けられた直径2mmの撹拌子3(図5に示す)の水平撹拌進行方向に沿う移動速度が100mm/分であり、回転数が800rpmであり、軸線とマグネシウム合金板材1の表面の法線との傾斜角がほぼ2.8°であり、撹拌子3の傾斜方向を撹拌進行方向と逆方向とし、撹拌中の押し下げ量を0.15mmに保つ。これにより、激しく塑性変形された帯状領域(撹拌塑性変形領域2)を作成し、これを切断して、直径Φ2mmの棒材に機械加工する。当該棒材に対して引抜加工しつつ、280℃の温度で20分アニールし熱処理を行い、1パス当たりの変形量をほぼ20%とし、引抜速度を0.05m/sとし、最終的に直径0.6mmの線材を作成した。
【0030】
当該ワイヤの結晶粒は等軸晶であり、合金の結晶粒径が微細で、500nm~1μmの間にあり、結晶粒内部に転位が形成されることで、合金がさらに強化され、生じた第2相のサイズが極めて小さい50~100nmである。
【0031】
引張特性(GB/T228-2002):引張強さ360MPa、伸び率21%。
分解速度(ハンクス液、浸漬30日、37℃):0.36mm/年。
【0032】
本発明は、圧延および機械的撹拌工程を導入することにより、ワイヤの成形性を向上させ、合金の結晶粒を著しく微細化させ、第2相のサイズを大幅に低減し且つマトリックス中に多く固溶させることで、得られたワイヤの強度、特に伸び率を大幅に向上させ、医療用マグネシウム合金ワイヤの要求仕様どおりの性能を満たす良好な耐食性が得られることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5