(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】折り装置
(51)【国際特許分類】
B65H 45/14 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B65H45/14
(21)【出願番号】P 2021112118
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592142197
【氏名又は名称】株式会社大澤ミシン商会
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】本田 博明
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-087567(JP,A)
【文献】特開2019-137924(JP,A)
【文献】特開平07-137930(JP,A)
【文献】特開2013-146325(JP,A)
【文献】特開平07-252023(JP,A)
【文献】特開平05-192470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 45/00-45/30
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載せるための折り台と、前記折り台から一方向に食み出た前記シートの端部を折るための定規及び折り部材とを備え、前記折り台上のシート部分を前記定規が上から押さえ、前記折り台から食み出た前記端部を前記折り部材が下から押し上げ、反一方向側へ折り返し、当該折り返した端部を上から押さえる折り装置において、
第一の電動サーボモータを駆動源として前記定規を上下方向に駆動し、第二の電動サーボモータを駆動源として前記定規を一方向と反一方向に駆動する第一駆動機構と、
第三の電動サーボモータを駆動源として前記折り部材を上下方向に駆動し、第四の電動サーボモータを駆動源として前記折り部材を一方向と反一方向に駆動する第二駆動機構とを備え
、
前記第二駆動機構は、前記折り返した端部を上から押さえた前記折り部材を上方へ駆動し、この後、前記第一駆動機構は、前記折り返した端部の下方に位置する前記定規を、反一方向に駆動するのと同時に上方向に駆動して前記折り返した端部の下方から抜き出し、
前記第一駆動機構は、前記抜き出した前記定規を、上方へ駆動してから前記折り部材の上方に位置するように一方向へ駆動し、さらに当該折り部材から所定高さまで下方へ駆動した後、反一方向へ駆動することを特徴とする折り装置。
【請求項2】
前記第一駆動機構は、前記抜き出した定規を、前記折り返した端部と前記折り台上のシート部分の重なった二つ折り部を上から押さえるように駆動し、前記第二駆動機構は、当該二つ折り部を当該定規と挟持させるように前記折り部材を駆動し、これら第一及び第二駆動機構は、対応の当該定規と当該折り部材を、当該挟持状態の二つ折り部を持ち上げ、反一方向側へ折り返すように駆動する請求項
1に記載の折り装置。
【請求項3】
前記第一及び前記第二駆動機構によって反一方向側へ折り返される前記二つ折り部の非挟持部に対して反一方向側へ寄った位置から空気を一方向側へ吹き出すエアー噴出部を備える請求項
2に記載の折り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タオル、布、不織布等のシートの端部を折るために用いられる折り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タオル等の布の端部を折り重ねる折り装置と、この折り重ね後に布を搬送する装置と、搬送される布の端部を縫製するミシンとを備える自動縫製装置が利用されている。その折り装置として、布を載せるための折り台と、その折り台から一方向に食み出た布の端部を折るための定規及び折り部材とを備える。折り台上の布部分を定規が上から押さえ、折り台から食み出た布の端部を折り部材が下から押し上げ、反一方向側へ折り返し、当該折り返した端部を上から押さえることにより、二つ折りを行うものがある(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-166463号公報
【文献】特開平7-137930号公報
【文献】特開平7-252023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の折り装置は、定規と折り部材をそれぞれ駆動する機構の駆動源として空気シリンダを採用しているため、折る対象のシート(素材)を変更する場合、定規と折り部材の駆動制御を素材の変更に合わせて調整することが複雑になり、折り部が型崩れしないように折ることが難しい問題があった。
【0005】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、折り装置の定規と折り部材の駆動制御を容易化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、この発明は、シートを載せるための折り台と、前記折り台から一方向に食み出た前記シートの端部を折るための定規及び折り部材とを備え、前記折り台上のシート部分を前記定規が上から押さえ、前記折り台から食み出た前記端部を前記折り部材が下から押し上げ、反一方向側へ折り返し、当該折り返した端部を上から押さえる折り装置において、第一の電動サーボモータを駆動源として前記定規を上下方向に駆動し、第二の電動サーボモータを駆動源として前記定規を一方向と反一方向に駆動する第一駆動機構と、第三の電動サーボモータを駆動源として前記折り部材を上下方向に駆動し、第四の電動サーボモータを駆動源として前記折り部材を一方向と反一方向に駆動する第二駆動機構とを備える構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、定規と折り部材の駆動源を第一~第四の電動サーボモータとしているため、素材の変更に合わせてモータ駆動制御の内容を変更することを容易に行うことができ、空気シリンダでは困難な高位置決め精度を要する折り方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態に係る折り装置を備える自動縫製装置を示す斜視図
【
図4】
図2に示す折り装置に備わるエアー噴出部を示す斜視図
【
図5】
図2に示す折り装置の第一駆動機構を示す斜視図
【
図6】
図2に示す折り装置の第二駆動機構を示す斜視図
【
図8】
図2に示す折り装置に備わるプッシュ装置を示す斜視図
【
図9】
図2に示す折り装置で三つ折りする工程を図(a)~(g)の時系列順に示す模式図
【
図10】
図9に続く工程を図(a)~(d)の時系列順に示す模式図
【
図11】
図10に続く工程を図(a)~(l)の時系列順に示す模式図
【
図12】
図11に続く工程を図(a)~(e)の時系列順に示す模式図
【
図13】
図12に続く工程を図(a)~(i)の時系列順に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一例としての実施形態に係る折り装置を添付図面に基いて説明する。
図1に、その折り装置を備える自動縫製装置の概要を示す。
【0010】
図1に例示する自動縫製装置は、折り装置1と、搬送装置2と、ミシン装置3と、スタッカー装置4とを備える。折り装置1、搬送装置2、及びミシン装置3は、それぞれ機枠5に取り付けられている。この自動縫製装置は、折り装置1の所定位置にシート(図示省略)を固定した後、スタートボタン(図示省略)を押すと、自動的に、折り装置1がシートの端部を三つ折りし、この三つ折り完了後、搬送装置2がシートの三つ折り部をミシン装置3の縫製部に受け渡し、ミシン装置3が自動縫製し、この縫製完了後、スタッカー装置4でシートを折り畳むようになっている。
【0011】
この自動縫製装置は、布、不織布等、ミシン装置3で縫製可能な様々なシート(素材)に適用することが可能であり、その縫製対象とするシートの仕様違い(例えば、タオル、おしぼり、ハンカチ)に応じて折り装置1等の制御内容を変更することが可能になっている。
【0012】
折り装置1を抜き出して
図2に示す。同図に示すように、折り装置1は、シートSを載せるための折り台11と、折り台11上のシートSの部分を押さえるための固定用アーム12と、シートSの端部を折るための定規13及び折り部材14と、定規13を駆動するための第一駆動機構と、折り部材14を駆動するための第二駆動機構とを備える。
【0013】
折り台11は、水平方向に沿った上面を有する。この上面上にシートSが載せられる。
【0014】
ここで、上下方向は、水平方向に対して垂直な方向を意味し、高い方が上方、低い方が下方である。以下、水平面上で直交する二直線の一方に沿った方向を前後方向とし、他方に沿った方向を左右方向とする。
【0015】
折り台11の上面は、左右方向に長く、前後方向に短い矩形板状になっている。折り台11の上面は、
図1に示す搬送装置2のテーブル部2aと、ミシン装置3のテーブル部3aと同一高さで左右方向に連続している。
【0016】
図2、
図3に示すように、折り装置1は、左右一対の脚付きフレーム15a、1bを有する。折り台11は、左右のフレーム15a、15bの脚の前方向側に立設されている。
【0017】
固定用アーム12の左右両側は、左右のフレーム15a、15bに連結されている。固定用アーム12は、フレーム15a、15bに対して揺動軸16周りに上下に揺動可能になっている。固定用アーム12を駆動する機構は、空気シリンダ17とリンク機構を組み合わせた構造になっており、駆動源となる空気シリンダ17のピストン往復運動をリンク機構で揺動軸16を中心とした固定用アーム12の揺動に変換することができる。
【0018】
図4に示すように、固定用アーム12の後面側には、後方向側に向かって空気を吹き出すためのエアー噴出部18が設けられている。エアー噴出部18は、固定用アーム12の左右両側に設けられており、所定の左右方向範囲に後方向に開口した吹き出しノズルを有する。
【0019】
図5に、定規13を駆動する第一駆動機構を抜粋して示し、
図6に、折り部材14を駆動する第二駆動機構を抜粋して示す。
【0020】
図3、
図5、
図6に示すように、左右のフレーム15a、15bには、それぞれ上下方向に歯が並ぶラック19a,19bと、上下方向に延びるガイド軸20a、20bとが固定されている。
【0021】
左方のフレーム15aに対して左方向側には、電動サーボモータ21、22が上下に並んで配置されている。これら電動サーボモータ21、22は、それぞれ後述する別々の宙吊りブラケットの左側板部に固定されている。これら電動サーボモータ21、22は、それぞれモータ軸の左右両側にピニオン21a、22aを有し、これらピニオン21a、22aにおいてラック19a、19bと噛み合っている。
【0022】
図5に示すように、宙吊りブラケット23が設けられ、宙吊りブラケット23の左右両側板にスライダ24a、24bが固定され、宙吊りブラケット23の上面側に電動サーボモータ25が立設され、宙吊りブラケット23の上面にスライダ26a、26bが固定されている。
【0023】
図6、
図7に示すように、宙吊りブラケット23の下方に別の宙吊りブラケット27が設けられ、宙吊りブラケット27の左右両側板にスライダ28a、28bが固定され、宙吊りブラケット27の下面側に電動サーボモータ29が立設され、宙吊りブラケット27の下面にスライダ30a、30bが固定されている。
【0024】
図5、
図6に示すように、スライダ24a、24b、28a、28bには、ガイド軸20a、20bが挿通されている。スライダ24a、24b、28a、28bとガイド軸20a、20bは、スライダ24a、24b、28a、28bをガイド軸20a、20bによって上下方向に案内する直動ガイドを構成している。
【0025】
スライダ26a、26bには、前後方向に延びるガイド軸31a、31bが挿通されている。スライダ26a、26bとガイド軸31a、31bは、スライダ26a、26bをガイド軸31a、31bによって前後方向に案内する直動ガイドを構成している。
【0026】
スライダ30a、30bには、前後方向に延びるガイド軸32a、32bが挿通されている。スライダ30a、30bとガイド軸32a、32bは、スライダ30a、30bをガイド軸32a、32bによって前後方向に案内する直動ガイドを構成している。
【0027】
図3、
図5、
図6に示すように、定規13及び折り部材14は、それぞれ左右方向に沿って延びており、シート(図示省略)に宛がって折り位置を定めたり、折り操作を行ったりするための部位である。定規13は、上下方向に沿った板部と、この板部の下端側から後方向側へ曲がり水平方向に沿った板部とで形成されたアングル板状になっている。折り部材14は、上下方向に沿った板部と、この板部の上端側から前方向側へ曲がり水平方向に沿った板部とで形成されたアングル板状になっている。定規13の上面、折り部材14の下面には、それぞれシートに対する滑り止めとしてゴム等を配置してもよい。
【0028】
図3、
図5に示すように、定規13を支持する定規フレーム33には、ガイド軸31a、31bの前端部と、前後方向に歯が並ぶラック34と、プッシュ装置35とが取り付けられている。電動サーボモータ25は、そのモータ軸にピニオン(図示省略)を有し、そのピニオンにおいてラック34と噛み合っている。
【0029】
図5、
図8に示すプッシュ装置35は、シートSの端部の三つ折り完成時、三つ折り部S
3の左右方向への食み出し部を左右中央側へ押して食み出しを解消するためのものであり、定規フレーム33の左右両側に設けられている。各プッシュ装置35は、空気シリンダ36により、前述の食み出し部に当てるスライド板37を左右方向に駆動するようになっている。
【0030】
図6、
図7に示すように、折り部材14を支持する折り部材フレーム38には、ガイド軸32a、32bの前端部と、前後方向に歯が並ぶラック39とが取り付けられている。電動サーボモータ29は、そのモータ軸にピニオン(図示省略)を有し、そのピニオンにおいてラック39と噛み合っている。
【0031】
各電動サーボモータ21、22、25、29は、それぞれモータ軸の回転位置、回転速度を数値制御可能な電気モータからなる。各電動サーボモータ21、22、25、29は、モータ軸の回転を制御するマイコン(いわゆるモータドライバ)を有する。各電動サーボモータ21、22、25、29として、例えば、モータ軸の回転位置、速度を検出するための回転センサからの出力に応じてモータドライバが数値制御を行うデジタル制御型のACサーボモータが挙げられる。
【0032】
折り装置1は、各電動サーボモータ21、22、25、29のマイコンに対して制御内容を任意に入力するためのパーソナルコンピュータ等の制御用コンピュータ(図示省略)を備える。この制御用コンピュータには、様々なシート(素材)の仕様に対応させてモータ駆動制御の内容を記憶させることができ、作業者は、縫製対象とするシートに対応の制御内容を新規登録したり、既存登録の中から選択したりすることにより、各電動サーボモータ21、22、25、29に制御内容を書き込むことができる。このような電動サーボモータ21、22、25、29及び制御用コンピュータは、産業ロボットの制御として一般的なものを適宜に利用すればよい。
【0033】
図3、
図5に示す第一駆動機構は、第一の電動サーボモータ21の正逆回転をラック19a、19bとピニオン21aで宙吊りブラケット23の上下方向運動に変換する。この宙吊りブラケット23と一体的にスライダ26a、26b、ガイド軸31a、31b、定規フレーム33、定規13、及びプッシュ装置35が上下方向動する。
【0034】
また、第一駆動機構は、第二の電動サーボモータ25の正逆回転をラック34とピニオン(図示省略)でラック34の前後方向運動に変換する。このラック34と一体的に定規フレーム33、ガイド軸31a、31b、定規13、及びプッシュ装置35が前後方向動する。
【0035】
このように、第一駆動機構は、第一の電動サーボモータ21を駆動源として定規13を上下方向に駆動し、第二の電動サーボモータ25を駆動源として定規13を前後方向に駆動することができる。その駆動範囲は、定規13を折り台11の上方で上下方向及び前後方向に駆動可能に確保されている。
【0036】
図6、
図7に示す第二駆動機構は、第三の電動サーボモータ22の正逆回転をラック19a、19bとピニオン22aで宙吊りブラケット27の上下方向運動に変換する。この宙吊りブラケット27と一体的にスライダ30a、30b、ガイド軸32a、32b、折り部材フレーム38、及び折り部材14が上下方向動する。
【0037】
また、第二駆動機構は、第四の電動サーボモータ29の正逆回転をラック39とピニオン(図示省略)でラック39の前後方向運動に変換する。このラック39と一体的に折り部材フレーム38、ガイド軸32a、32b、及び折り部材14が前後方向動する。
【0038】
このように、第二駆動機構は、第三の電動サーボモータ22を駆動源として折り部材14を上下方向に駆動し、第四の電動サーボモータ29を駆動源として折り部材14を前後方向に駆動することができる。その駆動範囲は、折り台11の後縁から後方向に外れた位置で上下方向に駆動可能かつ折り台11の上面よりも高い位置で前後方向及び上下方向に駆動可能に確保されている。
【0039】
図3に示す折り装置1によりシートの端部を三つ折りする方法を
図9~13に示す。以下、代表的な例として、シートとしてタオルを想定し、タオルの端部であるヘム部を三つ折りする場合を想定して説明する。
【0040】
なお、
図9~
図13の各図は、折り方を模式的に示すものであり、図面を見やすくするため、適宜、定規13、折り部材14、シートSを敢えて接触させないように描いているところがある。また、
図9~
図13は、時系列順に並んでおり、各図内の(a)以降の並びを時系列順としている。また、同一時点の図中において、一点鎖線と実線で描いた定規13、折り部材14が示されている場合、一点鎖線は、移動直前の定規13、折り部材14の位置を示し、実線は、移動後の定規13、折り部材14の位置を示す。各一点鎖線の位置から実線の位置への移動は、最短の移動経路となる直線移動のみである。そして、定規13、折り部材14の上下方向成分の移動量は、それぞれ独立した対応の第一又は第三の電動サーボモータの回転制御に基づく上下方向駆動によるものである。また、定規13、折り部材14の前後方向(各図において左右方向相当)成分の移動量は、それぞれ独立した対応の第二又は第四の電動サーボモータの回転制御に基づく前後方向駆動によるものである。各図の時系列間隔は、一定であり、各図間での移動量の大小差は、移動速度差に相当する。また、以下では、上下方向又は前後方向の移動に関して、特に斜め方向であることを言及しない限り、上下方向に沿った方向の移動又は前後方向に沿った方向の移動を意味する。
【0041】
図9(a)のとき、定規13と折り部材14の数値制御上の原点位置にある。作業者(図示省略)は、
図9(b)に示すように、折り台11に対して前方向側からシートSを折り台11の上面に載せる。このとき、シートSのパイル部を折り台11上に置き、端部S
1を折り台11から後方向に食み出させて折り部材14の上面上に置く。作業者が足元のフットスイッチ(図示省略)を踏むと、折り部材14が原点位置のまま、定規13が後方向に移動した後、
図9(c)に示すように、下方向に移動してから停止する。このとき、折り台11の上面と定規13の下面間に上下方向の距離があるので、作業者は、シートSを折り台11に対して自由に前後左右方向に動かすことができる。この状態で作業者がもう一度フットスイッチを踏むと、
図9(d)に示すように、折り部材14が原点位置のまま、定規13がさらに下方向に移動してから停止する。この停止位置は、折り台11と定規13の下面間に距離が無くなる位置に設定されており、このため、シートSが仮固定される。
【0042】
作業者は、定規13の角部がシートSのパイル部とヘム部の境界の角部に接触するか目視確認し、角部同士の位置がずれている場合、フットスイッチを開放し、シートSの位置を直してから再びフットスイッチを押して再確認する。角部同士の位置合わせが完了したら、フットスイッチをON中にスタートスイッチ(図示省略)をONする。すると、固定用アーム12(
図3参照)が下方へ揺動し、シートSのパイル部が折り台11と固定用アーム12との間に挟まれて、折り台11に固定される。この状態から、定規13及び折り部材14が別々に又は同時に上下方向、前後方向に移動し、折を形成していく。
【0043】
具体的には、
図9(e)に示すように、定規13が上方向へ移動し、続いて、
図9(f)に示すように、後方向へ移動し、続いて、
図9(g)に示すように、下方向へ移動してから停止する。これにより、定規13の後縁が、折り台11の上面の後縁に対して所定に前方向へ離れた位置でシートSのヘム部を上から押さえる状態となり、二つ折りの予定位置が定められる。
【0044】
続いて、
図10(a)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が上方向へ移動し、さらに
図10(b)に示すように、折り部材14が前方向へ移動する。これにより、シートSの端部S
1が前方向側(折り台11上)へ折り返される。
【0045】
続いて、
図10(c)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が上方向へ移動してから停止する。続いて、
図10(d)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が、前方向に向かって上方へ傾斜した斜め方向に移動し(すなわち、第一及び第二の電動サーボモータによる同時駆動)、折り返し端部S
1の下方から抜き出てから停止する。その斜め方向が水平に対して成す仰角は、
図10(c)における折り部材14の上昇量の範囲内で与えられる。
【0046】
図10(c)に示すように折り部材14を上昇させてから定規13を抜き出すことにより、二つ折り部S
2に対する上からの加圧が緩められるので、定規13が折り返し端部S
1の下方から抜き出る際、折り返し端部S
1が定規13の上面に引き摺られて二つ折り部S
2の型が崩れることは起こりにくくなる。また、定規13が前方向へ水平に抜き出される場合、その定規13の移動中に定規13の下面と二つ折り部S
2の下半側間の摩擦が比較的大きくなるので、二つ折り部S
2が型崩れし易くなる。これに対し、
図10(d)に示すように、折り部材14を上昇させた後、定規13を前述の斜め方向に抜き出すことにより、その定規13の移動中における定規13と二つ折り部S
2の下半側間の摩擦が比較的小さくなるので、二つ折り部S
2が比較的型崩れしにくくなる。これらのことから、二つ折り部S
2から定規13を抜き出す際、二つ折り部S
2の型崩れが防止される。
【0047】
続いて、
図11(a)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が下方向に移動し始め、二つ折り部S
2を上から押さえ直し始める。続いて、
図11(b)に示すように、引き続き折り部材14が下方向に移動してから停止すると共に、定規13が上方向に移動する。続いて、
図11(c)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が後方向に移動し、折り部材14の上方に移動する。続いて、
図11(d)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が下方向に移動する。続いて、
図11(e)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が前方向に移動する。続いて、
図11(f)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が下方向に移動してから停止し、二つ折り部S
2を上から押さえる。
【0048】
仮に、二つ折り部S
2の上半側が
図11(c)中に二点鎖線で描くように折り部材14の上面に跳ね上っていた場合、その後の三つ折り時の端部の飛び出し、四つ折り等の不良三つ折りの原因になり得る。
図11(b)~(e)に示すように、定規13を移動させるようにしておけば、
図11(c)中に二点鎖線で描く跳ね上りが発生した場合であっても、その跳ね上り部分を定規13で前方向へ押し延ばして解消することができる。勿論、シートSの素材によって跳ね上りが起こる懸念がないこともあるので、そのような場合、制御内容を変更して
図11(b)~(e)の工程を省略することも可能である。
【0049】
続いて、
図11(g)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が上方向に移動する。続いて、
図11(h)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が後方向に移動する。続いて、
図11(i)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が下方向に移動する。続いて、
図11(j)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が前方向に移動する。続いて、
図11(k)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が上方向に移動し、二つ折り部S
2の後端部を押し上げる。続いて、
図11(l)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が前方向に移動し、二つ折り部S
2の上端部を前方向側へ傾ける。続いて、
図12(a)に示すように、定規13が停止した状態のまま、折り部材14が下方向に移動する。これにより、定規13と折り部材14とで二つ折り部S
2が挟持される。
【0050】
続いて、
図12(b)に示すように、定規13と折り部材14が同時に上方向に移動して、二つ折り部S
2を持ち上げる。これにより、二つ折り部S
2の皺が解消され、二つ折り部S
2の縁部のラインが揃えられる。なお、皺がよりにくいシートの素材であれば、
図12(b)の工程を飛ばすことも可能である。
【0051】
続いて、
図12(c)に示すように、定規13と折り部材14が同時に前方向に対して上方向に傾斜した斜め方向に移動してから、
図12(d)に示すように、定規13と折り部材14が同時に下方向へ移動して停止する。これにより、二つ折り部S
2が前方向側に折り返されて、三つ折り部S
3が形成される。
【0052】
ここで、
図12(c)の移動中、持ち上げられた二つ折り部S
2の非挟持部に対して前方向側へ寄った位置から空気が左右のエアー噴出部18(
図4参照)から後方向へ吹き出される。この吹き出しにより、定規13の後縁から垂れ下がる二つ折り部S
2の非挟持部が
図12(d)のときに曲がり、四重になったり、歪につぶれたりすることが防止される。なお、シートSがタオルやガーゼの様な柔らかい繊維製品である場合、エアー吹き出しを行うことが好ましいが、硬いシートである場合、エアー吹き出しを行うと、定規13と折り部材14の挟持が外れ易くなるので、エアー吹き出しを行わない方がよいこともある。
【0053】
続いて、
図12(e)に示すように、折り部材14が停止した状態のまま、定規13が前方向に対して上方向に傾斜した斜め方向に移動し、三つ折り部S
3から抜き出される。
【0054】
続いて、
図13(a)~(c)に示すように、定規13が上方向、後方向、下方向の順に移動して、三つ折り部S
3の前端部を上から押さえ、停止する。続いて、
図13(d)~(f)に示すように、折り部材14が、上方向、後方向、下方向の順に移動して、三つ折り部S
3の後端部を上から押さえ、停止する。これら
図13(a)~(e)により、三つ折り部S
3の折り目が安定させられる。
【0055】
続いて、
図13(g)~(i)に示すように、定規13、折り部材14が、それぞれ原点位置へ復帰させられていき、やがて
図9(a)の位置に戻る。これにより、第一駆動機構及び第二駆動機構による自動三つ折り制御が完了する。
【0056】
この折り装置1は、上述のようなものであり、シートSを載せるための折り台11と、折り台11から一方向(図示例において後方向相当)に食み出たシートSの端部S
1を折るための定規13及び折り部材14とを備え、折り台11上のシートSの部分を定規13が上から押さえ、折り台11から食み出た端部S
1を折り部材14が下から押し上げ、反一方向(図示例において前方向相当)側へ折り返し、当該折り返した端部S
1を上から押さえるものにおいて(
図10参照)、第一の電動サーボモータ21を駆動源として定規13を上下方向に駆動し、第二の電動サーボモータ25を駆動源として定規13を一方向と反一方向に駆動する第一駆動機構(
図3、
図5参照)と、第三の電動サーボモータ22を駆動源として折り部材14を上下方向に駆動し、第四の電動サーボモータ29を駆動源として折り部材14を一方向と反一方向に駆動する第二駆動機構(
図3、
図6、
図7参照)とを備えることにより、シートSの素材の変更に合わせてモータ駆動制御の内容を変更することを容易に行うことができ、空気シリンダでは困難な高位置決め精度を要する折り方(
図10(d)、
図11、
図12等参照)を実現し、折り部S
2、S
3の縮みや皺や型崩れを防止することができる。
【0057】
特に、この折り装置1は、第二駆動機構が折り返した端部S
1を上から押さえた折り部材14を上方へ駆動し、この後、第一駆動機構が折り返した端部S
1の下方に位置する定規13を、反一方向に駆動するのと同時に上方向に駆動して折り返した端部S
1の下方から抜き出すことにより(
図10(d)参照)、二つ折り部S
2の型崩れを防止することができる。
【0058】
また、この折り装置1は、第一駆動機構が前記抜き出した定規13を、上方へ駆動してから折り部材14の上方に位置するように一方向へ駆動し、さらに当該折り部材14から所定高さまで下方へ駆動した後、反一方向へ駆動することにより(
図11(a)~(e)参照)、二つ折り部S
2が折り部材14に跳ね上っていた場合であってもこれを押し延して解消することができる。
【0059】
また、この折り装置1は、第一駆動機構が前記抜き出した定規13を、折り返した端部S
1と折り台11上のシートS部分の重なった二つ折り部S
2を上から押さえるように駆動し、第二駆動機構が当該二つ折り部S
1を当該定規13と挟持させるように折り部材14を駆動し、これら第一及び第二駆動機構が対応の当該定規13と当該折り部材14を、当該挟持状態の二つ折り部S
2を持ち上げ、反一方向側へ折り返すように駆動することにより(
図11(k)~
図12(d)参照)、柔らかい素材のシートSであっても皺が少なくラインの揃った三つ折り部S
3を形成することができる。
【0060】
また、この折り装置1は、第一及び第二駆動機構によって反一方向側へ折り返される二つ折り部S2の非挟持部に対して反一方向側へ寄った位置から空気を一方向側へ吹き出すエアー噴出部18を備えることにより、柔らかい素材のシートSであっても、三つ折りするまでの二つ折り部S2の非挟持部の垂れ下がりを抑えて、三つ折り部S3を良好に形成することができる。
【0061】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 折り装置
11 折り台
13 定規
14 折り部材
18 エアー噴出部
21 第一の電動サーボモータ
22 第三の電動サーボモータ
25 第二の電動サーボモータ
29 第四の電動サーボモータ