(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240802BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240802BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240802BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240802BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240802BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L25/04 C
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2022565929
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2021005373
(87)【国際公開番号】W WO2021221460
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051778
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0053136
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0053480
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504394744
【氏名又は名称】アモセンス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMOSENSE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Cheonan the fourth Local Industrial Complex) 19-1 Block, 90, 4sandan 5-gil, jiksan-eup, Seobuk-gu Cheonan-si, Chungcheongnam-do 31040, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ヨンファン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ギョンファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨンスル
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052366(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0110376(KR,A)
【文献】国際公開第2018/179796(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220540(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/60
H01L 25/07
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に形成された粘着層と、
前記粘着層上に形成された接着層と、
を含
み、
前記接着層は、前記粘着層上に多層構造に形成され、
前記接着層は、
前記粘着層の上面に積層された第1接着層と、
前記第1接着層の上面に積層された第2接着層と、
前記第2接着層の上面に積層された第3接着層とを含み、
前記第1接着層ないし前記第3接着層は、フレーク状ナノ粒子からなるAg粉末を含み、
前記第2接着層に含まれたAg粉末の平均粒径は、前記第1接着層と前記第3接着層に含まれたAg粉末の平均粒径に比べて相対的に小さいことを特徴とする接着剤転写フィルム。
【請求項2】
前記接着層は、Ag接着層であり、
前記Ag接着層は、Ag粉末97~99重量%とバインダー1~3重量%とを含むことを特徴とする請求項1に記載の接着剤転写フィルム。
【請求項3】
前記ベースフィルムは、PETフィルムであり、
前記粘着層は、OCAであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤転写フィルム。
【請求項4】
前記接着層は、前記粘着層上にパターン形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の接着剤転写フィルム。
【請求項5】
接着剤転写フィルムを準備する準備ステップと、
前記接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させ、前記接着層が転写された対象物を前記接着層を介して下部基板に仮接合させる仮接合ステップと、
前記下部基板上に仮接合された前記対象物の上部に上部基板を接合し焼結して、前記下部基板と前記上部基板との間に前記対象物を本接合させる本接合ステップと、
を含
み、
前記仮接合ステップは、
ダイに前記接着剤転写フィルムを固定させ、真空を利用して対象物を吸着および固定する上部チャックに対象物を固定させるステップと、
前記上部チャックと前記ダイをそれぞれ加熱しながら前記上部チャックに固定された前記対象物を前記接着剤転写フィルム側に加圧して、前記接着剤転写フィルム上の接着層を前記対象物に転写させるステップと、
真空を維持しながら前記上部チャックを上昇させて、前記接着層が付着した対象物を上昇させるステップと、
前記上部チャックを下部基板の上部に搬送させるステップと、
前記上部チャックに固定された対象物を前記下部基板側に加圧して、前記対象物を前記下部基板に仮接合させるステップと、
真空を解除し、前記上部チャックを上昇させるステップと、含むことを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項6】
前記準備ステップは、
ベースフィルムを準備するステップと、
前記ベースフィルム上に粘着層を形成するステップと、
前記粘着層上に接着層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項7】
前記準備ステップは、
PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、
前記OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して、Ag接着層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項8】
前記準備ステップにおいて、
前記対象物の位置に対応するパターン形状の接着層が形成されるように接着剤転写フィルムを準備することを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項9】
前記準備ステップは、
PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、
前記OCAフィルム上にAg焼結ペーストをメッシュスクリーン印刷またはステンシル印刷し乾燥して、パターン形状のAg接着層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項10】
前記準備ステップは、
ベースフィルムを準備するステップと、
前記ベースフィルム上に粘着層を形成するステップと、
前記粘着層上にAg焼結ペーストをコーティングし乾燥する過程を3回以上行って、多層構造の接着層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項11】
前記ダイは、80~100℃の温度に加熱し、前記上部チャックは、100~170℃の温度に加熱することを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項12】
前記焼結は、240~300℃で加熱加圧しながら2分~5分間行うことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項13】
前記仮接合ステップにおいて、
前記対象物は、半導体チップ、第1導電性スペーサおよび第2導電性スペーサを含み、
前記仮接合ステップは、
前記接着剤転写フィルム上の接着層を半導体チップの下面に転写させ、前記接着層が転写された半導体チップを前記接着層を介して下部基板の上面に仮接合させる第1仮接合ステップと、
前記接着剤転写フィルム上の接着層を第1導電性スペーサの下面に転写させ、前記接着層が転写された第1導電性スペーサを前記接着層を介して前記半導体チップの上面に仮接合させる第2仮接合ステップと、
前記接着剤転写フィルム上の接着層を第2導電性スペーサの下面に転写させ、前記接着層が転写された第2導電性スペーサを前記接着層を介して前記下部基板の上面に仮接合させる第3仮接合ステップと、
を含むことを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項14】
前記第2導電性スペーサの高さは、前記半導体チップ、前記接着層、前記第1導電性スペーサの高さを合わせた高さと等しい高さであることを特徴とする請求項
13に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項15】
前記本接合ステップは、
前記下部基板上に仮接合された前記第1導電性スペーサおよび前記第2導電性スペーサに対応して位置するように、上部基板の下面に接着層を形成するステップと、
前記上部基板を上部チャックに固定し、前記上部チャックに固定された上部基板を前記下部基板側に加熱加圧して、前記半導体チップと前記第1導電性スペーサとの仮接合体および前記第2導電性スペーサを前記上部基板と前記下部基板との間に本接合させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項
13に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項16】
前記上部基板と前記下部基板は、AMB基板またはDBC基板を用いることを特徴とする請求項
5に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法に関し、より詳しくは、半導体チップおよびスペーサを基板に接合するために作製された接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、電気車に用いられる電圧を直流から交流に変更してモータに供給する。電気車の高性能化によってパワーモジュールに実装される半導体チップは、既存のシリコン(Si)から性能に優れた炭化ケイ素(SiC)に変化している。ところが、炭化ケイ素半導体を用いるパワーモジュールは、高電圧によって高い発熱が発生するため、放熱が重要である。
【0003】
パワーモジュールは、2枚の基板の間に半導体チップが実装され、半導体チップの放熱特性を良好にするために、Ag焼結ペースト(Ag Sintering Paste)を用いた接合方式を使用する。ところが、Ag焼結ペーストを用いた接合は、半導体チップまたはスペーサにAg焼結ペーストを均一に塗布しにくく、半導体チップにスペーサが載せられる形態の場合、追加的に接着剤塗布および2次焼結が要求されるので、工程時間が長く、高価な装置が必要という問題点がある。
【0004】
また、パワーモジュールは、各構成を接合させる時、半導体チップの破損を防止するために、はんだ付け接合方式を使用したりするが、はんだ付け接合は接合強度が低く、接合が分離される問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体チップおよびスペーサを基板に接合するための接合工程において、Ag焼結ペースト(Ag Sintering Paste)をフィルム状に作製して均一な厚さおよびボイドのない接合を可能にし、これとともに、焼結工程を最少化して工程時間を短縮させ、設備投資費が減少するようにした接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、Ag焼結ペースト(Ag Sintering Paste)からなる接着層をフィルムにパターン状に作製して、接合工程における残留物(burr)の発生頻度を低減し、単価を減少させるようにした接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、高い熱伝導率の確保と焼結後に高い破壊強度を有し、割れによる不良を最少化できる接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による接着剤転写フィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルム上に形成された粘着層と、粘着層上に形成された接着層と、を含むことを特徴とする。
【0009】
接着層は、Ag接着層であり、Ag接着層は、Ag粉末97~99重量%とバインダー1~3重量%とを含むことが好ましい。
【0010】
ベースフィルムは、PETフィルムであり、粘着層は、OCAであってもよい。
【0011】
接着層は、粘着層上にパターン形状に形成され得る。
【0012】
また、接着層は、粘着層上に多層構造に形成され得る。
【0013】
接着層は、粘着層の上面に積層された第1接着層と、第1接着層の上面に積層された第2接着層と、第2接着層の上面に積層された第3接着層とを含み、第1接着層および第3接着層は、ナノ粒子からなるAg粉末を含み、第1接着層ないし第3接着層は、フレーク状ナノ粒子からなるAg粉末を含み、第2接着層に含まれたAg粉末粒子の平均粒径は、第1接着層と第3接着層に含まれたAg粉末粒子の平均粒径に比べて相対的に小さいことが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるパワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルムを準備する準備ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させ、接着層が転写された対象物を接着層を介して下部基板に仮接合させる仮接合ステップと、下部基板上に仮接合された対象物の上部に上部基板を接合し焼結して、下部基板と上部基板との間に前記対象物を本接合させる本接合ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
準備ステップは、ベースフィルムを準備するステップと、ベースフィルム上に粘着層を形成するステップと、粘着層上に接着層を形成するステップと、を含むことが好ましい。
【0016】
準備ステップは、PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して、Ag接着層を形成するステップとを含み得る。
【0017】
準備ステップにおいて、対象物の位置に対応するパターン形状の接着層が形成されるように接着剤転写フィルムを準備することが好ましい。
【0018】
準備ステップは、PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、OCAフィルム上にAg焼結ペーストをメッシュスクリーン印刷またはステンシル印刷し乾燥して、パターン形状のAg接着層を形成するステップとを含み得る。
【0019】
また、準備ステップは、ベースフィルムを準備するステップと、ベースフィルム上に粘着層を形成するステップと、粘着層上にAg焼結ペーストをコーティングし乾燥する過程を3回以上行って、多層構造の接着層を形成するステップとを含み得る。
【0020】
仮接合ステップは、ダイに接着剤転写フィルムを固定させ、真空を利用して対象物を吸着および固定する上部チャックに対象物を固定させるステップと、上部チャックとダイをそれぞれ加熱しながら上部チャックに固定された対象物を接着剤転写フィルム側に加圧して、接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させるステップと、真空を維持しながら上部チャックを上昇させて、前記接着層が付着した対象物を上昇させるステップと、上部チャックを下部基板の上部に搬送させるステップと、上部チャックに固定された対象物を下部基板側に加圧して、対象物を下部基板に仮接合させるステップと、真空を解除し、上部チャックを上昇させるステップと、を含むことが好ましい。
【0021】
仮接合ステップにおいて、ダイは、80~100℃の温度に加熱し、上部チャックは、100~170℃の温度に加熱することが好ましい。
【0022】
本接合ステップにおいて、焼結は、240~300℃で加熱加圧しながら2分~5分間行うことが好ましい。
【0023】
仮接合ステップにおいて、対象物は、半導体チップ、第1導電性スペーサ、および第2導電性スペーサを含み、仮接合ステップは、接着剤転写フィルム上の接着層を半導体チップの下面に転写させ、接着層が転写された半導体チップを接着層を介して下部基板の上面に仮接合させる第1仮接合ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を第1導電性スペーサの下面に転写させ、接着層が転写された第1導電性スペーサを接着層を介して半導体チップの上面に仮接合させる第2仮接合ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を第2導電性スペーサの下面に転写させ、接着層が転写された第2導電性スペーサを接着層を介して下部基板の上面に仮接合させる第3仮接合ステップとを含むことが好ましい。
【0024】
第2導電性スペーサの高さは、半導体チップ、接着層、第1導電性スペーサの高さを合わせた高さと等しい高さであることが好ましい。
【0025】
本接合ステップは、下部基板上に仮接合された第1導電性スペーサおよび第2導電性スペーサに対応して位置するように、上部基板の下面に接着層を形成するステップと、上部基板を上部チャックに固定し、上部チャックに固定された上部基板を下部基板側に加熱加圧して、半導体チップと第1導電性スペーサとの仮接合体および第2導電性スペーサを上部基板と下部基板との間に本接合させるステップと、を含み得る。
【0026】
上部基板と上記下部基板は、AMB基板またはDBC基板を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、銀焼結ペーストをフィルム状に作製して半導体チップおよびスペーサを下部基板に接合する用途に用いる。また、本発明は、最終上部基板に接着層を印刷方式で形成し、下部基板のスペーサと接合させながら加熱加圧して焼結する。
【0028】
したがって、本発明は、下部基板をひっくり返す必要がなく下部基板上のスペーサと上部基板との本接合が可能なため、焼結が1回に簡素化され、これによって、工程時間が短縮され、設備投資費も減少させる効果がある。
【0029】
また、本発明は、下部基板と上部基板との間に半導体チップとスペーサとを接合する接着層の下面の平坦度をベースフィルムが抑えてくれ、接着層の上面の平坦度は上部チャックの加圧力で抑えてくれることが可能なため、接着層の厚さを薄くて均一に形成することができる。したがって、本発明は、上部基板と下部基板との均一な接合が可能であり、これはパワーモジュール製品の信頼性を高める効果がある。
【0030】
さらに、本発明は、接着層のパターン化により大量生産が可能であり、1回の転写で半導体チップのような複数の対象物を基板に仮接合可能なため、接着剤転写フィルムの使用量を減少させ、仮接合工程時間を大きく短縮させることができる効果がある。
【0031】
また、本発明は、パターン化した接着層が対象物と1対1に対応して転写されるので、転写時の残留物(burr)の発生を大きく低減することができ、接着剤転写フィルムにおいてAgを使用する接着層の面積が大きく減少して製品単価を大きく下げることができる効果がある。
【0032】
なお、本発明は、ベースフィルム上にAg焼結ペーストを3回以上コーティングし乾燥して、ベースフィルム上に多層構造のAg接着層を形成した接着剤転写フィルムを作製し、この接着剤転写フィルムを半導体チップおよびスペーサを基板に接合する用途に用いることができる。
【0033】
上記の多層構造のAg接着層は、Ag粉末粒子がフレーク状を有するので、焼結時の収縮率が小さく、Ag接着層が多層構造および異種粉末粒子で構成されるので、クラックの起点になる残留応力の除去に利点があるので、焼結後の割れによる不良が最小化され、50MPa以上の高い破壊強度(引張強度)を確保できる効果がある。
【0034】
また、上記の多層構造のAg接着層は、加圧焼結方式を適用して半導体チップおよびスペーサなどを基板に接合する場合、気孔を最小化して高い熱伝導率を確保することができ、焼結時間が短縮可能で工程効率を高められる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施例による接着剤転写フィルムを示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の例を示す平面図である。
【
図4A】
図3のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図4B】
図3のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図4C】
図3のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図4D】
図3のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の他の例を示す平面図である。
【
図6】
図5のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施例による接着剤転写フィルムを示す断面図である。
【
図8】本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図9A】本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法の例を示す図である。
【
図9B】本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法の例を示す図である。
【
図9C】本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法の例を示す図である。
【
図10A】半導体チップを固定した上部チャックの底面図である。
【
図10B】半導体チップを固定した上部チャックに対応する接着剤転写フィルムの平面図である。
【
図12】
図10Aおよび
図10B並びに
図11に示された上部チャックおよび接着剤転写フィルムによるパワーモジュール用基板の製造方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の第3実施例による接着剤転写フィルムの接着層構造と接着層が焼結された状態を示す断面図である。
【
図14】本発明の第3実施例による接着剤転写フィルムの接着層の微細構造を示す断面図である。
【
図15】本発明の第3実施例による接着剤転写フィルムから対象物を基板に接合した接着層の焼結後の収縮された様子を説明するための図である。
【
図16】パワーモジュールの半導体チップにおいて冷却と加熱を繰り返す間に発生する反りを示す図である。
【
図17A】本発明のAg接着層(第3実施例)とSn Solder(比較例)をパワーモジュールに適用して割れ特性を比較したSEM写真である。
【
図17B】本発明のAg接着層(第3実施例)とSn Solder(比較例)をパワーモジュールに適用して割れ特性を比較したSEM写真である。
【
図17C】本発明のAg接着層(第3実施例)をパワーモジュールに適用して割れ特性を比較したSEM写真である。
【
図18A】本発明のAg接着層(第3実施例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのSEM写真である。
【
図18B】本発明のAg接着層(第3実施例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのグラフである。
【
図19A】Sn Solder(比較例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのSEM写真である。
【
図19B】Sn Solder(比較例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのグラフである。
【
図20A】本発明のAg接着層(第3実施例)を250℃で30分間加圧せずに焼結した状態の微細組織を示すSEM写真である。
【
図20B】本発明のAg接着層(第3実施例)を250℃で30分間加圧せずに焼結した状態の微細組織を示すSEM写真である。
【
図21A】本発明のAg接着層(第3実施例)を転写したSi半導体チップを基板に加圧焼結した後、焼結されたAg接着層(Ag焼結層)の組織を撮影した組織写真である。
【
図21B】本発明のAg接着層(第3実施例)を転写したSi半導体チップを基板に加圧焼結した後、焼結されたAg接着層(Ag焼結層)の組織を撮影した組織写真である。
【
図22】本発明のAg接着層(第3実施例)の接着強度を他社製品(比較例)と比較したグラフである。
【
図23】
図22の実施例と比較例の破断表面の一般の撮影写真である。
【
図24】
図22の実施例と比較例の破断表面のSEM写真である。
【
図25】本発明のAg接着層(第3実施例)と比較例(他社製品)の収縮率、反り発生、微細組織を比較した写真である。
【
図26】本発明の第3実施例によるAg接着層と比較例(他社製品)の重量減少(Weight loss)を比較したグラフである。
【
図27】本発明の第3実施例によるAg接着層と比較例(他社製品)の熱量(Calorimetric)を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
本発明の第1実施例による接着剤転写フィルム10は、電力半導体チップ(Chip)、導電性スペーサ(CQC)、絶縁スペーサなどの対象物を基板に接合するための用途に使用できる。
【0038】
図1に示すように、本発明の第1実施例による接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11と、ベースフィルム11上に形成された粘着層(sticky layer)12と、粘着層12上に形成された接着層(Adhesive layer)13とを含む。接着剤転写フィルム10は、Ag焼結ペーストをフィルム状に作製したものである。ベースフィルム11には、PETフィルムを適用し、粘着層12には、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムを適用し、接着層13には、Ag接着層を適用する。Ag接着層13は、放熱特性を良好にするために用いる。
【0039】
Ag接着層は、Ag粉末98~99重量%とバインダー1~2重量%とを含む。Ag接着層は、Ag粉末の含有量を高めて熱伝導度を高める。
【0040】
Agは、高い熱伝導率で放熱特性を良好にし、接着層が伝導性を有するようにする。バインダーは、Agが高い接着力を有して均一に塗布されるようにする。Ag接着層は、均一に塗布可能な範囲でAg粉末の含有量を最大にし、バインダーの含有量を最小にすることで、低温焼結を可能にする。低温焼結温度は、240~300℃の範囲であってもよい。
【0041】
バインダーの含有量が1~2重量%の範囲に低くなると、有機含有量が低くなってAg接着層の熱分解および焼結温度を約60~100℃程度低下させる。低い焼結温度は、Ag接着層の迅速な焼結を可能にする。Ag接着層の迅速な焼結は、焼結時の収縮率を低減し、焼結層の割れを防止して不良率を低下させる。
【0042】
Ag接着層は、Ag粉末がナノ粒子形状で含まれる。Ag粉末は、液相になる温度が900℃以上であるので、240~300℃の範囲で焼結可能であり、Agはんだは、液相になる温度が200℃以上であるので、240~300℃の範囲では焼結不可能である。したがって、Ag接着層は、Agはんだではなく、Ag粉末がナノ粒子形状で含まれていなければならない。
【0043】
Ag接着層は、熱伝導性(Thermal conductivity)が200~300W/mKで高い熱伝導率を有し、剪断強度(Shear strength)が50MPa以上であり、粘度(Viscosity)が40~100kcpsで様々な表面に高い接着力を有する。Agの代わりに、Auを使用してもよいが、費用上、Agを使用することが好ましい。
【0044】
接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11上にOCAフィルムを付着させ、OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して形成することができる。あるいは、接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して形成することができる。印刷は、スクリーン印刷またはステンシル印刷であってもよい。
【0045】
粘着層12は、ベースフィルム11に対する接着層13の離型性を良くする。Ag焼結ペーストは、Ag接着層と同様に、Ag粉末97~99重量%とバインダー1~3重量%とを含む。
【0046】
フィルム状に製造された接着剤転写フィルム10は、接着層13の高さを非常に均一にできる。2枚の基板の間に対象物を接合する場合、接着層13の高さが均一であってこそ、2枚の基板の間に公差が発生せず、最終製品に問題が発生しない。
【0047】
これとともに、2枚の基板の間に対象物を接合する時、接着剤転写フィルム10を用いると、従来の対象物にペーストを塗布し、基板に接合するペースト(paste)工程に比べてボイド(void)およびスタンドオフ(stand off)欠陥を低減することができる。ボイド(void)は、焼結後に接着層13に気孔が発生することであり、スタンドオフ欠陥は、対象物が基板に平らに接合されずにいずれか一側に傾斜したことを意味する。
【0048】
接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11の厚さが75~100μmであってもよい。接着層13の厚さは、40~60μmであってもよいし、好ましくは50μmである。接着剤転写フィルム10は、接着層13の厚さとボイド(void)の調節が可能である。
【0049】
接着剤転写フィルム10は、パワーモジュール用基板の製造方法に適用可能である。
【0050】
図2に示すように、本発明の第1実施例による接着剤転写フィルム10を用いたパワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10を用いて対象物40に接着層を転写し、接着層13が転写された対象物40を下部基板20の上面に仮接合する。
【0051】
パワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10を準備する準備ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させ、接着層が転写された対象物を上記接着層を介して下部基板に仮接合させる仮接合ステップと、下部基板20上に仮接合された対象物40の上部に上部基板30を接合し焼結して、下部基板と上部基板30との間に対象物40を本接合させる本接合ステップとを含む。
【0052】
準備ステップは、ベースフィルムに接着層を予めコーティングするステップである。
【0053】
準備ステップは、ベースフィルム11を準備するステップと、ベースフィルム11上に粘着層12を形成するステップと、粘着層12上に接着層13を形成するステップとを含む。一例として、準備ステップは、PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して、Ag接着層を形成するステップとを含む。ベースフィルム11は、PET(Polyester)フィルム以外にも、PC(Polycarbonate)フィルムを用いることができる。しかし、PETフィルムは、PCフィルムに比べて接着層13の下面の平坦度を抑えるのに有利である。接着層13の上面の平坦度は、上部チャック3の加圧力で抑えることができる。接着層13の平坦度が良くなければ、焼結時に接着層が反る問題になる。
【0054】
図2に示すように、仮接合ステップは、ダイ1に接着剤転写フィルム10を固定させ、真空を利用して対象物40を吸着および固定する上部チャック3に対象物40を固定させるステップ(s1)と、上部チャック3とダイ1をそれぞれ加熱しながら上部チャック3に固定された対象物40を接着剤転写フィルム10側に加圧して、接着剤転写フィルム10上の接着層13を対象物40に転写させるステップ(s2)と、真空を維持しながら上部チャック3を上昇させて、接着層13が付着した対象物40を上昇させるステップ(s3)と、上部チャック3を下部基板20の上部に搬送させるステップ(s4)と、上部チャック3に固定された対象物40を下部基板20側に加圧して、対象物40を下部基板20に仮接合させるステップ(s5)と、上部チャック3の真空を解除し、上部チャック3を上昇させるステップ(s6)とを含む。(s1)~(s3)ステップは、接着剤転写フィルム10から対象物40に接着層13を転写するステップであり、(s5)~(s6)ステップは、接着層13が転写された対象物40を下部基板20に仮接合するステップである。
【0055】
(s1)ステップは、上部チャック3が真空で対象物40をピックアップ(pick up)するステップである。
【0056】
(s2)ステップは、対象物40の下面に接着層13を転写するステップである。(s2)ステップにおいて、ダイ1は、80~100℃の温度に加熱し、上部チャック3は、100~170℃の温度に加熱する。好ましくは、ダイ1は、80~100℃の温度に加熱し、上部チャック3は、160℃の温度に加熱する。加圧は、1~4MPaで行う。上部チャック3の加熱温度がダイ1の加熱温度よりも高くてこそ、接着層13が温度の高い方である対象物40に強く接着できる。
【0057】
(s3)ステップは、接着層13を対象物に付着させてピックアップ(pick up)するステップである。(s3)ステップにおいて、接着層13は、対象物40の下面に転写によって付着し、ベースフィルム11から分離される。この時、粘着層12は、ベースフィルム11から分離されないので、接着層13がきれいに分離できる。
【0058】
(s4)ステップは、対象物40を下部基板20上に仮接合するために、対象物40を下部基板20の上部に搬送するステップである。下部基板20は、AMB基板またはDBC基板であってもよい。
【0059】
(s5)ステップは、上部チャック3に固定された対象物40を下部基板20側に加圧して、対象物40を下部基板20上に仮接合させるステップである。(s5)ステップにおいて、ダイ1は、80~100℃の温度に加熱し、上部チャック3は、100~170℃の温度に加熱する。好ましくは、ダイ1は、80~100℃の温度に加熱し、上部チャック3は、160℃の温度に加熱する。加圧は、1~4MPaの範囲で行う。
【0060】
(s6)ステップは、真空を解除し、上部チャック3を上昇させて仮接合を完了するステップである。このように、80~100℃の温度に加熱されたダイ1を用いて接着剤転写フィルム10を加熱し、100~170℃の温度に加熱された上部チャック3を用いて対象物40を加熱した後、対象物40が接着剤転写フィルム10側に加圧されるように上部チャック3を下降させると、接着剤転写フィルム10上の接着層13が温度のより高い対象物40の下面に転写される。
【0061】
仮接合ステップの後、下部基板20上に仮接合された対象物40の上部に上部基板(
図4の符号30参照)を接合し焼結して、下部基板20と上部基板30との間に対象物40を本接合させるステップを行う。焼結は、240~300℃で加熱加圧しながら2分~5分間行う。加圧は、8~15MPaの範囲で行う。
【0062】
加圧は、ボイド(void)の発生を防止するためのものである。加圧は、密度を高めて焼結工程時間を著しく短縮させる。したがって、加圧焼結すれば、接着層13が穴なしに密になって、熱伝導が高くなり、放熱特性に優れる。また、加圧は、迅速な焼結を可能にする。
【0063】
本接合時の焼結温度および時間は、量産時間を短縮するために、上述した範囲内で調整可能である。例として、本接合時の焼結は、250℃で加圧を5分間行うことが好ましいが、量産性向上のために、300℃で加圧を2分間行うことができる。焼結は、接合強度を向上させるためのものである。加圧時に均一な圧力で加圧して接着層13の平坦度を確保する。
【0064】
仮接合ステップと本接合ステップは、それぞれ進行してもよく、同時に進行してもよい。同時に進行、の意味は、仮接合ステップにおける仮接合が省略され、本接合ステップを行うことを意味する。例として、(s5)ステップにおいて、上部チャック3に固定された対象物40を基板20側に240~300℃の温度、8~15MPaの圧力で2分~5分間加熱加圧して、対象物40を基板20上に仮接合せずに本接合することができる。
【0065】
図3には、本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の例が示されている。
【0066】
パワーモジュールは、下部基板20と上部基板30との複層構造であり、下部基板20と上部基板30との間に半導体チップ40aが設けられる。半導体チップは、Si、SiC、GaNのような電力半導体チップである。
【0067】
下部基板20と上部基板30は、半導体チップ40aから発生する熱の放熱効率を高められるように、セラミック基材21と、セラミック基材21の少なくとも一面にロウ付け(brazing)接合された金属層22とを含むセラミック基板である。セラミック基材21は、アルミナ(Al2O3)、AlN、SiN、Si3N4のいずれか1つであることを一例とする。金属層22は、セラミック基材21上にロウ付け接合された金属箔で、半導体チップ40aを実装する電極パターンおよび駆動素子を実装する電極パターンにそれぞれ形成される。金属箔は、アルミニウム箔または銅箔であることを一例とする。金属箔は、セラミック基材上に780℃~1100℃で焼成されてセラミック基材とロウ付け接合されたものを一例とする。実施例は、AMB基板またはDBC基板を例として説明するが、TPC基板、DBA基板を適用してもよい。しかし、耐久性および放熱効率の面でAMB基板が最も好適である。
【0068】
半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、および第2導電性スペーサ40cは、接着剤転写フィルム10上の接着層13を転写させ、この接着層13を用いて下部基板20と上部基板30との間に接合される。接着層13は、高放熱性を有するAg接着層である。
【0069】
上下複層構造の基板を用いる時、下部基板20と上部基板30との間の間隔を維持するために絶縁スペーサ(
図5の符号40d参照)を用い、下部基板20と上部基板30との間に電気が通らなければならない場合、導電性スペーサ(40b、40c)を用いる。この場合、高放熱性を有するAg接着層を用いて、半導体チップ40aで発生する熱が下部基板20を通して上部基板30に熱拡散することが防止されるようにする。
【0070】
図3にて、下部基板20の中央に位置した1つが第2導電性スペーサ40cであり、第2導電性スペーサ40cの周りに互いに離隔して配置された4つは第1導電性スペーサ40bである。第1導電性スペーサ40bは、半導体チップ40aの上面に接合され、上部基板30に接合される。本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法は、下部基板20と上部基板30との間に半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bとを積層方式で接合する。また、第2導電性スペーサ40cは、半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bの高さを合わせた高さと等しいように、下部基板20と上部基板30との間に接合して放熱特性と電気伝導性を確保する。
【0071】
図4には、
図3の下部基板に半導体チップ、第1導電性スペーサ、第2導電性スペーサを仮接合し、その上部に上部基板を接合して焼結するステップを含む、本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法の例が示されている。
【0072】
図4A~
図4Cに示すように、パワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10上の接着層13を半導体チップ40aの下面に転写させ、接着層13が転写された半導体チップ40aを接着層13を介して下部基板20の上面に仮接合させる第1仮接合ステップ(s10)と、接着剤転写フィルム10上の接着層13を第1導電性スペーサ40bの下面に転写させ、接着層13が転写された第1導電性スペーサ40bを接着層13を介して半導体チップ40aの上面に仮接合させる第2仮接合ステップ(s20)と、接着剤転写フィルム10上の接着層13を第2導電性スペーサ40cの下面に転写させ、接着層13が転写された第2導電性スペーサ40cを接着層13を介して下部基板20の上面に仮接合させる第3仮接合ステップ(s30)とを含む。
【0073】
第1仮接合ステップ(s10)において、半導体チップ40aは、Si、SiC、GaNのような電力半導体チップである。
【0074】
第2仮接合ステップ(s20)において、第1導電性スペーサ40bは、インターコネクションスペーサ(CQC)である。また、第3仮接合ステップ(s30)において、第2導電性スペーサ40cは、インターコネクションスペーサ(CQC)である。インターコネクションスペーサ(CQC)は、下部基板20と上部基板30との間に電気が通らなければならない場合に用いる。インターコネクションスペーサ(CQC)は、導電性金属ブロック形状からなるか、射出物の外面に導電性金属がコーティングされたブロック形状からなってもよい。第2導電性スペーサ40cの高さは、半導体チップ40a、接着層13、第1導電性スペーサ40bの高さを合わせた高さと等しい高さに形成される。
【0075】
下部基板20は、AMB基板またはDBC基板であってもよい。第1仮接合ステップから第3仮接合ステップにおいて、上部チャック3は、真空吸着により上部チャック3に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、および第2導電性スペーサ40cなどを固定する。
【0076】
第1仮接合ステップ(s10)から第3仮接合ステップ(s30)において、上部チャック3による加熱加圧は、100~170℃の温度、1~4MPaの圧力で20秒程度行う。この時、ダイ1は、80~100℃の温度に加熱されて維持される。
【0077】
第3仮接合ステップ(s30)の後、下部基板20上に仮接合された第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cの上部に上部基板30を接合し焼結して、下部基板20と上部基板30との間に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、第2導電性スペーサ40cを本接合させる本接合ステップを行う。
【0078】
図4Dに示すように、本接合ステップは、下部基板20上に仮接合された第1導電性スペーサ40bおよび第2導電性スペーサ40cに対応して位置するように、上部基板30の下面に接着層13を形成するステップ(s40)と、上部基板30を上部チャック3に固定し、上部チャック3に固定された上部基板30を下部基板20側に加熱加圧して、半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bとの仮接合体40’および第2導電性スペーサ40cを上部基板30と下部基板20との間に本接合させるステップ(s50)とを含む。本接合ステップにおいて、加熱加圧は、240~300℃の温度、8~15MPaの圧力で2分~5分間行う。
【0079】
仮接合ステップの接着層(Adhesive layer)13は、本接合ステップを行った後、焼結された接着層(Bonding layer)13’になる。焼結された接着層13’は、加圧焼結によってボイド(void)なしに密になるので、接合強度が向上し、優れた放熱電極の機能をする。
【0080】
図5には、本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の他の例が示されている。
【0081】
図5に示すパワーモジュール用基板は下部基板20であり、下部基板20の中央に位置した2つは第2導電性スペーサ40cであり、第1導電性スペーサ40bは第2導電性スペーサ40cの両側にそれぞれ4つが配置され、半導体チップ40aと接合される。そして、下部基板20の角に位置した4つは絶縁スペーサ40dである。
【0082】
第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cは、インターコネクションスペーサ(CQC)であり、絶縁スペーサ40dは、下部基板20と上部基板30との間に放熱空間を形成する機能をする。絶縁スペーサ40dは、セラミック材質で形成される。第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cは、放熱と電気的導通という3つの機能を行う。絶縁スペーサ40dは、2枚の基板の間に空間を形成して放熱機能を行う。
【0083】
図5に示すパワーモジュール用基板の場合も、
図4に示したような工程過程により、下部基板20に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、第2導電性スペーサ40c、および絶縁スペーサ40dを均一な高さで接合する。
【0084】
図6に示すパワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム上の接着層13が転写された半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、第2導電性スペーサ40c、および絶縁スペーサ40dを接着層13を介して下部基板20に仮接合させる仮接合ステップ(s100)と、下部基板20上に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40bおよび第2導電性スペーサ40c、絶縁スペーサ40dが仮接合された状態を焼結して、下部基板20上に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40bおよび第2導電性スペーサ40c、絶縁スペーサ40dを本接合させる本接合ステップ(s200)とを行う。
【0085】
仮接合ステップ(s100)において、下部基板20が載置されるダイ1は、80~100℃に加熱し、下部基板20に各対象物40を仮接合するための上部チャックは、100~170℃の温度に加熱する。
【0086】
本接合ステップ(s200)において、下部基板20が載置されるダイ1’は、240~300℃に加熱し、下部基板20に各対象物40を本接合するための加熱加圧プレス5は、240~300℃の温度に加熱しながら8~15MPaの圧力で加圧する。
【0087】
一方、
図6に示す例は、下部基板20にのみ対象物40を仮接合し、焼結すると説明したが、下部基板20に対象物40が仮接合された状態で、対象物40に上部基板30を接合および焼結する本接合ステップが行われてもよい。
【0088】
上述した本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法は、接着層13の下面の平坦度をベースフィルム11が抑えてくれ、接着層13の上面の平坦度は上部チャック3の加圧力で抑えてくれることが可能なため、接着層13の厚さを薄くて均一に形成することができる。
【0089】
また、上述した本発明の第1実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法は、フィルム状に作製された接着剤転写フィルム10を用いて下部基板20に半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bとを積層方式で接合した後、最終1回の焼結で接合工程が完了するので、工程が最少化されて工程時間を短縮させることができ、設備投資費も減少する。
【0090】
もし、下部基板20に半導体チップ40aを仮接合し、半導体チップ40aに第1導電性スペーサ40bを仮接合する作業をAg焼結ペーストを用いて行うと、下部基板20に半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bとを仮接合してから1次焼結し、第1導電性スペーサ40bに上部基板30を接合するために、第1導電性スペーサ40b上に追加的にAg焼結ペーストを塗布し2次焼結しなければならないという煩わしさがあり、Ag焼結ペーストを均一に塗布しにくい。また、各焼結工程ごとに加圧が行われるため、工程時間が長くなり、Ag焼結ペーストの塗布のために高価な装置が必要になるので、設備投資費が増加する。したがって、Ag焼結ペーストをフィルム状に作製してパワーモジュール用基板の製造方法に適用することが、工程時間を短縮させ、設備投資費も減少させることができるという点で効果的である。
【0091】
以下、
図7~
図12を参照して、本発明の第2実施例による接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法を説明する。説明の便宜上、
図1~
図6に示された第1実施例と同一の構成要素に関する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0092】
図7に示すように、本発明の第2実施例による接着剤転写フィルム10は、Ag焼結ペーストをフィルムにパターン状に作製したものである。
【0093】
接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11上にOCAフィルムを付着させ、OCAフィルム上にAg焼結ペーストをパターン状に印刷し乾燥して形成する。あるいは、接着剤転写フィルム10は、ベースフィルム11上にAg焼結ペーストをパターン状に印刷し乾燥して形成する。接着層13をパターン状に印刷する方法は、接着層13の高さを均一に制御するために、メッシュスクリーン印刷、ステンシル印刷を適用することができる。ステンシル印刷は、パターン形状の穴を形成したステンシルメタルマスクをベースフィルム11の上面に配置し、スクリーン印刷して、一定の厚さの接着層パターンが形成されるようにするものである。メッシュスクリーン印刷は、スクリーンメッシュを用いてベースフィルム上に接着層パターンを転写する印刷方法である。メッシュスクリーンは、精巧に織り込まれた布種類の一定の領域を化学的処理(コーティング)してペーストが通過できないようにメッシュに膜を形成し、所望する一部のイメージ部位のみ現像作業でペーストが透過されるようにスクリーンメッシュを作製して用いる。
【0094】
図8には、本発明の第2実施例による接着剤転写フィルムを用いたパワーモジュール用基板の製造方法が示されている。
【0095】
図8に示すように、本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10を用いて対象物40に接着層13を転写し、接着層13が転写された対象物40を下部基板20の上面に仮接合する。接着層13は、対象物40と対応する位置に対応するパターン形状でベースフィルム11に形成される。このように、ベースフィルム11に接着層13を対象物40と対応する位置に対応するパターン形状に形成することは、接着剤転写フィルム10の使用量を減少させ、残留物(burr)による不良要因も低減することができる。
【0096】
パワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10を準備する準備ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させ、接着層が転写された対象物を上記接着層を介して下部基板に仮接合させる仮接合ステップと、下部基板20上に仮接合された対象物40の上部に上部基板30を接合し焼結して、下部基板と上部基板30との間に対象物40を本接合させる本接合ステップとを含む。
【0097】
準備ステップは、ベースフィルム11に接着層13を対象物と対応する位置に対応するパターン形状に予めコーティングするステップである。
【0098】
準備ステップは、ベースフィルム11を準備するステップと、ベースフィルム11上に粘着層12を形成するステップと、粘着層12上にステンシル印刷またはメッシュスクリーン印刷方法でパターン形状の接着層13を形成するステップとを含む。一例として、準備ステップは、PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥して、Ag接着層を形成するステップとを含む。ベースフィルム11は、PET(Polyester)フィルム以外にも、PC(Polycarbonate)フィルムを用いることができる。しかし、PETフィルムは、PCフィルムに比べて接着層13の下面の平坦度を抑えるのに有利である。接着層13の上面の平坦度は、上部チャック3の加圧力で抑えることができる。接着層13の平坦度が良くなければ、焼結時に接着層が反る問題になる。
【0099】
図8に示すように、仮接合ステップは、ダイ1に接着剤転写フィルム10を固定させ、真空を利用して対象物40を吸着および固定する上部チャック3に対象物40を固定させるステップ(s1)と、上部チャック3とダイ1をそれぞれ加熱しながら上部チャック3に固定された対象物40を接着剤転写フィルム10側に加圧して、接着剤転写フィルム10上の接着層13を対象物40に転写させるステップ(s2)と、真空を維持しながら上部チャック3を上昇させて、接着層13が付着した対象物40を上昇させるステップ(s3)と、上部チャック3を下部基板20の上部に搬送させるステップ(s4)と、上部チャック3に固定された対象物40を下部基板20側に加圧して、対象物40を下部基板20に仮接合させるステップ(s5)と、上部チャック3の真空を解除し、上部チャック3を上昇させるステップ(s6)とを含む。(s1)~(s3)ステップは、接着剤転写フィルム10から対象物40に接着層13を転写するステップであり、(s5)~(s6)ステップは、接着層13が転写された対象物40を下部基板20に仮接合するステップである。
【0100】
仮接合ステップの後、下部基板20上に仮接合された対象物40の上部に上部基板(
図4の符号30参照)を接合し焼結して、下部基板20と上部基板30との間に対象物40を本接合させるステップを行う。焼結は、240~300℃で加熱加圧しながら2分~5分間行う。加圧は、8~15MPaの範囲で行う。
【0101】
図9には、下部基板に半導体チップ、第1導電性スペーサ、第2導電性スペーサを仮接合し、その上部に上部基板を接合して焼結するステップを含むパワーモジュール用基板の製造方法の実施例が示されている。
【0102】
図9Aおよび
図9Bに示すように、パワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10上の接着層13を半導体チップ40aの下面に転写させ、接着層13が転写された半導体チップ40aを接着層13を介して下部基板20の上面に仮接合させる第1仮接合ステップ(s10)と、接着剤転写フィルム10上の接着層13を第1導電性スペーサ40bの下面と第2導電性スペーサ40cの下面にそれぞれ転写させ、接着層13が転写された第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cを接着層13を介して半導体チップ40aの上面と下部基板20の上面にそれぞれ仮接合させる第2仮接合ステップ(s20)とを含む。
【0103】
第1仮接合ステップ(s10)において、接着層13は、半導体チップ40aと対応する位置に対応する形状でベースフィルム11上に形成されるので、残留物(burr)が発生しないきれいな転写が可能である。
【0104】
第2仮接合ステップ(s20)において、第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cは、インターコネクションスペーサ(CQC)である。第2導電性スペーサ40cの高さは、半導体チップ40a、接着層13、第1導電性スペーサ40bの高さを合わせた高さと等しい高さに形成される。
【0105】
下部基板20は、AMB基板またはDBC基板であってもよい。第1仮接合ステップ(s10)および第2仮接合ステップ(s20)において、上部チャック3は、真空吸着により上部チャック3に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、および第2導電性スペーサ40cなどを固定する。
【0106】
第2仮接合ステップ(s20)の後、下部基板20上に仮接合された第1導電性スペーサ40bと第2導電性スペーサ40cの上部に上部基板30を接合し焼結して、下部基板20と上部基板30との間に半導体チップ40a、第1導電性スペーサ40b、第2導電性スペーサ40cを本接合させる本接合ステップを行う。
【0107】
図9Cに示すように、本接合ステップは、下部基板20上に仮接合された第1導電性スペーサ40bおよび第2導電性スペーサ40cに対応して位置するように、上部基板30の下面に接着層13を形成するステップ(s30)と、上部基板30を上部チャック3に固定し、上部チャック3に固定された上部基板30を下部基板20側に加熱加圧して、半導体チップ40aと第1導電性スペーサ40bとの仮接合体40’および第2導電性スペーサ40cを上部基板30と下部基板20との間に本接合させるステップ(s40)とを含む。本接合ステップにおいて、加熱加圧は、240~300℃の温度、8~15MPaの圧力で2分~5分間行う。
【0108】
仮接合ステップの接着層(Adhesive layer)13は、本接合ステップを行った後、焼結された接着層(Bonding layer)13’になる。焼結された接着層13’は、加圧焼結によってボイド(void)なしに密になるので、接合強度が向上し、優れた放熱電極の機能をする。
【0109】
図10には、本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法の他の例が示されている。
【0110】
パワーモジュール用基板の製造方法は、パターン化した接着層を活用して大量生産が可能である。
【0111】
図10Aに示すように、複数の半導体チップ40aを固定できるようにジグ状に作製した上部チャック3に複数の半導体チップ40aを固定できるようにし、
図10Bに示すように、半導体チップ40aと対応する位置に対応するパターン形状で接着層13が形成されるように接着剤転写フィルム10を作製する。この場合、半導体チップ40aを位置ごとに固定し、1回の加熱加圧工程で半導体チップ40aに一度に接着層13を転写可能で、仮接合工程時間を著しく短縮させることができる。
【0112】
図11に示すように、上部チャック3は、真空吸着ラインSが備えられて、設定位置に半導体チップ40aが真空吸着で固定できる。接着剤転写フィルム10は、半導体チップ40aと対応する位置に対応するパターン形状に接着層13が形成される。接着層13は、ベースフィルム11に予め印刷され乾燥した形態である。
【0113】
図12に示すように、大量生産が可能なパワーモジュール用基板の製造方法は、ダイ1にパターン化された接着層13が形成された接着剤転写フィルム10を固定させ、真空吸着ラインSを用いて上部チャック3に半導体チップ40aを固定させる。次に、加熱加圧プレス5で上部チャック3を加熱し、ヒータでダイ1を加熱しながら上部チャック3に固定された半導体チップ40aを接着剤転写フィルム10側に加圧して、接着剤転写フィルム10上の接着層13を半導体チップ40aに転写させる。次に、真空を維持しながら上部チャック3を上昇させて、接着層13が付着した半導体チップ40aを上昇させる。
【0114】
ダイ1は、内部ヒータを用いて80~100℃の温度に加熱し、上部チャック3は、加熱加圧プレス5を用いて100~170℃の温度に加熱する。好ましくは、ダイは、80~100℃の温度に加熱し、加熱加圧プレス5は、160℃の温度に加熱する。加圧は、1~4MPaで行う。加熱加圧プレス5の加熱温度がダイ1の加熱温度より高くてこそ、接着層13が温度の高い方である半導体チップ40aに強く接着できる。
【0115】
図12によれば、半導体チップ40aに付着した接着層13は、転写工程の温度によって末端が収縮するが、パターン化された接着層13を半導体チップ40aに転写するので、転写時に発生しうる残留物(burr)要因を著しく低減することができる。
【0116】
もし、ベースフィルム11の全面に接着層13を形成し、半導体チップに接着層13を転写すれば、上部チャック3が上昇する過程で半導体チップ40aに転写された接着層13の末端が破れながら残留物(burr)が発生しうる。
【0117】
上述した本発明の第2実施例によるパワーモジュール用基板の製造方法は、接着層13をパターン化して大量生産が可能である。すなわち、ジグ状に作製した上部チャック3を用いてパワーモジュールに装着される位置に対応するように半導体チップ40aを予め配列し、上部チャック3上の半導体チップ40aの位置に接着層が転写されるようにパターン化した接着層13を備えた接着剤転写フィルム10を準備した後、加熱加圧して、半導体チップ40aの下面に接着層13を転写することができる。これは1回の転写で半導体チップをDBC基板またはAMB基板に仮接合可能なため、接着剤転写フィルムの使用量を減少させ、仮接合工程時間を大きく短縮することができる。また、パターン化した接着層は、半導体チップと1対1に対応して付着するので、転写時の残留物の発生を大きく低減できるという点で効果的であり、Agを使用する接着層の面積が大きく減少して製品単価を大きく減少させることができる。
【0118】
以下、
図13~
図15を参照して、本発明の第3実施例による接着剤転写フィルムおよびこれを用いたパワーモジュール用基板の製造方法を説明する。説明の便宜上、
図1~
図6に示す第1実施例と同一の構成要素に関する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0119】
図13に示すように、本発明の第3実施例による接着剤転写フィルム10は、PETフィルム上にAg焼結ペーストをコーティングして乾燥したAgコーティング乾燥フィルムであり、接着層13が多層構造になる。接着層13は、3層以上であってもよい。接着層13は、粘着層12の上面に積層された第1接着層13aと、第1接着層13aの上面に積層された第2接着層13bと、第2接着層13bの上面に積層された第3接着層13cとを含む。
【0120】
第1接着層13aと第3接着層13cに含まれたAg粉末粒子の平均粒径は、第2接着層13bに含まれたAg粉末粒子の平均粒径とは異なる。好ましくは、第1接着層13aと第3接着層13cに含まれたAg粉末粒子の平均粒径に比べて、第2接着層13bに含まれたAg粉末粒子の平均粒径が相対的に小さい。接着層13を多層構造に形成し、各層に含まれるAg粉末粒子の平均粒径の大きさが異なると、焼結時の収縮率が異なって発生する。
【0121】
本実施例のように、中間層である第2接着層13bに含まれたAg粉末粒子の平均粒径を、第2接着層13bの上下層である第3接着層13cと第1接着層13aに含まれたAg粉末粒子の平均粒径に比べて相対的に小さいものを適用すると、焼結時に平均粒径が相対的に小さい第2接着層13bの収縮率が第1接着層13aおよび第3接着層13cに比べてより大きくなって、接着層13の両末端の形状を凹状に制御することができる。接着層13の両末端の形状を凹状に制御すれば、接着層13の中心部の応力を緩和して破壊強度(引張強度)を高めることができる。
【0122】
さらに、接着層13は、中心部に平均粒径が小さいAg粉末粒子を適用して、全厚が厚い接着層13を適用しても緻密な焼結を可能にする。
【0123】
熱応力による反りによる破壊現象において、大部分は異種界面の接合面に沿ってクラックが発生しながら破壊が進行する。ところが、接着層13を多層構造にすれば、単一素材の焼結時に接合強度がより高くなって、異種界面の接合面よりも焼結された接着層13の中心部がクラックの起点になる可能性が高くなる。
【0124】
すなわち、Ag粒子の大きさが確実に区分されるAg焼結ペーストを用いて多層構造の接着層13を形成することにより、異種界面のクラック発生を防止することができる。また、接着層13の中心部でクラック発生が防止されるように、Ag粒子の大きさによって収縮率が異なって発生するように各層を異なって構成して接着層13の両末端の形状を制御することができる。これは接着層13の中心部の応力を緩和して破壊強度を高める。
【0125】
図13に示すように、接着剤転写フィルム10上の多層構造である接着層13は、対象物40に転写された後、対象物40を固定した上部チャック3が対象物40を基板20側に加熱加圧することにより、対象物40と基板20との間を焼結接合する。焼結された接着層13”の両末端の形状は、第1接着層13aと第3接着層13cに比べて相対的な収縮がより多く発生する第2接着層13bによって凹んだ形状になり、中心部の応力緩和が可能になる。また、焼結された接着層13”は、中心において他より焼結密度がさらに高いため、熱伝導率が高い。熱伝導率は最小気孔の条件で高くなる。
【0126】
図14に示すように、接着層13に含まれるAg粉末粒子は、フレーク状ナノ粒子からなる。具体的には、第1接着層13a~第3接着層13cは、フレーク状ナノ粒子からなるAg粉末粒子を含み、第2接着層13bに含まれたAg粉末粒子の平均粒径は、第1接着層13aと第3接着層13cに含まれたAg粉末粒子の平均粒径に比べて相対的に小さい。
【0127】
フレーク(flake)状からなるAg粉末粒子は、有機物であるバインダーの量を最小化しながら焼結性を向上させる。さらに、フレーク状からなるAg粉末粒子は、ナノサイズの球(spare)状のAg粉末粒子に比べて焼結時の収縮率が小さく、接合力が良く、剪断強度が高い。接着層13に有機物であるバインダーの量が多ければ、過電圧による350~400℃の温度上昇時にガスが発生し、接着層の割れが発生しうる。したがって、実施例は、有機物であるバインダーの含有量が最小化され、Ag粉末粒子の含有量が最大となるように、フレーク状ナノ粒子からなるAg粉末粒子を含む。実施例において、フレーク状は、厚さが数ナノメートルと平らな楕円形状を有する。
【0128】
このように、接着剤転写フィルム10は、PETフィルム上にAg焼結ペーストを3回以上コーティングし乾燥して、ベースフィルム上に多層構造のAg接着層を形成したAgコーティング乾燥フィルムである。
【0129】
本発明の第3実施例による接着剤転写フィルム10を用いたパワーモジュール用基板の製造方法は、接着剤転写フィルム10を準備する準備ステップと、接着剤転写フィルム上の接着層を対象物に転写させ、接着層が転写された対象物を前記接着層を介して下部基板に仮接合させる仮接合ステップと、下部基板20上に仮接合された対象物40の上部に上部基板30を接合し焼結して、下部基板と上部基板30との間に対象物40を本接合させる本接合ステップとを含む。
【0130】
ここで、準備ステップは、ベースフィルム11に接着層13を予めコーティングするステップである。
【0131】
準備ステップは、ベースフィルム11を準備するステップと、ベースフィルム11上に粘着層12を形成するステップと、粘着層12上にAg焼結ペーストをコーティングし乾燥する過程を3回以上行って、多層構造の接着層13を形成するステップとを含む。
【0132】
一例として、準備ステップは、PETフィルム上にOCAフィルムを付着させるステップと、OCAフィルム上にAg焼結ペーストを塗布または印刷し乾燥する過程を3回行って、3層からなるAg接着層を形成するステップとを含む。
【0133】
Ag接着層は、中間層を構成する第2接着層13のAg粉末粒子の平均粒径が、中間層の上下部に形成された第3接着層13と第2接着層13のAg粉末粒子の平均粒径に比べて相対的に小さいものを採用して、焼結時にAg接着層の両末端の形状が中間層の応力を除去する方向に制御されるようにする。また、Ag接着層は、Ag粉末粒子がフレーク状のものを用いる。
【0134】
図15に示すように、仮接合ステップと本接合ステップを経て焼結された多層構造の焼結された接着層13”は収縮が発生するが、その収縮率は約6%程度と小さい。さらに、接着層13は上下に収縮しにくく、両側に小さい収縮が発生するが、これは接着層13を構成するAgがフレーク状であるからである。フレーク状は、接着層13”の結合力を高めて破壊強度を向上させる。
【0135】
下記表1は、純Agに比べて、本発明の第3実施例による接着層を焼結したAg接着層(実施例)とSn-Agはんだ層(比較例)の特性を示した。第3実施例のAg接着層は、Ag粉末98~99重量%とバインダー1~2重量%とを含む。
【0136】
【0137】
表1によれば、本発明の第3実施例によるAg接着層は、熱伝導率(Therma conductivity)が200W/mKで高い熱伝導率を有し、引張強度(Tensile strength)が50MPa以上で、Sn-Agはんだ層に比べて高い。これから、本発明の第3実施例によるAg接着層の熱伝導率と引張強度がSn-Agはんだ層に比べてより優れていることが分かる。
【0138】
図16は、パワーモジュールの半導体チップにおいて冷却と加熱を繰り返す間に発生する反りを示す図であり、
図17は、本発明のAg接着層(第3実施例)とSn Solder(比較例)をパワーモジュールに適用して割れ特性を比較したSEM写真である。
【0139】
図16に示すように、パワーモジュールの半導体チップの作動温度は150~250℃であり、冷却と加熱を繰り返す間に反りが発生する。
【0140】
図17Aおよび
図17Bに示すように、基板に半導体チップをSn Solder(SAC305、SN100C)で接合した場合、作動温度-40~125℃で800回試験した結果、SEM写真から確認したSn Solder接合面でクラックが発生した。
【0141】
これに対し、
図17Cに示すように、本発明の第3実施例によるAg接着層は、作動温度-40~125℃で800回試験した結果、クラックが確認されなかった。
【0142】
図18は、本発明のAg接着層(第3実施例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのSEM写真およびグラフであり、
図19は、Sn Solder(比較例)のバインダーの含有量による微細組織を説明するためのSEM写真およびグラフである。
【0143】
具体的には、
図18Aは、本発明のAg接着層(第3実施例)を250℃で10分間焼結したもののSEM写真であり、
図18Bは、
図18Aの実施例のバインダーの含有量による重量減少(Weight loss)および熱量(Calorimetric)を測定したグラフである。
【0144】
図19Aは、Sn Solderを250℃で10分間焼結したもののSEM写真であり、
図19Bは、
図19Aの実施例のバインダーの含有量による重量減少(Weight loss)および熱量(Calorimetric)を測定したグラフである。
【0145】
図18および
図19に示すように、有機物であるバインダーの含有量が最小化されるほど気孔が最小化されることを確認することができる。これにより、不必要な有機物を最小化することが、優れた焼結性を確保し、焼結層の割れを防止することが分かる。しかし、Ag粉末粒子の均一な拡散のために、有機物であるバインダーの含有量は1~2重量%含むことが好ましい。Ag粉末粒子が均一に拡散されてこそ、均一な接着層13を形成することができる。
【0146】
図20は、本発明のAg接着層(第3実施例)を250℃で30分間加圧せずに焼結したものである。
【0147】
図20Bは、
図20Aを拡大したもので、Ag接着層を250℃で30分間無圧力で焼結した結果、接着強度が60MPa以上確保された。また、Ag接着層は、加圧せずに焼結しても有機物が最小化されて、熱伝導率が約150W/mK以上確保されることを確認することができる。
【0148】
図21には、Ag接着層を転写したSi半導体チップを基板に加圧焼結した後、焼結されたAg接着層(Ag焼結層)の組織を撮影したものである。ここで、
図21Aは、ベースフィルムに150μmのマスクステンシル印刷により形成されたAg接着層であり、
図21Bは、ベースフィルムに200μmのマスクステンシル印刷により形成されたAg接着層である。
【0149】
図21A、
図21Bに示されたAg接着層は、240℃で4分間15MPaで加圧焼結した。加圧焼結後、多孔度が7~8%の密な結合層が確認された。
図21の場合、焼結時間が短くても十分な結合が可能であり、接着強度50MPa以上、約300W/mKの熱伝導率が確保された。多孔度は焼結後に有機物が最小化されて7~8%確保されたことが確認され、最小気孔の条件によって熱伝導率が高くなったことが確認される。
【0150】
図21は、接着層を加圧焼結することによって気孔が最小化され、
図20は、無圧力で焼結することによって多い気孔が確認される。これにより、加圧焼結は気孔を最小化させて熱伝導率を高める効果があることが分かる。
【0151】
図22は、本発明の第3実施例によるAg接着層の接着強度を他社製品(比較例)と比較した。
【0152】
他社製品はSemipowerrex(korea)である。実施例と比較例とも、焼結は290℃で150sec行った。
【0153】
図22から確認されるように、実施例は、290℃の温度で約2分の短い時間内に十分な結合強度を得ることができ、結合強度が65MPa以上と非常に高いことを確認することができる。
【0154】
図23は、
図22の実施例と比較例の破断表面の一般の撮影写真であり、
図24は、
図22の実施例と比較例の破断表面のSEM写真である。
【0155】
図23に示すように、実施例は、Ag接着層の一部が剥がれて分離されたのに対し、比較例は、接着層と基板との接合面が破断した。
【0156】
図24に示すように、破断表面の形状においてAg接着層はAg接着層の中間に破裂が発生し、比較例(他社製品)は、接着層全体が基板から分離された。このような現象は、実施例の場合、Ag接着層の中心部分が他の部分に比べて焼結密度がより高く、Ag粉末粒子がフレーク状であるためと確認される。比較例は、Ag粉末粒子が球状に近い。さらに、実施例は、約65MPaで破裂し、比較例は、約23MPaで破裂した。
【0157】
図25は、本発明の第3実施例によるAg接着層と比較例(他社製品)の収縮率、反り発生、微細組織を比較したものである。
【0158】
実施例と比較例は、無加圧状態で270℃の温度で60分間焼結した。
【0159】
図25に示すように、実施例は、6%程度収縮が発生し、比較例は、24%程度収縮が発生した。また、実施例は、焼結後の反りが発生しないのに対し、比較例は、焼結後の反りが発生した。さらに、実施例は、SEMで測定した微細組織からフレーク(flake)状が確認されたのに対し、比較例は、球(sphere)状が確認されている。
【0160】
上記の結果から、実施例のAg接着層は、収縮率が比較例に比べて20%少ないことが確認され、半導体チップのボンディング後にジグ公差による欠陥を低減するのに寄与できることが分かる。
【0161】
図26は、本発明の第3実施例によるAg接着層と比較例(他社製品)の重量減少(Weight loss)を比較したグラフであり、
図27は、本発明の第3実施例によるAg接着層と比較例(他社製品)の熱量(Calorimetric)を測定したグラフである。
【0162】
実施例のAg接着層は、比較例(他社製品)に比べて有機含有量1~2wt%で熱分解および焼結温度が60~100℃低いことが確認される。これにより、低い焼結温度は、迅速な焼結を可能にすることを予想することができる。
【0163】
上述した本発明の第3実施例によるAg接着層は、無圧力焼結で150W/mKの熱伝導率を確保することができ、テスト装置を用いた加圧焼結時に280W/mK以上、公式的な加圧装置の使用時に300W/mK以上の熱伝導率を確保することができる。
【0164】
また、本発明の第3実施例によるAg接着層は、Ag粉末粒子がフレーク状を有するので、収縮率が小さく、Ag接着層が多層構造および異種粉末粒子で構成されて残留応力の除去に利点があるので、焼結後の割れによる不良が最小化され、50MPa以上の高い破壊強度(引張強度)を確保することができる。
【0165】
本発明は、図面と明細書に最適な実施例が開示された。ここで、特定の用語が使われたが、これは単に本発明を説明する目的で使われたものであり、意味の限定や本発明の技術範囲を限定するために使われたものではない。そのため、本発明は当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。
【符号の説明】
【0166】
1、1’ ダイ
3 上部チャック
5 加熱加圧プレス
10 接着剤転写フィルム
11 ベースフィルム
12 粘着層
13、13’、13” 接着層
13a、13b、13c (第1~第3)接着層
20 下部基板
21 セラミック基材
22 金属層
30 上部基板
40 対象物
40’ 仮接合体
40a 半導体チップ
40b 第1導電性スペーサ
40c 第2導電性スペーサ
40d 絶縁スペーサ