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特許7531239銅ニッケル合金電極用導電性インク、銅ニッケル合金電極付基板、および、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】銅ニッケル合金電極用導電性インク、銅ニッケル合金電極付基板、および、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20240802BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240802BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240802BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240802BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240802BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240802BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240802BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240802BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240802BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20240802BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20240802BHJP
【FI】
C09D11/52
H01B1/22 A
H01B1/00 L
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
B22F1/00 L
B22F1/00 M
B22F9/00 B
H05K1/09 A
H05K3/12 610B
H05K3/12 630Z
C09D11/38
C09D11/03
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022569801
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042517
(87)【国際公開番号】W WO2022130892
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020207192
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー・環境新技術先導プログラム/室温プリンテッドエレクトロニクスによる次世代IoTデバイス配線・実装技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100190067
【弁理士】
【氏名又は名称】續 成朗
(72)【発明者】
【氏名】李 万里
(72)【発明者】
【氏名】三成 剛生
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183296(JP,A)
【文献】特開2013-125655(JP,A)
【文献】特開2014-139893(JP,A)
【文献】特表2005-537386(JP,A)
【文献】特開2014-162966(JP,A)
【文献】特開2016-141860(JP,A)
【文献】特開2017-107524(JP,A)
【文献】特開2016-60906(JP,A)
【文献】特開2012-131894(JP,A)
【文献】特開2010-25500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00ー 9/30
C09D 11/00ー 13/00
C22C 9/06
C22C 19/00
H01B 1/00ー 1/24
H01B 5/00ー 5/16
H05K 1/09
H05K 1/16
H05K 3/10ー 3/26
H05K 3/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有し、
銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲である、銅ニッケル合金電極用導電性インク。
Cu(HCOO)(L・・・A
Ni(HCOO)(L・・・B
ここで、mおよびnは、それぞれ、2~6の自然数であり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆であり、
前記脂肪族アミンは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択される
【請求項2】
銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに含有し、一価アルコールおよび/または多価アルコールをさらに含有する、請求項1に記載の導電性インク。
【請求項3】
前記一価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択される、請求項に記載の導電性インク。
【請求項4】
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択される、請求項2または3に記載の導電性インク。
【請求項5】
一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有し、
銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに含有し、
銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲である、銅ニッケル合金電極用導電性インク。
Cu(HCOO) (L ・・・A
Ni(HCOO) (L ・・・B
ここで、mおよびnは、それぞれ、2~6の自然数であり、L は、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、L は、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆である。
【請求項6】
一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有し、
一価アルコールおよび/または多価アルコールをさらに含有し、
銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲である、銅ニッケル合金電極用導電性インク。
Cu(HCOO) (L ・・・A
Ni(HCOO) (L ・・・B
ここで、mおよびnは、それぞれ、2~6の自然数であり、L は、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、L は、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆である。
【請求項7】
前記一価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択される、請求項6に記載の導電性インク。
【請求項8】
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択される、請求項6または7に記載の導電性インク。
【請求項9】
前記脂肪族アミンは、第一級アミノ基を1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有する、請求項5~8のいずれかに記載の導電性インク。
【請求項10】
前記脂肪族アミンは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択される、請求項に記載の導電性インク。
【請求項11】
前記アミノアルコールは、第一級アミノ基を1つ有し、水酸基を少なくとも1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有する、請求項1~10のいずれかに記載の導電性インク。
【請求項12】
前記アミノアルコールは、2-アミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3,3-ジメチル-1-ブタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、および、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される、請求項11に記載の導電性インク。
【請求項13】
前記ニッケルの含有割合は、10質量%以上70質量%以下の範囲である、請求項1~12のいずれかに記載の導電性インク。
【請求項14】
前記ニッケルの含有割合は、19質量%以上67質量%以下の範囲である、請求項13に記載の導電性インク。
【請求項15】
ギ酸銅とアミン配位子 としての材料とを混合し、一般式Aで表される銅錯体を形成することと、
ギ酸ニッケルとアミン配位子 としての材料とを混合し、一般式Bで表されるニッケル錯体を形成することと、
前記銅錯体と前記ニッケル錯体とを、前記銅錯体に対する前記ニッケル錯体の質量比が、0.05以上6未満を満たすように混合することと
を包含する、銅ニッケル合金電極用導電性インクを製造する方法。
Cu(HCOO) (L ・・・A
Ni(HCOO) (L ・・・B
ここで、前記一般式Aにおいて、mは、2~6の自然数であり、前記一般式Bにおいて、nは、2~6の自然数であり、
前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆であり、
前記脂肪族アミンは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択される
【請求項16】
さらに、以下の(i)~(iii)のいずれかを満たす、請求項15に記載の方法。
(i)前記混合することは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに混合し、一価アルコールをさらに添加する。
(ii)前記ニッケル錯体を形成することは、多価アルコールをさらに混合し、前記混合することは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに混合する。
(iii)前記ニッケル錯体を形成することは、多価アルコールをさらに混合し、前記混合することは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに混合し、一価アルコールをさらに添加する。
【請求項17】
前記一価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ギ酸銅と、アミン配位子L としての材料とを混合し、一般式Aで表される銅錯体を形成することと、
ギ酸ニッケルと、アミン配位子L としての材料とを混合し、一般式Bで表されるニッケル錯体を形成することと、
前記銅錯体と前記ニッケル錯体とを、前記銅錯体に対する前記ニッケル錯体の質量比が、0.05以上6未満を満たすように混合し、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに混合することと
を包含する、銅ニッケル合金電極用導電性インクを製造する方法。
Cu(HCOO) (L ・・・A
Ni(HCOO) (L ・・・B
ここで、前記一般式Aにおいて、mは、2~6の自然数であり、前記一般式Bにおいて、nは、2~6の自然数であり、
前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆である。
【請求項20】
ギ酸銅と、アミン配位子L としての材料とを混合し、一般式Aで表される銅錯体を形成することと、
ギ酸ニッケルと、アミン配位子L としての材料とを混合し、一般式Bで表されるニッケル錯体を形成することと、
前記銅錯体と前記ニッケル錯体とを、前記銅錯体に対する前記ニッケル錯体の質量比が、0.05以上6未満を満たすように混合することと
を包含する、銅ニッケル合金電極用導電性インクを製造する方法。
Cu(HCOO) (L ・・・A
Ni(HCOO) (L ・・・B
ここで、前記一般式Aにおいて、mは、2~6の自然数であり、前記一般式Bにおいて、nは、2~6の自然数であり、
前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、前記アミン配位子L としての材料は、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆であり、
さらに、以下の(i)~(iii)のいずれかを満たす:
(i)前記混合することは、一価アルコールをさらに添加する。
(ii)前記ニッケル錯体を形成することは、多価アルコールをさらに混合する。
(iii)前記ニッケル錯体を形成することは、多価アルコールをさらに混合し、前記混合することは、一価アルコールをさらに添加する。
【請求項21】
前記一価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記脂肪族アミンは、第一級アミノ基を1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有する、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記脂肪族アミンは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アミノアルコールは、第一級アミノ基を1つ有し、水酸基を少なくとも1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有する、請求項15~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記アミノアルコールは、2-アミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3,3-ジメチル-1-ブタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、および、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~14のいずれかに記載の導電性インクを基板に塗布することと、
前記導電性インクが塗布された基板を加熱すること
とを包含する、銅ニッケル合金電極付基板を製造する方法。
【請求項28】
前記塗布することは、スピンコート法、スプレー塗布法、ディップコート法、スリットコート法、スロットコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、インクジェット法、および、スクリーン印刷法からなる群から選択された手法を用いる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記加熱することは、170℃以上250℃以下の温度範囲で1分以上60分以下の時間範囲で加熱する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記加熱することに続いて、光照射による加熱を行うことをさらに包含する、請求項2729のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ニッケル合金電極用導電性インク、銅ニッケル合金電極付基板、および、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、電子回路等への配線技術としてプリンテッドエレクトロニクスが開発されている。プリンテッドエレクトロニクスは、フォトリソグラフィ法などの既存の半導体製造技術に比べて、製造コストを低減できるため注目されている。
【0003】
このようなプリンテッドエレクトロニクス用のインクとして錯体を用いたインクが開発されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。非特許文献1によれば、銅粒子と銀錯体とを用い、銅粒子を銅銀合金が被覆したコアシェル構造を有する金属配線を可能にする。非特許文献2によれば、銅錯体と銀錯体とを用い、銅銀合金からなる金属配線を可能にする。これらのいずれも、銅銀合金を形成することによって、銅単体の金属配線に比べて耐酸化性が改善されているが、実用化にはさらなる改善が求められている。また、使用時に電極に凹凸やバンプ、クラックが生じ得、安定性も十分とはいえない。加えて、材料に銀を含むため高価となる。
【0004】
銅粒子よりも化学的に安定であり、銀粒子よりも安価であることからニッケル粒子も電極に使用される(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、ギ酸ニッケル二水和物と脂肪族アミンとから得られるニッケル錯体が、ニッケル粒子を得られることを開示し、脂肪族アミンのアルキル基の鎖長を変化させることで、ニッケル粒子の粒径を制御できることを報告する。
【0005】
表層部にニッケル-銅合金を有する銅ナノ粒子が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、表層部のニッケル-銅合金によって耐酸化性が向上し、印刷法やコーティング法による微細配線に使用することを開示する。しかしながら、このような銅ナノ粒子を用いても、インク安定性は依然として実用レベルには足りず、また焼成温度が高かったり、コスト高であったりという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-064983号公報
【文献】特開2011-063828号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wanli Liら,ACS Appl.Mater.Interfaces,2017,9,24711-24721
【文献】Wanli Liら,Nanoscale,2018,10,5254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上より、本発明の課題は、低価格で大気安定性に優れ、表面のなめらかな金属配線を可能にする銅ニッケル合金電極用導電性インク、銅ニッケル合金電極付基板、および、それらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による銅ニッケル合金電極用導電性インクは、一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有し、銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲であり、これにより上記課題を解決する。
Cu(HCOO)(L・・・A
Ni(HCOO)(L・・・B
ここで、mおよびnは、それぞれ、2~6の自然数であり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆である。
前記アミノアルコールは、第一級アミノ基を1つ有し、水酸基を少なくとも1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有してもよい。
前記アミノアルコールは、2-アミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3,3-ジメチル-1-ブタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、および、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択されてもよい。
前記脂肪族アミンは、第一級アミノ基を1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有してもよい。
前記脂肪族アミンは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択されてもよい。
前記ニッケルの含有割合は、10質量%以上70質量%以下の範囲であってもよい。
前記ニッケルの含有割合は、19質量%以上67質量%以下の範囲であってもよい。
上記導電性インクは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに含有してもよい。
上記導電性インクは、一価アルコールおよび/または多価アルコールをさらに含有してもよい。
前記一価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択されてもよい。
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択されてもよい。
本発明による上記導電性インクを製造する方法は、ギ酸銅とLで表されるアミン配位子とを混合し、銅錯体を形成することと、ギ酸ニッケルとLで表されるアミン配位子とを混合し、ニッケル錯体を形成することと、前記銅錯体と前記ニッケル錯体とを、前記銅錯体に対する前記ニッケル錯体の質量比が、0.05以上6未満を満たすように混合することとを包含し、前記Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、前記Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆であり、これにより上記課題を解決する。
前記ニッケル錯体を形成することは、多価アルコールをさらに混合してもよい。
前記多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択されてもよい。
前記混合することは、一価アルコールをさらに添加してもよい。
前記混合することは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに混合してもよい。
本発明による銅ニッケル合金電極付基板は、基板と、前記基板上に位置する銅ニッケル合金を含有する電極とを備え、前記銅ニッケル合金中の銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲であり、これにより上記課題を解決する。
前記基板は、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリオレフィン樹脂からなる群から選択されてもよい。
本発明による銅ニッケル合金電極付基板を製造する方法は、上記導電性インクを基板に塗布することと、前記導電性インクが塗布された基板を加熱することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記塗布することは、スピンコート法、スプレー塗布法、ディップコート法、スリットコート法、スロットコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、インクジェット法、および、スクリーン印刷法からなる群から選択された手法を用いてもよい。
前記加熱することは、170℃以上250℃以下の温度範囲で1分以上60分以下の時間範囲で加熱してもよい。
上記方法は、前記加熱することに続いて、光照射による加熱を行うことをさらに包含してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクは、上述の一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有し、銅錯体中の銅とニッケル錯体中のニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%未満の範囲である。特定の銅錯体とニッケル錯体とを含有することにより、酸化銅の生成を抑制し、銅ニッケル合金の形成が促進され、安価で大気安定性に優れる。また、ニッケルの含有量が上述の範囲に制御されることによって、なめらかでクラックのない金属配線を可能にする。
【0011】
また、本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクを用いれば、低温で容易に銅ニッケル合金を形成できるため、銅ニッケル合金電極付高分子基板を提供でき、ウェアラブルデバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の導電性インクを製造する工程を示すフローチャート
図2】本発明の銅ニッケル合金電極付基板を示す模式図
図3】本発明の銅ニッケル合金電極付基板を製造する工程を示すフローチャート
図4】例1の電極の外観を示す図
図5】例1~例6の電極の光学顕微鏡写真を示す図
図6】例7~例10の電極の光学顕微鏡写真を示す図
図7】例1の電極のSEM像を示す図
図8】例1の電極のEDS元素マッピングを示す図
図9】例7~例9の電極のSEM像を示す図
図10】例17~例18の電極のSEM像を示す図
図11】例1~例4の電極のXRDパターンを示す図
図12】例1~例4の電極の電気抵抗を示す図
図13】電極の電気抵抗のニッケル含有割合依存性を示す図
図14】耐酸化性試験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクおよびその製造方法について説明する。
【0015】
本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インク(以降では単に導電性インクと称する)は、一般式Aで表される銅錯体と、一般式Bで表されるニッケル錯体とを含有する。
Cu(HCOO)(L・・・A
Ni(HCOO)(L・・・B
ここで、mおよびnは、それぞれ、2~6の自然数であり、LおよびLはアミン配位子である。詳細には、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールであり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであるか、または、その逆、すなわち、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有する脂肪族アミンであり、Lは、同一または別異の、アミノ基を1つ有するアミノアルコールである。このようなアミノアルコールと脂肪族アミンとの組み合わせにすることにより、塗布後の熱処理において、銅ニッケル合金が得られるので、耐酸化性に優れ、安定な金属配線を提供できる。
【0016】
さらに、本発明の導電性インクは、含有される銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が、5質量%以上80質量%未満の範囲を満たす。ニッケルの含有割合が5質量%未満の場合、表面に凹凸が生じ、なめらかな金属配線が得られない。ニッケル含有割合が80質量%以上の場合、銅ニッケル合金にクラックが生じ、電気抵抗が増大するため、電極として機能し得ない。
【0017】
であるアミノ基を1つ有するアミノアルコールは、好ましくは、第一級アミノ基を1つ有し、水酸基を少なくとも1つ有し、炭素数1以上20以下の、飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有するものである。第一級アミノ基を有することにより、銅イオンと配位し、錯形成する。水酸基を1以上有することにより、ニッケル錯体との親和性に優れる。炭素数が1以上20以下であれば、銅ニッケル合金が得られる。ニッケル錯体との親和性および銅ニッケル合金の形成促進の観点から、より好ましくは、炭素数は2以上10以下、さらに好ましくは2以上5以下である。Lは、同一であっても異なっていてもよいが、収率の観点から同一がよい。
【0018】
アミノ基を1つ有するアミノアルコールとしては、従来の銅ナノ粒子を用いたインクの製造において銅錯体を形成する際に使用されるアミノアルコールを適用することができる。好ましくは、アミノ基を1つ有するアミノアルコールは、2-アミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3,3-ジメチル-1-ブタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、8-アミノ-1-オクタノール、10-アミノ-1-デカノール、12-アミノ-1-ドデカノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、および、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される。これらは、入手が容易であり、銅錯体の形成を促進する。
【0019】
であるアミノ基を1つ有する脂肪族アミンは、第一級アミノ基を有し、炭素数1以上20以下の飽和または不飽和である、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を有する。第一級アミノ基を有することにより、ニッケルイオンと配位し、錯形成する。炭素数が1以上20以下であれば、銅ニッケル合金が得られる。銅錯体との親和性および銅ニッケル合金の形成促進の観点から、より好ましくは、炭素数は2以上10以下、さらに好ましくは2以上7以下である。Lは、同一であっても異なっていてもよいが、収率の観点から同一がよい。
【0020】
アミノ基を1つ有する脂肪族アミンは、好ましくは、2-エチルヘキシルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ベンジルアミン、n-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、および、n-ドデシルアミンからなる群から選択される。これらは、入手が容易であり、ニッケル錯体の形成を促進する。
【0021】
なお、Lである上述の脂肪族アミンのうちのいくつかは、水酸基を有してもよく、アミノアルコールであってもよい。この場合において、アミノアルコールには上述のアミノアルコールを採用できる。
【0022】
また、LおよびLは、上述のアミノアルコールと脂肪族アミンとの組み合わせであれば、Lがアミノアルコールであり、Lが脂肪族アミンであってもよい。本発明においては、この組み合わせを満たすことにより、銅ニッケル合金が形成され、なめらかな金属配線となる。なお、Lが脂肪族アミンである場合においても、当該脂肪族アミンのうちのいくつかは、水酸基を有してもよく、例えば、上述のアミノアルコールであってもよい。
【0023】
一般式Aのギ酸銅および一般式Bのギ酸ニッケルにおけるギ酸イオンは、使用する配位子LおよびLの種類により配位形式が容易に変化する。このため、mおよびnの範囲は2以上6以下であればよい。例えば、一般式Aにおいて、Lとして2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を選択した場合には二座配位となり、mは2であるが、一般式Bにおいて、Lとして2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)を選択した場合には四座配位となり、nは4となる。このような配位数の変化については、当業者であれば容易に理解する。mおよびnの範囲は、好ましくは、2以上4以下である。これにより、導電性インク中の金属含有量が多くなるため、好ましい。
【0024】
本発明の導電性インクにおいて、銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、好ましくは、10質量%以上70質量%以下の範囲を満たす。この範囲であれば、表面の凹凸が少なく、なめらかな金属配線となり得る。ニッケルの含有割合は、さらに好ましくは、19質量%以上67質量%以下の範囲を満たす。この範囲であれば、表面の凹凸が極めて少なく、非常になめらかな金属配線となり得る。ニッケルの含有割合は、なお好ましくは、30質量%以上50質量%以下の範囲である。この範囲であれば、耐酸化性を有し、表面の凹凸が極めて少なく、非常になめらかな金属配線となり得る。
【0025】
本発明の導電性インクは、好ましくは、銅粒子および/またはニッケル粒子をさらに含有する。これにより、数μm以上の厚い金属配線を可能にする。これらの粒子の粒径は、好ましくは、50nm以上1μm以下の範囲であり、より好ましくは、50nm以上400nm以下の範囲である。これにより、表面の凹凸が少なく、クラックのない厚い金属配線を可能とする。
【0026】
銅粒子をさらに含有する場合、銅粒子は、銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が上述の範囲を満たすように含有されればよい。これにより、塗布性に優れ、表面の凹凸が少なく、クラックのない厚い金属配線を可能にする。ニッケル粒子の場合も同様である。両方の粒子を含有する場合にも同様である。
【0027】
本発明の導電性インクは、一価アルコールおよび/または多価アルコールをさらに含有してもよい。これにより、粘性が調整され、銅錯体とニッケル錯体とが均一に混合するので、塗布性に優れたインクとなる。
【0028】
一価アルコールは、好ましくは、炭素数が5以下であるアルキルアルコール、アルケニルアルコール、シクロアルキルアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノールなどが挙げられる。一価アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、および、2-メチル-2-ブタノールからなる群から選択される。これらは入手が容易であり、沸点が150℃以下であるため、粘度の調整に好ましい。
【0029】
多価アルコールは、二価アルコールであっても三価アルコールであってもよい。多価アルコールは、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、グリセリンからなる群から選択される。これらは入手が容易であり、銅錯体とニッケル錯体とが均一に混合した導電性インクとなる。
【0030】
導電性インクの粘度は用途に応じて適宜調整されてよいが、例えば、導電性インクをインクジェット印刷に用いる場合は、一価アルコールおよび/または多価アルコールは、導電性インクの粘度が1mPa・s以上20mPa・s以下となるよう添加されてよい。
【0031】
次に、本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクの例示的な製造方法について説明する。
図1は、本発明の導電性インクを製造する工程を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS110:ギ酸銅とLで表されるアミン配位子とを混合し、銅錯体を形成する。Lは、上述したアミノ基を1つ有するアミノアルコールと同じであるため、説明を省略する。得られる銅錯体は上述の一般式Aとなる。
【0033】
ギ酸銅に対するアミノアルコールの混合割合(質量比)は、好ましくは、0.6以上1.5以下の範囲である。より好ましくは、アミノアルコールの混合割合は、0.6以上1.0以下の範囲である。2種以上のアミノアルコールを用いる場合には、アミノアルコールの合計量が上記範囲となるように調製される。混合は、室温において、撹拌機等により行われてよい。目視にて濃青色が確認されれば、銅錯体が得られたと判定できる。
【0034】
ステップS120:ギ酸ニッケルとLで表されるアミン配位子とを混合し、ニッケル錯体を形成する。Lは、上述したアミノ基を1つ有する脂肪族アミンと同じであるため、説明を省略する。得られるニッケル錯体は上述の一般式Bとなる。
【0035】
ギ酸ニッケルに対する脂肪族アミンの混合割合(質量比)は、好ましくは、0.75以上2.4未満の範囲である。より好ましくは、脂肪族アミンの混合割合は、1.0以上2.0以下の範囲である。2種以上の脂肪族アミンを用いる場合には、脂肪族アミンの合計量が上記範囲となるように調製される。混合は、室温において、撹拌機等によって行われてよい。目視にて水色、紫色、薄緑色または濃緑色が確認されれば、ニッケル錯体が得られたと判定できる。
【0036】
混合において、溶媒として多価アルコールを添加してもよい。これにより、ギ酸ニッケルと脂肪族アミンとの混合が容易になり、ニッケル錯体の形成が促進される。多価アルコールは、上述した多価アルコールを用いることができる。
【0037】
ステップS130:ステップS110で得られた銅錯体と、ステップS120で得られたニッケル錯体とを混合する。ここで、混合は、銅錯体に対するニッケル錯体の質量比が、0.05以上6未満を満たすように行われる。これにより、導電性インク中の銅とのニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が、5質量%以上80質量%未満の範囲を満たし、表面の凹凸が少なく、クラックのない、金属配線が得られる。混合は、室温において、撹拌機等によって行われてよい。
【0038】
混合は、より好ましくは、銅錯体に対するニッケル錯体の質量比が、0.15以上3.5以下を満たすように行われる。これにより、導電性インク中の銅とのニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が、10質量%以上70質量%未満の範囲を満たし、表面の凹凸が少なく、クラックのない、金属配線が得られる。
【0039】
混合は、さらに好ましくは、銅錯体に対するニッケル錯体の質量比が、0.3以上3以下を満たすように行われる。これにより、導電性インク中の銅とのニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が、19質量%以上67質量%未満の範囲を満たし、表面の凹凸が少なく、クラックのない、金属配線が得られる。
【0040】
ステップS130において、銅粒子および/またはニッケル粒子を添加してもよい。これにより、数μm以上の厚い金属配線を可能にする。これらの粒子の添加量や粒径等は上述したとおりであるため、説明を省略する。銅粒子を添加する場合は、最終の導電性インク中の銅とのニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合が、5質量%以上80質量%未満の範囲を満たすように、添加されればよい。ニッケル粒子を添加する場合、両方の粒子を添加する場合も同様である。
【0041】
ステップS130において、一価アルコールを添加してもよい。これにより、導電性インクの粘性が調整され、塗布性に優れたインクとなる。一価アルコールは上述したとおりであるため、説明を省略する。
【0042】
なお、ステップS110においてアミン配位子Lとしてアミノアルコール、ステップS120おいてアミン配位子Lとして脂肪族アミンを用いる場合を説明したが、ステップS110において脂肪族アミン、ステップS120においてアミノアルコールを用いてもよい。この場合も、上述の質量比を採用できる。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の銅ニッケル合金電極付基板およびその製造方法を説明する。
【0044】
図2は、本発明の銅ニッケル合金電極付基板を示す模式図である。
【0045】
本発明の銅ニッケル合金電極付基板(以降では単に電極付基板と称する)200は、基板210と、基板210上に位置する銅ニッケル合金を含有する電極220とを備える。電極220は、実施の形態1で説明した導電性インクによって形成される。そのため、銅ニッケル合金中の銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合は、5質量%以上80質量%以下の範囲を満たす。これにより、なめらかでクラックのない電極または金属配線を有する基板を提供できる。特に、銅ニッケル合金が形成されることにより、安価で大気安定性に優れる。
【0046】
電極220は、銅ニッケル合金に加えて、銅粒子および/またはニッケル粒子を含有してもよい。これにより、電極220は数μm以上の厚い電極となり得る。これらの粒子の粒径は、好ましくは、50nm以上1μm以下の範囲であり、より好ましくは、50nm以上400nm以下の範囲である。これにより、表面の凹凸が少なく、クラックのない厚い金属配線を可能とする。
【0047】
電極220は、基板210全体を覆う面電極であってよいし、櫛形、格子状などの所定のパターンを有してもよい。
【0048】
基板210は、高分子基板、Siウェハ、ガラス、セラミック、金属板などを使用できる。高分子基板としては、170℃程度の温度に耐性を有するものであれば特に制限はないが、好ましくは、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリオレフィン樹脂などがあり得る。基板は、板状に限らず、曲率を有する面を有していてもよい。また、基板は、自立可能なフィルムであってもよい。基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などの下地層が形成されていてもよい。後述するように、本発明の導電性インクは、比較的低温な170℃の加熱によって銅ニッケル合金を形成することもできるため、高分子基板を採用できる。
【0049】
基板210が、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン樹脂からなる群から選択される高分子基板である場合、フレキシブルな電極付基板を提供できる。このような電極付基板は、ウェアラブルデバイスに有利である。
【0050】
次に、本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクを用いた電極付基板の製造方法について説明する。
図3は、本発明の銅ニッケル合金電極付基板を製造する工程を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS310:本発明の銅ニッケル合金電極用導電性インクを基板に塗布する。導電性インクは、実施の形態1で説明したとおりであるため、説明を省略する。基板は、上述の基板を採用できる。
【0052】
導電性インクの基板への塗布は、成膜できれば特に制限はないが、例示的には、スピンコート法、スプレー塗布法、ディップコート法、スリットコート法、スロットコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、インクジェット法、および、スクリーン印刷法からなる群から選択された手法が採用される。これらを用いれば、均一な膜が形成される。
【0053】
ステップS320:ステップS310で得られた導電性インクが塗布された基板を加熱(焼成)する。これにより、導電性インク中の銅錯体から銅が析出し、ニッケル錯体からニッケルが析出し、銅とニッケルとが反応し、銅ニッケル合金となる。また、加熱によってアミノアルコール、脂肪族アミンは、分解する。ここで、本発明の導電性インクからの銅ニッケル合金の生成過程においては、銅錯体からの銅の析出が先に生じることから、銅錯体の形成に用いられるアミン配位子であるアミノアルコールとしては、上で例示した従来の銅ナノ粒子を用いたインクの製造で使用される材料を広く適用することができる。また、ニッケル錯体からのニッケルの析出においては、析出したニッケルが緻密な膜状体であると、銅との反応性が向上し、十分に合金化した銅ニッケル合金が得られやすい。そのため、ニッケル錯体の形成に用いられるアミン配位子である脂肪族アミンとして上で例示した材料を用いると、ニッケル錯体から析出したニッケルがより緻密な膜状体となりやすく、好ましい。なお、銅錯体の形成に用いるアミン配位子を脂肪族アミンとし、ニッケル錯体の形成に用いるアミン配位子をアミノアルコールとして製造された導電性インクを用いる場合であっても、脂肪族アミンおよびアミノアルコールの種類を適切に選択することで、十分に合金化した銅ニッケル合金を得ることは可能である。
【0054】
加熱は、好ましくは、170℃以上250℃以下の温度範囲で1分以上60分以下の時間範囲で加熱する。この温度範囲および加熱時間であれば、銅ニッケル合金が生成する。加熱には、ホットプレート、恒温槽、オーブン等を使用できる。加熱の雰囲気は、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。これにより、酸化銅の生成が抑制される。
【0055】
ステップS320に続いて、光照射による加熱(焼成)を行ってもよい。これにより、銅ニッケル合金の粒子の焼結がさらに進み、電気抵抗が低減する。さらに、電極と基板との密着性も向上し得る。このような光照射には、インテンスパルスライト(IPL)、近赤外線レーザを用いてもよい。
【0056】
次に、具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例
【0057】
[試薬]
ギ酸銅二水和物(HCOO)Cu・2HOおよびギ酸ニッケル二水和物(HCOO)Ni・2HOを富士フイルム和光純薬株式会社から購入した。アミン配位子として表1に示すアミン配位子Lをナカライテスク株式会社から購入した。エチレングリコールおよびイソプロパノールをナカライテスク株式会社から購入した。
【0058】
【表1】
【0059】
[例1~例21]
例1~例21では、ギ酸銅二水和物、ギ酸ニッケル二水和物、および、表1に示す種々のアミン配位子Lを用いて、種々の導電性インクを製造し、それを用いて電極を形成した。
【0060】
表2に示すように、ギ酸銅二水和物と、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、または、2-エチルヘキシルアミン(2EHA)とを混合し、銅錯体を形成した(図1のステップS110)。混合は、室温(25℃)にて撹拌機(株式会社シンキー製、型番ARE-310)を用いて行った。攪拌後、表2に示すように濃青色となり、銅錯体が形成された。得られた銅錯体を、それぞれ、Cu-AMPおよびCu-2EHAと称する。
【0061】
【表2】
【0062】
表3に示すように、ギ酸ニッケル二水和物と、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-エチルヘキシルアミン(2EHA)、エチレンジアミン(ED)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ヘキシルアミン(HEA)、または、2-ヘプチルアミン(2HEPA)と、溶媒としてエチレングリコール(0.5g)とを混合し、ニッケル錯体を形成した(図1のステップS120)。混合は、室温(25℃)にて撹拌機を用いて行った。攪拌後、表3に示すように水色、紫色、薄緑色または濃緑色となり、ニッケル錯体が形成された。得られたニッケル錯体を、それぞれ、Ni-AMP、Ni-2EHA、Ni-ED、Ni-TETA、Ni-HEAおよびNi-2HEPAと称する。
【0063】
【表3】
【0064】
表4に示すように、銅錯体とニッケル錯体とを混合した(図1のステップS130)。混合は、室温(25℃)にて撹拌機を用いて行った。例11~例16の導電性インクは、例1の導電性インクと同じであったが、続く電極の形成条件が異なった。例17および例18では、混合後、銅粒子(メジアン径D50の平均:350nm)を銅錯体とニッケル錯体との混合物(4.4g)に1gを添加した。例21の導電性インクは、ニッケル錯体と混合されておらず、銅錯体単体であった。このようにして得られた導電性インク中に含有される銅とニッケルとの合計質量に対するニッケル含有割合を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
例1~例21の導電性インクを、ポリイミド基板(東レ株式会社製)およびガラス基板(CORNING製)にスクリーン印刷法で塗布した(図3のステップS310)。なお、基板は、エタノールの超音波浴で15分、次いで蒸留水で1分洗浄され、表面の汚れを除去した。導電性インクが塗布された基板を表5に示す条件で加熱(焼成)した(図3のステップS320)。加熱は、窒素雰囲気中、表5に示す条件の温度で所定時間維持し、放冷した。例16および例18では、加熱に続いて、インテンスパルスライト(IPL、NovaCentrix製、PulseForge Invent)を400V、2ms間照射した。
【0067】
【表5】
【0068】
このようにして得られた例1~例21の電極を評価した。電極の厚さを、微細形状測定機(小坂研究所製、型番ET200)により測定した。電極表面を光学顕微鏡(株式会社ニコン製)および走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、S-4800)によって観察した。SEM付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素マッピングを行った。これらの結果を図4図10に示す。
【0069】
例1~例21の電極の金属を、X線回折測定装置(XRD、株式会社リガク製、SmartLab)を用いて同定した。結果を図11に示す。例1~例21の電極の電気抵抗を四端子法(日置電機株式会社製、RM3545)によって測定した。これらの結果を図12図13および表6に示す。
【0070】
例1、例6~例8および例21の電極の耐酸化性試験を行った。試験は、各電極を大気中180℃まで加熱し、所定時間保持した後の電気抵抗を測定した。結果を図14に示す。
【0071】
図4は、例1の電極の外観を示す図である。
【0072】
図4の上段は、ガラス基板上の電極であり、図4の下段は、ポリイミド基板上の電極を示す。図4によれば、いずれの基板上の電極も、金属光沢を示し、目視では凹凸やクラックなどは見られなかった。図示しないが、例6~例9、例11~例20の電極も同様であった。本発明の導電性インクを用いれば、比較的低温で電極形成できるため、高分子基板も採用できる。
【0073】
図5は、例1~例6の電極の光学顕微鏡写真を示す図である。
図6は、例7~例10の電極の光学顕微鏡写真を示す図である。
【0074】
図5によれば、例1の電極の表面は、均一で凹凸がなくなめらかであった。図示しないが、例19および例20の電極の表面も、均一で凹凸がなくなめらかであった。一方、例2~例5の電極のそれは、例1の電極と同じニッケル含有割合(導電性インク中に含有される銅とニッケルとの合計質量に対するニッケルの含有割合)にもかかわらず、不均一であり、凹凸、スポット、クラック等があった。このことから、ギ酸銅と所定のアミノアルコールとからなる銅錯体と、ギ酸ニッケルとアミノ基を1つ有する所定の脂肪族アミンとからなるニッケル錯体とを含有する導電性インクが、表面のなめらかな金属配線に有効であることが示された。クラックを有した例5の電極については、電気特性を測定していない。
【0075】
図5および図6において、例1、例6~例10の電極の表面を比較すると、ニッケル含有割合が増大するにつれて均一でなめらかな様態となる傾向を示したが、ニッケル含有割合が80質量%以上になるとクラックが発生した。中でも、ニッケル含有割合が15%質量以上~70質量%以下である導電性インクを用いた場合に、均一な金属配線となることが分かった。このことから、導電性インク中に含有されるニッケル含有割合は、5質量%以上80質量%未満が有効であることが示された。
【0076】
図7は、例1の電極のSEM像を示す図である。
図8は、例1の電極のEDS元素マッピングを示す図である。
図9は、例7~例9の電極のSEM像を示す図である。
図10は、例17~例18の電極のSEM像を示す図である。
【0077】
図7によれば、例1の電極は、75nm以上150nm以下の平均粒径を有する粒子からなることが分かった。図8によれば、この粒子は、銅(Cu)とニッケル(Ni)とからなり、CuとNiとが粒子内で均一に分散していることが分かった。
【0078】
図9によれば、例7~例9の電極は、いずれも、粒径10nm以上1μm以下の範囲の粒径を有する粒子からなるが、例1および例7~例9の電極の粒径を比較すると、粒径は、ニッケル含有割合に依存しており、ニッケル含有割合が小さいほど、粒径が大きくなり、ニッケル含有割合が大きいほど、粒径が小さくなることが分かった。
【0079】
図10によれば、加熱後に光照射した例18の電極では、例17の電極に比べて、粒子間の焼結が進行していることが分かった。
【0080】
図11は、例1~例4の電極のXRDパターンを示す図である。
【0081】
図11によれば、例1~例3の電極は、Cu(111)およびCu(200)のピークのみを示した。このことから、例1~例3の電極は、銅とニッケルが均一に混合した合金を含有することが分かった。この結果は、図8の結果に一致した。なお、図示しないが、例6~例9および例11~20の電極も例1の電極と同様のXRDパターンを示した。一方、例4の電極は、Cu(111)およびCu(200)のピークとNi(111)およびNi(200)のピークとを示し、合金化が不十分であった。
【0082】
図12は、例1~例4の電極の電気抵抗を示す図である。
図13は、電極の電気抵抗のニッケル含有割合依存性を示す図である。
【0083】
図12によれば、例1の電極の電気抵抗がもっとも小さく、電極として有効であることが示された。図13は、例1、例6~例10および例21の電極の電気抵抗とニッケル含有割合との関係を示す。図13によれば、クラックが発生した例10の電極において電気抵抗が増大したが、クラックが発生していない例1、例6~例9の電極は、ニッケルを含有しない例21の電極と同様に低い電気抵抗を示した。このことから、ギ酸銅と所定のアミノアルコールとからなる銅錯体と、ギ酸ニッケルとアミノ基を1つ有する所定の脂肪族アミンとからなるニッケル錯体とを含有し、ニッケルの含有割合が5質量%以上80質量%未満の範囲である導電性インクは、金属配線に有効であることが示された。
【0084】
これらの結果を表6にまとめて示す。
表6において、「銅ニッケル合金の生成」の欄の記号の意味は、それぞれ、次の通りである。丸印:銅とニッケルが均一に混合した合金が生成された、三角印:銅とニッケルの合金化が不十分であった、バツ印:導電性インクの製造にニッケル錯体を用いなかった。また、「モルフォロジ」の欄には、上述した各電極の表面の様態を簡単に示した。
【0085】
【表6】
【0086】
表6によれば、ギ酸銅と所定のアミノアルコールとからなる銅錯体と、ギ酸ニッケルとアミノ基を1つ有する所定の脂肪族アミンとからなるニッケル錯体とを含有し、ニッケルの含有割合が5質量%以上80質量%未満の範囲である導電性インクを用いれば、凹凸のないなめらかな金属配線を提供できることが示された。
【0087】
図14は、耐酸化性試験の結果を示す図である。
【0088】
図14によれば、本発明の導電性インクによって得られた例1、例6~例8の電極は、大気中加熱後も低い抵抗を維持したが、ニッケルを含有しない例21の電極は、大気中の加熱時間が増大するにつれて抵抗が増大し、電極として機能しなくなった。これは、例1、例6~例8の電極は、銅ニッケル合金からなるため、大気中で加熱しても酸化銅が生成されなかったためである。このことから、本発明の導電性インクは、耐酸化性に優れた銅ニッケル合金からなる電極を生成するに有利であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の導電性インクを用いれば、安価な材料により、低価格で大気安定性に優れ、表面のなめらかな金属配線を提供できる。
【符号の説明】
【0090】
200 銅ニッケル合金電極付基板
210 基板
220 銅ニッケル合金を含有する電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14