(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】アラビノース及びその製剤と用途
(51)【国際特許分類】
C07H 3/02 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
C07H3/02
(21)【出願番号】P 2022577570
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2022083083
(87)【国際公開番号】W WO2023130594
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202210010286.6
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210101531.4
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522488258
【氏名又は名称】唐伝生物科技(廈門)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石国良
(72)【発明者】
【氏名】林衛軍
(72)【発明者】
【氏名】蔡許彬
(72)【発明者】
【氏名】王羽娟
(72)【発明者】
【氏名】肖永成
(72)【発明者】
【氏名】蕭舜之
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-286294(JP,A)
【文献】特開2009-207462(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101665524(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111202244(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111544436(CN,A)
【文献】特表2004-510163(JP,A)
【文献】特開2002-095491(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111205338(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 3/00
A61K 31/00
A61P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップを含む、L-アラビノースの顆粒の製造方法:
(1)
原料であるL-アラビノースを水に溶解し、活性炭を加えて濾過し、活性炭を除去して濾過糖液を得;
(2)ステップ(1)で得られた濾過糖液の40%~55%(v%)を取り、糖液の糖度が55~65%Brixになるまで蒸発させ、
種晶であるL-アラビノースを加え、残りの濾過糖液を流加し始め、流加終了後、濃縮を続け;
(3)流加終了後、ケークの濃度が75~85%になるまで蒸発を続け、排出して遠心分離を行い;
(4)乾燥して顆粒剤を得る;
ここで、
前記種晶であるL-アラビノースは、
80~100メッシュであり;
前記
種晶であるL-アラビノースの添加量は、
前記原料であるL-アラビノースの投入質量の0.05%~1%であり;
ステップ(1)において、
原料であるL-アラビノースと水の質量比は1:0.5~3であり;
ステップ(2)において、糖液の糖度が55~60%Brixになるまで蒸発
させ;
蒸発温度は55~70℃であり;
流加時間は6~24hであり;
前記流加過程で糖液の過飽和度は1.01~1.10に制御され;
得られる前記L-アラビノースの顆粒の平均粒径範囲は100~600μmであり;
得られる前記L-アラビノースの顆粒は、0.04%以下のガラクトースおよび0.05%以下のフルクトースを含むことを特徴とする、
製造方法。
【請求項2】
前記乾燥は、沸騰乾燥、流動床乾燥、減圧乾燥から選ばれる1つ又は複数であることを特徴とする、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥過程では、スターフィーダー
又はロータリーフィーダーを用いて材料を供給
することを特徴とする、
請求項
1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記L-アラビノース
の顆粒はβ-L-(+)-アラビノースであり、以下の結晶構造を持っており:
前記結晶構造は斜方晶系であり、
空間群はP2
12
12
1であり、
単位胞パラメータは、
a=4.78120(10)Å、
b=6.43740(10)Å、
c=19.50095(3)Å、
α=90°、β=90°、γ=90°、V=600.208(18)Å
3、Z=4、F(000)=320.0であることを特徴とする、
請求項
1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記L-アラビノース
の顆粒の結晶はCu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は14.416±0.20°、16.450±0.20°、20.556±0.20°、22.943±0.20°、27.443±0.20°、27.828±0.20°、33.161±0.20°に特徴的なピークが
あることを特徴とする、請求項
1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2022年1月6日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202210010286.6であり、発明名称が「L-アラビノース及びその製造方法と用途」及び2022年1月27日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202210101531.4であり、発明名称が「アラビノース顆粒剤及びその製造方法と用途」という2件の先行出願の優先権を主張する。前記2件の出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、医薬化学分野に属し、具体的にアラビノース及びその製剤と用途に関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡技術の発展に伴い、大腸内視鏡検査が臨床的に広く利用され、各種の腸疾患の診断と治療のための主な手段の一つとなっている。大腸内視鏡検査は腸管前処置の影響を大きく受けるため、大腸内視鏡画像の質を向上させ、大腸疾患の検出率を向上させるためには、術前に十分な腸管前処置を行うことが極めて重要である。
同時に、伝統的な腸管洗浄の過程で、硫酸マグネシウムやPEGなどの食感が、多くの人に受け入れられにくい上に、経口投与量が多いため、患者による服用が困難であり、服用量が医者の指示に従わず、コンプライアンスが低下したりするなどは、腸管洗浄が徹底しない要因となっていた。
【0004】
L-アラビノース(L-arabinose、C5H10O5)はL(+)-アルドガムとしても知られるアルドペントースである。最初はアラビアガムから分離された単糖であった。遊離L-アラビノースは自然界にはめったに存在しないが、通常、他の単糖と結合してヘテロ多糖としてコロイド、ヘミセルロース、細菌多糖類、及び特定のグリコシドに存在することであり、遊離L-アラビノースは針葉樹の芯材にのみ発見られた。L-アラビノースは、食品、医薬品、その他の分野で益々広く使用されている。研究によると、L-アラビノースは、補助的な血糖降下作用や補助的なダイエット効能と共に良好な下剤機能があることが発見され、しかし、従来技術では、L-アラビノース医薬品の開発及びその医薬品の安全性と規模化生産に有利な製造プロセスに関する研究はまだ不十分である。
【0005】
公開番号CN102146102Aの中国特許文献には、アラビアゴムを原料としたL-アラビノースの抽出が開示されている。酸触媒による加水分解後、アルカリ中和及び濃縮を行い、そしてケトン、アルコール及びエーテルによる抽出を行うが、この技術的プロセスは、環境を深刻に汚染する大量の有機溶媒を使用する。
【0006】
公開番号CN1373135Aの中国特許文献には、2カラム法によってアラビアゴムからアラビノースを抽出する方法が開示されており、この方法は、無機酸で加水分解し、アルカリで中和し、アルコールで抽出し、得られたラムノースとアラビノースの混合物をカラムで分離することであり、カラムの展開溶媒は、n-ブタノール、酢酸エチル、イソプロパノールや酢酸などの有機溶媒を大量に使用し、純度は99.5%に達するが、工程が煩雑で、有機溶媒が環境を汚染しやすいため、環境に優しいプロセスではない。
【0007】
公開番号CN104744525Aの中国特許文献には、アラビアゴムからアラビノースを抽出する方法が開示されており、原料は加水分解、アルカリ中和、吸着脱色、電気透析脱塩、不純物と結晶を除去するための吸着分離を経て、純度は98%に達する。上記プロセスは比較的環境に優しいが、その結晶化プロセスもメタノール/エタノールなどの有機溶媒を使用して熱溶解し、結晶を冷却する時間は24~72時間でL-アラビノース粉末が得られる。
【0008】
L-アラビノース製品は腸管洗浄剤への応用が期待されているものの、更に医薬品へと発展させると、依然として一連の問題に直面しており、例えば、アラビノースを服用するために他の補助剤を配合する必要があり、高用量の製剤を服用する場合、不純物の混入が増えることで、製剤が薬典の品質基準を満たすことが困難になったり、プロセスが複雑になったり、コストが高くなり、工業化に適さないなどの安全性のリスクが高くなる。
【0009】
顆粒剤とは、原薬と適切な補助剤を混合することによって製造される、所定の粒度を有する乾燥顆粒状製剤を指す。「中国薬典」(2020年)で規定されている粒度範囲は、1号篩(10メッシュ、2000μm)を通過できない粗い粒子と5号篩(80メッシュ、180μm目開き)を通過できる粒子の合計が15%を超えないことである。
【0010】
公開番号CN111202244Aの中国特許出願は顆粒状アラビノースを開示しており、使用される製造方法はアラビノース溶液を結合剤として使用することで、別途結合剤を添加する必要がなく、アラビノース粉末がこの結合剤の存在下で造粒されるが、得られたアラビノース顆粒剤の80メッシュ以下の部分はまだ38~78%であり、薬典の顆粒剤通則の要件を満たさず、且つこの出願においても、得られた顆粒状アラビノースは他の甘味料などの補助剤と配合混合して更に顆粒剤、カプセル剤を作製する必要がある。
【0011】
従って、研究者は、L-アラビノースの特性、製造プロセス、及び製剤性能を研究することで、腸管洗浄中の患者のコンプライアンスを効果的に改善し、それによって腸管前処置の品質を向上させることができるL-アラビノース製品を取得し、更に医薬的品質基準を満たす製剤を得て、工業化に有利であり、安全で環境に優しく、実現可能な製造プロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
従来技術に存在する問題を解決するために、第1態様において、本発明はL-アラビノースを提供し、上記アラビノースはβ-L-(+)-アラビノースである。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースは以下の結晶構造(単結晶)を持っており、
上記結晶構造は斜方晶系であり、
空間群はP212121であり、
単位胞パラメータは、
a=4.78120(10)Å、
b=6.43740(10)Å、
c=19.50095(3)Å、
α=90°、β=90°、γ=90°、V=600.208(18)Å3、Z=4、F(000)=320.0である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースの結晶はCu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は14.416±0.20°、16.450±0.20°、20.556±0.20°、27.443±0.20°、27.828±0.20°、33.161±0.20°に特徴的なピークがある。好ましくは、上記L-アラビノースの結晶はCu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折は14.416±0.20°、16.450±0.20°、20.556±0.20°、22.943±0.20°、27.443±0.20°、27.828±0.20°、33.161±0.20°に特徴的なピークがある。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記結晶は、基本的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0016】
本発明の実施形態によれば、上記結晶は、基本的に
図2に示される赤外スペクトルを有する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースの平均粒径範囲は100~600μmであり、好ましくは100~300μmであり、例えば110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290μmである。
【0018】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースは≦0.04%のガラクトースを含み、好ましくは、上記L-アラビノースは≦0.01%のガラクトースを含み、より好ましくは0.005%のガラクトースを含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースは≦0.05%のフルクトースを含み、好ましくは、上記L-アラビノースはフルクトースを含まない(つまり、フルクトースの含有量=0%)。
【0020】
第2態様において、本発明はまた上記L-アラビノースの製造方法を提供する。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記製造方法は方案一を採用し、下記ステップを含み:
(1)L-アラビノース原料を水に溶解し、活性炭を加えて濾過し、活性炭を除去して濾過糖液を得;
(2)ステップ(1)で得られた濾過糖液の約半分を取り蒸発結晶缶に入れ、糖液の糖度が55~65%Brixになるまで蒸発させ、L-アラビノース原料を種晶として適量加え、残りの約半分の濾過糖液を流加し始め、流加終了後、濃縮を続ける。
【0022】
本発明の実施形態によれば、当業者は、上記L-アラビノース原料を粉砕して篩にかけて均一にするものを種晶として使用することを理解することができ、従来の工業用篩(40~200メッシュ)又は薬典標準篩(3号、4号、5号、6号、7号、8号、9号篩)を使用することができ、例えば5号、6号薬典標準篩を使用し;幾つかの実施形態において、L-アラビノース原料を粉砕して5号及び6号薬典標準篩にかけて、5号篩を通過できるが6号篩を通過できない部分を取る。
【0023】
本発明の実施形態によれば、上記方案一のステップ(1)において、原料と水の質量比は1:0.5~3であり、好ましくは1:1~1.5であり、例えば1:1.1、1:1.2であり;原料と活性炭の質量比は1:0.0005~0.01であり、好ましくは1:0.0005~0.0015であり、例えば1:0.0005、1:0.001であり;
ステップ(2)において、流加時間は6~24hであり、例えば9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20hであり、好ましくは、流加時間は6~12hであり;上記流加過程で糖液の過飽和度は1.01~1.19に制御され、好ましくは1.01~1.10に制御され、より好ましくは1.03~1.08に制御される。
【0024】
ステップ(2)において、好ましくは、糖液の糖度が55~60%Brixになり、例えば56、57、58、59%Brixになり、より好ましくは58~60%Brixになるまで蒸発させ;流加終了後、1~2時間濃縮を続け;種晶を加えてから排出するまでの時間は、好ましくは10~15時間であり、例えば14時間程度である。
【0025】
他の実施形態において、上記製造方法は方案二を採用し、下記ステップを含み:
(1)水とL-アラビノース原料を加え、L-アラビノース原料を加えながら攪拌を開始し、加熱して完全に溶解させた後、活性炭を加えて吸着し;
(2)活性炭を濾去した後、得られた材料を反応釜に加えて濃縮し、糖度が55~65%Brixになるまで濃縮したところで、種晶としてL-アラビノース原料を適量加え、1時間当たり0.5~2℃の速度で降温する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記方案二で使用される種晶は方案一と同じである。
【0027】
本発明の実施形態によれば、上記方案二のステップ(1)において、原料と水の質量比は1:0.5~3であり、好ましくは1:1~1.5であり、例えば1:1~1.2であり;原料と活性炭の質量比は1:0.0005~0.01であり、例えば1:0.0005であり;活性炭の吸着温度は55~70℃であり、吸着時間は20~60minである。
【0028】
ステップ(2)において、好ましくは、糖液の糖度が58~60%Brixになるまで濃縮し;好ましくは、降温速度は1時間当たり0.5~1.5℃であり、例えば1時間当たり1℃である。
【0029】
第3態様において、本発明はまた上記製造方法により得られたL-アラビノースを提供する。
【0030】
第4態様において、本発明はまた上記L-アラビノースを含有する製剤を提供する。上記製剤は、単位用量形態又は複数用量形態であり得る。幾つかの実施形態において、上記製剤は単位用量形態であり、1~100gのL-アラビノース、好ましくは20g~60gのL-アラビノース、例えば20、30、40、50、60gのL-アラビノースを含有する。本発明の実施形態によれば、上記製剤が腸管前処置に適用される場合、1日当たりの用量は20~75gである。
【0031】
本発明の実施形態によれば、上記製剤は上記L-アラビノースの水溶液であり、上記水溶液中のL-アラビノースの濃度は0.1~0.6g/mL(1mL水中のL-アラビノースのグラム数で計算)であり、好ましくは0.2~0.5g/mLであり、例えば0.2、0.3、0.4g/mLである。
【0032】
第5態様において、本発明はL-アラビノースの顆粒剤を提供する。本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノースの顆粒剤は前文第1態様に記載のL-アラビノース、又は前文第3態様の上記製造方法により得られたL-アラビノースを含有する。
【0033】
第6態様において、本発明は、下記ステップを含む、上記L-アラビノースの顆粒剤の製造方法を提供し:
(1)L-アラビノース原料を水に溶解し、活性炭を加えて濾過し、活性炭を除去して濾過糖液を得;
(2)ステップ(1)で得られた濾過糖液の40%~55%(v%)を取り、糖液の糖度が55~65%Brixになるまで蒸発させ、L-アラビノース原料を種晶として適量加え、残りの濾過糖液を流加し始め、流加終了後、濃縮を続ける。
【0034】
本発明の実施形態によれば、種晶としてのL-アラビノース原料は40~200メッシュであり、例えば40、60、80メッシュ、100メッシュであり、好ましくは80~100メッシュである。当業者は、上記種晶がL-アラビノース原料を粉砕して篩にかけて得られることを理解することができ、例えば従来の工業用篩(40~200メッシュ)又は薬典標準篩(3号、4号、5号、6号、7号、8号、9号篩)を使用して得られ、例えば5号、6号薬典標準篩を使用して得られ;幾つかの実施形態において、L-アラビノース原料を粉砕して5号及び6号薬典標準篩にかけて、5号篩を通過できるが6号篩を通過できない部分を種晶とする。
【0035】
本発明の実施形態によれば、上記種晶の添加量は、L-アラビノース原料の投入質量の0.05%~1%であってもよく;例えば、L-アラビノース原料の投入質量の0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%である。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記方法のステップ(1)において、原料と水の質量比は1:0.5~3であり、好ましくは1:1~1.5であり、例えば1:1.1、1:1.2であり;原料と活性炭の質量比は1:0.0005~0.01であり、好ましくは1:0.0005~0.0015であり、例えば1:0.0005、1:0.001であり;好ましくは、ミリポアフィルタメンブレンによる真空濾過、板枠型濾過又はプレート精密濾過膜による濾過によって活性炭を除去することができ;上記ミリポアフィルタメンブレンは25μm及び0.45μmの順に選択することができ;好ましくは、50~70℃で活性炭を加え、活性炭を加えた後、50~70℃で20~40分間攪拌することができ、例えば30分間攪拌する。
【0037】
ステップ(2)において、好ましくは、糖液の糖度が55~60%Brixになり、例えば56、57、58、59%Brixになるまで蒸発させ;流加終了後、1~2時間濃縮を続け;好ましくは、蒸発温度は55~70℃であり、より好ましくは、蒸発温度は58~65℃であり、例えば60、61、62、63、64、65℃であり;種晶を加えてから排出するまでの時間は、好ましくは10~15時間であり、例えば14時間程度であり;好ましくは、蒸発過程で攪拌を開始し、攪拌速度は90~110rpmであり;幾つかの実施形態において、上記攪拌方式は、二層攪拌(下層が二つの半三日月形、上層が三枚羽根推進式)又は単層三枚~六枚羽根推進式補助強制循環から選ばれ;好ましくは、流加時間は6~24hであり、例えば9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20hであり、幾つかの好ましい実施形態において、流加時間は8~15hであり;上記流加過程で糖液の過飽和度は1.01~1.19に制御され、好ましくは1.01~1.10に制御され、より好ましくは1.03~1.08に制御される。
【0038】
本発明の実施形態によれば、当業者は、上記蒸発が減圧条件を採用できることを理解することができる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、更に下記ステップを含み:
(3)流加終了後、ケークの濃度が75~85%になるまで蒸発を続け、排出して遠心分離を行い;
(4)乾燥して顆粒剤を得る。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記ステップ(3)において、蒸発時間は1~3時間であり、例えば2時間であり;好ましくは、ケークの濃度が75~80%になるまで蒸発させ、例えば75、76、77、78、79、80%である。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記乾燥は、沸騰乾燥、流動床乾燥、減圧乾燥から選ばれる1つ又は複数である。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記ステップ(4)は、具体的には、
(4i)沸騰乾燥後、流動床乾燥して顆粒剤を得る。好ましくは、上記沸騰乾燥は、風温90~105℃、材料温度60~80℃で行い;上記流動床乾燥では、温度を徐々に下げ、好ましくは、40~50℃で空気を取り入れ、低温(例えば15~25℃)で冷たい乾燥空気を送風し、最後に常温まで冷却する。
【0043】
本発明の実施形態によれば、上記ステップ(4i)において、リフロー混床で沸騰乾燥を行うことができ;上記乾燥過程では、スターフィーダーやロータリーフィーダーを用いて材料を供給することができ、好ましくは、振動させながら上記材料を供給する。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記ステップ(4)は、具体的には、人工材料敷き込み、オーブン減圧真空乾燥を採用する。
【0045】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、更にステップ(5):包装を含む。好ましくは、上記包装過程では、振動ブランキング方式を採用して、線形で量を秤量する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、乾燥した顆粒を更に篩にかけるというステップを任意に含む。
【0047】
本発明の実施形態によれば、上記アラビノースはβ-L-(+)-アラビノースである。幾つかの実施形態において、上記L-アラビノースの顆粒剤は前文第1態様に記載のL-アラビノース、又は前文第3態様の上記製造方法により得られたL-アラビノースを含有する。
【0048】
第7態様において、本発明はまた上記製造方法により得られたL-アラビノース顆粒剤を提供する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、上記L-アラビノース顆粒の平均粒径範囲は100~600μmであり、好ましくは100~300μmであり、例えば100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290μmである。上記L-アラビノース顆粒のD10は40~200μmであり、好ましくは40~100μmであり、例えば40、50、60、70、80、90、100μmであり;上記L-アラビノース顆粒のD50は80~200μmであり、好ましくは90~150μmであり、例えば90、100、110、120、130、140、150μmであり;上記L-アラビノース顆粒のD90は150~300μmであり、好ましくは200~250μmであり、例えば200、210、220、230、240、250μmである。
【0050】
本発明の実施形態によれば、上記顆粒剤は、単位用量形態又は複数用量形態であり得る。幾つかの実施形態において、上記顆粒剤は単位用量形態であり、1~100gのL-アラビノース、例えば1、5、10、20、30、40、50、60gのL-アラビノースを含有する。幾つかの実施形態において、上記顆粒剤の1日当たりの用量は20~75gであり;他の実施形態において、上記顆粒剤の1日当たりの用量は3~20gである。
【0051】
第8態様において、本発明はまた、前文の上記L-アラビノースと製剤(第1、第3、第4、第5及び第7態様に係るL-アラビノース及びその製剤を含む)を、腸管洗浄及び/又は腸管前処置のために使用する方法を提供する。本発明の実施形態によれば、腸管洗浄及び/又は腸管前処置の場合、上記L-アラビノースと製剤を毎回20g~60g投与することができ、例えば、毎回20、30、40、50、60g投与し;1回の腸管洗浄及び/又は腸管前処置を完了すると、投与される上記L-アラビノースと製剤の総用量は20~75gである。幾つかの実施形態において、本発明は、上記L-アラビノース顆粒剤を、腸管洗浄及び/又は腸管前処置、体重管理、並びに便秘の改善及び/又は治療のために使用する方法を提供する。上記顆粒剤を腸管洗浄及び/又は腸管前処置のために使用する場合、上記L-アラビノース顆粒剤を毎回20g~60g投与することができ、例えば、毎回20、30、40、50、60g投与し;幾つかの実施形態において、1回の腸管洗浄及び/又は腸管前処置を完了すると、投与される上記L-アラビノース顆粒剤の総用量は20~75gであり;他の実施形態において、上記顆粒剤を体重管理、便秘の改善及び/又は治療のために使用する場合、上記L-アラビノース顆粒剤を毎日3~20g投与する。
【0052】
第9態様において、本発明はまた、上記L-アラビノースと製剤(第1、第3、第4、第5及び第7態様に係るL-アラビノース及びその製剤を含む)を、腸管洗浄及び/又は腸管前処置の薬物製造のために使用する用途を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、上記L-アラビノース顆粒剤を、腸管洗浄及び/又は腸管前処置、体重管理、並びに便秘の改善及び/又は治療の薬物製造のために使用する用途を提供する。
【発明の効果】
【0053】
1)本発明によって製造されたL-アラビノース製品は、単結晶育成後に単一のβ結晶形として同定される。本発明によって製造されたL-アラビノース製品は、他の補助剤を添加することなく、腸管洗浄剤として直接使用することができ、良好な流動性を有し、安全且つ効果的であり、腸管前処置薬物の食感、味及び許容可能な用量範囲を大幅に向上し、患者のコンプライアンスを明らかに高め、ほとんどの患者が従来の腸管前処置薬物を飲むことへの抵抗を減らし、従来の臨床的に推奨されている薬物である硫酸マグネシウム及びPEGを完全に凌駕し、且つソルビトール高張液よりも一定の利点を有する。
【0054】
2)本発明で採用される製造プロセスは、簡単且つ実行可能であり、結晶化過程は有機溶媒を使用する必要がなく、環境に優しく安全であり、製品の粒径範囲を制御するのが容易である。得られた製品の純度は99.6%以上に達し、個々の不純物は何れも0.05%の限度内に制御されており、高品質の腸管前処置原薬の基準を満たすことができ、特に、本発明のプロセスは、製品中のフルクトース含有量を0に制御し、ガラクトース含有量を0.01~0.04%に制御し、フルクトース及びガラクトース不純物の吸収によって引き起こされる患者への不必要な影響と負担を軽減又は回避でき、且つ、特にフルクトース不耐症の人が製品を安全に服用するのに適している。3)アラビノース顆粒剤を製造する過程において、本発明は補助剤を添加する必要がなく、また複雑な造粒加工過程も必要とせず、得られた製品は包装充填過程で良好な流動性を有し、且つ適切な粒度分布を有し、現在の薬典による顆粒剤の粒度品質要件を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明のL-アラビノースのX線粉末回折パターンである。
【
図2】本発明のL-アラビノースの赤外スペクトルである。
【実施例】
【0056】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0057】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原材料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0058】
下記の実施例で使用されるL-アラビノース原料は唐伝生物科技(廈門)有限公司から購入し、純度≧99%(L-アラビノース国家標準QB/T 4321-2012に準拠)である。
【0059】
実施例1 蒸発流加結晶法によるL-アラビノースの製造
L-アラビノース原料30kgを取り、それに精製水33kgを加えて60℃で溶解し;活性炭30gを加えた。60℃で40~60min保温し、濾過して活性炭を除去し、濾過した糖液を得た。
【0060】
上記濾過糖液の約半分を取り蒸発結晶缶に入れ、糖液の糖度が58~60%Brixになるまで蒸発させ、L-アラビノース原料を種晶として適量加えた後(上記種晶はL-アラビノース原料を粉砕して篩(5~6号薬典標準篩)にかけた後の粉末であり、5号篩を通過できるが6号篩を通過できない部分を取り)、残りの約半分の濾過糖液を流加し始め、流加速度は1.5~4.0L/hであり、流加時間は10~12hであった。流加終了後、1~2時間濃縮を続けた。種晶を加えてから排出するまでの時間は14時間程度であった。
【0061】
当業者は、用語「流加」が蒸発結晶の通常な操作の1つであることを理解することができ、即ち、糖液を連続的に補充添加しながら水を蒸発させて、系内の糖液の液体濃度を相対的に一定に維持することである。上記流加過程において、糖液の過飽和度は1.10を超えなかった。
【0062】
【0063】
上記L-アラビノースの結晶はCu-Kα放射を使用し、2θ角で示されるX線粉末回折はD8 advance(Bruker)X線回折計を試験機器として使用し、機器パラメータは次の通りであり:
放射:Cu K(λ=1.54056)、
動作電流:40mA、
動作電圧:40KV、
検出器:PSD、
開始角度:4°(2-theta)、
終了角度:40°(2-theta)、
スキャンステップ:0.05°/step、
スキャン速度:1sec/step。
【0064】
測定結果を
図1に示し、2θ角度の誤差範囲は±0.20°であった。
【0065】
実施例1によって製造されたL-アラビノースは、粒度・形状解析測定により、平均粒径は149μmであり、粒径分布はD10=49μm、D50=138μm、D90=261μmであり、スパン=0.985であった。
【0066】
実施例1によって製造されたL-アラビノース製品は、単結晶育成後に単結晶回折計でβ-L-(+)-アラビノースとして同定された。具体的な実施過程において、L-アラビノース単結晶を界面拡散法により育成し、即ち:製造されたL-アラビノース20gを秤量し、20mLの脱イオン水に溶解し、完全に溶解して室温まで冷却した後、ビーカーの内壁に沿って40mLのエタノールを加え、エタノールが蒸発するのを防ぐためにラップで密封し、エタノールの添加及び密封過程に溶液をできるだけ振らないようにした。ビーカーを恒温水槽に入れ、温度を30℃に設定し、約1ヶ月後にL-アラビノース単結晶を得た。上記結晶は斜方晶系であり、空間群はP212121であり、単位胞パラメータは
a=4.78120(10)Å、
b=6.43740(10)Å、
c=19.50095(3)Å、
α=90°、β=90°、γ=90°、V=600.208(18)Å3、Z=4、F(000)=320.0であった。
【0067】
実施例2 冷却結晶によるL-アラビノースの製造
糖溶解:糖溶解タンクに水25LとL-アラビノース原料22kgを加え、L-アラビノース原料を加えた時点で攪拌を開始し、加熱して完全に溶解させた後、活性炭22gを加え、55~70℃で20~60min保温して吸着させた。活性炭を濾去した後、材料を反応釜に加えて濃縮し、糖度が60%Brixになるまで濃縮したところで、種晶としてL-アラビノース原料を適量加え(上記種晶はL-アラビノース原料を粉砕して篩(5~6号薬典標準篩)にかけた後の粉末であり、5号篩を通過できるが6号篩を通過できない部分を取り)、播種温度は60℃であった。攪拌速度を50rpmに調整して降温操作を行い、初期降温温度は60℃であり、降温速度は約1℃/hであった。液体クロマトグラフィーによる測定結果を次の表に示す(%純度は、面積正規化法、つまり、サンプルの全ピーク面積に対する被検成分の比率によって計算):
【0068】
【0069】
検測によると、実施例2の製品は、D-アラビノース(文献(Higaki S,et al.,Journal of the Food Hygienic Society of Japan, 2018, 59(3):114-120)には、D-アラビノースは毒性があり、食品の安全性に対する懸念があることが記載されている)及びフルフラールを含まないことが確認された。
【0070】
実施例2によって製造されたL-アラビノース製品は、実施例1の製品と同じ結晶形を有すると同定され、粒度・形状解析測定により、平均粒径は189μmであり、粒径分布はD10=82μm、D50=182μm、D90=299μmであった。
【0071】
実施例3
実施例3の操作は実施例2と基本的に同じであるが、降温速度を約2℃/hに上げ、結晶化サイクルを16hに短縮し、蒸発流加結晶の結晶化サイクルに近かった。結晶完成品収率は40.8%であった。粒度・形状解析測定により、平均粒径は125μmであり、粒径分布はD10=43μm、D50=109μm、D90=232μmであった。
【0072】
実施例4 L-アラビノースの粒径パラメータと粉末特性(個数分布)
【0073】
【0074】
実施例5 本発明によって製造されたL-アラビノースによるマウスの腸管洗浄準備
5.1 実験動物とその飼育:SPF級マウス、特定の病原体を持たない(Specific pathogen Free、SPF)グレード、6週齢;一般的な飼料はD12450-B飼料:炭水化物67.35wt%、粗タンパク質19.2wt%、脂肪4.3wt%であった。部屋の温度が24~26℃に保たれており、湿度が40~60%に保たれていた。
【0075】
5.2 実験方法と過程:
SPF級マウスをランダムにブランク対照群、陽性対照群、及び試験群に分け、各群20匹のマウスで半分が雄で半分が雌であった。各群の投与量を以下の表1に示す。投与方法:各群の動物に対して試験前日の夜22時以降は禁食させ、禁水せず、試験日の朝7時、9時及び11時に計算された用量の1/3をそれぞれ投与(胃内灌流投与)し、12時、13時及び14時にそれぞれ0.1mLの純水を胃内灌流投与し、最終投与から3.5h後に解剖した。
【0076】
【0077】
5.3 実験結果:
(1)解剖前に、陽性対照群と試験群の両方で水様便と軟便が観察された。
(2)陽性対照群と試験群は、解剖後に直腸結腸に残滓が残っておらず、腸管洗浄効果が良好であることが観察された。明らかに、L-アラビノース試験群の用量は陽性対照群の用量のわずか38%で同様な効果が得られ、投与量の優位性は明らかである。
【0078】
実施例6 本発明によって製造されたL-アラビノースによるヒトの腸管洗浄準備
投与サンプル:実施例1によって製造されたL-アラビノース
被験者:男性、41歳、体重73kg
投与案:
被験者は朝空腹で、起床後は通常水を飲み、
10:06 約100~150mLのミネラルウォーターに30gのL-アラビノースを溶解し、約5分程度で飲み切れ、
10:42 約40分後に約350mLの水を飲み、トイレに行って軟便を排泄し、
11:11 25分後、再び100mLの水を飲み、2度目のトイレに行って水様便を排泄し、
11:34 更に約15min後、250mLの水を飲み、
11:55 3回目のトイレに行って水様便を排泄し、残渣が非常に少なく、
12:10 200mLの水を飲み、
13:27 4回目のトイレに行って淡黄色の水様便を排泄し、残渣がなかった。
【0079】
全過程に使用される水の量は約1Lであり、時間は3.5時間であった。
【0080】
これにより分かるように、本発明によって製造されたL-アラビノース製品は、水で直接服用することができ、服用過程が便利であり、用量が適切であり、術前の腸管洗浄準備又は大腸内視鏡検査及びその他の検査前の腸管洗浄準備の要求を効果的に満たすことができる。
【0081】
実施例7 本発明によって製造されたL-アラビノースのインビトロ浸透圧試験
実験機器:Vapro pressure osmometer蒸気浸透圧計
実験材料:L-アラビノース(実施例1の方法によって製造)、ソルビトール(市販の国薬試薬)
実験過程:表2に示す材料配合比に従って4つの溶液をそれぞれ配合し、溶液が完全に透明になるまで攪拌した後、順次検測を開始し、検測結果を下記表7-1に示す。
【0082】
【0083】
上記の表から分かるように、ソルビトール高張液に比べて、同じ質量濃度のL-アラビノースは浸透圧が22.8%高く、これは、本発明のL-アラビノース溶液を経口投与すると、溶液自体の浸透圧作用により腸管の浸透圧を高め、ソルビトール高張液よりも一定の利点を有することが示されている。
【0084】
実施例8 L-アラビノース顆粒の製造
1.1実験過程
L-アラビノース原料1kgを取り、それに純水1.2kgを加えて60℃で溶解し、溶液が完全に透明になったら、活性炭1g(L-アラビノースの質量の1‰)を加えた。60℃で30min保温し、次いで順に25μm、0.45μmの濾膜を使用して真空濾過して活性炭を除去し、得られた濾過糖液の体積は約1800mLであった。上記濾過糖液の約800mLを三口フラスコに入れ、水浴の温度を62℃に調整し、糖液の糖度が58~60%Brixになるまで撹拌・減圧蒸発させ、種晶としてL-アラビノースを適量加え(下記表8-1に示すように、異なる種晶仕様を選択し:40~60メッシュ、16.5g;60~80メッシュ、6g;80~100メッシュ、1.5g)、攪拌(攪拌タイプは2層式であり、下層が二つの半三日月形、上層が三枚羽根推進式)を開始し、攪拌速度は90~110rpmであり、種晶が完全に分散するまで攪拌し、そして糖液の流加操作を開始し、流加速度は50~100mL/hであり、流加時間は12~18hであった。流加終了後、1~2時間濃縮を続けた。種晶を加えてから排出するまでの時間は14時間程度であった。
【0085】
当業者は、用語「流加」が蒸発結晶の通常な操作の1つであることを理解することができ、即ち、糖液を連続的に補充添加しながら水を蒸発させて、系内の糖液の液体濃度を相対的に一定に維持することである。上記流加過程において、糖液の過飽和度を1.01~1.10の範囲に制御した。
【0086】
表8-1の実験結果から分かるように、加えた80~100メッシュの種晶の比表面積は、他の仕様の種晶に比べて比較的小さい(表8-2に示すように)が、実験で得られたサンプルの粗さ分布は比較的均一であり、20~80メッシュの占める割合は89.7%以上に達し、最大は90%を超え、現在の薬典(「2020中国薬典」)における顆粒剤の要件(即ち、1号篩(10メッシュ、2000μm目開き)を通過できないものと5号篩(80メッシュ、180μm目開き)を通過できるものの合計が15%を超えないこと)を完全に満たしている。
【0087】
【0088】
実施例9 L-アラビノースの単結晶育成と同定
実施例8によって製造されたL-アラビノース製品は、単結晶回折計でβ-L-(+)-アラビノースとして同定された。単結晶育成を行った。L-アラビノース単結晶を界面拡散法により育成し、即ち:製造されたL-アラビノース40gを秤量し、40mLの脱イオン水に溶解し、完全に溶解して室温まで冷却した後、ビーカーの内壁に沿って80mLのエタノールを加え、エタノールが蒸発するのを防ぐためにラップで密封し、エタノールの添加及び密封過程に溶液をできるだけ振らないようにした。ビーカーを恒温水槽に入れ、温度を30℃に設定し、約15日後にL-アラビノース単結晶を得た。上記結晶は斜方晶系であり、空間群はP212121であった。
【0089】
【0090】
実施例10 L-アラビノース顆粒剤の製造
L-アラビノース原料8000kgを取り、純水8800キログラムを加えて完全に溶解するまで加熱攪拌し、溶液温度60℃で活性炭4kgを加え、保温して30min攪拌を続けた後、濾過して活性炭を除去し、上澄み液を取得し、上澄み液約8400kg(約7200L)を蒸発結晶装置に入れ蒸発させ、蒸発糖液の温度は60~65℃であり;糖液を59.4%Brixになるまで蒸発濃縮し、80~100メッシュの種晶を加え、播種温度は64.9℃であり、残り半分の上澄み液を約600L/hの速度で流加し、流加時間は12hであり、減圧蒸発結晶化を行い;流加終了後、約2h蒸発を続け、ケークの濃度が81%に達したら、排出して遠心分離を行った。オーガーで材料を連続供給してリフロー混床で沸騰乾燥を行い(風温90~105℃、材料温度60~80℃)、そして流動床で乾燥を行い、温度を徐々に下げ(40~50℃で空気を取り入れ、15~25℃という低温で冷たい乾燥空気を送風する)、常温まで冷却した後、包装を行った。
【0091】
当業者は、「ケーク」がアラビノース結晶と糖液の固液混合物であり、「ケークの濃度」が固液混合物中のアラビノースの濃度であることを理解することができる。
【0092】
【0093】
実施例11 L-アラビノース顆粒剤の製造
L-アラビノース原料30kgを取り、純水33キログラムを加えて完全に溶解するまで加熱攪拌し、溶液温度60℃で活性炭15.2gを加え、保温して30min攪拌を続けた後、濾過して活性炭を除去し、上澄み液を取得し、上澄み液約32kgを反応釜に入れ減圧蒸発させ、蒸発糖液の温度は60~65℃であり;糖液を57.6%Brixになるまで蒸発濃縮し、80~100メッシュの種晶45gを加え、播種温度は61.5℃であり、残り半分の上澄み液を2~2.3L/hの速度で流加し、流加時間は12hであり;流加終了後、約2h蒸発を続け、ケークの濃度が78%に達したら、排出して遠心分離を行い、人工材料敷き込みとオーブン乾燥を行った。
【0094】
実施例12 L-アラビノース顆粒剤の製造
L-アラビノース原料40kgを取り、純水44キログラムを加えて完全に溶解するまで加熱攪拌し、溶液温度60℃で活性炭20.2gを加え、保温して30min攪拌を続けた後、濾過して活性炭を除去し、上澄み液を取得し、上澄み液約32kgを反応釜に入れ減圧蒸発させ、蒸発糖液の温度は60~65℃であり;糖液を57.6%Brixになるまで蒸発濃縮し、80~100メッシュの種晶60gを加え、播種温度は61.5℃であり、残り半分の上澄み液を2~2.3L/hの速度で流加し、流加時間は12hであり;流加終了後、約2h蒸発を続け、ケークの濃度が78%に達したら、排出して遠心分離を行い、人工材料敷き込みとオーブン乾燥(減圧真空乾燥)を行った。
【0095】
【0096】
実施例13 本発明の顆粒剤の性能試験結果
【0097】
【0098】
実施例14
実施例10のプロセスを参考に操作を行い、材料供給方式をスターフィーダーに変更しただけで、それに対応してリフロー混床沸騰乾燥の材料敷き込み高さを約1/3以下に低下し、即ち、材料敷き込み厚さが16cm未満(元の高さが約50cmであった)になった。
【0099】
【0100】
実施例15 L-アラビノースの飽和曲線と晶析曲線
温度制御可能な恒温槽に丸底フラスコを入れ、三口丸底フラスコ(一方の口をゴム栓で塞いでサンプリング口とし、他方の口を攪拌パドルの設置口とし、もう一方の口を温度プローブポートとする)に一定量のイオン水を加え、且つ過剰のL-アラビノース結晶(実施例10の方法によって製造された)を追加し、それぞれ40℃、49℃、53℃、58℃、65℃で3時間撹拌した後、4h静置し、未溶解のL-アラビノース結晶を十分に沈降させ、上清を取り、ミリポアフィルタメンブレンにより濾過し(温度変化の影響を排除するために、小型サンプリングニードルを恒温槽で濾過する)、濾過により得られた上澄み液で濃度を測定した。アラビノースの飽和曲線:y=0.5927x+23.089(相関係数R
2=0.99)(
図4を参照)を描いた。相応する質量濃度の透明なL-アラビノース糖液を調製して溶解し、ゆっくりと降温(1℃/h)し、等速(100rpmで攪拌)で降温し、異なる質量濃度の糖液の晶析温度を観察して記録した。アラビノースの晶析曲線:y=0.4163x+40.413(相関係数R
2=1)(
図4と表15-1を参照)を描き、表15-1から分かるように、結晶化温度が65℃の場合、流加過程に糖液の濃度が67.47%を超える(過飽和度が1.1を超える)と、多数の粉末結晶が現れ、結晶数が急激に増加し、結晶サイズが成長し続けることができなくなり、即ち結晶化が失敗し、システムを昇温溶解し、再結晶する必要がある。
【0101】
【0102】
実施例16 L-アラビノース顆粒剤の包装
実施例14によって製造されたL-アラビノース完成品を包装に使用し、包装速度は15~40袋/minであり、シングルチャネルであり、製造要件を満たすように包装過程で気密性及び充填量をチェックした。この包装機による包装過程では、振動ブランキング方式を採用しており、線形で量を秤量し、得られたL-アラビノース顆粒剤は、顆粒剤の粒度及び充填量に対する2020年版薬典の要件を満たした。
【0103】
デバイス型番:MK-600
【0104】
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で何れかの修正、同等の取替え、改良などを行っても、本発明の請求範囲内に含まれる。