(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】原水と循環冷却水との熱交換システム
(51)【国際特許分類】
F28D 21/00 20060101AFI20240802BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240802BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240802BHJP
【FI】
F28D21/00 B
F25B1/00 399Z
C02F1/44 H
(21)【出願番号】P 2023202836
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2024-02-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年9月6日月島社会教育会館において開催された2023年度省エネ大賞地区発表大会で公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237444
【氏名又は名称】リバーエレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】成田 年正
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢一
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204280(JP,A)
【文献】国際公開第2022/013977(WO,A1)
【文献】特開平10-192853(JP,A)
【文献】特開2000-015257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D21/00
B01D53/22,61/00-71/82
C02F1/44
F25B1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水製造装置に原水を供給するための原水供給経路と、機械設備を冷却するための冷却水循環経路と、
前記原水供給経路の上流側に設置される原水の貯留槽と、を備え、
前記原水と前記機械設備を冷却した後の循環冷却水との間で熱交換を行う熱交換手段を有し、前記
循環冷却水で原水を加温する一方、前記循環冷却水を冷却する原水と循環冷却水との熱交換システム
であって、
前記熱交換手段が、前記原水供給経路と機械設備を冷却した後の冷却水循環経路との間で熱交換する第1熱交換器と、
前記貯留槽に貯留槽内の原水を循環させる原水循環経路を設け、この原水循環経路と前記機械設備を冷却した後の冷却水循環経路との間で熱交換する第2熱交換器と、を含む原水と循環冷却水との熱交換システム。
【請求項2】
前記冷却水循環経路には、前記熱交換手段の下流側に冷却水循環装置が設けられる請求項
1に記載の原水と循環冷却水との熱交換システム。
【請求項3】
前記原水供給経路には、前記熱交換手段の下流側に原水加熱装置が設けられる請求項
1に記載の原水と循環冷却水との熱交換システム。
【請求項4】
前記純水製造装置に供給される原水の水温は
22-26度である請求項1に記載の原水と循環冷却水との熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水と循環冷却水との熱交換システムに係り、特に純水製造装置に供給される原水と、機械設備を冷却するための循環冷却水との間で熱交換を行う熱交換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子や水晶発振器などの電子部品を製造する際、水晶基板の洗浄用水に多量の純水が用いられる。この純水は、豊富にある地下水や水道水などの原水を逆浸透膜(RO膜)に透過させることで製造されるが、RO膜を透過させる際に原水の温度が低いとRO膜が目詰まりを起こすおそれがあり、純水の製造効率が低下すると共に原水の廃棄量が増加する問題がある。そのため、従来にあっては、原水をボイラや熱交換器などで一定温度に加温してから、RO膜を透過させるようにしていた(特許文献1参照)。
【0003】
一方、前記水晶振動子や水晶発振器などの電子部品を製造するための機械設備は、その機械動作によって発熱し、誤動作や故障の原因にもなるため冷却する必要がある。従来にあっては、チラーユニットなどを備えた冷却水循環装置を設け、機械設備との間に冷却水の循環経路を形成し、冷却水循環装置で温度制御した循環冷却水によって機械設備を適切な温度にまで冷却していた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-183800号公報
【文献】特開2009-192088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原水をボイラで加温するような場合には、灯油などの化石燃料を用いるために燃料費が大きな経済的負担となっていた他、燃焼時に発生する二酸化炭素の排出による環境への大きな負荷も課題となっていた。
【0006】
一方、冷却水循環装置は、電気によって温度制御した循環冷却水を常時機械設備に供給し続けるために大きな電力量が必要となり、運転に掛かる電気代が大きな負担となっていた。
【0007】
そこで、本発明にあっては、機械設備を冷却した後の循環冷却水と原水とを熱交換することで、原水の水温を上げてボイラによる化石燃料の使用量を減らす一方、循環冷却水の水温を下げて冷却水循環装置の電力使用量を抑えた熱交換システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムは、純水製造装置に原水を供給するための原水供給経路と、機械設備を冷却するための冷却水循環経路と、を備え、前記原水と前記機械設備を冷却した後の循環冷却水との間で熱交換を行う熱交換手段を有し、前記原水を加温する一方、前記循環冷却水を冷却する。
【0009】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムは、前記熱交換手段が、前記原水供給経路と前記冷却水循環経路との間に配置されていてもよい。
【0010】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムは、前記原水供給経路の上流側に原水の貯留槽が設置されると共に、この貯留槽には原水を循環させる原水循環経路が設けられ、この原水循環経路と前記冷却水循環経路との間に前記熱交換手段が配置されていてもよい。
【0011】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムは、前記原水供給経路の上流側に原水の貯留槽が設置され、この貯留槽内に前記熱交換手段が配置されていてもよい。
【0012】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムは、前記冷却水循環経路には、前記熱交換手段の下流側に冷却水循環装置が設けられ、前記原水供給経路には、前記熱交換手段の下流側に原水加熱装置が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムによれば、純水製造装置に供給される原水と機械設備を冷却した後の循環冷却水との間で熱交換を行なう熱交換手段を設けたので、原水の水温が上がることでボイラによる化石燃料の使用量を減らすことができる一方、循環冷却水の水温が下がることで冷却水循環装置の電力使用量を抑えることができた。すなわち、化石燃料の使用量及び電力使用量を抑えることによって二酸化炭素の排出量を削減することができるのに加えて、原水を適正な温度に加温してからRO膜を透過させることで、純水の製造効率が改善すると共に原水の使用量を減らすことができた。
【0014】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムによれば、原水供給経路と冷却水循環経路との間に熱交換手段を配置したので、純水製造装置に配管された既存の原水供給経路や機械設備に配管された既存の冷却水循環経路をそのまま利用することができた。
【0015】
また、本発明の原水と循環冷却水との熱交換システムによれば、原水供給経路の上流側に原水の貯留槽を設置し、この貯留槽内の原水を熱交換手段によって加温するようにしたので、貯留槽全体の原水の水温を上げることができ、ボイラによる原水の加温がわずかなもので済むようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る熱交換システムの概略図である。
【
図5】冷却水循環装置の電力使用量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る原水と循環冷却水との熱交換システムについて、図面を参照しながら各実施形態に基づいて説明する。なお、図面は、熱交換システムの構成部材及び周辺部材を模式的に表したものであり、これらの実際の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略し、同一部材には同一符号を付与することがある。
【0018】
図1には本発明に係る原水と循環冷却水との熱交換システムの第1実施形態が示されている。この熱交換システム1は、純水製造装置2に原水を供給するための原水供給経路3と、機械設備4を冷却するための冷却水循環経路5と、これら両方の経路の間に設けられた第1熱交換器6と、を備える。前記原水供給経路3は、地下からくみ上げた地下水を純水製造装置2に供給するための経路であり、純水製造装置2の上流側の経路途中に原水を所定温度にまで加温するボイラ7が設置されている。ボイラ7は灯油などの化石燃料を燃やして純水製造装置2に供給される原水の温度を約24℃に調整するためのものである。これは、地下水の温度が通年16~17℃であるため、地下水をそのまま純水製造装置2のRO膜に透過させると、RO膜が目詰まりを起こし易く、純水の製造効率が低下するからである。純水製造装置2で製造された純水は、水晶振動子や水晶発振器などの電子部品を製造する際の基板洗浄用水として利用される。
【0019】
冷却水循環経路5は、冷却水循環装置8で一定温度にコントロールされた冷却水を複数の機械設備4との間で循環させて各機械設備4を冷却するための経路である。冷却水循環装置8は、循環する水を冷やすための冷却部と水槽と圧送ポンプなどのチラーユニットを備えており、冷却部で一定温度まで下げた冷却水を圧送ポンプで前記冷却水循環経路5に送り出す。前記冷却水循環経路5は、冷却水循環装置8から各機械設備4に延びる往路循環路5aと、各機械設備4から冷却水循環装置8に延びる復路循環路5bとで構成される。往路循環路5aは、各機械設備4を冷却するために、冷却水循環装置8で冷却された循環冷却水を各機械設備4に供給するための経路であり、この実施形態では冷却水循環装置8から各機械設備4に3本の往路循環路5aが配管されている。
【0020】
一方、復路循環路5bは、各機械設備4を冷却した後の循環冷却水を冷却水循環装置8に戻すための経路である。復路循環路5bを流れる循環冷却水は、各機械設備4を冷却することで水温が高くなるが、冷却水循環装置8に戻ることで再び冷却される。例えば、機械設備4を冷却した後、復路循環路5bでの循環冷却水の温度が約22℃となる場合、冷却水循環装置8によって約19℃にまで冷却され、その温度差によって機械設備4を冷却することができる。なお、この実施形態では各機械設備4と冷却水循環装置8とをつなぐ復路循環路5bの途中に受水槽9を設けている。この受水槽9は、各機械設備4を冷却した後の循環冷却水を一か所に貯留するためのものである。受水槽9の底部からは一本の復路循環路5bが冷却水循環装置8まで延びている。
【0021】
この実施形態では、冷却水循環経路5の復路循環路5bと原水供給経路3との間に前記第1熱交換器6が設けられている。この第1熱交換器6は、原水供給経路3を流れる地下水と、前記機械設備4を冷却した後の復路循環路5bを流れる循環冷却水との間で熱交換するものである。第1熱交換器6には、原水供給経路3の原水入口6a及び原水出口6bと、復路循環路5bの循環冷却水入口6c及び循環冷却水出口6dとがそれぞれ設けられている。この第1熱交換器6は、例えば原水入口6aと循環冷却水入口6cから内部に流れ込んだ水温の低い地下水と水温の高い循環冷却水とが、複数枚重ねた伝熱プレート間の隙間を交互に流れて熱交換する構造になっており、地下水より水温の高い循環冷却水の有する熱エネルギを地下水側へと移動させることで、地下水の水温が高められる。一例では、第1熱交換器6の原水入口6a側では水温16~17℃であった地下水が原水出口6b側では21~22℃まで上昇する。その結果、第1熱交換器6をボイラ7の上流側の原水供給路3に設置することで、第1熱交換器6で21~22℃に高められた原水をボイラ7が加温することになる。そのため、ボイラ7は、原水を所定温度の約24℃までに加温するのに2~3℃温度上昇させれば済むので、灯油の使用量を大幅に削減することができる。
【0022】
一方、機械設備4を冷却した後の循環冷却水は、一例では第1熱交換器6の循環冷却水入口6c側では水温が約22℃あるが、地下水との熱交換によって熱エネルギが奪われるために約3℃低下し、第1熱交換器6の循環冷却水出口6d側では約19℃になる。その結果、冷却水循環装置8では循環冷却水をさらに冷却する必要がなくなり、その分の電力使用量を削減することができ、循環冷却水を機械設備4に常時循環させるだけの電力消費で済むことになる。
【0023】
図2には本発明の第2実施形態に係る熱交換システムが示されている。この熱交換システム11は、地下からくみ上げた地下水を一旦溜めておく貯留槽、いわゆる地下プール12と、地下プール12から送り出された地下水を再び地下プール12に戻すための原水循環経路13と、前記受水槽9から冷却水循環装置8まで延びる復路循環路5bとは別の経路で、受水槽9から冷却水循環装置8まで延びる第2復路循環路14と、この第2復路循環路14と前記原水循環経路13との間に設けられた第2熱交換器15とを、先に説明した第1実施形態の熱交換システム1に追加構成したものである。それ故、第1実施形態の熱交換システム1と同一の装置及び構成部材等には同一の符号を付することで詳細な説明は省略する。
【0024】
前記地下プール12に貯留された地下水は、原水供給経路3を介して純水製造装置2に供給されるが、この実施形態では地下プール12に一旦溜まった地下水を原水循環経路13に導き入れて第2熱交換器15で加温するため、地下プール12全体の水温が高められる。その結果、地下プール12内の温められた地下水が原水供給経路3を介して純水製造装置2に供給されるため、原水供給経路3の途中に設けられているボイラ7での加温を僅かなもので済ませることができ、ボイラの灯油使用量をさらに減らせることができる。
【0025】
前記原水循環経路13は、地下プール12の一つの側壁12aから外側に向かってループ状に配管されており、原水が地下プール12から出て地下プール12に戻る循環経路を形成している。原水循環経路の13のループの先端部分には第2熱交換器15が配設され、基端部分には地下プール12の側壁12aとの間に、地下プール12内の地下水を原水循環経路13に導き入れる経路入口16aと、前記第2熱交換器15を経由して熱交換された地下水を原水循環経路13から地下プール12に戻す経路出口16bが設けられている。圧送ポンプ(図示せず)によって経路入口16aから原水循環経路13内に送り込まれた地下プール12内の地下水は、原水循環経路13を循環する間に第2熱交換器15により循環冷却水との間で熱交換されたのち、経路出口16bから地下プール12内に戻る。このように、地下プール12内に貯留された地下水は原水循環経路13を介して常時循環され、その間に第2熱交換器15により循環冷却水との間で熱交換されることで、地下プール12の地下水全体の水温が上昇することになる。
【0026】
第2熱交換器15は、前記第1実施形態の第1熱交換器6と同様の構造からなるものを用いることができ、前記原水循環経路13と第2復路循環路14との間に設置されている。この第2熱交換器15には、原水循環経路13の循環水入口15a及び循環水出口15bと、第2復路循環路14の循環冷却水入口15c及び循環冷却水出口15dとがそれぞれ設けられている。この第2熱交換器15は、循環水入口15aと循環冷却水入口15cから内部に流れ込んだ地下プール12の地下水と、前記機械設備4を冷却した後の第2復路循環路14を流れる循環冷却水との間で熱交換するものであり、地下水より水温の高い循環冷却水の有する熱エネルギを地下水側へと移動させることで、地下プール12内の地下水の水温が高められる。
【0027】
一例として、冷却水循環装置8で温度調整される循環冷却水の温度を21℃とした場合について説明する。この場合、機械設備4を冷却した後の循環冷却水の温度は、約3℃上昇して24~25℃となる。地下プール12内の地下水は、前記原水循環経路13を循環する際、原水循環経路13に設置された第2熱交換器15によって、機械設備4を冷却した後の循環冷却水との間で熱交換されることで、地下プール12全体の水温が約20℃まで上がる。このように水温が上昇した地下水は地下プール12から原水供給経路3に送り出され、ボイラ7の上流側に設置された第1熱交換器6において、さらに循環冷却水との間で熱交換されることで、24~25℃まで昇温される。その結果、ボイラ7による加温の必要がなくなり、ボイラ7での灯油使用量が一段と減少すると共に二酸化炭素の排出量の大幅な削減が期待される。
【0028】
一方、機械設備4を冷却した後の循環冷却水は、第1熱交換器6の循環冷却水入口6c側及び第2熱交換器15の循環冷却水入口15c側では水温が約24~25℃あるが、原水供給経路3及び原水循環経路13を流れる地下水との間で行われた熱交換によって約3℃低下し、第1熱交換器6の循環冷却水出口6d側及び第2熱交換器15の循環冷却水出口15d側では約21℃に低下する。その結果、冷却水循環装置8では循環冷却水をさらに冷却する必要がないため、その分の電力使用量を削減することができる。
【0029】
図3には本発明の第3実施形態に係る熱交換システムが示されている。この熱交換システム21は、機械設備4を冷却する冷却水循環経路5の一部を直接地下プール12内に配管し、この配管に地下プール12内の地下水を接触させることで、両者の間で直接熱交換を行うものである。熱交換により昇温した地下プール12内の地下水は、さらに加温されることなく直接純水製造装置2に供給される。すなわち、この実施形態では、熱交換手段として、前記実施形態のような第1熱交換器、第2熱交換器及びボイラを備えていない。なお、この熱交換システム21は、前記の構成以外については、第1実施形態の熱交換システム1及び第2実施形態の熱交換システム11とほぼ同一の構成からなるので、同一の符号を付することで詳細な説明は省略する。
【0030】
この実施形態では機械設備4を冷却するための冷却水循環経路5は、先の実施形態のような冷却水循環装置8を備えていない。すなわち、複数の各機械設備4を冷却した後の冷却水循環経路5は、経路の一部が地下プール12内に配管され、そののち地下プール12から各機械設備4まで延びている。地下プール12内に配管された部分はそのまま熱交換経路22として形成され、熱交換経路22内を流れる循環冷却水と地下プール12内の地下水との間で直接熱交換される。熱交換経路22は、プール12内での熱交換効率を高めるため、プール12内の隅々まで行き渡るようにプール全体に配管されるのが望ましい。この熱交換システム21では、各機械設備4の下流側に受水槽を設けることなく、各機械設備4のアウト側からそれぞれ復路循環路5bが地下プール12まで延びている。そして、地下プール12内で熱交換経路22を形成したのち、往路循環路5aとして各機械設備のイン側に戻る。すなわち、この実施形態では3本の復路循環路5bがそのまま地下プール12内まで延びて3本の熱交換経路22を形成し、そのまま地下プール12から出て3本の往路循環路5aを形成して、再び各機械設備4に戻る構成となっている。
【0031】
この実施形態では、機械設備4を冷却するための循環冷却水の温度を21℃とする場合について説明する。この場合、循環冷却水は、機械設備4を冷却したあとの温度が約24~25℃となる。そのため、地下プール12に配管された熱交換経路22の地下プール入口22a側の温度も約24~25℃が保たれる。そして、地下プール12内において、熱交換経路22の配管に地下プール12内の地下水を直接接触させることで、温度の高い循環冷却水の有する熱エネルギが水温の低い地下水側へと移動することで地下プール12内の地下水の水温が上がる。この実施形態では熱交換経路22をそのまま地下プール12内に配管しているので、地下水との熱交換率が良く、地下プール12内の地下水は水温が約24℃まで高められる。そのため、先の実施形態のような熱交換手段やボイラで加温することなく、地下プール12内の地下水を直接純水製造装置2に供給することができる。
【0032】
一方、熱交換経路22によって地下水との間で熱交換された循環冷却水は、熱交換経路22の地下プール出口22b側では循環冷却水の温度が21℃まで下がる。そのため、熱交換経路22から往路循環路5aに送り出された循環冷却水をさらに冷却することなく、そのまま機械設備4に供給することができる。
【0033】
このように、この実施形態に係る熱交換システム21では、冷却循環経路5内を循環する循環冷却水と地下水との間の熱交換を地下プール12内で行うことによって熱交換効率が上がるので、先の実施形態のような冷却循環経路5に設置していた冷却水循環装置8が必要なくなった。なお、地下プール12内での熱交換が不十分な場合や、より確実な温度制御が必要な場合などには、冷却水循環経路5に冷却水循環装置8を設けることもできる。その場合は、機械設備4の下流側に受水槽9を設け、受水槽9から地下プール12を介して冷却水循環装置8まで延びる冷却水循環経路5を、先の実施形態のように、一本の配管で構成することもできる。
【0034】
なお、上記いずれも実施形態において、純水製造装置2に供給される原水の最適温度を約24℃、すなわち24℃付近として説明したが、本発明は必ずしもこの温度に限定されるものではなく、おおよそ22℃から26℃の間では純水製造に同じような効果が期待できる。機械設備冷却用の冷却水循環経路を流れる循環冷却水の温度が多少変動することによって、上記原水の供給温度にも変動が生ずるものである。
【0035】
表1には第1実施形態及び第2実施形態の各熱交換システムにおけるボイラの灯油使用量が従来との比較で示されている。実施した期間は、熱交換器導入前が2022年4月-同年7月であり、第1熱交換器導入後(第1実施形態)が2022年8月-2023年4月であり、第1、第2熱交換器導入後(第2実施形態)が2023年5月-同年7月である。この表からも明らかなように、熱交換器導入前に比べて、第1熱交換器導入後は1日あたりの灯油使用量が1桁以上も少なくなり、第1、第2熱交換器導入後はさらに一段と灯油使用量が少なくなっている。
【0036】
【0037】
図4には表1における1日あたりの灯油使用量がグラフで示されている。また、各灯油使用量に対応する原油換算量、二酸化炭素排出量のそれぞれが示されている。
図4から明らかなように、熱交換器導入前は1日あたり183リットルの灯油を使用していたものが、第1熱交換器導入後は14リットルの使用量となり、熱交換器導入前の92%まで削減することができた(2022年8月の1日当たりの灯油使用量は第1熱交換器の導入直後であるので含まれていない)。さらに、第1、第2熱交換器導入後においては8リットルの使用量となり96%まで削減することができた。また、灯油使用量と比例するように、二酸化炭素の排出量も大幅に削減することができ、熱交換器導入前は0.480トン排出されていたものが、第1熱交換器導入後は0.035トンに、第1、第2熱交換器導入後は0.020トンまでに減らせることができた。
【0038】
図5には、熱交換器導入前、第1熱交換器導入後(第1実施形態)、第1、第2熱交換器導入後(第2実施形態)における冷却水循環装置の1日あたりの電力消費量が示されている。この図からも明らかなように、熱交換器導入前は1日あたり942Kwhの電力消費量であったものが、第1熱交換器導入後は624Kwhの電力消費量となり、さらに第1、第2熱交換器導入後は197Kwhの電力消費量だけで済むようになった。また、電力消費量と比例するように、二酸化炭素の排出量も削減することができ、熱交換器導入前は0.448トン排出されていたものが、第1熱交換器導入後は0.297トンに、第1、第2熱交換器導入後は0.094トンまでに減らせることができた。
【符号の説明】
【0039】
1、11、21 熱交換システム
2 純水製造装置
3 原水供給経路
4 機械設備
5 冷却水循環経路
5a 往路循環路
5b 復路循環路
6 第1熱交換器
6a 原水入口
6b 原水出口
6c 循環冷却水入口
6d 循環冷却水出口
7 ボイラ
8 冷却水循環装置
9 受水槽
12 地下プール
12a 地下プールの側壁
13 原水循環経路
14 第2復路循環路
15 第2熱交換器
15a 循環水入口
15b 循環水出口
15c 循環冷却水入口
15d 循環冷却水出口
16a 経路入口
16b 経路出口
22 熱交換経路
22a 地下プール入口
22b 地下プール出口
【要約】
【課題】 純水製造装置に供給する原水をボイラで所定温度まで加温する際の灯油の燃料費が大きな経済的負担となっていた他、燃焼時に発生する二酸化炭素の排出が環境に大きな影響を及ぼす。
【解決手段】 純水製造装置2に原水を供給するための原水供給経路3と、機械設備4を冷却するための冷却水循環経路5と、を備え、前記原水供給経路3と前記冷却水循環経路5との間に第1熱交換器6を設置し、前記原水と前記機械設備4を冷却した後の循環冷却水との間で熱交換を行い、前記原水を加温する一方、前記循環冷却水を冷却する。
【選択図】
図1