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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】複合シート及び繊維樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/00 20060101AFI20240802BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B32B5/00 A
B29B11/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020109601
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006988
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋輔
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/065576(WO,A1)
【文献】特表2018-515736(JP,A)
【文献】特開2014-189013(JP,A)
【文献】特開2007-106101(JP,A)
【文献】特開2008-207551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)を一体化してなる複合シートであって、
シートの断面以外で有機長繊維束が露出しておらず、ウォーターピックアップ法により測定される含浸率が8.0%以上50.0%以下であり、前記有機長繊維が引張強度10cN/dtex以上の高強度有機長繊維であり、前記布帛(A)の上面及び下面に樹脂(B)の層が存在することを特徴とする複合シート。
【請求項2】
有機長繊維束の厚みに対する樹脂の含浸深さの割合が5%未満である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
記樹脂(B)が、複合シートの一部でつながっている、請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
有機長繊維束が、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、高強力ポリエチレン繊維のうちいずれか1種、もしくは2種以上を組み合わせてなる、請求項1~いずれかに記載の複合シート。
【請求項5】
樹脂(B)が、繊維樹脂複合体の成形加工温度以上のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)を有している、請求項1~いずれかに記載の複合シート。
【請求項6】
請求項1~いずれかに記載の複合シートを構成要素として含む、繊維樹脂複合体。
【請求項7】
請求項1~いずれかに記載の複合シート1枚又は2枚以上と、炭素繊維又はガラス繊維を含む繊維強化樹脂との積層体である、請求項に記載の繊維樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)を一体化してなる複合シート、及びそれを構成要素として含む繊維樹脂複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維からなる布帛とマトリクス樹脂とからなる繊維樹脂複合体は、軽量で優れた機械特性を有することから、航空機材、車両部材、電気電子部品、家電製品の各種ハウジング等幅広い分野に使用され、軽量、かつ、高剛性、高強度、耐摩耗性等の特性が要求される分野において有効に用いられている。
【0003】
繊維樹脂複合体に用いる強化繊維としては、有機繊維や無機繊維等の様々な強化繊維が知られており、一般的によく用いられるものとしてガラス繊維や炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。その中でも、耐衝撃性が求められる用途においては、靭性の高い有機繊維を用いることで、高い耐衝撃性をもつ繊維樹脂複合体が得られることが知られており、様々な検討が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、布帛を含むが樹脂を含まない第1ゾーン(複合材の総厚の42%)、樹脂を含むが布帛を含まない第3ゾーン(同25%)、前記ゾーンの間に位置する樹脂及び布帛を含む第2ゾーン(同33%)を有する複合材が開示されており、ナイフやピック、弾丸及び破片に対して優れた耐性を示すことが記されている。
【0005】
また、特許文献2には、繊維樹脂複合体中に、フェノール樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂が含侵されていない樹脂未含侵繊維層を積層することにより、弾丸に対する耐弾性能あるいは爆発物に対する耐爆性等の耐衝撃性に優れる繊維樹脂複合体を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2018-515736号公報(特許請求の範囲、実施例1-2、図4図6等)
【文献】特開2013-145655号公報(特許請求の範囲、図1-3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、繊維樹脂複合体の耐衝撃性・耐貫通性を向上させることのできる複合シート、及びそれを構成要素として含む繊維樹脂複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記目的を達成すべく誠意検討した結果、特定の構造を有する複合シートを用いることで、耐衝撃性・耐貫通性に優れる繊維樹脂複合体を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)を一体化してなる複合シートであって、シートの断面以外で有機長繊維束が露出しておらず、ウォーターピックアップ法により測定される含浸率が8.0%以上50.0%以下であり、前記有機長繊維が引張強度10cN/dtex以上の高強度有機長繊維であり、前記布帛(A)の上面及び下面に樹脂(B)の層が存在することを特徴とする複合シートを提供する。
また、本発明は、前記複合シートを構成要素として含む、繊維樹脂複合体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維樹脂複合体の耐衝撃性・耐貫通性を向上させることが可能な複合シート、及びそれを構成要素として含む繊維樹脂複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の複合シートを構成要素に含む繊維樹脂複合体の一例を示す概念図。
図2】本発明の複合シートを構成要素に含む繊維樹脂複合体の一例を示す概念図。
図3】ウォーターピックアップ法を示す断面図。
図4】複合シートの一例を示す断面模式図(製造例1、3)。
図5】複合シートの一例を示す断面模式図(製造例2)。
図6】複合シートの一例を示す断面模式図(製造例7)。
図7】複合シートの一例を示す断面模式図(製造例9)。
図8】落錘衝撃試験結果を示す図。
図9】製造例1で得た複合シートの断面写真
図10】製造例7で得た複合シートの断面写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の複合シートは、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)を一体化してなる複合シートである。複合シートは、その断面以外で有機長繊維束が露出しておらず、ウォーターピックアップ法により測定される含浸率が8.0%以上50.0%以下であることを特徴とする。
【0014】
<有機長繊維束>
本発明で用いる有機長繊維束を含む布帛(A)を構成する有機長繊維束としては特に限定されないが、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド(全芳香族ポリアミド)繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等から選択される。
長繊維束を用いることで、本発明の複合シートの中に、樹脂を含まない有機長繊維束のみの領域を効果的に作り出すことができる。その中でも、引張強度が10cN/dtex以上となる高強度有機長繊維が好ましく、15cN/dtex以上となる高強度有機繊維がより好ましい。具体的には、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド(全芳香族ポリアミド)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を用いることが好ましい。引張強度が10cN/dtex以上の有機長繊維を用いることで、複合シートを構成要素として含む繊維樹脂複合体の耐衝撃性が十分なものとなる。有機長繊維束を含む布帛(A)は、有機長繊維束以外の繊維が含まれていてもよく、例えば有機長繊維束と無機長繊維束との交織布帛等も用いることができる。
【0015】
上記のアラミド繊維は、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていても良い二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、又はアラミド繊維と称されるものであって良い。「置換されていても良い二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していても良い二価の芳香族基を意味する。
【0016】
アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等を挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。このようなアラミド繊維は市販品として入手でき、その具体例としては、パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン社製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン-3,4´-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が引張強さに優れるため、特に好ましい。
【0017】
有機長繊維束の総繊度は特に限定されないが、通常、50~10,000dtex、好ましくは200~6,500dtex、より好ましくは750~3,500dtexのものが用いられる。総繊度の小さい有機長繊維束を用いると比較的薄い布帛、総繊度の大きい有機長繊維束を用いると比較的厚い布帛、が得られやすい。また、有機長繊維にタスラン加工やインターレース加工等を施したエアー交絡糸;加撚-熱固定-解撚糸(捲縮糸);仮撚加工糸;押込加工糸等の長繊維束も用いることができる。
【0018】
布帛としては、有機長繊維束を公知の方法で加工したものを用いることができ、織物、編物、有機長繊維束を一方向に配列させたトウシート等を好ましく用いることができる。布帛の厚さは特に限定されないが、繊維樹脂複合体の軽量化、低コスト化及び性能向上を図る観点からの厚さは、0.05mm~1.00mmが好ましく、0.10~0.80mmがより好ましい。
【0019】
織物としては、例えば、有機長繊維束を一方向又は二方向に配列させた一方向性織物や二方向性織物、三方向に配列させた三軸織物等が挙げられる。
織物密度(タテ糸及びヨコ糸密度)は、8~40本/25.4mmが好ましく、8~30本/25.4mmがより好ましい。また下記式(I)で示されるカバーファクター(CF)が800~2,200であることが好ましく、900~2,100がより好ましい。織物密度やカバーファクターがこの範囲にあると、十分な耐衝撃性を有する繊維樹脂複合体を得ることができる。一方、カバーファクターが800未満の場合は、目が粗いために衝突物を受け止めきれなくなる場合がある。
CF = √Dp × Np + √Df × Nf ・・・ (I)
但し、Dp:経糸繊度(dtex)
Np:経糸密度(本/25.4mm)
Df:緯糸繊度(dtex)
Nf:緯糸密度(本/25.4mm)
【0020】
編物としては、例えば、丸編機等のよこ編機、トリコット編機、ラッセル編機、ミラニーズ編機等のたて編機で製編したものが挙げられる。
【0021】
布帛の目付(単位面積当りの重量)は、繊維樹脂複合体に十分な耐衝撃性と剛性を付与する観点より、20~1,000g/mが好ましく、より好ましくは50~600g/mの範囲内である。また、布帛の引張強さ(JIS L1096 8.14.1 A法)は、繊維樹脂複合体に十分な耐衝撃性と剛性を付与する観点より、100~1,000kgf/25.4mmが好ましく、より好ましくは200~1,000kgf/25.4mmである。
【0022】
<樹脂>
本発明で用いる樹脂(B)は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から自由に選ぶことができるが、樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)のうち、いずれか高い方の温度が、繊維樹脂複合体の成形加工温度以上であることが好ましい。このように設計することによって、繊維樹脂複合体の成形加工時に樹脂(B)が流動し、有機長繊維束内部に含浸することを防ぐと同時に、繊維樹脂複合体を構成するマトリクス樹脂(D)が有機長繊維束内部に含浸することを防ぐことができるため、安定的に繊維樹脂複合体の耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0023】
前記熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタックチックポリスチレン樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ、また、熱硬化性樹脂の具体例としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは単独のポリマーだけでなく2種類以上をコンパウンド等でアロイ化した樹脂として使用することも可能である。
上記樹脂のなかでも、後述する繊維強化樹脂(E)を構成するマトリクス樹脂(D)との接着性が高いものが好ましく、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0024】
前記樹脂(B)には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、充填剤(カーボンファイバー、ガラスファイバー、タルク等のフィラー等)、顔料及び染料等が挙げられ、これらの添加剤等から選ばれる1又は2以上を配合することができる。これらの配合量は通常用いられる量で良い。
【0025】
<複合シート>
本発明の複合シートは、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)とから構成されており、有機長繊維束(A)の表面に樹脂(B)が熱融着によって一体化されている。
また、複合シートの内部には有機長繊維束のみの領域が存在しており、複合シートを構成要素として含んでなる繊維樹脂複合体の耐衝撃性を向上させるために重要である。
さらに本発明では、複合シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことが重要である。有機長繊維束が一部でも露出してしまうと、繊維樹脂複合体を成形する際にマトリクス樹脂(D)が有機長繊維束内部に含浸してしまい、十分な耐衝撃性を得ることができなくなる。
【0026】
本発明の複合シートは、ウォーターピックアップ法を用いて測定した含浸率が8.0%以上50.0%以下であり、より好ましくは9.0%以上30.0%以下、さらに好ましくは10.0%以上20.0%以下である。含浸率が8.0%未満の場合、有機長繊維束を含む布帛(A)内部に樹脂(B)が一部、ないしは完全に含浸している状態、又は、有機長繊維束を含む布帛(A)が樹脂(B)によって強く拘束されている状態であり、複合シートを構成要素として含む繊維樹脂複合体の耐衝撃性が不十分なものとなる。また、含浸率が50.0%を超える場合、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)との密着性が弱く、複合シートを構成要素として含む繊維樹脂複合体が構造を維持できず、分離してしまう恐れがある。耐衝撃性の観点からは、特に好ましい含浸率は12.0%以上19.0%以下である。
【0027】
ここで、ウォーターピックアップ法とは、複合シートを水につけることで、毛細管現象により該複合シート内の空隙に入り込んだ水の重量割合(含浸率)を算出した、含浸性の指標である。
本発明においては、後記のように、100×100mmの複合シートを1枚用意し、重量を測定し、その後、水を入れたビーカーに垂直に6mm沈め、5分間の浸漬後の重量を測定し、浸水後の重量の増加分を、複合シートを構成する有機長繊維を含む布帛(A)の重量で除した値を百分率で表したものを含浸率(%)とする。
【0028】
本発明の複合シートは、有機長繊維束の厚みに対する樹脂の含浸深さの割合が5%未満であることが望ましい。ここでいう「含浸」とは、有機長繊維束を構成する単糸間に樹脂が入り込むことを意味している。有機長繊維束の最外層の単糸のみが樹脂と接触している状態の場合、含浸深さの割合は0%であり、有機長繊維を含む布帛(A)に樹脂(B)が完全含浸している場合、含浸深さの割合は100%となる。含浸深さの割合が5%以上になると、繊維樹脂複合体が十分な耐衝撃性を得ることができない。含浸深さの割合は、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明の複合シートの構造としては、複合シートの上面及び下面に樹脂(B)の層が存在し、前記樹脂(B)が、複合シートの一部でつながっていることが好ましい。これにより、複合シートを構成要素として含む繊維樹脂複合体が受けた応力を伝播させる領域が形成されるため、曲げ強度(曲げ剛性)の高い繊維樹脂複合体を得ることができる。このような構造は、例えば、有機長繊維束を含む布帛にあらかじめ隙間を作る(即ち、糸-糸間を開ける)、あるいは、カバーファクターの小さい布帛を用いる等により達成できる。一方、布帛の隙間が増えると繊維樹脂複合体の耐衝撃性が低下し所望の効果が得られない恐れがある。
【0030】
本発明の複合シートの製造方法は、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)とを一体化でき、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していない状態を作り出すことができる方法であれば、特に限定されない。
例えば、樹脂フィルム、有機長繊維束からなる布帛(A)、樹脂フィルムの順に積層し、積層体を加熱及び加圧により圧着させる方法、有機長繊維束からなる布帛(A)を樹脂ディスパージョン(エマルジョン溶液)に浸漬し、有機長繊維束からなる布帛(A)表面に樹脂を付着させ、加熱により有機長繊維束からなる布帛表面をコーティングする方法、あらかじめ有機長繊維束に樹脂を被覆した複合糸を用いて布帛を作成する方法等が挙げられる。
【0031】
<繊維樹脂複合体>
本発明のもう一つの形態は、上記複合シートを構成要素として含む繊維樹脂複合体である。具体例としては、本発明の複合シートに、それ以外の構成要素を積層した積層体が挙げられる。
【0032】
複合シート以外の構成要素としては、強化繊維(C)とマトリクス樹脂(D)とからなる繊維強化樹脂(E)が挙げられる。
【0033】
強化繊維(C)としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維や、全芳香族ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、アラミド(全芳香族ポリアミド)繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等の有機繊維からなる強化繊維が挙げられ、得られる繊維樹脂複合体の要求特性によって適宜選択することができる。例えば、剛性が要求される用途においては、曲げ強さの低下を最小限に抑えられる点で、炭素繊維やガラス繊維等の無機繊維を用いることが好ましく、その中でも炭素繊維は、軽量性と剛性が特に優れた繊維樹脂複合体を得ることができるためより好ましい。
【0034】
マトリクス樹脂(D)としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シンジオタックチックポリスチレン樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂;等が挙げられ、得られる繊維樹脂複合体の要求特性によって適宜選択することができる。例えば、剛性が要求される用途においては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂等の高剛性の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0035】
本発明の複合シートを用いて繊維樹脂複合体を形成する場合、複合シートは、1枚又は複数枚が積層される。例えば、複合シートが一定規則に従って積層されてもよいし、ランダムに配置されるように積層されてもよい。
【0036】
好ましい積層形態は、図1のように、複合シート10の両面に、1枚又は2枚以上の繊維強化樹脂(E)20を配置することであり、このような配置は繊維樹脂複合体の剛性を高め、製品の反りを抑制するために有効である。その他の例としては、図2のように、複合シート10を面方向の耐衝撃性が必要な個所にのみ配置することもでき、耐衝撃性が求められる領域だけに絞って配置することにより、繊維樹脂複合成形体の剛性を保ちつつ、耐衝撃性を付与することが可能となる。
【0037】
本発明の繊維樹脂複合体の成形方法に特に限定はなく、任意の成形方法(例えば、フィラメントワインディング、オートクレーブ、シートワインディング、プレス成形等)を採ることができる。この場合、成形加工温度が、複合シートを構成する樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)のいずれかのうち高い方の温度よりも低いことは、重要な要素である。かかる条件で成形加工することによって、繊維樹脂複合体の成形加工時に樹脂(B)が流動し、有機長繊維束の内部に含浸することを防ぐと同時に、繊維樹脂複合体を構成するマトリクス樹脂(D)が有機長繊維束の内部に含浸することを防ぐことができ、安定的に繊維樹脂複合体の耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0038】
また、複合シート以外のその他の構成要素として、樹脂成形体(F)が挙げられる。
樹脂成形体(F)は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から成形される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シンジオタックチックポリスチレン樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ、得られる繊維樹脂複合体の求められる特性によって適宜選択することができる。
【0039】
また、これら熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、可塑剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、充填剤(カーボンファイバー、ガラスファイバー、タルク等のフィラー等)、顔料及び染料等が挙げられ、これらの添加剤から選ばれる1又は2以上を配合することができる。これらの配合量は通常用いられる量で良い。
【実施例
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「重量部」は「部」と略記する。なお、実施例中に記載の評価方法は以下の通りである。
【0041】
[有機長繊維束の厚みに対する樹脂の含浸深さ]
得られた複合シートを有機繊維束からなる布帛が断面に露出する形に切断し、断面について光学顕微鏡を用いて、切断面の任意の箇所で樹脂の含浸状態を観察した。観察の際、断面を食紅で着色した蒸留水に浸し、余分な水分をウェスで取り除いた上で観察することにより、含浸していない領域を着色し(樹脂が含浸した領域は蒸留水が入り込めないので着色されない)、樹脂の含浸状態を観察しやすくした。観察結果から、有機長繊維束の厚みに対する樹脂の含浸深さの割合を算出した。
【0042】
[含浸率(ウォーターピックアップ法)]
得られた複合シートを、有機繊維束からなる布帛が断面に露出する形に切断した100×100mmの複合シートを1枚用意する。試験前の重量を測定した後、常温(20℃)のイオン交換水を入れたビーカーに垂直に6mm沈め、5分間浸漬後の重量を測定し、浸水後の重量の増加分を、複合シートを構成する有機長繊維束を含む布帛(A)の重量で除した値を百分率で表した。図3参照。
【0043】
[耐衝撃性]
繊維樹脂複合体について、ISO6603-2(硬質プラスチックの突き刺し衝撃挙動)に記載の方法に従って、最大衝撃力ならびにパンクチャーエネルギーを測定した。測定装置はIMATEC社のIM10T-20を用い、使用したストライカー径は20mm、付加エネルギーは30Jの条件で実施した。
【0044】
[曲げ特性]
繊維樹脂複合体について、JIS K7017(繊維強化プラスチック-曲げ特性の求め方)に記載の方法に従って、曲げ弾性率を測定した。測定装置はINSTRON社の5967デュアルコラム卓上型試験機を用いた。
【0045】
[製造例1]
単糸繊度1.7dtex、単繊維本数666本である、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン社製「ケブラー(R)29」;引張強度:20.3cN/dtex、比重:1.44)を用いた平織物(目付:200g/m、織物密度:22本/25.4mm、カバーファクター:1,466、引張強さ:437kgf/25.4mm)を、有機長繊維束を含む布帛(A-1)として用い、ポリカーボネートフィルム(AGC社製「カーボグラス」;ガラス転移温度:150℃、厚み:0.13mm)を樹脂(B)として用いた。
樹脂(B)/有機長繊維束を含む布帛(A)/樹脂(B)の順に積層したものを、手動熱プレス装置(東洋精機社製「ミニテストプレス」)にて、170℃×5MPa×1分の条件にて熱圧着し複合シートを得た(図4)。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていないことを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.51mm、含浸率は12.3%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0046】
[製造例2]
製造例1で用いた有機長繊維束を含む布帛(A-1)の代わりに、有機布帛(A-1)に先端が鋭利なアイスピック様の治具を用いて部分的に隙間を作った布帛(A-2)を用いた以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た(図5)。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていることを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.50mm、含浸率は14.2%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0047】
[製造例3]
製造例1で用いた有機長繊維束を含む布帛(A-1)の代わりに、単糸繊度11.5dtex、単繊維本数96本である、液晶ポリエステル繊維(KBセーレン社製「ゼクシオン(R)」;引張強度:23.3cN/dtex、比重:1.41)を用いた平織物(目付:278g/m、織物密度:31本/25.4mm、カバーファクター:2,066、引張強さ:277kgf/25.4mm)を、有機長繊維束を含む布帛(A-3)を用いた以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていないことを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.51mm、含浸率は19.2%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0048】
[製造例4]
複合シートを用いず、製造例1に記載の有機長繊維束を含む布帛(A-1)のみを用いた。布帛(A-1)の厚みは0.28mm、含浸率は56.0%であった。
【0049】
[製造例5]
製造例1において、熱圧着の条件を150℃×5MPa×1分とした以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていないことを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.51mm、含浸率は56.0%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0050】
[製造例6]
製造例1において、熱圧着の条件を180℃×5MPa×1分とした以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていないことを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.50mm、含浸率は7.8%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0051】
[製造例7]
製造例1において、熱圧着の条件を200℃×5MPa×1分とした以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た(図6)。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていないことを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.50mm、含浸率は2.7%、樹脂の含浸深さは27%であった。
【0052】
[製造例8]
製造例1において、熱圧着の条件を220℃×5MPa×1分とした以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していないことを確認した。また、複合シートの上面に存在する樹脂と下面に存在する樹脂とが、一部でつながっていることを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.49mm、含浸率は0.1%、樹脂の含浸深さは100%であった。
【0053】
[製造例9]
製造例1において、積層構成を樹脂(B)/有機長繊維束を含む布帛(A)としたこと以外は、製造例1と同じ手法にて複合シートを得た(図7)。
得られた複合シートを観察したところ、シートの断面以外で有機長繊維束が露出していることを確認した。また、得られた複合シートの厚みは0.40mm、含浸率は50.4%、樹脂の含浸深さは0%であった。
【0054】
[製造例10]
単糸繊度1.7dtex、単繊維本数768本である、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン社製 「ケブラー(R)49」;引張強度:20.8cN/dtex、比重:1.45)を用いた平織物(目付:170g/m、織物密度:17本/25.4mm、カバーファクター:1,212、引張強度:283kgf/25.4mm)に、jER828及びjER1001(ビスフェノールAグリシジルエーテル(エポキシ当量189)三菱ケミカル社製)100部(jER828:jER1001=50:50重量%)と、ジシアンジアミド5部、及び3-(3、4-ジクロロフェニル)-1、1-ジメチル尿素5部、を均一に混合した一液硬化エポキシ樹脂組成物を含浸させ、目付:322g/m、厚み:0.21mmのプリプレグAを得た。
【0055】
[製造例11]
東レ社製の「トレカ(R)プリプレグF6343B-05P」(目付:198g/m、厚み:0.24mm)をプリプレグBとして用いた。
【0056】
[実施例1~3、比較例1~6]
上記製造例1~9で得られた複合シートもしくは布帛と、製造例10で得られたプリプレグAとを用いて、プリプレグA/プリプレグA/複合シート(布帛)/プリプレグA/プリプレグAの順に積層し、手動熱プレス装置(東洋精機社製「ミニテストプレス」)にて、120℃×5MPa×2時間の条件にて熱硬化させ、各繊維樹脂複合体を得た。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
上記製造例1で得られた複合シートと、製造例1で用いた平織物ならびに2液硬化性エポキシ樹脂(主剤:DIC社製「EPICRON(R)850」、硬化剤:DIC社製「LUCKAMIDE WN-507」を100:50で混合したもの)を用いてハンドレイアップ(HLU)法により繊維樹脂複合体を得た。積層構成は平織物/平織物/複合シート/平織物/平織物の順で作成した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例5、比較例7]
上記製造例1、4で得られた複合シートもしくは布帛と、製造例11で得られたプリプレグBとを用いて、プリプレグB/プリプレグB/複合シート(布帛)/プリプレグB/プリプレグBの順に積層し、手動熱プレス装置(東洋精機社製「ミニテストプレス」)にて120℃×10MPa×2時間の条件にて熱硬化させ、各繊維樹脂複合体を得た。結果を表2に示す。
【0059】
実施例1及び比較例1、3で得た繊維樹脂複合体について、落錘衝撃試験した結果を図8に示す。
【0060】
製造例1(図4参照)で得た複合シートの断面写真を図9に示す。布帛の経糸及び緯糸の間に蒸留水が浸入し赤色に着色していた。
製造例7(図6参照)で得た複合シートの断面写真を図10に示す。布帛の経糸の一部に樹脂含浸領域(厚み55μm)が形成され、樹脂含浸領域には着色が認められなかった。経糸の一部に樹脂未含浸領域(厚み150μm)が形成され、蒸留水が浸入し赤色に着色していた。有機長繊維束の厚みに対する樹脂の含浸深さの割合を、(55/205)×100=26.8%と算出した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1及び表2の結果から、比較例1、比較例6については、シートの断面以外で有機長繊維束が露出した状態であり、繊維樹脂複合体の成形時にマトリクス樹脂が有機長繊維束に浸透し耐衝撃性に劣る結果となった。比較例2については、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)との密着性に欠け、繊維樹脂複合体成形後に層間剥離を生じ、複合体を得ることができなかった。比較例3~5については、複合シートの含浸率が低く、耐衝撃性に劣る結果となった。
【0064】
一方、本発明例である実施例1~5は、ストライカーが貫通せず、非常に高い耐衝撃性を有していることがわかった。また耐衝撃試験後の試験片を観察すると、繊維強化樹脂(E)と複合シートは接着されたままで、有機長繊維束を含む布帛(A)と樹脂(B)の間で剥離が生じていることが確認された。その中でも実施例2は、曲げ特性にも優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の複合シートは、繊維樹脂複合体の耐衝撃性・耐貫通性を向上させることができ、又、得られた繊維樹脂複合体は、外部からの衝撃に対し非常に高い性能を示すことから、自動車、列車、航空機等の部品、カバン製品の部品、ハウジング材、アタッシュケース、スーツケース等のカバンのボディ、インテリア材、防護材、家具、楽器、家庭用品等、各種成形品に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 複合シート
11 樹脂(B)
12 有機長繊維束を含む布帛(A)に樹脂(B)が含浸している領域
13 有機長繊維束を含む布帛(A)
14 複合シートの上面
15 複合シートの下面
20 繊維強化樹脂
30 繊維樹脂複合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10