(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】光学用粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 153/00 20060101AFI20240802BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240802BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240802BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240802BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240802BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240802BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09J153/00
B32B27/00 M
B32B27/30 A
C09J7/38
C09J133/06
G02B5/30
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2019199059
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌之
(72)【発明者】
【氏名】寳田 翔
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529339(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016407(WO,A1)
【文献】特開2012-237965(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/091927(JP,A1)
【文献】特開2005-232297(JP,A)
【文献】J.BRNDRUP,POLYMER HANDBOOK,FOURTH EDITION,米国,J.Wiley,1999年,VI/198-VI/205,ISBN 0471166286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/30
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを含有する光学用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが、
0℃以上100℃以下のガラス転移温度を有する高Tgセグメントと、
-100℃以上0℃未満のガラス転移温度を有する低Tgセグメントを有し、
0℃以上の領域と0℃未満の領域にそれぞれtanδのピークを有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記高Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が1~3である直鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び脂環式モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が4~18である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、水酸基含有モノマーを1重量%以上含有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが、ABA型トリブロックコポリマーである
、光学用粘着剤組成物。
ここで、前記ガラス転移温度は、各セグメントを構成するモノマー成分組成からFOXの式により算出されるものである。
【請求項2】
前記ABA型トリブロックコポリマーにおいて、Aセグメントが前記高Tgセグメントであり、Bセグメントが前記低Tgセグメントである、請求項
1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを含有する光学用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが、
0℃以上100℃以下のガラス転移温度を有する高Tgセグメントと、
-100℃以上0℃未満のガラス転移温度を有する低Tgセグメントを有し、
0℃以上の領域と0℃未満の領域にそれぞれtanδのピークを有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記高Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が1~3である直鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び脂環式モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が4~18である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、水酸基含有モノマーを1重量%以上含有し、
前記高Tgセグメントが、0℃以上35℃以下のガラス転移温度を有する
、光学用粘着剤組成物。
ここで、前記ガラス転移温度は、各セグメントを構成するモノマー成分組成からFOXの式により算出されるものである。
【請求項4】
前記0℃以上の領域におけるtanδの極大値が0.5~3.0である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記高Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記脂環式モノマーが、置換基を有していてもよい炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルを含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルからなる群から選ばれる、請求項
6に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルは、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まない、請求項
6に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの重量平均分子量が20万以上である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの分子量分布が、1より大きく5以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項11】
25℃における貯蔵弾性率と50℃における貯蔵弾性率の比(25℃における貯蔵弾性率/50℃における貯蔵弾性率)が3以上である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項12】
25℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であり、50℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以下である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の光学用粘着剤組成物により形成される光学用粘着剤層。
【請求項14】
請求項
13に記載の光学用粘着剤層を有する光学用粘着シート。
【請求項15】
光学部材からなる第1の基板と、
主面に段差を有する光学部材からなる第2の基板と、
請求項
13に記載の光学用粘着剤層とを有する光学部材積層体であって、
前記光学用粘着剤層が、前記第1の基板の任意の主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層された、光学部材積層体。
【請求項16】
前記第1の基板が主面に段差を有し、
前記光学用粘着剤層が、前記第1の基板の前記段差を有する主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層された、請求項
15に記載の光学部材積層体。
【請求項17】
前記第2の基板が有する段差が、主面上に設けられた穴による段差である、請求項
15又は
16に記載の光学部材積層体。
【請求項18】
前記第2の基板が偏光板である、請求項
17に記載の光学部材積層体。
【請求項19】
前記第1の基板が有する段差が、主面上に設けられた印刷段差である、請求項
16~
18のいずれか1項に記載の光学部材積層体。
【請求項20】
前記第2の基板が有する段差が、基板上に設けられたLEDチップによる段差である、請求項
15に記載の光学部材積層体。
【請求項21】
前記第2の基板がLEDパネルである、請求項
20に記載の光学部材積層体。
【請求項22】
請求項
15~
21の何れか1項に記載の光学部材積層体を備える光学製品。
【請求項23】
請求項
15~
21の何れか1項に記載の光学部材積層体の製造方法であって、
前記第2の基板の前記段差を有する主面に請求項
14に記載の光学用粘着シートを貼り付ける工程と、
前記第1の基板の任意の主面を、前記光学用粘着シートの光学用粘着剤層の上に積層し、50℃以上で加熱加圧する工程と、
を含むことを特徴とする光学部材積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着剤組成物に関する。詳細には、光学部材の貼り合わせや光学製品の製造等に特に好ましく用いることができる光学用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)や有機EL表示装置などの画像表示装置や、タッチパネルなどの上記画像表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきた。これらの画像表示装置や入力装置(「光学製品」とも称する)の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途等に透明な粘着剤組成物(「光学用粘着剤組成物」とも称する)が使用されている。例えば、タッチパネルやレンズなどと液晶表示装置(LCD)や有機EL表示装置などの画像表示装置との貼付に、光学用粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートが使用されている。
【0003】
上記光学部材の中には、印刷段差等の段差を有する部材を含むものが増えてきている。例えば、タッチパネルを備えた画像表示装置では、光学部材の表面に、パターン化されたITO(インジウム・スズ酸化物)などの透明で導電性の印刷層が形成される。また、表面保護フィルムの周縁部には、枠状に黒色の隠蔽部を印刷するのが一般的である。このような用途において光学用粘着剤組成物には、印刷段差等の段差を埋める性能、即ち、優れた段差吸収性(「段差追従性」とも称する)が要求される。
【0004】
また、上述の印刷段差以外の段差や隙間を有する光学部材の使用も増えてきており、段差吸収性に優れる光学用粘着剤組成物の要求度は高まっている。例えば、パネル上にカメラ等のセンサー類を設置するために偏光板等の光学部材に穴が設けられることが増えており、その場合に使用される光学用粘着剤組成物には、光学部材と穴部との境に生じる段差を埋めることが要求される。さらに、次世代ディスプレイとして注目されるマイクロLEDディスプレイなどは、基板上にLED素子を高密度に敷き詰めることによって作られており、この際に使用される光学用粘着剤組成物には、LED素子同士の隙間や段差を埋めることが要求される。
【0005】
上記の段差吸収性を向上させるために、光学用粘着剤組成物を低弾性率化して柔軟性を向上する手法が試みられている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このように低弾性率化された光学用粘着剤組成物は段差吸収性には優れているものの、形状安定性やハンドリング性等の加工性が低下するという問題がある。例えば、低弾性率の光学用粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する光学部材積層体は、保管時に端部から粘着剤層がはみ出しやすく、はみ出した粘着剤層にゴミが付着するなど加工性の点で問題を生じることがあった。
【0006】
加工性を改善するためには粘着剤層の弾性率を高めて硬くする必要があるが、粘着剤層を硬くすると段差吸収性が低下するというトレードオフの関係にあり、段差吸収性と加工性の両立は解決困難な課題である。
【0007】
低弾性率の粘着剤層の加工性を改善するために、高いガラス転移温度を有する粘着付与樹脂を粘着剤に配合して室温付近の弾性率を向上させつつ、ガラス転移温度を超える温度範囲で低弾性率化する手法が知られているが、このような粘着付与樹脂による加工性改善は十分ではなかった。また、粘着付与樹脂を用いる場合では粘着剤組成物との相溶性が課題となる場合があり、目的となる弾性率を満たすほど多量に添加することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、本発明の目的は、段差吸収性に優れるとともに、加工性に優れる光学用粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、光学用粘着剤組成物に含まれるポリマーとして、特定のガラス転移温度範囲を有する高Tgセグメントと低Tgセグメントを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを採用することにより、室温(例えば、25℃)付近では、高い貯蔵弾性率を示し、硬く加工性が良好で、50℃を超える領域で顕著に貯蔵弾性率が低下して高流動性となり、段差吸収性が良好となることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明の第1の側面は、
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを含有する光学用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが、
0℃以上100℃以下のガラス転移温度を有する高Tgセグメントと、
-100℃以上0℃未満のガラス転移温度を有する低Tgセグメントと、
を有し、
0℃以上の領域と0℃未満の領域にそれぞれtanδのピークを有することを特徴とする、光学用粘着剤組成物を提供する。
ここで、前記ガラス転移温度は、各セグメントを構成するモノマー成分組成からFOXの式により算出されるものである。
【0012】
本発明の光学用粘着剤組成物が、前記高Tgセグメントと、前記低Tgセグメントとを有し、0℃以上の領域と0℃未満の領域にそれぞれtanδのピークを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを含有することにより、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーは、室温(例えば、25℃)付近では、低Tgセグメントのみが転移・流動化するが、高Tgセグメントは転移しないため、(メタ)アクリル系ブロックコポリマー全体としては高い貯蔵弾性率を示し、硬く加工性が良好となる。そして、50℃を超える領域で高Tgセグメントも転移・流動化して(メタ)アクリル系ブロックコポリマー全体の貯蔵弾性率が低下して高流動性となる。
【0013】
本発明の光学用粘着剤組成物から形成された粘着剤層を、段差を有する光学部材と貼り合わせる際に、例えば、オートクレーブなどの加熱条件(例えば、50℃以上)で貼り合わせることにより、高流動性となり段差に十分に追従して気泡が残らずに隙間なく密着する。その後、室温(例えば、25℃)に戻して保管する場合には貯蔵弾性率が高くなり、加工性が良好となる。
【0014】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記0℃以上の領域におけるtanδのピークの極大値が0.5~3.0であることが好ましい。この構成は、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの優れる加工性と形状安定制を実現できる点で好ましい。
【0015】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーはABA型トリブロックコポリマーであることが好ましい。この構成は、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを製造しやすい点で好適である。
【0016】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物における前記ABA型トリブロックコポリマーにおいて、Aセグメントが前記高Tgセグメントであり、Bセグメントが前記低Tgセグメントである態様が好ましい。この構成は、本発明の前記作用効果が得られやすい点で好適である。
【0017】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記高Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が1~3である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び脂環式モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがうより好ましい。前記脂環式モノマーとしては置換基を有していてもよい炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが好ましい。この構成は、前記高Tgセグメントを所定のガラス転移温度を有し、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが0℃以上の領域にtanδのピークを有するように制御し、本発明の前記作用効果が得られやすい点で好適である。
【0018】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分として、炭素数が4~18である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。この構成は、前記低Tgセグメントを所定のガラス転移温度を有し、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが0℃未満の領域にtanδのピークを有するように制御し、本発明の前記作用効果が得られやすい点で好適である。
【0019】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおける前記低Tgセグメントを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、水酸基含有モノマーを1重量%以上含有することが好ましい。この構成は、前記低Tgセグメントを所定のガラス転移温度に制御し、本発明の前記作用効果が得られやすい点で好適である。
【0020】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの重量平均分子量は20万以上であることが好ましい。この構成は、本発明の光学用粘着剤組成物において、室温付近で良好な硬さと加工性が得られやすいという点で好ましい。
【0021】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの分子量分布は、1より大きく5以下であることが好ましい。この構成は、本発明の光学用粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの均一性が高くなり、透明性が高い粘着剤が得られやすい点で好ましい。
【0022】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、25℃における貯蔵弾性率と50℃における貯蔵弾性率の比(25℃における貯蔵弾性率/50℃における貯蔵弾性率)が3以上であることが好ましい。この構成は、本発明の光学用粘着剤組成物において、室温(25℃)での貯蔵弾性率と加熱(50℃)時の貯蔵弾性率の差が十分に広くなり、加熱時には高流動性となって優れた段差吸収性を示し、室温では硬くなって優れた加工性を示すことができる点で好ましい。
【0023】
本発明の第1の側面の光学用粘着剤組成物において、25℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であり、50℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以下であることがこのましい。この構成は、本発明の光学用粘着剤組成物において、室温(25℃)での貯蔵弾性率と加熱(50℃)時の貯蔵弾性率の差が十分に広くなり、加熱時には高流動性となって優れた段差吸収性を示し、室温では硬くなって優れた加工性を示すことができる点で好ましい。
【0024】
また、本発明の第2の側面は、光学用粘着剤組成物により形成される光学用粘着剤層を提供する。
また、本発明の第3の側面は、光学用粘着剤層を有する光学用粘着シートを提供する。
前記の光学用粘着剤層及び/又は光学用粘着シートは、後述の光学部材積層体を製造するために好適に使用できる。
【0025】
また、本発明の第4の側面は、光学部材からなる第1の基板と、主面に段差を有する光学部材からなる第2の基板と、本発明の第2の側面の光学用粘着剤層とを有する光学部材積層体であって、前記光学用粘着剤層が、前記第1の基板の任意の主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層された、光学部材積層体を提供する。
本発明の第4の側面の光学部材積層体において、前記第1の基板が主面に段差を有し、前記光学用粘着剤層は、前記第1の基板の前記段差を有する主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層されていてもよい。
また、前記第2の基板が有する段差は、主面上に設けられた穴による段差であってもよく、その場合、前記第2の基板は偏光板であることが好ましい。
また、前記第1の基板が有する段差は、主面上に設けられた印刷段差であることが好ましい。
また、前記第2の基板が有する段差は、主面上に設けられたLEDチップによる段差であってもよく、その場合、前記第2の基板はLEDパネルであることが好ましい。
また、本発明の第5の側面は、前記光学部材積層体を備える光学製品を提供する。
本構成に係る光学部材積層体及び光学装置では、前記光学用粘着剤層が前記第2の基板の段差に十分に追従して隙間なく密着しており、室温での保管時には前記光学用粘着剤層が硬くなり、優れた加工性を有する。
【0026】
また、本発明の第6の側面は、前記の光学部材積層体の製造方法であって、
前記第2の基板の前記段差を有する主面に本発明の第3の側面の光学用粘着シートを貼り付ける工程と、
前記第1の基板の任意の主面を、前記光学用粘着シートの光学用粘着剤層の上に積層し、50℃以上で加熱加圧する工程と、
を含むことを特徴とする光学部材積層体の製造方法を提供する。
この方法は、前記の光学部材積層体を製造するのに好適である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の光学用粘着剤組成物は、上記構成を有するため、段差吸収性に優れるとともに、加工性に優れる。このため、本発明の光学用粘着剤組成物は、特に、段差を有する光学部材の貼り合わせや、画像表示装置等の光学製品の製造等に用いられる光学用粘着剤層や光学用粘着シートとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[光学用粘着剤組成物]
本発明の光学用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを含有する。そして、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーは、0℃以上100℃以下のガラス転移温度を有する高Tgセグメントと、-100℃以上0℃未満のガラス転移温度を有する低Tgセグメントとを有し、0℃以上の領域と0℃未満の領域にそれぞれtanδのピークを有する。
【0029】
本明細書において、「0℃以上100℃以下のガラス転移温度を有する高Tgセグメント」を単に「高Tgセグメント」、「-100℃以上0℃未満のガラス転移温度を有する低Tgセグメント」を単に「低Tgセグメント」、0℃以上の領域のtanδのピークを単に「高温領域tanδピーク」、0℃未満の領域のtanδのピークを単に「低温領域tanδピーク」、前記高Tgセグメントと前記低Tgセグメントと前記高温領域tanδピークと低温領域tanδピークとを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを「(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA」、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを含有する光学用粘着剤組成物を「光学用粘着剤組成物A」と称する場合がある。
【0030】
なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち一方又は両方)を意味し、以下も同様である。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び/又は「メタクリロイル基」(「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」のうち一方又は両方)を意味し、以下も同様である。
【0031】
高Tgセグメント及び低Tgセグメントにおける「セグメント」とは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの各ブロック単位を構成する部分構造をいう。
【0032】
本発明の(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの構造は、線状ブロックコポリマー、分岐状(星状)ブロックコポリマー、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロックコポリマーの構造は、求められるブロックコポリマーの物性に応じて適宜選択すればよいが、コスト面、製造容易性の観点から、線状ブロックコポリマーであることが好ましい。また、線状ブロックコポリマーは、いずれの構造(配列)であっても良いが、線状ブロックコポリマーの物性、または光学用粘着剤組成物Aの物性の観点から、(A-B)n型、(A-B)n-A型(nは1以上の整数、例えば1~3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を持つブロックコポリマーであることが好ましい。これらの構造においてA及びBは、異なるモノマー組成から構成されるセグメントを意味する。本明細書において、前記線状ブロックコポリマーを構成するAで表されるセグメントを「Aセグメント」、Bで表されるセグメントを「Bセグメント」と称する場合がある。
【0033】
これらの中でも、製造容易性、光学用粘着剤組成物Aの物性等の観点から、A-Bで表されるAB型ジブロックコポリマー、A-B-Aで表されるABA型トリブロックコポリマーが好ましく、より好ましくはABA型トリブロックコポリマーである。ABA型トリブロックコポリマーは、両端のAセグメント同士の擬似架橋によりブロックコポリマー同士の架橋構造がより高度なものとなり、ブロックコポリマーの凝集力が向上し、より高い密着性(付着力)が発現することができるものと考えられる。なお、ABA型トリブロックコポリマーにおいて、両端に位置する2つのAセグメントは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAがABA型トリブロックコポリマーである場合、2つのAセグメント及び1つのBセグメント(合計3つ)において、少なくとも1つが高Tgセグメントであり、少なくとも他の1つが低Tgセグメントであれば良い。製造の容易性、光学用粘着剤組成物Aの物性等の観点から、Aセグメントが前記高Tgセグメントであり、Bセグメントが前記低TgセグメントであるABA型トリブロックコポリマーが好ましい。その場合において、2つのAセグメントのうち少なくとも1つが高Tgセグメントであり、Bセグメントが低TgセグメントであるABA型トリブロックコポリマーが好ましく、2つのAセグメントの両方が高Tgセグメントであり、Bセグメントが低TgセグメントであるABA型トリブロックコポリマーがより好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを構成する高Tgセグメントのガラス転移温度(Tg)は、上記の通り、0℃以上100℃以下である。高TgセグメントのTgがこの範囲にあることにより、光学用粘着剤組成物Aの室温(25℃)における貯蔵弾性率を高く制御しやすくなり、堅く加工性に優れるとともに、50℃を超える領域において貯蔵弾性率が顕著に低下して高流動性の粘着剤組成物となる傾向がある。光学用粘着剤組成物Aの室温(25℃)における加工性を向上できるという観点から、高TgセグメントのTgは、4℃以上が好ましく、6℃以上がより好ましく、8℃以上がさらに好ましく、10℃以上がさらにより好ましく、12℃以上が特に好ましい。一方、50℃を超える領域において光学用粘着剤組成物Aの貯蔵弾性率(G’)が顕著に低下して高流動性になりやすいという観点から、高TgセグメントのTgは、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下がさらにより好ましく、35℃以下が特に好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを構成する低TgセグメントのTgは、上記の通り、-100℃以上0℃未満である。低TgセグメントのガラスTgがこの範囲にあることにより、室温(25℃)において当該低Tgセグメントのみが流動化して、加工性を担保しつつ、適度な粘着力を光学用粘着剤組成物Aに付与できる傾向がある。室温(25℃)において光学用粘着剤組成物Aの貯蔵弾性率が低下しにくく、加工性が向上できるという観点から低TgセグメントのTgは、-95℃以上が好ましく、-90℃以上がより好ましく、-80℃以上がさらに好ましい。一方、室温(25℃)において光学用粘着剤組成物Aの適度な粘着力と加工性を向上できるという観点から、低TgセグメントのTgは、-5℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましく、-30℃以下がさらにより好ましく、-40℃以下が特に好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを構成する高Tgセグメントと低TgセグメントのTgの差(高TgセグメントのTg-低TgセグメントのTg)は、特に限定されないが、光学用粘着剤組成物Aの室温(25℃)における貯蔵弾性率を高く制御しやすくなり、堅く加工性に優れるとともに、50℃を超える領域において貯蔵弾性率が顕著に低下して高流動性の粘着剤組成物となるという観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは55℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下、特に好ましくは95℃以下である。
【0038】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを構成する高Tgセグメント及び低Tgセグメントのガラス転移温度(Tg)は、以下のFoxの式から算出される計算ガラス転移温度である。この計算ガラス転移温度は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの高Tgセグメント又は低Tgセグメントを構成する各モノマー成分の種類及び量に基づいて算出されるものであり、したがって、各セグメントのモノマー成分の種類及び量等を選択することにより調整することができる。
【0039】
計算ガラス転移温度(計算Tg)は、以下のFoxの式〔1〕から算出することができる。
1/計算Tg=W1/Tg(1)+W2/Tg(2)+・・・+Wn/Tn 〔1〕
ここで、W1、W2、・・・Wnは共重合体を構成するモノマー成分(1)、モノマー成分(2)、・・・モノマー成分(n)の全モノマー成分に対する各重量分率(重量%)を意味し、Tg(1)、Tg(2)、・・・Tg(n)は、モノマー成分(1)、モノマー成分(2)、・・・モノマー成分(n)のホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度:K)を表す。
なお、ホモポリマーのガラス転移温度は、各種文献、カタログなどから公知であり、例えば、J. Brandup, E. H. Immergut,E. A. Grulke: Polymer Handbook:JOHNWILEY & SONS, INCに記載されている。各種文献に数値が無いモノマーについては、一般的な熱分析、例えば示差熱分析や動的粘弾性測定法等により測定した値を採用することができる。
【0040】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAが有する高温領域tanδピークが現れる温度領域は、前述の通り0℃以上(例えば、0℃以上100℃以下)である。高温領域tanδピークがこの温度範囲にあることにより、光学用粘着剤組成物Aの室温(25℃)における貯蔵弾性率を高く制御しやすくなり、堅く加工性に優れるとともに、50℃を超える領域において貯蔵弾性率が顕著に低下して高流動性の粘着剤組成物となる傾向がある。光学用粘着剤組成物Aの室温(25℃)における加工性を向上できるという観点から、高温領域tanδピークが現れる温度は、3℃以上が好ましく、6℃以上がより好ましく、9℃以上がさらに好ましく、12℃以上がさらにより好ましく、15℃以上が特に好ましい。一方、50℃を超える領域において光学用粘着剤組成物Aの貯蔵弾性率(G’)が顕著に低下して高流動性になりやすいという観点から、高温領域tanδピークが現れる温度は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましく、65℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAが有する低温領域tanδピークが現れる温度領域は、前述の通り0℃未満(例えば、-100℃以上0℃未満)である。低温領域tanδピークがこの温度範囲にあることにより、室温(25℃)において当該低Tgセグメントのみが流動化して、加工性を担保しつつ、適度な粘着力を光学用粘着剤組成物Aに付与できる傾向がある。室温(25℃)において光学用粘着剤組成物Aの貯蔵弾性率が低下しにくく、加工性が向上できるという観点から、低温領域tanδピークが現れる温度は、-95℃以上が好ましく、-90℃以上がより好ましく、-80℃以上がさらに好ましく、-70℃以上がさらに好ましい。一方、室温(25℃)において光学用粘着剤組成物Aの適度な粘着力と加工性を向上できるという観点から、低温領域tanδピークが現れる温度は、-5℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましく、-30℃以下がさらにより好ましく、-40℃以下が特に好ましい。
【0042】
前記高温領域tanδピークの極大値は、特に限定されないが、0.5~3.0であることが好ましい。高温領域tanδピークの極大値がこの範囲にあることにより、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの優れる加工性と形状安定制を実現できる点で好ましい。前記高温領域tanδピークの極大値は、優れる加工性を実現できる点で、0.6以上が好ましく、より好ましくは0.7以上である。また、前記高温領域tanδピークの極大値は、打痕が生じにくい点から、2.5以下が好ましく、より好ましくは2.2以下である。
【0043】
前記低温領域tanδピークの極大値は、特に限定されないが、0.1~2.0であることが好ましい。低温領域tanδピークの極大値がこの範囲にあることにより、前記(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの優れる加工性と形状安定制を実現できる点で好ましい。前記高温領域tanδピークの極大値は、優れる加工性を実現できる点で、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3以上である。また、前記低温領域tanδピークの極大値は、打痕が生じにくい点から、1.5以下が好ましく、より好ましくは1以下である。
【0044】
なお、前記の高温領域tanδピークと低温領域tanδピーク、並びにそれらが現れる温度及び極大値は、後述の実施例に記載された動的粘弾性測定により測定されるものである。
【0045】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAは、モノマー成分を重合して得られる複数のセグメント(高Tgセグメント及び低Tgセグメントを含む)により構成され、当該モノマー成分が、分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)を含むものである。
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA又はその各セグメントは、アクリル系モノマーをモノマー成分全量(100重量%)に対して70重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことが特に好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA又はその各セグメント(高Tgセグメント及び低Tgセグメントを含む)を構成するアクリル系モノマーとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、および/または、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルに由来するモノマー成分を重量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。
【0047】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、前記セグメントを形成するためのモノマー成分に含まれる直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。前記セグメントのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、前記セグメントのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、およびアクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソノニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0048】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントは、脂環式モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。前記セグメントのモノマーユニットをなすための脂環式モノマー、即ち、当該セグメントを形成するためのモノマー成分に含まれる脂環式モノマーとしては、例えば、炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。前記シクロアルキル基、二環式炭化水素環、三環以上の炭化水素環は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(例、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等)等が挙げられる。前記置換基の数は、特に限定されず、1~6個から適宜選択できる。当該置換基が2個以上ある場合は、2個以上の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、および(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチルが挙げられる。前記セグメントのための脂環式モノマーとしては、一種類の脂環式モノマーを用いてもよいし、二種類以上の脂環式モノマーを用いてもよい。本実施形態では、前記セグメントのための脂環式モノマーとして、好ましくは、置換基(例、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)を有していてもよい炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルであり、より好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0050】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントは、水酸基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。水酸基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの水酸基を有することとなるモノマーである。(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA内のセグメントが水酸基含有モノマーユニットを含む場合、光学用粘着剤組成物Aにおいて接着性や適度な凝集力を得られやすい。
【0051】
前記セグメントのモノマーユニットをなすための水酸基含有モノマー、即ち、当該セグメントを形成するためのモノマー成分に含まれる水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、およびアリルアルコールが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。前記セグメントのための水酸基含有モノマーとしては、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、前記セグメントのための水酸基含有モノマーとして、好ましくは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、およびメタクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0052】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントは、窒素原子含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。窒素原子含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの窒素原子を有することとなるモノマーである。(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントが窒素原子含有モノマーユニットを含む場合、光学用粘着剤組成物Aにおいて硬さや良好な接着信頼性を得られやすい。
【0053】
前記セグメントをなすための窒素原子含有モノマー、即ち、当該セグメントを形成するためのモノマー成分に含まれる窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル環状アミドおよび(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。窒素原子含有モノマーたるN-ビニル環状アミドとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、およびN-ビニル-3,5-モルホリンジオンが挙げられる。窒素原子含有モノマーたる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとしては、一種類の窒素原子含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の窒素原子含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、前記セグメントのための窒素原子含有モノマーとして、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0054】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントは、カルボキシ基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。カルボキシ基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つのカルボキシ基を有することとなるモノマーである。(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントがカルボキシ基含有モノマーユニットを含む場合、光学用粘着剤組成物Aにおいて良好な接着信頼性が得られることがある。
【0055】
前記セグメントのモノマーユニットをなすためのカルボキシ基含有モノマー、即ち、当該セグメントを形成するためのモノマー成分に含まれるカルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。前記セグメントのためのカルボキシ基含有モノマーとしては、一種類のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のカルボキシ基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、前記セグメントのためのカルボキシ基含有モノマーとして、好ましくはアクリル酸が用いられる。
【0056】
さらに、前記セグメントをなすためのモノマーユニットとしては、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー以外のモノマー(「その他のモノマー」と称する場合がある)が挙げられる。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチルなど];エポキシ基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなど];スルホン酸基含有モノマー[例えば、ビニルスルホン酸ナトリウムなど];リン酸基含有モノマー;芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなど];ビニルエステル類[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど];芳香族ビニル化合物[例えば、スチレン、ビニルトルエンなど];オレフィン類又はジエン類[例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなど];ビニルエーテル類[例えば、ビニルアルキルエーテルなど];塩化ビニル等が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのセグメントを構成するモノマーユニットにおけるその他のモノマーの含有量は、モノマー成分全量(100重量%)に対して30重量%以下である限り、特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0058】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの高Tgセグメントを構成するモノマー成分としては、高TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、炭素数が1~3である直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸C1-3直鎖状アルキルエステル」と称する場合がある)、炭素数が3又は4である分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸C3-4分岐鎖状アルキルエステル」と称する場合がある)及び脂環式モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これらモノマーのホモポリマーは比較的高いTgを有するため、これらから選ばれるモノマーを高Tgセグメントを構成するモノマー成分として含有することにより、高TgセグメントのTgを本発明所定の範囲に制御しやすい。
【0059】
前記脂環式モノマーとしては、置換基(例、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)を有していてもよい炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが好ましく、置換基(例、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基)を有していてもよい炭素数が4~10であるシクロアルキル基を有するアクリル酸シクロアルキルエステルがより好ましく、アクリル酸シクロヘキシル(ホモポリマーのTg:15℃)、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(ホモポリマーのTg:52℃)が特に好ましい。
【0060】
高Tgセグメントが構成するモノマー成分として脂環式モノマーを含有する場合、脂環式モノマーのモノマー成分全量(100重量%)に対する含有量は、高TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、好ましくは10重量%以上(例えば、10~100重量%)、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0061】
前記(メタ)アクリル酸C1-3直鎖状アルキルエステルとしては、アクリル酸C1-3直鎖状アルキルエステルが好ましく、アクリル酸メチル(ホモポリマーのTg:8℃)が特に好ましい。
前記(メタ)アクリル酸C3-4分岐鎖状アルキルエステルとしては、アクリル酸C3-4分岐鎖状アルキルエステルが好ましく、アクリル酸t-ブチル(ホモポリマーのTg:35℃)が特に好ましい。
【0062】
高Tgセグメントが構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸C1-3直鎖状アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸C3-4分岐鎖状アルキルエステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸C1-3直鎖状アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸C3-4分岐鎖状アルキルエステルのモノマー成分全量(100重量%)に対する含有量は、高TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、好ましくは10重量%以上(例えば、10~100重量%)、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0063】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの低Tgセグメントを構成するモノマー成分としては、低TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、炭素数が4~18である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステル」と称する場合がある)及び水酸基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルのホモポリマーは比較的低いTgを有するため、これを低Tgセグメントを構成するモノマー成分として含有することにより、低TgセグメントのTgを本発明所定の範囲に制御しやすい。一方、水酸基含有モノマーも比較的低いTgを有し、さらに(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAにおいて接着性や適度な凝集力を得られやすくなる。従って、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの低Tgセグメントを構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルと水酸基含有モノマーの両方を含有することがさらに好ましい。
【0064】
前記(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルとしては、アクリル酸C4-18アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチル(ホモポリマーのTg:-55℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(ホモポリマーのTg:-70℃)、アクリル酸n-ヘキシル(ホモポリマーのTg:-57℃)、アクリル酸n-オクチル(ホモポリマーのTg:-65℃)、アクリル酸イソノニル(ホモポリマーのTg:-58℃)が特に好ましい。
【0065】
低Tgセグメントが構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルのモノマー成分全量(100重量%)に対する含有量は、低TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、好ましくは10重量%以上(例えば、10~100重量%)、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0066】
前記水酸基含有モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(ホモポリマーのTg:-65℃)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(ホモポリマーのTg:-15℃)が特に好ましい。
【0067】
低Tgセグメントが構成するモノマー成分として水酸基含有モノマーを含有する場合、水酸基含有モノマーのモノマー成分全量(100重量%)に対する含有量は、低TgセグメントのTgを所定の範囲に制御しやすく、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに所望の物性を付与できるという観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは2.5重量%以上、特に好ましくは3重量%以上である。一方、水酸基含有モノマーのモノマー成分全量(100重量%)に対する含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0068】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの低Tgセグメントを構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルと水酸基含有モノマーの両方を含有する場合、水酸基含有モノマーと(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの比率(水酸基含有モノマー/(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステル)は特に限定されないが、下限値は、好ましくは1/99、より好ましくは1.5/98.5、より好ましくは2/98、さらに好ましくは2.5/97.5、特に好ましくは3/97であり、一方、上限値は50/50下、より好ましくは40/60、より好ましくは30/70、さらに好ましくは20/80である。
【0069】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAは、上述のモノマー成分のリビングラジカル重合法によって製造することができる。リビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
【0070】
リビングラジカル重合法においては、高Tgセグメントを先に製造し、高Tgセグメントに低Tgセグメントのモノマーを重合してもよく;低Tgセグメントを先に製造し、低Tgセグメントに高Tgセグメントのモノマーを重合してもよい。
【0071】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAがABA型トリブロックコポリマーである場合は、製造容易性に観点から、Aセグメントを先に製造し、AセグメントにBセグメントのモノマーを重合することが好ましい。
【0072】
前記リビングラジカル重合法は、公知の方法を特に限定されなく使用することができ、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的付加開裂連鎖移動剤(RAFT剤)を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等の方法がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、分子量制御のしやすさ、金属が光学用粘着剤組成物に残留しないなどの観点から、RAFT法を用いることが好ましい。
【0073】
前記RAFT法は、公知の方法を特に限定されなく使用することができ、例えば、例えば、RAFT剤を用いて、モノマー成分を重合して第1のセグメントを調製する工程1(第1のRAFT重合)と、工程1で得られた第1のセグメントに、工程1でのモノマー組成とは異なるモノマー成分をさらに添加・重合して、第2のセグメントを第1のセグメントに付加する工程2(第2のRAFT重合)とを有する。第2のRAFT重合の後に、さらに第3、4・・・のRAFT重合を第2のRAFT重合と同様に行い、第3、4・・・のセグメントをさらに付加してもよい。
【0074】
前記工程1、工程2は、公知慣用の方法により行うことができ、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、熱や活性エネルギー線照射による重合方法(熱重合方法、活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法が好ましい。なお、重合は、酸素による重合阻害を抑制する点より、酸素との接触を避けて行われることが好ましい。例えば窒素雰囲気下で重合を行うことが好ましい。
【0075】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAがABA型トリブロックコポリマーである場合は、前記工程1でAセグメントを調製し、得られたAセグメントに前記工程2でBセグメントを付加して調製することが好ましい。この場合、Aセグメントとしては高Tgセグメント、Bセグメントとしては低Tgセグメントであることが好ましい。
【0076】
前記RAFT剤としては、公知のものを特に限定なく使用することができ、例えば、下記式(1)、式(2)、又は式(3)で表される化合物(トリチオカーボネート、ジチオエステル、ジチオカーボネート)が好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【0077】
式(1)、式(2)、又は式(3)[式(1)~(3)]中、R1a及びR1bは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、又はシアノ基を示す。R1cは、シアノ基を有していてもよい炭化水素基を示す。上記R1a、R1b、及びR1cとしての炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の炭化水素基(直鎖、分岐鎖、若しくは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基等)が挙げられ、中でも、炭素数1~12の炭化水素基が好ましい。上記炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1~12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基;フェニル基等の炭素数6~12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の総炭素数7~10のアリールアルキル基等が挙げられる。上記R1cとしてのシアノ基を有する炭化水素基としては、例えば、上述の炭化水素基が有する水素原子の1~3個がシアノ基で置換された基等が挙げられる。
【0078】
式(1)~(3)中、R2は、炭化水素基、又は、その炭化水素基が有する水素原子の一部がカルボキシル基で置換された基(例えば、カルボキシアルキル基)を示す。上記炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の炭化水素基(直鎖、分岐鎖、若しくは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基等)が挙げられ、中でも、炭素数1~12の炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1~12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等の総炭素数7~10のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0079】
RAFT法では、式(1)~(3)に示すRAFT剤中の硫黄原子と当該硫黄原子に隣接するメチレン基との間に、原料モノマーが挿入するように反応して、重合が進行する。
【0080】
前記RAFT剤の多くは、商業的に入手可能である。商業的に入手できないものは、公知乃至慣用の方法により容易に合成することができる。なお、本発明においてRAFT剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0081】
RAFT剤としては、ジベンジルトリチオカーボネート、S-シアノメチル-S-ドデシルトリチオカーボネート等のトリチオカーボネート類;ジチオプロピオン酸シアノエチル、ジチオプロピオン酸ベンジル、ジチオ安息香酸ベンジル、ジチオ安息香酸アセトキシエチル等のジチオエステル類;O-エチル-S-(1-フェニルエチル)ジチオカーボネート、O-エチル-S-(2-プロポキシエチル)ジチオカーボネート、O-エチル-S-(1-シアノ-1-メチルエチル)ジチオカーボネート等のジチオカーボネート類等が挙げられ、このうち、トリチオカーボネート類が好ましく、式(1)において左右対称構造を有するトリチオカーボネート類がより好ましく、特にジベンジルトリチオカーボネート、ビス{4-[エチル-(2-アセチロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}トリチオカーボネートが好ましい。
【0082】
前記工程1は、RAFT剤の存在下、モノマー成分を重合することにより行うことができる。工程1においてRAFT剤の使用量は、モノマー成分の総量100重量部に対して、通常は0.05~20重量部、好ましくは0.05~10重量部である。このような使用量であれば、反応制御が容易であり、また得られるセグメントの重量平均分子量を制御することが容易である。
前記工程2は、前記工程1で得られた重合反応混合物に、モノマー成分を添加してさらに重合することにより行うことができる。
【0083】
RAFT法は、重合開始剤の存在下に行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、通常の有機系重合開始剤が挙げられ、具体的には、過酸化物、アゾ化合物が挙げられ、これらの中でも、アゾ化合物が好ましい。重合開始剤は1種単独で又は2種以上を用いることができる。
【0084】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。
【0085】
重合開始剤の使用量は、モノマー成分の総量100重量部に対して、通常は0.001~2重量部、好ましくは0.002~1重量部である。このような使用量であれば、得られるセグメントの重量平均分子量を制御することが容易である。
【0086】
RAFT法は、重合溶媒を使用しない塊状重合であってもよいが、重合溶媒を使用することが好ましい。重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。重合溶媒は1種単独で又は2種以上を用いることができる。
【0087】
重合溶媒の使用量としては、特に限定されず、例えば、モノマー成分1gに対して、0.01mL以上が好ましく、より好ましくは0.05mL以上、さらに好ましくは0.1mL以上であり、50mL以下が好ましく、より好ましくは10mL以下、さらに好ましくは1mL以下である。
【0088】
RAFT法での反応温度は、通常は60~120℃、好ましくは70~110℃であり、通常は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる。この反応は常圧、加圧および減圧のいずれの条件でも行うことができ、通常は常圧で行われる。また、反応時間は通常は1~20時間、好ましくは2~14時間である。
【0089】
上述のRAFT法の重合反応条件は、それぞれ工程1および工程2に適用されうる。
【0090】
重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により使用溶媒、残存モノマーの除去等を行い、目的とする(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを分離することができる。
【0091】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの高Tgセグメント又は低Tgセグメントを前記工程1で調製する場合、当該高Tgセグメント又は低Tgセグメントの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは10,000~1,000,000であり、より好ましくは50,000~500,000、さらに好ましくは100,000~300,000である。高Tgセグメント又は低TgセグメントのMwがこの範囲内にあることは、上述の本発明の効果に好適である。
前記のMwは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAに高Tgセグメント又は低Tgセグメントが二つ以上存在する場合、その和のMwである。
【0092】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは20万(200,000)以上であり、より好ましくは300,000~5,000,000、さらに好ましくは400,000~2500,000である。(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAのMwがこの範囲内にあることは、上述の本発明の効果に好適である。
【0093】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1より大きく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは2.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0094】
なお、上記重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、後述の実施例に記載されたGPC法により測定されるものである。
【0095】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA中の高Tgセグメントの含有率は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA全体100重量%中において10重量%以上が好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上であり、特に好ましくは30重量%以上であり、95重量%以下が好ましく、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下である。
【0096】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA中の低Tgセグメントの含有率は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA全体100重量%中において5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、60重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
【0097】
前記低Tgセグメント及び低Tgセグメントの含有率又はそれらの比率が上記の範囲内にあることは、上述の本発明の効果に好適である。
前記各セグメントの含有率及びそれらの比率は、前記RAFT法の各工程で得られる各セグメント又は(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの重量平均分子量(Mw)から算出でき、各セグメントを形成する際のモノマーの仕込み比および各モノマーの重合率等で制御することができる。
【0098】
光学用粘着剤組成物Aにおける(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAの含有量は、特に限定されないが、室温(25℃)での優れた加工性と50℃を超える領域での優れた段差吸収性を得る観点から、光学用粘着剤組成物A全量(全重量、100重量%)に対して、50重量%以上(例えば、50~100重量%)であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0099】
光学用粘着剤組成物Aには、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、シランカップリング剤、溶剤、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤などが挙げられる。なお、添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0100】
前記重合開始剤としては光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤などが挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0101】
前記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0102】
前記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。前記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。前記α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。前記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。前記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。前記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。前記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。前記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。前記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0103】
前記光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーAを構成するモノマー成分100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく、より好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0104】
前記熱重合開始剤としては、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、アゾ系重合開始剤が好ましい。前記アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。
【0105】
前記アゾ系重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーAを構成するモノマー成分100重量部に対して、0.05~0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~0.3重量部である。
【0106】
光学用粘着剤組成物Aには、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤が含まれていてもよい。光学用粘着剤組成物Aにシランカップリング剤が含まれていると、ガラスに対する接着信頼性(特に、高温高湿環境下でのガラスに対する接着信頼性)が向上し、好ましい。
【0107】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましく挙げられる。中でも、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、市販品として、例えば、商品名「KBM-403」(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。なお、シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0108】
光学用粘着剤組成物Aにおけるシランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく、より好ましくは0.03~0.5重量部である。
【0109】
また、光学用粘着剤組成物Aには、溶剤が含まれていてもよい。該溶剤としては、特に限定されないが、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0110】
光学用粘着剤組成物Aは、いずれの形態を有している粘着剤組成物であってもよく、例えば、エマルション型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などが挙げられる。中でも、光学用粘着剤組成物Aとしては、溶剤型の粘着剤組成物や活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましく挙げられる。
【0111】
光学用粘着剤組成物Aの調製方法としては、特に限定されないが、例えば公知の方法が挙げられる。例えば、溶剤型の光学用粘着剤組成物Aは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA、溶剤、必要に応じて加えられる成分(例えば、前記のシランカップリング剤、架橋剤、溶剤、添加剤など)を混合することにより作製される。また、活性エネルギー線硬化型の光学用粘着剤組成物Aは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA、必要に応じて加えられる成分(例えば、前記の光重合開始剤、シランカップリング剤、架橋剤、溶剤、添加剤など)を混合することにより作製される。
【0112】
光学用粘着剤組成物Aの25℃における貯蔵弾性率(G’25)は、特に限定されないが、室温における加工性を向上させる観点から、1MPa以上が好ましく、より好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは2MPa以上、より好ましくは2.5MPa以上、より好ましくは3MPa以上であり、室温における粘着信頼性を向上させる観点から、50MPa以下が好ましく、より好ましくは45MPa以下、より好ましくは40MPa以下、より好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下である。
【0113】
光学用粘着剤組成物Aの50℃における貯蔵弾性率(G’50)は、特に限定されないが、50℃を超える領域の段差吸収性を向上させる観点から、0.5MPa以下が好ましく、より好ましくは0.45MPa以下、より好ましくは0.4MPa以下、より好ましくは0.35MPa以上、より好ましくは0.3MPa以下であり、50℃を超える領域の取り扱い性を向上させる観点から、0.0001MPa以上が好ましく、より好ましくは0.0005MPa以上、より好ましくは0.001MPa以上、より好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.01MPa以上である。
【0114】
光学用粘着剤組成物Aの25℃における貯蔵弾性率と50℃における貯蔵弾性率の比(G’25/G’50)は、特に限定されないが、室温における加工性を向上させ、且つ50℃を超える領域の段差吸収性を向上させる観点から、3以上が好ましく、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上であり、接着信頼性、取り扱い性等の観点から、100以下が好ましく、より好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下、特に好ましくは80以下である。
【0115】
なお、前記の25℃における貯蔵弾性率(G’25)と50℃における貯蔵弾性率(G’25)、及びそれらの比(G’25/G’50)は、後述の実施例に記載された動的粘弾性測定により測定されるものである。
【0116】
本発明の光学用粘着剤層は、光学用粘着剤組成物Aにより形成されるものである。本明細書において、光学用粘着剤組成物Aにより形成される光学用粘着剤層を「光学用粘着剤層A」と称する場合がある。
【0117】
光学用粘着剤層Aは、特に限定されないが、光学用粘着剤組成物Aを、基材や剥離フィルム等の適当な支持体上に塗布(塗工)し、必要に応じて、加熱乾燥及び/又は硬化することにより形成される。例えば、溶剤型の光学用粘着剤組成物Aにより光学用粘着剤層Aを形成する場合、光学用粘着剤組成物Aを支持体上に塗布(塗工)し、加熱乾燥することにより形成される。また、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物Aにより粘着剤層Aを形成する場合、粘着剤組成物Aを支持体上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線を照射することにより形成される。なお、必要に応じて、活性エネルギー線照射に加えて、加熱乾燥が行われてもよい。
【0118】
なお、上記の塗布(塗工)に際には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、慣用のコーター、具体的には、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどが用いられてもよい。
【0119】
光学用粘着剤層Aのゲル分率は、50~90重量%であり、好ましくは50~80重量%、さらに好ましくは50~70重量%である。上記ゲル分率を90重量%以下とすることにより、光学用粘着剤層Aの凝集力がある程度小さくなり、粘着剤層Aが軟らかくなるため、段差部分に粘着剤層が追従しやすくなり、優れた段差吸収性が得られる。一方、上記ゲル分率を50重量%以上とすることにより、粘着剤層が軟らかくなりすぎて、粘着シートの加工性が低下するという問題の発生を抑制でき、また、高温環境下や高温高湿環境下において、気泡や浮きの発生を抑制して、接着信頼性を向上させることができる。上記ゲル分率は、例えば、前記の架橋剤の種類や含有量(使用量)などにより制御することができる。
【0120】
上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、酢酸エチル不溶分として求めることができる。具体的には、粘着剤層を、酢酸エチル中に室温(23℃)で7日間浸漬した後の不溶分の浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。より具体的には、上記ゲル分率とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
粘着剤層を約1g採取し、その重量を測定し、該重量を「浸漬前の粘着剤層の重量」とする。次に、採取した粘着剤層を酢酸エチル40gに7日間浸漬した後、酢酸エチルに不溶解な成分(不溶解部分)を全て回収し、回収した全不溶解部分を130℃で2時間乾燥させて酢酸エチルを除去した後、その重量を測定して「不溶解部分の乾燥重量」(浸漬後の粘着剤層の重量)とする。そして、得られた数値を以下の式に代入して算出する。
ゲル分率(重量%)=[(不溶解部分の乾燥重量)/(浸漬前の粘着剤層の重量)]×100
【0121】
また、光学用粘着剤層Aの融点は、特に限定されないが、-60~20℃であることが好ましく、より好ましくは、-40~10℃であり、さらに好ましくは、-30~0℃である。上記融点が、20℃より高いと室温で粘着力を発現できない。
【0122】
上記融点は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層を測定用サンプルとして、示差走査熱量測定(DSC)により、JIS K 7121に準拠して測定することができる。具体的には、例えば、測定装置として、TA instruments社製、装置名「Q-2000」を用い、-80℃から80℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定することができる。
【0123】
光学用粘着剤層Aの厚さは、特に限定されないが、10μm~1mmが好ましく、より好ましくは100~500μm、さらに好ましくは150~350μmである。上記厚さを10μm以上とすることにより、段差部分に粘着剤層が追従しやすくなり、段差吸収性が向上する。また、上記厚さを1mm以下とすることにより、粘着剤層の変形が起きにくくなり、加工性が向上する。
【0124】
本発明の光学用粘着シートは、光学用粘着剤層Aを少なくとも1層有する。本明細書において、光学用粘着剤層Aを有する光学用粘着シートを「光学用粘着シートA」と称する場合がある。なお、「粘着シート」には、「粘着テープ」の意味を含むものとする。すなわち、光学用粘着シートAは、テープ状の形態を有する粘着テープであってもよい
【0125】
光学用粘着シートAは、該シートの片面のみが粘着剤層表面(粘着面)である(すなわち、光学用粘着剤層A表面である)片面粘着シートであってもよいし、該シートの両面が粘着剤層表面である両面粘着シートであってもよい。光学用粘着シートAは、特に限定されないが、被着体同士の貼り合わせに用いる等の観点から、両面粘着シートであることが好ましく、より好ましくは該シートの両面が光学用粘着剤層Aの表面である両面粘着シートである。
【0126】
光学用粘着シートAは、基材(基材層)を有しない粘着シート、いわゆる「基材レスタイプ」の粘着シート(「基材レス粘着シート」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有する粘着シート(「基材付き粘着シート」と称する場合がある)であってもよい。上記基材レス粘着シートとしては、例えば、光学用粘着剤層Aのみからなる両面粘着シートや、光学用粘着剤層Aと光学用粘着剤層A以外の粘着剤層(「他の粘着剤層」と称する場合がある)からなる両面粘着シート等が挙げられる。上記基材を有する粘着シートとしては、例えば、基材の片面側に光学用粘着剤層Aを有する片面粘着シートや、基材の両面側に光学用粘着剤層Aを有する両面粘着シートや、基材の一方の片面側に光学用粘着剤層Aを有し、他方の片面側に他の粘着剤層を有する両面粘着シート等が挙げられる。
【0127】
上記の中でも、透明性などの光学物性向上の観点から、基材レス粘着シートが好ましく、より好ましくは、光学用粘着剤層Aのみからなる、基材を有しない両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)である。また、光学用粘着シートAが基材を有する粘着シートである場合には、特に限定されないが、加工性の観点から、基材の両面側に光学用粘着剤層Aを有する両面粘着シート(基材付き両面粘着シート)であることが好ましい。
【0128】
なお、上記の「基材(基材層)」とは、光学用粘着シートAを被着体(光学部材等)に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分であり、粘着シートの使用(貼付)時に剥離される剥離フィルム(セパレータ)は含まれない。
【0129】
光学用粘着シートAは、上記より、基材付き粘着シートであってもよい。このような基材としては、例えば、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、商品名「アートン」(環状オレフィン系ポリマー、JSR株式会社製)、商品名「ゼオノア」(環状オレフィン系ポリマー、日本ゼオン株式会社製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、これらのプラスチック材料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、上記の「基材」とは、粘着シートを被着体(光学部材等)に貼付する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。粘着シートの使用時(貼付時)に剥離される剥離フィルム(セパレータ)は、「基材」には含まれない。
【0130】
前記基材は、透明であることが好ましい。上記基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361-1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。また、上記基材のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。このような透明な基材としては、例えば、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムなどが挙げられる。
【0131】
前記基材の厚さは、特に限定されないが、12~75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、前記基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理が適宜施されていてもよい。
【0132】
光学用粘着シートAは、他の粘着剤層(光学用粘着剤層A以外の粘着剤層)を有していてもよい。上記他の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知乃至慣用の粘着剤から形成された粘着剤層が挙げられる。なお、上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0133】
光学用粘着シートAは、光学用粘着剤層A、他の粘着剤層、基材以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0134】
光学用粘着シートAは、使用時までは粘着面に剥離フィルム(セパレータ)が設けられていてもよい。光学用粘着シートAの粘着面が剥離フィルムにより保護される形態は、特に限定されないが、2枚の剥離フィルムによりそれぞれの粘着面が保護される形態であってもよいし、ロール状に巻回されることにより、両面が剥離面である1枚の剥離フィルムで、それぞれの粘着面が保護される形態であってもよい。剥離フィルムは、粘着剤層の保護材として用いられ、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、光学用粘着シートAにおいて、剥離フィルムは、粘着剤層の支持体としての役割も担う。なお、剥離フィルムは必ずしも設けられなくてもよい。
【0135】
上記剥離フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、上記セパレータは公知乃至慣用の方法により形成される。また、セパレータの厚さ等も、特に限定されない。
【0136】
光学用粘着シートAの製造方法としては、公知乃至慣用の製造方法が挙げられる。光学用粘着シートAの製造方法は、光学用粘着剤層Aの組成などによって異なり、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(3)などの方法が挙げられる。
(1)(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA、必要に応じて、重合開始剤、シランカップリング剤、その他の添加剤等を含む光学用粘着剤組成物Aを、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、硬化(例えば、熱硬化や紫外線などの活性エネルギー線照射による硬化)して、光学用粘着シートAを製造する。
(2)(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA、必要に応じて、添加剤等を溶剤に溶かした光学用粘着剤組成物A(溶液)を、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化して粘着シートを製造する
(3)上記(1)で製造した光学用粘着シートAをさらに乾燥させる。
なお、活性エネルギー線による硬化(光硬化)を利用する場合には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるので、例えば、セパレータを貼り合わせること、窒素雰囲気下で光硬化させること等により、酸素を遮断することが好ましい。
【0137】
光学用粘着シートAは、特に限定されないが、生産性の観点から、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーA及び重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤などの重合開始剤)を含む光学用粘着剤組成物Aにより、熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用して、製造された粘着シートであることが好ましい。また、厚さのある粘着剤層が得られる点から、光重合開始剤を含有する粘着剤組成物により、活性エネルギー線による硬化反応を利用して、製造されることが好ましい。
【0138】
光学用粘着シートAの厚さ(総厚さ)は、特に限定されないが、10μm~1mmが好ましく、より好ましくは100~500μm、さらに好ましくは150~350μmである。上記厚さを10μm以上とすることにより、段差部分に粘着剤層が追従しやすくなり、段差吸収性の向上を図ることができる。なお、光学用粘着シートAの厚さには、剥離フィルムの厚さは含まれない。
【0139】
光学用粘着シートAは、高い透明性を有していることが好ましい。光学用粘着シートAのヘイズ(JIS K 7136に準じる)は、例えば、1.0%以下が好ましく、より好ましくは0.7%以下である。上記ヘイズを1.0%以下とすることにより、光学用粘着シートAを貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。
また、光学用粘着シートAの全光線透過率(可視光波長領域における全光線透過率)(JIS K 7361-1に準じる)は、特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましくは91%以上である。上記全光線透過率を90%以上とすることにより、光学用粘着シートAを貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。
ヘイズ、及び全光線透過率は、例えば、粘着シートにガラス板等を貼り合わせ、ヘイズメーターを用いて測定することができる。
【0140】
ゆえに、光学用粘着シートAは、透明性などの光学物性向上の観点から、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上である粘着シートであることが好ましい。また、光学用粘着シートAは、透明性などの光学物性向上の観点や被着体同士の貼り合わせに用いる等の観点から、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上である両面粘着シートであることが好ましく、光学用粘着剤層Aのみを有し、ヘイズが1.0%以下であり、全光線透過率が90%以上である基材レス両面粘着シートであることが特に好ましい。
【0141】
光学用粘着シートAは、光学用粘着剤層Aを有するので、室温における加工性に優れる。
また、光学用粘着シートAは、光学用粘着剤層Aを有するので、50℃を超える領域での段差吸収性に優れる。例えば、5~10μmの段差に加えて、40μmを超えるような高い段差に対しても、段差吸収性に優れる。さらには、80μmを超えるような高い段差に対しても段差吸収性を有する。
さらに、光学用粘着シートAは、光学用粘着剤層Aを有するので、接着信頼性に優れる。
【0142】
光学用粘着剤組成物A、光学用粘着剤層A、光学用粘着シートAにおける「光学用」とは光学用途に用いられることを意味し、より具体的には、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や、光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途などに用いられる光学用粘着剤組成物、光学用粘着剤層、光学用粘着シートである。
【0143】
上記光学部材としては、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)や入力装置等の光学製品を構成する部材又はこれらの機器(光学製品)に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板(前面透明部材など)や、さらにはこれらが積層されている部材が挙げられる。
【0144】
上記表示装置(画像表示装置)としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0145】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜などからなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、「光学部材」には、上記の通り、被着体である表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護板等)も含むものとする。
【0146】
光学用粘着シートAは、中でも、高剛性の光学部材の貼り合わせに用いられることが好ましく、特にガラスからなる光学部材の貼り合わせに用いられることが好ましい。即ち、光学用粘着シートAは、例えば、ガラスセンサー、ガラス製表示パネル(LCDなど)、タッチパネルの透明電極付きガラス板等のガラスからなる光学部材を貼り合わせる用途に用いられる光学用粘着シートであることが好ましく、より好ましくは、ガラスセンサーとガラス製表示パネルを貼り合わせる用途に用いられる光学用粘着シートである。
【0147】
光学用粘着シートAによる光学部材の貼り合わせる態様としては、特に限定されないが、例えば、下記が挙げられる。
(1)光学用粘着シートAを介して光学部材同士を貼り付ける態様
(2)光学用粘着シートAを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様
(3)光学部材を含む光学用粘着シートAを、光学部材や光学部材以外の部材に貼り合わせる態様
【0148】
上記(3)の態様における光学部材を含む光学用粘着シートAは、光学部材を基材とする基材付き粘着シート、すなわち光学部材付き粘着シートであることが好ましい。
【0149】
なお、上記光学部材付き粘着シートは、光学部材上に粘着剤層Aを有する粘着型光学部材でもある。
【0150】
本発明の光学部材積層体は、光学部材からなる第1の基板と、主面に段差を有する光学部材からなる第2の基板と、光学用粘着剤層Aとを有する光学部材積層体であって、光学用粘着剤層Aが、前記第1の基板の任意の主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層されたものである。
また、本発明の光学部材積層体は、前記第1の基板が主面に段差を有し、前記光学用粘着剤層が、前記第1の基板の前記段差を有する主面と、前記第2の基板の前記段差を有する主面との間に積層されたものであってもよい。
【0151】
前記第1の基板、第2の基板を構成する光学部材としては、上述のものが含まれる。前記第1の基板、第2の基板が主面に有する段差は、特に限定されないが、例えば、基板の主面上に設けられたITO(インジウム・スズ酸化物)などの透明で導電性の印刷層や、意匠、装飾などのために施された印刷層等の印刷段差、基板(例えば、偏光板など)の主面上に施された一箇所以上の穴状加工による段差、基板の主面上に配列された発光素子(例えば、LED素子など)による段差が含まれる。本発明の光学部材積層体においては、光学用粘着剤層Aは、当該段差に十分に追従し、気泡などの隙間なく密着している。
【0152】
本発明の光学部材積層体の好ましい具体例としては、前記第2の基板が、主面上に設けられた穴による段差を有する偏光板であり、前記第1の基板が、主面上に印刷段差を有する光学部材(例えば、透明カバー部材)である光学部材積層体が挙げられる。
【0153】
また、本発明の光学部材積層体の他の好ましい具体例としては、前記第2の基板が、主面上に設けられたLEDチップによる段差を有するLEDパネルである光学部材積層体が挙げられる。
【0154】
本発明の光学製品は、前記光学部材積層体を備えることを特徴とする。当該光学製品としては、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの画像表示装置、タッチパネルなどの入力装置などが挙げられる。
【0155】
本発明の光学製品の好ましい具体例としては、画像表示セルの表面に穴開き加工の施された偏光板を備える画像表示パネルと、前面透明部材と、が積層された画像表示装置であって、前記画像表示パネルの穴開き偏光板上に前記光学用粘着シートを介して前記前面透明部材が貼り合せられてなる、画像表示装置が挙げられる。
【0156】
上記構成に係る画像表示装置では、前記光学用粘着剤層が前記偏光板に設けられた穴の境界に生じる段差に十分に追従して隙間なく密着しており、室温での保管時には前記光学用粘着剤層が硬くなり、優れた加工性を有する。
【0157】
本発明の光学部材積層体は、好ましくは、以下の工程を含む方法によって製造され得る。
(1)前記第2の基板の前記段差を有する主面に光学用粘着シートAを貼り付ける工程(第1工程)
(2)前記第1の基板の任意の主面を、光学用粘着シートAの光学用粘着剤層Aの上に積層し、50℃以上で加熱加圧する工程(第2工程)
【0158】
前記第1工程における、第2の基板の前記段差を有する主面に光学用粘着シートAを貼り付けは、公知の方法で行うことができる。光学用粘着シートAが剥離フィルムを有する場合、第1工程の後に剥離する。
【0159】
前記第2工程における第1の基板の光学用粘着剤層Aへの積層も、公知の方法で行うことができる。
【0160】
前記第2工程において、50℃以上で加熱加圧することにより、光学用粘着剤層Aが高流動性になって、基板の前記段差に十分に追従して、隙間なく密着できる。加熱は、50℃以上で行い、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上で行う。加圧は、特に限定されないが、例えば1.5atm以上、好ましくは2atm以上、より好ましくは3atm以上で行う。加熱加圧は、例えば、オートクレーブなどを用いて行うことができる。
【0161】
前記第2工程で製造された本発明の光学部材積層体は、室温(25℃)に戻した後に、光学用粘着剤層Aの貯蔵弾性率が高くなり、形状安定や取り扱い性などの加工性が向上する。
【実施例】
【0162】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下の生成物の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定は、以下の測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GCP法)による標準ポリスチレン換算として測定した。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgelGMH-H(S)、(東ソー社製)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0163】
実施例1
(高分子RAFT溶液A1の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてシクロヘキシルアクリレート(CHA)100重量部、RAFT剤としてジベンジルトリチオカーボネート(DBTC)0.5重量部、重合溶媒として酢酸エチル100重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが20万の高分子RAFT溶液A1を得た。
【0164】
(アクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B1の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)97重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3重量部、上記で得られた高分子RAFT溶液A1 100重量部、重合溶媒として酢酸エチル100重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが51万、Mw/Mnが2.06のABA型アクリル系トリブロックコポリマーを含有する粘着剤溶液B1を得た。
FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)において、ABA型アクリル系トリブロックコポリマーのセグメントAのTgは15℃、セグメントBのTgは-55℃である。
【0165】
(粘着シートの調製)
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)を基材として、基材上にアクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B1を塗布し、130℃で3分間乾燥させて、厚さ150μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRE75」)を貼り合わせ、両面に離型フィルムが付設された粘着シートを得た。
【0166】
実施例2
(高分子RAFT溶液A2及び粘着シートの調製)
シクロヘキシルアクリレート(CHA)の代わりに、メチルアクリレート(MA)を使用したこと以外は、実施例1と同様に行い、Mwが14万の高分子RAFT溶液A2を得た。
(アクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B2の調製)
高分子RAFT溶液A1の代わりに高分子RAFT溶液A2を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、Mwが29万、Mw/Mnが2.9のアクリル系トリブロックコポリマーを含有する粘着剤溶液B2を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)において、ABA型アクリル系トリブロックコポリマーのセグメントAのTgは8℃、セグメントBのTgは-55℃である。
【0167】
実施例3
(アクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B3及び粘着シートの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分として2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)97重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3重量部、実施例1で得られた高分子RAFT溶液A1 100重量部、重合溶媒として酢酸エチル100重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが35万、Mw/Mnが2.5のABA型アクリル系トリブロックコポリマーを含有する粘着剤溶液B3を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)において、ABA型アクリル系トリブロックコポリマーのセグメントAのTgは15℃、セグメントBのTgは-70℃である。
【0168】
実施例4
(高分子RAFT溶液A3の調製)
モノマーとしてシクロヘキシルアクリレート(CHA)50質量部、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA)50質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様に行い、Mwが18万の高分子RAFT溶液A3を得た。
(アクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B4及び粘着シートの調製)
高分子RAFT溶液A1の代わりに高分子RAFT溶液A3を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、Mwが40万、Mw/Mnが4.3のABA型アクリル系トリブロックコポリマーを含有する粘着剤溶液B4を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)において、ABA型アクリル系トリブロックコポリマーのセグメントAのTgは32℃、セグメントBのTgは-70℃である。
【0169】
実施例5
(高分子RAFT溶液A4の調製)
アクリル酸メチル(MA)60質量部、t-ブチルアクリレート(t-BA)40質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様に行い、Mwが16万の高分子RAFT溶液A4を得た。
(アクリル系トリブロックコポリマー含有粘着剤溶液B5及び粘着シートの調製)
高分子RAFT溶液A1の代わりに高分子RAFT溶液A4を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、Mwが37万、Mw/Mnが3.9のABA型アクリル系トリブロックコポリマーを含有する粘着剤溶液B5を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)において、ABA型アクリル系トリブロックコポリマーのセグメントAのTgは18℃、セグメントBのTgは-70℃である。
【0170】
比較例1
(アクリル系ランダムコポリマー含有粘着剤溶液C1及び粘着シートの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)97重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3重量部、重合溶媒として酢酸エチル122重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが60万のアクリル系ランダムコポリマーを含有する粘着剤溶液C1を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
FOXの式によるアクリル系ランダムコポリマーの計算ガラス転移温度(Tg)は-55℃である。
【0171】
比較例2
(粘着付与樹脂溶液D1の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてシクロヘキシルアクリレート(CHA)100重量部、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(NDM)1重量部、重合溶媒として酢酸エチル122重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが2万のアクリル系ポリマーを含有する粘着付与樹脂溶液D1を得た。FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)は15℃である。
(粘着付与樹脂配合粘着剤溶液及び粘着シートの調製)
比較例1で得られた粘着剤溶液C1 100重量部に、上記で得られた粘着付与樹脂溶液D1 5重量部を混合、攪拌して、粘着付与樹脂配合粘着剤溶液を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。
【0172】
比較例3
(アクリル系ランダムコポリマー含有粘着剤溶液C2及び粘着シートの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分として2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)50重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)47重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3重量部、重合溶媒として酢酸エチル122重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが80万のアクリル系ランダムコポリマーを含有する粘着剤溶液C2を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)は-36℃である。
【0173】
比較例4
(アクリル系ランダムコポリマー含有粘着剤溶液C3及び粘着シートの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてブチルアクリレート(BA)60重量部、イソボルニルメタアクリレート(IBXMA)35重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)5重量部、重合溶媒として酢酸エチル122重量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが90万のアクリル系ランダムコポリマーを含有する粘着剤溶液C3を得、実施例1と同様の方法により粘着シートを調製した。FOXの式による計算ガラス転移温度(Tg)は-11℃である。
【0174】
(評価)
上記の実施例及び比較例で得られた粘着剤溶液を用いた粘着シートについて、25℃における断貯蔵弾性率(G’25)、50℃における断貯蔵弾性率(G’50)及びそれらの比(G’25/G’50)、tanδのピーク温度及び極大値、加工性、及び段差吸収性を測定又は評価した。測定又は評価の方法を以下に示す。測定又は評価の結果は表1に示した。
【0175】
(1)貯蔵弾性率[G’25、G’50、G’25/G’50]並びにtanδのピーク温度及び極大値
25℃、50℃における貯蔵弾性率並びにtanδのピーク温度及び極大値は、動的粘弾性測定により求めた。
複数の粘着シートを積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用試料とした。なお、積層粘着シートの貯蔵弾性率の測定には、第一粘着剤層と第二粘着剤層とを交互に積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用試料として用いた。Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、25℃,50℃,における貯蔵弾性率(G’25,G’50)並びにtanδのピーク温度及び極大値を読み取った。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:-50~150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0176】
(2)加工性
粘着シートから一方の剥離フィルムを剥がし、片方の粘着面を露出させ、該粘着面をPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名「A4100」、厚さ100μm)に貼り付けた。次いで、プレス機を用いてPETフィルム側から打ち抜いて、これを加工性評価用サンプル(「PETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム」の構成を有する)とした。該加工性評価用サンプルを、温度:23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中に1週間放置した後、PETフィルムに対して反対側に位置する剥離フィルムを剥離した時の糊欠けの有無を観察し、下記の評価基準により、加工性(加工適正)を評価した。
加工性の評価基準
○(加工性良好):糊欠けが見られなかった。
×(加工性不良):糊欠けが見られた。
【0177】
(3)段差吸収性
粘着シートを40mm×40mmのサイズに切り出し、粘着シートの一方の面から厚み50μmの離型フィルムを剥離して、50mm×50mmのガラス板にロールラミネータ(ロール間圧力:0.2MPa、送り速度:100mm/分)により貼り合わせた。同様にして、穴あけ加工が施された粘着剤層付き偏光板を30×30mmのサイズに切り出し、粘着剤層に設けられた50μmの離型フィルムを剥離して、50mm×50mmのガラス板に貼り合せた。
粘着シートの他方の面から厚み38μmの離型フィルムを剥離して、真空ラミネータ(0.1kPa、60℃、30秒)により粘着シートと偏光板とを貼り合せた。この試料を、オートクレーブ(50℃、0.5MPa、15分)で処理した後、倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、偏光板に設けられた穴部における気泡の有無を確認した。
段差吸収性の評価基準
◎(段差吸収性優良):気泡が確認されなかった。
○(段差吸収性良好):直径数十 μmの気泡が5個未満確認された。
×(段差吸収性不良):気泡が確認された。
【0178】