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特許7531271ケーキ生地用気泡安定剤、ケーキ生地及びケーキの製造方法、並びに菓子類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ケーキ生地用気泡安定剤、ケーキ生地及びケーキの製造方法、並びに菓子類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20240802BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20240802BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/80
A23G3/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019207200
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021078376
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泉
(72)【発明者】
【氏名】村川 謙太郎
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082096(JP,A)
【文献】特開2015-047100(JP,A)
【文献】特開2000-287608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類と、卵と、ペクチンを含有し、実質的に乳化剤を含有しないケーキ生地用気泡安定剤とを含む第1原料を混合し、含気させる第1工程と、前記第1工程で得られた含気生地に、澱粉質原料粉を含有する第2原料を添加混合する第2工程と、を含むことを特徴とするケーキ生地の製造方法であって、
前記ペクチンは、0.8質量%の前記ペクチン溶液40gと、上白糖40gと、0.014mol/L塩化カルシウム溶液20mLとを25℃にて攪拌して混合し、該混合物の粘度を測定した場合に200cP以上2300cP以下の粘度を示すことを特徴とするケーキ生地の製造方法。
【請求項2】
前記ケーキ生地中の前記ペクチンの含量が0.01~0.3質量%となるように、前記ケーキ生地用気泡安定剤を添加する、請求項1に記載のケーキ生地の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程の後又は第2工程の後に、前記含気生地に油脂を添加混合する第3工程を含む、請求項1又は2に記載のケーキ生地の製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれかの方法により製造されたケーキ生地を加熱処理して実質的に乳化剤を含有しないケーキを製造することを特徴とするケーキの製造方法。
【請求項5】
請求項の方法により得られるケーキを用いて実質的に乳化剤を含有しない菓子類を製造することを特徴とする菓子類の製造方法。
【請求項6】
クチンを含有し、実質的に乳化剤を含有しないケーキ生地用気泡安定剤であって、糖類と、卵と、前記ケーキ生地用気泡安定剤とを含む第1原料を混合して含気させる第1工程と、前記第1工程で得られた含気生地に澱粉質原料粉を含有する第2原料を添加混合する第2工程とを含む後粉法によるケーキ製造に用いられるものであり、
前記ペクチンは、0.8質量%の前記ペクチン溶液40gと、上白糖40gと、0.014mol/L塩化カルシウム溶液20mLとを25℃にて攪拌して混合し、該混合物の粘度を測定した場合に200cP以上2300cP以下の粘度を示すことを特徴とするケーキ生地用気泡安定剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観や食感に優れ、本来の自然な風味が感じられるケーキを安定的に生産できるケーキ生地用気泡安定剤、ケーキ生地及びケーキの製造方法、並びに菓子類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキ、蒸しケーキ、バウムクーヘン等、鶏卵の起泡力によって含気させるケーキ生地は、共立て法、別立て法等、いわゆる後粉法と呼ばれる、鶏卵を泡立てた後に小麦粉や油脂を添加する方法を用いることで、鶏卵の泡を保ち、比重を軽くすることができる。
【0003】
しかし、これらの方法は、製造方法が煩雑であること、小麦粉や油脂の添加に作業の熟練を要することから、大量生産には向かない。このため近年は、効率が高く大量生産が可能である、すべての原料を混合して泡立てるオールインミックス法が主流となっている。本来、オールインミックス法のように小麦粉や油脂を鶏卵とともに泡立てると、鶏卵による起泡力が阻害されるため、比重が軽くならず、外観や食感の劣ったスポンジケーキとなってしまう。そこでオールインミックス法では乳化剤を大量に含有する起泡剤が使用される。
【0004】
例えば、特許文献1には、グリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量%、プロピレングリコール脂肪酸エステルを1~20質量%、ソルビタン脂肪酸エステルを0.5~10質量%、及びHLBが5~15である、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~10質量%含有するケーキ用起泡性乳化剤組成物であって、上記ソルビタン脂肪酸エステル及びHLBが5~15である、ショ糖脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの主要構成脂肪酸が炭素数22の飽和脂肪酸であることを特徴とする、オールインミックス法に適したケーキ用起泡性乳化剤組成物が記載されている。
【0005】
一方で、多品種のケーキ生地を比較的少ないロットで生産する生産ラインでは、依然として後粉法が好まれる場合がある。その理由の一つには、オールインミックス法では小麦粉を含んだ生地が後粉法よりも多く撹拌されるため、グルテンが多く発生し、このことが食感に悪影響を与えることが挙げられる。しかし、前述のように、後粉法では、鶏卵による気泡を維持したまま、小麦粉や油脂を添加、混合する作業には熟練が必要であり、工業的に安定したケーキ生地を製造する際の課題となっていた。
【0006】
また、近年は原料費の抑制や、賞味期限の延長を目的として、卵の配合量の少ないスポンジケーキの生地配合が試みられているが、起泡力を有する卵の配合量が少なくなると、後粉法での作業にはより熟練が必要となり、場合によってはスポンジケーキの製造が困難である。
【0007】
そこで後粉法においても、通常オールインミックス法で用いるような、乳化剤を大量に含有する起泡剤を用いることで、小麦粉や油脂の添加、混合工程に熟練を必要としない、安定したケーキ生地の生産が図られている。
【0008】
例えば、特許文献2には、後粉法で得られる生地であって、穀粉100重量部に対して、油脂40~55重量部、全卵300~360重量部、菓子用起泡剤15~30重量部、糖類80~120重量部、膨張剤2~3重量部、増粘多糖類0.7~3重量部及び水50~80重量部を含有する、チルド流通ロールケーキ用スポンジケーキ生地が記載されている。また、特許文献2には、菓子用起泡剤は、グリセリン脂肪酸エステル、液糖、水を含み、グリセリン脂肪酸エステルの融点以上に加熱して冷却しα型結晶にしたものであることも記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、油脂を含む高含泡性のケーキ生地を別立て法、共立て法で調整する際に、全組成物量に対して10~90重量%の油脂が水中に乳化分散されてなる乳化油脂組成物であって、該乳化油脂組成物中に0.01~5重量%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び1.5~4.5重量%の加工澱粉が含有されており、かつ5℃で流動能を維持することを特徴とするケーキ用乳化油脂組成物を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-095247号公報
【文献】特開2015-084741号公報
【文献】特開平08-140612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2及び3のように乳化剤を用いると、ケーキ本来の自然な風味が損なわれるという問題があった。また最近、一部の消費者の間では、乳化剤を含む菓子が敬遠される場合があり、製造者は対応を求められることがあった。
【0012】
よって、本発明の目的は、実質的に乳化剤を含有させなくても、外観や食感に優れ、本来の自然な風味が感じられるケーキを後粉法によって安定して製造することができるケーキ生地用気泡安定剤、ケーキ生地及びケーキの製造方法、並びに菓子類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ケーキ生地に特定のペクチンを含有させることで、後粉法により製造されるケーキ生地においても、安定した気泡を作ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の1つは、ゲル化性テストで200cP以上の粘度を示すペクチンを含有し、実質的に乳化剤を含有せず、後粉法によるケーキ製造に用いられるものであることを特徴とするケーキ生地用気泡安定剤を提供するものである。
【0015】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤によれば、実質的に乳化剤を含有させなくても、安定した気泡を後粉法において作ることができるので、外観や食感に優れたケーキを得ることができる。また、実質的に乳化剤を含有しないので、本来の自然な風味が感じられるケーキを得ることができる。
【0016】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤においては、前記ペクチンがゲル化性テストで2300cP以下の粘度を示すものであることが好ましい。
【0017】
本発明のもう1つは、糖類と、卵と、前記ケーキ生地用気泡安定剤とを含む第1原料を混合し、含気させる第1工程と、前記第1工程で得られた含気生地に、澱粉質原料粉を含有する第2原料を添加混合する第2工程と、を含むことを特徴とするケーキ生地の製造方法を提供するものである。
【0018】
本発明のケーキ生地の製造方法においては、前記ケーキ生地中の前記ペクチンの含量が0.01~0.3質量%となるように、前記ケーキ生地用気泡安定剤を添加することが好ましい。
【0019】
本発明のケーキ生地の製造方法においては、前記第1工程の後又は第2工程の後に、前記第1工程で得られた含気生地に油脂を添加混合する第3工程を含むことが好ましい。
【0020】
本発明のもう1つは、前記ケーキ生地の製造方法により製造されたケーキ生地を加熱処理して実質的に乳化剤を含有しないケーキを製造することを特徴とするケーキの製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明のもう1つは、前記方法により得られるケーキを用いて実質的に乳化剤を含有しない菓子類を製造することを特徴とする菓子類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤によれば、ケーキ生地に実質的に乳化剤を含有させなくても、ペクチンによって安定した気泡を作ることができるので、外観や食感に優れた後粉法によって製造されたケーキを得ることができる。また、このケーキは実質的に乳化剤を含有しないので、本来の自然な風味を得ることができる。更に、実質的に乳化剤を含有させなくても、後粉法でも安定してケーキを製造できるので、大量生産が可能である。
【0023】
また、本発明のケーキ生地の製造方法によれば、実質的に乳化剤を含有させなくても、安定した気泡を作ることができるので、外観や食感に優れた後粉法によるケーキを製造することができる。また、このケーキは実質的に乳化剤を含有しないので、本来の自然な風味が感じられるケーキを製造することができる。更に、後粉法で製造するので、食感に優れたケーキを安定的に生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、後粉法によるケーキ製造に用いられ、ゲル化性テストで、200cP以上の粘度を示すペクチンを含有する。また、ケーキ生地用気泡安定剤は、好ましくは200cP以上2000cP以下、より好ましくは300cP以上1000cP以下、更に好ましくは300cP以上800cP以下の粘度を示すペクチンを含有する。
【0025】
ペクチンの粘度がゲル化性テストで200cP未満であると、ケーキ生地に離水(自由水が生地からにじみ出ること)や脱泡を生じさせる傾向にあり、焼成により得られるケーキの内相が不均一になったり、ソフトさに欠ける食感となったりする傾向にある。
【0026】
ペクチンの粘度がゲル化性テストで2000cPを超えると、焼成により得られるケーキがソフトさに欠ける食感となったり、くちゃついた食感となる傾向にある。
【0027】
また、本発明のケーキ生地用気泡安定剤に用いるペクチンは、その粘度がゲル化性テストで上記範囲にあるものであれば、1種類または2種以上のペクチンを組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、実質的に乳化剤を含有しない。「実質的に乳化剤を含有しない」とは、ケーキ生地用気泡安定剤を製造する際に乳化剤を意図的に添加しないという意味であり、ケーキ生地用気泡安定剤を製造中又は保管中に不可避的に混入する微量の乳化剤を含んでいても構わない。
【0029】
尚、後述するケーキ生地、ケーキ及び菓子類も実質的に乳化剤を含有しない。すなわち、上述のように、これらを製造する際に乳化剤が意図的に添加されないという意味であり、これらの製造中又は保管中に不可避的に混入する微量の乳化剤が含まれていても構わない。
【0030】
ここで、乳化剤としては、食品表示法に基づく食品表示基準において、乳化剤の一括名での表示が認められている添加物が挙げられ、特に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、分別レシチンを含む)等が挙げられる。これらの乳化剤はそれぞれ特有の風味を有し、ケーキや菓子の本来の風味を損なう。
【0031】
一方で、一般的にケーキ生地、ケーキ、菓子類の原料として用いられる小麦粉や卵類、乳製品、油脂等に微量含有されるレシチンやモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールといった成分を含有する場合には、風味に悪影響を及ぼすことはない。これらは意図的に添加された物でなく不可避的に混入された場合に当たり、「実質的に乳化剤を含有しない」とみなすことができる。
【0032】
本発明において、「実質的に乳化剤を含有しない」の具体的な基準としては、上記意図的に添加された乳化剤の含有量が、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であることを意味している。
【0033】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、ペクチン以外に、本発明の奏する効果を阻害しない範囲で、一般的にケーキ用気泡安定剤に使用される、その他の食品や食品添加物を含むことができる。
【0034】
このような成分としては、例えば、油脂、卵類、穀粉類、糖類、澱粉類、食物繊維、無機塩及び有機酸塩、乳製品、乳や卵、大豆由来のタンパク素材、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、グアーガムやキサンタンガム、タマリンドガムなどの増粘多糖類、加工澱粉、メチルセルロースやカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類、酸化防止剤、着色料、保存料、pH調整剤等を挙げることができる。
【0035】
また、ケーキ生地用気泡安定剤は、その形態は問わないが、例えば、粉末のペクチンを用いることができ、ペクチンを溶媒に溶解させて水溶液としたものを用いることができ、さらに油脂を含有した乳化物を用いることができ、また乾燥させて粉末としたものを用いることができる。
【0036】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、後粉法で製造されるケーキに用いられる。後粉法は、穀粉類を除く主原料を混合し、次いで残余の穀粉類を混合することによりケーキ生地を製造する方法、すなわちケーキの製造方法である。
【0037】
ケーキ生地の主原料としては、全卵、卵黄、卵白等の卵類、小麦粉、薄力粉、中力粉、米粉等の穀紛類、上白糖、グラニュー糖、粉糖等の糖類、コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、乳脂肪、バター等の油脂、生乳、牛乳、脱脂乳等の乳製品、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉等の澱粉類、チョコレート、ココアパウダー、アーモンドプードル、ベーキングパウダー等の膨張剤、キサンタンガム、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。本発明においては、卵類、穀粉類が必須の原料である。
【0038】
ここで、糖類、卵及びケーキ生地用気泡安定剤は、第1原料に相当する。また、穀粉類及び澱粉類は、澱粉質原料粉、すなわち第2原料に相当する。
【0039】
卵は、澱粉質原料粉100質量部に対して、好ましくは120~250質量部添加することができる。卵の添加量が少ないと起泡しづらくなり、気泡の安定性も低下するが、本発明の気泡安定剤を用いることにより、卵の量が澱粉質原料粉100質量部に対して120~170質量部、好ましくは130~160質量部であったとしても、生地の気泡が安定し、外観や食感に優れた後粉法によるケーキを製造することができる。
【0040】
また、上記卵類としては、割卵でも液卵でも使用することができ、また、殺菌、凍結、加塩、加糖等の前処理の有無にかかわらず使用することができる。
【0041】
また、上記卵類は前述のとおり全卵、卵黄、卵白を用いることができるが、好ましくは全卵を用いることができる。
【0042】
ケーキ生地の副原料としては、イースト、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等のチーズ類、アルコール、フルーツ、野菜、ハーブ、スパイス、食塩、保存料、ビタミン、カルシウム、蛋白質、アミノ酸等が挙げられる。
【0043】
本発明のケーキ生地の製造方法は、糖類と、卵と、前記ケーキ生地用気泡安定剤とを含む第1原料を混合し、含気させる第1工程と、前記第1工程で得られた含気生地に、澱粉質原料粉を含有する第2原料を添加混合する第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0044】
また、本発明のケーキ製造方法においては、前記第1工程の後又は第2工程の後に、前記含気生地に油脂を添加混合する第3工程を含むことが好ましい。
【0045】
第1工程では、材料を均一に混合することができるミキサー等を用いて、糖類、卵及びケーキ生地用気泡安定剤を含む第1原料を混合し、含気させて、含気生地を得る。用いるミキサーとしては、特に限定されないが、縦型ミキサー、横型ミキサー、スラリーミキサー、加圧式ミキサー等を用いることができる。
【0046】
ケーキ生地用気泡安定剤の添加量は、最終的に得られるケーキ生地中のペクチンの含量が、好ましくは0.01~0.3質量%、より好ましくは0.03~0.3質量%、更に好ましくは0.05~0.3質量%、最も好ましくは0.10~0.25質量%となるように定められるとよい。
【0047】
言い換えれば、本発明のケーキ生地は、好ましくは0.01~0.3質量%、より好ましくは0.03~0.3質量%、更に好ましくは0.05~0.3質量%、最も好ましくは0.10~0.25質量%のペクチンを含有する。
【0048】
ペクチンの添加量や含有量が0.01質量%未満であると、生地中の気泡が安定せずに脱泡したり、生地が離水や分離したりする要因となる。その結果、生地を加熱処理することにより得られたケーキの内相が不均一となったり、ソフトさに欠ける食感となる傾向にある。また、ペクチンの添加量や含有量が0.3質量%を超えると、生地を加熱処理することにより得られたケーキがくちゃついた食感となる傾向にある。
【0049】
第3工程は、本発明の好ましい態様において、第1工程又は第2工程の後に行われる。尚、第1工程において、第1原料に油脂を添加することにより、第3工程を第1工程において行うようにしてもよい。また、第3工程を例えば第1工程の後、及び、第2工程の後に行うなど、複数回に分けて行うようにしてもよい。中でも好ましくは、第3工程は、第2工程の後に行われるとよい。
【0050】
本発明のケーキは、ケーキ生地を目的にあったケーキ型に流し入れたり、鉄板上に一定の厚さとなるように流し入れたりして、オーブンや蒸し器で加熱処理等することによって製造することができる。
【0051】
こうして得られるケーキとしては、スポンジケーキ(シフォンケーキ、バタースポンジ、カステラ、エンゼルケーキ等)、バウムクーヘン、生地をホイップするタイプの蒸しケーキ等が挙げられる。
【0052】
本発明の菓子類は、上記ケーキに、例えばクリーム類(生クリーム、ホイップクリーム、バタークリーム、カスタードクリーム等)、バター、ジャム、及び果物等を挟んだり載せたりして、得ることができる。この場合、ケーキ以外の原料も実質的に乳化剤を含まないことが好ましく、また、本発明の菓子類の10質量%以上が上記ケーキであることが好ましい。
【0053】
本発明の菓子類は、上記ケーキ以外のケーキを併せて用いても構わないが、上記ケーキ以外のケーキも実質的に乳化剤を含まないことが好ましい。また、使用するケーキの50質量%以上が上記ケーキであることが好ましい。
【実施例
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0055】
1.ゲル化性テスト及び離水テスト
(1)ゲル化性テスト
100mL容量の蓋付きのプラスチック容器に、表1に示した4質量%のペクチンA~Hの溶液8g及び蒸留水32mLを入れて攪拌した。これに上白糖40g加え、攪拌して溶解した。更に、これに0.014mol/L塩化カルシウム溶液20mLを加えて、ボルテックスミキサーを用いて最高速で30秒間攪拌した。この混合物を25℃の温水槽で10分間保持した後、再度ボルテックスミキサーの最高速で30秒間攪拌した。内容物について、ブルックフィールド粘度計(No.2スピンドル)を用いて、60rpmで粘度を測定した。
【0056】
ただし、ペクチンH(OB700SB)は粘度が高いため、No.2スピンドルの代わりに、S4スピンドルを用いて測定した。
【0057】
なお、同様に、一般的にケーキ用気泡安定剤として用いられているキサンタンガム、グアーガムについても4質量%水溶液の調製を試みたが、粉末が十分に水に分散せず、ペクチンA~Hと同条件でのゲル化性テストを行うことはできなかった。
【0058】
(2)離水テスト
5コートのミキサーボウルに、4質量%のペクチンA~Hの溶液20g、蒸留水20g、上白糖240g、及び殺菌卵280g(20℃)を投入し、ホバートミキサーで3速で2分間、2速で5分間攪拌し、起泡させた。このうち200gを500mLの分液漏斗に入れ、25℃の雰囲気化に放置し、30分後、60分後に離水しているか確認した。
【0059】
又、蒸留水40gに0.8gのキサンタンガム、又はグアーガムを混合、分散(十分でない)させ、上白糖240g、及び殺菌卵280g(20℃)を投入し、同様の手順で離水テストを行った。
【0060】
(3)結果
結果を表1に示した。離水テストで、離水を目視で確認できたものを×、離水を目視で確認できなかったものを○とした。
【0061】
【表1】
【0062】
なお、表1におけるペクチンA~Hは、下記のものである。
ペクチンA(商品名「121-J SLOW SET」、CP Kelco社)
ペクチンB(商品名「AYD5110SB」、Cargill社)
ペクチンC(商品名「AF701」、H&F社)
ペクチンD(商品名「CF010」、H&F社)
ペクチンE(商品名「LC810」、ダニスコ社)
ペクチンF(商品名「OF645C」、Cargill社)
ペクチンG(商品名「OF445C」、Cargill社)
ペクチンH(商品名「OB700SB」、Cargill社)
表1にあるように、キサンタンガムや、グアーガムや、ゲル化性が200cP未満であるペクチンA,Bを使用した場合、ゲル化性が200cP以上のペクチンC~Hと比較して、離水しやすいことがわかった。
【0063】
ゲル化性が200cP以上であるペクチンC~Hを使用した場合、離水は30分後にもおこらず、300cP以上のペクチンD~Hを使用した場合、離水は60分後にもおこらないことがわかった。
【0064】
2.ケーキ生地及びケーキの製造
(1)ケーキ生地及びケーキの製造
(比較例1)
下記表2に示す配合1の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表2のうち全卵及び上白糖を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油(商品名「咲味油」、月島食品工業製)を第3原料とした。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
【0065】
【表2】
【0066】
配合1
具体的には、第1原料の全卵、上白糖を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサー(愛工舎製)でワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、比較例1のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0067】
更に、このケーキ生地の最終比重を測定した後、6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、比較例1のスポンジケーキを得た。
【0068】
(比較例2~7)
下記表3に示す配合2の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表3のうち全卵、上白糖及び増粘剤を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油を第3原料とした。増粘剤としては、下記のものを用いた。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
比較例2:キサンタンガム
比較例3:グアーガム
比較例4:グルコマンナン
比較例5:ローカストビーンガム
比較例6:ジェランガム
比較例7:ゼラチン
【0069】
【表3】
【0070】
配合2
具体的には、第1原料のうち、増粘剤及び上白糖を混合した後、全卵と一緒に20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、比較例2~7のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0071】
更に、これらのケーキ生地の最終比重を測定した後、6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、それぞれの増粘剤に対応する比較例2~7のスポンジケーキを得た。
【0072】
(比較例8,9、実施例1~3,5,7,8)
表4に示す配合3の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表4のうち全卵、上白糖及び4%ペクチン液を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油を第3原料とした。4%ペクチン液としては、下記のものを用いた。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
比較例8:ペクチンA(商品名「121-J SLOW SET」、CP Kelco社)
比較例9:ペクチンB(商品名「AYD5110SB」、Cargill社)
実施例1:ペクチンC(商品名「AF701」、H&F社)
実施例2:ペクチンD(商品名「CF010」、H&F社)
実施例3:ペクチンE(商品名「LC810」、ダニスコ社)
実施例5:ペクチンF(商品名「OF645C」、Cargill社)
実施例7:ペクチンG(商品名「OF445C」、Cargill社)
実施例8:ペクチンH(商品名「OB700SB」、Cargill社)
【0073】
【表4】
【0074】
配合3
具体的には、第1原料の全卵、上白糖、4%ペクチン液を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、比較例8,9、実施例1~3,5,7,8のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0075】
更に、これらのケーキ生地の最終比重を測定した後、6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、それぞれのペクチンに対応する比較例8,9、実施例1~3,5,7,8のスポンジケーキを得た。
【0076】
(実施例4)
表5に示す配合4の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表4のうち全卵、上白糖及び4%ペクチン液を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油を第3原料とした。4%ペクチン液としては、下記のものを用いた。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
実施例4:ペクチンF(商品名「OF645C」、Cargill社)
【0077】
【表5】
【0078】
配合4
具体的には、第1原料の全卵、上白糖、4%ペクチン液を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、実施例4のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0079】
更に、これらのケーキ生地の最終比重を測定した後、6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、実施例4のスポンジケーキを得た。
【0080】
(実施例6)
表6に示す配合5の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表6のうち全卵、上白糖及び4%ペクチン液を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油を第3原料とした。4%ペクチン液としては、下記のものを用いた。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
実施例6:ペクチンF(商品名「OF645C」、Cargill社)
【0081】
【表6】
【0082】
配合5
具体的には、第1原料の全卵、上白糖、4%ペクチン液を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、実施例6のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0083】
更に、これらのケーキ生地の最終比重を測定した後、6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、実施例6のスポンジケーキを得た。
【0084】
(2)評価
比較例1~9、実施例1~8の配合系(配合1~5)は、小麦粉100質量部に対して全卵を140質量部配合しており、起泡に寄与する全卵の量が少ないため、通常、起泡剤等を使用しない場合には気泡が安定しない配合系である。
【0085】
上記で得たケーキの焼成前の生地について、脱泡の有無、分離の状態について評価した。脱泡の有無については、生地表面の脱泡による穴の有無を観察し、「脱泡がみられない」ものについて〇、「わずかに脱泡がみられる」ものについて△、「明らかな脱泡がみられる」ものについて×とした。分離の状態については、生地表面を観察し、「分離のみられない」ものについて○、「分離がわずかにみられる」ものについて△、「明らかな分離がみられる」ものについて×とした。
【0086】
また、上記得たケーキ(焼成後)について、ボリュームを体積測定器(商品名「Volscan profiler 600」、Stable Micro Systems製)により、食感(ソフトさ、くちゃつき)については官能試験により評価した。官能試験は、訓練されたパネル10名がケーキを食べ、以下の基準で評価して点数をつけ、10名の平均点を求めた。
【0087】
(ソフトさ)
-2点:比較例1よりもかなり劣る
-1点:比較例1より劣る
0点:比較例1と同等
1点:比較例1よりもソフト
2点:比較例1よりもかなりソフト
(くちゃつき)
-2点:比較例1よりもかなりくちゃつく
-1点:比較例1よりくちゃつく
0点:比較例1と同等
1点:比較例1よりもくちゃつかない
2点:比較例1よりもかなりくちゃつかない
(3)結果
結果を表7に示した。
【0088】
【表7】
【0089】
(3-1)生地における脱泡の有無及び分離の状態について
表7に示されるように、気泡安定剤を使用しない生地(比較例1)、ローカストビーンガムを用いた生地(比較例5)及びゲル化性が200cP未満であるペクチンA,Bを使用した生地(比較例8,9)では、明らかな脱泡や分離がみられるものであった。
【0090】
キサンタンガムを使用した生地(比較例2)、グアーガムを使用した生地(比較例3)、グルコマンナンを使用した生地(比較例4)、ジェエランガムを使用した生地(比較例6)及びゼラチンを使用した生地(比較例7)では、分離はみられないものの明らかな脱泡がみられた。
【0091】
これに対して、ゲル化性が200cP以上であるペクチンC,D,E,F,G,H(実施例1~8)を使用した生地では、脱泡や分離の状態はわずかにみられるものか、みられないものであった。
【0092】
(3-2)ケーキの食感について
キサンタンガムを使用した生地(比較例2)、グアーガムを使用した生地(比較例3)及びグルコマンナンを使用した生地(比較例4)では、くちゃつきが感じられるか、ややくちゃつく傾向がみられた。
【0093】
気泡安定剤を使用しない生地(比較例1)、ローカストビーンガムを用いた生地(比較例5)、ジェエランガムを使用した生地(比較例6)、ゼラチンを使用した生地(比較例7)及びゲル化性が200cP未満であるペクチンA,Bを使用した生地(比較例8,9)、ゲル化性が200cP以上であるペクチンC,D,E,F,G,H(実施例1~8)を使用した生地では、ほとんどくちゃつきがみられなかった。
【0094】
(3-3)ケーキの内相について
気泡安定剤を使用しない生地(比較例1)、グアーガムを使用した生地(比較例3)及びグルコマンナンを使用した生地(比較例4)、ローカストビーンガムを用いた生地(比較例5)、ジェエランガムを使用した生地(比較例6)及びゼラチンを使用した生地(比較例7)では、メが詰まっていた。
【0095】
キサンタンガムを使用した生地(比較例2)では、生地の塊があった。
【0096】
ゲル化性が200cP未満であるペクチンを使用した生地(比較例8,9)では、メが不均一であった。
【0097】
これに対して、ゲル化性が200cP以上であるペクチンC,D,E,F,G,H(実施例1~8)を使用した生地では、メが不均一であるもの(実施例1,4,8)が認められるものの、ほとんどのものが良好であった。
【0098】
3.ケーキ生地及びケーキの製造(全卵の配合量の増加)
(1)ケーキ生地及びケーキの製造
(実施例9)
表8に示す配合6の原料を用いて、後粉法によりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表8のうち全卵、上白糖及び4%ペクチン液を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油脂を第3原料とした。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。
【0099】
【表8】
【0100】
配合6
具体的には、第1原料の全卵、上白糖及び4%ペクチン液を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.35に調整した。次いで、低速で撹拌しながら、第2原料の、薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次前記のミキサーボールに添加し、実施例9のケーキ生地を得た。第2原料、水、第3原料を添加する際には、これらを添加するのに要する時間を60秒以内とした。
【0101】
更に、このケーキ生地を6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で35分前後焼成し、実施例9のスポンジケーキを得た。
【0102】
(参考例)
表9に示す配合7の原料を用いて、後粉法(いわゆる共立て法)により、手合わせで混合することによりケーキ生地を作成し、このケーキ生地を用いてスポンジケーキを製造した。なお、表8のうち全卵及び上白糖を第1原料とし、薄力粉及びベーキングパウダーを第2原料、液状油を第3原料とした。水は第2原料を添加した後、第3原料を添加する前に添加した。手合わせの場合はベーキングパウダーの適量が配合6とは異なるため、ベーキングパウダーの量を配合6よりも少なくした。
【0103】
【表9】
【0104】
配合7
具体的には、第1原料の全卵及び上白糖を20コートのミキサーボールに入れ、縦型ミキサーでワイヤーホイッパーを用いて高速にてホイップを行い、比重を0.25に調整した。次いで、第2原料の、薄力粉とベーキングパウダー、水、第3原料の液状油を順次手で攪拌しながら加え、参考例のケーキ生地を得た。
【0105】
更に、このケーキ生地を6号デコ型に350g流し入れてオーブンで170℃で30分前後焼成し、参考例のスポンジケーキを得た。
【0106】
(実施例9と参考例の評価)
実施例9のケーキ生地は、配合例1~5よりも全卵の配合量の多い配合6からなるが、ペクチンF(商品名「OF645C」、Cargill社)の4%ペクチン液を用いることにより、脱泡及び分離がみられなかった。
【0107】
また、そのケーキ生地を焼成して得られた実施例9のケーキは、食感及び内相も共に良好であった。
【0108】
また、実施例9のケーキは、同様の配合で、気泡安定剤を使用せず、卵の泡を消失しないように手合わせで薄力粉、液状油を混入させた参考例のケーキと比較しても、ほぼ同等のボリュームで、やや弾力はあるものの、ソフトさ、くちゃつき感の少なさにおいて、遜色のないものであった。