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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】注射デバイス用のフィードバック機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A61M5/315 510
A61M5/315 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019522834
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017076097
(87)【国際公開番号】W WO2018082891
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】16196674.2
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シャーダー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ブラウン
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】佐々木 正章
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0310169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように動くプランジャと薬剤が注射された後の時点で遅延フィードバックを使用者に提供するためのフィードバック機構を含む、使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイスであって、
フィードバック機構は、
制限出口を有する流体チャンバと、
流体を流体チャンバから制限出口へ付勢するように適用されるアクチュエータと、
注射デバイスの使用中に所定の体積の流体が流体チャンバから制限出口を通過した後に前記使用者にフィードバックを提供するように適用されたインジケータとを含み、
インジケータは、制限出口を通過する流体によって膨張するように適用された膜を含み、膜は、制限出口を通過する流体によって破裂するように適用される、
前記注射デバイス。
【請求項2】
流体流体チャンバから制限出口へ付勢するためにアクチュエータを付勢するように構成されるバネをさらに含む、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
アクチュエータは、プランジャが所定の位置に到達した後に流体チャンバ内へ動くように適用される、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
ロッキング機構をさらに含み、該ロッキング機構は、該ロッキング機構がアクチュエータを保持する第1の位置と、ロッキング機構がアクチュエータを解放し、したがってアクチュエータが流体を流体チャンバから付勢する第2の位置とを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
ロッキング機構は、前記薬剤の送達中にアクチュエータに係合するロッキングアームを含み、該ロッキングアームは、前記薬剤が送達された後にアクチュエータを係合解除するように配置される、請求項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
ロッキングアームは、該ロッキングアームが回転してアクチュエータから係合解除されることを可能にするピボットと、前記薬剤が送達されるまでロッキングアームの回転を防止するように配置された止め具とを含む、請求項に記載の注射デバイス。
【請求項7】
ロッキング機構は、前記薬剤の送達中にプランジャが所定の位置へ動いたときにアクチュエータを解放するように構成される、請求項4~6のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
リザーバは、薬剤を収容する、請求項1~のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載された注射デバイスの作動方法であって:
薬剤をリザーバから変位させるようにプランジャが動くことと;
薬剤が送達された後に流体を流体チャンバから制限出口へ付勢することと;
一定体積の流体が制限出口を通過した後に遅延フィードバックを提供することとを含む、前記方法。
【請求項10】
アクチュエータを付勢するように構成されるバネを利用して、薬剤をリザーバから変位させるようにプランジャが動く、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイス用のフィードバック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器などの注射デバイスは、典型的にはシリンジを有しており、シリンジにプランジャを押し込んで、針を介してシリンジから患者へ薬剤を投薬する。この注射プロセスは、プランジャがシリンジ内へ適当な距離だけ押し込まれると完了する。適当な体積の薬剤が注射されたことを使用者に示すフィードバック機構を提供することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、薬剤が注射された後の時点で遅延フィードバックを使用者に提供する注射デバイス用のフィードバック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイス用のフィードバック機構であって、アクチュエータ、および制限出口を有する流体チャンバであって、アクチュエータが、流体を流体チャンバから制限出口へ付勢するように適用される、アクチュエータおよび流体チャンバと;注射デバイスの使用中に所定の体積の流体が流体チャンバから制限出口を通過した後に前記使用者にフィードバックを提供するように適用されたインジケータとを含む、フィードバック機構が提供される。
【0005】
いくつかの例では、インジケータは、流体が成形通路(shaped passage)を通過するときに可聴音を生み出すように適用された成形通路を含む。
【0006】
他の例では、インジケータは、制限出口を通過する流体によって膨張するように適用された膜を含む。
【0007】
この膜は、制限出口を通過する流体によって破裂するように適用することもできる。
【0008】
インジケータは、制限出口を通過する流体を受けるように適用された第2のチャンバを含むことができる。
【0009】
いくつかの例では、第2のチャンバの少なくとも一部は、第2のチャンバ内へ進む流体によって変位するように適用される。
【0010】
他の例では、第2のチャンバの少なくとも一部は、使用者が第2のチャンバ内へ進む流体を見ることができるように透明または半透明である。
【0011】
本発明の別の態様によれば、薬剤送達機構を含む注射デバイスであって、薬剤送達機構は、リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように動くプランジャと;上述したフィードバック機構とを含む、注射デバイスも提供される。
【0012】
アクチュエータは、プランジャが所定の位置に到達した後に流体チャンバ内へ動くように適用することができる。別法として、アクチュエータは、所定の量の薬剤がリザーバから変位した後に流体チャンバ内へ動くように適用することができる。
【0013】
注射デバイスは、ロッキング機構をさらに含むことができ、ロッキング機構は、ロッキング機構がアクチュエータを保持する第1の位置と、ロッキング機構がアクチュエータを解放し、したがってアクチュエータが流体を流体チャンバから付勢する第2の位置とを有する。
【0014】
ロッキング機構は、前記薬剤の送達中にアクチュエータに係合するロッキングアームを含むことができ、ロッキングアームは、前記薬剤が送達された後にアクチュエータを係合解除するように配置することができる。
【0015】
ロッキングアームは、ロッキングアームが回転してアクチュエータから係合解除されることを可能にするピボットと、前記薬剤が送達されるまでロッキングアームの回転を防止するように配置された止め具とを含むことができる。
【0016】
ロッキング機構は、前記薬剤の送達中にプランジャが所定の位置へ動いたときにアクチュエータを解放するように構成することができる。
【0017】
リザーバは、薬剤を収容することができる。
【0018】
いくつかの例では、インジケータは、薬剤が使用者へ送達された後の所定の時点で前記使用者にフィードバックを提供するように適用される。たとえば、フィードバックは、薬剤が使用者に送達されてから2秒を超えると提供することができ、またはフィードバックは、薬剤が使用者に送達されてから5秒を超えると提供することができ、またはフィードバックは、薬剤が使用者に送達されてから10秒を超えると提供することができる。
【0019】
いくつかの例では、注射デバイスは自動注射器である。他の例では、注射デバイスはペン注射器である。他の例では、注射デバイスは大容量デバイスである。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、注射デバイスを使用する方法であって:
使用者に薬剤を送達することと;
前記薬剤が送達された後に流体を流体チャンバから制限出口へ付勢することと;
一定体積の流体が制限出口を通過した後に前記使用者に遅延フィードバックを提供することとを含む方法も提供される。
【0021】
本発明の上記その他の態様は、後述する実施形態から明らかになり、これらの実施形態を参照することによって解明される。
【0022】
本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明を実施する注射デバイスおよび取外し可能なキャップの概略側面図である。
図1B】キャップがハウジングから取り外された、図1Aの注射デバイスの概略側面図である。
図2A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよび膜を有する注射デバイスの側断面図である。
図2B図2Aの注射デバイスのロッキングアームの拡大側断面図である。
図2C】注射デバイスが使用された後の図2Aおよび図2Bの注射デバイスの側断面図である。
図3】流体チャンバおよびホイッスルを有する注射デバイスの側断面図である。
図4A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよび膜を有する別の注射デバイスの側断面図である。
図4B】使用中の状態で示されている、図4Aの注射デバイスの側断面図である。
図4C】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、図4Aおよび図4Bの注射デバイスの側断面図である。
図4D図4A図4B、および図4Cの注射デバイスの膜の拡大側断面図である。
図5】流体チャンバおよびホイッスルを有する別の注射デバイスの側断面図である。
図6A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよび窓を有する別の注射デバイスの側断面図である。
図6B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、図6Aの注射デバイスの側断面図である。
図7A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよび窓を有する別の注射デバイスの側断面図である。
図7B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、図7Aの注射デバイスの側断面図である。
図8A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよび窓を有する別の注射デバイスの側断面図である。
図8B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、図7Aの注射デバイスの側断面図である。
図9A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、流体チャンバおよびホイッスルを有する別の注射デバイスの側断面図である。
図9B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、図8Aの注射デバイスの側断面図である。
図10A図3図5、ならびに/または図9Aおよび図9Bの注射デバイスに対する第1のホイッスルの拡大側断面図である。
図10B図3図5、ならびに/または図9Aおよび図9Bの注射デバイスに対する第2のホイッスルの拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載する薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスの使用者は、患者、または看護師もしくは医師などの医療従事者であり、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要のあるカートリッジ式のシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、「大きい」体積の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するために一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に粘着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0025】
特定の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要な仕様で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、ある期間(たとえば、自動注射器の場合は最大約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約1cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因により生じることがある。したがって、薬物送達デバイスは、多くの場合、サイズが約25~約31ゲージの中空針を含む。一般的なサイズは、17、29、および31ゲージである。
【0026】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0027】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、アクチュエータ、たとえばボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1つの工程または複数の工程からなるプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1つの工程からなるプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを自分の体に押し当てることで、薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能を複数の工程によって起動することを必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させることが必要となることがある。
【0028】
追加として、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の後続の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特定の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスで動作することができる。
【0029】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的にはペン注射器に見られる)とを含むことができる。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび図1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、患者の体に薬剤を注射するように構成される。デバイス10は、典型的には注射予定の薬剤を収容するシリンジ18を収容するハウジング11と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを含む。また、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップ12が設けられる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、ハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0031】
図示のように、ハウジング11は実質上円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
【0032】
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ19を含むことができ、ハウジング11に対するスリーブ19の動きが可能にされるようになっている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに対して平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ19が近位方向に動くことで、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びることを可能にすることができる。
【0033】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定して配置することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ19内に位置することができる。スリーブ19の遠位端を患者の体に当て、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ19が近位に動くことで、針17の遠位端が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ19に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0034】
別の形態の挿入は「自動化」されており、それによって針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ19の動きまたはたとえばボタン13などの別の形態の起動によってトリガすることができる。図1Aおよび図1Bに示すように、ボタン13は、ハウジング11の近位端に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン13がハウジング11の側面に位置することもできる。
【0035】
他の手動または自動機能は、薬物の注射もしくは針の後退または両方を含むことができる。注射とは、栓またはピストン14をシリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位の位置へ動かし、針17を通って薬剤をシリンジ18から押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、ピストン14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されたエネルギーの少なくとも一部をピストン14の近位面に加えることができる。この圧縮力は、ピストン14に作用してピストン14を遠位方向に動かすことができる。そのような遠位運動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
【0036】
注射後は、針17をスリーブ19またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者が患者の体からデバイス10を取り外すにつれてスリーブ19が遠位に動くときに行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定して配置されたままであるために行うことができる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を越え、針17が覆われた後、スリーブ19をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19のあらゆる近位運動をロックすることを含むことができる。
【0037】
別の形態の針の後退は、針17がハウジング11に対して動かされた場合に行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のシリンジ18がハウジング11に対して近位方向に動かされた場合に行うことができる。この近位運動は、遠位領域D内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、シリンジ18を近位方向に動かすのに十分な力をシリンジ18に供給することができる。十分な後退後は、ロッキング機構により、針17とハウジング11との間のあらゆる相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、デバイス10のボタン13または他の構成要素をロックすることができる。
【0038】
図2A図2B、および図2Cは、図1Aおよび図1Bを参照して上述したものに類似しているシリンジ28を含む例示的な注射デバイス20を示す。図2Aの注射デバイス20はまたハウジング21を含み、ハウジング21は、図2Aには部分的に示されている。
【0039】
図示のように、注射デバイス20はまたプランジャ22を含み、プランジャ22は、ピストン24に作用してピストン24をシリンジ28内へ動かし、針(図示せず)を通って薬剤を投薬する。注射デバイス20の使用中、プランジャ22をピストン24に押し付けてシリンジ28内へ押し込むために、駆動ばね23が設けられる。駆動ばね23は予荷重されたものとすることができ、プランジャ22を解放するための解放機構を設けることができ、したがって駆動ばね23は、前述したように、プランジャ22およびピストン24を押して、薬剤を投薬することができる。ピストン24は省略することができ、プランジャ22の端部25がシリンジ28内でピストンとして作用するように適用することができることが理解されよう。
【0040】
図2Aの注射デバイス20はまた、プランジャ22がシリンジ28内へ動いて薬剤が投薬された後の時点で遅延使用者フィードバックを提供する遅延機構を含む。この遅延フィードバックは、薬剤が投薬されたことを使用者に通知し、このさらなる遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0041】
図示のように、この例の注射デバイス20は、アクチュエータ、この例ではプランジャ22内に位置するプッシャ(pusher)27を含む。プランジャ22は細長く、円筒孔29を有しており、プランジャ22の遠位端には開口部30が位置し、開口部30内にプッシャ27が位置する。プッシャ27もまた円筒孔31を有しており、遠位端には開口部32が位置し、駆動ばね23は、プッシャ27の円筒孔31内に位置する。駆動ばね23は、ハウジング21の一部とプッシャ27との間に作用して、これらを離すように付勢する。
【0042】
シリンジ28内へのプランジャ22の最初の動きの間にプランジャ22およびプッシャ27をともに保持するため、ロッキング機構が設けられる。ロッキング機構は、プッシャ27をプランジャ22に対して固定するロッキングアーム33を有し、したがって駆動ばね23は、プッシャ27およびプランジャ22をともにシリンジ28内へ付勢する。
【0043】
図2Aおよび図2Bに示すように、各ロッキングアーム33は、ピボット34を介してプランジャ22に旋回式に取り付けられており、各ロッキングアーム33の第1の端部35が、プッシャ27内に形成された溝36の中に位置する。ロッキングアーム33のアーム延長部37は、プランジャ22の径方向に延びる。駆動ばね23がプッシャ27およびプランジャ22をシリンジ28内へ付勢するときにロッキングアーム33が回転するのを防止するために、プランジャ22上に止め具38が配置される。このようにして、駆動ばね23がプッシャ27に作用するとき、ロッキングアーム33は止め具38と溝36との間に捕捉され、したがってプッシャ27およびプランジャ22は、シリンジ28内へともに押し込まれる。
【0044】
図2Cに示すように、プランジャ22がシリンジ28内へのその動きを完了した後、すなわち薬剤が投薬された後、ロッキングアーム33のアーム延長部37がシリンジ28の環状端39に接触してロッキングアーム33が回転し、その結果、プッシャ27がプランジャ22から解放される。特に、ロッキングアーム33のアーム延長部37がシリンジ28の環状端39に押し付けられたときにロッキングアーム33のアーム延長部37に加えられるてこの作用により、止め具38を変形または破断するのに十分な力が提供され、ロッキングアーム33が回転してプッシャ27内の溝36から係合解除されることが可能になる。代替の例では、ロッキングアーム33は、シリンジ28の端部39ではなくハウジング21の別の部材に当接することができる。
【0045】
したがって、プランジャ22がシリンジ28内へ押し込まれた後、ロッキングアーム33は回転し、プッシャ27は、駆動ばね23の力を受けてプランジャ22から独立して自由に動くことができる。
【0046】
ロッキング機構は、プランジャ22がシリンジ28内へ完全に押し込まれた後、すなわちピストン24がシリンジ28の端部に到達したとき、プランジャ22からプッシャ27を解放するように配置することができる。別法として、ロッキング機構は、プランジャ22およびピストン24がシリンジ28内へ完全に押し込まれる前であるが一定量の薬剤が投薬された後の時点で、プランジャ22からプッシャ27を解放するように配置することができる。
【0047】
図2Aに示すように、注射デバイス20を使用する前に、プランジャ22の遠位端で、プッシャ27とプランジャ22との間に流体チャンバ40が画成される。特に、流体チャンバ40は、プランジャ22の円筒孔29の遠位端に位置しており、プッシャ27の遠位端によって封止される。プッシャ27は、流体チャンバ40を封止するために、封止リング41、たとえば「O」リングを備える。
【0048】
図2Cに示すように、ロッキングアーム33が回転した後、プッシャ27はプランジャ22の円筒孔29内へさらに付勢され、流体チャンバ40が圧縮される。
【0049】
流体チャンバ40は、出口42と、プランジャ22の壁を通る通路44とを含み、プッシャ27が流体チャンバ40を圧縮すると、流体は通路44へ付勢される。出口42を覆うように、封止(図示せず)、たとえば薄膜を設けることができ、この封止は、流体チャンバ40が圧縮されると出口42を通過する流体の圧力によって破断することができる。この封止は、プランジャ22がその動きを完了するまで、流体が出口42を通って動くのを防止する。
【0050】
流体チャンバ40への通路44内には膜43が位置しており、膜43は、プッシャ27が流体チャンバ40を圧縮すると出口42を通過する流体を阻止する。図2Cに示すように、膜43は、出口42を通過する流体によって膨張する。
【0051】
代替実施形態では、膜43は、流体チャンバ40とは通路44の反対側、プランジャ22の外側に位置する。
【0052】
膨張した膜43は、注射デバイス20の外部から見ることができ、それによって使用者に視覚インジケーションを提供することができる。膜43は色付きとすることができ、または膜43は透明もしくは半透明とすることができ、流体を色付きとすることができる。別法として、膨張した膜43は、出口42を介して一定量の流体を受けた後に破裂することができ、それによって使用者に可聴インジケーションを提供することができる。出口42を通って膜43内へ進む流体チャンバ40内の流体は、液体または気体とすることができる。たとえば、流体は水とすることができる。流体は、色付きまたは透明とすることができる。
【0053】
出口42は、出口42を通る流体の通過を遅くする絞りを含む。この絞りにより、膜43が膨張し、場合により破裂するのに時間がかかることが確実になり、したがってインジケーションは、ロッキング機構がプッシャ27を解放した後の時点で使用者に提供される。この遅延により、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。
【0054】
この遅延の長さは、出口42のサイズ、プッシャ27および流体チャンバ40に加えられる圧力、使用される流体のタイプ、使用される流体の粘性、膜43の破裂強度、ならびに他のそのような要因などの様々な要因によって画成される。これにより、遅延フィードバック機構が提供され、遅延フィードバック機構は、プッシャ27がロッキングアーム33によって解放されたときに開始され、視覚および/または可聴インジケーションが使用者に提供されたときに完了する。
【0055】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0056】
図2A図2Cの実施形態に類似している代替実施形態では、ロッキングアーム33は、プランジャ22からプッシャ27内へ突出するロッキング突起に置き換えることができ、または逆も同様であり、プランジャ22がシリンジ28内へ十分に押し込まれた後に駆動ばね23によって提供される力によって変形または破断するように構成される。このようにして、プランジャ22およびプッシャ27は、プランジャ22がシリンジ28の端部に到達するまでともに動き、次いでロッキング突起は変形または破断して、プッシャ27が流体チャンバ40を圧縮することを可能にし、次に遅延フィードバックを提供する。
【0057】
図3は、図2A図2Cを参照して記載したものと同じプランジャ22、プッシャ27、ロッキングアーム33、および流体チャンバ40を有する代替の例を示す。しかし、この例では、流体チャンバ40の出口42および/またはプランジャ22の壁を通る通路45が、可聴音、たとえばホイッスル音を生成するように成形されている。膨張性の膜は設けられない。
【0058】
この例では、前述したように、ロッキングアーム33が回転してプッシャ27を解放するとき、プッシャ27は流体チャンバ40を圧縮し、流体は出口42および成形通路45へ付勢され、ホイッスル音が生成される。出口42は、出口42を通る流体の流れを遅くする絞りを有し、薬剤が送達された後の時点でインジケーションが提供されることが確実になり、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。この例では、流体は好ましくは気体である。
【0059】
フィードバック機構は、ホイッスル音の開始により、プランジャ22がシリンジ28の端部へ動き、薬剤が注射されたことを使用者に通知し、ホイッスル音の終了により、注射部位からの薬剤の分散を補償するのに適当な量の時間が経過したことを使用者に通知するように構成することができる。ホイッスル音の持続時間は、流体チャンバ40のサイズ、出口42のサイズ、および駆動ばね23によって提供される力を含む様々な要因によって決定することができる。
【0060】
ホイッスル音は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒の持続時間にわたって継続することができる。
【0061】
図4A図4Dは、図1Aおよび図1Bを参照して上述したものに類似しているシリンジ28を含む代替の例示的な注射デバイス46を示す。図4Aの注射デバイス46はまたハウジング21を含み、ハウジング21は、図4Aには部分的に示されている。
【0062】
図示のように、注射デバイス46はまたプランジャ47を含み、プランジャ47は、ピストン24に作用してピストン24をシリンジ28内へ動かし、針(図示せず)から薬剤を投薬する。注射デバイス46の使用中、プランジャ47をピストン24に押し付けてシリンジ28内へ押し込むために、駆動ばね23が設けられる。駆動ばね23は予荷重されたものとすることができ、プランジャ47を解放するための解放機構を設けることができ、したがって駆動ばね23は、前述したように、プランジャ47およびピストン24を押して、薬剤を投薬することができる。ピストン24は省略することができ、プランジャ47の端部25がシリンジ28内でピストンとして作用することができることが理解されよう。
【0063】
図4Aの注射デバイス46はまた、プランジャ47がシリンジ28内へ動いて薬剤が投薬された後の時点で遅延使用者フィードバックを提供する遅延機構を含む。この遅延フィードバックは、薬剤が投薬されたことを使用者に通知し、このさらなる遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0064】
この例では、プランジャ47は、近位端で開いている円筒孔29を有しており、円筒孔29内に駆動ばね23が位置する。注射デバイス46の近位端付近に、アクチュエータ、この例ではキャリア48が設けられ、駆動ばね23は、プランジャ47とキャリア48との間に作用し、プランジャ47をシリンジ28内へ遠位に付勢して薬剤を投薬する。
【0065】
キャリア48は最初、ロッキング機構によって定位置で保持される。特に、ロッキングアーム49が、キャリア48を定位置で保持する。ロッキングアーム49は、キャリア48が近位方向に動くのを防止する内向きの反り50を近位端に有する。ロッキングアーム49は、ピボット51の周りでハウジング21に旋回式に取り付けられるが、図4Aの位置では、プランジャ47の存在によって、ロッキングアーム49がピボット51の周りで回転することが防止される。したがって、図4Aに示す位置で、駆動ばね23は、ロッキングアーム49によって定位置に保持されているキャリア48を押すことができる。
【0066】
図4Aは、使用前の注射デバイス46を示し、図4Bは、使用中の注射デバイス46を示す。図4Bに示すように、駆動ばね23はプランジャ47をシリンジ28内へ遠位に動かし、薬剤が投薬される。この位置で、薬剤がシリンジ28から投薬された状態で、プランジャ47の近位端52はロッキングアーム49を越えており、ここでロッキングアーム49は、図4Cに示すように、自由に回転してキャリア48を解放することができる。駆動ばね23は、キャリア48を内向きの反り50に押し付け、内向きの反り50はロッキングアーム49を付勢して離れる方へ回転させ、キャリア48を解放する。次いでキャリア48は、駆動ばね23の力を受けて近位方向に動く。
【0067】
ロッキング機構は、プランジャ47がシリンジ28内へ完全に押し込まれた後、すなわちピストン24がシリンジ28の端部に到達したとき、キャリア48を解放するように配置することができる。別法として、ロッキング機構は、プランジャ47およびピストン24がシリンジ28内へ完全に押し込まれる前であるが一定量の薬剤が投薬された後の時点で、キャリア48を解放するように配置することができる。
【0068】
プランジャ47の遠位端25に、流体チャンバ53が形成される。図4Aに示すように、プランジャ47の遠位端25は凹部54を含み、凹部54内に流体チャンバ53が位置する。凹部54内にはプッシャ55も位置し、プッシャ55は、プランジャ47を通って延びるテザー(tether)56を介してキャリア48に連結される。プッシャ55は、凹部54を封止して、流体チャンバ53を画成する。図示のように、プッシャ55は、封止リング57、たとえば「O」リングを含む。
【0069】
図4Bおよび図4Cに示すように、ロッキングアーム49が回転してキャリア48を解放すると、キャリア48は、駆動ばね23によって近位に動かされてテザー56を引っ張り、テザー56はプッシャ55を近位に引っ張って、流体チャンバ53を圧縮する。
【0070】
流体チャンバ53は、プランジャ47の凹部54の壁を通る出口58を含み、プッシャ55が流体チャンバ53を圧縮すると、流体は出口58へ付勢される。出口58を覆うように、封止(図示せず)、たとえば薄膜を設けることができ、この封止は、流体チャンバ53が圧縮されると出口58を通過する流体の圧力によって破断することができる。この封止は、プランジャ47がその動きを完了するまで、流体が出口58を通って動くのを防止する。
【0071】
出口58には膜59が位置しており、膜59は、プッシャ55が流体チャンバ53を圧縮すると流体チャンバ53から出てくる流体を阻止する。図4Cに示すように、膜59は、出口58を通過する流体によって膨張する。
【0072】
膨張した膜59は、注射デバイス46の外部から見ることができ、それによって使用者に視覚インジケーションを提供することができる。膜59は色付きとすることができ、または膜59は透明もしくは半透明とすることができ、流体を色付きとすることができる。別法として、図4Dに示すように、膨張した膜59は、出口58を介して一定量の流体を受けた後に破裂することができ、それによって使用者に可聴インジケーションを提供することができる。出口58を通って膜59内へ進む流体チャンバ53内の流体は、液体または気体とすることができる。たとえば、流体は水とすることができる。流体は、色付きまたは透明とすることができる。
【0073】
出口58は、出口58を通る流体の通過を遅くする絞りを含む。この絞りにより、膜59が膨張し、場合により破裂するのに時間がかかることが確実になり、したがってインジケーションは、ロッキング機構がプランジャ47を解放した後の時点で使用者に提供される。この遅延により、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。
【0074】
この遅延の長さは、出口58のサイズ、プランジャ47および流体チャンバ53に加えられる圧力、使用される流体のタイプ、使用される流体の粘性、膜59の破裂強度、ならびに他のそのような要因などの様々な要因によって画成される。これにより、遅延フィードバック機構が提供され、遅延フィードバック機構は、プランジャ47がロッキングアーム49によって解放されたときに開始され、視覚および/または可聴インジケーションが使用者に提供されたときに完了する。
【0075】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0076】
図5は、図4A図4Dを参照して説明したものと同じプランジャ47、プッシャ55、およびロッキングアーム49を有する代替の例示的な注射デバイス61を示す。しかし、この例では、流体チャンバ53の出口58は、流体が通過するときに可聴音、たとえばホイッスル音を生成する成形通路60を有する。膨張性の膜は設けられない。
【0077】
この例では、ロッキングアーム49が回転してキャリア48を解放するとき、キャリア48は、テザー56を介してプッシャ55を引っ張って流体チャンバ53を圧縮し、流体は出口58および成形通路60へ付勢され、ホイッスル音が生成される。この例では、流体は好ましくは気体、たとえば空気、または不活性ガスである。
【0078】
遅延機構は、ホイッスル音の開始により、プランジャ47がシリンジ28の端部へ動き、薬剤が注射されたことを使用者に通知し、ホイッスル音の終了により、注射部位からの薬剤の分散を補償するのに適当な量の時間が経過したことを使用者に通知するように配置することができる。ホイッスル音の持続時間は、流体チャンバ53のサイズ、出口58のサイズ、および駆動ばね23によって提供される力を含む様々な要因によって決定することができる。
【0079】
ホイッスル音の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0080】
図6Aおよび図6Bは、図4A図4Cを参照して上述したものに類似しているシリンジ(図示せず)、プランジャ63、およびアクチュエータ(キャリア66)を含む代替の例示的な注射デバイス62を示す。図6Aの注射デバイス62はまた、ハウジング21を含む。
【0081】
他の例と同様に、プランジャ63は、ピストン(たとえば14、図1B参照)に作用してピストンをシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ動かし、針(たとえば17、図1B参照)から薬剤を投薬する。注射デバイス62の使用中、プランジャ63をピストンに押し付けてシリンジ内へ押し込むために、駆動ばね23が設けられる。駆動ばね23は予荷重されたものとすることができ、前述したように、プランジャ63を解放して薬剤を投薬するために、解放機構を設けることができる。
【0082】
図6Aの注射デバイス62はまた、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ動いた後の時点で遅延使用者フィードバックを提供する遅延機構を含む。この遅延フィードバックは、薬剤が投薬されたことを使用者に通知し、この遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0083】
この例では、プランジャ63は、近位端65で開いている円筒孔64を有しており、円筒孔64内に駆動ばね23が位置する。注射デバイス62の近位端付近に、アクチュエータ、この例ではキャリア66が設けられ、駆動ばね23は、プランジャ63とキャリア66との間に作用し、プランジャ63をシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ遠位に付勢して薬剤を投薬する。
【0084】
キャリア66は最初、ロッキング機構によって定位置で保持される。特に、ロッキングアーム67が、キャリア66を定位置で保持する。ロッキングアーム67は、キャリア66が近位方向に動くのを防止する内向きの反り68を近位端に有する。ロッキングアーム67はまた、ピボット69を含むが、図6Aの位置では、プランジャ63の存在によって、ロッキングアーム67がピボット69の周りで回転することが防止される。したがって、図6Aに示す位置で、駆動ばね23は、ロッキングアーム67によって定位置に保持されているキャリア66を押すことができる。
【0085】
図6Aは、使用前の注射デバイス62を示し、図6Bは、使用中の注射デバイス62を示す。図6Bに示すように、駆動ばね23はプランジャ63を遠位に動かし、薬剤が投薬される。この位置で、薬剤が投薬された状態で、プランジャ63の近位端65はロッキングアーム67を越えており、ここでロッキングアーム67は、自由に回転してキャリア66を解放することができる。この位置で、駆動ばね23は、ロッキングアーム67を押し開き、内向きの反り68がキャリア66を解放する。したがってキャリア66は、駆動ばね23の力を受けて近位方向に動くことができる。
【0086】
ロッキング機構は、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ完全に押し込まれた後、キャリア66を解放するように配置することができる。別法として、ロッキング機構は、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ完全に押し込まれる前であるが一定体積の薬剤が送達された後の時点で、キャリア66を解放するように配置することができる。
【0087】
図示のように、ハウジング21の近位端に、流体チャンバ70が位置する。流体チャンバ70は、流体チャンバ70の内側に流体を保持する膜71によって画成される。ハウジング21の近位端は、流体チャンバ70と位置合わせされた出口72を含む。ハウジング21の外側には第2のチャンバ73が位置し、出口72と位置合わせされる。
【0088】
したがって、図6Bに示すように、キャリア66がロッキングアーム67によって解放されたとき、キャリア66は近位に付勢され、ハウジング21の内側で膜71に係合して膜71を圧縮する。これにより流体は、出口72へ付勢されて第2のチャンバ73に入る。
【0089】
第2のチャンバ73は透明とすることができ、したがって使用者は、プランジャ63がシリンジ内へのその動きを完了し、薬剤が注射部位から分散するのに適当な追加の遅延が経過したというインジケーションとして、流体が第2のチャンバ73に入るのを見ることができる。流体は色付きとすることができる。流体は液体、たとえば水とすることができる。
【0090】
出口72は、出口72を通って第2のチャンバ73に入る流体の通過を遅くする絞りを含む。この絞りにより、流体が第2のチャンバ73に到達するのに時間がかかることが確実になり、ロッキング機構がキャリア48を解放する時点と、使用者にインジケーションが提供される時点との間に遅延が提供される。この遅延により、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。
【0091】
この遅延の長さは、出口72のサイズ、プッシャ55および流体チャンバ53に加えられる圧力、使用される流体のタイプ、使用される流体の粘性、ならびに他のそのような要因などの様々な要因によって画成される。これにより、遅延フィードバック機構が提供され、遅延フィードバック機構は、キャリア48がロッキングアーム49によって解放されたときに開始され、視覚および/または可聴インジケーションが使用者に提供されたときに完了する。
【0092】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0093】
図7Aおよび図7Bは、プランジャ63と、アクチュエータ(キャリア66)と、流体チャンバ70を画成する膜71とを有する、図6Aおよび図6Bに類似している例を示す。この例では、ハウジング21の近位端の外側に位置する第2のチャンバ75が、偏向可能な壁76を含む。
【0094】
特に、図7Aに示すように、使用前、第2のチャンバ75の偏向可能な壁76は、内方へ偏向しており、注射デバイス74が使用されていないこと、および/または使用者から取り外される準備ができていないことを示す。使用後、図7Bに示すように、流体がキャリア66によって出口72へ付勢されて第2のチャンバ75に入ったとき、第2のチャンバ75の偏向可能な壁76は、第2のチャンバ75内の流体圧力が増大することによって外方へ偏向している。
【0095】
出口72は、出口72を通る流体の通過を遅くする絞りを含み、したがって偏向可能な壁76が流体によって外方へ偏向する時点を遅延させる。
【0096】
したがって、この外方へ偏向した壁76により、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へのその動きを完了し、薬剤が投薬され、薬剤が注射部位から分散するのに適当な量の時間が経過したというインジケーションが提供される。
【0097】
加えて、第2のチャンバ75は透明とすることができ、したがって使用者は、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へのその動きを完了したというインジケーションとして、流体が第2のチャンバ75に入るのを見ることができる。流体は色付きとすることができる。流体は液体、たとえば水とすることができる。
【0098】
図8Aおよび図8Bは、図6A図6B図7A、および図7Bのものに類似している例示的な注射デバイス77を示す。注射デバイス77は、プランジャ63、アクチュエータ(キャリア66)、および回転可能なロッキングアーム67を含み、ロッキングアーム67は、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へ一定距離だけ動かされるまで、キャリア66を保持する。キャリア66が解放された後、駆動ばね23はキャリア66を近位方向に付勢する。
【0099】
この例では、ハウジング21の近位端は、円筒形の突起78を有しており、円筒形の突起78内にはピストン79が設けられて、流体チャンバ80を画成する。ピストン79と円筒形の突起78との間に、封止81が設けられる。ハウジング21の近位壁82が、円筒形の突起78内に出口83を含む。流体チャンバ80とは出口83の反対側に、第2のチャンバ84が設けられる。第2のチャンバ84は、場合により、空気出口85を備える。
【0100】
図8Bに示すように、プランジャ63が遠位に動いた後、キャリア66がロッキングアーム67によって解放されたとき、駆動ばね23がキャリア66をピストン79に対して付勢し、ピストン79は、流体チャンバ80内へ押し込まれて流体を出口83へ付勢し、第2のチャンバ84に入れる。第2のチャンバ84から空気出口85を通って空気を変位させることができる。
【0101】
最初、キャリア66が解放される前に第2のチャンバ84内への流体の動きを防止するために、出口83を覆うように封止86を設けることができる。
【0102】
加えて、第2のチャンバ84は透明とすることができ、したがって使用者は、プランジャ63がシリンジ(たとえば18、図1B参照)内へのその動きを完了したというインジケーションとして、流体が第2のチャンバ84に入るのを見ることができる。流体は色付きとすることができる。流体は液体、たとえば水とすることができる。
【0103】
出口83は、出口83を通る流体の通過を遅くする絞りを含み、それによってピストン79の動きを遅延させ、使用者へのインジケーションを遅延させる。これにより、薬剤が注射部位から分散するための遅延が提供される。
【0104】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0105】
別法または追加として、図8Aおよび図8Bに示すように、ピストン79は、使用者への可聴インジケーションをトリガすることができる。この例では、ピストン79は、ピストン79から突出して音発生器88に係合するアーム87を含む。音発生器88は、ピストン79が流体チャンバ80内へ動くまでアーム87によって偏向位置で保持されるプリストレス要素(pre-stressed element)であり、ピストン79が流体チャンバ80内へ動いた時点で、アーム87は音発生器88を係合解除し、プリストレス要素はその自然な形状に戻る。この音発生器88の形状変化により、可聴音が生成され、薬剤が注射部位から分散するのに十分な時間が経過したというインジケーションが使用者に提供される。特に、アーム87は、一定体積の流体が第2のチャンバ84内へ進むまで、音発生器88を係合解除しないようになっており、一定体積の流体が第2のチャンバ84内へ進むことは、制限出口83によって遅延され、それによってフィードバックの遅延が提供される。
【0106】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0107】
図6A図8Bの例のいずれにおいても、出口72、83を覆うように封止を設けることができ、封止は、キャリア66が流体チャンバ70、80を圧縮することによって提供される圧力によって破断する。封止は、注射デバイス62、74、77の使用前に流体が出口72、83を通って動くのを防止する。
【0108】
図6A図8Bの例のそれぞれにおいて、キャリア66は、すべてまたはほぼすべての薬剤が使用者に注射されたとき、シリンジ(たとえば18、図1B参照)内へのプランジャ63の動きの終了時または終了頃に解放される。次いで、流体チャンバ70、80および出口72、83の配置は、使用者にインジケーションが提供される前に遅延を提供する。この遅延により、インジケーションが使用者に提供される前に、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。インジケーションは、注射デバイスを注射部位から取り外すことができることを使用者に通知することが意図される。
【0109】
図9Aおよび図9Bは、図6A図8Bの例に類似している代替の例示的な注射デバイス89を示す。この例では、プランジャ63、アクチュエータ(キャリア90)、およびロッキングアーム67は、図6A図8Bを参照して説明したものに類似している。しかし、この例では、流体チャンバ91は、膜ではなく、ハウジング21の近位端93の内側に位置する円筒形の突起92によって画成される。出口94が、ハウジング21の近位端93を通過して大気まで通っており、図6A図8Bの例のような第2のチャンバは設けられていない。
【0110】
この例では、キャリア90がロッキングアーム67によって解放された後、キャリア90は、図9Bに示すように、駆動ばね23によって円筒形の突起92内へ押し込まれて、流体チャンバ91を封止可能に閉鎖する。キャリア90は、封止リング95、たとえば「O」リングを含むことができる。
【0111】
その後、流体チャンバ91はキャリア90によって圧縮され、流体、この例では空気が出口94へ付勢される。
【0112】
出口94は、流体が通過するときに可聴音、たとえばホイッスル音を生成する成形通路96を有する。出口94はまた、出口94を通る流体の流れを遅くする絞りを有し、したがって使用者へのインジケーションを遅延させる。
【0113】
フィードバック機構は、ホイッスル音の開始により、薬剤が注射されたことを使用者に通知し、ホイッスル音の終了により、注射部位からの薬剤の分散を補償するのに適当な量の時間が経過したことを使用者に通知するように配置することができる。ホイッスル音の持続時間は、円筒形の突起92(および流体チャンバ91)のサイズ、出口94のサイズ、および駆動ばね23によって提供される力によって決定することができる。
【0114】
ホイッスル音の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0115】
図10Aおよび図10Bは、可聴音、たとえばホイッスルを生成する出口97の構成の例を示す。これらは、図3図5、または図9Aおよび図9Bの例に対して使用することができる。
【0116】
図10Aの例では、出口97は、流体が流体チャンバ99から出口97へ付勢されるときにスー音またはホイッスル音を生成するように成形されている。出口97は、先細りした入口98を有しており、出口97を通る流体の流れを加速させ、それによって音量を増大させる。図10Bの例では、流体が出口97へ付勢されるときの音量をさらに増幅するために、出口97と並んで位置する漏斗状の成形通路101に増幅器100が設けられている。
【0117】
注射デバイスが手動で動作されるように適用されている場合、本明細書に記載するそれぞれの例の駆動ばねは省略することができることが理解されよう。たとえば、注射デバイスは、プランジャをシリンジ内へ押し込むために使用者が手動で動作させるレバーまたはボタンを備えることができる。この場合、使用者によって提供される力を使用して、次に流体チャンバを圧縮することができる。
【0118】
前述した例のいずれにおいても、流体チャンバの圧縮の開始からインジケーションが使用者に提供されるまでの間の遅延は、高粘性の流体または非ニュートン流体を使用することによって増大させることができる。これにより、流体チャンバの圧縮中に流体が出口を通過することができる速度が低減され、それによって使用者へのインジケーションが遅延する。
【0119】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0120】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0121】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、チャンバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0122】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0123】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0124】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0125】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0126】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0127】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0128】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0129】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0130】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0131】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0132】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0133】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0134】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0135】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0136】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0137】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B