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特許7531277液体試料を分析する方法、マイクロプレートリーダー、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】液体試料を分析する方法、マイクロプレートリーダー、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240802BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N35/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019572523
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FI2018050512
(87)【国際公開番号】W WO2019002689
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】20175606
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519459399
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ ホールディングス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ファラレロ アドヤリー
(72)【発明者】
【氏名】ライティオ マリカ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スヴァント トンミ
(72)【発明者】
【氏名】エクリン カティヤ
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132550(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106525826(CN,A)
【文献】特表2007-512816(JP,A)
【文献】特開2016-061603(JP,A)
【文献】国際公開第2016/065115(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/205736(WO,A1)
【文献】特開2016-145867(JP,A)
【文献】特開2017-067605(JP,A)
【文献】特開2014-207647(JP,A)
【文献】特開2016-218991(JP,A)
【文献】特開2015-223259(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099045(WO,A1)
【文献】特開2011-191081(JP,A)
【文献】特開2004-301648(JP,A)
【文献】特開2000-019099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01J 3/46 - G01J 3/51
G01N 1/00 - G01N 1/44
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 35/00 - G01N 35/10
G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
C12M 1/00 - C12M 1/42
C12M 3/00 - C12M 3/10
C12Q 1/00 - C12Q 1/70
C12Q 3/00
H04N 1/40 - H04N 1/409
H04N 1/46 - H04N 1/62
H04N 9/01 - H04N 9/11
H04N 9/44 - H04N 9/78
H04N 23/10
H04N 23/12 - H04N 23/17
H04N 23/83 - H04N 23/88
H04N 25/00 - H04N 25/17
H04N 25/611
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレート(1)のウェル(2)内に配置された1つ以上の液体試料(3)の吸光度を分析する方法であって、前記方法が、
吸光度測定用の380nm~750nmの波長範囲内にある所望の波長を設定するステップ(101)と、
前記設定された波長を中心として多くても20nmのバンド幅を有する電磁放射を使用して前記液体試料(3)を照射するステップ(102)と、
各液体試料(3)を透過した放射フラックスを測定するステップ(103)と、
測定された放射フラックス値に基づいて、各液体試料(3)の吸光度値を判定するステップ(104)と、
複数のセル(23)を含む行列としてディスプレイ(12)で前記吸光度値を視覚化することであって、各セル(23)が、前記マイクロプレート(1)のウェル(2)に対応する、視覚化するステップ(105)と、を含み、
前記設定された波長が、前記セル(23)の色を判定するための入力として使用され、各セル(23)の色が、前記吸光度測定用に設定された前記波長に対応する色の補色になるように選択され、各液体試料(3)の判定された前記吸光度値が、ディスプレイ(12)上のそれぞれのセル(23)の透明度を決定するための入力として使用される、方法。
【請求項2】
前記各セル(23)の色が、RGBまたはARGB色空間から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体試料(3)を照射するために使用される前記電磁放射の前記バンド幅が、最大で10nmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体試料(3)を照射するために使用される前記電磁放射の前記バンド幅が、最大で2.5nmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記設定された波長が、前記液体試料(3)の局所最大吸光度から20nm以内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記設定された波長が、前記液体試料(3)の局所最大吸光度から10nm以内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記設定された波長が、前記液体試料(3)の局所最大吸光度から2.5nm以内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記設定された波長が、前記局所最大吸光度に対応する、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、液体試料(3)の局所最大吸光度を判定するステップ(100)を含み、前記波長が、前記判定された局所最大吸光度に基づいて設定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記局所最大吸光度が、異なる波長または波長範囲を有する電磁放射を使用して、少なくとも1つの液体試料(3)を照射することと、前記液体試料(3)を透過した放射フラックスを測定することと、異なる波長または波長範囲の吸光度値を判定することと、によって判定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セル(23)の前記透明度が、アルファブレンディングにより設定され、前記セル(23)のアルファチャンネル値が、前記吸光度値と正の相関を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのセル(23)が、前記設定された波長の20nm以内にある波長に対応する色を有する枠(24)と境界を接している、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
2つ以上の吸光度測定が、所定の時間間隔で実施され、前記測定のデータが、時間分解型ヒートマップビューに示される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、マイクロプレートリーダー(10)。
【請求項15】
ユーザが前記吸光度値の前記視覚化に使用される色の色相を手動で変更して、前記液体試料(3)の実際の視覚画像と前記視覚化をよりよく一致させることを可能にするための入力手段(14)を備える、請求項14に記載のマイクロプレートリーダー(10)。
【請求項16】
マイクロプレートリーダー(10)を動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、命令を含み、前記命令は、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、マイクロプレートリーダー(10)に、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に従って、液体試料を分析する方法に関する。本発明はまた、マイクロプレートリーダー、および他の独立請求項で定義されるマイクロプレートリーダーを動作させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレート(例えば、マイクロタイタープレート、マイクロウェルプレート、マルチウェルプレート、またはマルチウェルとも呼ばれる)は、複数のウェル、すなわち、行と列とに配置された空洞を備えるフラットプレートである。ウェルは、試料を受け取り、小さな試験管として機能するように構成されている。典型的なマイクロプレートは、6個、24個、96個、384個、または1536個のウェルを備えるが、より大きなマイクロプレートも存在する。ウェルは、辺の比率が典型的には、2:3である矩形行列に配置される。試料は通常、液体であるが、マイクロプレートは、例えば、粉末の形態の試料にも使用され得る。マイクロプレートは典型的には、プラスチック材料製である。プレートは、クリアであっても、不透明であっても、または例えば、白もしくは黒に着色されていてもよい。しかしながら、すべてのマイクロプレートが必ずしもすべての用途に好適であるわけではない。
【0003】
マイクロプレートは、ライフサイエンスで広く使用されている。試料をマイクロプレートのウェル内に留置し、マイクロプレートリーダーで分析する。マイクロプレートリーダーは、マイクロプレート内の試料の生物学的、化学的、または物理的事象を検出し得る。マイクロプレートリーダーは、蛍光または発光などの異なる現象に基づき得る。試料を分析するための1つの一般的な技術は、多くの異なるタイプのアッセイに使用され得る、吸光度検出の使用である。吸光度検出では、着色された試料の吸光度(光学濃度)が分光光度計を使用して測定される。試料の色の変化は、試料の何らかの生物学的、化学的、または物理的な変化と相関する。他の理由の中でも、試料の色の可視的変化ゆえに、吸光度に基づくアッセイが広く使用されている。しかしながら、既存のマイクロプレートリーダーでは、色の変化がマイクロプレートリーダーのユーザインターフェースによって表示される結果に完全に反映されず、結果の分析がさらに困難になる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、マイクロプレートのウェル内に配置された1つ以上の液体試料の吸光度を分析する改善された方法を提供することである。本発明による方法を特徴付ける特徴は、請求項1に示されている。本発明の別の目的は、改善されたマイクロプレートリーダーを提供することである。本発明のさらに別の目的は、マイクロプレートリーダーを動作させるための改善されたコンピュータプログラムを提供することである。
【0005】
本発明による方法は、吸光度測定用の380nm~750nmの波長範囲内にある所望の波長を設定するステップと、設定された波長を中心として多くても20nmのバンド幅を有する電磁放射を使用して試料を照射するステップと、各試料を透過した放射フラックスを測定するステップと、測定された放射フラックス値に基づいて、各試料の吸光度値を判定するステップと、複数のセルを含む行列としてディスプレイで吸光度値を視覚化するステップであって、各セルが、マイクロプレートのウェルに対応する、視覚化するステップと、を含み、設定された波長は、セルの視覚特性を判定するための入力として使用される。
【0006】
セルの視覚特性を判定するための入力として、設定された波長を使用することにより、結果行列を、マイクロプレート内の試料のセットによりよく似るように構成することができ、方法のユーザは、結果をより確実に解釈することができる。これは、多数の試料を分析する場合に、特に重要かつ有用である。例えば、少なくとも384個のウェルを有するマイクロプレートなど、多数のウェルを有するマイクロプレートを使用する場合、結果を、ユーザインターフェースの限られた空間内に数値として簡単に表示することはできない。セルの視覚特性を判定するための入力として、設定された波長を使用することにより、一度に大量のデータをディスプレイに表示することができ、マイクロプレートリーダーのユーザは、結果が信頼できるように見えるかどうかを迅速に検出することができ、かつ補正されたパラメータを用いて分析を繰り返すか、または次の試料のセットの分析へと移動するかのいずれかを行うことができる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、各セルの色は、その色が人間の目によって知覚されるときに試料の色に対応するように選択される。したがって、各セルの色は、吸光度測定用に設定された波長に対応する色の補色である。
【0008】
本発明の実施形態によれば、色は、RGBまたはARGB色空間から選択される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、試料を照射するために使用される電磁放射のバンド幅は、多くても10nmである。本発明の別の実施形態によれば、バンド幅は、多くても2.5nmである。
【0010】
本発明の実施形態によれば、設定された波長は、試料の局所最大吸光度から20nm以内である。多くの場合、局所最大吸収度が生じる波長に近い波長を有する電磁放射を使用して吸光度値を測定することが望ましい。
【0011】
本発明の実施形態によれば、設定された波長は、試料の局所最大吸光度から10nm以内である。本発明の別の実施形態によれば、設定された波長は、試料の局所最大吸光度から2.5nm以内である。本発明の別の実施形態によれば、設定された波長は、局所最大吸光度に対応する。
【0012】
本発明の実施形態によれば、本方法は、試料の局所最大吸光度を判定するステップを含み、波長は、判定された局所最大吸光度に基づいて設定される。局所最大吸光度を判定するプロセスおよび/または波長を設定するプロセスは、自動式であってもよい。
【0013】
本発明の実施形態によれば、局所最大吸光度は、異なる波長または波長範囲を有する電磁放射を使用して、少なくとも1つの試料を照射することと、試料を透過した放射フラックスを測定することと、異なる波長または波長範囲の吸光度値を判定することと、によって判定される。
【0014】
本発明の実施形態によれば、各試料の判定された吸光度値は、ディスプレイ上のそれぞれのセルの透明度を判定するための入力として使用される。各セルの透明度は吸光度値と相関するため、ユーザは対象となる試料を簡単に発見することができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、セルの透明度は、アルファブレンディングにより設定され、セルのアルファチャンネル値は、吸光度値と正の相関を有する。したがって、より高い吸光度値を有する試料は、ディスプレイ上に透明度の低いセルとして示される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのセルは、設定された波長の20nm以内にある波長に対応する色を有する枠と境界を接している。色は、設定された波長の10nm以内であり得る。色は、設定された波長に対応し得る。したがって、枠の色は、セルの色の補色である。枠は、例えば、最も高いおよび/または最も低い吸光度値を有するセルを強調表示するために使用することができる。補色を使用することにより、結果のより信頼できる解釈が可能になる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、2つ以上の吸光度測定が、所定の時間間隔で実施され、測定データが、時間分解型ヒートマップ画面に示される。
【0018】
本発明によるマイクロプレートリーダーは、上に定義される方法を実装するように構成されている。
【0019】
本発明の実施形態によれば、マイクロプレートリーダーは、ユーザが吸光度値の視覚化に使用される色の色相を手動で変更して、試料の実際の視覚画像と視覚化をよりよく一致させることを可能にするための入力手段を備える。
【0020】
本発明によるコンピュータプログラムは、命令を含み、命令は、プログラムがコンピュータによって実行されると、マイクロプレートリーダーに、上に定義される方法を実施させる。
【0021】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】マイクロプレートの例を示す。
図2】マイクロプレートリーダーの主な要素を示す。
図3】本発明による方法をフローチャートとして示す。
図4】分光光度計の概略図を示す。
図5a】結果行列の例を示す。
図5b】結果行列の例を示す。
図5c図5aおよび5bの結果行列に対応するマイクロプレートを示す。
図6】測定された吸光度値を視覚化するために使用される色を判定するためのダイヤグラムを示す。
図7】結果行列の色を判定するためのステップの例をフローチャートとして示す。
図8】結果行列のセルの透明度を判定するためのステップの例を示す。
図9】180度の色相を有する色の補色を判定するステップを示す。
図10a】結果行列のさらなる例を示す。
図10b】結果行列のさらなる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
マイクロプレートは、ライフサイエンスで広く使用されている。図1は、マイクロプレート1の例を示す。マイクロプレートは、複数のウェル2、すなわち、行と列とに配置された空洞を備える。ウェル2は、試料を受け取り、小さな試験管として機能するように構成されている。図1のマイクロプレート1は、8個の行と12個の列とに配置された96個のウェルを備える。マイクロプレート1の他の一般的なサイズは、6個、24個、384個、または1536個のウェルを含むが、他のサイズも利用可能である。辺の比率は典型的には、2:3である。試料は通常、液体であるが、マイクロプレート1は、粉末の形態または他の形態の試料にも使用され得る。
【0024】
マイクロプレート1のウェル2内に留置された試料は、マイクロプレートリーダーを使用して分析され得る。マイクロプレートリーダーは、マイクロプレート1内の試料の生物学的、化学的、または物理的事象を検出し得る。マイクロプレートリーダーは、蛍光または発光などの異なる現象に基づき得る。試料を分析するための1つの一般的な技術は、多くの異なるタイプのアッセイに使用され得る、吸光度検出の使用である。吸光度検出では、着色された試料の吸光度(光学濃度)が分光光度計を使用して測定される。試料の色の色相または強度の変化は、試料の何らかの生物学的、化学的、または物理的な変化と相関する。試料の色の可視的変化ゆえに、吸光度に基づくアッセイが広く使用されている。
【0025】
図2は、吸光度に基づくアッセイに使用され得るマイクロプレートリーダー10の主な構成要素を概略的に示す。マイクロプレートリーダー10は、マイクロプレート1のウェル2内に配置された試料を分析するために使用され得る。吸光度に基づくアッセイで使用されるマイクロプレート1は典型的には、クリアである。マイクロプレートリーダー10は、試料の吸光度値を判定するように構成されている。マイクロプレートリーダー10は、特定の波長または波長範囲を有する電磁放射を生成することができる照射手段11を備える。電磁放射は、可視光(波長範囲約380~750nm)、紫外光(10~380nm)、または赤外光(750nm~1mm)であり得る。照射手段11は、マイクロプレート1のウェル2内の試料を照射するように構成されている。
【0026】
マイクロプレートリーダー10は、検出手段13をさらに備える。検出手段13は、マイクロプレート1のウェル2内の試料を透過した放射フラックスを測定するように構成されている。マイクロプレートリーダー10は、入力手段14を介して制御される。入力手段14は、例えば、動作ボタン、キーボード、および/またはタッチディスプレイを含み得る。入力手段14を介して、マイクロプレートリーダー10のユーザは、マイクロプレートリーダー10の動作を制御し、パラメータを調整し、かつ/またはマイクロプレートリーダー10の設定を変更することができる。分析の結果をディスプレイ12に表示することができる。ディスプレイ12は、マイクロプレートリーダー10の一体部分であっても、マイクロプレートリーダー10に接続された外部ディスプレイであってもよい。入力手段14、照射手段11、検出手段13、およびディスプレイ12は、中央処理ユニット(CPU)15と通信する。入力手段14およびディスプレイ12は、CPU15に直接接続される必要はない。マイクロプレートリーダー10は、PCなどの外部汎用コンピュータにインストールされたソフトウェアを介して制御することもできる。したがって、入力手段14は、例えば、外部コンピュータに接続されたキーボードを含み得る。ディスプレイ12を外部コンピュータに接続することもできる。すべての接続を有線または任意の無線手段によって実装することができ、外部コンピュータは、リモートサーバまたはクラウドサーバであってもよい。
【0027】
マイクロプレートリーダー10の動作が図3にフローチャートとして示されている。動作の第1のステップで、所望の波長が設定される(101)。設定された波長は、マイクロプレート1のウェル2内に留置された試料を照射するための動作の第2のステップで使用される(102)。ユーザは、入力手段14を介して所望の波長を選択することができる。典型的には、正確な波長がユーザによって選択されるが、実際には、マイクロプレートリーダー10は、ある特定のバンド幅を有する電磁放射を生成することができる。通常、狭いバンド幅が好ましい。許容可能なバンド幅は、用途に依存する。場合によっては、20nmのバンド幅で十分である。一部の用途では、バンド幅は、多くても10nmであるべきである。一部の用途では、バンド幅は、2.5nmを超えるべきではない。
【0028】
試料を照射するために使用される波長の選択は、通常、最大吸光度が生じる波長に基づく。「最大吸光度」という表現は、電磁放射の波長を指し、この波長では、吸光度値にピークがある、すなわち、この波長では、隣接する波長よりも少ない波長の放射が試料を通過する。試料は、いくつかの局所最大吸光度を有し得る。例えば、局所最大吸光度は、紫外光、可視光、および赤外光の波長範囲に見出すことができる。可視光の波長範囲にいくつかの局所最大吸光度がある可能性もある。選択された波長は典型的には、局所最大吸光度に対応するか、または少なくとも局所最大吸光度に近くなる。例えば、選択された波長は、局所最大吸光度の20nm以内にあり得る。本発明の実施形態によれば、選択された波長は、局所最大吸光度の10nm以内である。本発明の実施形態によれば、選択された波長は、局所最大吸光度の2.5nm以内である。ある特定の波長範囲が試料を照射するために選択される場合、その波長範囲は、好ましくは、局所最大吸光度を包含する。ユーザが、局所最大吸光度がどこで生じるかを知っている場合、所望の波長または波長範囲は、ユーザによって設定され得る。マイクロプレートリーダー10は、最大吸光度を判定するように構成することもできる。次いで、吸光度測定用の波長をマイクロプレートリーダー10によって自動的に設定することができる。代替的に、マイクロプレートリーダー10は、ある特定の波長を提案することができ、次いで、その波長をユーザによって確認することができる。最大吸光度の波長がユーザにのみ示され、次いで、ユーザが吸光度測定用の波長を手動で設定し得ることも可能である。
【0029】
図3の実施形態では、本方法は、試料の局所最大吸光度が判定される予備ステップ100を含む。しかしながら、このステップは必要ない。しかし、多くの場合、最大吸光度は既知であり、その場合、ユーザは、事前知識に基づいて吸光度測定用の波長を設定することができる。
【0030】
動作の第2のステップでは、マイクロプレート1のウェル2内に留置された試料は、特定の波長または波長範囲を有する電磁放射で照射される(102)。
【0031】
動作の第3のステップでは、検出手段13が、試料を透過した放射フラックスを判定するために使用される(103)。
【0032】
動作の第4のステップでは、試料の吸光度値が判定される(104)。材料の吸光度は一般的に、材料を透過した放射電力に対する入射の比率の常用対数であるように定義される。したがって、吸光度は次の式で表現することができる。
【数1】
式中、
0は、試料が受け取る放射フラックスである。
Pは、試料が透過した放射フラックスである。
【0033】
吸光度は無次元である。
【0034】
吸光度値は、電磁放射のある特定の波長に対して判定される。使用される波長は典型的には、試料の局所最大吸光度が生じることが既知である波長である。最大吸光度の波長が既知である場合、試料を照射するために使用される波長または波長範囲は、ユーザによって選択され得る。代替的に、マイクロプレートリーダー10を使用して、マイクロプレートリーダー10の動作範囲全体または動作範囲の一部にわたって吸光度値を判定するスペクトル分析を実施することができる。測定された吸光度値は、ある特定の細胞代謝産物の量、もしくは細胞呼吸、膜の整合性などのある特定の生物学的機能、または試料内に存在する特定の酵素(すなわち、乳酸脱水素酵素)もしくは他のタンパク質の活性と相関し得る。
【0035】
動作の第5のステップでは、判定された吸光度値が行列として視覚化される(105)。分析の結果は、ディスプレイ12上に示される。
【0036】
図4は、マイクロプレートリーダー10の例をより詳細に示している。図4の実施形態では、照射手段11は、光源16を備える。光源16は、例えば、キセノンフラッシュランプであり得る。光源16はまた、例えば、石英ハロゲンランプであり得る。光源16は、広いスペクトルを有する、可視光(波長範囲約380~750nm)、紫外光(10~380nm)、または赤外光(750nm~1mm)などの電磁放射を生成する。特定の波長を選択するために、照射手段11は、モノクロメータ17をさらに備える。モノクロメータ17は、狭いバンド幅を有する光ビームを生成する。本発明の実施形態によれば、モノクロメータ17の後の光のバンド幅は2.5nm未満である。しかしながら、一部の用途では、より広いバンド幅でも十分である。モノクロメータの代わりに、干渉フィルタを、波長選択のための手段として使用することもできる。光源はまた、LEDまたはレーザなどの狭いバンドの光源であり得る。その場合、モノクロメータ、干渉フィルタ、または波長選択のための他の外部手段は必要ない場合がある。
【0037】
光源16からの光ビームは、マイクロプレートリーダー10の光学系を介してモノクロメータ17を透過する。図4の実施形態では、光源16とモノクロメータ12との間の光学系は、ミラー18と、入口スリット19と、を備える。しかしながら、マイクロプレートリーダー10の光学系は、多くの異なる方法で構築され得る。
【0038】
図4の例では、光は、モノクロメータ17を透過し、出口スリット21および光ファイバ22を介して読み取りステーション20を透過する。光は、マイクロプレート1のウェル2内に留置された試料3を通過する。試料3を通過した光の強度は、シリコンフォトダイオードまたは光電子増倍管などの検出器13によって測定される。図4の例では、検出器13は、ある試料3から別の試料3に移動する。しかしながら、マイクロプレートリーダー10は、いくつかの試料3を同時に測定できるようにするためのいくつかの検出器13を備え得る。
【0039】
図5aおよび5bは、マイクロプレートリーダー10の結果画面の例を示す。対応するマイクロプレート1が図5cに示される。図5aは、吸光度値が数値として示される結果画面を示しており、数値は典型的には、0~4の範囲にある。吸光度値は、いくつかのセル23を含む行列としてディスプレイ12に示される。行列の各セル23は、マイクロプレート1のウェル2に対応する。マイクロプレート1のウェル2の数および行列内の対応するセル23の数は大きいため、対象となる吸光度値、例えば、低い値および高い値を迅速に検出することは困難な場合がある。したがって、セル23を枠24で囲むことにより、最も高いおよび最も低い吸光度値を有するセル23が自動的に強調表示される。
【0040】
特に低いまたは高い吸光度値を示すこれらのセル23をユーザが迅速に検出することを可能にするために、個々の値が色で提示されるヒートマップを使用してデータを視覚化することもできる。図5bは、ヒートマップの例を示す。マイクロプレートリーダー10のユーザは、異なる画面の間で切り替えるか、それらを同時に示すように選択することができる。
【0041】
図10aおよび10bの結果画面は、図5aおよび5bの画面と類似している。しかしながら、この場合、マイクロプレート1は、384個のウェル2を備える。また、図10aおよび10bの例では、セル23を枠24で囲むことにより、最も高いおよび最も低い吸光度値を有するセル23が自動的に強調表示される。図10aの数値画面と図10bのヒートマップ画面との差異は、明らかに本発明の利点を示している。数値画面では、ユーザはほとんど何も区別することができない。ヒートマップ画面では、ユーザは、アッセイが期待どおりに機能したかどうかを瞬時に見ることができる。この例では、セルA2~I2が陽性対照であり、セルJ2~P2が陰性対照である。これらのセルの色は、アッセイが適切に機能したことを示す。ユーザは、陽性対照とは十分に異なるヒットを識別することもできる。ヒットは異なる色で示され、追跡研究のために選択することができる。追加のデータ分析は必要ない。したがって、本発明による方法およびマイクロプレートリーダーは、分析の信頼性および速度を改善する。
【0042】
本発明によれば、吸光度測定用に設定された波長は、セル23の視覚特性を判定するための入力として使用される。ヒートマップの各セル23の色は、色が人間の目によって知覚されるときに試料3の色に対応するように選択される。したがって、各セル23の色は、吸光度測定用に設定された波長に対応する色の補色であるように選択される。
【0043】
図6は、セル23の色の選択を例示する例示的かつ単純化されたダイヤグラムを示す。図6のダイヤグラムは、可視光(色環の主たる色)の異なる波長範囲を表す6つのセクタを含む。マイクロプレートリーダー10が可視光の波長範囲で動作している場合、波長測定3に設定された波長は、図6の6つの範囲のうちの1つの中にある。設定された波長は典型的には、局所最大吸光度に近くなる。したがって、試料3は、その波長を有する光を吸光する。結果として、ユーザによって知覚される試料3の色は、したがって、吸光度測定用に設定された波長に対応する色の補色である。補色は、図6のダイヤグラムの反対側のセクタに位置する。したがって、行列のセル23で使用される色は、吸光度測定用に設定された波長を含むセクタの反対側に位置するセクタから選択される。例として、図5aおよび5bに示すように、設定された波長が460nmの場合、すなわち、試料3を照射するために使用される光が青の場合、結果行列のセル23はオレンジで示される。本発明による方法では、結果行列は、肉眼で見られるように試料3の視覚色を反映する。これにより、着色された試料の扱いに慣れているユーザにとって結果の読み取りがより直感的になり、プロセスエラーを同時に発見することができるため、信頼性もより高まる。本発明の実施形態によれば、使用される色空間は、好ましくは、RGBまたはARGBであり、好ましくは、0~255の値を有する3つの色チャンネルすべてに8ビットを含むが、他の好適な数の色および色プロファイルを利用することもできる。
【0044】
試料3の吸光度値は、セル23の色強度によって視覚化される。したがって、各セル23の色強度または実際の透明度もしくは半透明度は、それぞれの試料3の判定された吸光度値に基づいて判定される。コンピュータグラフィックスでは、色相に影響を与えずに色の透明度を変更することは、概して、アルファブレンディングによって達成される。これは、前景色を背景色とブレンドするプロセスであり、背景色は、この場合、好ましくは黒である。ブレンドされた色は、前景色と背景色との加重平均として計算され、前景色は、1~0.1の値を有する。アルファチャンネル値、すなわちセル23の前景色の値は、吸光度値と正の相関を持っています。セル23の吸光度値が高いほど、セル23が受け取るアルファチャンネル値が高くなる。したがって、低い吸光度値を有する試料3は、高い吸光度値を有する試料3よりも透明な(濃く着色されていない)セル23として結果行列に示される。
【0045】
RGB色空間を使用する場合、試料3の色の彩度を低減すると、最終的に、色に応じて色の色相の色合いが白、黒、または灰色に向かって変化することにつながるであろう。これは、加色モードであるRGBモードでは、色の色相が赤、緑、および青のチャンネルの個々の値の影響を受けるためである。アルファブレンディングでは、R、G、およびBの値の実際の量は変更されないため、色の色相は影響を受けない。
【0046】
図5aおよび5bの例では、結果行列の2つのセル23が異なる色の枠24と境界を接している。枠24は、最も低いおよび最も高い吸光度値を有するセル23を強調表示するため、および/または行列内のセル23の選択を指標するために使用される。枠24の色は、吸光度測定用に設定された波長に対応する色と類似している。色の波長は、例えば、吸光度測定用に設定された波長の20nm以内にであってもよい。好ましくは、枠24の色は、設定された波長に対応する。したがって、枠24の色は、セル23の色の補色であり、これにより、枠24が発見しやすくなる。任意の枠なしセル23を互いに分離するために使用される境界26の色は、枠24またはセル23の色以外の任意の色、例えば、黒、白、または濃い灰色である。好ましくは、同じ色が背景色として使用される。
【0047】
本発明による方法は、電磁放射の波長が可視光の範囲にあるときに適用される。マイクロプレートリーダー10を、紫外光および/または赤外光の波長範囲で動作させることもできる。電磁放射の波長が紫外光または赤外光の波長範囲にある場合、セル23を所定の色で示すことができる。セル23の色は、例えば、黒または白であり得る。
【0048】
本発明の実施形態によれば、ユーザは、結果を試料3の実際の視覚画像によりよく一致させるために、結果の視覚化に使用される色の色相を手動で変更することができる。例えば、いくつかの試料3は、吸光度値の判定に使用されるのはそのうちの1つだけであっても、複数の吸光ピークを含み得る。かかる事例では、試料3の実際の視覚色は、試料3の最大吸光度の波長に対応する色に対応しない場合がある。
【0049】
図7は、結果行列のセル23の視覚特性を判定するためのステップの例をフローチャートとして示す。図7の例では、試料3の吸光度値が判定される。試料3を照射するために使用される電磁放射の波長は、本方法の入力として使用される。別の入力は、試料の吸光度値に対応する信号レベルである。本方法の第1のステップ401では、波長が可視光の波長範囲にあるかどうかが判定される。波長が可視光の波長範囲にある場合、光の色は波長に基づいて計算される(402)。次のステップでは、計算されたRGBまたはARGB色がHSV色に変換される(403)。第4のステップでは、HSV色の色相値を180度反転させることによって補色が判定される(404)。得られたHSV色が、ARGB色に再び変換される(405)。色のアルファチャンネルが、信号レベルに基づいて調整される(406)。本方法は、波長色およびアルファ調整された補色を返す。波長色は、強調表示枠24の色として使用され得る。試料を照射するために使用される電磁放射の波長が可視光の波長範囲の外側にある場合、補色を判定するためのステップ402~405は省略される。代わりに、黒が補色として使用され、所定の強調表示色が波長色として使用される(402a)。
【0050】
図8は、結果行列のセル23の透明度または不透明度を判定するステップの例を示す。図8の例では、信号の値(吸光度測定の場合は吸光度値)が0を下回る場合、50の不透明度値がセル23に与えられる。信号が3を上回る場合、255の不透明度値がセル23に与えられる。信号の値が0~3の場合、不透明度値は、不透明度=信号の値×68.33+50という方程式によって計算される。
【0051】
図9は、図7の方法の一部を修正したバージョンを示す。補色を判定するための入力として使用されるHSV色の色相が180である場合、補色を判定するステップ404が修正される。修正されたステップ404aでは、色相値が180度調整され、次いで、調整された値に対してモジュロ演算が行われる。
【0052】
本発明による方法およびマイクロプレートリーダー10は、試料3の動力学的研究のために使用することもできる。動力学的研究では、吸光度測定のステップは、設定された時間間隔で繰り返される。通常、特定の波長または波長範囲での吸光度値の変化は一度に監視される。本発明の実施形態によれば、ヒートマップの形態での視覚化を、吸光度の動力学的研究を監視するために適用することもできる。したがって、マイクロプレートリーダー10および/または外部コンピュータは、測定データを記録および保存し、リアルタイムで連続的に結果行列を示すことができる。保存されたデータを後で表示することもできる。したがって、ユーザは、時間分解型ヒートマップとして、行列内のセルの色の変化を介して試料3の変化を視覚的に監視することができる。
【0053】
吸光度測定は、2つ以上の異なる波長を使用して実施することもできる。したがって、波長を設定するステップ101は、2つ以上の波長を設定することを含み得る。また、試料を照射するステップ102、放射フラックスを判定するステップ103、吸光度値を判定するステップ104、および吸光度値を視覚化するステップ105は、2つ以上の段階を含み得る。個別の測定の結果を、個別のヒートマップとして示すことができる。マイクロプレートリーダー10のユーザは、所望の結果行列を示すために異なる画面間で切り替えることができる。
【0054】
本発明は上に記載される実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲内で変化し得ることを当業者は理解するであろう。例えば、分光光度計が上に記載されているが、マイクロプレートリーダーはまた、他の検出技術を利用することもできるマルチモードリーダーであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b