(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20240802BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
(21)【出願番号】P 2020008913
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035440(JP,A)
【文献】特開2018-110722(JP,A)
【文献】特開2017-056020(JP,A)
【文献】特開2002-085580(JP,A)
【文献】特開2002-224237(JP,A)
【文献】中国実用新案第206535040(CN,U)
【文献】特開2018-187015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用ホースが収容される筐体と、
該筐体の前面側に設けられ、該消火用ホースを該筐体外へと引き出すための開口部と、該開口部を開閉するための消火栓扉と、
が設けられた前面パネルと、
該消火栓扉を、閉扉状態で係止するための係止手段と、
該係止手段による該消火栓扉の係止を解除するための1又は複数の解除手段と、
閉扉状態の該消火栓扉を開扉方向に付勢する付勢手段と、を備え、
該解除手段の少なくも1つは、該消火栓扉外
の該前面パネルの該開口部よりも低い位置に設けられていることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
消火用ホースが収容される筐体と、
該筐体に設けられ、該消火用ホースを該筐体外へと引き出すための開口部と、
該開口部を開閉するための消火栓扉と、
該消火栓扉を、閉扉状態で係止するための係止手段と、
該係止手段による該消火栓扉の係止を解除するための1又は複数の解除手段と、
閉扉状態の該消火栓扉を開扉方向に付勢する付勢手段と、を備え、
該解除手段の少なくも1つは、該消火栓扉外に設けられている消火栓装置であって、
受部を、更に備え、
該付勢手段は、押圧部と、該押圧部を付勢する弾性部と、を有しており、
該押圧部は、
該消火栓扉が閉止させた際に、該受部を押圧可能に設けられており、
該付勢手段は、該消火栓扉又は
該筐体の一方側に設けられ、
該受部は、該消火栓扉又は該筐体の他方側に設けられることを特徴とす
る消火栓装置。
【請求項3】
前記消火栓扉外に設けられた前記解除手段は、接続手段を介して、前記係止手段と接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルに設置される消火栓装置がある。この様な消火栓装置は、トンネルの壁面を箱抜きして作成されたスペースに埋め込む形で設置されていたが、近年、シールド工法によってトンネルの掘削が行われる様になっており、この場合、トンネルの壁面を箱抜きして消火栓装置の設置スペースを確保することが困難となる。
【0003】
そのため、シールド工法によって掘削されたトンネルにおいては、消火栓装置は、トンネルの壁面に埋め込まず、監査路等の空いているスペースに設置されることとなる(例えば、特許文献1を参照)。この様な消火栓装置は、シールド工法で掘削されたトンネルの周壁は略円筒形であるのに対して、消火栓装置の筐体は略直方体形をなしているため、監査路が設けられる位置によっては、監視員等の通行の妨げとならないよう、消火栓装置を監査路面上に設置するよりも周壁の監査路面よりも高い位置に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、消火栓装置を操作する際には、消火栓扉を開扉して、消火用ホースを筐体外に引き出す必要がある。通常、消火栓扉は筐体にラッチ等により係止されており、消火栓扉に設けられたハンドル部を操作して、ラッチ等による係止を解除することで消火栓扉は開扉されることとなる。他方、消火栓装置は、使用者が監査路面よりも一段低い位置にある道路面に立って消火栓扉の開扉等の操作を行うことが必要な場合がある。
【0006】
トンネル壁面に箱抜きして設置していた消火栓装置の場合、消火栓扉を閉止した状態では、監査路面の通行の妨げにならないため、消火栓の下端は、監査路面と同じか、または、ごく近い位置に取り付けられており、道路面に立った使用者でも容易にハンドル操作を行うことができたので問題とはならなかったが、従来の消火栓装置を、この様な監査路面よりも高い位置に設置した場合、消火栓扉は、消火栓装置の比較的高い位置にあるため、消火栓装置が設置されている位置と道路面とに高低差がある分、手を伸ばしてハンドル部を操作して消火栓扉を開扉する必要があり、トンネル壁面に箱抜きして設置された消火栓装置と比較して、消火栓扉の開扉が困難となるという問題があった。
【0007】
一見して、単に、より低い位置、例えば、筐体の下方位置、にハンドル部を設ければ、この問題は解決するように思えるが、消火栓扉以外の箇所にハンドル部を設けようとすると以下の様な問題が生じる可能性がある。
【0008】
ハンドル部が、消火栓扉に設けられている場合、該ハンドル部をもって、消火栓扉を開扉方向に引くことが可能であるが、ハンドル部が消火栓扉以外の箇所に設けられている場合、該ハンドル部をもって、消火栓扉を開扉方向へと引くことが困難となる。そのため、ハンドル部を操作することによって、ラッチ等による係止が解除されたとしても、消火栓扉が自立してしまい、消火栓扉が開扉されない可能性があった。
【0009】
そこで、本発明は、消火栓扉の係止を解除するための解除手段が、消火栓扉以外の箇所に設けられていてもより確実に消火栓扉を開扉することが可能な消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、消火用ホースが収容される筐体と、該筐体の前面側に設けられ、該消火用ホースを該筐体外へと引き出すための開口部と、該開口部を開閉するための消火栓扉と、が設けられた前面パネルと、該消火栓扉を、閉扉状態で係止するための係止手段と、該係止手段による該消火栓扉の係止を解除するための1又は複数の解除手段と、閉扉状態の該消火栓扉を開扉方向に付勢する付勢手段と、を備え、該解除手段の少なくも1つは、該消火栓扉外の該前面パネルの該開口部よりも低い位置に設けられていることを特徴とする消火栓装置である。
又、本発明は、消火用ホースが収容される筐体と、該筐体に設けられ、該消火用ホースを該筐体外へと引き出すための開口部と、該開口部を開閉するための消火栓扉と、該消火栓扉を、閉扉状態で係止するための係止手段と、該係止手段による該消火栓扉の係止を解除するための1又は複数の解除手段と、閉扉状態の該消火栓扉を開扉方向に付勢する付勢手段と、を備え、該解除手段の少なくも1つは、該消火栓扉外に設けられている消火栓装置であって、受部を、更に備え、該付勢手段は、押圧部と、該押圧部を付勢する弾性部と、を有しており、該押圧部は、該消火栓扉が閉止させた際に、該受部を押圧可能に設けられており、該付勢手段は、該消火栓扉又は該筐体の一方側に設けられ、該受部は、該消火栓扉又は該筐体の他方側に設けられることを特徴とする消火栓装置である。
【0011】
尚、本発明は、前記消火栓扉外に設けられた前記解除手段が、接続手段を介して、前記係止手段と接続されているものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、閉扉状態の消火栓扉を開扉方向に付勢する付勢手段を設けたので、解除手段によって消火栓扉の係止が解除された際に、該付勢手段によって、該消火栓扉が開扉方向へと移動することとなるため消火栓扉の係止を解除するための解除手段が、消火栓扉以外の箇所に設けられていてもより確実に消火栓扉を開扉することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の消火栓扉を閉扉した状態における正面図である。
【
図2】本発明の実施形態を示す図であり、(a)が
図1のII-II線拡大断面図であり、(b)が(a)の要部拡大図である。
【
図3】本発明の実施形態の消火栓扉を開扉した状態における正面図である。
【
図4】本発明の実施形態を示す図であり、(a)が
図3のIV-IV線拡大断面図であり、(b)が(a)の要部拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態の消火栓扉を閉扉した状態における右側面図である。
【
図6】本発明の実施形態の図であり、(a)が
図5のVI-VI線断面図であり、(b)が(a)の要部拡大部分断面図である。
【
図7】本発明の実施形態を示す図であり、トンネル内における設置状態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、トンネルTに設置される消火栓装置1を例として、
図1乃至
図7に基づき説明する。
【0015】
消火栓装置1が設置されるトンネルTは、シールド工法によって掘削がなされており、周壁T1が略円筒形に設けられている。周壁T1の内方は、図示しない床板によって、上下に空間が仕切られている。上側の当該空間は、自動車等の通行する車道部分となっており、道路面T2及び道路面T2の両脇に設けられた道路面T2よりも一段高い監査路T3が設けられている。
【0016】
消火栓装置1は、可能な限り監査路T3を通行する監視員等の妨げにならない様に、例えば、周壁T1の監査路面T3aよりも高い位置に設置される。消火栓装置1を周壁T1に設置する手段は問わないが、例えば、周壁T1に形成されたインサートアンカT1aを利用して設置することが可能である。
【0017】
又、消火栓装置1は、先端側にノズルが設けられた消火用ホース(図示せず)が収容される筐体2を備えている。筐体2は、その前面に前面パネル3を有しており、その内方に該消火用ホースを収容するための空間4が設けられている。
【0018】
前面パネル3には、火災時に該消火用ホースを筐体2外に引き出すための開口部3aが設けられていると共に開口部3aを、常時は閉鎖して火災時には開放可能に設けられた消火栓扉5が設けられている。又、前面パネル3には、開口部3aよりも低い位置に、操作部6aを前面パネル3の裏面3bに備えるハンドル部6が設けられている。ハンドル部6が消火栓扉5(開口部3a)よりも低い位置に設けられているので、道路面から操作する場合に、消火栓扉5に設けられた後述する扉側ハンドル部9の操作が難しい場合でも、ハンドル部6を操作することで消火栓扉5を開扉することができる。
【0019】
消火栓扉5は、筐体2に略180°回動可能にダンパヒンジ7等の連結手段によって、連結されている。消火栓扉5の裏面5aには、消火栓扉5を筐体2(本実施形態においては、前面パネル3)に係止し、閉扉状態で保持するための係止手段として、ラッチ機構8が設けられている。本実施形態においては、消火栓扉5には、操作部9aを裏面5aに備えるハンドル部9(以下、扉側ハンドル部9ともいう)が設けられている。
【0020】
ラッチ機構8は、ラッチ8aを備えている。ラッチ8aは、略L字状の引掛部(図示せず)を備え、常時は、消火栓扉5の上端5bより突出した状態となっており、開口部3aの上端縁3c、即ち、前面パネル3の消火栓扉5を閉扉した際に上端5bと対向する部分に引掛部を掛けて係止され、消火栓扉5の閉扉状態を保持し、消火栓扉5が不意に開扉方向Aに回動することを防止している。
【0021】
ハンドル部6は、前記係止手段(ラッチ機構8)による消火栓扉5の係止を解除するための解除手段として設けられており、操作部6aは、ワイヤ10等の接続手段を介して、ラッチ機構8と接続されている。ラッチ機構8は、ハンドル部6を操作することでラッチ8aが上端5bより引っ込み、上記係止が解除される様になっている。
【0022】
本実施形態において、操作部6aには、アーム部6bが設けられており、アーム部6bにワイヤ10の一端が接続されている。ワイヤ10の他端は、ラッチ用バネ8bにより付勢されたラッチ8aに接続されており、操作部6aを操作することにより、アーム部6bが動き、アーム部6bにより、ワイヤ10が牽引されることで、ラッチ8aが消火栓扉5側へと移動し、消火栓扉5の係止が解除される様になっている。
【0023】
例えば、操作部6aとして、クランク機構等を採用し、ハンドル部6の操作により生まれる略軸方向の運動を一旦回動運動へと変化し、更に、該回動運動を、ワイヤ10を牽引する方向(本実施形態においては略水平方向)の運動に変換する様にすることが可能である。
【0024】
本実施形態においては、ラッチ機構8は、操作部9aと連結されており、扉側ハンドル部9を操作することもラッチ8aが上端5bより引っ込み、上記係止を解除される様になっており、従来の消火栓装置と同様の操作によっても消火栓扉5を開扉することが可能となっている。
【0025】
又、消火栓装置1には、閉扉状態の消火栓扉5を開扉方向Aに付勢する付勢手段として、押出機構11が設けられていると共に消火栓扉5を閉扉した際に押出機構11と対向する位置に受部12が設けられている。押出機構11は、押圧部11aと押圧部11aを付勢する弾性部11bとを有している。押圧部11aは、消火栓扉5を閉扉した際に受部12を押圧可能に設けられており、その際に、弾性部11bが、押し縮められることによって、消火栓扉5を開扉方向Aに付勢している。
【0026】
本実施形態において、押出機構11は、消火栓扉5側に位置する様に消火栓扉5の裏面5aに取付られており、受部12は、筐体2側に位置する様に筐体2内の前記消火用ホースを収容する空間4前面に設けられるホース収容部13に設けられているが、押出機構11を筐体2側に設け、受部12を消火栓扉5側に設けることも可能である。
【0027】
従って、消火栓装置1においては、ハンドル部6を操作し、ラッチ機構8のラッチ8aによる消火栓扉5の係止が解除されると、押出機構11によって、消火栓扉5が開扉方向Aへと押し出されるため、より確実に消火栓扉5が開扉される様になっていることとなる。
【0028】
本発明を上記実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、適宜変更可能である。
【0029】
(1)例えば、消火栓扉5の裏面5aに前記消火用ホースのノズルを固定するノズルホルダ(図示せず)や消火栓弁を開弁するため操作レバー(図示せず)等を設けることも可能である。
【0030】
(2)ハンドル部6が設けられる箇所は、筐体2の開口部3aよりも低い位置に限られるものではなく、必要に応じて適宜選択可能であり、又、ハンドル部6を筐体2外に設けることも可能である。
【0031】
(3)ハンドル部6とラッチ機構8とを有線で接続したが、無線で接続することも可能である。又、ハンドル部6,9の数は、必要に応じて適宜選択可能であり、扉側ハンドル部9を設けなくともよい。
【符号の説明】
【0032】
1 消火栓装置 2 筐体 3 前面パネル
3a 開口部 3b 裏面 3c 上端縁
4 空間 5 消火栓扉 5a 裏面
5b 上端 6 ハンドル部 6a 操作部
6b アーム部 7 ダンパヒンジ 8 ラッチ機構
8a ラッチ 8b ラッチ用バネ 9 扉側ハンドル部
9a 操作部 10 ワイヤ 11 押出機構
11a 押圧部 11b 弾性部 12 受部
13 ホース収容部 A 開扉方向 T トンネル
T1 周壁 T1a インサートアンカ T2 道路面
T3 監査路 T3a 監査路面