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特許7531282コーヒー飲料およびコーヒー飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コーヒー飲料およびコーヒー飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A23F5/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020014483
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021119765
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】初川 淳一
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-196769(JP,A)
【文献】特開2012-115247(JP,A)
【文献】特開2009-028019(JP,A)
【文献】日本醸造協會雑誌,1976年,Vol.71, No.12,pp.911-918
【文献】BrewNote [オンライン], 2016.03.03 [検索日 2023.12.08], インターネット:<URL:https://brewnote.tokyo/2016/03/ホップの成分>
【文献】日本醸造協会誌,2021年,Vol.116, No.10,pp.688-697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆を水または温水により抽出したコーヒー抽出液、当該コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、および当該コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒーの少なくともいずれか一つと、イソα酸と、デンプン加水分解物と、を含むコーヒー飲料であって、
該飲料中の前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記デンプン加水分解物の含有量が0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満である、コーヒー飲料。
【請求項2】
前記デンプン加水分解物はDEが2~19であるものを少なくとも含む、請求項1記載のコーヒー飲料。
【請求項3】
前記イソα酸がホップ由来である、請求項1または2記載のコーヒー飲料。
【請求項4】
前記飲料のブリックス値が0.3°以上10°以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項5】
容器詰めされた、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーヒー飲料。
【請求項6】
コーヒー豆に水または温水を加えて抽出し、コーヒー抽出液を得る工程と、
前記コーヒー抽出液、イソα酸、およびデンプン加水分解物を混合する工程と、
を含むコーヒー飲料の製造方法であって、
該飲料は、コーヒー豆を水または温水により抽出したコーヒー抽出液、当該コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、および当該コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒーの少なくともいずれか一つを含み、
該飲料中の前記イソα酸の含有量を1ppm以上15ppm以下とし、前記デンプン加水分解物の含有量を0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満とする、コーヒー飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器詰めコーヒー飲料は、簡便に飲用できる嗜好性飲料として広く親しまれている。容器詰めコーヒー飲料は、消費者の嗜好や流行等を背景に様々な風味や香味を有するものが開発され、コーヒー飲料の香気に寄与する成分を添加する試み等が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コーヒーの特徴が強化されたバラエティーに富んだコーヒーエキスに関し、コーヒー豆に対して、ホップ等の材料を混合して焙煎する工程を経て作製されることが開示されている。特許文献2には、低糖や無糖のコーヒー飲料において、コク味及び良好な香り立ちを付与し、さらに高甘味度甘味料の甘味の後引きを改善するために、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを配合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-187059号公報
【文献】特開2012-115247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、新たな香味を呈するコーヒー飲料として、強いコクと苦味のキレの良さの両立に着目したところ、特許文献1~2に開示されるような従来技術においてはかかる両立を実現する点で改善の余地があることを判明した。そして、強いコクと苦味のキレの良さの両立を実現するため鋭意検討を行う中で、コーヒー飲料に添加される成分として、イソα酸とデンプン加水分解物とを組み合わせることに初めて着目し、これらの含有量を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
イソα酸、およびデンプン加水分解物を含むコーヒー飲料であって、
該飲料中の前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記デンプン加水分解物の含有量が0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満である、コーヒー飲料が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強いコクと苦味のキレの良さを両立できるコーヒー飲料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0009】
<コーヒー飲料>
本実施形態のコーヒー飲料は、イソα酸を1ppm以上15ppm以下、デンプン加水分解物を0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満含むものである。
これにより、強いコクと苦味のキレの良さを両立できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、デンプン加水分解物によってコーヒーのコク感が増強されるとともに、イソα酸が有する苦味によって、デンプン加水分解物を加えることで生じた苦味のキレの低下を改善しつつ、コーヒー飲料全体の苦味を損なわずに、苦味が口中に残る感じを抑制し、苦味のキレを良好にすると推測される。
以下、コーヒー飲料に含まれる各成分について詳述する。
【0010】
[イソα酸]
イソα酸は、α酸の異性化体である。一般に、ホップに多く含まれるα酸が加熱により異性化することで生じる苦味成分として知られている。
本実施形態のコーヒー飲料においては、イソα酸は、イソフムロン、イソアドフムロン及びイソコフムロンとする。
【0011】
本実施形態のコーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、1ppm以上15ppm以下であり、好ましくは1.5ppm以上、9.5ppm以下、より好ましくは2.5ppm以上である。イソα酸の含有量を、上記下限値以上とすることで、コクを強くし、苦味のキレの良さを向上しやすくなるとともに、適度な香味を呈することで飲みやすさも向上できる。一方、イソα酸の含有量を、上記上限値以下とすることで、適度なコクの強さと、過度な苦味が抑えられて雑味が少ないことによる飲みやすさが保持され、苦味のキレの良さとコクの強さとの良好なバランスが得られる。
【0012】
イソα酸としては、ホップ由来であることが好ましく、イソα苦味酸であることがより好ましい。イソα苦味酸とは、ホップの花から得られた、イソフムロン類を主成分とするものをいう。クワ科ホップ(Humulus lupulus LINNE)の雌花より、水、二酸化炭素又は有機溶剤で抽出し、熱処理して得られたものである。例えば、イソα苦味酸としては、イソα酸を10~50質量%含むものが好ましい。
【0013】
イソα酸の含有量の測定方法としては、例えば、Analytica EBC(European Brewery Convention)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法が挙げられる。
【0014】
[デンプン加水分解物]
デンプン加水分解物とは、デンプン中のアミロースやアミロペクチン等の多糖類を熱、酸、アルカリ、酵素等で加水分解したものの総称であり、グルコースがα-1,4結合または1,6結合で連なった多糖類が主成分のものをいう。具体的には、可溶性デンプン、薄手のりデンプン、アミロデキストリン、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリテシュガム、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、酵素変性マルトデキストリン、特殊デキストリン、水飴、麦芽糖液糖等、およびそれらの還元物である還元澱粉糖化物、還元麦芽糖水飴、還元ポリデキストロース、ならびに難消化性デキストリンが挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、強いコクと苦味のキレの良さを両立する観点から、デンプン加水分解物としては、アミロデキストリン、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリテシュガム、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、特殊デキストリン、難消化性デキストリン及び酵素変性マルトデキストリンの中から選ばれる1種または2種以上がより好ましく、なかでもマルトデキストリンおよび特殊デキストリンの少なくともいずれか一方を含むことがより好ましい。
【0015】
デンプン加水分解物は、低分子化の度合いによってグレード分けされており、その指標として、デキストロース当量(DE)が知られている。DEはデキストロース(ブドウ糖)の還元力を100とした場合の相対的な尺度であり、下記式によって求められる。
DE(デキストロース当量)=直接還元糖のグルコース換算量(質量)/デンプン分解物またはオリゴ糖の固形分量(質量)×100
直接還元糖のグルコース換算量(還元糖量)を定量する方法としては、例えば、リンエイノン法、ベルトラン法、ウイルシュテッターシューデル法が知られており、適宜選択することができる。
【0016】
DEは、0に近いほどデンプンに近い特性、100に近づくほどデンプンの加水分解が進み平均分子量が小さくなり、ブドウ糖に似た特性となる。
DEの値により原材料表示が異なり、一般的には、DE10未満は、デキストリン、DE10以上20未満程度はマルトデキストリン、DE20以上40未満程度は粉あめと呼ばれることが多い。
本実施形態において、デンプン加水分解物は、好ましくはDE2~19であるもの、より好ましくはDE2~12であるもの、さらに好ましくはDE2~8であるものを少なくとも含む。これにより、高水準で強いコクと苦味のキレの良さを両立できる。
【0017】
デンプン加水分解物としては、コーンスターチ、馬鈴薯、キャッサバ芋などのデンプンを常法に従って化学的または酵素的な方法で低分子化して得られたものを用いてもよく、なかでも、馬鈴薯由来のデンプンを用いたものが好ましい。
【0018】
また、デンプン加水分解物としては、市販品を用いてもよい。
デンプン加水分解物の市販品としては、例えば、松谷化学工業社製の「パインデックス#2」、「TK16」、日本食品化工社製の「フジオリゴG67」、「日食ブランチオリゴ」、「日食クリアトース」、三和澱粉工業社製の「サンデック#30」、「サンデック#70」、「サンデック#70FN」、「サンデック#150」、「サンデック#180」、「サンデック#250」、「サンデック#300」、「オリゴトース液」、「オリゴトース粉末」、三栄源エフ・エフ・アイ社製の「スマートテイスト」などを挙げることができる。
【0019】
本実施形態のコーヒー飲料中のデンプン加水分解物の含有量は、0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満であり、好ましくは0.45g/100ml以下、より好ましくは0.3g/100ml以下である。
デンプン加水分解物の含有量を、上記下限値以上とすることで、コクを強くすることができる。一方、デンプン加水分解物の含有量を、上記上限値以下とすることで、雑味が少ないことによる飲みやすさ、および苦味のキレの良さを向上し、強いコクとキレの良さのバランスを保持しやすくなる。
【0020】
[コーヒー飲料]
本実施形態のコーヒー飲料は、コーヒー豆から抽出または溶出した成分(コーヒー分)を原料とする飲料及びこれにその他の成分が加えられている飲料であり、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料をいい、1977年に制定された「コーヒー含有飲料等の表示に関する公正競争規約」にも記載されているように、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料のことを指す。また、本実施形態においては、コーヒー豆使用量が生豆換算で1重量%未満の飲料であっても、飲んだときにコーヒー風味が感じられる飲料については、コーヒー飲料として扱うこととする。
一方、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」によれば、2017年現在、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものについては、乳飲料として扱われることになる。
本実施形態に係るコーヒー飲料については、コーヒー豆を原料とした飲料であるため、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものであったとしても、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0021】
上記のコーヒー豆としては、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などの栽培樹種が挙げられる。また、コーヒー豆の品種としては、特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、およびキリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
コーヒー豆の焙煎温度や焙煎環境等の条件は、特に限定されず、通常の方法を採用できる。また、焙煎コーヒー豆を用いた抽出方法としては、特に限定されないが、例えば、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、および連続式などが挙げられる。
【0022】
ここで、本実施形態のコーヒー飲料にコーヒー分を含有させる方法としては、特に限定されず当業者が適宜設定することができる。例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等を用いて、これらのうち1種または2種以上を飲料中に添加するといった方法等を挙げることができる。
粉砕した焙煎豆としては、粗挽き、中挽き、細挽き等が挙げられ、特に限定されない。
【0023】
コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の下限値は、本格的なコーヒー感、飲みやすさ、おいしさを得るため、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
一方、コーヒー飲料中のコーヒー可溶性固形分の含有量の上限値は、香り、酸味、苦味、後味のバランスを良好にしつつ、口あたりを良好にするため、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0024】
コーヒー飲料は、乳を含まないブラックコーヒー飲料(有糖と無糖を問わない。)であってもよく、必要に応じて、1種または2種以上の乳分を含有した乳入りコーヒー飲料であってもよい。
【0025】
[ブリックス値]
本実施形態のコーヒー飲料のブリックス値(Bx)は、飲みやすさを向上しつつ、香り、酸味、苦味、後味のバランスを良好にする観点から、好ましくは、0.3°以上10°以下であり、より好ましくは、0.5°以上7°以下であり、さらに好ましくは、1.0°以上6°以下である。
ブリックス値は、コーヒー飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0026】
[カフェイン]
本実施形態のコーヒー飲料は、カフェインを含む。カフェインを含むことにより、嗜好性が良好となり、良好な苦味と後味のバランスを向上しやすくなる。
コーヒー飲料全体に対するカフェインの含有量は、0.1mg/100ml以上、150mg/100ml以下が好ましく、10mg/100ml以上、120mg/100ml以下であることがより好ましく、35mg/100ml以上、100mg/100ml以下であることがさらに好ましい。
当該カフェインの含有量を、上記下限値以上とすることにより、良好な苦味と後味のバランスを保持しつつ、コーヒー感を向上しやすくなる。一方、当該カフェインの含有量を、上記上限値以下とすることにより、コーヒー感を保持しつつ、良好な後味が得られやすくなる。
【0027】
本実施形態のコーヒー飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の香気成分、乳、甘味料、酸味料、乳化剤、pH調整剤(重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、果汁、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0028】
上記の乳としては、生乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳入りコーヒー飲料である場合、乳の含有量は特に限定されないが、良好な乳風味を得つつ、コーヒー感の向上効果と、良好な苦味と後味を得る観点から、乳固形分(乳脂肪分と無脂乳固形分とを合わせたものを意味する。)量を0.5~3.5質量%とすることが好ましく、乳固形分量を0.8~2.5質量%とすることがより好ましく、乳固形分量を1.0~2.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0029】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0030】
[容器]
本実施形態のコーヒー飲料に用いられる容器としては、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。コーヒー飲料の風味を保持する観点から、スチール缶であることが好ましく、軽量で再栓可能な観点からは、蓋つきのペットボトル、スチール缶およびアルミ缶が好ましい。
コーヒー飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000gが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500gがより好ましい。
【0031】
本実施形態のコーヒー飲料が容器詰めされた場合の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0032】
<コーヒー飲料の製造方法>
本実施形態のコーヒー飲料の製造方法は、まず、コーヒー分を準備する工程と、当該コーヒー分と、イソα酸およびデンプン加水分解物とを混合し、該飲料中の当該イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下となり、当該デンプン加水分解物の含有量が0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満となるように調製する工程とを含む。これにより、強いコクと苦味のキレの良さを両立できるコーヒー飲料を得ることができる。
本実施形態において、イソα酸およびデンプン加水分解物としては、上記コーヒー飲料について説明したものと同様のものを用いることができる。その他の成分についても、同様に用いることができる。
上記コーヒー分とは、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液(コーヒー抽出液)や、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥させたインスタントコーヒー等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合したものであってもよい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. イソα酸、およびデンプン加水分解物を含むコーヒー飲料であって、
該飲料中の前記イソα酸の含有量が1ppm以上15ppm以下であり、前記デンプン加水分解物の含有量が0.01g/100ml以上0.5g/100ml未満である、コーヒー飲料。
2. 前記デンプン加水分解物はDEが2~19であるものを少なくとも含む、1.記載のコーヒー飲料。
3. 前記イソα酸がホップ由来である、1.または2記載のコーヒー飲料。
4. 前記飲料のブリックス値が0.3°以上10°以下である、1.乃至3.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
5. 容器詰めされた、1.乃至4.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
<分析方法>
コーヒー飲料中のイソα酸の含有量は、以下のようにして測定した。
測定試料を次の方法で調製した。超純水にて適宜希釈した試料10mlをガラス製遠沈管にとり、メタノール10mlを加えて数回反転混合した後、遠心機で遠心(3000rpm、15分、室温)し、上清をPTFE製フィルター(Whatman SYRINGEFILTER13mm Disposable Filter Device PTFE、孔径0.45μm)で濾過後、分析試料とした。
〔装置構成〕
・検出器:SPD-M20A prominence(株式会社島津製作所)
・カラムオーブン:CTO-20AC prominence(株式会社島津製作所)
・ポンプ:LC-20AD prominence(株式会社島津製作所)
・オートサンプラー:SIL-20ACHT prominence(株式会社島津製作所)
・カラム:Zorbax Eclipse 5 XDB-C8 内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm(Agilent Technologies)
〔分析条件〕
・サンプル注入量:50μL
・流量:1.0mL/min
・検出波長:270nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:メタノール
・溶離液B:1%クエン酸緩衝液(pH7.0)(10.9gのクエン酸一水和物を約950mlの超純水に溶解する。45%水酸化カリウム溶液でpHを7.0に調製し、超純水を加えて1000mlにする。溶液をフィルター(ADVAVTEC MIXED CELLULOSE ESTER A045A047A)で濾過する)、30(V/V)%アセトニトリル溶液
〔グラジエント条件〕
時間 溶離液A溶離液B
0.0分 15% 85%
5.0分 15% 85%
30.0分80% 20%
33.0分80% 20%
35.0分15% 85%
45.0分15% 85%
〔標準物質の調製〕
イソα酸標準品(DCHA-Iso、LaborVeritas)を30mg精秤し、100mlの透明なガラス製のメスフラスコに入れ、そこに約40mlの酸性メタノール(1Lのメタノールに0.5mlのりん酸(85%)を加える)を入れ、溶解し、20℃で酸性メタノールに定容し、光から保護しておく。これを、1%クエン酸緩衝液(pH7.0)、35(V/V)%アセトニトリル溶液で適宜希釈した。
〔イソα酸含有量の測定〕
I1(16.3分)、I2(17.1分)、I3(20.5分)、I4(21.1分)の面積値を合算し、標準物質の面積値を基準に含有量を求めた。
【0036】
[実験例1:イソα酸の含有量の違い]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
コーヒー豆(ブラジル産、L値16)100gを95℃の熱水1000gで抽出してコーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液に対し、以下の表1に示す含有量となるように、重曹、デキストリン、ホップ抽出物(イソα苦味酸)を配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品1~7)。
なお、上記デキストリンとして、「スマートテイスト」特殊デキストリン(DE2~5)三栄源エフ・エフ・アイ社製を用いた。
【0037】
<官能評価>
次に、得られた容器詰めコーヒー飲料(20℃)それぞれを、熟練した6名のパネラーが試飲し、以下の表2に示す評価基準に従い「コクの強さ」、「苦味のキレの良さ」、「飲みやすさ」それぞれについて、7段階(1~7点)評価を実施し、その平均点を求めた。また、評価する際は、対照例1の飲料を対照品(基準値4点)として評価を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】

【0040】
[実験例2:デンプン加水分解物の含有量の違い]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
実験例1と同様にして、コーヒー抽出液を得たのち、以下の表3に示す含有量となるように、重曹、デキストリン、ホップ抽出物(イソα苦味酸)を配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品8~11)。
なお、上記デキストリンとして、「スマートテイスト」特殊デキストリン(DE2~5)三栄源エフ・エフ・アイ社製を用いた。
【0041】
<官能評価>
上記実験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を、表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
[実験例3:デンプン加水分解物の種類の違い]
<容器詰めコーヒー飲料の調製>
実験例1と同様にして、コーヒー抽出液を得たのち、以下の表4に示す含有量となるように、重曹、デンプン加水分解物、ホップ抽出物(イソα苦味酸)を配合し、コーヒー飲料を調製し、缶に充填しレトルト殺菌をして、容器詰めコーヒー飲料を得た(試作品12~15)。
なお、デンプン加水分解物としては、以下のものを用いた。
・「スマートテイスト(登録商標)」特殊デキストリン(DE2~5)三栄源エフ・エフ・アイ社製
・「TK-16」マルトデキストリン(DE16~19)松谷化学工業社製
・「パインデックス(登録商標)#2」マルトデキストリン(DE10~12)松谷化学工業社製
・「ファイバーソル2」難消化性デキストリン、松谷化学工業社製
【0044】
<官能評価>
上記実験例1と同様にして、官能評価を行った。結果を、表4に示す。
【0045】
【表4】