IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-離型フィルム付き粘着シートの製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】離型フィルム付き粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/40 20180101AFI20240802BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240802BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240802BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240802BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J133/04
C09J7/38
C09J7/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023870
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127413
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】山村 和広
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】下栗 大器
(72)【発明者】
【氏名】藤原 新
(72)【発明者】
【氏名】澤▲崎▼ 良平
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112505(JP,A)
【文献】特開2019-137832(JP,A)
【文献】特開2008-265349(JP,A)
【文献】特表2016-540873(JP,A)
【文献】特開2006-328289(JP,A)
【文献】特開2016-180021(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109181560(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、
アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、紫外線吸収剤、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および
前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に、前記第一離型フィルム側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記第一離型フィルムは、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に第一離型層を備え、
前記第二離型フィルムは、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に第二離型層を備え、
前記第一離型層が、フッ素系離型層、または縮合型シリコーン離型層である、離型フィルム付き粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記第二離型層が、非フッ素系付加型シリコーン離型層である、請求項に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法。
【請求項3】
前記光硬化性粘着剤組成物が、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含む、請求項1または2に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法
【請求項4】
前記光硬化性粘着剤組成物は、前記アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物の合計100重量部に対して、前記紫外線吸収剤を0.1~10重量部含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法
【請求項5】
前記粘着シートは、波長380nmの光透過率が50%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法
【請求項6】
剥離速度0.3m/分の180°ピール試験により求められる前記粘着シートから前記第一離型フィルムを剥離する際のピール強度が、0.1~1N/50mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法
【請求項7】
前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも大きい、請求項1~のいずれか1項に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムが仮着された粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置やタッチパネル等のディスプレイ用入力装置には、光学部材の貼り合わせに透明粘着シートが使用されている。透明粘着シートは、一般に両面に離型フィルムが付設された離型フィルム付き粘着シートとして提供される。粘着シートの使用時には、まず、一方の離型フィルム(軽剥離フィルム)を剥離して粘着シートの一方の面を露出させて第一の被着体との貼り合わせを行い、他方の離型フィルム(重剥離フィルム)を剥離して粘着シートの他方の面に第二の被着体を貼り合わせる。
【0003】
表示装置や入力装置等に用いられる光学部材には、紫外線による素子の劣化の抑制等の観点から、紫外線カット性が求められる場合がある。例えば、有機ELディスプレイでは、発光層等を構成する有機分子の紫外線による劣化が表示特性に大きな影響を与えるため、素子の前面に配置される光学部材に高い紫外線カット性が要求される。また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられる偏光板は、紫外線による偏光子の劣化(例えばヨウ素の退色)を防止するために、偏光子よりも前面に配置される光学部材に紫外線カット性が要求される。
【0004】
粘着シートに紫外線カット性を持たせる方法として、粘着剤組成物中に紫外線吸収剤を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1には、熱重合型のアクリル系粘着剤溶液に紫外線吸収剤を添加した粘着剤組成物を膜状に塗布した後、加熱乾燥して、紫外線カット性を有する粘着シートを得たことが記載されている。特許文献2には、光硬化性のアクリル系組成物、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含む光硬化性アクリル系粘着剤組成物を、2枚の離型フィルムで挟み込んだ状態で光硬化を行い、紫外線カット性を有する光硬化型粘着シートを得たことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-75978号公報
【文献】特開2019-112505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光硬化型の粘着シートは、一般に溶媒を必要とせず、光硬化性粘着剤組成物の両面に基材シートを付設した状態で光硬化(光重合)を行うことにより得られる。そのため、光硬化型の粘着シートは、厚みを大きくすることが容易であり、かつ平滑性を向上できるとの利点を有する。
【0007】
しかしながら、特許文献2にも記載されているように、紫外線吸収剤を含む光硬化性粘着剤組成物に、離型フィルムを介して紫外線を照射して光硬化を行うと、光照射面の離型フィルムと光硬化後の粘着シートとの剥離力が大幅に上昇し、被着体との貼り合わせ時に離型フィルムの剥離が困難となる場合がある。特許文献2では、付加型シリコーン離型層の厚み等を調整することにより、粘着シートとの剥離力を低減できることが提案されているが、光硬化後の粘着シートとの剥離力を十分に低下させることは容易ではない。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、紫外線カット性を有し、かつ離型フィルムとの剥離性が良好な離型フィルム付き粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の離型フィルム付き粘着シートは、第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート、および粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルムを備える。第一離型フィルムは、第一フィルム基材上に第一離型層を備え、第一離型層と粘着シートとが接している。離型フィルム付き粘着シートは、粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備えていてもよい。粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーおよび紫外線吸収剤を含む。
【0010】
粘着シートの第一主面は、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する際の光照射面である。すなわち、第一離型フィルムを介して、光硬化性粘着剤組成物への光照射を行うことにより、光硬化型粘着シートが形成される。光硬化性粘着剤組成物への光照射面側に付設される第一離型フィルムの第一離型層は、フッ素系離型層、または縮合型シリコーン離型層である。第二離型フィルムの第二離型層は、非フッ素系付加型シリコーン離型層であってもよい。
【0011】
粘着シートの波長380nmの光透過率は50%以下が好ましい。粘着シートは、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1~10重量部の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。粘着シートのアクリル系ポリマーは、モノマー成分として1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマー成分を含んでいてもよい。
【0012】
光硬化性粘着剤組成物層の第一主面に、上記の第一離型フィルムの第一離型層が接した状態で、第一離型フィルム側から光硬化性粘着剤組成物への光照射を行うことにより、離型フィルム付き粘着シートが得られる。光硬化性粘着剤組成物は、アクリル系材料、紫外線吸収剤、および光重合開始剤を含む。光硬化性粘着剤組成物に含まれるアクリル系材料としては、アクリル系モノマーおよびその部分重合物が挙げられる。アクリル系材料は、アクリル系モノマーおよびアクリル系モノマーの部分重合物の両方を含んでいてもよい。
【0013】
一実施形態では、第一離型フィルムと第二離型フィルムとの間に光硬化性粘着剤組成物層が挟持された積層体に、第一離型フィルム側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化することにより、両面に離型フィルムが仮着された粘着シートが得られる。両面に離型フィルムが仮着された粘着シートでは、第一離型フィルムと粘着シートとの剥離力(ピール強度)が、第二離型フィルムと粘着シートとの剥離力よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0014】
可視光透過率が高く、かつ紫外線カット性を有する粘着シートは、紫外線カット性が要求される表示装置やディスプレイ用入力装置用の光学粘着シートとして好適に用いられる。本発明の離型フィルム付き粘着シートは、粘着シートと第一離型フィルムとの剥離力の過度の上昇が抑制されているため、粘着シートからの離型フィルムの剥離および粘着シートと被着体との貼り合わせの作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】離型フィルム付き粘着シートの積層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の離型フィルム付き粘着シートは、粘着シートの両面のそれぞれに仮着された離型フィルムを備える。「仮着」とは、剥離可能に貼着された状態を意味する。図1は、粘着シート50の両面に、離型フィルム10,20が仮着された離型フィルム付き粘着シート1の断面図である。粘着シート50は、粘着剤がシート状に形成されたものである。粘着シート50の全光線透過率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。粘着シートのヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。全光線透過率およびヘイズは、ヘイズメータを用いて、JIS K7136に準じて測定される。
【0017】
粘着シート50は、光硬化型アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤である。アクリル系粘着シートは、アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系ポリマーの部分重合物(プレポリマー)、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物を層状に塗布し、光硬化することにより得られる光硬化型粘着剤からなる。本明細書において、「光硬化性(photocurable)」の粘着剤とは、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等の光重合性官能基含有化合物を含み、光硬化が可能である粘着剤を指し、「光硬化型(photocured)」粘着剤とは、光硬化性粘着剤を光硬化した後の粘着剤を指す。なお、光硬化性粘着剤を重合後の粘着剤において、光重合性化合物の一部が未反応で残存している場合は、粘着剤が光硬化型(photocured)であり、かつ光硬化性(photocurable)の場合がある。
【0018】
[光硬化性粘着剤組成物]
光硬化性粘着剤組成物は、光重合性アクリル系材料、紫外線吸収剤、および光重合開始剤を含む。
【0019】
<光重合性アクリル材料>
光硬化性粘着剤組成物に含まれる光重合性アクリル材料としては、アクリル系モノマーおよびその部分重合物(プレポリマー)が挙げられる。
【0020】
(モノマー成分)
アクリル系モノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が分枝を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル系材料のモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、ヒドロキシ基含有モノマーや窒素含有モノマー等の高極性モノマーが共重合成分として含まれていてもよい。アクリル系ポリマーが高極性モノマーユニットを含有することにより、粘着剤の凝集力を向上させて粘着シートの被着体に対する接着性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制され、粘着シートの透明性が向上する傾向がある。
【0022】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6‐ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12‐ヒドロキシラウリルや(4‐ヒドロキシメチルシクロヘキシル)‐メチルアクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーの含有量は、モノマー成分全量に対して、1~40重量%が好ましく、3~30重量%がより好ましく、5~20重量%がさらに好ましい。
【0023】
窒素含有モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマーや、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー等が挙げられる。窒素含有モノマーは、窒素原子を含む環状構造を有するものが好ましく、中でも、N-ビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマーが好ましい。窒素含有モノマーの含有量は、モノマー成分全量に対して、0.5~50重量%が好ましく、1~40重量%がより好ましく、3~30重量%がさらに好ましい。
【0024】
共重合モノマー成分として、カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基含有モノマー、シラン系モノマー等の上記以外のモノマーを含んでいてもよい。
【0025】
共重合モノマー成分は、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物を含んでいてもよい。多官能重合性化合物としては、1分子中に2個以上のC=C結合を有する化合物や、1個のC=C結合と、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、ヒドラジン、メチロール等の重合性官能基とを有する化合物等が挙げられる。中でも、1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物が好ましい。多官能重合性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤組成物中に存在してもよく、プレポリマー成分のヒドロキシ基等の官能基と結合していてもよい。
【0026】
1分子中に2個以上のC=C結合を有する多官能重合性化合物としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート(多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物)が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートは、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のポリマー鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有するものであってもよい。
【0027】
多官能モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、モノマー成分全量に対して、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。多官能モノマーの使用量は、モノマー成分全量に対して、0.001重量%以上、0.01重量%以上、または0.05重量%以上であり得る。
【0028】
光硬化性粘着剤組成物において、上記のモノマー成分は、部分重合物(プレポリマー)として存在していてもよい。プレポリマーとは、モノマー成分を一部重合させたものである。モノマー成分がプレポリマーとして存在することにより、光硬化性粘着剤組成物の粘度を支持体上への塗布に適した範囲に調整できる。
【0029】
プレポリマーは、例えば、モノマー成分と重合開始剤とを混合したプレポリマー形成用組成物を、部分重合させることにより調製できる。プレポリマー形成用組成物は、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分を含んでいてもよく、アクリル系ポリマーを構成するモノマーの一部のみを含んでいてもよい。アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が、単官能モノマーと多官能モノマーとを含む場合は、単官能モノマーのみを部分重合したプレポリマー組成物に多官能モノマーを添加して粘着剤組成物を調製してもよい。単官能モノマーのみを部分重合したプレポリマー組成物に、多官能モノマーを添加して後重合を行うことにより、多官能モノマーによる架橋点をポリマー中に均一に導入できる。アクリル系ポリマーを構成する多官能モノマー成分の一部をプレポリマー形成用組成物に含有させ、プレポリマーを重合後に多官能モノマー成分の残部を添加して後重合を行ってもよい。
【0030】
2段階以上または3段階以上の重合でプレポリマーを調製してもよい。例えば、単官能モノマーのみを予備重合した後、多官能モノマーを添加して部分重合を行ってプレポリマー組成物を調製し、必要に応じてさらにモノマー成分等を添加して後重合を行ってもよい。
【0031】
プレポリマーの重合方法は特に限定されない。反応時間を調整して、プレポリマーの分子量(重合率)を所望の範囲とする観点から、紫外線等の活性光線照射による光重合が好ましい。光重合を行う場合は、プレポリマー形成用組成物が光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤の具体例は後述する。
【0032】
プレポリマー形成用組成物は、モノマー成分および重合開始剤以外に、必要に応じて連鎖移動剤等を含んでいてもよい。連鎖移動剤は、成長ポリマー鎖からラジカルを受け取ってポリマーの伸長を停止させるとともに、ラジカルを受け取った連鎖移動剤がモノマーを攻撃して再び重合を開始させる作用を有する。連鎖移動剤が用いられることにより、反応系中のラジカル濃度を低下させることなく、分子量の過度の増大を抑制できる。連鎖移動剤としては、α-チオグリセロール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール等のチオール類が好適に用いられる。
【0033】
プレポリマーの重合率は特に限定されないが、支持体上への塗布に適した粘度とする観点から、3~50%が好ましく、5~40%がより好ましい。プレポリマーの重合率は、光重合開始剤の種類や使用量、紫外線等の活性光線の照射強度・照射時間等を調整することによって、所望の範囲に調整できる。重合率は、プレポリマー組成物を130℃で3時間加熱した際の加熱(乾燥)前後の重量から、下記式により算出される。なお、溶液重合により部分重合を行う場合は、プレポリマー組成物の全重量から溶媒の量を差し引いたものを、下記式における加熱前重量として、重合率が算出される。
ポリマーの重合率(%)=100×(加熱後重量/加熱前重量)
【0034】
<光硬化性粘着剤組成物の調製>
上記の光重合性アクリル材料(モノマーおよび/またはその部分重合物)に、残部のモノマー成分、紫外線吸収剤、光重合開始剤、およびその他の添加剤等を混合することにより、光硬化性粘着剤組成物が得られる。光硬化性粘着剤組成物は、残部のモノマー成分として、前述の多官能モノマーを含むことが好ましい。
【0035】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつアクリル系ポリマーとの相溶性に優れ、高透明性のアクリル系粘着剤が得られやすいことから、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤、および1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0036】
紫外線吸収剤として市販品を用いてもよい。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 400」)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(BASF社製「TINUVIN 405」)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 460」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「TINUVIN 577」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF社製「TINUVIN 479」), 2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製「Tinosorb S」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(ADEKA製「ADK STAB LA-46」)等が挙げられる。
【0037】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BASF製「TINUVIN PS」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 900」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 928」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製「TINUVIN571」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(BASF製「TINUVIN P」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 234」)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 326、」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(BASF製「TINUVIN 328」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF製「TINUVIN 329」)、ベンゼンプロパン酸と3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物(BASF製「TINUVIN384-2」)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応生成物(BASF製「TINUVIN1 130」)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(BASF製「TINUVIN 213」)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(住友化学製「Sumisorb250」)等が挙げられる。
【0038】
光硬化性粘着剤組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、モノマー成分100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.3~7重量部がより好ましく、0.5~5重量部がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることにより、紫外線吸収剤のブリードアウト等による透明性の低下を抑制しつつ、粘着シートの紫外線カット性を向上できる。また、紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤組成物の重合速度の低下を抑制できる。
【0039】
<光重合開始剤>
光硬化性粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は、波長450nmよりも短波長の可視光または紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤である。
【0040】
光硬化性粘着剤組成物に紫外線吸収剤が含まれていると、光硬化のための照射光の一部が紫外線吸収剤により吸収される。光重合開始剤の開裂によるラジカルの生成を促進し、重合速度を向上する観点から、紫外線吸収剤による吸収の小さい波長領域に感度を有する光重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、光重合開始剤は波長380nmよりも長波長に感度を有するものが好ましく、400nmよりも長波長に感度を有するものがより好ましい。波長405nmにおける吸光係数が1×10[mLg-1cm-1]以上である光重合開始剤を用いることが好ましい。長波長の光感度を有する光重合開始剤は、波長400nm以下の光に対する感度を有していてもよい。
【0041】
波長400nm以上の光感度を有する光重合開始剤の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF製「Lucirin TPO」)、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド(BASF製「Lucirin TPO-L」)等のアシルフォスフィンオキサイド類;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4一モルフォリノフェニル)ブタノン-1(BASF製「イルガキュア369」)等のアミノケトン類;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製「イルガキュア819」)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF製「イルガキュア651」)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(BASF製「CGI403」)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤として、長波長の光感度を有するものと、長波長の光感度を有さないもの(例えば波長405nmにおける吸光係数が1×10[mLg-1cm-1]未満であるもの)とを併用して用いてもよい。
【0043】
長波長の光感度を有さない光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0044】
光硬化性粘着剤組成物中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分およびプレポリマー成分の合計100重量部に対して、0.02~10重量部が好ましく、0.05~5重量部がより好ましい。光重合開始剤が過度に少ないと重合率が不十分となる場合があり、光重合開始剤が過度に多いとポリマーの分子量が低く粘着剤の接着力が不十分となる場合がある。
【0045】
前述のように、プレポリマーの調製(部分重合)においても、光重合開始剤を用いることができる。部分重合に用いる光重合開始剤は、光硬化性粘着剤組成物に添加する光重合開始剤と同一でもよく異なっていてもよい。プレポリマー形成用組成物に紫外線吸収剤を含めず、部分重合後に紫外線吸収剤を添加する場合は、部分重合に用いられる光重合開始剤は、長波長の光感度を有していなくてもよい。部分重合に用いた光重合開始剤の未反応物を、そのまま光重合性粘着剤組成物における光重合開始剤として利用してもよい。
【0046】
照射光の利用効率等の観点から、プレポリマー形成用組成物には紫外線吸収剤を含めずに、部分重合後のプレポリマー組成物に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。例えば、先添加重合開始剤として長波長の光感度を有さない光重合開始剤を用いて、部分重合を行い、部分重合後の組成物に、紫外線吸収剤および後添加重合開始剤として長波長の光感度を有する光重合開始剤を添加して光硬化性粘着剤組成物を調製し、光硬化性粘着剤組成物を基材上に層状に塗布した後に、後重合を行うことが好ましい。
【0047】
<その他の成分>
光硬化性粘着剤組成物中には、連鎖移動剤が含まれていてもよい。光硬化性粘着剤組成物に含まれる連鎖移動剤は特に限定されず、例えば、上述の連鎖移動剤を用いることができる。
【0048】
光硬化性粘着剤組成物は、粘着剤の接着力の調整や粘度調整等を目的として、各種のオリゴマーを含んでいてもよい。オリゴマーとしては、例えば重量平均分子量が1000~30000程度のものが用いられる。オリゴマーとしては、アクリル系ポリマーとの相溶性に優れることから、アクリル系オリゴマーが好ましい。
【0049】
光硬化性粘着剤組成物には、上記の他に、シランカップリング剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、粘着剤組成物は、劣化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、粘着剤の特性を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0050】
光硬化性粘着剤組成物は、基材上への塗布に適した粘度(例えば、5~100ポイズ程度)を有することが好ましい。粘着剤組成物の粘度は、例えば、増粘性添加剤等の各種ポリマーや多官能モノマー等の添加、プレポリマーの重合率等により調整できる。光硬化性粘着剤組成物は、アクリル系モノマー成分(アクリル系モノマーおよびアクリル系モノマーの部分重合物)の含有量が、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
[粘着シートの形成]
光硬化性粘着剤組成物を支持体上に塗布し、または、支持体とカバーシートとの間に粘着剤組成物層を形成し、粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射して光硬化を行うことにより粘着シートが得られる。粘着剤組成物の塗布方法としては、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコートが挙げられる。
【0052】
光硬化性粘着剤組成物の塗布厚み(粘着シート50の厚み)は特に限定されないが、例えば10~500μm程度である。粘着シートによる紫外線吸収性を高める観点から、粘着シートの厚みは50μm以上が好ましい。粘着シート50の波長380nmにおける光透過率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下または3%以下であってもよい。
【0053】
支持基材上に光硬化性アクリル系粘着剤組成物層を備える積層体に、紫外線および/または短波長の可視光を照射して光硬化を行うことにより、粘着シートが得られる。光硬化性粘着剤組成物層が支持基材とカバーシートとの間に挟持された積層体への光照射により光硬化を行う場合、支持基材側およびカバーシート側のいずれの側から光照射を行ってもよく、両面から光照射を行ってもよい。後に詳述するように、本発明においては、粘着シートの光照射面側に付設される支持基材またはカバーシートとして、所定の離型層15を備える離型フィルム10が用いられる。
【0054】
硬化速度向上の観点から、光照射強度は5mW/cm以上が好ましい。光硬化後のアクリル系ポリマーの分子量を十分に高め、高温での保持力を確保する観点から、光照射強度は20mW/cm以下が好ましい。
【0055】
照射光の積算光量は、100~5000mJ/cm程度が好ましい。光照射のための光源としては、粘着剤組成物に含まれる光重合開始剤が感度を有する波長範囲の光を照射できるものであれば特に限定されず、LED光源、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が好ましく用いられる。
【0056】
紫外線吸収剤を含む光硬化性粘着剤組成物に照射した紫外光の大半は、紫外線吸収剤により吸収される。温度上昇による低分子量化の抑制、ならびに照射光の利用効率および硬化速度を向上する観点から、紫外線吸収剤による光吸収が小さい波長領域の光を照射することが好ましい。光源からの放熱が少なく、かつ波長幅の小さい光を照射可能であることから、LED光源を用いることが好ましい。LED光源を用いる場合、発光ピーク波長は350nm以上が好ましく、360nm以上、380nm以上または400nm以上であってもよい。
【0057】
光硬化後の粘着シートにおけるモノマー成分の最終的な重合率は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。粘着シートのゲル分率は、50%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
【0058】
[離型フィルム]
粘着剤組成物を塗布するための支持基材、および粘着剤組成物の塗布層表面に付設されるカバーシートとしては、粘着剤組成物の塗布層(粘着シート)との接触面に離型層を備える離型フィルムが用いられる。本発明においては、光硬化性粘着剤組成物層55の第一主面(光照射面側)に、所定の第一離型層15を備える離型フィルム(第一離型フィルム)10を付設した状態で光硬化が行われる。光硬化性粘着剤組成物層55の第二主面には、第二離型層25を備える離型フィルム(第二離型フィルム)20が付設される。
【0059】
<フィルム基材>
離型フィルム10,20のフィルム基材11,21としては、透明性を有する各種の樹脂フィルムが用いられる。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が特に好ましい。フィルム基材11,21の厚みは、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。
【0060】
<離型層>
離型層15,25の材料としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、脂肪酸アミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、ポリマーの側鎖にフッ素原子を含んでいてもよい。例えば、シリコーン系樹脂は、側鎖にフッ素原子を含むフッ素化シリコーン樹脂であってもよい。
【0061】
シリコーン系離型層の形成に用いられるシリコーン系離型剤は、その主成分のポリオルガノシロキサンの硬化反応(架橋反応)の形式により、縮合型シリコーン系離型剤および付加型シリコーン系離型剤に大別される。
【0062】
付加型シリコーン系離型層の形成には、付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物が用いられる。付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物は、ビニル基やヘキセニル基等のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基(SiH)を有するポリオルガノシロキサン化合物(架橋剤)とを含み、さらに硬化触媒(ヒドロシリル化触媒)を含むことが好ましい。このシリコーン系樹脂組成物は、加熱により、ポリオルガノシロキサン樹脂のアルケニル基と、架橋剤のヒドロシリル基との反応(ヒドロシリル化反応)により剥離性被膜(離型層)を形成する。
【0063】
ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリアルキルアルキルシロキサン;ポリアルキルアリールシロキサン;ポリ(ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンは、1つのSi原子に複数種の有機基が結合したものでもよい。
【0064】
架橋剤は、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンであり、1分子中にSi-H結合を有するケイ素原子を2個以上有するものが好ましい。ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとしては、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやポリ(ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン)、ヒドロシリル基末端ポリジメチルシロキサン等が好ましい。
【0065】
アルケニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物とが予め混合された市販品を用いてもよい。アルケニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物とを含む市販品としては、信越化学工業製の「KS-847」および「X-62-2829」、ならびに東レ・ダウコーニング製の「SRX211」、「LTC761」および「LTC300B」等が挙げられる。
【0066】
付加反応(ヒドロシリル化反応)の触媒としては、白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体等が挙げられる。
【0067】
縮合型シリコーン系離型層の形成には、縮合反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物が用いられる。縮合反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物としては、例えば、分子末端にシラノール基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、セルロース誘導体、アルキッド樹脂等を含み、さらに硬化触媒を含むものが挙げられる。
【0068】
分子末端にシラノール基を有するポリオルガノシロキサンとしては、側鎖の官能基(有機基)として、メチル基やエチル基等のアルキル基、フェニル基等を導入したものが好ましい。縮合型のシリコーン系樹脂組成物は、架橋剤として機能するアルコキシ基含有ポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。
【0069】
縮合反応の触媒としては、有機スズ触媒が好ましい。有機スズ触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート等が挙げられる。
【0070】
フッ素系離型層の形成には、フッ素系樹脂を含む樹脂組成物が用いられる。フッ素樹脂は、ポリマーの側鎖部分にフッ素原子を含み、その具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素炭化水素樹脂、フッ素化シリコーン樹脂等が挙げられる。粘着シートからの剥離性の観点から、フッ素化シリコーン樹脂が好ましい。
【0071】
フッ素化シリコーン樹脂は、硬化型でも非硬化型でもよい。フィルム基材との密着性が高く強固な膜を形成可能であることから、硬化型フッ素化シリコーン樹脂(硬化性フッ素化シリコーンの硬化物)が好ましい。硬化性フッ素化シリコーン樹脂としては、付加型シリコーンが好ましい。例えば、上記の付加型シリコーン組成物におけるポリオルガノシロキサンの側鎖のアルキル基の一部または全部をフッ素原子またはフルオロアルキル基に置き換えたものが用いられる。
【0072】
硬化性フッ素化シリコーン樹脂の市販品としては、信越化学工業製の「KP-911」および「X-70-201S」、ならびに東レ・ダウコーニング製の「FS1265-300CS」、「FS1265-1000CS」、「FS1265-10000CS」、「BY24-900」、「BY24-903」「Syl-off 3062」および「Q2-7785」等が挙げられる。
【0073】
離型層を形成するための組成物(離型剤組成物)は、樹脂成分に加えて、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は混合溶媒でもよい。
【0074】
離型剤組成物は、必要に応じて、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤等の各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
離型剤組成物をフィルム基材上に塗布し、加熱乾燥および必要に応じて硬化反応を行うことにより、離型層が形成される。塗布方法としては、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコートが挙げられる。加熱乾燥方法としては、熱風乾燥が挙げられる。熱風乾燥の条件は、基材の耐熱性により異なるが、通常80~150℃程度で、10秒~10分程度である。必要に応じて、硬化反応促進等を目的として、熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
【0076】
前述のように、光硬化性粘着剤組成物層55を光硬化する際には、第一離型フィルム10側から光を照射する。第一離型フィルム10の第一離型層15は、フッ素系離型層または縮合型シリコーン離型層であることが好ましい。縮合型シリコーン離型層のシリコーン樹脂は、フッ素系でもよく非フッ素系でもよい。第一離型層15がフッ素系離型層または縮合型シリコーン離型層である場合に、非フッ素系の付加型シリコーン離型層を備える離型フィルムを用いた場合に比べて、光硬化型粘着シートからの剥離力が小さくなる傾向がある。
【0077】
第二離型フィルム20の第二離型層25は特に限定されないが、適度の剥離力を示すことから、非フッ素系の付加型シリコーン離型層が好ましい。光照射面の第一離型フィルム10(重剥離フィルム)の第一離型層15がフッ素系離型層または縮合型シリコーン離型層であり、反対面の第二離型フィルム20(軽剥離フィルム)の第二離型層25が非フッ素系付加型シリコーン離型層である場合に、光硬化型粘着剤層50からの第一離型フィルム10の剥離が容易であり、かつ、第一離型フィルムの剥離力と第二離型フィルムの剥離力のバランスが適切である離型フィルム付き粘着シートが得られる。
【0078】
[離型フィルムと粘着シートの剥離性]
粘着シートの両面に離型フィルムが仮着された離型フィルム付き粘着シートでは、一般に、粘着シートと一方の離型フィルムとの剥離力が、粘着シートと他方の離型フィルムと剥離力に比べて相対的に小さい。粘着シートの使用時には、低剥離力の離型フィルム(低剥離フィルム)を粘着シートから剥離して第一の被着体との貼り合わせを行った後、相対的に剥離力の大きい離型フィルム(重剥離フィルム)を剥離して、第二の被着体との貼り合わせを行う。粘着シートの表裏に仮着する離型フィルムに剥離力の差を設けておくことにより、第一の被着体との貼り合わせ時に、軽剥離フィルムを選択的に剥離できるため、貼り合わせの作業性を高められる。
【0079】
光硬化型の粘着シートでは、光硬化の前後で粘着剤の接着力が異なるため、光硬化後の粘着シートの接着特性を考慮して、軽剥離フィルムおよび重剥離フィルムのそれぞれの粘着シートとの接着性(剥離性)が調整される。粘着剤組成物が紫外線吸収剤を含まない場合は、一方の離型フィルムと他方の離型フィルムの剥離力の大小関係は、光硬化の前後で変化しない。これに対して、光硬化性粘着剤組成物に紫外線吸収剤が含まれている場合は、光照射面側の第一離型フィルム10の剥離力の増加が、反対側の面に配置される第二離型フィルム20の剥離力の増加に比べて著しく大きくなる傾向がある。
【0080】
そのため、離型フィルム付き粘着シートでは、光照射面の第一離型フィルム10を重剥離フィルム、反対面の第二離型フィルム20を軽剥離フィルムとすることが好ましい。すなわち、第一離型フィルム10と粘着シート50との剥離力が、第二離型フィルム20と粘着シート50との剥離力よりも大きいことが好ましい。
【0081】
前述のように、粘着剤組成物への光照射は、支持基材側およびカバーシート側のいずれの側から行ってもよく、両面から光照射を行ってもよい。支持基材側から光照射を行う場合は、粘着剤組成物を塗布する支持基材として、上記の第一離型層15を備える第一離型フィルム10を用いればよい。カバーシート側から光照射を行う場合は、粘着剤組成物層55上に付設するカバーシートとして、上記の第一離型層15を備える第一離型フィルム10を用いればよい。
【0082】
両面から光を照射する場合は、支持基材またはカバーシートのいずれか一方に、上記の第一離型フィルムを用いればよい。支持基材およびカバーシートの両方に、フッ素系離型層または縮合型シリコーン離型層を備える離型フィルムを用いてもよい。特開2014-65754号公報に記載されているように、搬送方向を反転させる折り返しのパスラインを搬送しながら両面に光照射を行う場合は、最初に光を照射する面に上記の離型フィルムを用いることが好ましい。
【0083】
第一離型フィルム10(重剥離フィルム)と粘着シート50との剥離力が過度に大きいと、第一の被着体上に粘着シート50が貼り合わせられた状態で粘着シート50の表面から第一離型フィルム10を剥離する際に、粘着シートの変形や白化、被着体から粘着シートが剥離する等の不具合を生じる場合がある。光硬化後の粘着シート50から第一離型フィルム10との剥離力(ピール強度)は、0.1~1N/50mmが好ましく、0.2~0.8N/50mmがより好ましく、0.3~0.7N/50mmがさらに好ましい。離型フィルムと粘着シートの剥離力は、引張速度:0.3m/分の180°ピール試験による測定値である。上記のように、第一離型フィルム10の離型層15がフッ素系離型層または縮合型シリコーン離型層である場合に、光硬化後の粘着シート50と第一離型フィルム10との剥離力の過度の上昇を抑制できる。
【0084】
光硬化性粘着剤組成物に紫外線吸収剤が含まれている場合に、光照射面側の離型フィルムの剥離力が上昇する理由は定かではないが、離型層中の未反応の反応性官能基と粘着剤組成物中の化合物との反応が関与していると推定される。
【0085】
前述のように、紫外線吸収剤を含む光硬化性粘着剤組成物に照射した紫外光の大半は、紫外線吸収剤により吸収される。紫外線吸収剤が光を吸収すると、光エネルギーが熱エネルギーに変換されて温度が上昇する。特に、光照射面側の離型フィルムの離型層と粘着剤組成物層との界面近傍では、紫外線吸収剤による光吸収量が大きいため、温度が上昇しやすい。光照射下で温度が上昇すると、光硬化反応に加えて熱硬化反応が進行しやすくなる。そのため、離型層15中の未反応の熱反応性官能基と粘着剤組成物中の化合物との反応等により、接着力(剥離力)が上昇すると考えられる。
【0086】
後述の参考例に示すように、粘着剤の光硬化により剥離力が上昇した離型フィルムを、一旦粘着シートから剥離し(この際のピール強度を第一ピール強度F1とする)、同一または同種の離型フィルムを再度粘着シートに貼り合わせてピール試験を実施すると(この際のピール強度を第二ピール強度F2とする)、第二ピール強度F2は、第一ピール強度F1に比べて小さくなる。このことからも、光硬化の際の化学結合の形成等が、離型層と粘着剤層との接着力が大きくなる原因であると考えられる。
【0087】
縮合型シリコーン離型層を構成する縮合型シリコーン樹脂は、アルケニル基等の熱反応性の高い官能基が少ないかまたは存在しないため、光硬化の際に紫外線吸収剤による光吸収により温度が上昇した場合でも、粘着剤組成物層55中の化合物と離型層15中の官能基との反応が生じ難く、剥離力の過度の上昇を抑制できると考えられる。
【0088】
フッ素系離型層を構成するフッ素系樹脂は、表面自由エネルギーが小さいために、粘着剤組成物中の反応性の高い官能基と離型層との相互作用が小さく、界面での化学反応が生じ難いこと等が、剥離力上昇の抑制に関与していると考えられる。
【0089】
前述のように、光硬化型粘着シート50から第一離型フィルム10を剥離する際の第一ピール強度F1は、0.1~1N/50mmが好ましい。光硬化型粘着シート50から第一離型フィルム10を剥離し、再度同一または同種の離型フィルムを貼り合わせて剥離する際の第二ピール強度F2は、F1よりも小さいことが好ましい。F1/F2は、3以下が好ましい。F1/F2は、一般には0.5以上である。F1/F2は、0.7~2.5がより好ましく、0.8~2.0がさらに好ましい。
【0090】
[粘着シートの用途]
上記の光硬化型粘着シートは、可視光透過率が高く、かつ紫外線カット性を有するため、紫外線カット性が要求される表示装置やディスプレイ用入力装置用の光学粘着剤として好適に用いられる。表示装置としては、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等が挙げられる。入力装置としては、タッチパネルが挙げられる。また、上記の光硬化型粘着シートは、表示装置と入力装置との貼り合わせ、表示装置や入力装置の表面に配置される透明板との貼り合わせ等に用いることもできる。
【0091】
両面に離型フィルムが仮着された離型フィルム付き粘着シートの使用に際しては、まず軽剥離フィルム(第二離型フィルム20)を剥離して粘着シート50の第二主面を露出させ、第一の被着体との貼り合わせを行う。その後、重剥離フィルム(第一離型フィルム10)を剥離して粘着シート50の第一主面を露出させ、第二の被着体との貼り合わせを行う。両面の離型フィルムを剥離した後に被着体との貼り合わせを行ってもよい。粘着シートが光硬化性を有している場合は、被着体との貼り合わせ後の粘着シートにさらに光照射を行ってもよい。被着体との貼り合わせ後に粘着シートをさらに光硬化することにより、被着体との接着信頼性を向上できる場合がある。
【実施例
【0092】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
[粘着剤組成物の調製]
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA):78重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP):18重量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):4重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「イルガキュア184」):0.035重量部、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF製「イルガキュア651」):0.035重量部を添加した。この組成物に紫外線を照射して、室温における粘度が約20Pa・sとなるまで予備重合を行い、重合率が約8%のプレポリマーを得た。
【0094】
プレポリマー組成物100重量部に、重量平均分子量12500のポリエステルウレタンジアクリレート(根上工業製「アートレジン UN‐350」):2重量部、アクリルオリゴマー:5重量部、紫外線吸収剤(BASF製「Tinosorb S」):0.70重量部、光重合開始剤として、BASF製「イルガキュア184」:0.05重量部、BASF製「イルガキュア651」:0.05重量部、およびBASF製「イルガキュア819」:0.40重量部、連鎖移動剤として、α‐メチルスチレン二量体(日油製「ノフマー MSD」):0.07重量部、ならびにシランカップリング剤として信越化学製「KBM-403」:0.3重量部を添加した後、これらを均一に混合して、光硬化性粘着剤組成物を調製した。上記のアクリルオリゴマーは、モノマー成分としてメタクリル酸ジシクロペンタニルとメタクリル酸メチル(MMA)を60:40の重量比で有する重量平均分子量が5100のオリゴマーを用いた。
【0095】
[離型フィルムAの作製]
ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサンを含む非フッ素系付加型シリコーン組成物(東レ・ダウコーニング製「LTC761」):30重量部、シリコーンディスパージョン(東レ・ダウコーニング製「BY 24-850」):0.9重量部、およびシリコーン硬化用白金触媒(東レ・ダウコーニング製「SRX 212」):2重量部を、体積比1:1のトルエンとヘキサンの混合溶媒により希釈して、離型剤溶液を調製した。この溶液を厚み75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に塗布し、130℃の熱風乾燥機で1分間加熱して、ポリエステルフィルムの一方の面に非フッ素系付加型シリコーン離型層を備える離型フィルムAを作製した。
【0096】
[比較例1]
比較例1では、支持離型フィルムおよびカバー離型フィルムのそれぞれに、上記の離型フィルムAを用いた。支持離型フィルムの離型層形成面に、粘着剤組成物を300μmの厚みで塗布して塗布層を形成し、塗布層の表面にカバー離型フィルムを貼り合わせて積層体を得た。この積層体に、カバー離型フィルム側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cmになるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、光硬化型粘着剤層の両面に離型フィルムを有する粘着シートを得た。
【0097】
[実施例1]
カバー離型フィルムとして、離型フィルムAに代えて、ポリエステルフィルムの一方の面にフッ素系付加型シリコーン離型層を備える離型フィルム(ニッパ製「FSC6」)を用いた。それ以外は比較例1と同様にして、光硬化型粘着剤層の両面に離型フィルムを有する粘着シートを得た。
【0098】
[実施例2]
カバー離型フィルムとして、離型フィルムAに代えて、ポリエステルフィルムの一方の面に非フッ素系縮合型シリコーン離型層を備える離型フィルム(ニッパ製「SR(S)」)を用いた。それ以外は比較例1と同様にして、光硬化型粘着剤層の両面に離型フィルムを有する粘着シートを得た。
【0099】
[参考例1]
比較例1および実施例1,2において、反対側の面、すなわち支持離型フィルム側から紫外線照射を行い、塗布層を硬化させて、光硬化型粘着剤層の両面に離型フィルムを有する粘着シートを得た。
【0100】
[剥離性評価]
<離型フィルムのピール強度>
離型フィルム付き粘着シートを50mm幅に切り出し、23℃の環境下で、引張試験機を用いて、引張速度0.3m/分で、180°ピール試験を行い、粘着シートからカバー離型フィルムを剥離する際のピール強度を測定した。すなわち、比較例1および実施例1,2の試料については、光照射面側の離型フィルムのピール強度、参考例1については光照射面と反対側の面の離型フィルムのピール強度を測定した。
【0101】
[評価結果]
実施例および比較例のカバー離型フィルムの種類、およびカバー離型フィルムのピール強度の測定結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
支持離型フィルム側からの光照射により粘着剤の光硬化を行った場合(参考例1)では、いずれの離型フィルムを用いても、カバー離型フィルムのピール強度に特段の差はみられなかった。カバー離型フィルム側から光照射を行った場合、比較例1では、ピール強度が1N/50mmを超えており、ピール強度の大幅な増加がみられた。一方、フッ素系シリコーン離型フィルムを用いた実施例1、および縮合型シリコーン離型フィルムを用いた実施例2では、参考例1に比べるとピール強度が増大していたものの、ピール強度は0.5N/50mmを下回っていた。
【0104】
[参考例2]
上記の比較例1(カバー離型フィルムとして非フッ素系付加型シリコーン離型フィルムを用いた例)の離型フィルム付き粘着シートから、支持離型フィルム(軽剥離フィルム)を剥離し、粘着シートをガラス板に貼り合わせた。この試料からカバー離型フィルム(重剥離フィルム)を剥離し、粘着シートに同一種の離型フィルムを貼り合わせ、ハンドローラで加圧した。離型フィルムに幅5cmの切り込みを入れて、ピール強度を測定したところ、0.20N/50mmであった。
【0105】
比較例1と、参考例1および参考例2との対比から、比較例1では、粘着剤組成物を硬化する際の光照射により、離型層と粘着剤層との接着力を上昇させる作用(例えば、離型剤の樹脂成分と粘着剤中の硬化成分等との反応による化学結合の生成)が大きいために、ピール強度が上昇したと考えられる。
【0106】
一方、実施例1および実施例2では、離型層を構成する樹脂材料に硬化反応性の官能基の残存量が少なく、さらに、実施例1ではフッ素の導入により離型層の表面自由エネルギーが小さいために、離型層と粘着剤層との間の化学結合の生成等による接着力上昇作用が小さく、ピール強度の過度の上昇が抑制されたと考えられる。
【符号の説明】
【0107】
1 :離型フィルム付き粘着シート
10,20 :離型フィルム
11,21 :フィルム基材
15,25 :離型層
図1