(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】防振方法及び防振部材の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 31/08 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E02D31/08
(21)【出願番号】P 2020052648
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友理
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101392562(CN,A)
【文献】特開2014-177779(JP,A)
【文献】特開2010-001668(JP,A)
【文献】特開2005-240985(JP,A)
【文献】特開2019-007223(JP,A)
【文献】特開2015-052216(JP,A)
【文献】特開2017-115476(JP,A)
【文献】特開2006-342508(JP,A)
【文献】特開2012-017574(JP,A)
【文献】米国特許第05174082(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の上に位置する振動源と防振対象物との間の前記地盤の上に、
前記振動源と前記防振対象物とを結ぶ直線の延在する第1方向と交差する第2方向に長手方向を有し、前記地盤との接触面に複数
の凸部を有する防振部材を配置することを含み、
断面視において
、前記凸部の高さは、前記防振部材における前
記凸部以外の部分の厚さよりも小さ
く、
前記複数の凸部が、前記第1方向及び前記第2方向にドット状に並べて配置される、防振方法。
【請求項2】
前記防振部材をコンクリートで構成する、請求項1に記載の防振方法。
【請求項3】
前記振動源と前記防振対象物とを結ぶ直線の延在する方向における前記防振部材の長さを、(VR/f)/2(ただし、VRは、表面波の速度、fは、表面波の振動数)以上とする、請求項1又は2に記載の防振方法。
【請求項4】
前記防振部材における前記接触面とは反対側の面に、道路を設ける、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の防振方法。
【請求項5】
地盤の上に位置する振動源と防振対象物との間の前記地盤の表面に、
前記振動源と前記防振対象物とを結ぶ直線の延在する第1方向及び当該第1方向と交差する第2方向にドット状に並ぶ複数の凹
部を形成し、
前記複数の凹
部が形成された領域にコンクリートを打設することにより、前記振動源と前記防振対象物との間の前記地盤の上に
、前記第2方向に長手方向を有すると共に複数の凸部を有する防振部材を形成することを含み、
断面視において
、前記凸部の高さは、前記防振部材における前
記凸部以外の部分の厚さよりも小さい、防振部材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、防振方法及び防振部材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工事現場で発生する振動や車両等の移動によって発生する振動に対する対策として、振動源と防振対象物との間の地盤に、空の溝を設けて振動の伝播を軽減する技術が知られている。しかしながら、空の溝を放置しておくと、時間とともに溝周囲の地盤が崩れるなどの不具合が生じ得る。その対策として、例えば、特許文献1には、振動源の周囲に溝を設け、その溝の中に間隔保持材を挿入した構造物が開示されている。間隔保持材は、溝の両側の壁面に接する抑え板と、両側の抑え板に介在させて配置した横断材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防振構造物は、地盤に対して地下数mにも及ぶ溝を掘る必要があり、かつ、溝の内部に間隔保持材を設ける必要があるため、施工性が悪いという問題がある。また、人や車両等の落下を防止するために溝の上方に蓋を設けているものの、地中に空洞が存在していると経年劣化による陥没等のおそれがあり、長期的な対策としては問題がある。
【0005】
本発明の課題の一つは、長期的に安全性が高く、振動の伝播を抑制することが可能な防振方法を提供することにある。
【0006】
本発明の課題の一つは、長期的に安全性が高く、振動の伝播を抑制することが可能な防振部材を設置する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における防振方法は、振動源と防振対象物との間の地盤の上に、前記地盤との接触面に複数の凹部又は凸部を有する防振部材を配置することを含む。
【0008】
前記防振部材をコンクリートで構成してもよい。
【0009】
前記振動源と前記防振対象物とを結ぶ直線の延在する方向における前記防振部材の長さを、(VR/f)/2(ただし、VRは表面波の速度、fは表面波の振動周波数)以上としてもよい。
【0010】
前記複数の凹部又は凸部をドット状又はライン状に設けてもよい。
【0011】
前記防振部材の下に、当該防振部材に連結する複数の杭を設けてもよい。また、前記防振部材の上に、道路を設けてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態における防振部材の設置方法は、振動源と防振対象物との間の地盤の表面に、複数の凹部又は凸部を形成し、前記複数の凹部又は凸部が形成された領域にコンクリートを打設することを含む。
【0013】
前記複数の凹部又は凸部をドット状又はライン状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の防振方法を説明するための平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の防振方法を説明するための断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の防振部材を下方から見た構成を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の防振部材の設置方法を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態の防振構造物の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態の防振構造物の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態の防振部材の設置方法を示す断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態の防振方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0016】
本明細書中において、「振動源」とは、地盤に振動を生じさせる領域を指す。振動源には、例えば、建設工事や土木工事が行われる建設現場、又は、道路、飛行場のような車両等の走行に伴う振動が発生する施設(交通機関)も含まれる。なお、振動源は、建設現場のような比較的広い領域を指す場合もあるし、杭打ち作業が行われている領域のように局所的に振動を生じる領域を指す場合もある。
【0017】
本明細書中において、「防振対象物」とは、地盤を介して伝播する振動から保護する対象となる構造物を指す。防振対象物には、例えば、建築物、又は、遺跡等が含まれる。典型例としては、病院、マンション等の多数の人の居住空間となっている建築物や、精密機器が動作する工場等が挙げられる。
【0018】
本明細書中において、「防振部材」とは、振動源から伝播する振動を抑制する目的で設置される人工部材であり、特に、コンクリート、鉄(鉄合金を含む)、樹脂、金属、合金又はこれらを組み合わせたもので構成された部材を指す。
【0019】
〔第1実施形態〕
[防振方法の構成]
図1は、本発明の第1実施形態の防振方法を説明するための平面図である。
図2は、本発明の第1実施形態の防振方法を説明するための断面図である。具体的には、
図2は、
図1をA-A線で切った断面図に相当する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の防振部材10は、地盤1の上に位置する振動源2と防振対象物3との間に配置される。防振部材10は、振動源2から発生する振動が防振対象物3へ伝播することを抑制するための構造物である。本実施形態において、振動源2は、工事現場で建設機械が作業する領域であり、防振対象物3は、マンションである。振動源2では、地盤1に対して振動が発生する。
図2に示すように、振動源2で発生した振動は、地盤1の表面を進行する表面波2aとして地盤1を伝播する。本実施形態において、特に遮断することが望ましい振動は、周波数が20Hz以下(好ましくは10Hz以下)の振動、すなわち、人が不快に感じやすい振動である。
【0021】
本実施形態において、防振部材10は、厚さ30cmの板状のコンクリート部材である。防振部材10は、表面波2aによる地盤1の変形を抑えて振動の伝播を抑制する役割を果たす。
図2に示すように、防振部材10は、地盤1との接触面に複数の凸部11を有している。複数の凸部11は、地盤1との接触面積を向上させることから、地盤1の変形をより多くの面積で抑えることができる。また、防振部材10は、振動源2と防振対象物3との間を遮るように、平面視において細長い形状(線状の形状)を有している。すなわち、防振部材10は、振動源2と防振対象物3とを結ぶ直線の延在する方向と交差する方向に長手方向を有する。ただし、この例に限らず、防振部材10は、平面視において矩形形状であってもよいし、円形形状であってもよい。また、防振部材10の厚さに特に制限はないが、厚くなるにしたがって効果が増す。
【0022】
図3は、本発明の第1実施形態の防振部材10を下方から見た構成を示す図である。本実施形態では、
図3(A)に示すように、防振部材10の下面に複数の凸部11がドット状(点状)に配置されている。ここでは、各凸部11の外形が矩形である例を示しているが、この例に限らず、各凸部11の外形は、円形、楕円形、矩形以外の多角形であってもよい。また、
図3(A)では、各凸部11が規則的に配置された例を示したが、不規則に配置されていてもよい。
【0023】
図3(B)は、本実施形態の防振部材の他の例を示しており、防振部材10aは、複数の凸部11aを有している。各凸部11aは、ライン状(線状)に並んで配置される。このとき、各凸部11aは、防振部材10aの長手方向に沿って設けられる。すなわち、各凸部11aは、振動源2と防振対象物3とを結ぶ直線の延在する方向と交差する方向に長手方向を有する。このように配置すると、各凸部11aは、
図2に示した表面波2aの進行方向に対して略直交するように並ぶこととなる。表面波2aが伝播する距離が複数の凸部11aによって伸びるため、地盤1の変形をより多くの面積で抑えることができる。そのため、各凸部11aを並べることは、防振効果を高める上で有効である。
【0024】
図1において、防振部材10の幅(振動源2と防振対象物3とを結ぶ直線の延在する方向における防振部材10の長さ)を「W」とする。このとき、防振部材10の幅Wは、(V
R/f)/2以上であることが望ましい。ここで、V
Rは、表面波2aの速度であり、fは、表面波2aの振動数(周波数)である。つまり、防振部材10の幅Wは、表面波2aの1波長の半分の長さ以上であることが望ましい。
【0025】
表面波2aは、山部分と谷部分とが連なる波と捉えることができるため、半波長の周期で山部分が発生する。したがって、防振部材10が、表面波2aの山部分を覆うことができるように十分な幅を有していれば、防振効果をより高めることができる。
【0026】
[防振部材の設置方法]
図4は、本発明の第1実施形態における防振部材10の設置方法を示す断面図である。まず、
図4(A)において、振動源2と防振対象物3との間の地盤1に対して、複数の凹部20を形成する。凹部20は、例えば、バックホーのバケット(ショベル)を用いて形成すればよい。本実施形態では、凹部20の深さを5cmとするが、この例に限られるものではない。
【0027】
次に、
図4(B)に示すように、複数の凹部20を囲む枠体22を設け、その内側の領域にひび割れ防止用のワイヤーメッシュ24を配置する。その後、
図4(C)に示すように、枠体22で囲まれた領域内に生コンクリート26を打設する。この時点で、各凹部20の内部には生コンクリート26が充填される。
【0028】
生コンクリート26が硬化したら、枠体22を除去する。これにより、
図4(D)に示すように、複数の凸部11を有する防振部材10が完成する。このように、複数の凸部11を有する防振部材10は、振動源2と防振対象物3との間の地盤1の上に、直接コンクリートを打設して設置することができる。なお、本実施形態では、地盤1に対して複数の凹部20を形成することにより、防振部材10の複数の凸部11を形成する例を示したが、この例に限らず、地盤1に対して複数の凸部を形成し、防振部材10の地盤1との接触面に複数の凹部を形成してもよい。この場合、複数の凹部は、
図3に示したように、ドット状又はライン状に設けることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の防振方法では、振動源2と防振対象物3との間の地盤1の上に、地盤1との接触面に複数の凸部11を有する防振部材10を配置する。これにより、地盤1に対して溝を掘ったり、溝の内部に構造物を配置したりすることなく振動の伝播を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、長期的に安全性が高く、振動の伝播を抑制することが可能な防振方法を提供することが可能である。
【0030】
(変形例)
本実施形態では、振動源2と防振対象物3との間の地盤1の上に、直接コンクリートを打設して防振部材10を設置する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、防振部材10は、他の場所であらかじめ形成しておき、それを運搬して振動源2と防振対象物3との間の所望の領域に配置してもよい。
【0031】
本変形例によれば、振動源2と防振対象物3との間でコンクリートの打設作業を行う時間を省けるほか、あらかじめ形成しておいた防振部材10を配置するだけで済むため、防振対策に要する工期の短縮化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態では、防振部材10としてコンクリートで構成された部材を用いる例を示したが、この例に限らず、鉄又は鉄合金(例えば、鋼材)で構成された部材を用いてもよい。その場合、鉄又は鉄合金で防振部材を形成する際に、鋳型の底面に凹部又は凸部を形成しておき、一方の面に凹部又は凸部が形成された板状部材を用意すればよい。
【0033】
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の防振構造物30を用いて振動を抑制する方法について説明する。具体的には、本実施形態の防振構造物30は、防振部材10bが倉庫等の建造物12の基礎構造を兼ねている。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0034】
図5は、本発明の第2実施形態の防振構造物30の構成を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態の防振部材10bは、地盤1との接触面に複数の凸部11bを有する。各凸部11bは、地中深くまで延在しており、表面波2aによる地盤1の変形を抑えて振動の伝播を抑制する役割のほか、杭としての役割も兼ねている。つまり、本実施形態では、防振部材10bの下に、防振部材10bに連結する複数の杭が設けられている。
【0035】
本実施形態では、防振構造物30において、防振部材10bの平坦部が耐圧盤としての役割を兼ね、各凸部11bが杭基礎としての役割を兼ねている。
図5では、防振部材10bの上の建造物12として倉庫を設置した例を示しているが、この例に限らず、他の構造物を設置してもよい。
【0036】
本実施形態によれば、防振部材10bの重量に加えて建造物12の重量も加算されるため、振動源2から伝播する表面波2aの抑制効果を向上させることができる。また、杭基礎として機能する各凸部11bを地中深くまで配置しているため、振動源2から地中を伝播する実体波2bをも抑制することができる。さらに、防振部材10bの上方を倉庫等として利用することができるため、振動源2と防振対象物3との間の領域を他の目的に有効利用することができる。
【0037】
(変形例)
本実施形態では、防振部材10bの地盤1との接触面に設けられた各凸部11bを複数の杭として用いる例について説明したが、この例に限られるものではない。例えば、あらかじめコンクリート等で構成された複数の杭を地中に埋設しておき、それら複数の杭の上に防振部材10bを設置してもよい。この場合、複数の杭の頂部を地盤1の表面から突出させておき、その後、
図4に示したように、防振部材10bを設置することにより、複数の杭と防振部材10bとを連結してもよい。
【0038】
〔第3実施形態〕
第3実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の防振構造物40を用いて振動を抑制する方法について説明する。具体的には、本実施形態の防振構造物40は、複数の凸部11cを有する防振部材10cの上に、道路13を設けた構造を有している。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0039】
図6は、本発明の第3実施形態の防振構造物40の構成を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態の防振部材10cは、地盤1との接触面に複数の凸部11cを有し、地盤1との接触面とは反対側の面(上面)には、道路13が設けられている。本実施形態において、道路13は、アスファルトで舗装された道路である。したがって、本実施形態の防振部材10cの上には、複数の車両14が通行できるようになっている。
【0040】
本実施形態によれば、防振部材10cの重量に加えて道路13の重量も加算されるため、振動源2から伝播する表面波2aの抑制効果を向上させることができる。また、防振部材10cの上方を道路として利用することができるため、振動源2と防振対象物3との間の領域を他の目的に有効利用することができる。
【0041】
〔第4実施形態〕
第4実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で防振部材10dを設置する例について説明する。具体的には、本実施形態では、防振部材10dを地盤1の中に埋設した状態で設置する例について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0042】
図7は、本発明の第4実施形態における防振部材10dの設置方法を示す断面図である。まず、
図7(A)に示すように、地盤1に対して掘削穴50を設け、その底面に複数の凹部20を形成する。掘削穴50は、配置を予定している防振部材10cのサイズを考慮して形成する。具体的には、掘削穴50の平面視における面積は、防振部材10cの平面視における面積に対応し、断面視における深さは、防振部材10cの断面視における厚さに対応する。
【0043】
掘削穴50及び凹部20は、例えば、バックホーのバケット(ショベル)を用いて形成すればよい。本実施形態では、凹部20の深さを5cm、掘削穴50の深さを30cmとするが、この例に限られるものではない。
【0044】
次に、
図7(B)に示すように、掘削穴50の内側の領域にひび割れ防止用のワイヤーメッシュ24を配置する。その後、
図7(C)に示すように、掘削穴50で囲まれた領域内に生コンクリートを打設する。生コンクリートが硬化したら、
図7(C)に示すように、複数の凸部11dを有する防振部材10dが完成する。
【0045】
本実施形態によれば、振動源2と防振対象物3との間の地盤1の中に、複数の凸部11dを有する防振部材10dを設置することができる。この場合、
図7(C)に示すように、地盤1の表面と防振部材10dの表面がほぼ同一面となるため、地盤1の上に余計な段差を形成することがない。このような構造は、防振部材10dの上に第2実施形態又は第3実施形態のような他の構造物を配置する場合にも有効である。
【0046】
〔第5実施形態〕
第5実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で防振部材10を設置する例について説明する。具体的には、本実施形態では、防振部材10を地盤1の中に途中まで埋設した状態で設置する例について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を用いることにより詳細な説明を省略する。
【0047】
図8は、本発明の第5実施形態の防振方法を説明するための断面図である。本実施形態では、防振部材10が、地盤1に対して僅かに埋まった状態で設置される。すなわち、第1実施形態の
図2では、複数の凸部11が地盤1に埋まっており、防振部材10のほとんどが地盤1の上に配置された例を示したが、
図8では、防振部材10が途中まで地盤1の中に埋まっている。防振部材10をどの程度まで埋設するかについて特に制限はないが、例えば、厚さに対して1/4以上1/2以下の範囲で埋設してもよい。
【0048】
本実施形態によれば、防振部材10が地盤1の中に埋設されるため、表面波2aが伝播する距離が第1実施形態よりも伸びるため、地盤1の変形をより多くの面積で抑えることができる。また、第2実施形態や第3実施形態のように、防振部材10の上に倉庫や道路等を建設する場合において、地盤1からの高さと防振部材10の厚さとの両方を調整することができる。
【0049】
本発明の実施形態及びその変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。上述した実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0050】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0051】
1…地盤、2…振動源、2a…表面波、2b…実体波、3…防振対象物、10、10a、10b、10c、10d…防振部材、11、11a、11b、11c、11d…凸部、12…建造物、13…道路、14…車両、20…凹部、22…枠体、24…ワイヤーメッシュ、26…生コンクリート、30、40…防振構造物、50…掘削穴