(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ガス警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 21/16 20060101AFI20240802BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240802BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G08B21/16
G01N27/00 K
G01N27/04 Q
(21)【出願番号】P 2020077396
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】秦 昇平
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 康介
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005594(JP,A)
【文献】特開2009-009263(JP,A)
【文献】特開2008-108194(JP,A)
【文献】特開2015-230595(JP,A)
【文献】特開2010-086199(JP,A)
【文献】特開2017-151802(JP,A)
【文献】特開2014-126444(JP,A)
【文献】特開2007-066056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-27/24
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスを検知するガスセンサと、
前記検知対象ガスの検知結果に基づく報知を行う報知部と、
前記ガスセンサによる前記検知対象ガスの検知結果に応じて、第1レベルの注意報と、前記第1レベルよりも高い第2レベルの警報と、を行うように前記報知部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ガスセンサによる前記検知対象ガスの検知結果が前記ガスセンサの鋭敏化判定条件を満たした場合、前記報知部による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されて
おり、
前記鋭敏化判定条件は、前記ガスセンサの信号強度に関する第1条件、および、前記第1条件の充足期間に関する第2条件を含み、
前記制御部は、前記ガスセンサの信号強度が前記第1条件を満たした期間が、前記第2条件を満たした場合に、前記鋭敏化判定条件を満たしたと判定する、ガス警報器。
【請求項2】
前記制御部は、前記検知対象ガスの検知結果が前記鋭敏化判定条件を満たした場合でも、警報条件を変更せずに前記警報の報知制御を行うように構成されている、請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記鋭敏化判定条件は、前記ガスセンサの信号強度に関する
前記第1条件、前記第1条件の充足期間に関する
前記第2条件、および通電時間に関する第3条件を含み、
前記制御部は、累計の通電時間が前記第3条件を満たしている場合に、前記ガスセンサの信号強度が前記第1条件を満たした期間が、前記第2条件を満たした場合に、前記鋭敏化判定条件を満たしたと判定する、請求項1または2に記載のガス警報器。
【請求項4】
温度センサをさらに備え、
前記鋭敏化判定条件は、温度の許容範囲に関する第4条件をさらに含み、
前記制御部は、前記温度センサの出力値が前記第4条件を満たさない状態で取得された前記ガスセンサの検知結果を、前記第1条件および前記第2条件の判定処理から除外する、請求項3に記載のガス警報器。
【請求項5】
前記制御部は、前記注意報の出力を停止する制御を実行している間、前記検知対象ガスの検知結果が前記鋭敏化判定条件を充足しない復帰判定条件を満たした場合、前記注意報の出力を停止する制御を解除するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス警報器。
【請求項6】
前記制御部は、前記検知対象ガスの検知結果が鋭敏化の報知条件を満たした場合に、前記ガスセンサが鋭敏化していることを前記報知部に報知させる制御を行い、
前記鋭敏化の報知条件は、前記ガスセンサの信号強度に関する条件が前記鋭敏化判定条件よりも高レベルに設定されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス警報器が備えるガスセンサが鋭敏化することが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、検知対象ガスとしてメタン(CH4)ガスおよび一酸化炭素(CO)ガスを検知する半導体式ガスセンサを備えたガス警報器が開示されている。ガス警報器は、ガスセンサで検知された検知対象ガスの濃度が1段目警報設定点以上となった際に予備警報を報知し、ガスセンサで検知された検知対象ガスの濃度が2段目警報設定点以上となった際に警報を報知する。
【0004】
上記特許文献1では、ガスセンサの長時間使用を行っていくと、ガスセンサが非検知対象ガスである水素(H2)に対して鋭敏化することが記載されている。上記特許文献1では、上記検知対象ガス(メタンガス、COガス)と、非検知対象ガスとしての水素との各ガスを検出するガスセンサを用いて、ガスセンサで検知された水素の濃度が予め設定された濃度以上となった場合に、1段目警報設定点を解除することにより、水素ガスに起因する誤作動を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、ガスセンサの鋭敏化を把握するために、検知対象ガス以外に非検知対象ガスである水素も検出する必要がある。また、使用期間の経過に伴いガスセンサが鋭敏化する現象は、水素のみに起因して発生する訳ではなく、検知対象ガスとしてのメタンガスや水素以外の雑ガスに対しても鋭敏化することが知られている。このため、上記特許文献1のように水素の検出濃度のみに着目してガスセンサの鋭敏化を把握しようとすると、ガスセンサの鋭敏化に適切に対応できない可能性がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、非検知対象ガスを検知することなく、ガスセンサの鋭敏化に対して適切に対応可能なガス警報器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の局面によるガス警報器は、検知対象ガスを検知するガスセンサと、検知対象ガスの検知結果に基づく報知を行う報知部と、ガスセンサによる検知対象ガスの検知結果に応じて、第1レベルの注意報と、第1レベルよりも高い第2レベルの警報と、を行うように報知部を制御する制御部とを備え、制御部は、ガスセンサによる検知対象ガスの検知結果がガスセンサの鋭敏化判定条件を満たした場合、報知部による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されており、鋭敏化判定条件は、ガスセンサの信号強度に関する第1条件、および、第1条件の充足期間に関する第2条件を含み、制御部は、ガスセンサの信号強度が第1条件を満たした期間が、第2条件を満たした場合に、鋭敏化判定条件を満たしたと判定する。
【0009】
この発明の一の局面によるガス警報器では、上記のように、制御部が、ガスセンサによる検知対象ガスの検知結果がガスセンサの鋭敏化判定条件を満たした場合、報知部による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されている。これにより、ガスセンサが検知対象ガス以外の非検知対象ガスを検出しなくても、検知対象ガスの検知結果に基づいてガスセンサの鋭敏化が発生しているか否かを把握できる。ここで、ガスセンサが特定の非検知対象ガスに対して鋭敏化している場合でも、他の要因によって鋭敏化している場合でも、鋭敏化の影響は、最終的には検知対象ガスの検知結果に反映されることから、検知対象ガスの検知結果に対して鋭敏化判定条件を設定することによって、ガスセンサの鋭敏化を把握できる。そして、ガスセンサの鋭敏化判定条件を満たした場合に注意報の出力を停止する制御が行われるので、鋭敏化に起因する注意報の誤報知を回避することができる。これにより、ガスセンサの鋭敏化に対して適切に対応することができる。
【0010】
上記一の局面によるガス警報器において、好ましくは、制御部は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件を満たした場合でも、警報条件を変更せずに警報の報知制御を行うように構成されている。ここで、ガスセンサが鋭敏化した場合に、ガスセンサの特性変化に応じて警報条件を補正することも考えられるが、鋭敏化の程度はガスセンサの個体毎に異なるとともに、鋭敏化によるガスセンサの特性変化も画一的ではないため、警報条件の適切な補正は困難となる。一方、鋭敏化は、ガスセンサの感度上昇により警報の報知タイミングを早めるように作用するので、フェイルセーフの観点からは、検知対象ガス濃度の上昇に対し早めに警報を報知しても問題がないことになる。そこで、上記のように鋭敏化判定条件を満たした場合でも警報条件を変更せずに警報の報知制御を行うことによって、たとえガスセンサの鋭敏化が生じた場合でも、緊急性の高い警報の報知を確実に行うことができる。
【0011】
上記一の局面によるガス警報器において、好ましくは、鋭敏化判定条件は、ガスセンサの信号強度に関する第1条件、第1条件の充足期間に関する第2条件、および通電時間に関する第3条件を含み、制御部は、累計の通電時間が第3条件を満たしている場合に、ガスセンサの信号強度が第1条件を満たした期間が、第2条件を満たした場合に、鋭敏化判定条件を満たしたと判定する。このように構成すれば、累計の通電時間が第3条件を満たした場合に判定を行うことで、使用期間の経過に伴って生じるガスセンサの鋭敏化を適切に把握できるとともに、使用開始直後など鋭敏化が生じない時期には不必要な制御処理の実行を防止できる。また、鋭敏化が発生した場合にはガスセンサの信号強度の上昇が継続的となる。そこで、ガスセンサの信号強度が第1条件を満たすことにより鋭敏化していると考えられる状況が、どれだけの期間発生しているかという第2条件を設定することにより、実際に検知対象ガスが存在していた場合などの鋭敏化以外の要因によって一時的に信号強度が上昇している状況と、鋭敏化の発生とを正確に区別することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、温度センサをさらに備え、鋭敏化判定条件は、温度の許容範囲に関する第4条件をさらに含み、制御部は、温度センサの出力値が第4条件を満たさない状態で取得されたガスセンサの検知結果を、第1条件および第2条件の判定処理から除外する。ここで、ガスセンサの特性は、環境温度によっても変化することが知られている。そこで、温度の許容範囲である第4条件を満たさない状況下で取得されたガスセンサの検知結果については、環境温度の影響が大きく受けている可能性があることから、鋭敏化の判定処理に利用しないこととする。この結果、環境温度が変動しやすい状況や、過酷な温度条件での利用に対しても、ガスセンサの鋭敏化判定の信頼性を向上することができる。
【0013】
上記一の局面によるガス警報器において、好ましくは、制御部は、注意報の出力を停止する制御を実行している間、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件を充足しない復帰判定条件を満たした場合、注意報の出力を停止する制御を解除するように構成されている。このように構成すれば、ガスセンサが鋭敏化していると判定された後、鋭敏化が解消した場合や、検知対象ガスによってガスセンサの信号強度が一時的に上昇したことに起因してガスセンサが鋭敏化していると判定された場合には、復帰判定条件を満たすことによって、停止していた注意報の出力を行えるようにすることができる。このため、ユーザは注意報の報知を受けることによって検知対象ガスの濃度が上昇しつつあることを把握できるようになるため、ガス警報器の利便性が向上する。
【0014】
上記一の局面によるガス警報器において、好ましくは、制御部は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化の報知条件を満たした場合に、ガスセンサが鋭敏化していることを報知部に報知させる制御を行い、鋭敏化の報知条件は、ガスセンサの信号強度に関する条件が鋭敏化判定条件よりも高レベルに設定されている。このように構成すれば、ガスセンサの鋭敏化の程度が鋭敏化判定条件よりも高い報知条件のレベルに達した場合に、鋭敏化していることをユーザに報知できる。これにより、ユーザは、ガスセンサの交換などの対処を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、非検知対象ガスを検知することなく、ガスセンサの鋭敏化に対して適切に対応可能なガス警報器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のガス警報器の構成を示すブロック図である。
【
図2】ガスセンサの感度特性を説明するためのグラフである。
【
図4】温度に対するガスセンサの感度特性の変化を説明するためのグラフである。
【
図6】鋭敏化判定および復帰判定の処理の概要を説明するための図である。
【
図7】鋭敏化判定および復帰判定の処理を示したフロー図である。
【
図8】第2実施形態のガス警報器の構成を示すブロック図である。
【
図9】鋭敏化の報知条件を説明するための図である。
【
図10】鋭敏化の報知条件の判定処理を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1~
図6を参照して、第1実施形態によるガス警報器100の構成について説明する。
【0019】
(ガス警報器の全体構成)
図1に示すガス警報器100は、検知対象ガスを検出するとともに、警報を出力することによって、ガス漏れなどをユーザに対して報知するガス警報器である。検知対象ガスとは、ガス警報器100が検知すべきガスである。第1実施形態では、検知対象ガスは、燃料ガス(都市ガス)に主成分として含まれるメタンガスを含む。
【0020】
ガス警報器100は、ガス検出部1と、報知部2と、制御部3と、記憶部4、温度センサ5とを主として備えている。ガス検出部1、報知部2、制御部3、記憶部4および温度センサ5は、ガス警報器100の外装である筐体6内に収容されている。ガス警報器100は、商用電源から供給される電力、または図示しない電池の電力により動作する。
【0021】
ガス検出部1は、1つまたは複数のガスセンサを含む。ガス検出部1は、少なくとも、検知対象ガスとしてメタンガスを検知するガスセンサ1aを含む。ガスセンサ1aの詳細については後述する。
図1の例では、ガス検出部1がガスセンサ1aおよびガスセンサ1bを含む。ガスセンサ1bは、メタンガス以外の検知対象ガスとして、たとえば一酸化炭素(CO)ガスを検知する。COガスのガスセンサ1aについては検出原理、構造は特に限定されない。
【0022】
温度センサ5は、ガス警報器100の設置環境の温度を計測する。
【0023】
制御部3は、CPUなどのプロセッサを含んでいる。制御部3は、記憶部4に記憶された動作プログラムを実行することにより、ガス警報器100全体を制御するように構成されている。また、制御部3は、時間計測を行う計時部(タイマー)3aを含んでいる。制御部3は、ガスセンサ1a、1bおよび温度センサ5と接続されている。制御部3は、所定時間毎に、ガス検出部1のガスセンサ1a、1bから検知結果を取得し、温度センサ5から温度計測値を取得する。所定時間は、たとえば約30秒である。
【0024】
制御部3は、報知部2による報知を実行する処理を行う。報知部2による報知には、注意報と、注意報よりも警戒度が高い警報とがある。制御部3は、ガスセンサ1aによる検知対象ガスの検知結果に応じて、第1レベルの注意報と、第1レベルよりも高い第2レベルの警報と、を行うように報知部2を制御する。なお、ガスセンサ1bの検知結果に対しては、注意報が行われずに警報のみが行われる。
【0025】
記憶部4には、制御部3が制御処理を行うための動作プログラムが記憶されている。記憶部4には、制御部3が取得したガスセンサ1aの検知結果および温度センサ5の温度計測値が蓄積記憶される。記憶部4には、注意報に対応する第1レベル閾値LV1(
図2参照)と、警報に対応する第2レベル閾値LV2(
図2参照)とが予め記憶されている。また、記憶部4には、ガスセンサ1aの鋭敏化に関する鋭敏化判定条件10および復帰判定条件20が記憶されている。
【0026】
報知部2は、スピーカ2aおよびランプ2bを含んでいる。報知部2は、検知対象ガスの検知結果に基づく報知を行うように構成されている。スピーカ2aは、報知音声を出力する。スピーカ2aは、ブザー音、音声メッセージなどにより報知を行う。ランプ2bは、光出力(発光)によって報知を行う。ランプ2bは、発光色や、点灯、点滅などの発光パターンによって、報知を行う。報知部2は、制御部3による制御に基づいて、注意報と、注意報よりも報知能力が高い警報と、を報知する。たとえば注意報では、スピーカ2aによる音声出力は行わずにランプ2bにより報知が行われる。警報では、スピーカ2aおよびランプ2bの両方により報知が行われる。
【0027】
(ガスセンサ)
ガスセンサ1aは、たとえば、半導体式センサまたはMEMSセンサである。半導体式センサは、酸化スズなどの半導体材料のガス感応部、検出電極およびヒータを含んで構成される。半導体式センサは、ヒータにより所定温度に加熱された半導体表面での検知対象ガス(メタンガス)の吸着に応じて半導体の電気伝導度が変化することを利用して、検知対象ガス(メタンガス)を検出する。半導体式センサは、たとえばコイル状の電極線に半導体材料を焼結させた構造を有する。ヒータと検出電極とは単一の電極線によって兼用されうる。MEMSセンサは、半導体式センサと検出原理は同じであるが、半導体回路製造に用いられる微細加工技術を利用して小型化したものである。MEMSセンサは、たとえば上記のヒータ、検出電極およびガス感応部(半導体材料)を、パターニングおよび製膜によって基板上に積層形成した構造を有する。
【0028】
図2はガスセンサ1aの検知結果の感度特性を示している。
図2は、横軸がメタンガス濃度であり、縦軸がガスセンサ1aの出力信号値ΔVを示す。ガスセンサ1aでは、メタンガス濃度の上昇に伴って、半導体の電気伝導度が増大する。制御部3は、ガスセンサ1aに接続された図示しない検出回路を介して、ガスセンサ1aの電気伝導度に対応する出力電圧を取得する。
図2に示す例では、ガスセンサ1aは、メタンガス濃度の上昇に伴い、出力信号値ΔVが対数関数的に増加する感度特性を有している。なお、出力信号値ΔVは、特許請求の範囲の「ガスセンサの信号強度」の一例である。
【0029】
なお、
図2では、ガスセンサ1aの出力信号値ΔVを、電圧値ではなく、電圧の相対値として示している。具体的には、ガスセンサ1aの出力信号値ΔVは、メタンガスが存在しない状態(メタンガス濃度が略0ppm)の出力電圧を0%とし、警報に対応する第2レベル閾値LV2を100%とした相対値で表現される。
図2では、メタンガス濃度が3000ppmの場合のガスセンサ1aの出力電圧が100%とされる例を示している。0%における出力電圧、100%における出力電圧は、ガス警報器100の工場出荷時などに、各メタンガス濃度(約0ppm、約3000ppm)の雰囲気下での出力電圧値を取得するキャリブレーション作業によって、予め設定される。なお、「メタンガス濃度が1ppmである」とは、空気1立方メートル(1m
3)あたりのメタンガスの体積が1×10
-6[m
3]であることを意味する。ガスセンサ1aの出力信号を相対値(出力信号値ΔV)で扱うことにより、0%および100%に対応する各電圧値が、ガスセンサ1aやガス警報器100の個体差によって異なる場合でも、統一的な取り扱いができる。
【0030】
図2の例では、警報に対応する第2レベル閾値LV2は、上記の通り100%であり、注意報に対応する第1レベル閾値LV1が80%である。制御部3は、ガスセンサ1aの出力信号値ΔVが80%に達した場合に、注意報の報知を行うように報知部2を制御する。制御部3は、ガスセンサ1aの出力信号値ΔVが100%に達した場合に、警報の報知を行うように報知部2を制御する。
【0031】
ガスセンサ1aは、使用期間の経過に伴って、感度が鋭敏化することがある。鋭敏化は、ガスセンサ1aの意図しない感度上昇である。たとえば
図2において、正常時の感度特性SC1を実線で示し、鋭敏化時の感度特性SC2を二点鎖線で示す。
図2に示した鋭敏化時の感度特性SC2は、鋭敏化の説明のために便宜的に設定したものであり、必ずしも
図2に示すように変化するわけではない。また、鋭敏化は、経時的な変化であり、
図2の感度特性SC2は、ガスセンサ1aの使用期間中のある一時点の感度特性を仮定したものである。ガスセンサ1aは、使用期間の経過に伴って、徐々に鋭敏化していく傾向がある。鋭敏化には、種々の要因が考えられているが、1つの要因として、大気中に含まれるシロキサンなどがガス感応部(半導体材料)に吸着されることによる影響が知られている。
【0032】
図2の例では、正常時の感度特性SC1では、メタンガス濃度が2000ppm強で出力信号値ΔVが第1レベル閾値LV1(80%)に達して注意報が報知される。これに対して、鋭敏化状態の感度特性SC2では、メタンガス濃度が1000ppm未満でも出力信号値ΔVが第1レベル閾値LV1(80%)に達して注意報が報知されてしまう。仮にメタンガス濃度が略0ppmの状態でも出力信号値ΔVが第1レベル閾値LV1(80%)以上となるまで鋭敏化すると、常に注意報が出力されることとなる。
【0033】
そこで、
図1および
図2に示したように、第1実施形態では、制御部3は、ガスセンサ1aによる検知対象ガスの検知結果がガスセンサ1aの鋭敏化判定条件10を満たした場合、報知部2による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されている。つまり、制御部3は、ガスセンサ1aによるメタンガスの出力信号値ΔVのデータに基づいて、鋭敏化判定条件10を満たすか否かを判定する。
【0034】
制御部3は、鋭敏化判定条件10を満たすと判定した場合、出力信号値ΔVが第1レベル閾値LV1(ΔV=80%)に到達しても、報知部2による注意報の出力を行わないように制御する。以下では、便宜的に、報知部2による注意報の出力を停止する制御を、「鋭敏化抑制モード」と呼ぶ。鋭敏化抑制モード中は、注意報の出力が停止されるため、メタンガス濃度が十分に低い状況で注意報が報知されることが抑制される。
【0035】
一方、警報の報知に関して、制御部3は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件10を満たした場合でも、警報条件を変更せずに警報の報知制御を行うように構成されている。つまり、制御部3は、たとえガスセンサ1aが鋭敏化している状態でも、警報に対応する第2レベル閾値LV2(ΔV=100%)の値を変更することなく、正常時と同じ警報条件で警報を報知するか否かの判定を行う。このため、ガスセンサ1aが鋭敏化している場合、メタンガス濃度が上昇して本来の警報濃度である3000ppmに達するよりも早いタイミングで、出力信号値ΔVが100%に到達することにより警報が出力されることになる。
【0036】
第1実施形態では、鋭敏化抑制モードに移行した場合、予め設定された復帰判定条件20を満たすまで、鋭敏化抑制モードが継続される。すなわち、制御部3は、注意報の出力を停止する制御を実行している間、検知対象ガスの検知結果が復帰判定条件20を満たした場合、注意報の出力を停止する制御を解除するように構成されている。後述するが、復帰判定条件20は、少なくとも鋭敏化判定条件10を充足しない条件に設定されている。
【0037】
(鋭敏化判定条件)
次に、鋭敏化判定条件10の内容について説明する。
【0038】
図3に示すように、鋭敏化判定条件10は、ガスセンサ1aの信号強度に関する第1条件A、第1条件Aの充足期間に関する第2条件B、および通電時間に関する第3条件Cを含む。制御部3は、累計の通電時間が第3条件Cを満たしている場合に、ガスセンサ1aの信号強度が第1条件Aを満たした期間が、第2条件Bを満たした場合に、鋭敏化判定条件10を満たしたと判定する。
【0039】
第1条件Aは、ガスセンサ1aの信号強度、第1実施形態では出力信号値ΔV、の閾値V1を規定する。第1条件Aの閾値V1は、0%よりも大きく、第1レベル閾値LV1(80%)よりも小さい所定値である。制御部3が取得したガスセンサ1aの出力信号値ΔVの値が閾値V1以上となる場合に、その検知結果データは第1条件Aを充足する。一例として、第1実施形態では、第1条件Aは、「出力信号値ΔVが50%以上」に設定されている。つまり、閾値V1が50[%](
図2参照)である。
【0040】
第2条件Bは、第1条件Aの充足期間の閾値を規定する。充足期間は、センサが常時駆動の場合、期間の長さ(たとえば、「X時間」)であってもよいし、一定期間内における充足期間の割合(たとえば、「Y時間のうちのZ%」)であってもよい。またセンサが間欠駆動の場合、期間の長さ(たとえば、「累計X回充足」)であってもよいし、一定期間内における充足回数の割合(たとえば、「Y回数のうちのZ%」)であってもよい。第1実施形態では、第2条件Bは、判定期間p2と、判定期間p2における第1条件Aの充足割合Th1とを規定する。制御部3は、判定期間p2のうち、第1条件Aを充足した期間の割合がTh1以上である場合に、第2条件Bを充足したと判定する。判定期間p2は、ガスセンサ1aが鋭敏化しているか否かを確定させるための期間である。一例として、第2条件Bは、「3日間(72時間)の全期間で第1条件Aを充足する」という条件に設定されている。つまり、判定期間p2が72[時間]、充足割合Th1が1(100%)である。充足割合Th1が1(100%)である場合、判定期間p2の間に、出力信号値ΔVが第1条件Aを充足しない検知結果データが取得された場合、制御部3は第2条件Bを充足しないと判定する。
【0041】
第1条件Aの閾値V1および第2条件Bの判定期間p2、充足割合Th1は、注意報を停止すべき程度まで鋭敏化が進行している状態と、鋭敏化が進行していない(正常な)状態とを明確に判別できるように設定される。第1条件Aおよび第2条件Bは、組み合わせて考慮される複合的な条件である。たとえば設置環境のメタンガス濃度が実際に上昇したことによって出力信号値ΔVが上昇した場合でも、メタンガス濃度が上昇した状態が72時間(判定期間p2)の間継続して維持されることは通常考えにくい。一方、鋭敏化が進行している場合、メタンガスが略存在しない状態でも出力信号値ΔVが上昇した状態が継続することから、出力信号値ΔVの閾値V1と、判定期間p2、充足割合Th1とを設定することによって、ガスセンサ1aが鋭敏化したことを把握できる。なお、以下では、「注意報を停止すべき程度まで鋭敏化が進行している状態」のことを、鋭敏化が発生した状態という。
【0042】
第3条件Cは、通電時間に関する閾値p1を規定する。制御部3は、ガス警報器100に電源が投入されると、計時部3aにより通電時間を計測する。計時部3aにより計測された累計の通電時間が閾値p1以上となる場合に、制御部3は、第3条件Cを充足すると判定する。ガスセンサ1aの鋭敏化は使用期間の経過によって生じるため、第3条件Cは、統計的に鋭敏化が生じ始めると考えられる期間に設定される。一例として、第1実施形態では、第3条件Cは、「90日以上」に設定されている。つまり、閾値p1が90[日]である。
【0043】
図3に示すように、第1実施形態では、鋭敏化判定条件10は、温度の許容範囲に関する第4条件Dをさらに含む。制御部3は、温度センサ5の出力値が第4条件Dを満たさない状態で取得されたガスセンサ1aの検知結果を、第1条件Aおよび第2条件Bの判定処理から除外する。
【0044】
ここで、ガスセンサ1aの感度特性SC1は、環境温度によって影響される。
図4は、環境温度に対する感度特性SC1の変化のイメージを示したグラフである。グラフは、横軸が温度[℃]を示し、縦軸が、メタンガス濃度が略0ppmの状態でのガスセンサ1aの出力信号値ΔVを示す。なお、
図2に示した感度特性SC1は、基準温度として20℃の特性を示している。
図4の例では、ガスセンサ1aは、環境温度が上昇するに従って出力信号値ΔV(ベースライン)が上昇する傾向を示す。したがって、許容範囲である第4条件Dから外れた温度環境下で取得された検知結果データ(ΔV)は、環境温度の影響が大きく、鋭敏化判定のための信頼性が低くなるため、判定処理から除外される。
【0045】
そこで、
図3の例では、第4条件Dとして、温度の許容範囲を規定する下限閾値t1および上限閾値t2が設定されている。制御部3は、ガスセンサ1aの検知結果データ(出力信号値ΔV)の取得時点における温度計測値Tを温度センサ5から取得する。取得した温度計測値Tがt1≦T≦t2の範囲内の場合、制御部3は、その検知結果データを「有効データ」として鋭敏化判定に利用する。取得した温度計測値Tがt1≦T≦t2の範囲外の場合、制御部3は、その検知結果データを鋭敏化判定から除外する。一例として、第1実施形態では、第4条件Dは、「-10[℃]以上、+40[℃]以下」に設定されている。つまり、下限閾値t1が-10[℃]であり、上限閾値t2が+40[℃]である。なお、温度計測値Tは、特許請求の範囲の「温度センサの出力値」の一例である。
【0046】
また、第1実施形態では、鋭敏化判定条件10は、判定期間における第4条件Dの充足度合いに関する第5条件Eをさらに含む。つまり、第5条件Eは、第1条件Aおよび第2条件Bの判定処理に用いる判定期間p2の検知結果データのうちで、許容範囲内の温度条件で取得された検知結果データ(有効データ)がどれだけあるか、という条件である。第5条件Eは、センサが常時駆動の場合、有効データが取得された期間の長さであってもよいし、一定期間内における有効データの取得期間の割合であってもよい。またセンサが間欠駆動の場合、有効データが取得された累計回数であってもよいし、一定期間内における有効データの取得回数の割合であってもよい。判定期間内の検知結果データの全体に対する第4条件Dを充足する検知結果データ(有効データ)の割合、または有効データの数、あるいは有効データが取得された累計期間によって定義されうる。有効データが少なすぎる場合、鋭敏化判定の信頼性が低下することから、制御部3は、第5条件Eが充足されない場合には鋭敏化判定を行わない。その結果、鋭敏化判定条件10を満たさないと判定される。
【0047】
第1実施形態では、第5条件Eとして、判定期間p2における第4条件Dの充足割合Th2が設定されている。制御部3は、判定期間p2のうち充足割合Th2以上の期間で第4条件Dに該当する場合に、第5条件Eを充足したと判定する。一例として、第5条件Eは、「72時間の50%以上で第4条件Dを充足する」という条件に設定されている。つまり、判定期間p2が72[時間]、充足割合Th2が0.5(50%)である。判定期間p2において取得された総データ数のうち、第4条件Dを充足した有効データの数が50%以上である場合、第5条件Eが充足される。
【0048】
以上から、鋭敏化判定条件10の各条件を総合すると、以下の(1)~(3)に集約できる。
(1)累計通電時間が90日以上である。
(2)温度計測値Tが許容範囲内(-10℃≦T≦40℃)となる有効データについて、判定期間(72時間)の全期間(100%)で出力信号値ΔV≧50%となる。
(3)温度計測値Tが許容範囲(-10℃≦T≦40℃)となる有効データの数が、判定期間(72時間)の総データ数の50%以上である。
制御部3は、(1)~(3)のすべてを充足したと判定した場合に、注意報の出力を停止する鋭敏化抑制モードの制御を開始する。
【0049】
(復帰判定条件)
次に、復帰判定条件20の内容について説明する。
【0050】
図5に示す復帰判定条件20は、要約すれば、鋭敏化判定条件10に該当しない状態が、判定期間の間継続することである。復帰判定条件20は、ガスセンサ1aの信号強度に関する条件F、条件Fの充足期間に関する条件G、および鋭敏化抑制モード中であるという条件Hを含む。
図5に示す例では、復帰判定条件20が、条件Iおよび条件Jをさらに含んでいる。
【0051】
条件Fは、鋭敏化判定条件10の第1条件Aに対応し、ガスセンサ1aの信号強度が鋭敏化判定条件10(第1条件A)に該当しないことを規定する。条件Fは、出力信号値ΔVの閾値V2を規定する。第1条件Aが「ΔV≧50%(閾値V1=50%)」であるので、
図5の例では、復帰判定条件20の条件Fは、「出力信号値ΔVが50%未満(閾値V2=50%)」に設定されている。条件Fの閾値V2は、第1条件Aの閾値V1よりも低値であってもよい。
【0052】
条件Gは、鋭敏化判定条件10の第2条件Bに対応し、条件Fの充足期間の閾値を規定する。条件Gは、判定期間p2における条件Fの充足割合Th3を規定する。一例として、第1実施形態では、条件Gは、鋭敏化判定条件10の第2条件Bと同じ条件に設定されている。つまり、判定期間p2が72(時間)、充足割合Th3が1(100%)である。
【0053】
条件Hは、鋭敏化抑制モード中であることであり、鋭敏化抑制モードから復帰するための前提条件である。
【0054】
復帰判定条件20は、鋭敏化判定条件10と同様に、温度の許容範囲に関する条件Iを含む。制御部3は、温度センサ5の出力値が条件Iを満たさない状態で取得されたガスセンサ1aの検知結果を、条件Fおよび条件Gの判定処理から除外する。一例として、第1実施形態では、条件Iは、鋭敏化判定条件10の第4条件Dと同じ条件(t1=-10[℃]、t2=+40[℃])に設定されている。つまり、「-10[℃]以上、+40[℃]以下」が温度の許容範囲である。
【0055】
復帰判定条件20は、鋭敏化判定条件10と同様に、判定期間における条件Iの充足度合いに関する条件Jを含む。第1実施形態では、条件Jとして、判定期間p2における条件Iの充足割合Th4が設定されている。制御部3は、条件Jが充足されない場合には復帰判定条件20を満たさないと判定する。一例として、第1実施形態では、条件Jは、鋭敏化判定条件10の第5条件Eと同じ条件に設定されている。つまり、判定期間P2が72時間、充足割合Th4が0.5(50%)であり、条件Jは、「72時間の50%以上で条件Iを充足する」という条件に設定されている。
【0056】
以上から、復帰判定条件20の各条件F~条件Jを総合すると、以下の(4)~(6)に集約できる。
(4)鋭敏化抑制モード中である。
(5)温度計測値Tが許容範囲内(-10℃≦T≦40℃)となる有効データについて、判定期間(72時間)の全期間(100%)で出力信号値ΔV<50%となる。
(6)温度計測値Tが許容範囲(-10℃≦T≦40℃)となる有効データの数が、判定期間(72時間)の総データ数の50%以上である。
制御部3は、(4)~(6)のすべてを充足したと判定した場合に、鋭敏化抑制モードを解除して、通常モードでの制御を開始する。通常モードは、報知部2による注意報を出力可能なモードである。通常モードにおいて、制御部3は、出力信号値ΔVが第1レベル閾値LV1(80%)に達した場合に、報知部2に注意報の動作を実行させる。
【0057】
なお、ここでは、条件G、条件I、条件Jを、鋭敏化判定条件10と同じ閾値に設定しているが、鋭敏化判定条件10と異なる閾値を各条件に設定してもよい。また、条件Gの充足期間、条件Jの充足割合は、上記第2条件および上記第5条件と同様に、センサが常時駆動の場合、期間の長さであってもよいし、一定期間内における充足期間の割合であってもよい。センサが間欠駆動の場合、期間の長さ(累計の充足回数)であってもよいし、一定期間内における充足回数の割合であってもよい。
【0058】
(ガス警報器の動作)
次に、鋭敏化判定条件10および復帰判定条件20の判定を行う処理動作について説明する。
【0059】
図1に示したように、ガス警報器100の動作中、ガスセンサ1aの検知結果データおよび温度センサ5の温度計測値のデータは、所定時間(約30秒)毎に定期的に取得され、制御部3によりリアルタイムで注意報および警報の判定に利用されるとともに、記憶部4に記憶される。
【0060】
これに対して、鋭敏化判定は、注意報および警報の判定のように短時間の検知結果の変化を監視するものではなく、相対的に長期の判定期間(72時間)にわたる検知結果を対象とする。そのため、鋭敏化判定では、取得された検知結果データの全てを考慮する必要はない。
【0061】
以下では、一例として、1時間毎に1回の判定タイミングを設定し、判定タイミングにおける1つの検知結果データによって1時間の検知結果を代表させるものとする。したがって、鋭敏化判定の判定期間p2=72時間において取得される検知結果データは、72個となる。
【0062】
図6は、以上の判定処理の流れを要約して概念的に示す説明図である。
図6に示すように、通電開始から、第3条件Cの閾値p1(=90日)の期間が経過すると鋭敏化判定処理が行われる。第2条件Bの判定期間p2(=72時間)の間に、N0個の検知結果データDtが取得される。この例では、N0=72個である。
【0063】
N0個の検知結果データDtのうち、データ取得時の温度計測値Tが許容範囲(t1≦t≦t2)に含まれるデータが、有効データとされる。第4条件D(条件I)では、t1=-10℃であり、t2=40℃である。第4条件D(条件I)を充足する有効データの数を、N1とする。第4条件D(条件I)を充足しない検知結果データDtの数をN2とすると、N0=N1+N2である。
【0064】
通常モード時に、鋭敏化判定処理が行われる。鋭敏化判定処理、N1個の有効データを対象として、第1条件Aを充足するか否かが判断される。N1個の有効データのうち、第1条件A「ΔV≧V1(50%)」を満たすデータが、鋭敏化している可能性を示唆するデータとなる。N1個の有効データのうち、第1条件Aを充足するデータの数を、M1とする。
【0065】
次に、有効データ数N1と、第1条件Aを充足するデータ数M1とに基づいて、第2条件Bを充足したか否かが判断される。具体的には、M1≧N1×Th1を満たすか否かが判断される。充足割合Th1=1(100%)であるので、判定期間p2の間に取得された有効データ数N1と、第1条件Aを充足するデータの数M1とが一致する場合、72時間の判定期間の全期間に亘って、継続して第1条件Aを満たしていた(つまり、第2条件Bを充足した)と判断される。
【0066】
さらに、有効データ数N1と、判定期間p2の間に取得された測定結果データ数N0とに基づいて、第5条件Eを充足したか否かが判断される。具体的には、N1≧N0×Th2を満たすか否かが判断される。測定結果データ数N0=72個、充足割合Th2=0.5(50%)であるので、有効データ数N1が36個以上であるか否かかが判断される。
【0067】
M1≧N1×Th1を満たし、かつ、N1≧N0×Th2を満たす場合に、ガスセンサ1aが鋭敏化していると判定される。制御部3は、鋭敏化抑制モードの制御を開始する。一方、M1<N1×Th1またはN1<N0×Th2となる場合には、通常モードが維持される。
【0068】
鋭敏化抑制モード中(条件H)である場合、鋭敏化判定処理に代えて、復帰判定処理が行われる。温度の許容範囲内のN1個の有効データを対象として、条件F「ΔV<V2(50%)」を充足するか否かが判断される。N1個の有効データのうち、条件Fを充足するデータの数を、M2とする。
【0069】
有効データ数N1と、条件Fを充足するデータ数M2とに基づいて、条件Gを充足したか否かが判断される。すなわち、M2≧N1×Th3を満たすか否かが判断される。充足割合Th3=1(100%)であるので、有効データ数N1と、条件Fを充足するデータ数M2とが一致する場合、72時間の判定期間の全期間に亘って、継続して条件Fを満たしていた(つまり、条件Gを充足した)と判断される。条件J(充足割合Th4=0.5)は、第5条件Eと同様であるので説明を省略する。
【0070】
鋭敏化モード中に、M2≧N1×Th3を満たし、N1≧N0×Th4を満たす場合に、復帰判定条件20を充足したと判定され、制御部3が鋭敏化抑制モードから通常モードに制御を切り替える。M2<N1×Th3、または、N1<N0×Th4となる場合には、鋭敏化抑制モードが継続する。
【0071】
次に、
図7を参照して、制御部3による判定処理の流れについて説明する。
【0072】
図7に示すように、ステップS1において、制御部3は、計時部3aの計測結果に基づいて、累計の通電時間が90日以上に該当するか否かを判断する。つまり、第3条件Cを充足したか否かが判断される。累計の通電時間が90日以上に該当しない場合、処理を終了する。累計の通電時間が90日以上に該当した場合、処理がステップS2に進む。
【0073】
ステップS2において、制御部3は、計時部3aの計測結果に基づいて、判定タイミングに該当したか否かを判断する。1時間につき1回の判定タイミングに該当しない場合には、処理を終了する。判定タイミングに該当した場合、処理がステップS3に進む。
【0074】
ステップS3において、制御部3は、継続時間カウンタの値に「1」を加算する(カウントアップする)。ステップS4において、制御部3は、継続時間カウンタの値が72以上か否かを判断する。つまり、制御部3は、第2条件B(または条件G)の判定期間が経過したか否かを判断する。継続時間カウンタの値が72未満の場合、処理が終了する。継続時間カウンタの値が72となる場合、処理がステップS5に進む。このとき、判定期間全体にわたる72個の検知結果データおよびこれに対応する温度計測値が取得済みとなる。
【0075】
ステップS5において、制御部3は、温度計測値Tが第4条件D(条件I)の許容範囲内(-10[℃]≦T≦40[℃])となる有効データ数N1が、N0×Th2(Th4)=36個(N0=72、Th2、Th4=0.5)以上に該当するか否かを判断する。つまり、制御部3は、第5条件E(条件J)を充足するか否かを判断する。
【0076】
有効データ数が36個未満となる場合、処理がステップS11に進み、制御部3は継続時間カウンタの値をクリアして判定処理を終了する。
【0077】
有効データ数が36個以上となる場合、処理がステップS6に進む。ステップS6において、制御部3は、鋭敏化抑制モード中であるか否かを判断する。つまり、制御部3は、条件Hを充足するか否かを判断する。鋭敏化抑制モード中でない場合(通常モードである場合)、制御部3は、ステップS7に処理を進め、鋭敏化判定の処理を実行する。一方、鋭敏化抑制モード中である場合、制御部3は、ステップS9に処理を進め、復帰判定の処理を実行する。上記の通り、第1実施形態では、鋭敏化判定条件10と復帰判定条件20とで、一部の条件を同一(共通)とした。そのため、共通する条件の判定が行われた後で、別々の条件の判定が実行される。
【0078】
鋭敏化判定処理を行うステップS7では、制御部3は、第1条件A「ΔV≧V1(50%)」を充足するデータ数M1が、N1×Th1以上か否かを判断する。Th1=1(100%)であるので、制御部3は、判定期間p2(72時間)の全期間で取得された全ての有効データが第1条件Aを充足する(M1≧N1)場合に、第2条件Bが充足されたと判断する。
【0079】
第2条件B(M1≧N1)が充足された場合、制御部3は、ステップS8において、鋭敏化抑制モードの制御を開始する。すなわち、制御部3は、鋭敏化判定条件10が充足したことに基づいて、報知部2による注意報の出力を停止する制御を開始する。
【0080】
第2条件B(M1≧N1)が充足されない場合、制御部3は、処理をステップS11に進める。つまり、鋭敏化判定条件10が充足されなかったため、通常モードの制御が継続する。
【0081】
復帰判定処理を行うステップS9では、制御部3は、条件F「ΔV<V2(50%)」を充足したデータ数M2が、N1×Th3以上か否かを判断する。Th3=1(100%)であるので、制御部3は、判定期間p2(72時間)の全期間で取得された全ての有効データが条件Fを充足する(M2≧N1)場合に、条件Gが充足されたと判断する。
【0082】
条件G(M2≧N1)が充足された場合、制御部3は、ステップS10において、実行中の鋭敏化抑制モードを解除して、通常モードの制御を開始する。すなわち、制御部3は、復帰判定条件20が充足されたことに基づいて、報知部2による注意報の出力を停止する制御を解除する。
【0083】
条件G(M2≧N1)が充足されなかった場合、制御部3は、処理をステップS11に進める。つまり、復帰判定条件20が充足されなかったため、鋭敏化抑制モードの制御が、継続する。
【0084】
ステップS11において、制御部3は、継続時間カウンタの値をクリアして、判定処理を終了する。これにより、1時間に1回の判定タイミングに到達する度に、再び継続時間カウンタがカウントアップされ、72個の検知結果データDt(
図6参照)が取得されると鋭敏化判定が行われることになる。
【0085】
なお、ステップS11において、継続時間カウンタの値を全てクリアすることに代えて、継続時間カウンタの値を1つだけクリアしてもよい。この場合、継続時間カウンタの値が72に到達した後は、1時間に1回の判定タイミングになる度に鋭敏化判定が実施される。このため、判定タイミング毎に、直近の71個の検知結果データDtに最新の1個の検知結果データDtを追加して鋭敏化判定が行われる。
【0086】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
第1実施形態では、上記のように、制御部3が、ガスセンサ1aによる検知対象ガスの検知結果がガスセンサ1aの鋭敏化判定条件10を満たした場合、報知部2による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されている。これにより、ガスセンサ1aが検知対象ガス以外の非検知対象ガスを検出しなくても、検知対象ガスの検知結果に基づいてガスセンサ1aの鋭敏化が発生しているか否かを把握できる。ここで、ガスセンサ1aが特定の非検知対象ガスのみに対して鋭敏化している場合でも、他の要因によって鋭敏化している場合でも、鋭敏化の影響は、最終的には検知対象ガスの検知結果に反映されることから、検知対象ガスの検知結果に対して鋭敏化判定条件10を設定することによって、ガスセンサ1aの鋭敏化を把握できる。そして、ガスセンサ1aの鋭敏化判定条件10を満たした場合に注意報の出力を停止する制御が行われるので、鋭敏化に起因する注意報の誤報知を回避することができる。これにより、ガスセンサ1aの鋭敏化に対して適切に対応することができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部3は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件10を満たした場合でも、警報条件を変更せずに警報の報知制御を行うように構成されている。ここで、鋭敏化は、ガスセンサ1aの感度上昇により警報の報知タイミングを早めるように作用するので、フェイルセーフの観点からは、検知対象ガス濃度の上昇に対し早めに警報を報知しても問題がないことになる。そこで、上記のように鋭敏化判定条件10を満たした場合でも警報条件を変更せずに警報の報知制御を行うことによって、たとえガスセンサ1aの鋭敏化が生じた場合でも、緊急性の高い警報の報知を確実に行うことができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、鋭敏化判定条件10は、ガスセンサ1aの信号強度に関する第1条件A、第1条件Aの充足期間に関する第2条件B、および通電時間に関する第3条件Cを含み、制御部3は、累計の通電時間が第3条件Cを満たしている場合に、ガスセンサ1aの信号強度が第1条件Aを満たした期間が、第2条件Bを満たした場合に、鋭敏化判定条件10を満たしたと判定する。これにより、累計の通電時間が第3条件Cを満たした場合に判定を行うことで、使用期間の経過に伴って生じるガスセンサ1aの鋭敏化を適切に把握できるとともに、使用開始直後など鋭敏化が生じない時期には不必要な制御処理の実行を防止できる。また、ガスセンサ1aの出力信号値ΔVが第1条件Aを満たすことにより鋭敏化していると考えられる状況が、どれだけの期間発生しているかという第2条件Bを設定することにより、実際に検知対象ガスが存在していた場合などの鋭敏化以外の要因によって一時的に出力信号値ΔVが上昇している状況と、鋭敏化の発生とを正確に区別することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、鋭敏化判定条件10は、温度の許容範囲に関する第4条件Dをさらに含み、制御部3は、温度センサ5の出力値が第4条件Dを満たさない状態で取得されたガスセンサ1aの検知結果を、第1条件Aおよび第2条件Bの判定処理から除外する。これにより、環境温度が変動しやすい状況や、過酷な温度条件での利用に対しても、ガスセンサ1aの鋭敏化判定の信頼性を向上することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部3は、注意報の出力を停止する制御を実行している間、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件10を充足しない復帰判定条件20を満たした場合、注意報の出力を停止する制御を解除するように構成されている。これにより、ガスセンサ1aが鋭敏化していると判定された後、鋭敏化が解消した場合にや、検知対象ガスによってガスセンサ1aの信号強度が一時的に上昇したことに起因してガスセンサ1aが鋭敏化していると判定された場合には、復帰判定条件20を満たすことによって、停止していた注意報の出力を行えるようにすることができる。このため、ユーザは注意報の報知を受けることによって検知対象ガスの濃度が上昇しつつあることを把握できるようになるため、ガス警報器100の利便性が向上する。
【0092】
[第2実施形態]
次に、
図8~
図10を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、鋭敏化判定条件10に加えて、ガスセンサ1aが鋭敏化していることを報知するための鋭敏化の報知条件30をさらに設けた例を示す。第2実施形態において、ガス警報器200の構造は、上記第1実施形態と同様であるので、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0093】
図8に示すように、第2実施形態によるガス警報器200では、鋭敏化判定条件10に加えて、ガスセンサ1aが鋭敏化していることを報知するための鋭敏化の報知条件30が記憶部4に予め記憶されている。第2実施形態では、制御部3は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化の報知条件30を満たした場合に、ガスセンサ1aが鋭敏化していることを報知部2に報知させる制御を行う。
【0094】
図9は、鋭敏化の報知条件30の例を示す。鋭敏化の報知条件30は、ガスセンサ1aの信号強度に関する条件が鋭敏化判定条件10よりも高レベルに設定されている。具体的には、鋭敏化の報知条件30は、ガスセンサ1aの信号強度に関する条件K、条件Kの充足期間に関する条件L、および通電時間に関する条件Mを含む。
【0095】
条件Kは、出力信号値ΔVの閾値V3を規定する。閾値V3は、第1条件Aの閾値V1よりも高値(高レベル)に設定される。
図9の例では、条件Kは、「出力信号値ΔVが80%以上」に設定される。つまり、閾値V3は、閾値V1よりも高値の80%であり、注意報に対応する第1レベル閾値LV1(80%)と同じ値(
図2参照)に設定されている。
【0096】
条件Lは、鋭敏化判定条件10の第2条件Bに対応し、かつ、第2条件Bよりも閾値が短期間に設定される。
図9の例では、条件Lは、「24時間中、75%(18時間)を越える期間で条件Kを充足する」に設定されている。つまり、判定期間p3が24[時間]であり、充足割合Th5が0.75(75%)である。1時間毎に1個の検知結果データが取得される場合、24個の検知結果データのうち、19個以上の検知結果データが条件Kを満たす場合、条件Lが充足される。条件Lの充足期間は、センサが常時駆動の場合、期間の長さであってもよいし、一定期間内における充足期間の割合であってもよい。センサが間欠駆動の場合、期間の長さ(累計の充足回数)であってもよいし、一定期間内における充足回数の割合であってもよい。なお、条件Mは、鋭敏化判定条件の第3条件Cと同じ90日の閾値p1が設定されている。
【0097】
したがって、鋭敏化の報知条件30は、以下の(7)および(8)に集約できる。
(7)累計通電時間が90日以上である。
(8)判定期間(24時間)の75%を越える期間で、条件K「ΔV≧V3(80%)」を満たす(条件Kを満たすデータ数が19個以上存在する)。
【0098】
なお、鋭敏化の報知条件30に、鋭敏化判定条件10と同様に、温度の許容範囲に関する温度条件を設けてもよい。温度の許容範囲に関する条件は、鋭敏化判定条件10の第4条件Dと同様であってもよい。さらに、鋭敏化の報知条件30に、鋭敏化判定条件10と同様に、判定期間における温度条件の充足度合いに関する条件をさらに設けてもよい。
【0099】
図10に、鋭敏化の報知条件30の判定処理における制御部3の動作を示す。
【0100】
図10のステップS21において、制御部3は、計時部3aの計測結果に基づいて、累計の通電時間が90日以上(条件M)に該当したか否かを判断する。累計の通電時間が90日以上に該当しない場合、処理を終了する。累計の通電時間が90日以上に該当した場合、処理がステップS22に進む。
【0101】
ステップS22において、制御部3は、計時部3aの計測結果に基づいて、判定タイミングに該当したか否かを判断する。1時間につき1回の判定タイミングに該当しない場合には、処理を終了する。判定タイミングに該当した場合、処理がステップS23に進む。
【0102】
ステップS23において、制御部3は、第2継続時間カウンタの値に「1」を加算する(カウントアップする)。ステップS24において、制御部3は、第2継続時間カウンタの値が24以上か否かを判断する。つまり、制御部3は、条件Lの判定期間p3(24時間)が経過したか否かを判断する。継続時間カウンタの値が24未満の場合、処理が終了する。継続時間カウンタの値が24となる場合、処理がステップS25に進む。このとき、判定期間p3の全体にわたる検知結果データの数は、24個である。
【0103】
ステップS25において、制御部3は、条件K(ΔV≧80%以上)を満たした検知結果データの数が、有効期間の全データ数(24個)に対して75%を越えるか否かを判断する。したがって、条件K(ΔV≧80%以上)を満たした検知結果データの数が、19個以上である場合、制御部3は、ステップS26において、鋭敏化している旨を報知するように報知部2を制御する。報知部2は、たとえば、「ガスセンサが鋭敏化しています」という音声メッセージをスピーカ2aから出力する。報知部2は、ガスセンサが鋭敏化していることを表す所定の発光色または発光パターンで、ランプ2bを発光させる。報知により、ユーザは、ガス警報器100のガスセンサ1aが鋭敏化していることを把握し、たとえばガスセンサ1aの交換等の対処を行える。
【0104】
ステップS26の後、または、条件K(ΔV≧80%以上)を満たした検知結果データの数が、19個未満であった場合、ステップS27において、制御部3は、第2継続時間カウンタの値をクリアして、鋭敏化の報知条件30の判定処理を終了する。
【0105】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態において、鋭敏化判定条件10、復帰判定条件20およびこれらに関わる制御処理の内容は、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0107】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、制御部3が、ガスセンサ1aによる検知対象ガスの検知結果がガスセンサ1aの鋭敏化判定条件10を満たした場合、報知部2による注意報の出力を停止する制御を行うように構成されているので。ガスセンサ1aが検知対象ガス以外の非検知対象ガスを検出しなくても、ガスセンサ1aの鋭敏化に対して適切に対応することができる。
【0108】
また、第2実施形態では、上記のように制御部3は、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化の報知条件30を満たした場合に、ガスセンサ1aが鋭敏化していることを報知部2に報知させる制御を行い、鋭敏化の報知条件30は、ガスセンサ1aの信号強度に関する条件が鋭敏化判定条件10よりも高レベルに設定されている。これにより、ガスセンサ1aの鋭敏化の程度が鋭敏化判定条件10よりも高い報知条件のレベルに達した場合に、鋭敏化していることをユーザに報知できる。その結果、ユーザは、ガスセンサ1aの交換などの対処を行うことができる。
【0109】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0110】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、メタンガスを検知対象ガスとするガスセンサ1aについて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、使用期間の経過に伴って鋭敏化が発生するセンサであれば、ガスセンサ1aの検知対象ガスは特に限定されない。検知対象ガスは、メタンガス以外の、たとえばLPガス、COガスなどでもよい。つまり、ガスセンサ1bについても鋭敏化判定、復帰判定、鋭敏化の報知判定を行ってもよい。
【0111】
また、上記第1および第2実施形態では、検知対象ガスの検知結果が鋭敏化判定条件10を満たした場合でも、警報条件を変更せずに警報の報知を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、鋭敏化判定条件10が満たされた場合に、警報条件を変更してもよい。たとえば鋭敏化判定条件10が満たされた場合に、警報に対応する第2レベル閾値LV2(ΔV=100%)を、鋭敏化の程度に応じて引き上げてもよい。
【0112】
また、上記第1および第2実施形態では、鋭敏化判定条件10が、第1条件A、第2条件B、第3条件C、第4条件Dおよび第5条件Eを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。鋭敏化判定条件10は、少なくともガスセンサ1aの検知対象ガスの検知結果に基づく条件であればよい。たとえば、鋭敏化判定条件10が、ガスセンサ1aの信号強度に関する第1条件Aおよび第1条件Aの充足期間に関する第2条件Bのみを含んでいてもよい。通電時間に関する第3条件Cを設定しなくてもよい。温度の許容範囲に関する第4条件Dを設定しなくてもよい。判定期間における第4条件Dの充足度合いに関する第5条件Eを設定しなくてもよい。これらの条件に代えて、または追加して、判定期間内におけるガスセンサ1aの信号強度(出力信号値ΔV)の変化率などを条件としてもよい。復帰判定条件20についても、同様である。
【0113】
たとえば、ガス警報器に湿度センサを設けるとともに、湿度センサの出力値(湿度の計測結果)に関する条件を設けてもよい。ガスセンサ1aの感度特性は、環境湿度によっても影響されるので、湿度の許容範囲外となる状況下では、ガスセンサ1aの検知結果を判定処理から除外してもよい。湿度の許容範囲に関する条件として、たとえば、制御部3は、湿度計測値Hが許容範囲(H≦閾値h1)の範囲外となる場合、その検知結果データを鋭敏化判定から除外する。許容範囲の一例としては、たとえば、「85%Rh以下(閾値h1=85)」である。
【0114】
また、上記第1および第2実施形態では、温度センサ5の出力値が第4条件Dを満たさない状態で取得されたガスセンサ1aの検知結果を、第1条件Aおよび第2条件Bの判定処理から除外する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第4条件Dを満たさない状態で取得されたガスセンサ1aの検知結果を、第1条件Aおよび第2条件Bの判定処理に加えてもよい。
【0115】
また、上記第1および第2実施形態では、注意報の出力を停止する制御を実行している間、検知対象ガスの検知結果が復帰判定条件20を満たした場合、注意報の出力を停止する制御を解除する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、復帰判定条件20を設けなくてもよい。つまり、鋭敏化判定条件10を満たして注意報の出力を停止する制御(鋭敏化抑制モード)を開始した場合、鋭敏化抑制モードを解除不能としてもよい。
【0116】
また、上記第1および第2実施形態では、鋭敏化判定条件10に含まれる第1条件A、第2条件B、第3条件C、第4条件Dおよび第5条件Eの各閾値、復帰判定条件20に含まれる条件F、条件G、条件H、条件Iおよび条件Jの各閾値、鋭敏化の報知条件30に含まれる条件K、条件Lおよび条件Mの各閾値について、具体的な数値を例示して説明したが、本発明はこれに限られない。判定条件の各閾値は、ガスセンサ1aやガス警報器100の種類、検知対象ガスの種類などに応じて設定されるものであり、上記した具体的な数値例とは異なる数値が閾値として設定されてもよい。
【0117】
また、上記第1および第2実施形態では、ガスセンサ1aの検知結果を、出力電圧の相対値である出力信号値ΔVとして取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガスセンサ1aの検知結果を、出力電圧そのものとして取得してもよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、ガスセンサ1aの出力信号が、ガスセンサ1aの電気伝導度に対応するようにガス警報器100を構成し、検知対象ガスの濃度に応じて出力値が上昇(漸増)する感度特性となる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ガスセンサ1aの出力信号が、ガスセンサ1aの電気抵抗に対応するようにガス警報器100を構成してもよい。この場合、ガスセンサ1aは、検知対象ガスの濃度に応じて出力値が減少(漸減)する感度特性となる。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、ガス検出部1、報知部2、制御部3、記憶部4および温度センサ5が筐体6内に収容される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス検出部1、報知部2、制御部3、記憶部4および温度センサ5は筐体6外に設けられてもよく、2つ以上の筐体にわけて設けられてもよい。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、ガスセンサ1bの検知結果に対しては、注意報が行われずに警報のみが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガスセンサ1bの検知結果に対して、注意報と警報とが行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1a ガスセンサ
2 報知部
3 制御部
5 温度センサ
10 鋭敏化判定条件
20 復帰判定条件
30 鋭敏化の報知条件
100、200 ガス警報器
A 第1条件
B 第2条件
C 第3条件
D 第4条件
T 温度計測値(温度センサの出力値)
ΔV 出力信号値(信号強度)