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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】作業現場用警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20240802BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20240802BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240802BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B21/24
G08B25/04 K
G08B25/00 510M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020078812
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021174331
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】森時 悠
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195194(JP,A)
【文献】特開2016-082515(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106781162(CN,A)
【文献】特開2007-125646(JP,A)
【文献】特開2019-203770(JP,A)
【文献】特開2006-179023(JP,A)
【文献】特開2018-097788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-31/00
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲を撮像して周囲画像情報を生成する撮像部と、
前記撮像部で生成された前記周囲画像情報に人を示す人物画像情報が含まれるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定が肯定となった場合に、前記周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否か判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定が肯定となった場合に、前記人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させる警告部とを備え、
前記第2判定部は、前記第1判定部による肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間以上継続したときに前記警告条件の判定を行ない、前記第1判定部による肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間未満しか継続しないときに、前記警告条件の判定を行わない、
ことを特徴とする作業現場用警報装置。
【請求項2】
前記周囲画像情報に基づいて前記危険範囲の種類を示す危険範囲種類情報を特定する危険範囲特定部と、
前記危険範囲の種類毎に定められた前記警告音声を記録する警告音声記録部とを備え、
前記警告部は、前記危険範囲特定部で特定された前記危険範囲の種類に基づいて前記警告音声記録部から特定した前記警告音声を用いて前記警告音声を発生させる、
ことを特徴とする請求項記載の作業現場用警報装置。
【請求項3】
周囲を撮像して周囲画像情報を生成する撮像部と、
前記撮像部で生成された前記周囲画像情報に人を示す人物画像情報が含まれるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定が肯定となった場合に、前記周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否か判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定が肯定となった場合に、前記人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させる警告部とを備え、
前記撮像部と前記第1判定部と前記第2判定部と前記警告部を備えて自律移動するロボットをさらに備え、
前記ロボットは、
前記ロボットを移動させる移動部と、
複数の作業現場を含む地図情報と、前記地図情報上に予め定められた巡回経路と、前記地図情報上に予め定められた前記危険範囲とを記録する地図データベースと、
自らの現在位置を検出する測位部と、
前記測位部で検出された前記現在位置と前記地図データベースの前記地図情報とに基づいて前記巡回経路に沿って自律移動するように前記移動部を制御する移動制御部とを備え、
前記第2判定部による前記警告条件の判定は、前記ロボットの前記現在位置と、前記地図データベースの前記危険範囲とに基づいてなされ、
前記移動制御部は、前記撮像部で生成された前記周囲画像情報に人の画像が含まれた場合に、前記移動部を予め定められた停止時間停止し、
前記第1判定部による前記判定は、前記停止時間中に行われる、
ことを特徴とする作業現場用警報装置。
【請求項4】
前記ロボットは、前記ロボットの周辺環境を示す周辺環境情報を検出する周辺環境検出部を備え、
前記測位部による前記現在位置の検出は、前記周辺環境情報に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項記載の作業現場用警報装置。
【請求項5】
前記作業現場および前記作業現場間をつなぐ通路には予め測位用のビーコンが設置されており、
前記地図データベースには前記ビーコンが設置された位置と前記ビーコンの識別情報とが紐付けられて記録されており、
前記測位部による前記現在位置の検出は、前記ビーコンから受信した前記識別情報に紐付けられた前記位置を前記地図データベースから特定することでなされる、
ことを特徴とする請求項記載の作業現場用警報装置。
【請求項6】
前記ロボットは、前記ロボットと前記人との対人距離を測定する距離測定部を備え、
前記移動制御部は、前記距離測定部で測定された前記対人距離が予め定められた距離範囲内となるように前記移動部を制御する、
ことを特徴とする請求項3から5の何れか1項記載の作業現場用警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業現場用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築作業現場や土木作業現場など作業現場では、作業者は高所や建築物の開口部など危険な範囲(以下危険範囲という)での作業を行なうことから、危険範囲の種類に応じて作業者に対して注意喚起を図る必要がある。
従来、作業現場で危険要因に近づく人に対し、注意文言を発報して注意喚起する音声警報器が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3168921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、単に人の接近に応じて注意喚起を行なうことから、危険範囲に人が存在しない場合であっても注意文言が発生されてしまうことになり、的確に注意喚起を図る上で改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、危険範囲で作業を行なう作業者に対して的確に警告を与えることで作業者の注意喚起を図り作業者の安全を図る上で有利な作業現場用警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、作業現場用警報装置であって、周囲を撮像して周囲画像情報を生成する撮像部と、前記撮像部で生成された前記周囲画像情報に人を示す人物画像情報が含まれるか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部の判定が肯定となった場合に、前記周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否か判定する第2判定部と、前記第2判定部の判定が肯定となった場合に、前記人に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させる警告部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮像部で撮像された周囲画像情報に、人を示す人物画像情報が含まれると判定された場合に、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否かを判定し、この判定が肯定となった場合に、人(作業者)に対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させるようにした。
したがって、作業者が危険範囲において危険な作業を行なおうとしている場合に、警告音声によって的確に注意喚起を図ることができ、作業者の安全を確保する上で有利となる。
また、危険範囲に人(作業者)が存在する場合にのみ警告音声を発生するので、煩わしさがなく、警告音声による注意喚起を効果的に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る作業現場用警報装置の構成を示すブロック図である。
図2】警告音声記録部に記録されている危険範囲種類情報と警告音声情報の説明図である。
図3】作業者が危険範囲である足場上の高所に存在している状態を示す図である。
図4】作業者が危険範囲である建築物の高所の開口部に存在している状態を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る作業現場用警報装置の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施の形態に係る作業現場用警報装置の構成を示すブロック図である。
図7】第2の実施の形態に係る作業現場用警報装置の動作を示すフローチャートである。
図8】第2の実施の形態の変形例に係る作業現場用警報装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態に係る作業現場用警報装置10Aについて説明する。
図1に示すように、作業現場用警報装置10Aは、撮像部12と、コンピュータ14と、スピーカー16とを含んで構成され、これら撮像部12、コンピュータ14、スピーカー16は、単一の筐体(不図示)に組み込まれている。
作業現場用警報装置10Aは、作業者(以下人ともいう)Hが作業に伴って危険にさらされる危険性がある危険範囲あるいはその近傍に設置されている。
危険範囲とは、例えば、図3に示すように足場18上の高所20、あるいは、図4に示すように建築物の高所22の開口部24付近といった作業者Hが転落する危険、あるいは、落下物や飛来物の危険がある範囲である。
このような危険範囲では、作業者Hは、注意深く作業を行なう必要があることは無論のこと、自らの安全を確保するための装備、例えば、墜落を防止する安全帯(命綱付きベルト)や頭部を保護するヘルメット、目を保護するゴーグルなどを正しく装着する必要がある。
【0009】
撮像部12(カメラ)は、作業現場用警報装置10Aの周辺、すなわち、危険範囲を含む作業現場を撮像して周囲画像情報を生成し、周囲画像情報をコンピュータ14に供給するものである。
すなわち、作業現場用警報装置10Aは、撮像部12によって危険範囲を含む作業現場が撮像されるように設置される。
撮像部12は、作業現場の広い範囲の周囲画像情報を取得する観点から、例えば、広角レンズ、魚眼レンズなどといった画角が広い撮像光学系を備えていることが好ましい。
周囲画像情報は、動画であってもよいし、動画から所定の時間間隔(例えば毎フレームごと)で切り取られた(抽出された)時系列の静止画であってもよいし、あるいは、所定の時間間隔で撮影された時系列に沿った静止画であってもよい。
【0010】
コンピュータ14は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
コンピュータ14は、CPUが制御プログラムを実行することにより、第1判定部14Aと、危険範囲特定部14Bと、第2判定部14Cと、警告部14Dと、警告音声記録部14Eとして機能する。
【0011】
第1判定部14Aは、撮像部12で撮像された周囲画像情報に、周囲画像情報に人(作業者)Hを示す人物画像情報が含まれるか否かを判定するものである。
このような処理は、従来公知の画像処理技術を用いることによってなされる。
【0012】
危険範囲特定部14Bは、周囲画像情報に基づいて前記危険範囲の種類を示す後述する危険範囲種類情報Dαを特定するものである。
すなわち、危険範囲種類情報Dαとは、前述したように、足場18の高所20、建築物の高所22の開口部24付近、落下物や飛来物の危険がある範囲などを特定するものである。
このような処理は、従来公知の画像処理技術を用いることによってなされる。
【0013】
第2判定部14Cは、第1判定部14Aの判定が肯定となった場合に、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否か判定するものである。
第1の実施の形態では、作業現場用警報装置10Aは、撮像部12によって危険範囲を含む作業現場が撮像されるように設置されているので、第2判定部14Cは、第1判定部14Aの判定が肯定となったことをもって警告条件を満たすものと判定する。すなわち、第1判定部14Aの判定結果が肯定のとき、第2判定部14Cの判定結果も肯定となる。
また、本実施の形態では、第2判定部14Cは、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間以上継続したときに警告条件の判定を行ない、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間未満しか継続しないときに、警告条件を満たさないと判定する。
このようにすることで、第1判定部14Aによる画像処理中に発生する人Hに対するマーキングの外れや動きといったノイズが第2判定部14Cの判定に及ぼす影響の抑制が図られている。
これによって、例えば、作業者が単に撮像部12の前方を通過しただけであり、作業者が危険範囲で継続して作業を行っていないような場合に、第2判定部14Cが警告条件を満たすと誤判定することを抑制している。
【0014】
警告部14Dは、第2判定部14Cの判定が肯定となった場合に、人Hに対して作業の危険性を注意喚起する警告音声(言葉)をスピーカー16を介して発生させるものである。
警告音声記録部14Eは、危険範囲種類情報Dαと、危険範囲種類情報Dαに対応する内容の警告音声を示す警告音声情報Dwとを関連付けて記録するものである。
図2に示すように、、警告音声記録部14Eには、危険範囲種類情報Dα:Dα1、Dα2、Dα3、Dα4……と、警告音声情報Dw:Dw1、Dw2、Dw3、Dw44……とが関連付けて記録されている。
本実施の形態では、警告部14Dは、危険範囲特定部14Bで生成された危険範囲種類情報Dαに基づいて警告音声記録部14Eから特定した警告音声情報Dwに基づいて警告音声をスピーカー16を介して発生させ、作業者に報知する。
【0015】
次に図5のフローチャートを参照して作業現場用警報装置10Aの動作について説明する。
予め作業現場用警報装置10Aは、撮像部12によって危険範囲が撮像できるように危険範囲あるいはその近傍に配置されているものとする。
なお、本例では、危険範囲は、図3に示すように、作業者Hが足場18上の高所20である場合について説明する。
【0016】
作業現場用警報装置10Aが稼働を開始する(ステップS10)。
撮像部12は、作業現場を撮像して危険範囲を含む周囲画像情報を生成する(ステップS12)。
周囲画像情報は、例えば、所定の時間間隔で撮影された時系列に沿った複数の静止画として生成される。
第1判定部14Aは、撮像部12で撮像された周囲画像情報に、人Hを示す人物画像情報方が含まれるか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14が否定ならば、ステップS12に戻る。
ステップS14が肯定ならば、危険範囲特定部14Bは、周囲画像情報に含まれる危険範囲画像情報に基づいて危険範囲の種類を示す危険範囲種類情報Dαを特定する(ステップS16)。
本例では、周囲画像情報に足場18上の高所20が含まれるため、危険範囲種類情報Dαとして足場18上の高所20という種類が特定される。
【0017】
第2判定部14Cは、第1判定部14Aの判定が肯定となった場合に、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否か判定する。(ステップS18)。
なお、この際、第2判定部14Cは、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間以上継続したときに警告条件の判定を行ない、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間未満しか継続しないときに、警告条件を満たさないと判定して、ステップS12に戻る。
【0018】
第2判定部14Cの判定が肯定となったならば、警告部14Dは、人Hに対して作業の危険性を注意喚起する警告音声(言葉)をスピーカー16を介して発生させる(ステップS20)。
この際、警告部14Dは、危険範囲特定部14Bで生成された足場18上の高所20を示す危険範囲種類情報Dαに基づいて警告音声記録部14Eから特定した高所に対応する警告音声情報Dwに基づいて警告音声をスピーカー16を介して発生させ、作業者に報知する。
具体的には、「足場から身を乗り出さないように注意してください。」あるいは、「安全帯使用を確認して作業を行ってください。」あるいは「ヘルメットを正しく着用して作業を行ってください。」といった警告音声をスピーカー16を介して発生させる。
以降、ステップS12に戻り同様の処理を繰り返す。
なお、作業中、同じ警告音声が繰り返して発生されて煩わしいといった場合は、警告音声の発生後、警告音声の発生を所定時間休止するという処理を加え、所定時間経過後にステップS12から処理を再開するようにしてもよい。
【0019】
以上説明したように本実施の形態によれば、撮像部12で撮像された周囲画像情報に、人Hを示す人物画像情報が含まれると判定された場合に、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否かを判定し、この判定が肯定となった場合に、作業者(人)Hに対して作業の危険性を注意喚起する警告音声を発生させるようにした。
したがって、作業者(人)Hが危険範囲において危険な作業を行なおうとしている場合に、警告音声によって的確に注意喚起を図ることができ、作業者(人)Hの安全を確保する上で有利となる。
また、危険範囲に作業者(人)Hが存在する場合にのみ警告音声を発生するので、煩わしさがなく、作業者Hに対する警告音声による注意喚起を効果的に行なう上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態では、本実施の形態では、第2判定部14Cは、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間以上継続したときに警告条件の判定を行ない、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間未満しか継続しないときに、警告条件を満たさないと判定するようにしたので、第1判定部14Aによる画像処理中に発生する人Hに対するマーキングの外れや動きといったノイズが第2判定部14Cの判定に及ぼす影響の抑制を図り、第2判定部14Cの判定を正確に行なう上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態では、危険範囲特定部14Bで生成された危険範囲種類情報Dαに基づいて警告音声記録部14Eから特定した警告音声情報Dwに基づいて警告音声を発生させるようにしたので、危険範囲に対応した警告音声を発生させることができ、危険範囲の種類に即した的確な内容の警告音声で注意喚起を図る上で有利となる。
本実施の形態では、危険範囲の種類が足場18上の高所20である場合について説明したが、以下のように危険範囲の種類に応じた内容の警告音声を使用するようにすればよい。
例えば、図4に示すように、危険範囲の種類が建築物の高所22の開口部24であった場合は、「開口部に注意してください。」、「安全帯使用を確認して作業してください。」、「ヘルメットを正しく着用してください。」といった高所22の開口部24に即した的確な内容の警告音声で注意喚起を図ればよい。
あるいは、危険範囲の種類が落下物や飛来物の危険が想定される場所であった場合は、「ヘルメットを正しく着用してください。」、「ゴーグルを正しく着用してください。」といった危険範囲の種類に即した的確な内容の警告音声で注意喚起を図ればよい。
【0022】
また、本実施の形態では、撮像部12と警告部14Dは危険範囲(作業現場)あるいはその近傍の予め定められた箇所に設置されているので、継続して作業が行われる作業現場において作業を行なう作業者Hに対して警告音声による注意喚起を途切れることなく行なう上で有利となる。
【0023】
なお、本実施の形態では、筐体に撮像部12と、コンピュータ14と、スピーカー16とが組み込まれた場合について説明するが、コンピュータ14を切り離して危険範囲(作業現場)から離れた箇所に配置し、コンピュータ14と、撮像部12およびスピーカー16とを無線通信回線、あるいは、有線通信回線で接続し、それら通信回線を介してコンピュータ14と撮像部12およびスピーカー16との間で情報、信号の授受を行なうようにしてもよい。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図6を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は、作業現場用警報装置10Bが撮像部12と、コンピュータ14とスピーカー16を備えて自律移動するロボット26を備えたものであり、ロボット26が予め定められた経路に沿って巡回しながら、危険範囲で作業する作業者Hに対して警告音声による注意喚起を行なうものである。
図6に示すように、作業現場用警報装置10Bは、第1の実施の形態に加えて、移動部28、距離測定部32、移動制御部14F、地図データベース14G、測位部14Hを備えている。
【0025】
移動部28は、ロボット26を移動させるものであり、例えば、モータで回転駆動される駆動輪、モータで旋回される旋回輪などを含むものであり、床面上に沿ってロボット26を走行させるものである。
移動部28は、駆動輪および旋回輪を含む構成に限定されず、多足歩行ロボットで用いられる構成など、従来公知の様々なロボット26の移動部の構成を用いることができる。
【0026】
地図データベース14Gは、CPUが制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
地図データベース14Gは、複数の作業現場を含む地図情報と、地図情報上に予め定められた巡回経路と、地図情報上に予め定められた危険範囲とを記録している。
ここで、複数の作業現場は、通路を介してつながっており、ロボット26が走行可能に構成されている。
そして、巡回経路は、各作業現場を経由する経路となっており、言い換えると、巡回経路とは、各作業現場とそれら作業現場間をつなぐ通路をロボット26が巡回するために予め地図情報上に定められている。
【0027】
測位部14Hは、ロボット26の自らの現在位置を検出するものである。
本実施の形態では、撮像部12は、ロボット26の周辺環境(周辺の形状)を示す周辺環境情報を検出する周辺環境検出部としても機能する。ここで、周辺環境を示す周辺環境情報は、撮像部12で撮像されたロボット26の周辺環境の画像情報である。
測位部14Hによる現在位置の検出は、周辺環境情報(周辺環境の画像情報)に基づいてなされる。具体的には、測位部14Hは、周辺環境情報と位置情報とが関連付けられた位置情報データベースを含んで構成されており、測位部14Hは、周辺環境情報に基づいて位置情報データベースから位置情報を特定する。
なお、周辺環境情報を検出する周辺環境検出部としては、撮像部12の他、赤外線ビームをロボット26の周辺に走査しその反射光に基づいてその周辺環境を示す3次元座標を検出するライダー(LIDAR)を用いるなど従来公知の様々なセンサが使用可能である。
このような周辺環境情報に基づいて現在位置を検出する測位部14Hは、予めロボット26に搭載されているものを利用することができる。
第2の実施の形態では、第2判定部14Cは、ロボット26の現在位置と、地図データベース14Gの危険範囲とに基づいて周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否かの判定を行なう。
【0028】
移動制御部14Fは、CPUが制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
移動制御部14Fは、測位部14Hで検出された現在位置と地図データベース14Gの地図情報とに基づいて、すなわち、地図情報上に予め定められた巡回経路に沿って自律移動するように移動部28を制御する。
そして、第1判定部14Aによる、撮像部12で撮像された周囲画像情報に人Hを示す人物画像情報が含まれるか否かの判定は、ロボット26の移動中に行われる。
【0029】
なお、移動制御部14Fが、撮像部12で生成された周囲画像情報に人Hの画像が含まれた場合に、移動部28を予め定められた停止時間停止するとともに、第1判定部14Aによる、撮像部12で撮像された周囲画像情報に人Hを示す人物画像情報が含まれるか否かの判定を上記の停止時間中に行なうようにしてもかまわない。このようにすると、コンピュータ14の処理速度(スペック)が比較的低速なものであっても第1判定部14Aの判定を確実に行なう上で有利となる。また、作業者に対して警告音声を用いて的確に注意喚起を図れ、作業者の安全を図る上で有利となる。
また、人Hの有無に拘わらず、測位部14Hで検出された現在位置が地図データベース14の地図情報上に予め定められた危険範囲に該当した場合に移動制御部14Fにより移動部28を予め定められた停止時間停止した上で第1判定部14Aによる、撮像部12で撮像された周囲画像情報に人Hを示す人物画像情報が含まれるか否かの判定を行なうようにしてもよい。この場合も上記と同様にコンピュータ14の処理速度(スペック)が比較的低速なものであっても第1判定部14Aの判定を確実に行なう上で、また、作業者に対して警告音声を用いて的確に注意喚起を図れ、作業者の安全を図る上で有利となる。
【0030】
距離測定部32は、ロボット26と人Hとの対人距離を測定するものである。
距離測定部32は、例えば、赤外線、超音波、レーダーを用いたもの、あるいは、ステレオカメラを用いたものなど従来公知の様々なセンサを用いることができる。
本実施の形態では、移動制御部14Fは、距離測定部32で測定された対人距離が予め定められた距離範囲内となるように移動部28を制御する。
予め定められた距離範囲内とは、撮像部12によって人H(作業者H)および危険範囲との双方を含んだ適切な範囲の周囲画像情報を撮像するに足る範囲として設定される。
このようにすることで、撮像部12で撮像される周囲画像情報から人Hや危険範囲が欠けることなく周囲画像情報がカバーする範囲が適切なものとなり、第1判定部14Aによる判定を精度良く行なうように図られている。
なお、コンピュータ14とは別に距離測定部32を設ける代わりに、撮像部12によって撮像された人H(作業者H)の像の面積S1と、撮像部12によって撮像される撮像画像の全体の面積S2との割合に基づいて対人距離を測定する距離測定部をコンピュータ14によって実現してもよい。
このようにすると専用の距離測定部32を省略でき、コストの抑制および構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、移動制御部14Fが距離測定部32で測定された対人距離が予め定められた距離範囲内となるように移動部28を制御する場合について説明したが、対人距離が予め定められた距離範囲内となるように移動部28を制御することは複雑な制御を伴うため、構成の簡素化およびコスト低減を図る観点から、移動制御部14Fによる上記の制御を省略してもよいことは無論である。
ただし、本実施の形態のようにすると、第1判定部14Aによる判定を精度良く行なう上でより有利となる。
【0032】
次に図7のフローチャートを参照して作業現場用警報装置10Bの動作について説明する。
予め、地図データベース14Gにロボット26の巡回経路が設定されているものとする。
また、ロボット26は予め定められた初期位置(待機位置)に位置しているものとする。
初めに作業現場用警報装置10Bが稼働すると共に、ロボット26の巡回が開始される(ステップS50)。
ロボット26の巡回中(移動中)、撮像部12は、作業現場を撮像して周囲画像情報を生成する(ステップS52)。
第1判定部14Aは、周囲画像情報に人Hを示す人物画像情報が含まれるか否かを判定する(ステップS54)。
ステップS54が否定ならばステップS64に移行して巡回終了か否かを判定し、その判定結果に基づいてステップS52に移行して巡回を継続し、あるいは、ステップS66に移行して初期位置(待機位置)に移動、停止して一連の動作を終了する。
ステップS54が肯定ならば、移動制御部14Fは、距離測定部32で測定された対人距離が予め定められた距離範囲内となるように移動部28を制御する(ステップS56)。
第2判定部14Cは、周囲画像情報が生成された場所が予め定められた危険範囲に該当するという警告条件を満たすか否かを判定する(ステップS58)。すなわち、第2判定部14Cは、ロボット26の現在位置と、地図データベース14Gの危険範囲とに基づいて警告条件の判定を行なう。
なお、この際、第2判定部14Cは、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間以上継続したときに警告条件の判定を行ない、第1判定部14Aによる肯定の判定状態が予め定められたしきい値時間未満しか継続しないときに、警告条件を満たさないと判定して、ステップS52に戻る。
ステップS58が否定ならば、ステップS52に移行する。
ステップS58が肯定ならば、危険範囲特定部14Bは、周囲画像情報に含まれる危険範囲画像情報に基づいて危険範囲の種類を示す危険範囲種類情報Dαを特定する
本例では、周囲画像情報に足場18上の高所20(図3参照)が含まれるため、危険範囲種類情報Dαとして足場18上の高所20という種類が特定される。
【0033】
警告部14Dは、第2判定部14Cの判定が肯定となったので、人Hに対して作業の危険性を注意喚起する警告音声をスピーカー16を介して発生させる(ステップS62)。
この際、警告部14Dは、危険範囲特定部14Bで生成された足場18上の高所20を示す危険範囲種類情報Dαに基づいて警告音声記録部14Eから特定した足場上の高所に対応する警告音声情報Dwに基づいて警告音声をスピーカー16を介して発生させ、作業者に報知する。
【0034】
警告部14Dによる警告が終了したならば、巡回終了か否かを判定し(ステップS64)、判定結果が否定ならばステップS52に戻り巡回を継続する。
判定結果が肯定ならば、ロボット26は初期位置(待機位置)に移動、停止し(ステップS66)、一連の動作を終了する。
【0035】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、自律移動するロボット26により巡回しながら危険範囲で作業する作業者に対して警告音声を用いて危険な作業の注意喚起を図ることができるため、危険範囲を含む作業現場が複数あるような環境であっても、作業者Hの安全を図る上で有利となる。
【0036】
また、第2の実施の形態では、移動制御部14Fは、距離測定部32で測定された対人距離が予め定められた距離範囲内となるように移動部28を制御するので、撮像部12で撮像される周囲画像情報から人Hや危険範囲が欠けることなく周囲画像情報がカバーする範囲が適切なものとなり、第1判定部14Aによる判定を精度良く行なうことができ、作業者に対して警告音声を用いて的確に注意喚起を図れ、作業者の安全を図る上で有利となる。
【0037】
(変形例)
次に第2の実施の形態の変形例について図8を参照して説明する。
予めロボット26に搭載されている測位部14Hを利用することができない場合や測位部14Hが搭載されていない場合は、ビーコン34を利用して現在位置を検出するようにしてもよい。
変形例では、各作業現場および作業現場間をつなぐ通路には予め測位用のビーコン34が設置されている。
地図データベース14Gにはビーコン34が設置された位置とビーコン34の識別情報とが紐付けられて記録されている。
測位部30は、ビーコン34から受信した識別情報に紐付けられた位置を地図データベース14Gから特定することで現在位置の検出を行なう。
なお、測位部30としては、GPSなどの測位衛星から受信した測位信号に基づいて現在位置の検出を行なうものなど、従来公知の様々な測位方法を用いるものであってもよいが、変形例のようにビーコン34を用いると、測位衛星からの測位信号が構造物によって信号が遮られるような作業現場においても現在位置を正確に検出することができ、ロボット26の巡回を円滑に行なう上で有利となる。
【0038】
10A、10B 作業現場用警報装置
12 撮像部
14 コンピュータ
14A 第1判定部
14B 危険範囲特定部
14C 第2判定部
14D 警告部
14E 警告音声記録部
14F 移動制御部
14G 地図データベース
14H 測位部
16 スピーカー
18 足場
20 高所
22 建築物の高所
24 開口部
26 ロボット
28 移動部
30 測位部
32 距離測定部
34 ビーコン
H 人(作業者)
Dα 危険範囲種類情報
Dw 警告音声情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8