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特許7531305スタンプ複製装置およびスタンプ複製装置の保持手段並びにスタンプを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】スタンプ複製装置およびスタンプ複製装置の保持手段並びにスタンプを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20240802BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240802BHJP
   B41C 3/06 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
B29C59/02 B
B29C33/38
H01L21/30 502D
B41C3/06
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020082649
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2020185793
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】2023097
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】591004412
【氏名又は名称】ズス・マイクロテック・リソグラフィ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Suss MicroTec Lithography GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・フォグラー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・パヴリツェク
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・フィンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・マイ
(72)【発明者】
【氏名】ガザーレー・ジャラリ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074159(JP,A)
【文献】特開2013-251301(JP,A)
【文献】特開平09-283605(JP,A)
【文献】特開平08-279549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38,59/02
B41C 3/06
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントの製造用のスタンプを製造するためのスタンプ複製装置(10)であって、
プラットフォーム(14)と、
前記プラットフォーム(14)上に配置可能なカバー(12)と、
スタンプ材料と恒久的に接続されるように構成されたスタンプキャリア(28)のための保持手段(32)と、を備え、
前記保持手段(32)は、前記カバー(12)または前記プラットフォーム(14)上に設けられ、キャリア(33)並びに前記スタンプキャリア(28)を保持するための前記キャリア(33)上のマイクロ構造真空表面(34)を備える、スタンプ複製装置(10)。
【請求項2】
前記マイクロ構造真空表面(34)の個々の構造は、50μm以下の特徴サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項3】
前記マイクロ構造真空表面(34)は、統計的構造を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項4】
前記マイクロ構造真空表面(34)は、前記保持手段(32)の表面上に延びるマイクロ真空チャネル(46)を備えることを特徴とする、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項5】
前記マイクロ真空チャネル(46)の深さ(t)および/または幅(b)は、いずれの場合も50μm未満であることを特徴とする、請求項4に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項6】
前記マイクロ真空チャネル(46)は、上面図で見られる前記保持手段(32)上で放射状に延びることを特徴とする、請求項4または5に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項7】
前記マイクロ真空チャネル(46)は、上面図で見られる前記保持手段(32)上で格子形状に延びることを特徴とする、請求項4または5に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項8】
前記マイクロ真空チャネル(46)は、規則的な間隔で提供され、ウェブ(50)は、それぞれの場合に、2つのマイクロ真空チャネル(46)の間に提供されることを特徴とする、請求項4または6に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項9】
前記マイクロ真空チャネル(46)の幅(b)は、ピッチ(p)の最大90%であることを特徴とする、請求項7に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項10】
前記マイクロ真空チャネル(46)の深さ(t)は、前記マイクロ真空チャネル(46)の幅(b)の10倍以下であることを特徴とする、請求項4または8に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項11】
前記保持手段(32)は、巨視的真空チャネル(40)を備え、マイクロ真空チャネル(46)は、前記巨視的真空チャネル(40)に流体接続されいることを特徴とする、請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項12】
前記スタンプ複製装置(10)は、前記カバー(12)と前記プラットフォーム(14)との間の間隔を調整するための間隔調整装置(18)と、前記カバー(12)と前記プラットフォーム(14)との間の間隔を測定するための測定装置(24)と、を備え、前記間隔調整装置(18)および前記測定装置(24)は、互いに別個に設けられることを特徴とする、請求項1ないし11のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項13】
前記カバー(12)を支持するために前記プラットフォーム(14)上に3つの支持領域(22a、22b、22c)が設けられ、支持領域(22a)の1つは、5つの自由度を提供し、支持領域(22b)の他のものは、4つの自由度を提供し、および/またはさらなる支持領域(22c)は、3つの自由度を提供することを特徴とする、請求項1ないし12のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項14】
記キャリア(33)は、ガラスまたは石英で作られ、前記保持手段(32)は、250nm~450nmの波長を有する光に対して透過性であることを特徴とする、請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項15】
記キャリア(33)は、前記カバー(12)に取り付けられるプレートであることを特徴とする、請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項16】
前記スタンプ複製装置(10)は、液体スタンプ材料をUV光に曝露する目的のための照射源(30)を備え、前記照射源(30)は、フラッドランプおよび/またはコリメータを備えることを特徴とする、請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)。
【請求項17】
求項1ないし16のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)のための保持手段(32)を製造するための方法であって、前記方法は、
-前記保持手段(32)のキャリア(33)を提供するステップと、
-統計的構造化の適用によって、および/または、マイクロ真空チャネル(46)の導入によって、マイクロ構造真空表面(34)を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1ないし16のうちいずれか1項に記載のスタンプ複製装置(10)においてマイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントを製造するための複製装置のスタンプを製造するための方法であって、前記方法は、
-前記スタンプ複製装置(10)にスタンプキャリア(28)と成形部品(26)を配置するステップと、
-前記スタンプキャリア(28)を保持する目的で、マイクロ構造真空表面(34)に真空を適用するステップと、
-前記成形部品(26)または前記スタンプキャリア(28)に液体スタンプ材料を適用するステップと、
-プラットフォーム(14)にカバー(12)を配置するステップと、
-スタンプ材料をUV光に曝してスタンプ材料を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントの製造用のスタンプを製造するためのスタンプ複製装置、および複製装置用の保持手段を製造するための方法、並びに複製装置用のスタンプを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複製装置用のスタンプの製造において、液体または粘性のスタンプ材料は、通常、成形部品によって所望の形状を与えられて、スタンプ複製装置に充填され、硬化される。
【0003】
硬化は、例えば、スタンプ複製装置を加熱することによって達成することができる。この目的のために、加熱された水は、スタンプ複製装置のカバーのチャネルを通って導かれる。スタンプは、スタンプが完全に硬化するまでスタンプ複製装置内に留まる必要があり、数日から1週間かかる場合がある。したがって、十分な量のスタンプを製造するために、いくつかのスタンプ複製装置を同時に使用する必要がある。その結果、高い取得コストが発生し、必要なスペースも増加する。
【0004】
しかしながら、マイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントを製造するためのスタンプは、比較的短い耐用年数を有し、それらを用いて約10から100のスタンピングプロセスしか実行できないため、新しいスタンプの需要は、比較的高い。そのため、スタンプ製造のサイクルタイムを短縮したいという要望がある。
【0005】
スタンプを硬化させる他の方法は、光、特に、UV光への曝露による硬化である。硬化は、加熱よりも光への曝露によりはるかに迅速に達成できる。しかしながら、この方法を用いたスタンプ製造の場合、所望の品質を維持することができない。
【0006】
液体スタンプ材料は、すなわち、スタンプキャリア上に配置され、硬化中にそれに結合される。例えば、完全に硬化したスタンプのスタンプキャリアは、製造中に少なくとも一時的に真空によって保持される。この目的のために、真空チャネルは、スタンプキャリアから通じており、少なくともスタンプキャリアの表面に沿ったセクションで延びている。
【0007】
問題は、滑らかな研磨面とは異なり、真空チャネルでは光の散乱と反射が異なることである。これは、スタンプ材料の照射の均一性に悪影響を及ぼし、プロセスのばらつきをもたらす。この内容では、これをシャドウエフェクトと呼ぶ。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、一貫して高品質で、短時間でスタンプの製造を可能にするスタンプ複製装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、スタンプ複製装置用の保持手段を製造するための方法、並びにスタンプを製造するための方法を特定することである。
【0009】
この目的は、本発明によれば、プラットフォーム、プラットフォーム上に配置可能なカバー、およびスタンプキャリア用の保持手段を備える、マイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントの製造用のスタンプを製造するためのスタンプ複製装置によって解決される。保持手段は、カバーまたはプラットフォーム上に提供され、スタンプキャリアを保持するためのキャリアおよびキャリア上のマイクロ構造真空表面を備える。
【0010】
本発明の範囲内で、「マイクロ構造」は、構造または凹凸のサイズがマイクロメートル範囲またはそれ以下であることを意味すると理解される。
【0011】
マイクロ構造の真空表面を備えるホルダの利点は、真空構造が非常に小さいため、スタンプの製造時に再現されず、したがって、シャドウエフェクトがないことである。
【0012】
したがって、本発明に係るスタンプ複製装置は、製造されるスタンプの品質を損なうことなく、光への曝露によってスタンプの硬化を可能にする。スタンプの製造におけるプロセス時間は、スタンプの製造コストにプラスの影響を与える光への曝露を使用することにより、特に、短くなる可能性がある。
【0013】
スタンプ複製装置のカバーは、スタンプ複製装置内のスタンプの光への曝露を可能にするために、光、特に、UV光に対して少なくとも部分的に透過性であることが好ましい。代替的または追加的に、プラットフォームはまた、いくつかの領域において少なくとも透過性であり得る。
【0014】
マイクロ構造の真空表面を備えるキャリアは、カバーに統合することもでき、特に、カバーと一体に形成することができる。言い換えれば、真空表面は、カバーに直接統合されてもよい。
【0015】
特に、ネガとして製造されるスタンプの形状を表す成形部品は、カバーまたはプラットフォーム上に保持可能であり、保持手段は、カバーおよびプラットフォームの他方に提供される。カバーがプラットフォーム上に配置されている場合、マイクロ構造の真空面は成形部品に面していることが好ましい。この状態で、例えば、スタンプを成形可能な金型を形成する。
【0016】
カバーは、好ましくは、ヒンジによって枢動可能に取り付けられ、枢動することによってカバーをプラットフォーム上に配置することができる。
【0017】
スタンプキャリアは、薄膜、ガラスプレートなどであり得る。スタンプが成形される成形材料は、製造時にスタンプキャリア上で配布される。
【0018】
成形部品を保持するために真空溝を設けることもできる。しかしながら、これらはマイクロ構造である必要はない。
【0019】
典型的には、成形部品は、液体スタンプ材料がそこに適用されるので、カバー上と同様にプラットフォーム上に配置される可能性が高い。スタンプ複製装置を閉じるときにカバーが枢動されると、液体スタンプ材料は、すなわち、スタンプ複製装置から流出する可能性がある。
【0020】
一実施形態によれば、マイクロ構造真空表面の個々の構造は、50μm以下の特徴サイズを有する。最大特徴サイズは、例えば、個々の構造の深さおよび/または幅に基づく。このような特徴サイズを使用すると、特に、良好な照射均一性を実現できる。
【0021】
マイクロ構造真空表面は、統計的構造化を備え得る。統計的構造化は、例えば、サンドブラスト、サンディング、ミリング、またはエッチングによって行われる。これは、統計的構造化がランダムな構造を有していることを意味する。そのような統計的に構造化された表面は、表面拡散体とも呼ばれる。このような構造化は、特に、簡単かつ経済的に製造できる。
【0022】
代替的または追加的に、マイクロ構造真空表面は、保持手段の表面上に延びるマイクロ真空チャネルを備えることができる。個々の構造は特に正確に寸法を決めることができるため、マイクロ真空チャネルは、統計的構造化よりも優れている。特に、マイクロ真空チャネルでは、厚さと深さのわずかな変化のみが発生する。他の利点は、マイクロ構造真空表面の表面が、外部の構造化の影響を受けないため、個々のマイクロチャネル間で影響を受けず、特に、滑らかであることである。
【0023】
マイクロ真空チャネルは、リソグラフィ、例えば、レーザまたはマイクロミリングによるウェットエッチングなどの除去方法によって製造することができる。このような方法は、特に正確な構造化を容易にする。
【0024】
好ましくは、マイクロ真空チャネルの深さおよび/または幅は、50μmよりも小さく、特に、10μmよりも小さい。このようなチャネルサイズを使用すると、スタンプを特に高品質で製造できる。
【0025】
一実施形態によれば、マイクロ真空チャネルは、上面図で見られる保持手段上で半径方向に延びる。代替的または追加的に、マイクロ真空チャネルは、特に、直線マイクロ真空チャネルを接続するために、環状チャネルであり得る。
【0026】
あるいは、マイクロ真空チャネルは、上面図で見られる保持手段上で格子形状で延びることができる。この目的のために、マイクロ真空チャネルは、好ましくは、2つの方向に均等に延びる。互いに交差するマイクロ真空チャネルは、互いに直角に、または互いに鋭角に延びることができる。
【0027】
放射状に、環状に、または格子状に延びるマイクロ真空チャネルによって、スタンプキャリアに、特に、均一に真空を適用することができる。
【0028】
一実施形態によれば、マイクロ真空チャネルは、規則的な間隔で提供され、ウェブは、それぞれの場合に2つのマイクロ真空チャネルの間に提供され、特に、前記マイクロ真空チャネルの1つおよび隣接するウェブの幅としてのマイクロ構造真空表面のピッチは、50μm以下、好ましくは、10μm以下である。隣接するウェブと一緒に、チャネルは、それぞれの場合にマイクロ構造の個々の構造を形成し、その集合的な幅は「ピッチ」と呼ばれる。照明の特に良好な均一性は、そのような特徴サイズによって達成される。
【0029】
マイクロ真空チャネルの幅は、好ましくは、ピッチの最大90%、特に、ピッチの正確に90%である。可能な限り広いマイクロ真空チャネルの幅は、スタンプキャリアに加えられる真空の保持力に関して有利である。最大90%までの幅により、ウェブによって個々のマイクロ真空チャネルを互いに確実に区切ることができる。
【0030】
マイクロ真空チャネルの深さは、例えば、マイクロ真空チャネルの幅の10倍以下である。このようにして、マイクロ構造の真空表面に沿って均一に真空を生成することができ、スタンプキャリアを確実に支持することができる。
【0031】
保持手段は、巨視的真空チャネルを備えることができ、真空表面、特に、マイクロ真空チャネルは、真空チャネルに流体接続され、特に、真空チャネルは、マイクロ構造真空表面を完全に取り囲む。このようにして、巨視的真空チャネルを介して、マイクロ構造真空表面に真空を生成することができる。この目的のために、巨視的真空チャネルを真空源に接続することができる。
【0032】
あるいは、巨視的真空チャネルはまた、マイクロ構造真空表面を選択的に供給することができる。
【0033】
本発明の範囲内で、「巨視的」チャネルは、マイクロメートル範囲以上の構造を有するチャネルを意味すると理解される。
【0034】
スタンプ複製装置のカバーは、例えば、真空を適用するための少なくとも流体接続を有し、特に、巨視的真空チャネルは、流体接続からホルダへのカバー内に延びる。
【0035】
一実施形態によれば、スタンプ複製装置は、カバーとプラットフォームとの間の間隔を調整するための間隔調整装置と、カバーとプラットフォームとの間の間隔を測定するための測定装置とを備え、間隔調整装置と測定装置が互いに別々に設けられる。その結果、間隔の調整と間隔の測定は、互いに独立して行うことができる。このようにして、プラットフォームとカバーとの間の間隔を特に正確に設定することができる。
【0036】
間隔調整装置は、例えば、マイクロメータねじを備え、測定装置は、例えば、ダイヤルインジケータを備える。間隔調整装置を操作するとき、すなわち、カバーは、傾斜する可能性がある。例えば、数マイクロメートルのねじが提供され、カバーとプラットフォームとの間の間隔を増加させるために前記ねじの1つが回される場合、カバーとプラットフォームとの間の間隔は、他の点で減少され得る。別個に設けられた測定装置の結果として、そのような傾斜を検出することができ、それに応じてカバーとプラットフォームとの間の間隔を再調整することができる。
【0037】
プラットフォームには、カバーを支持するための3つの支持領域があり、特に、支持領域の1つが1つの自由度を制限し、他の支持領域が2つの自由度を制限し、および/または他の支持領域が3つの自由度を制限する。言い換えれば、支持領域の1つは、5つの自由度を提供し、他の支持領域は、4つの自由度を提供し、さらなる支持領域は、3つの自由度を提供する。このようにして、カバーのサポートは、静的に過度に決定されず、明確に画定される。したがって、カバーは、特に、安定して支持される。
【0038】
自由度は、並進と回転の両方の自由度を意味すると理解されている。
【0039】
マイクロメートルねじは、例えば、半球状の端部を有し、カバーが閉じているとき、各々が支持領域の1つに載っており、前記支持領域は、特に、点、領域、または線形支持として構成される。好ましくは、合計3つのマイクロメートルねじが提供される。
【0040】
一実施形態によれば、保持手段、特に、キャリアは、ガラスまたは石英で作られており、保持手段は、光、特に、UV光、特に、250nm~450nmの波長を有する光に対して透過性である。好ましくは、保持手段は、365nmの波長を有する光に対して透過性である。この波長の光は、スタンプの硬化に特に適している。
【0041】
保持手段、特に、キャリアは、例えば、特に、カバーに取り付けられるプレートである。好ましくは、保持手段、特に、キャリアは、フレームに入れられる。
【0042】
スタンプ複製装置は、好ましくは、液体スタンプ材料を光、特に、UV光に曝露するための照射源を備え、照射源は、フラッドランプおよび/またはコリメータを備える。スタンプ材料は、そのような照射源によって、特に、均一に照射することができる。
【0043】
照射源で使用されるランプは、例えば、LEDまたは水銀蒸気ランプである。
【0044】
さらに、この目的は、本発明によれば、スタンプ複製装置、特に、前述のように設計されたスタンプ複製装置のための保持手段を製造するための方法によって解決される。この方法は、次のステップを含む。
【0045】
-保持手段のキャリアを提供するステップと、
-特に、サンドブラスト、サンディング、ミリングまたはエッチングによる統計的構造化の適用による、および/または、特に、リソグラフィ法、レーザ法または侵食法の使用による、マイクロ真空チャネルの導入による、マイクロ構造真空表面を生成するステップ。
【0046】
特に、構造化は、マイクロ構造真空表面に適用され、個々の構造の特徴サイズは、50μm以下である。
【0047】
さらに、本発明によれば、前述のように装置内でマイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントを製造するための複製装置用のスタンプを製造するための方法によって、目的が解決される。この方法は、次のステップを含む。
【0048】
-スタンプ複製装置にスタンプキャリアと成形部品を配置するステップと、
-スタンプキャリアを保持する目的で、マイクロ構造真空表面に真空を適用するステップと、
-成形部品またはスタンプキャリアに液体スタンプ材料を適用するステップと、
-プラットフォームにカバーを配置するステップと、
-スタンプ材料をUV光に曝してスタンプ材料を硬化させるステップ。
【0049】
このような方法により、複製装置のスタンプの製造時間を短縮することができる。さらに、複製装置用のスタンプの製造におけるプロセス変動は、そのような方法によって低減することができる。
【0050】
スタンプ材料の曝露中の照射の開口角または照射角度の範囲は、好ましくは、放射照度の変動がスタンプ材料で発生しないように選択される。可能な限り大きい照射角度は、照射の均一性にプラスの影響を与える。例えば、スタンプ材料は、最大±90°の角度で照射される。
【0051】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の説明および参照がなされる添付の図面に見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明に係るスタンプ複製装置を概略的に示している。
図2図1のスタンプ複製装置を上面図で示している。
図3図1および図2のスタンプ複製装置を閉じた状態で示している。
図4】スタンプ複製装置のカバーを示している。
図5】スタンプ複製装置の第2の実施形態に係るカバーを示している。
図6】マイクロ真空チャネルを備えるスタンプ複製装置のための保持手段の断面を示している。
図7a】スタンプ複製装置のための保持手段の製造における様々なステップを示している。
図7b】スタンプ複製装置のための保持手段の製造における様々なステップを示している。
図7c】スタンプ複製装置のための保持手段の製造における様々なステップを示している。
図8】スタンプ複製装置の第3の実施形態に係るカバーを示している。
図9】第3の実施形態に係る保持手段の製造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1図2および図3は、ナノ構造および/またはマイクロ構造コンポーネントの製造のためのスタンプを製造するためのスタンプ複製装置10を概略的に示す。スタンプ複製装置10は、カバー12およびプラットフォーム14を備える。
【0054】
図3に示されるように、カバーは、ヒンジ16によって枢動可能にプラットフォーム14に取り付けられ、プラットフォーム14上に配置することができる。
【0055】
スタンプ複製装置10は、スタンプ複製装置10が閉状態にあるときに、カバー12からプラットフォーム14までの規定された間隔を設定するために、間隔調整装置18を備える。間隔調整装置18は、例えば、プラットフォーム14に向けられたそれらの端部で好ましくは丸められた3つのマイクロメータねじ20を備える。
【0056】
プラットフォーム14には、それに応じてカバー12を支持するための3つの支持領域22a、22b、22cが設けられており、特に、いずれの場合にも、1つのマイクロメータねじ20に対して1つの支持領域22a、22b、22cが設けられている。したがって、支持領域22aの1つは、5つの自由度を提供し、支持領域22bの他のものは、4つの自由度を提供し、さらなる支持領域22cは、3つの自由度を提供する。
【0057】
図2では、支持領域が点線で示されている。支持領域22aは、円錐形の窪みによって形成される。支持領域22bは、V字形の窪みによって形成される。支持領域22cは、エリアによって形成されている。
【0058】
さらに、スタンプ複製装置10は、カバー12とプラットフォーム14との間の間隔を測定するための測定装置24を備える。測定装置24は、間隔調整装置18とは別個に提供される。したがって、間隔調整装置18の操作によって引き起こされない、カバーとプラットフォーム14との間の間隔の修正を検出することができる。このようにして、カバー12とプラットフォーム14との間の間隔を特に正確に設定することができる。
【0059】
測定装置24は、例えば、少なくともダイヤルインジケータ25、好ましくは、いずれの場合も、マイクロメータねじ20当たり1つのダイヤルインジケータ25を備える。各ダイヤルインジケータ25は、1つのマイクロメータねじ20に割り当てられるが、それとは別に構成される。
【0060】
さらに、スタンプ複製装置10は、液体スタンプ材料を光、特に、UV光に曝露するための照射源30を備える。そのような照射源30が図3に示されている。スタンプ複製装置10内に存在するスタンプ材料は、光への曝露によって硬化することができる。
【0061】
照射源30は、この目的のためにフラッドランプおよび/またはコリメータを備えることができる。フラッドランプおよび/またはコリメータを使用してスタンプ材料を特に均一に照射することができ、完成したスタンプの品質に実質的に影響を与える。
【0062】
カバー12は、スタンプ材料の照射を可能にするために、例えば、光、特に、UV光に対して少なくとも部分的に透過性である。
【0063】
スタンプ複製装置10で使用される成形部品26が図1および図2に示されている。成形部品26は、ネガとして製造されるスタンプの形状を表す。成形部品26は、交換可能であり得、その結果、異なる成形部品26は、異なるスタンプ形状の製造のために使用され得る。
【0064】
さらに、スタンプ複製装置10で使用されるスタンプキャリア28は、図1および図2に示され、前記スタンプキャリア28は、スタンプの製造中にスタンプ材料に永久的に接続される。
【0065】
成形部品26およびスタンプキャリア28の両方は、スタンプ製造において真空によってプラットフォーム14およびカバー12上の適所に保持される。これは、カバー12を所定の位置に枢動させたときにスタンプキャリア28または完成したスタンプが意図せずに脱落しないように、またカバー12を開いたときに成形部品26がプラットフォーム14に残り、スタンプにくっついたままにならないようにするために必要である。
【0066】
スタンプキャリアを所定の位置に保持するために、スタンプ複製装置10は、図示される実施形態においてカバー12上に提供されるスタンプキャリア28を保持するための保持手段32を備える。これは、図2に示されている。しかしながら、保持手段32がプラットフォーム14上に配置されることが考えられる。
【0067】
保持手段32は、特に、キャリア33と、キャリア33上に構成されたマイクロ構造真空表面とを備える。
【0068】
保持手段32、特に、キャリア33は、例えば、カバー12に設置することができるプレート36である。あるいは、キャリア33は、カバー12またはカバー12の一部を形成することができる。
【0069】
図示の実施形態では、図2に見られるように、キャリア33は、フレーム38によって囲まれ、フレーム38およびキャリア33は、一緒にカバー12を形成する。フレーム38は、オプションであり、それは、キャリア33およびカバー12に特に良好な安定性を与える。
【0070】
キャリア33は、ガラスまたは石英で作ることができ、その結果、保持手段32は、光、特に、UV光、特に、250nm~450nmの波長を有する光に対して透過性である。
【0071】
成形部品26のホルダは、既知の方法で、特に、真空によっても実施することができる。しかしながら、成形部品24のホルダは、スタンプの品質にそれほど影響を与えないかまたはそれほど影響しないので、成形部品26を保持するためにマイクロ構造真空表面34は必要ない。
【0072】
マイクロ構造真空表面34を備える保持手段32は、図2の上面図に示されている。真空表面34は、例えば、スタンプキャリア28の輪郭を有しており、スタンプ複製装置10で意図したように使用される場合、スタンプキャリア28は、真空表面34を完全に覆う。スタンプキャリア28は、マイクロ構造真空表面34の表示を容易にするために、図2には示されていない。
【0073】
マイクロ構造真空表面34の個々の構造は、例えば、50μm以下、好ましくは、10μm以下の特徴サイズを有する。
【0074】
保持手段32は、マイクロ構造真空表面34上に真空を生成するために巨視的真空チャネル40を備える。この巨視的真空チャネル40は、マイクロ構造真空表面34に流体接続される。図示される実施形態において、巨視的真空チャネル40は、マイクロ構造真空表面34を完全に取り囲む。しかしながら、マイクロ構造真空表面34は、特定の点でのみ巨視的真空チャネル40に接続されていることが考えられる。
【0075】
巨視的真空チャネル40は、チャネル42を介してスタンプ複製装置10の真空源44に接続される。
【0076】
第1の実施形態に係る保持手段32を備えるカバー12が図4に示されている。より良い例示目的のために、キャリア33上に形成されたマイクロ構造真空表面34のサブ領域が拡大して示されている。
【0077】
図4に示されるマイクロ構造真空表面34は、保持手段32の表面上に、特に、キャリア33の表面上に延びる多数のマイクロ真空チャネル46を備える。
【0078】
保持手段32の上面図では、マイクロ真空チャネル46は格子状に延びており、マイクロ真空チャネル46は互いに等間隔で配置されている。
【0079】
図5では、第2の実施形態に係る保持手段32を備えるカバー12が示されている。
【0080】
図5に示されるマイクロ構造真空表面34は、多数のマイクロ真空チャネル46を備える。図4に示されるマイクロ構造真空表面34とは対照的に、この実施形態に係るマイクロ真空チャネル46は、保持手段32上で半径方向に延びる。
【0081】
さらに、放射状マイクロ真空チャネル46を相互接続するいくつかの環状マイクロ真空チャネル48が存在する。
【0082】
図6では、マイクロ真空チャネル46の寸法が、図4の保持手段32を通る断面によって示されている。断面図は、非常に拡大されており、マイクロ真空チャネル46の可視性を改善するために縮尺どおりではない。
【0083】
好ましくは、マイクロ真空チャネル46の深さtおよび/または幅bは、いずれの場合も50μm未満、特に、10μm未満である。
【0084】
ウェブ50は、いずれの場合にも、2つのマイクロ真空チャネル46の間に提供され、特に、マイクロ真空チャネル46の1つと隣接するウェブ50との合計幅bとしてのマイクロ構造真空表面34のピッチpは、50μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0085】
この目的のために、マイクロ真空チャネル46の幅bは、ピッチの最大90%である。
【0086】
マイクロ真空チャネル46の深さtは、マイクロ真空チャネル46の幅bの10倍以下である。図示された実施形態では、深さtは、幅bの約3分の1に達する。
【0087】
したがって、放射状構成の場合のマイクロ真空チャネル46の寸法は、ピッチを除いて格子構成の場合と同じくらい大きくすることができる。放射状のレイアウトの場合、ピッチは、一定ではなく、マイクロ構造真空面34の中心から端に向かって増加する。
【0088】
スタンプ複製装置10用の保持手段32を製造するための可能な方法は、図7a~図7cに、特に、図4および図5による保持手段32に示されている。より具体的には、保持手段32のキャリア33上のマイクロ真空チャネル46の製造が示されている。簡単にするために、図7a~図7cには、キャリア33の小さな部分のみが示されている。
【0089】
最初に、保持手段32のキャリア33、特に、マイクロ構造真空表面34のないキャリア33が提供される。
【0090】
続いて、マイクロ構造真空表面34は、マイクロ真空チャネル46の導入によって作成される。これは、リソグラフィ法、レーザ法または侵食法によって実行することができる。
【0091】
リソグラフィ方法が図7a~図7cに例示的に示されている。この目的のために、図7aに示されるように、マスク51が最初にキャリア33上に配置される。
【0092】
次に、マスク51によって覆われていないキャリア33の表面52は、エッチング媒体に曝される。その結果、キャリア33の材料はある程度除去され、それにより、図7bおよび図7cに示されるように、マイクロ真空チャネル46が形成される。
【0093】
図8では、第3の実施形態に係る保持手段32を備えるカバー12が示されている。
【0094】
図8に示される実施形態では、マイクロ構造真空表面34は、統計的構造、特に、ランダム構造を備える。統計的構造でさえ、マイクロメートル範囲の構造しかなく、特に、50μm未満である。
【0095】
スタンプ複製装置10のためのそのような保持手段32を製造するための方法が図9に示されている。
【0096】
この場合でも、保持手段32のキャリア33は、最初は、マイクロ構造真空表面34なしで提供される。
【0097】
続いて、統計的構造化を適用することにより、マイクロ構造真空表面34が生成される。これは、サンドブラスト、サンディング、ミリング、またはエッチングによって行うことができる。
【0098】
図9では、サンドブラストを使用した構造化が例示的に示されている。この目的のために、構造化されるべきではない領域は、マスク51によって覆われる。
【0099】
以下では、図1図3によるスタンプ複製装置10でマイクロ構造および/またはナノ構造コンポーネントを製造するための複製装置用のスタンプを製造するための方法について説明する。
【0100】
最初に、スタンプキャリア28および成形部品26は、スタンプ複製装置10に配置される。成形部品26は、プラットフォーム14に配置され、スタンプキャリア28は、図1図3に示されるスタンプ複製装置10のカバー12に配置される。
【0101】
続いて、スタンプキャリア28を保持する目的で、マイクロ構造真空表面34に真空が適用される。
【0102】
真空を適用する前、最中、またはその後に、成形部品26またはスタンプキャリア28に液体スタンプ材料が適用される。スタンプ材料は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、特に、s-PDMSまたはx-PDMSまたはシルガード184である。
【0103】
その後、特に、それを所定の位置に枢動させた結果として、カバー12は、プラットフォーム14上に配置される。カバー12がプラットフォーム14上に配置されると、液体スタンプ材料は、例えば、カバー12の重さを通して成形部品26上に分配され、成形部品26の形状がスタンプ材料に再現される。
【0104】
カバー12は、スタンプ複製装置10の閉状態において自重によって所定位置に保持されるので、カバー12を固定する必要はない。
【0105】
続いて、スタンプ材料をUV光に曝露することにより、スタンプ材料を硬化させる。硬化時間は、例えば、1~2分である。
【0106】
この目的のために、照射源30から放出された光は、スタンプ材料を曝露するときの照射の均一性が悪影響を受けないように、マイクロ構造真空表面34上で破壊および/または散乱される。このようにして、常に高品質のスタンプを製造することができる。特に、シャドウエフェクトと呼ばれるものを回避できる。
【0107】
以前の従来の真空チャネルとは対照的に、スタンプ材料の特に均一な曝露が起こり得る。
【0108】
したがって、スタンプ材料の曝露における照射角度は、マイクロ構造真空領域34のピッチpに応じて選択することができる。
【0109】
硬化後、スタンプ材料とスタンプキャリア28は互いに恒久的に接続される。
【0110】
前述のスタンプ複製装置10によって製造されたスタンプは、例えば、100μm~1mmの厚さを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9