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特許7531326平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20240802BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09D11/101
B41J2/01 501
B41J2/01 127
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020109478
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006905
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】井上 真司
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 育男
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188671(JP,A)
【文献】特開2015-174994(JP,A)
【文献】特開2017-066348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
B41J 2/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、顔料、顔料分散剤、及び体質顔料を含有し、前記体質顔料を前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーに対し2~25質量%含有し、
前記顔料分散剤が極性基含有分散剤であり、顔料100質量部に対して、0.25~10質量部含有することを特徴とする平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項2】
前記体質顔料が、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、及び/又はカオリンクレーである請求項1に記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項3】
重合禁止剤を含有する請求項1または2に記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項4】
前記金属錯体の中心金属がアルミニウム、チタニウム、ジルコニウムのいずれかである請求項1~3のいずれかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーが、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、又は重合性オリゴマーである請求項1~の何れかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項6】
前記金属錯体を、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキに対し0.03~2.0質量部含有する請求項1~の何れかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項7】
前記顔料分散剤が、酸性基含有分散剤又は塩基性基含有分散剤であり、顔料100質量部に対して、0.25~10質量部含有する請求項1~のいずれかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを用いてオフセット印刷し、印刷されたインキを活性エネルギー線を用いて硬化させることを特徴とするインキ硬化物の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のインキ硬化物の製造方法で得られた印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷インキ用途に好適に用いることができる組成物及びこれを用いた印刷インキ、前記印刷インキを印刷してなる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、紫外線等のエネルギー線照射により瞬時に硬化し得るため作業性に優れること、基本的に無溶剤で用いられるために環境負荷が比較的低いこと等の利点から、紙面印刷の他、プラスチック包装材等様々な用途に用いられている。
【0003】
平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキにおいて体質顔料は、インキの流動性調整や印刷時のミスチング防止、紙基材への浸透防止等の物性改良・機能性付与を目的として幅広く使用されている(特許文献1段落0031参照)。しかしながら体質顔料の多量の添加はインキの流動性の低下を招く恐れがあり、所望のインキ流動性とミスチングとのバランスをとることが難しい場合があった。
【0004】
平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの流動性を改善する方法として、(メタ)アクリレート化合物と、有機金属化合物(ただし、顔料を除く)と、極性基含有分散剤と、顔料とを含み、前記有機金属化合物が、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される金属のアルコシキド、そのアシレート、またはその錯体である、活性エネルギー線硬化型印刷インキが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO14/156812号公報
【文献】特開2017-66348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、平版オフセット印刷用に適し、インキ流動性とミスチングとのバランスに優れた平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、顔料、顔料分散剤、及び体質顔料を含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキが上記課題を解決することを見出した。
【0008】
金属錯体は、顔料や極性基含有分散剤の極性基に配位して分散状態の安定化に寄与するため印刷インキの流動性が向上することは公知である(特許文献2段落0022参照)。即ちインキ中に一定量の極性基が存在すればある程度の流動性の向上は得られる。本発明においては、体質顔料を特定の範囲で併用することで、インキ流動性とミスチングとのバランスに優れた平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキが得られることを見出した。
【0009】
即ち本発明は、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、顔料、顔料分散剤、及び体質顔料を含有し、前記体質顔料を前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーに対し2~25質量%含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを用いてオフセット印刷し、印刷されたインキを活性エネルギー線を用いて硬化させるインキ硬化物の製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載のインキ硬化物の製造方法で得られた印刷物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、さらなる流動性と安定性に優れた平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(言葉の定義)
本発明において(メタ)アクリレート樹脂とは、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、或いはその両方を有する樹脂のことをいう。また、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基の一方或いは両方のことをいい、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0014】
(エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー)
本発明で使用するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー及び又はオリゴマーは、活性エネルギー線硬化性技術分野で使用されるモノマー及び又はオリゴマーであれば特に限定なく使用することができる。特に反応基として(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等を有するものが好ましい。また反応基数や分子量にも特に限定はなく、反応基数の多いものほど反応性は高いが粘度や結晶性が高くなる傾向にあり、また分D子量が高いものほど粘度が高くなる傾向にあることから、所望の物性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。例えばUV-LEDのような低エネルギー照射で好適に硬化させるという点では、より反応性の高い3官能以上の活性エネルギー線硬化性モノマーを組み合わせ、用途に応じて印刷基材への接着性、皮膜の柔軟性等の必要物性を得る為に、適宜単官能、2官能のモノマーを単独もしくは併用することが好ましい。
【0015】
具体的には例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等の、ランプ方式で実績のあるものが、本発明で述べる紫外線発光ダイオード方式においてもそのまま使用することが可能である。
【0016】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチルー2-エチルー1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
重合性オリゴマーとしては、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、チオール変性ポリエステルアクリレート、チオール(メタ)アクリレートなどのチオール変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
また前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー及び又はオリゴマーとして、4官能以上の(メタ)アクリレートは、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙への印刷用途において、硬化性や強度の向上に大きく寄与するため使用することが好ましく、インキ固形分全量に対し15~70質量%の範囲で使用することが好ましい。一方、プラスチックへの印刷用途においては、硬化塗膜の架橋密度が上昇するに従って、基材と硬化塗膜との密着性が減少するため、4官能以上の(メタ)アクリレートの含有量を適宜減少させる必要がある。この場合、4官能以上の(メタ)アクリレートはインキ固形分全量に対し0~50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0020】
(金属錯体)
本発明で使用する金属錯体は、キレート剤と称される場合もある。具体的には例えば、アルミニウムトリエチレートアルミニウムトリプロピレート、アルミニウムジプロピレートモノブチレート、アルミニウムトリブチレート等のアルミニウムトリアルキレート;アルミニウムアセチルアセテートジプロピレート、アルミニウムアセチルアセテートジブチレート、アルミニウムトリアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオクタデシルアセトアセテートジプロピレート等のアルミニウムアルキルアセトアセテート;チタンテトラプロピレート、チタンテトラブチレート等のチタンテトラアルキレート;チタンビス(アセチルアセテート)ジプロピレート等のチタンアルキルアセトアセテート;ジルコニウムテトラブチレート等のジルコニウムテトラアルキレート等が挙げられる。これらの具体的な市販製品としては、例えば、川研ファインケミカル株式会社製のアルミニウム有機化合物シリーズ(「AMD」、「ASBD」、「AIPD」、「PADM」、「アルミニウムエトキサイド」、「ALCH」、「ALCH-TR」、「アルミキレートM」、「アルミキレートD」、「アルミキレートA、A(W)」)、味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクト」シリーズ(「AL-M」、「TTS」)、松本ファインケミカル株式会社製「オルガチックス」シリーズ(「AL-3001」、「AL-3100」、「AL-3200」、「AL-3215」、「TA-8」、「TA-21」、「TA-23」、「TA-30」、「TC-100」、「TC-401」、「TC-710」、「TC-750」、「ZA-45」、「ZA-65」、「AC-150」、「ZC-540」)等が挙げられる。前記金属錯体は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0021】
また、金属アルコキシドや金属アシレート等の金属化合物も使用することができる。具体的には、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される金属のアルコシキド、そのアシレートである。
金属アルコキシドとしては、例えばアルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ターシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テト ラステアリルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等が挙げられる。
【0022】
金属アシレートとしては、例えばアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、チタンイソステアレート、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0023】
前記金属錯体の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ中の配合量は、所望のインキ性能等に応じて適宜調整可能であるが、特に、流動性が高く印刷面の光沢に優れ、かつ、耐ミスチングや乳化適正性等のその他の性能も十分に高い印刷インキとなることから、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキに対し0.03~2.0質量部の範囲であることが好ましく、0.05~1.0質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0024】
(バインダー樹脂)
本発明においては、バインダーとなりうる樹脂を含有することもできる。ここで述べるバインダー樹脂とは、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキに要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体等を挙げることができ、またエポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。
【0025】
前記ジアリルフタレート樹脂としては、オルソ、イソ、テレの3種の異性体が存在するが、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキで用いるバインダー樹脂としてジアリルオルソフタレート樹脂(単にジアリルフタレート樹脂と称されることが多い)、ジアリルイソフタレート樹脂を使用する事ができる。
前記ジアリルイソフタレート樹脂としては、例えば、主剤としてのフタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
ジアリルオルソフタレート樹脂、ジアリルイソフタレート樹脂は、優れた紙剥け性、耐乳化適性、ロングランでの印刷適性を付与するために特に有用である。
ジアリルオルソフタレート樹脂としては、具体的には、ダイソーダップA(大阪ソーダ社製)、ジアリルイソフタレート樹脂としては、ダイソーイソダップ(大阪ソーダ社製)が挙げられる。
【0026】
(体質顔料)
体質顔料としては例えば「顔料便覧(編集:日本顔料技術協会編)」に掲載される印刷インキ用体質顔料等が挙げられ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカ、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム等が使用可能である。 中でも、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンクレー、タルク、シリカが好ましく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルクがなお好ましい。これらは1種で使用してもよく複数種を併用してもよい。
【0027】
体質顔料はエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーに対し2~25質量%の範囲であることが好ましい。この範囲より少ないとミスチングを起こしやすくなり、この範囲より多いと流動性が低下し印刷トラブルの原因となる。中でも2~20質量%の範囲が好ましく、2~10質量%の範囲がより好ましい。
【0028】
(顔料)
本発明で使用する顔料は、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0029】
(顔料分散剤)
本発明で使用する顔料分散剤は、極性基含有分散剤であると顔料の分散性とインキ流動性をより向上できることから好ましい。極性基は、酸性基、塩基性基、その他の官能基が挙げられる。
酸性基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。塩基性基は、アミノ基等が挙げられる。その他の官能基は、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。極性基含有分散剤は、2種類以上の極性基を有していることもできる。なお、極性基含有分散剤は、ジアリルフタレート樹脂、極性基を含有する光重合開始剤、光重合開始剤の触媒を含まない。特に塩基性基含有分散剤を使用することが好ましい。
【0030】
酸性基含有分散剤は、市販品では、ソルスパース26000等の酸価を有するソルスパ
ースシリーズ(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
塩基性含有分散剤は、市販品では、例えばアジスパーPB821等のアミン価を有するアジスパーシリーズ、ソルスパース24000、ソルスパース32000等のアミン価を有するソルスパースシリーズ(ルーブリゾール社製)等が挙げられる。その他の官能基含有分散剤は、例えばビニルアルコールの共重合体等が挙げられる。
【0031】
極性基含有分散剤は、顔料100質量部に対して、0.25~10質量部含有することが好ましい。この範囲で含有すると静置流動性、および連続印刷性能がより向上する。この範囲を超えると極性官能基の影響により印刷インキの乳化率が過剰となり連続印刷性能が損なわれる。なお、含有量は、0.25~6質量部がより好ましい。この範囲で使用するとさらに印刷インキの長期保存安定性がより向上する。極性基含有分散剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0032】
(重合禁止剤)
本発明で使用する重合禁止剤としては、特に限定はなく例えば、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p -メトキシフェノール、t -ブチルカテコール、t -ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p -ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p -ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p -ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の重合禁止剤が挙げられる。
【0033】
本発明では金属錯体を使用するが、金属錯体を含むインキを長期間保存していると、金属錯体とモノマーが反応しインキが増粘したりゲル化したりすることがある。この現象を防ぐ為に、重合禁止剤を添加することは有効である。重合禁止剤は金属錯体に対し10~300質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
(光重合開始剤)
本発明で使用する光重合開始剤は特に限定はなく、汎用の光重合開始剤を併用することができる。具体的には例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-メトキシフェニル)-2-メチル― 2 ― (4-モルフォリニル―1-プロパノンなどの化合物が挙げられる。
【0035】
また、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート等のアシルフォスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
【0036】
また、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9Hチオキサントン-2-イロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩等のチオキサントン化合物が挙げられる。
【0037】
また、4,4´-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン化合物が挙げられる。
【0038】
それ以外には、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2,3,4-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、〔4-(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテルなどが挙げられる。
前記汎用の光重合開始剤は、1種でも数種併用して使用してもよい。
【0039】
〔増感剤・光開始助剤〕
本発明においては、光増感剤や三級アミン等の光開始助剤を併用しても良く、好ましい。光増感剤としては、特に限定されないが、チオキサントン系、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アントラキノン系、クマリン系などが挙げられる。
これらの中でも、特に2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物や、ミヒラーケトン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類が好ましく、性能、安全性や入手しやすさなどの観点から、2,4-ジエチルチオキサントン,2-イソプロピルチオキサントン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0040】
増感剤や光開始助剤を併用する場合は、インキ固形分全量に対し0.05~10質量%が好ましく、0.1~7.0質量%の範囲がより好ましい。0.05質量%未満の場合は、十分な硬化性の向上効果が得られず、10質量%を超える場合は、硬化塗膜の色相が許容できないくらい黄味に変色したり、増感剤が析出したり、インキの流動性が著しく低下したりする。
【0041】
一方、三級アミンとしては、特に限定されないが、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン、2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエイト、2-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエイト等が挙げられ、酸素による重合阻害を低減させたり、紫外線により活性化されたチオキサントン類、4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類と反応し、活性ラジカル供与体となり、インキの硬化性能を向上させたり、光重合開始剤の溶解性を向上させたりする。三級アミンはインキ固形分全量に対し0.1~10質量%が好ましく、0.1~5.0質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0042】
また高い衛生性を求められる用途においては、1分子内に複数の光増感剤や三級アミンを多価アルコール等で分岐させた高分子量化合物も適宜使用することができる。
【0043】
(その他添加剤)
その他の添加剤としては、例えば耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等を例示することができる。
【0044】
その他、要求性能に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0045】
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、無溶剤で使用することもできるし、必要に応じて適当な溶媒を使用する事も可能である。溶媒としては、上記各成分と反応しないものであれば特に限定されるものではなく、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
(平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法)
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、従来と同様の方法によって製造すればよく、例えば、常温から100℃の間で、前記顔料、樹脂、アクリル系モノマーもしくはオリゴマー、重合禁止剤、開始剤およびアミン化合物等の増感剤、その他添加剤などインキ組成物成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
予備分散方法としては、例えば 等が挙げられる。
【0047】
(インキ硬化物の製造方法、印刷物)
本発明のインキ硬化物は、基材上に、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを用いてオフセット印刷し、印刷されたインキを活性エネルギー線を用いて硬化させることを特徴とする。
【0048】
(印刷方法)
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、前述の通り平版印刷(湿し水を使用する平版印刷や湿し水を使用しない水無し平版印刷)を該版に付けられたインキをブランケット等の中間転写体に転写した後被印刷体に印刷する転写(オフセット)方式を組み合わせた平版オフセット印刷方式で好ましく使用できる。
【0049】
平版オフセット印刷方式に適用できるインキは、5~100Pa・sの比較的粘度の高いインキであり、平版印刷機の機構は、インキが印刷機のインキ壺から複数のローラーを経由して版面の画線部に供給され、湿し水を使用する平版印刷では非画線部に湿し水が供給されインキを反発し、紙上に画像が形成される。
【0050】
湿し水を使用した平版印刷においては、インキと湿し水との乳化バランスが重要であり、インキにおいても耐乳化性の高速印刷適性が求められている。インキは乳化量が高過ぎると非画線部にもインキが着肉し易くなり汚れが発生したり、印刷濃度の低下、水棒ローラー上に乳化したインキが絡み、フライング、給紙外部のブランケットへのインキの溜まりなどの印刷不良が生じる。乳化量が少ないと絵柄の少ない印刷時には、地汚れと呼ばれる非画線部の汚れが顕著となり、安定して印刷する事が難しくなる。
【0051】
この観点から、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、インキに使用する樹脂やモノマーの酸価が1.0~10.0の範囲内であることが好ましく、1.0~2.0の範囲内であることがなお好ましい。インキ酸価が10.0を上回ると、インキが乳化しやすくなり、印刷中に湿し水の供給量を上昇させると、印刷物の濃度が低下したり、版上で親水化処理された非画線部に乳化したインキが付着しやすくなるため、印刷物の非画線部に地汚れと呼ばれる汚れが生じる。一方、インキ酸価が1.0を下回ると、インキの流動性や印刷物の光沢の低下を招く。
【0052】
以後具体的態様について説明する。
【0053】
(印刷基材)
本発明の印刷物で使用する印刷基材としては、特に限定は無く、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0054】
またプラスチック基材や軟包装基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等や、特にシーラントフィルムとして使用される低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレン)、VMLDPE(アルミ蒸着低密度ポリエチレン)、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂等の樹脂フィルムがあげられる。
また前記樹脂フィルムに各種バリア機能等の機能性を付与するための、アルミニウム箔などの軟質金属箔、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層等が設けられた複合フィルムも挙げられる。
【0055】
前記基材において、プラスチック基材や軟包装基材に使用される樹脂フィルムは一般的に表面エネルギーが低く、活性エネルギー線硬化型インキに対する濡れが悪いため、密着性不良を引き起こしやすい。その為、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力を、コロナ処理装置が備える放電電極とアースロールとの間に印加することでコロナ放電を発生させ、このコロナ放電下に前記フィルムを通過させることにより、前記基材の表面エネルギーを向上させることが好ましい。
【0056】
また、一般的にプライマーもしくはアンカー(コート剤)と称される密着性付与剤を予め前記プラスチック基材、軟包装基材上に塗布してもよく好ましい。
【0057】
これら基材に、平版オフセット印刷方式により本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを転写印刷しインキ層を設ける。
平版オフセット印刷方式による印刷は、カラープロセスインキや特色インキを、単色や多色使いで刷重ね印刷を行う方法が一般的である。
平版オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製RMGTシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【0058】
(光源)
前記印刷されたインキを硬化させる目的で使用する活性エネルギー源としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線が挙げられる。前記紫外線発光ダイオード(UV-LED)としては、そのピーク波長が350~420nm程度であるものが好ましく350~400nmの範囲であるものがより好ましく、積算光量が5mJ/cm~200mJ/cm程度であり、より好ましくは、10~100mJ/cmであることが好ましい。
【0059】
また紫外線発光ダイオード光源より印刷基材上のUV硬化性組成物へ照射される紫外線の照射強度(mW/cm)に関しては、印刷方向に並べる紫外線発光ダイオード光源の個数、光源から組成物までの照射距離等の諸条件によっても適切な照射強度範囲が変動することから特に規定はしないが、本発明で述べる印刷方式における印刷基材の移動速度は60~400m/min.程度であるから、該印刷速度で移動する印刷基材上のUV硬化性組成物に対して、積算光量値が先に述べた程度となる照射強度であることが好ましい。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、通常湿し水を使用する平版オフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し印刷にも好適に用いることができる。また本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型印刷インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。
【実施例
【0061】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの作製
ジアリルフタレート(株式会社大阪ソーダ ダイソーダップA)11質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社 アロニックスM-400)23.6質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(東亞合成株式会社 アロニックスM-408)25.0質量部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社 アロニックスM-350)10.0質量部、アルミニウムイソプロピレート0.2質量部、Solsperse 24000GR (ルーブリゾール社)1.0質量部、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社 Omnirad 907)3.0質量部、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(大同化成株式会社 EAB-SS)2.0質量部、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社 KAYACURE DETX-S)1.0質量部、ピグメントレッド57:1(DIC株式会社 SYMULER BRILLIANT CARMINE 6B 426SD)18.0質量部、炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社 NEOLIGHT SA-300)5.0質量部を測り取り、攪拌した後、3本ロールミルにて分散しろ過を行うことで、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを得た。
【0063】
(実施例2~16)
実施例1の配合を表1に記載された通り変更した以外は実施例1と同様の方法で行い、それぞれ実施例2~16のインキを得た。
【0064】
(比較例1~4)
実施例1の配合を表1に記載された通り変更した以外は実施例1と同様の方法で行い、それぞれ比較例1~4のインキを得た。
【0065】
(性能評価試験)
<静置流動性>
得られたインキを25℃雰囲気で60°に傾けた真鍮製の傾斜板の上に1.3g垂らし、インキの着地点から10分間に流動した距離を測定し静置流動性として評価した。なお、評価基準は、下記の通り表記する。
5:86mm 以上
4:61-85mm
3:46-60mm
2:21-45mm
1:20mm以下
【0066】
<連続印刷性>
得られたインキについて、下記印刷機を使用して連続印刷テストを行い、それぞれ3000枚、8000枚、12000枚、16000枚毎にサンプリングを行い、印刷物の汚れの有無を目視観察することで連続印刷性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
5:16000枚時点で良好な印刷物が得られた。
4:12000枚時点で良好な印刷物が得られたが、16000枚では良好な印刷物が得られなかった。
3:8000枚時点で良好な印刷物が得られたが、12000枚では良好な印刷物が得られなかった。
2:3000枚時点で良好な印刷物が得られたが、8000枚では良好な印刷物が得られなかった。
1:3000枚時点で良好な印刷物が得られなかった。
【0067】
(印刷条件)
・オフセット印刷機:LITHRONEG40(小森コーポレーション製)
・PS版:XP-F (富士ファイルグローバルグラフィックスシステムズ製)
・用紙:OKトップコートプラス(王子製紙製)
・湿し水:水道水/アストロマーク3(株式会社日研化学研究所社製)/イソプロピルアルコール=95質量%/2質量%/3質量%の組成で混合
・印刷条件:室温25±1℃、印刷速度 8000枚/時
・印刷操作条件:湿し水供給装置の目盛りを印刷物に汚れが生じない程度に湿し水の供給量を可能な限り低く設定した。
【0068】
<ミスチング>
東洋精機製インコメーター上に1.35mlの活性エネルギー線硬化型印刷インキを塗布し、機械下部及び後方部にそれぞれ白紙を設置し、1200rpmで3分間回転させた。その後、設置した白紙上に飛んだインキの量からミスチングを下記の5段階にて目視評価した。
(評価基準)
5:まったく飛んでいない。
4:飛んではいるが、少ない。
3:飛んではいるが、品質上印刷可能である。
2:飛んでいる量が多い
1:著しく飛んでいる
【0069】
<保存安定性>
実施例及び比較例で得た平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキを60℃で放置し、2週間後、及び4週間後のインキ状態を目視と、金属ヘラによる触診により観察することで保存安定性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:4週間後、インキに異常がなかった。良好
△:2週間後、インキに異常がなかったが、4週間後にインキがゲル化した。実用域
×:2週間後にインキがゲル化した。実用不可。
【0070】
結果を表1~表3に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表中の略語は次の通りである。また、空欄は未配合であることを示す。
モノマー:エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー
ソルスパース24000GR:ルーブリゾール社製 塩基性分散剤
・ソルスパース26000:ルーブリゾール社製 塩基性分散剤
・炭酸マグネシウム:ナイカイ塩業社製
・カオリンクレー:BASF社 ASP-101
・シリカ:EVONIK社 AEROSIL R972
・タルク:松村産業社 ハイフィラー#5000PJ
・ピグメントレッド57:1 :DIC株式会社 SYMULER BRILLIANT CARMINE 6B 426SD
・ピグメントイエロー13 :DIC社 SYMULER FAST YELLOW 4340
・ピグメントブラック7:BIRLA CARBON社 カーボンラーベン1060パウダー
・ピグメントブルー15:3:DIC社 FASTOGEN BLUE FA5375