(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】金属磁性粉末の製造方法、金属磁性粉末、コイル部品及び回路基板
(51)【国際特許分類】
B22F 1/14 20220101AFI20240802BHJP
H01F 1/33 20060101ALI20240802BHJP
H01F 1/22 20060101ALI20240802BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240802BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240802BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20240802BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
B22F1/14 100
H01F1/33
H01F1/22
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
B22F1/14 600
B22F1/16 100
C22C38/00 303S
(21)【出願番号】P 2020119671
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【氏名又は名称】相田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【氏名又は名称】吉水 純子
(72)【発明者】
【氏名】高舘 金四郎
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-005524(JP,A)
【文献】特開2020-017690(JP,A)
【文献】特開2019-096747(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109979741(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
H01F 1/12-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feを主成分とし、
Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元
素とを含む
金属相、及び
前記金属相を被覆し、
Feを含有すると共に、
Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、前記金属相に比べて高い
酸化膜
を備える金属磁性粒子で構成された原料粉末を準備すること、
前記原料粉末を、pHが10~14の水溶液に接触させること、
前記接触後の粉末を水洗
し、前記水溶液中に含まれていた各種イオンや、該水溶液と原料粉末との反応により生成した水溶性成分の量を低減すること、並びに
前記水洗後の粉末を乾燥すること
を含む、金属磁性粉末の製造方法。
【請求項2】
前記水溶液のpHが12以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Feを主成分とし、
Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元
素とを含み、かつ
Feを含む綿状の酸化物層を表面に有する
金属磁性粒子で構成された金属磁性粉末。
【請求項4】
請求項3に記載の金属磁性粉末で形成された磁性体、及び
該磁性体の内部又は表面に配置された導体
を備えたコイル部品。
【請求項5】
請求項4に記載のコイル部品を載せた回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属磁性粉末の製造方法、金属磁性粉末、コイル部品及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話を初めとする小型電子機器の電源回路に用いるインダクタ部品には、金属圧粉磁心が多く使用されている。これは、高い飽和磁束密度が得られ、部品の小型化に有利なためである。金属圧粉磁心には、特許文献1に開示されるような、金属磁性粉末を樹脂と混合して成形・固化させた形態、及び特許文献2に開示されるような、金属磁性粉末の成形体を酸素が含まれる雰囲気中で熱処理して、該粉末を構成する金属磁性粒子同士を該各粒子間に形成された酸化物層を介して結合させた形態がある。これらの形態の金属圧粉磁心は、粒子間の樹脂あるいは酸化物層の存在により、高い強度と良好な絶縁性とが達成されている。
【0003】
圧粉磁心において、磁性粉末の充填率を高めることは、飽和磁束密度を高めることに繋がる。これにより、同一体積のインダクタで、より大きな入力電流への対応が可能となり、また同じ大きさの入力電流に対しては、より小さな体積のインダクタで対応が可能となる。すなわち、圧粉磁心における磁性粉末の充填率向上は、インダクタの大電流化あるいは小型化に有効である。
【0004】
圧粉磁心における金属磁性粉末の充填率を高める方法としては、圧粉磁心を成形する際のプレス圧力を単純に高めることが挙げられる。しかし、この方法は、実験室レベルでは比較的簡単に実施できるものの、工業的な量産に適用する際には、成形圧に応じて大型のプレス機を導入する必要があるため、製造コストが大きく上昇してしまう。また、金属磁性粉末をガスアトマイズ法で製造して球形度の高い粉末を得ることで、充填性を高める方法も挙げられるが、やはり製造コストの大幅な上昇を招く。
【0005】
比較的低コストで金属磁性粉末の充填率を高める方法としては、例えば、特許文献3に開示されるような、金属磁性粉末を構成する金属粒子に対して物理的に衝撃を与えて表面の平滑性を高め、粒子同士の滑りを良くするものが提案されている。
【0006】
また、磁性粉末の充填率の向上を直接の目的とする処理ではないものの、特許文献4では、水アトマイズ法で軟磁性粉末を製造する際に、pHが10.3又は12の水を吹き付けると共に、40℃の窒素雰囲気中で乾燥を行う処理操作が報告されている。そして、該処理操作によれば、強アルカリ性領域で金属粉末の粒子表面に形成された酸化膜が良好な酸化保護膜として機能する結果、酸素含有量が少なく透磁率に優れた合金粉が得られるとの推察がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-318014号公報
【文献】特開2013-046055号公報
【文献】特開平3-291301号公報
【文献】特開2019-44256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載の方法では、衝撃に伴う金属粒子の変形や、欠陥の導入を避けることが難しい。特に、金属粒子の表面に形成された酸化膜を、粒子間の電気的絶縁に利用する場合には、衝撃に伴い酸化膜の割れや剥離が発生し、この方法の適用が困難となる場合があった。また、この方法では、平均粒径が0.1μmから0.3μm程度減少し、これにより透磁率がわずかに低下してしまう。さらに、この方法では、前述した平均粒径の減少に対応する比較的大きめの凹凸は改善可能であるが、それよりも小さい凹凸の改善は難しかった。
【0009】
また、特許文献4に記載の処理操作は、これを行った金属粉末と行わなかった金属粉末とが同程度のタップ密度を示していることから、金属粉末の充填率の向上には寄与しないと解される。
【0010】
このように、安価で簡便な処理により、平均粒径の減少を抑制しつつ充填率を高めることができる金属磁性粉末の製造方法は、これまでのところ知られていない。
【0011】
そこで本発明は、前述の問題点を解決し、平均粒径の減少を抑制しつつ充填率を高めることができる、金属磁性粉末の安価な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前述の問題点を解決するために種々の検討を行ったところ、表面に酸化膜を有する金属磁性粒子で構成された原料粉末を、所期のpHを有するアルカリ水溶液に接触させることで、該問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の側面は、Feを主成分とし、Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素とを含む金属相、及び前記金属相を被覆し、Feを含有すると共に、Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、前記金属相に比べて高い酸化膜を備える金属磁性粒子で構成された原料粉末を準備すること、前記原料粉末を、pHが10~14の水溶液に接触させること、前記接触後の粉末を水洗すること、並びに前記水洗後の粉末を乾燥することを含む、金属磁性粉末の製造方法である。
【0014】
また、本発明の第2の側面は、Feを主成分とし、Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素とを含み、かつFeを含む綿状の酸化物層を表面に有する金属磁性粒子で構成された金属磁性粉末である。
【0015】
また、本発明の第3の側面は、前記第2側面に係る金属磁性粉末で形成された磁性体、及び該磁性体の内部又は表面に配置された導体を備えたコイル部品である。
【0016】
さらに、本発明の第4の側面は、前記第3の側面に係るコイル部品を載せた回路基板である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平均粒径の減少を抑制しつつ充填率を高めることができる、金属磁性粉末の安価な処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一側面に係るコンポジットコイル部品の構造例の説明図
【
図2】本発明の一側面に係る巻線コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるA-A断面図)
【
図3】本発明の一側面に係る積層コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるB-B断面図)
【
図4】本発明の一側面に係る薄膜コイル部品の構造例の説明図
【
図5】実施例1にて準備した原料粉末を構成する金属磁性粒子における、粒子断面の外縁近傍の、透過型電子顕微鏡(TEM)像及び元素濃度マッピング像
【
図6】実施例1に係る処理を行った後の、金属磁性粉末を構成する金属磁性粒子における、粒子断面の外縁近傍の、透過型電子顕微鏡(TEM)像及び元素濃度マッピング像
【
図7】実施例及び比較例の結果を基に作成した、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の酸素含有量との関係を示すグラフ
【
図8】実施例及び比較例の結果を基に作成した、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の密度との関係を示すグラフ
【
図9】実施例及び比較例の結果を基に作成した、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の充填率との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
【0020】
[金属磁性粉末の製造方法]
本発明の第1の側面に係る金属磁性粉末の製造方法(以下、単に「第1側面」と記載することがある。)は、Feを主成分とし、Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素とを含む金属相、及び該金属相を被覆し、Feを含有すると共に、Si又はZrのいずれか一方の質量割合が、前記金属相に比べて高い酸化膜を備える金属磁性粒子で構成された原料粉末を準備すること、前記原料粉末を、pHが10~14の水溶液に接触させること、前記接触後の粉末を水洗すること、並びに前記水洗後の粉末を乾燥することを含む。以下、これらの処理について詳述する。
【0021】
原料粉末は、これを構成する金属磁性粒子がFeを主成分とする金属相を備える。ここで、主成分とは、含有する成分の中で質量割合が最も高いものをいう。原料粉末を構成する金属磁性粒子が、Feを主成分とする金属相を備えることで、後述するpHが10~14の水溶液との接触時に、金属相から粒子表面へと移動して水酸化物イオンと反応するFeの量を他の元素に比べて多くすることができる。これにより、粒子表面に十分な量の水酸化物が生成し、最終的に得られる金属磁性粉末の充填率が向上する。また、Feを主成分とすることで、金属磁性粉末から形成される磁性体を、透磁率及び飽和磁束密度の高いものとすることもできる。
【0022】
原料粉末は、これを構成する金属磁性粒子中の金属相が、Si又はZrの少なくとも一方を含む。これにより、金属磁性粒子の表面に、Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、金属相に比べて高い酸化膜が形成されて、後述するpHが10~14の水溶液との接触時に、前述した金属相から粒子表面へのFeの移動が円滑に進行する。また、金属磁性粉末の製造時、又は製造後の保管時に、金属相の過剰な酸化を抑制することもできる。加えて、Si又はZrの少なくとも一方の含有により、金属磁性粒子の電気抵抗が高くなり、渦電流による磁気特性の低下を抑制することもできる。さらに、後述する酸化物層中のSi又はZrの質量割合が高くなりやすく、磁性体を形成した際に、隣接する金属磁性粒子間の電気的絶縁性を高めることもできる。
【0023】
原料粉末は、これを構成する金属磁性粒子中の金属相が、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素(以下、「M元素」と記載することがある)を含む。これにより、後述する各処理を行う際に、主成分であるFeの過剰な酸化が抑制されて、後述する酸化物層が所期の形状となると共に、磁性体を形成した際に、飽和磁束密度等の磁気特性の低下を抑制できる。M元素としては、Cr及びAlが例示されるが、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素でさえあればこれに限定されない。
【0024】
原料粉末を構成する金属磁性粒子中の金属相の組成としては、Si及びZrを合計で1質量%~10質量%、M元素を合計で0.2質量%~5質量%含有し、残部がFe及び不可避不純物であるものが例示される。また、前述した各元素以外の元素を、本発明の目的を達成できる範囲内の量で含んでもよい。
【0025】
ここで、原料粉末を構成する金属磁性粒子中の金属相の組成は、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)、蛍光X線分析(XRF)及び誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析を初めとする、公知の組成分析手段により確認すればよい。また、原料粉末の製造業者等から、前述の各分析手段と同等以上の精度で得られた分析データが提供される場合には、当該分析データにおける組成を金属相の組成としてもよい。
【0026】
原料粉末を構成する金属磁性粒子の表面には、金属相を被覆する酸化膜が形成されており、該酸化膜はFeを含有する。これにより、後述するpHが10~14の水溶液と接触した際に、Feと水酸化物イオンとの反応による水酸化鉄の生成が直ちに始まり、最終的に得られる金属磁性粉末の充填率が向上する。
【0027】
金属磁性粒子の表面にFeを含有する酸化膜が形成されていることは、以下の方法で確認する。まず、原料粉末を構成する任意の金属磁性粒子について、任意の断面を、エネルギー分散型X線分光器を備えた透過型電子顕微鏡(TEM-EDX)を用いて測定し、電子線像を取得するとともに、電子線像と同一視野にて各元素の検出数を濃度として、各元素についてのマッピングを行う。次に、電子線像を参照しながら、得られた酸素(O)のマッピング像において、他の部分よりも明るく見える部分を酸化膜と判定し、該酸化膜の内側の部分を金属相と判定する。次に、得られたFeのマッピング像において、酸素(O)のマッピング像と対比しながら、酸化膜と判定された部分と金属相と判定された部分との特定を行う。最後に、Feのマッピング像において、酸化膜として特定した部分におけるFeの有無を確認し、これが含まれる場合に、Feを含有する酸化膜が形成されているとする。
【0028】
原料粉末を構成する金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜は、Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、金属相に比べて高い。これにより、後述するpHが10~14の水溶液との接触時に、金属相に存在するFeが、粒子表面に移動して水酸化物イオンと反応しやすくなる。そして、このことが、粒子表面における十分な量の水酸化物の生成と、最終的に得られる金属磁性粉末の充填率向上とにつながると解される。
【0029】
酸化膜中のSi又はZrの質量割合は、いずれか一方のみが金属相中における質量割合よりも大きければよい。しかし、Si及びZrのうち金属相が含有する全元素について、酸化膜中の質量割合が、金属相中における質量割合よりも大きいことが好ましい。
【0030】
酸化膜中のSi又はZrの少なくとも一方の質量割合が、金属相中に比べて高いことの確認は、TEM-EDXにより金属磁性粒子の任意断面の組成分析を行い、金属相及び酸化膜のそれぞれについてSi及びZrの含有割合を算出して比較することで行う。しかし、酸化膜中の前記質量割合が、金属相中に比べて十分に高い場合には、以下に説明する簡便な確認方法を採用してもよい。
【0031】
まず、TEM-EDXによる金属磁性粒子の任意断面の元素濃度マッピング、並びにその結果に基づく酸化膜及び金属相の判定を、前述した方法で行う。次に、得られたSi及びZrのマッピング像において、酸素(O)のマッピング像と対比しながら、酸化膜と判定された部分と金属相と判定された部分とをそれぞれ特定する。最後に、Si及びZrのマッピング像において、特定された酸化膜と金属相との明暗をそれぞれ比較し、明るく観察された方が、当該元素の質量割合が高いものとする。
【0032】
Feを含有し、Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、金属相に比べて高い酸化膜の形成には、特別な処理は不要である。これは、金属相中に前述した各成分を含有する金属磁性粒子で構成された粉末を、製造時あるいは製造後に大気に触れる条件で保管した場合には、自然酸化により、金属磁性粒子の表面に、Feを含有し、Si及びZrに富む酸化膜が形成されるためである。したがって、酸化を防止できる条件下で保管された粉末などの特殊なものを除き、金属相中に前述した各成分を含有する金属磁性粒子で構成された粉末は、金属磁性粒子の表面に、Feを含有し、Si又はZrの少なくとも一方の質量割合が、金属相に比べて高い酸化膜が形成されたものといえる。この酸化膜は、原料粉末の酸化性雰囲気中での熱処理等により、その厚みを増加させたものであってもよい。
【0033】
原料粉末の粒径は特に限定されず、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を0.5μm~30μmとすることができる。平均粒径は、1μm~10μmとすることが好ましい。この平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0034】
また、原料粉末の製造方法も特に限定されず、水アトマイズ法などの慣用されている方法が採用できる。
【0035】
第1側面では、原料粉末を、pHが10~14の水溶液(以下、「アルカリ性水溶液」と記載することがある)に接触させる。アルカリ性水溶液のpHを10以上とすることで、金属磁性粒子に含まれるFeが水酸化物イオンと反応し、水酸化鉄(Fe(OH)2ないしFe(OH)3)が生成する。その際、水酸化鉄は、金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜の凹部に多く生成し、該凹部を埋めることで凹凸を低減する。これは、酸化膜の凹部は厚みが薄いため、より多くのFeが表面へと到達できることに起因すると考えられる。また、生成した水酸化鉄は、緻密な酸化膜の表面に繊維状に伸び、後述する綿状の酸化物層の原型となる。これらの作用により、最終的に得られる金属磁性粉末の充填率が向上すると解される。より充填率の高い金属磁性粉末を得る点からは、アルカリ性水溶液のpHは、12以上とすることが好ましい。このpHでは、金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜中のSi及び/又はZrからの水酸化物の生成反応も活発になることで、水酸化物及びこれから生じる綿状の酸化物の総量が大きく増加し、充填率の向上が顕著になる。他方、アルカリ性水溶液のpHを14以下とすることで、水酸化鉄が不動態膜を形成し、腐食による金属磁性粒子の損耗が抑制できる。また、強アルカリによる設備の損傷も抑制できる。
【0036】
アルカリ性水溶液の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドから選択される少なくとも1種の化合物の水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液中に含まれる水酸化物イオン(OH-)以外のイオン種及びその量は特に限定されない。ただし、塩化物イオン(Cl-)、硫酸イオン(SO4
2-)、ギ酸イオン(HCOO-)及び過塩素酸イオン(ClO4
-)が多量に含まれる場合には、該各イオンとの反応により酸化膜が破壊され、十分な量の水酸化鉄が生成しなくなる場合がある。このため、これらのイオンの含有量については、極力少なくすることが好ましい。
【0037】
原料粉末とアルカリ性水溶液との接触態様は、特に限定されない。一例として、原料粉末に対するアルカリ性水溶液の噴霧や、原料粉末のアルカリ性水溶液への浸漬等が挙げられる。また、両者を接触させつつ攪拌を行うものであってもよい。これらの態様のうち、接触むらが生じにくく、接触時間の制御も容易な点で、アルカリ性水溶液に原料粉末を浸漬する態様が好ましい。
【0038】
原料粉末がアルカリ性水溶液に接触すると、直ちに酸化膜中のFeと水酸化物イオンとが反応して水酸化鉄が生成し始める。このため、接触時間がごく短時間であっても、その後の処理により充填率の向上効果を得ることはできる。しかし、鉄及び他の元素の水酸化物を十分な量生成させて充填率を大きく向上させる点からは、両者の接触時間は10分以上とすることが好ましく、30分以上とすることがより好ましく、1時間以上とすることがさらに好ましい。他方、生産性向上の点からは、接触時間は24時間以下とすることが好ましく、12時間以下とすることがより好ましい。短い接触時間で十分な量の水酸化物を生成させるためには、アルカリ性水溶液のpHを高めることの他、該水溶液を加熱することが有効である。この場合の加熱温度は、40℃以上とすることが好ましく、60℃以上とすることがより好ましい。他方、アルカリ性水溶液の溶媒である水の沸点が100℃であることから、前記加熱温度は、90℃以下とすることが好ましく、80℃以下とすることがより好ましい。
【0039】
第1側面では、アルカリ性水溶液との接触の後、該水溶液と分離した粉末を水洗する。これにより、アルカリ性水溶液中に含まれていた各種イオンや、該水溶液と原料粉末との反応により生成した水溶性成分を除去する。水洗の態様は、こうしたイオンや水溶性成分の量を十分に低減できるものであれば特に限定されない。一例として、分離後の粉末を流水に晒すことや、洗浄用水への分離後の粉末の浸漬と固液分離とを繰り返すことが挙げられる。また、これらに粉末の攪拌を組み合わせてもよい。
【0040】
第1側面では、水洗後の粉末を乾燥する。これにより、粉末から水分が除去されて、磁性体の製造に供することが可能な金属磁性粉末が得られる。乾燥の態様は特に限定されず、水洗後の粉末を大気中に置いて自然乾燥させるものや、加熱及び/又は送風を伴うもの、真空容器容器中で加熱乾燥するものが例示される。また、乾燥に先立って、エタノールを初めとするアルコールに水洗後の粉末を接触させて、含有する水分をアルコールに置換してもよい。水分を短時間で除去して生産性を向上させる点からは、アルコール接触後の粉末に、40℃~80℃程度の熱風を当てることが好ましい。
【0041】
水洗後の粉末の乾燥及び/又はその後の金属磁性粉末の保管により、粉末を構成する金属磁性粒子の表面に形成された水酸化物から水分が離脱し、鉄を含有する酸化物層が生成する。この酸化物層は、前記水酸化物の形状に由来した、繊維状に伸びた酸化物同士が互いに絡まり合うと共に、該酸化物の繊維間に空隙を内包する構造を有する。以下、本明細書では、上述した一連の処理により金属磁性粒子の表面に形成された、前述の構造を有する酸化物層を、「綿状の酸化物層」と記載する。この綿状の酸化物層は、それを構成する元素の原子同士が、互いに空隙を作りながら緩く結合して形成されており、各々の原子が結合する際に、金属磁性粒子の表面を起点として、そこから離れる方向に順次結合していくため、場合によっては結合した原子の集合体が繊維状に見えることがある。また、隣り合う繊維状の集合体同士が、空隙を作りながらところどころ緩く結合した結合部が出来ることがあり、繊維状の集合体が絡まったように見えることもある。各々の原子の結合の様態によっては繊維状に見えない場合でも、各々の原子の結合部以外には大きな空隙があり、この空隙の存在によって綿状の酸化物層であると解る。この大きな空隙の存在は、比表面積を測定することで検出することができる。例えば、BET法にて、同様の組成及び粒度分布を有する粉末よりも50%以上大きな比表面積を有することを確認することで、この大きな空隙の存在を明らかにできる。
【0042】
[金属磁性粉末]
本発明の第2の側面に係る金属磁性粉末(以下、単に「第2側面」と記載することがある。)は、Feを主成分とし、Si又はZrの少なくとも一方と、Feより酸化しやすいSi及びZr以外の金属元素とを含み、かつFeを含む綿状の酸化物層を表面に有する金属磁性粒子で構成される。
【0043】
第2側面を構成する金属磁性粒子は、前述した第1側面により得られる。その含有成分は、前記第1側面によってFeを含む綿状の酸化物層を表面に形成するのに好適な、原料粉末に由来するものであるため、ここでの説明は省略する。
【0044】
第2側面では、金属磁性粒子の表面に存在する綿状の酸化物層が以下のように作用することで、高い充填率が得られる。まず、第1側面を行う前の原料粉末において、金属磁性粒子の表面に存在していた凹部が第1側面を行うことによって酸化物で埋められることで、該粒子表面の凹凸が低減される。このことは、金属磁性粉末の成形時に、互いに接触した金属磁性粒子の凹部と凸部とが噛み合って、大きな空隙を残したまま粒子同士が動けなくなることを防止するのに寄与する。加えて、酸化物層が綿状であることで、容易に変形することができる。このことは、金属磁性粉末の成形時に、互いに接触した金属磁性粒子が、接触状態を保ったままその相対的な位置関係を変えることを可能にし、金属磁性粒子のより密な充填に寄与する。さらに、綿状の酸化物層を形成する繊維状の酸化物は、水酸化物からの水の離脱により生成しているため、欠陥を多く含む強度の低いものとなっていることが予想される。このため、金属磁性粉末の成形時に、金属磁性粒子から酸化物層が剥離して金属磁性粒子同士の接触部から押し出され、金属磁性粒子間の非接触部に形づくる空隙を埋めると共に、互いに接触する粒子間の距離が狭まることで、充填率が向上することも考えられる。
【0045】
[コイル部品]
本発明の第3の側面に係るコイル部品(以下、単に「第3側面」と記載することがある。)は、前述の第2側面に係る金属磁性粉末で形成された磁性体、及び該磁性体の内部又は表面に配置された導体を備える。
【0046】
第3側面においては、前述の第2側面に係る金属磁性粉末で磁性体が形成されているため、磁性体における金属磁性粉末の充填率が高いものとなる。この磁性体の微視的構造の特徴としては、金属磁性粒子同士の接触部分において綿状の酸化物層が潰れることで、該酸化物層の厚みが薄くなると共に、接触面積が大きくなることが挙げられる。また、変形ないし剥離した綿状の酸化物が、金属磁性粒子間の空隙を充填していることも挙げられる。このように、金属磁性粉末の充填率を高めることで、磁性体の飽和磁束密度が高くなり、これを用いたコイル部品を、大電流を流せるものや、小型のものとすることができる。加えて、金属磁性粉末の充填率が高い磁性体は、透磁率や機械的強度が高くなる点でも実用上有利である。
【0047】
磁性体の形状及び寸法、並びに導体の材質及び形状は特に限定されず、要求特性に応じて適宜決定すればよい。
【0048】
第3側面としては、
図1に示すようなコンポジットコイル部品、
図2に示すような巻線コイル部品、
図3に示すような積層コイル部品及び
図4に示すような薄膜コイル部品などが例示される。
【0049】
第3側面では、金属磁性粉末の充填率が高い磁性体を備えるため、優れた特性のコイル部品となる。また、同じ特性を得るために必要な素子体積を小さくできるため、小型のコイル部品となる。
【0050】
[回路基板]
本発明の第4の側面に係る回路基板(以下、単に「第4側面」と記載することがある。)は、前述の第3側面に係るコイル部品を載せた回路基板である。
【0051】
回路基板の構造等は限定されず、目的に応じたものを採用すればよい。
【0052】
第4側面は、第3側面に係るコイル部品を使用することで、高性能化及び小型化が可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(金属磁性粉末の製造)
まず、Fe-3.5Si-1.5Cr(数値は質量百分率を示す)の組成を有する、平均粒径4.0μmの金属磁性粉末を、原料粉末として準備した。次いで、この原料粉末を、SUS製の容器中でpH13.7のKOH水溶液に24時間浸漬した。次いで、濾過により固液分離を行い、濾紙に残った粉末を蒸留水にて洗浄した後、エタノールを注いで残存する水分の置換を行った。最後に、エタノールと分離した粉末を室温で静置して乾燥し、実施例1に係る金属磁性粉末を得た。
【0055】
(酸化膜及び酸化物層の構造並びに元素分布の確認)
前述の処理に供する前の原料粉末、及び処理後の実施例1に係る金属磁性粉末のそれぞれについて、任意に選択した金属磁性粒子の任意の断面を、TEM-EDX(日本電子株式会社製 ARM200F)を用いて観察・測定した。測定は、加速電圧200kVにて行った。原料粉末についての、金属磁性粒子の外縁近傍の電子線像及び元素濃度マッピング像を
図5に、実施例1に係る金属磁性粉末についての対応する像を
図6に、それぞれ示す。
【0056】
図5から、原料粉末は、Feを含む酸化膜が表面に形成された金属磁性粒子で構成されていることが判る。また、前記酸化膜は、Siの含有割合が内部の金属相よりも高くなっていることも判る。さらに、前記酸化膜には、厚さが30nm程度の厚い部分(凸部)と、厚さが10nm以下の薄い部分(凹部)とが存在することも判る。
【0057】
図6から、実施例1に係る金属磁性粉末は、これを構成する金属磁性粒子の表面に、Fe及びSiを含む綿状の酸化物層が形成されていることが判る。この酸化物層は、アルカリ性水溶液との接触によって生成した水酸化物から水分が離脱することで生成したものと解される。
【0058】
また、
図5と
図6との対比から、実施例1に係る処理によって変化が生じたのは、金属磁性粒子表面の酸化膜の構造のみであることが判る。このことから、実施例1に係る処理によって、磁性体の透磁率の低下に繋がる金属磁性粉末の平均粒径の減少は、ほとんど生じなかったと解される。
【0059】
(処理前後の金属磁性粉末の比表面積測定)
前述の処理に供する前の原料粉末、及び処理後の実施例1に係る金属磁性粉末のそれぞれについて、比表面積を、全自動比表面積測定装置(株式会社マウンテック製 Macsorb)を用いて、以下の手順で測定・算出した。まず、ヒーター内で測定試料を脱気した後、測定試料に窒素ガスを吸着・脱離させることにより吸着窒素量を測定した。次いで、得られた吸着窒素量から、BET1点法を用いて単分子層吸着量を算出し、この値から、1個の窒素分子が占める面積及びアボガドロ数の値を用いて試料の表面積を導出した。最後に、得られた試料の表面積を該試料の質量で割って、粉末の比表面積を算出した。得られた比表面積の値は、処理前のものが0.62m2/g、処理後のものが1.45m2/gであった。この比表面積の大幅な増加は、金属磁性粒子表面における綿状の酸化物層の形成によるものと解される。
【0060】
(処理後の金属磁性粉末の酸素含有量測定)
得られた金属磁性粉末の酸素含有量を、不活性ガス溶融-赤外線吸収法に基づく酸素分析装置(LECOジャパン合同会社製 TC-436)で測定したところ、0.600wt%となった。
【0061】
(処理後の金属磁性粉末の密度測定)
得られた金属磁性粉末の密度を、乾式密度計(マイクロトラック・ベル株式会社製 BELPycno)で測定したところ、7.518g/cm3となった。
【0062】
(処理後の金属磁性粉末の充填率測定)
まず、得られた金属磁性粉末を金型に装填し、8t/cm2の成形圧で一軸加圧成形し、直径7mmの円板状成形体を作製した。次いで、この成形体の厚さをマイクロメーターで測定し、この結果と直径とを用いて成形体の体積を算出した。次いで、成形体の質量を測定し、この結果と算出された成形体の体積とから、成形体の密度を算出した。最後に、算出された成形体の密度を、前述した金属磁性粉末の密度で割ることで、金属磁性粉末の充填率を算出した。得られた充填率は0.847であった。
【0063】
[実施例2~7]
原料粉末を浸漬するKOH水溶液のpHをそれぞれ、10.3(実施例2)、10.9(実施例3)、12.0(実施例4)、12.3(実施例5)、12.7(実施例6)及び13.3(実施例7)とした以外は実施例1と同様の方法で、実施例2~7に係る金属磁性粉末を得た。
【0064】
得られた各金属磁性粉末について、酸素含有量、密度及び充填率を、実施例1と同様の方法で測定・算出した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0065】
[実施例8]
原料粉末として、Fe-5Zr-1Cr-1Al(数値は質量百分率を示す)の組成を有する、平均粒径4.0μmの金属磁性粉末を使用したこと、及び原料粉末を浸漬するKOH水溶液のpHを13.0としたこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例8に係る金属磁性粉末を得た。
【0066】
得られた金属磁性粉末について、酸素含有量、密度及び充填率を、実施例1と同様の方法で測定・算出した。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
実施例1で準備した原料粉末を、アルカリ性水溶液に浸漬することなく、そのまま比較例1に係る金属磁性粉末とした。
【0068】
この金属磁性粉末について、酸素含有量、密度及び充填率を、実施例1と同様の方法で測定・算出した。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例2~4]
原料粉末を浸漬するKOH水溶液のpHをそれぞれ、7.1(比較例2)、8.6(比較例3)及び9.6(比較例4)とした以外は実施例1と同様の方法で、比較例2~4に係る金属磁性粉末を得た。
【0070】
得られた各金属磁性粉末について、酸素含有量、密度及び充填率を、実施例1と同様の方法で測定・算出した、結果を表1に示す。
【0071】
[比較例5]
実施例8で準備した原料粉末を、アルカリ性水溶液に浸漬することなく、そのまま比較例5に係る金属磁性粉末とした。
【0072】
この金属磁性粉末について、酸素含有量、密度及び充填率を、実施例1と同様の方法で測定・算出した。結果を表1に示す。
【0073】
以上説明した実施例及び比較例に係る金属磁性粉末の特性を、まとめて表1に示す。また、Fe-3.5Si-1.5Cr粉末を用いた場合について、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の酸素含有量との関係を
図7に、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の密度との関係を
図8に、アルカリ性水溶液のpHと金属磁性粉末の充填率との関係を
図9に、それぞれ示す。なお、
図7~9における点線はそれぞれ、アルカリ性水溶液への浸漬を行わなかった比較例1の結果を示すものである。
【0074】
【0075】
これらの結果から、pHが10以上のアルカリ性水溶液への浸漬により、金属磁性粉末の酸素含有量及び充填率が増加し、粉末密度が減少することが判る。特に、アルカリ性水溶液のpHが12以上の場合には、酸素含有量及び充填率の増加と粉末密度の減少とが顕著になる。
【0076】
アルカリ性水溶液のpHの上昇に伴う金属磁性粉末の酸素含有量の増加は、該水溶液中の水酸化物イオンと金属磁性粒子表面の酸化膜との反応により生成する、Feを含む水酸化物量の増加に起因するものと解される。一般的に、水溶液中で生成した水酸化物は、乾燥時に水を離脱して酸化物となるためである。
【0077】
他方、アルカリ性水溶液のpHの上昇に伴う金属磁性粉末の密度の減少は、前述した水酸化物生成量の増加に伴って、金属磁性粒子の表面に存在する酸化物全体に対する綿状の酸化物層の割合が増加したことに起因するものと解される。綿状の酸化物層は空隙率が高いため、その割合が増すほど金属磁性粒子及び金属磁性粉末の密度は低下する。
【0078】
そして、金属磁性粉末の密度が減少するにも関わらず、その充填率が向上することは、成形に伴う綿状の酸化物層の変形によって、金属磁性粒子のより密な配置が可能になったこと、及び/又は成形に伴って剥離した綿状の酸化物層が金属磁性粒子間の空隙を埋めたこと、に起因するものと解される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、平均粒径の減少を抑制しつつ充填率を高めることができる、金属磁性粉末の安価な処理方法を提供することができる。該処理方法を利用することで、飽和磁束密度及び透磁率の高い磁性体を得ることができるため、該磁性体を備えるコイル部品の高性能化ないし小型化が可能となる点で、本発明は有用なものである。
【符号の説明】
【0080】
1 金属部分
2 酸化膜
21 綿状の酸化物層