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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020128178
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025390
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 貴敏
(72)【発明者】
【氏名】大住 良太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202387(JP,A)
【文献】特開2015-062498(JP,A)
【文献】特開2018-075142(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137061(WO,A1)
【文献】特開2012-065694(JP,A)
【文献】特開2019-076707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0049578(US,A1)
【文献】特開2011-067518(JP,A)
【文献】特開2018-187110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
G01S 7/52 - 7/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送信と受信とを制御する送受信部と、
スイッチングレギュレータと切替部とを備え、前記送受信部の電源として機能する電源部と、
スキャンモードを判定し、前記スキャンモードに応じて、前記電源部の前記スイッチングレギュレータのスイッチングノイズの周波数を制御するプローブ制御部と、
を備え、
前記プローブ制御部は、前記切替部のスイッチングDutyの切り替えを行うことで前記スイッチングノイズの周波数を制御する、
超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
医用分野では、超音波プローブの複数の振動子(圧電振動子)を用いて発生させた超音波を利用して、被検体内部を画像化する超音波診断システムが使用されている。超音波診断システムは、超音波診断装置に接続された超音波プローブから被検体内に超音波を送信させ、反射波に基づく受信信号を生成し、画像処理によって所望の超音波画像を得る。
【0003】
超音波診断システムにおいて、操作性、機動性を向上させようとする小型化、軽量化、及び無線型のものが開発されており、それに伴い、超音波プローブ内の電子回路は増加する傾向にある。また、超音波プローブは、内蔵する各電子回路の電源として、複数のスイッチングレギュレータを有する電源部を備える場合がある。外部の超音波診断装置の電源部から接続コネクタを介して直流電圧が供給されると、複数のスイッチングレギュレータは、直流電圧を適切な電圧に変換して、超音波プローブ内の各電子回路に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-202387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、スイッチングノイズの画像への影響を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波プローブは、送受信部と、電源部と、プローブ制御部とを備える。送受信部は、超音波の送信と受信とを制御する。電源部は、スイッチングレギュレータと切替部とを備え、送受信部の電源として機能する。プローブ制御部は、スキャンモードを判定し、スキャンモードに応じて、スイッチングレギュレータのスイッチングノイズの周波数を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図。
図2図2は、比較例に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図。
図3図3は、比較例に係る超音波プローブの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図。
図4図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図。
図5図5は、ドプラモードにおける、変形例に係る超音波プローブの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図。
図6図6は、Bモードにおける、変形例に係る超音波プローブの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図。
図7図7は、ドプラモードにおける、変形例に係る超音波プローブの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図。
図8図8は、第2の実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、超音波プローブの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図である。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る超音波プローブ10を備えた超音波診断システム1を示す。超音波診断システム1は、超音波プローブ10と、超音波診断装置20と、接続コネクタ30とを備える。超音波プローブ10は、接続コネクタ(ケーブルを含む)を介して超音波診断装置20に接続される。
【0011】
超音波プローブ10は、振動子(圧電素子)11と、送受信回路12と、信号処理回路13と、プローブ制御回路14と、メモリ16と、電源回路17とを備える。なお、回路12~13は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、回路12~13の機能の全部又は一部は、プローブ制御回路14がコンピュータプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
【0012】
振動子11は、超音波プローブ10の前面部に複数個備えられる。振動子11は、スキャン対象を含む領域に対して超音波の送受信を行う。各振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルスに変換し、また、受信時には反射波を電気信号(受信信号)に変換する機能を有する。
【0013】
超音波プローブ10は、スキャン方式の違いにより、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等の種類に分けられる。また、超音波プローブ10は、アレイ配列次元の違いにより、アジマス方向に1次元(1D)的に複数個の振動子が配列された1Dアレイプローブと、アジマス方向かつエレベーション方向に2次元(2D)的に複数個の振動子が配列された2Dアレイプローブとの種類に分けられる。なお、1Dアレイプローブは、エレベーション方向に少数の振動子が配列されたプローブを含む。
【0014】
ここで、3Dスキャン、つまり、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ10として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備えた2Dアレイプローブが利用される。又は、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ10として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備え、エレベーション方向に機械的に揺動する機構を備えた1Dプローブが利用される。後者のプローブは、メカ4Dプローブとも呼ばれる。
【0015】
送受信回路12は、送信回路121と受信回路122とを有する。送受信回路12は、プローブ制御回路14による制御の下、超音波の送信と受信とを制御する。なお、送受信回路12は、送受信部の一例である。
【0016】
送信回路121は、パルス発生回路と、送信遅延回路と、パルサ回路等とを有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ10の超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波ビームの送信方向を任意に調整する。なお、送信回路121は、送信部の一例である。
【0017】
受信回路122は、アンプ回路と、A/D(Analog to Digital)変換器と、加算器等を有し、超音波振動子が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行ってエコーデータを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行ってエコーデータを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、受信回路122は、受信部の一例である。
【0018】
信号処理回路13は、Bモード処理回路(図示省略)とドプラ処理回路(図示省略)とを備える。
【0019】
信号処理回路13のBモード処理回路は、プローブ制御回路14による制御の下、受信回路からエコーデータを受信し、対数増幅と、包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、Bモードデータと呼ばれる。
【0020】
なお、Bモード処理回路は、フィルタ処理により、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。Bモード処理回路のフィルタ処理機能を用いることにより、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)等のハーモニックイメージングを実行可能である。
【0021】
すなわち、Bモード処理回路は、造影剤が注入された被検体の反射波データから、造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とするハーモニック成分の反射波データ(高調波データ又は分周波データ)と、被検体内の組織を反射源とする基本波成分の反射波データ(基本波データ)とを分離することができる。Bモード処理回路は、また、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)から、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができ、また、基本波成分の反射波データ(受信信号)から、基本波(ファンダメンタル)画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0022】
また、Bモード処理回路のフィルタ処理機能を用いることによるTHIにおいて、被検体の反射波データから、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)である高調波データ又は分周波データを分離することができる。そして、Bモード処理回路は、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)から、ノイズを除去した組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0023】
さらに、CHIやTHIのハーモニックイメージングを行なう際、Bモード処理回路は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行なう。
【0024】
これにより、送受信回路12は、各走査線で複数の反射波データ(受信信号)を生成し出力する。そして、Bモード処理回路は、各走査線の複数の反射波データ(受信信号)を、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、Bモード処理回路は、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)に対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
【0025】
例えば、PM法が行なわれる場合、送受信回路12は、プローブ制御回路14が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(-1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、送受信回路12は、「-1」の送信による受信信号と、「1」の送信による受信信号とを生成し、Bモード処理回路は、これら2つの受信信号を加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、Bモード処理回路は、この信号に対して包絡線検波処理等を行なって、THIのBモードデータやCHIのBモードデータを生成する。
【0026】
又は、例えば、THIでは、受信信号に含まれる2次高調波成分と差音成分とを用いて映像化を行なう方法が実用化されている。差音成分を用いた映像化法では、例えば、中心周波数が「f1」の第1基本波と、中心周波数が「f1」より大きい「f2」の第2基本波とを合成した合成波形の送信超音波を、超音波プローブ10から送信させる。この合成波形は、2次高調波成分と同一の極性を持つ差音成分が発生するように、互いの位相が調整された第1基本波の波形と第2基本波の波形とを合成した波形である。送受信回路12は、合成波形の送信超音波を、位相を反転させながら、例えば、2回送信させる。この場合、例えば、Bモード処理回路は、2つの受信信号を加算することで、基本波成分が除去され、差音成分及び2次高調波成分が主に残存したハーモニック成分を抽出した後、包絡線検波処理等を行なう。
【0027】
信号処理回路13のドプラ処理回路は、プローブ制御回路14による制御の下、受信回路からのエコーデータから速度情報を周波数解析し、平均速度、分散、パワー等の移動体の移動情報を多点について抽出したデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、ドプラデータと呼ばれる。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。なお、信号処理回路13は、信号処理部の一例である。
【0028】
プローブ制御回路14は、処理回路(図示省略)とコンフィギュレーションメモリ(図示省略)とを備える。プローブ制御回路14は、スキャンモード(例えば、Mモード、Bモード、カラーモード等)に応じてスキャンを行うように送受信回路12と信号処理回路13等を制御してスキャンを実行する機能と、電源回路17のスイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズの周波数を制御する機能とを有する。例えば、プローブ制御回路14は、スイッチングノイズが、超音波プローブ10の送受信帯域外となるように電源回路17の制御を行う(図4の上段)。又は、プローブ制御回路14は、超音波プローブ10の送受信帯域内において、スイッチングノイズによるS/N(Signal to Noise)劣化度が閾値以内となるように電源回路17の制御を行う(図4の下段)。
【0029】
そのために、プローブ制御回路14は、スイッチング周波数を切り替え、又は、スイッチングのDutyを切り替えることでスイッチングノイズの周波数を制御することができる。
【0030】
プローブ制御回路14の処理回路は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)、MPU(Micro Processing Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等が挙げられる。
【0031】
また、処理回路は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、コンフィギュレーションメモリは回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0032】
プローブ制御回路14のコンフィギュレーションメモリへの書き込みは、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリは、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。なお、プローブ制御回路14は、プローブ制御部の一例である。
【0033】
メモリ16は、超音波プローブごとの送受信帯域情報を予め記憶する。
【0034】
電源回路17は、スイッチングレギュレータ171と、切替回路172とを備え、送受信回路12等の電子回路の電源として機能する。スイッチングレギュレータ171は、直流(DC)電圧を異なる値の直流電圧に変換して出力するDC-DCコンバータの1方式である。プローブ制御回路14は、メモリ16から超音波プローブごとの送受信帯域情報を読み出し、その情報に基づいて切替回路172を制御することで、スイッチングレギュレータ171を所望の出力電圧に設定できる。なお、電源回路17は、電源部の一例である。
【0035】
超音波診断装置20は、画像処理回路21と、システム制御回路22と、入力インターフェース23と、ディスプレイ24と、電源回路25とを備える。なお、入力インターフェース23と、ディスプレイ24とを備えて超音波診断装置を構成する場合もあるが、入力インターフェース23と、ディスプレイ24とのうちの少なくとも1個を備えずに超音波診断装置を構成する場合もある。以下の説明では、超音波診断装置20が、入力インターフェース23と、ディスプレイ24との全てを備える場合について説明する。
【0036】
画像処理回路21は、システム制御回路22による制御の下、超音波プローブ10によって受信された受信信号に基づいて、所定の輝度レンジで表現された超音波画像を画像データとして生成する。例えば、画像処理回路21は、超音波画像として、信号処理回路13のBモード処理回路によって生成された2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像処理回路21は、超音波画像として、信号処理回路13のドプラ処理回路によって生成された2次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。
【0037】
ここで、画像処理回路21は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像処理回路21は、超音波プローブ10による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像処理回路21は、スキャンコンバート以外に、種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート処理後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像処理回路21は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0038】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像処理回路21が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像処理回路21は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データから、表示用の2次元超音波画像データを生成する。
【0039】
また、画像処理回路21は、GPU(Graphics Processing Unit)とVRAM(Video RAM)等を含む。画像処理回路21は、システム制御回路22の制御による制御の下、システム制御回路22から表示要求のあった超音波画像(例えば、ライブ画像)の信号強度を調整した上で、ディスプレイ24に表示させる。なお、画像処理回路21は、画像処理部の一例である。
【0040】
システム制御回路22は、超音波プローブ10のプローブ制御回路14と同等の構成を備えるものであるので、説明を省略する。また、システム制御回路22のメモリは、処理回路において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ24への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース23によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、システム制御回路22は、システム制御部の一例である。
【0041】
入力インターフェース23は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成してシステム制御回路22に出力する。なお、入力インターフェース23は、入力部の一例である。
【0042】
ディスプレイ24は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ24は、システム制御回路22の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ24は、表示部の一例である。
【0043】
電源回路25は、トランス、整流回路と、平滑回路等を備える。トランスは、商用電源(交流)をトランスで電圧を変換する。整流回路は、交流(AC)電圧を直流(DC)電圧に変換する。平滑回路は、電圧の変動を整流して安定した電圧の直流電圧を得る。電源回路25は、直流電圧を、超音波診断装置20内の電子回路に供給するとともに、接続コネクタ30を介して超音波プローブ10の電源回路17に供給する。なお、電源回路25は、電源部の一例である。
【0044】
図2は、比較例に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図である。
【0045】
図2は、比較例に係る超音波プローブ10Rを備えた超音波診断システム1Rを示す。超音波診断システム1Rは、超音波プローブ10Rと、超音波診断装置20と、接続コネクタ30とを備える。超音波プローブ10Rは、接続コネクタ(ケーブルを含む)を介して超音波診断装置20に接続される。
【0046】
なお、図2に示す超音波診断システム1Rにおいて、図1に示す超音波診断システム1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
超音波プローブ10Rは、振動子(圧電素子)11と、送受信回路12と、信号処理回路13と、プローブ制御回路14Rと、電源回路17Rとを備える。
【0048】
プローブ制御回路14Rは、処理回路(図示省略)とメモリ(図示省略)とを備える。プローブ制御回路14Rは、プローブ制御回路14(図1に図示)とは異なり、スキャンモードに応じてスキャンを行うように送受信回路12と信号処理回路13等を制御してスキャンを実行する機能のみを有する。
【0049】
電源回路17Rは、複数のスイッチングレギュレータ171を有する。複数のスイッチングレギュレータ171には、接続コネクタ30を介して超音波診断装置20の電源回路25から直流電圧が供給される。複数のスイッチングレギュレータ171は、直流電圧を適切な電圧に変換して、超音波プローブ10R内の各電子回路に供給する。
【0050】
一般に、レギュレータにはリニアレギュレータとスイッチングレギュレータがあり、小型・軽量、高効率といった観点からスイッチングレギュレータが使用されている。スイッチングレギュレータは、スイッチングノイズを発生する。スイッチングレギュレータのスイッチング周波数は、一般に数十kHz~数MHzであり、その周波数及び高調波がスイッチングノイズとなる。一方で、超音波の送受信帯域は、数MHzである。そのため、超音波プローブ10R内の送受信回路12にスイッチングノイズが回り込むと、スイッチングノイズがアナログ送受信信号に影響してしまうため、高品質な超音波画像を得ることができない。
【0051】
図3は、超音波プローブ10Rの送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図である。
【0052】
図3に示すように、超音波プローブ10Rのスイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズは、数十kHz~数MHzである。一方で、超音波の送受信帯域は数MHzであるため、スイッチングノイズと超音波の送受信帯域が同じ帯域に重なってしまう。このため、スイッチングノイズがアナログ送受信信号に影響してしまう。
【0053】
スイッチングノイズの対策として、ノイズフィルタ素子を使ってノイズ除去をする方法がある。その場合、ノイズフィルタ素子を実装する領域を超音波プローブ10R内に確保する必要がある。また、ダイナミックレンジを広くすることで相対的にスイッチングノイズの影響を軽減させる方法もある。その場合、小振幅のエコーはノイズに埋もれてしまう。
【0054】
そこで、図1に示す超音波プローブ10の構成をとるものとする。図1に示すプローブ制御回路14は、メモリ16に保持されている超音波プローブごとの送受信帯域情報から、当該超音波プローブ10の送受信帯域情報を取得する。そして、プローブ制御回路14は、スイッチング周波数を切り替え、又は、スイッチングDutyの切り替えを行うことでスイッチングノイズの周波数を制御する。
【0055】
図4は、超音波プローブ10の送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図である。図4の上段は、スイッチングノイズが、超音波プローブ10の送受信帯域外となるような制御を行う場合である。図4の下段は、超音波プローブ10の送受信帯域内において、スイッチングノイズによるS/N劣化度が閾値以内となるような制御を行う場合である。
【0056】
図4の上段に示すように、プローブ制御回路14は、超音波プローブ10のスイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズを、超音波の送受信帯域と異なる帯域となるように制御する。この場合、プローブ制御回路14は、スイッチングノイズの1次成分が超音波プローブ10の送受信帯域の高周波側に現れるような制御を行う。また、図4の下段に示すように、プローブ制御回路14は、超音波プローブ10の送受信帯域内において、超音波プローブ10のスイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズによるS/N劣化度が閾値以内となるように制御する。その場合、プローブ制御回路14は、複数の周波数で現れる各スイッチングノイズの減衰を考慮し、1次成分が超音波プローブ10の送受信帯域の低周波側に現れるように制御する。
【0057】
以上のように、超音波プローブ10によれば、超音波プローブ10の送受信帯域内において、スイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズをゼロ、又は、最小化することで、電源回路17のスイッチングレギュレータ171に起因するスイッチングノイズの画像への影響を抑制することができる。
【0058】
(変形例)
複数のスキャンモードのうち、設定されたスキャンモードに応じて超音波プローブ10の送受信帯域は異なる。そこで、プローブ制御回路14は、設定されたスキャンモードに応じてスイッチング周波数を切り替え、又は、スイッチングDutyを切り替えることで、スイッチングノイズの周波数を制御してもよい。
【0059】
プローブ制御回路14は、スキャンを実行する機能に加え、スキャンモードを判定し、スキャンモードに応じて、電源回路17のスイッチングレギュレータ171のスイッチングノイズの周波数を制御する。
【0060】
図5は、ドプラモードにおける、超音波プローブ10の送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図である。
【0061】
送信周波数2.5MHzのドプラモードの場合、図5に示すように、受信信号帯域は、2.5MHz±0.05MHzである。この帯域を避けるようにスイッチングノイズを制御するために、プローブ制御回路14は、スイッチング周波数が1MHzになるように制御することにより、スイッチングノイズの周波数を、1MHz、2MHz、3MHz、…とする。これにより、ドプラモードにおいて、超音波プローブ10の送受信帯域を避けてスイッチングノイズを設定することが可能である。
【0062】
図6は、Bモードにおける、超音波プローブ10の送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図である。
【0063】
送信周波数2.5MHzのBモードの場合、図6に示すように、受信信号帯域は、1.75MHz~3.25MHz(中心周波数2.5MHz±0.75MHz)である。この帯域を避けるようにスイッチングノイズを制御するために、プローブ制御回路14は、スイッチング周波数が3.5MHzになるように制御することにより、スイッチングノイズを、3.5MHz、7.0MHz、10.5MHz、…とする。それにより、Bモードにおいて、超音波プローブ10の送受信帯域を避けてスイッチングノイズを設定することが可能である。
【0064】
図7は、ドプラモードにおける、超音波プローブ10の送受信帯域と、スイッチングノイズとの関係をグラフとして示す図である。
【0065】
送信周波数3.0MHzのドプラの場合、図7に示すように、受信信号帯域は3.0MHz±0.05MHzである。この帯域を避けるようにスイッチングノイズを制御するために、プローブ制御回路14は、スイッチングレギュレータ171のスイッチング周波数が1MHzのとき、Duty比を1/3にすると3nMHz(nは正の整数)のスイッチングノイズをゼロにすることができる。それにより、ドプラモードにおいて、超音波プローブ10の送受信帯域へのスイッチングノイズ混入をなくすことができる。
【0066】
(第2の実施形態)
無線の超音波プローブは、超音波プローブ内のバッテリが十分に充電されている状態で使用される。超音波プローブ内のバッテリの充電が十分でない状態で超音波プローブを使用する場合は、外部の電源と無線の超音波プローブの電源回路とを有線接続した状態でバッテリへ給電を行いながら当該超音波プローブが使用される。そのため、超音波プローブのバッテリ充電回路起因のスイッチングノイズが当該超音波プローブ内の各電子回路へ回り込んでしまう。
【0067】
図8は、第2の実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断システムの構成を示す概略図である。
【0068】
図8は、第2の実施形態に係る超音波プローブ10Aを備えた超音波診断システム1Aを示す。超音波診断システム1Aは、超音波プローブ10Aと、超音波診断装置20Aと、接続コネクタ30Aとを備える。超音波プローブ10Aは、接続コネクタ(ケーブルを含む)を介して超音波診断装置20Aに接続される。
【0069】
超音波プローブ10Aは、振動子(圧電素子)11と、送受信回路12と、信号処理回路13と、プローブ制御回路14と、メモリ16と、電源回路17Aと、無線通信回路18とを備える。なお、回路12~13は、ASIC等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、回路12~13の機能の全部又は一部は、プローブ制御回路14がコンピュータプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
【0070】
電源回路17Aは、充電制御回路173と、複数のバッテリ174,175と、切替スイッチ176とを備える。超音波プローブ10Aのバッテリを2つに分ける。そして、プローブ制御回路14は、超音波プローブ10A内の送受信回路12への電源供給元を複数のバッテリ174,175で切り替え、一方のバッテリを送受信回路12に供給する電源とし、もう一方のバッテリを充電側に接続する。それにより、超音波プローブ10A内の送受信回路12は充電制御回路173及び外部電源40Aから分離されてバッテリから電力供給されるため、充電制御回路173及び電源回路17Aに起因するスイッチングノイズは送受信回路12へ回り込まなくなる。
【0071】
超音波診断装置20Aは、画像処理回路21と、システム制御回路22と、入力インターフェース23と、ディスプレイ24と、電源回路25Aと、無線通信回路26とを備える。なお、入力インターフェース23と、ディスプレイ24とを備えて超音波診断装置を構成する場合もあるが、入力インターフェース23と、ディスプレイ24とのうちの少なくとも1個を備えずに超音波診断装置を構成する場合もある。以下の説明では、超音波診断装置20が、入力インターフェース23と、ディスプレイ24との全てを備える場合について説明する。
【0072】
電源回路25Aは、トランス、整流回路と、平滑回路等を備える。トランスは、商用電源(交流)をトランスで電圧を変換する。整流回路は、交流(AC)電圧を直流(DC)電圧に変換する。平滑回路は、電圧の変動を整流して安定した電圧の直流電圧を得る。電源回路25Aは、直流電圧を、超音波診断装置20内の電子回路に供給する。なお、電源回路25Aは、電源部の一例である。
【0073】
なお、図8において、図1に示す超音波診断システム1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
プローブ制御回路14は、超音波プローブ10A内の送受信回路12への電源供給元を複数のバッテリ174,175で切り替えることで、バッテリの充電回路に起因するスイッチングノイズを制御することができる。なお、上述した変形例を、第2の実施形態に係る超音波プローブ10Aに適用することもできる。
【0075】
以上のように、超音波プローブ10Aによれば、バッテリの充電回路に起因するスイッチングノイズの画像への影響を抑制することができる。
【0076】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、スイッチングノイズの画像への影響を抑制することができる。
【0077】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1,1A 超音波診断システム
10,10A 超音波プローブ
11 振動子
12 送受信回路
13 信号処理回路
14 プローブ制御回路
17,17A 電源回路
171 スイッチングレギュレータ
172 切替回路
20,20A 超音波診断装置
30,30A 接続コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8