(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】し渣分離システム、活性汚泥処理システム、し渣分離方法、および活性汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/14 20060101AFI20240802BHJP
B01D 36/02 20060101ALI20240802BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20240802BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20240802BHJP
E02B 5/08 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E03F5/14
B01D36/02
C02F3/12 B
C02F3/12 S
E03F5/10 Z
E02B5/08 102A
(21)【出願番号】P 2020144984
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096204(JP,A)
【文献】特開2020-049432(JP,A)
【文献】特開2017-113723(JP,A)
【文献】特開2010-265628(JP,A)
【文献】特開2009-121455(JP,A)
【文献】中国実用新案第211080494(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/14
B01D 36/02
C02F 3/12
E03F 5/10
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水のし渣を分離可能な第一し渣分離装置および第二し渣分離装置を備え、
前記第一し渣分離装置は、所定の目開きの第一フィルタを有し、
前記第二し渣分離装置は、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタを有し、
前記第二し渣分離装置は、前記第一し渣分離装置の下流に設けられ
、
前記第一し渣分離装置を溢流した被処理水を、前記第二し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な溢流水流路をさらに備えるし渣分離システム。
【請求項2】
前記第二し渣分離装置において前記第二フィルタの一次側に捕捉されたし渣を、前記第一し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な返送流路をさらに備える請求項
1に記載のし渣分離システム。
【請求項3】
前記第一し渣分離装置は、ロータリーフィルタ方式のし渣分離装置である請求項1
又は2に記載のし渣分離システム。
【請求項4】
前記第二フィルタは、ワイヤースクリーンおよびメッシュパネルスクリーンのうちの少なくとも一つを含む請求項1~
3のいずれか一項に記載のし渣分離システム。
【請求項5】
し渣分離システムと、前記し渣分離システムの下流に設けられた活性汚泥処理装置と、を備える活性汚泥処理システムであって、
前記し渣分離システムは、
被処理水のし渣を分離可能な第一し渣分離装置および第二し渣分離装置を備え、
前記第一し渣分離装置は、所定の目開きの第一フィルタを有し、
前記第二し渣分離装置は、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタを有し、
前記第二し渣分離装置は、前記第一し渣分離装置の下流に設けられ
、
前記し渣分離システムは、前記第一し渣分離装置を溢流した被処理水を、前記第二し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な溢流水流路をさらに備える活性汚泥処理システム。
【請求項6】
被処理水のし渣を分離するし渣分離方法であって、
被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、
前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、を有し、
前記第一分離工程において被処理水の少なくとも一部が溢流した場合は、溢流した当該被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供するし渣分離方法。
【請求項7】
被処理水の活性汚泥処理方法であって、
被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、
前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、
前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した被処理水を、活性汚泥処理する処理工程と、を有し、
前記処理工程において得られた処理水の窒素濃度およびりん濃度の少なくとも一つが、窒素濃度およびりん濃度のそれぞれについての所定の閾値以上になった場合、または当該所定の閾値以上になると予測された場合は、
前記第一分離工程において、被処理水の少なくとも一部が溢流するように、前記第一フィルタの運転条件を決定するとともに、
前記第一分離工程において溢流した被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供する活性汚泥処理方法。
【請求項8】
被処理水を膜分離活性汚泥処理する活性汚泥処理方法であって、
被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、
前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、
前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した被処理水を、膜分離活性汚泥処理する処理工程と、を有し、
前記第一分離工程において被処理水の少なくとも一部が溢流した場合は、溢流した当該被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供し、
前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した前記被処理水の量が、前記処理工程の処理可能量を超える場合は、当該処理可能量を超える分について膜分離活性汚泥処理せず消毒して放流する活性汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し渣分離システム、活性汚泥処理システム、し渣分離方法、および活性汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設などにおいて、被処理水中に含まれるし渣を除去するし渣分離装置が汎用される。これは、活性汚泥処理設備などに供するのに適した水質の被処理水を提供するため、被処理水からし渣を除去する必要があるためである。
【0003】
し渣分離装置を設置する場合、より有効にし渣を除去するべく、目開きが異なる複数のフィルタが直列に設置される場合がある。たとえば、特開2013-96204号公報(特許文献1)には、粗目スクリーンと、当該粗目スクリーンの下流側に設けられた細目スクリーンと、を有する除塵機が開示されている。また、特開2015-203289号公報(特許文献2)のように、スクリーンの上流に破砕部を設け、スクリーンに捕捉されるし渣の寸法を低減することを図った除塵設備も汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-96204号公報
【文献】特開2015-203289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
し渣分離装置においては、フィルタの閉塞を避けるため、フィルタに捕捉されたし渣を除去する必要がある。ここで、特許文献1の除塵機では、粗目スクリーンおよび細目スクリーンのそれぞれに、し渣を掻き上げるためのレーキが設けられている。すなわち、特許文献1の除塵機では、フィルタの設置数と同数のし渣処理装置を設ける必要があった。また、特許文献2の除塵設備では、し渣処理装置の必要数量が増加しない代わりに破砕部を設ける必要があり、必要な設備点数自体の低減は不十分だった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、運用に要する設備点数、面積、および費用を低減しうる、し渣分離システム、活性汚泥処理システム、し渣分離方法、および活性汚泥処理方法の実現が求められる。
【0007】
本発明に係るし渣分離システムは、被処理水のし渣を分離可能な第一し渣分離装置および第二し渣分離装置を備え、前記第一し渣分離装置は、所定の目開きの第一フィルタを有し、前記第二し渣分離装置は、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタを有し、前記第二し渣分離装置は、前記第一し渣分離装置の下流に設けられ、前記第一し渣分離装置を溢流した被処理水を、前記第二し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な溢流水流路をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る活性汚泥処理システムは、し渣分離システムと、前記し渣分離システムの下流に設けられた活性汚泥処理装置と、を備える活性汚泥処理システムであって、前記し渣分離システムは、被処理水のし渣を分離可能な第一し渣分離装置および第二し渣分離装置を備え、前記第一し渣分離装置は、所定の目開きの第一フィルタを有し、前記第二し渣分離装置は、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタを有し、前記第二し渣分離装置は、前記第一し渣分離装置の下流に設けられ、前記し渣分離システムは、前記第一し渣分離装置を溢流した被処理水を、前記第二し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な溢流水流路をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るし渣分離方法は、被処理水のし渣を分離するし渣分離方法であって、被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、を有し、前記第一分離工程において被処理水の少なくとも一部が溢流した場合は、溢流した当該被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供することを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、平時は実質的に第一し渣分離装置のみがし渣の分離に寄与し、増水などの場合にのみ第二し渣分離装置がし渣の分離に寄与するので、第二し渣分離装置の装置規模および運用コストを低減しうる。これによって、システム全体の運用に要する設備点数、面積、および費用を低減しうる。
【0011】
本発明に係る第一の活性汚泥処理方法は、被処理水の活性汚泥処理方法であって、被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した被処理水を、活性汚泥処理する処理工程と、を有し、前記処理工程において得られた処理水の窒素濃度およびりん濃度の少なくとも一つが、窒素濃度およびりん濃度のそれぞれについての所定の閾値以上になった場合、または当該所定の閾値以上になると予測された場合は、前記第一分離工程において、被処理水の少なくとも一部が溢流するように、前記第一フィルタの運転条件を決定するとともに、前記第一分離工程において溢流した被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、処理水の窒素濃度を調整するための新たな設備または工程を設けることなく、第一フィルタの運転条件を調整するだけの比較的簡単な方法によって、処理水の窒素濃度を調整できる。
【0013】
本発明に係る第二の活性汚泥処理方法は、被処理水を膜分離活性汚泥処理する活性汚泥処理方法であって、被処理水を、所定の目開きの第一フィルタに流通する第一分離工程と、前記第一分離工程において前記第一フィルタを通過した被処理水を、前記第一フィルタより目開きが大きい第二フィルタに流通する第二分離工程と、前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した被処理水を、膜分離活性汚泥処理する処理工程と、を有し、前記第一分離工程において被処理水の少なくとも一部が溢流した場合は、溢流した当該被処理水と、前記第一フィルタに流通した後の被処理水と、を併せて前記第二分離工程に供し、前記第二分離工程において前記第二フィルタを通過した前記被処理水の量が、前記処理工程の処理可能量を超える場合は、当該処理可能量を超える分について膜分離活性汚泥処理せず消毒して放流することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、被処理水の流入量が過大であり、その一部を活性汚泥処理せずに放流せざるを得ない場合であっても、比較的良好な水質の簡易処理放流水を得ることができる。
【0015】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0016】
本発明に係るし渣分離システムは、一態様として、前記第一し渣分離装置を溢流した被処理水を、前記第二し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な溢流水流路をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第一し渣分離装置の処理能力を超えた場合に、溢流水流路を用いる運用に自動的に切り替わる。そのため、し渣分離システムの管理工数を低減しうる。
【0018】
本発明に係るし渣分離システムは、一態様として、前記第二し渣分離装置において前記第二フィルタの一次側に捕捉されたし渣を、前記第一し渣分離装置の上流の所定の位置に案内可能な返送流路をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第二し渣分離装置において捕捉されたし渣を、最終的に第一し渣分離装置において捕捉できるので、第一し渣分離装置のみにし渣処理装置を設ければよい。これによって、設備点数を低減しうる。
【0020】
本発明に係るし渣分離システムは、一態様として、前記第一し渣分離装置は、ロータリーフィルタ方式のし渣分離装置であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第一し渣分離装置として、当分野で通常用いられているし渣分離装置のうちで比較的処理能力が高いものを用いることができる。
【0022】
本発明に係るし渣分離システムは、一態様として、前記第二フィルタは、ワイヤースクリーンおよびメッシュスクリーンのうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0023】
この構成によれば、第二し渣分離装置として単純な構造の装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】活性汚泥処理システムの実施形態を示す構成概略図である。
【
図2】被処理水の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るし渣分離システム、活性汚泥処理システム、し渣分離方法、および活性汚泥処理方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るし渣分離システムを、膜分離活性汚泥処理装置3を備える活性汚泥処理システム1において、膜分離活性汚泥処理装置3に流入させる被処理水からあらかじめし渣を分離するために設けられたし渣分離システム2に適用した例について説明する。なお、以下の説明において、「被処理水」の用語は、活性汚泥処理の対象となる水(下水など)を意味し、「処理水」の用語は、被処理水に対して活性汚泥処理を施して河川などに放流可能な水質になった水を意味する。
【0026】
〔活性汚泥処理システムの構成〕
活性汚泥処理システム1は、し渣分離システム2および膜分離活性汚泥処理装置3(活性汚泥処理装置の例)を備える(
図1)。活性汚泥処理システム1は、し渣分離システム2において被処理水W1からし渣Sを分離した後に、膜分離活性汚泥処理装置3において活性汚泥処理を実施し、処理水W6をシステム外に排出する(
図2)。
【0027】
ここで、膜分離活性汚泥処理装置3としては公知の膜分離活性汚泥処理装置を用いることができ、本実施形態では、無酸素槽31と、膜分離装置33が設けられた好気槽32と、を有する公知の構成の膜分離活性汚泥処理装置3を用いている。し渣分離システム2は、膜分離装置33を閉塞させうる一定水準以上の大きさの固形物を取り除く役割を果たすために設けられている。
【0028】
〔し渣分離システムの構成〕
し渣分離システム2は、ロータリーフィルタ装置4(第一し渣分離装置の例)、細目スクリーン5(第二し渣分離装置の例)、およびし渣処理装置6を備える(
図1)。活性汚泥処理システム1に流入した被処理水W1は、第一にロータリーフィルタ装置4に流入する。ロータリーフィルタ装置4においてし渣S1が分離された被処理水(一次処理水W4)は、次に細目スクリーン5に流入する。細目スクリーン5を通過した被処理水(二次処理水W5)は、膜分離活性汚泥処理装置3に流入する。
【0029】
し渣分離システム2は、概して、ロータリーフィルタ装置4に設けられたフィルタユニット41(第一フィルタの例)と、細目スクリーン5に設けられたメッシュパネルスクリーン51(第二フィルタの例)とによって、被処理水W1に含まれるし渣S1を捕捉してこれを分離するシステムである。フィルタユニット41は、目開き0.05~0.5mmのパネルフィルタが複数枚連結された態様で設けられている。一方、メッシュパネルスクリーン51は、目開き2mmのメッシュスクリーンである。すなわち、上流側に設けられたロータリーフィルタ装置4の方が、下流側に設けられた細目スクリーン5よりも目開きが小さいフィルタを有する。したがって、ロータリーフィルタ装置4においてし渣S1が分離された被処理水(一次処理水W4)は、原則として、細目スクリーン5が捕捉可能なし渣を含まない。すなわち、し渣分離システム2は、平時においてはロータリーフィルタ装置4のみの能力によってし渣の分離を行うシステムである。
【0030】
一方、フィルタユニット41に破損が生じるなどの非常時においては、細目スクリーン5によるし渣の捕捉が行われる。フィルタユニット41に破損が生じた場合、パネルフィルタの目開きより大きい固形分がロータリーフィルタ装置4を通過するが、当該固形分のうちメッシュパネルスクリーン51の目開きより大きい固形分は、細目スクリーン5によって捕捉される。すなわち、し渣分離システム2は、ロータリーフィルタ装置4において破損や想定以上の流入などが生じる非常時においても、細目スクリーン5によって最低限のし渣分離能力を発揮して、膜分離活性汚泥処理装置3における活性汚泥処理に適した前処理を実行できる。
【0031】
続いて、し渣分離システム2が備える各装置について順に説明する。ロータリーフィルタ装置4は、フィルタユニット41を有するロータリーフィルタ方式のし渣分離装置である。フィルタユニット41は、目開き0.1~0.5mmのパネルフィルタが複数枚連結された態様で設けられている。また、ロータリーフィルタ装置4には、フィルタユニット41の各パネルフィルタを移動させるためのローター42が複数設けられている。
【0032】
ロータリーフィルタ装置4において、ロータリーフィルタ装置4に流入した被処理水W1の流路を横切る態様で、フィルタユニット41が設けられている。フィルタユニット41において、被処理水W1の流路の上流側から下流側に傾く態様で設けられローター42の回転によって、被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタが下方から上方に移動している。被処理水W1に含まれるし渣S1はフィルタユニット41に遮られ、被処理水W1中の水分であるろ過水W2はフィルタユニット41を通過する。フィルタユニット41のパネルフィルタ上に残ったし渣S1は、パネルフィルタの移動に伴って搬送され、洗浄機構44によってフィルタユニット41から剥離される。洗浄機構44は、フィルタユニット41からし渣S1をフィルタユニット41から掻き落とすスクレーパ44aと、フィルタユニット41の裏側から洗浄水を吹き付けてし渣S1をフィルタユニット41から剥離させるスプレー44bと、を含む。フィルタユニット41から剥離されたし渣S2は、し渣処理装置6に送られる。
【0033】
また、ロータリーフィルタ装置4は、溢流水流路43を有する。被処理水W1の流入速度が、ロータリーフィルタ装置4が単位時間あたりに処理可能な被処理水W1の量(処理速度)を上回る場合、ロータリーフィルタ装置4が処理しきれない被処理水W1が溢流して溢流水W3(第一し渣分離装置を溢流した被処理水の例)が生じることになる。かかる溢流水W3は、溢流水流路43を経由して、フィルタユニット41を通過したろ過水W2と合流する。ろ過水W2と溢流水W3とは一体となって、一次処理水W4として細目スクリーン5に流入する。すなわち、溢流水流路43は、ロータリーフィルタ装置4を溢流した溢流水W3を、ロータリーフィルタ装置4の下流かつ細目スクリーン5の上流の所定の位置43aに案内可能な流路である。
【0034】
なお、ロータリーフィルタ装置4の処理速度は、フィルタユニット41の大きさ、パネルフィルタの目開き、フィルタユニット41の回転スピード、フィルタユニット41の洗浄方法などの装置構成に起因する要因により決定づけられる。ロータリーフィルタ装置4の処理速度は、フィルタユニット41の目詰まりや大量の油が流入するなどの要因により低下する可能性はあるが、ロータリーフィルタ装置4が設置された当初の能力を上回ることはない。一方、被処理水W1の流入速度は、季節、天候、時刻などの要因により変化しうる。活性汚泥処理システム1を設置する際に、設置場所における被処理水W1の流入速度の範囲についてある程度の想定はなされているが、想定を超える大雨などの状況において想定範囲を超える流入速度になる場合がある。また、流入速度の想定範囲の最大値を基準としてロータリーフィルタ装置4の処理速度を設定すると、ロータリーフィルタ装置4の規模が過大になる可能性がある。すなわち、フィルタユニット41に目詰まりが生じたり大量の油が流入したりしてロータリーフィルタ装置4の処理速度が低下した場合や、被処理水W1の流入速度が一時的に想定を超えて増大した場合など、被処理水W1の流入速度がロータリーフィルタ装置4の処理速度を一時的に上回る状況は少なからず生じうる。
【0035】
細目スクリーン5は、メッシュパネルスクリーン51を有する。メッシュパネルスクリーン51は、目開き2mmのメッシュスクリーンである。細目スクリーン5に一次処理水W4が流入すると、一次処理水W4に含まれるし渣S3はメッシュパネルスクリーン51の一次側に捕捉され、水分はメッシュパネルスクリーン51の二次側に通過する。これによって、細目スクリーン5から流出する二次処理水W5は、膜分離活性汚泥処理装置3の膜分離装置33を損傷させうる一定水準以上の大きさの固形物を含まない水質になる。
【0036】
前述の通り、フィルタユニット41に破損が生じるなどの非常時を除いて、一次処理水W4は細目スクリーン5が捕捉可能なし渣を含まない。しかし、ロータリーフィルタ装置4において溢流水W3が生じる状況においては、一次処理水W4は溢流水W3を含み、溢流水W3に由来する部分はフィルタユニット41のパネルフィルタの目開きより大きい固形分を有する可能性がある。溢流水W3に由来する当該固形分のうち、メッシュパネルスクリーン51の目開き(2mm)より大きい固形分は、し渣S3(第二フィルタの一次側に捕捉されたし渣の例)として一次処理水W4から分離される。このように、本実施形態では溢流水流路43が備えられているので、ロータリーフィルタ装置4において溢流が生じる状況においても、流路を切り替えるなどの特別な操作を行うことなく、自動的に溢流水を細目スクリーン5に導くことができる。そして、細目スクリーン5よって最低限のし渣分離能力を発揮して、溢流水W3に含まれるし渣S3を分離できる。
【0037】
また、被処理水W1の流入速度が想定を超えて増大した場合、二次処理水W5の量が膜分離活性汚泥処理装置3の処理能力を超えてしまい、二次処理水W5の一部を膜分離活性汚泥処理せずに放流せざるを得ない可能性がある。このような場合でも、可能な限りの被処理水W1をロータリーフィルタ装置4で処理し、溢流水W3については細目スクリーン5により最低限のし渣分離を実施した上で、さらに消毒装置により消毒殺菌処理を施すことで、比較的良好な水質の簡易処理放流水を得ることができる。
【0038】
フィルタユニット41において有機物を含む固形物を除去しすぎてしまうと、後段の活性汚泥処理に悪影響が生じる場合がある。このような場合は、処理状況に応じてフィルタユニット41のパネルフィルタを通過せず、細目スクリーン5のみを通過した被処理水を下流側の活性汚泥処理装置へと流入させることが望ましい。本実施形態では、溢流水W3を意図的に生じさせることによって、これを実現できる。具体的には、ロータリーフィルタ装置4においてフィルタユニット41の回転(第一フィルタの運転条件の例)を低速にするか、または停止することによって、フィルタユニット41を意図的に目詰まりさせると、溢流水W3が生じる。このように本実施形態では、フィルタユニット41の回転を制御するだけの簡単な制御によって、後段の活性汚泥処理に供給する有機物の量を自在に制御できる。たとえば、脱窒反応および脱りん反応に必要な有機物が不足したことにより処理水W6の窒素濃度およびりん濃度の少なくとも一つが、窒素濃度およびりん濃度のそれぞれについての閾値以上となった場合、あるいは過去の運転データを基に機械学習させたAIにより半日以内に閾値以上となる予測された場合には、フィルタユニット41の回転を低速にするかまたは停止し、処理水W6の窒素濃度およびりん濃度が低下してきたらフィルタユニット41の回転を高速にするかまたは再開する、といった運転制御を行いうる。従来のし渣分離システムにおいては、上記のように有機物の量を制御するためには、専用のバイバス水路を設置し、電動の制水ゲートや越流可動堰などによる切り替えを行う必要があった。
【0039】
また、細目スクリーン5には、メッシュパネルスクリーン51の一次側に基端部を有する返送流路52が設けられている。返送流路52は、たとえば流水トラフの態様で設けられる。メッシュパネルスクリーン51に捕捉されたし渣S3は、一次処理水W4の一部およびメッシュパネルスクリーン51の洗浄水とともに、し渣返送流S4としてロータリーフィルタ装置4の上流の所定の位置52aに案内される。し渣返送流S4は、被処理水W1とともにロータリーフィルタ装置4の一次側に導入されるので、し渣返送流S4中のし渣S3は、最終的にフィルタユニット41から剥離されて、し渣S2としてし渣処理装置6に送られる。この構成では、一つのし渣処理装置6をロータリーフィルタ装置4と細目スクリーン5とで共用できるので、し渣処理装置6の設置および運用に要する面積や費用などを節減しうる。
【0040】
さらに、細目スクリーン5には、メッシュパネルスクリーン51の一次側および二次側のそれぞれに水位計53(53a、53b)が設けられている。たとえば、メッシュパネルスクリーン51の詰まりが発生した場合、水位計53a(一次側)により検出される水位は、水位計53b(二次側)により検出される水位より高くなる。そこで、水位計53aと水位計53bとの検出水位の差が所定の閾値を超えたときに、メッシュパネルスクリーン51の洗浄を行う。なお、このときの洗浄水は、し渣返送流S4としてロータリーフィルタ装置4に移送されうる。
【0041】
し渣処理装置6は、当分野において公知のし渣処理装置である。
【0042】
以上に説明したし渣分離システム2における被処理水W1の処理の流れを、
図2を参照して改めて説明する。し渣分離システム2に流入した被処理水W1は、まずロータリーフィルタ装置4に流入する。被処理水W1のうちロータリーフィルタ装置4のフィルタユニット41を通過したろ過水W2と、ロータリーフィルタ装置4の処理能力を超えて溢流した溢流水W3(ただし、被処理水W1の流入速度がロータリーフィルタ装置4の処理能力を超える場合に限る。)とは、一次処理水W4として細目スクリーン5に流入する。そして、一次処理水W4のうち細目スクリーン5のメッシュパネルスクリーン51を通過した二次処理水W5が、膜分離活性汚泥処理装置3における活性汚泥処理に供される。
【0043】
一方、被処理水W1のうちロータリーフィルタ装置4のフィルタユニット41の一次側に捕捉された固形分は、フィルタユニット41から剥離されて、し渣S2としてし渣処理装置6に送られる。また、一次処理水W4のうちメッシュパネルスクリーン51の一次側に捕捉された固形分は、し渣返送流S4としてロータリーフィルタ装置4の一次側に案内され、最終的にし渣S2としてし渣処理装置6に送られる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るし渣分離システム、活性汚泥処理システム、し渣分離方法、および活性汚泥処理方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0045】
上記の実施形態では、第一し渣分離装置および第二し渣分離装置として、それぞれロータリーフィルタ装置4および細目スクリーン5を例として説明した。しかし本発明において第一し渣分離装置および第二し渣分離装置におけるし渣分離方式は特に限定されない。たとえば、第一し渣分離装置は、円筒ドラム式、回転ディスク式などの他方式のし渣分離装置でありうる。また、第二し渣分離装置は、ワイヤースクリーンや回転ドラムスクリーンなどの方式のし渣分離装置でありうる。
【0046】
同様に、第一フィルタおよび第二フィルタの例としてそれぞれ示したフィルタユニット41およびメッシュパネルスクリーン51も例示に過ぎない。第一フィルタおよび第二フィルタは、第一し渣分離装置および第二し渣分離装置におけるし渣分離方式に適したフィルタが選択される。たとえば、第一フィルタは、起毛繊維フィルタなどでありうる。また、第二フィルタは、ワイヤースクリーンなどでありうる。
【0047】
上記の実施形態では、ロータリーフィルタ装置4が溢流水流路43を有する構成を例として説明した。しかし本発明は、溢流水流路を備えなくてもよい。この場合、第一し渣分離装置において溢流が生じないように、第一し渣分離装置の上流に流量調整槽などを設けることが好ましい。
【0048】
上記の実施形態では、細目スクリーン5が返送流路52を有する構成を例として説明した。しかし本発明は、返送流路を備えなくてもよい。
【0049】
上記の実施形態では、活性汚泥処理システム1が膜分離活性汚泥処理装置3を備える構成を例として説明した。しかし、本発明において、活性汚泥処理装置は膜分離活性汚泥処理装置に限定されない。
【0050】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、たとえば活性汚泥処理施設におけるし渣分離システムに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :活性汚泥処理システム
2 :し渣分離システム
3 :膜分離活性汚泥処理装置
31 :無酸素槽
32 :好気槽
33 :膜分離装置
4 :ロータリーフィルタ装置
41 :フィルタユニット
42 :ローター
43 :溢流水流路
44 :洗浄機構
44a :スクレーパ
44b :スプレー
5 :細目スクリーン
51 :メッシュパネルスクリーン
52 :返送流路
53 :水位計
6 :し渣処理装置
S :し渣
W1 :被処理水
W2 :ろ過水
W3 :溢流水
W4 :一次処理水
W5 :二次処理水
W6 :処理水