(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】煙突内点検装置
(51)【国際特許分類】
E04H 12/28 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E04H12/28 Z
(21)【出願番号】P 2020158440
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宣
(72)【発明者】
【氏名】栃下 裕也
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171032(JP,A)
【文献】特開2005-344466(JP,A)
【文献】実開平02-133531(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/28
E04G 23/00-23/02
F24F 13/00-13/078
F23J 13/00-99/00
F17D 1/00-5/08
G03B 15/00-15/035,15/06-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜行部を有する煙突の内部を点検する装置であって、
吊ケーブルと、
前記吊ケーブルの先端に接続され、前記煙突の上端の開口から前記煙突の内部に吊り下げ可能なカメラヘッドと、
前記カメラヘッドの両側方に回転可能に設けられ、前記煙突の内壁に沿って転動可能な一対の車輪と
を備え
、吊り補助手段を更に備え、前記吊り補助手段が、
前記煙突における、前記斜行部より上側の鉛直部内に垂下される垂下材と、
前記垂下材の下端部に支持され、前記斜行部の斜め天井と前記上側の鉛直部の鉛直壁面とで作る上側出隅コーナー部に配置されて、前記吊ケーブルを屈曲可能に案内する上側出隅受け部と、
前記垂下材より下方へ延びる下側受け吊材と、
前記下側受け吊材の下端に支持され、前記斜行部の斜め底面と前記斜行部より下側の鉛直壁面とで作る下側出隅コーナー部に宛がわれ、前記車輪を案内する下側出隅受け部と、
を含むことを特徴とする煙突内点検装置。
【請求項2】
前記カメラヘッドが、前記各車輪の外直径より短い長さの筒形状になっており、前記一対の車輪の車軸が、前記カメラヘッドの中間部と交差していることを特徴とする請求項1に記載の煙突内点検装置。
【請求項3】
前記各車輪の外直径Dと前記一対の車輪どうしの距離Lとの比が、D:L=1:0.75~1:1.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の煙突内点検装置。
【請求項4】
前記上側の鉛直部における、前記上側出隅コーナー部の延び方向に沿う幅方向の両側にそれぞれ前記垂下材が配置され、
前記上側出隅受け部が、前記両側の垂下材の下端部どうしに架け渡された水平棒材を含むことを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載の煙突内点検装置。
【請求項5】
前記下側出隅受け部が、前記一対の車輪どうしの距離と対応する距離だけ離れて、前記下側出隅コーナー部を構成する前記斜め底面と前記下側の鉛直壁面とに宛がわれるように屈曲された一対の下側出隅当て板と、これら下側出隅当て板に架け渡された連結ロッドとを含むことを特徴とする請求項
1~4の何れか1項に記載の煙突内点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突の内部を点検する装置に関し、特に屈曲された煙突に適した煙突内点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、煙突の頂部からカメラヘッドを煙突内に鉛直に吊り降ろし、カメラヘッドで煙突内を撮影することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煙突は必ずしも頂部から底部まで鉛直であるとは限らない。例えば高層ビルなどの建物に付設された煙突においては、建物の構造上の要請から、中間部分が斜めに屈曲されたものもある。かかる斜行部を有する煙突の内部を点検する場合、前掲特許文献1のカメラヘッドをそのまま吊り降ろして行くと、カメラヘッドが斜行部の斜め底面にぶつかって引っ掛かるだけでなく、カメラヘッドが損傷したり、前記斜め底面における断熱材などの煙突構成部材が損傷したりするおそれがある。また、カメラヘッドを吊っているケーブルが、斜行部の上側の出隅コーナー部や斜行部の下側の出隅コーナー部と摺擦されることによって、当該ケーブルが損傷し、最悪の場合は当該ケーブルが切断されてカメラヘッドが落下してしまったり、前記上下の出隅コーナー部における断熱材等の煙突構成部材が損傷したりするおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、斜行部を有する煙突の内部を確実に点検可能な煙突内点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、斜行部を有する煙突の内部を点検する装置であって、
吊ケーブルと、
前記吊ケーブルの先端に接続され、前記煙突の上端の開口から前記煙突の内部に吊り下げ可能なカメラヘッドと、
前記カメラヘッドの両側方に回転可能に設けられ、前記煙突の内壁に沿って転動可能な一対の車輪と
を備えたことを特徴とする。
【0006】
当該特徴を備えた煙突内点検装置によれば、カメラヘッドを吊り降ろしながら、煙突内を撮影し点検する。カメラヘッドが煙突の斜行部に達したとき、車輪が斜行部の斜め底面に着地することによって、カメラヘッドが前記斜め底面にぶつかるのを回避できる。更に、車輪が斜め底面に沿って転動されることによって、カメラヘッドが斜め底面に引っ掛かることなく斜行部内を円滑に下降して通過することができる。
【0007】
前記カメラヘッドが、前記各車輪の外直径より短い長さの筒形状になっており、前記一対の車輪の車軸が、前記カメラヘッドの中間部と交差していることが好ましい。これによって、車輪は煙突の内壁と接して転動できる一方で、カメラヘッドは煙突の内壁と接しないようにできる。
【0008】
前記各車輪の外直径Dと前記一対の車輪どうしの距離Lとの比は、好ましくはD:L=1:0.75~1:1.5であり、より好ましくはD:L=1:0.9~1:1.1である。これによって、カメラヘッド及び車輪を含む点検ユニットが、横倒しになったり横向きになったりすることなく、特に斜行部の下側出隅コーナー部を円滑に乗り越えることができる。
発明者の知見によれば、車輪直径Dに対して車輪間距離Lが小さ過ぎると、点検ユニットがローリング(横倒し)を起こしやすい。車輪直径Dに対して車輪間距離Lが大き過ぎると、点検ユニットが斜行部の出隅コーナー部を乗り越える際にヨーイング(横向き回転)を起こしやすい。
【0009】
本発明に係る煙突内点検装置は、吊り補助手段を更に備えていることが好ましい。前記吊り補助手段が、前記煙突における、前記斜行部より上側の鉛直部内に垂下される垂下材と、
前記垂下材の下端部に支持され、前記斜行部の斜め天井と前記上側の鉛直部の鉛直壁面とで作る上側出隅コーナー部に配置されて、前記吊ケーブルを屈曲可能に案内する上側出隅受け部と、
前記垂下材より下方へ延びる下側受け吊材と、
前記下側受け吊材の下端に支持され、前記斜行部の斜め底面と前記斜行部より下側の鉛直壁面とで作る下側出隅コーナー部に宛がわれ、前記車輪を案内する下側出隅受け部と、
を含むことが好ましい。
これによって、吊ケーブルが、斜行部の上側出隅コーナー部及び下側出隅コーナー部と直接に接して摺擦されるのを防止できる。したがって、吊ケーブルが損傷したり、上下の出隅コーナー部における断熱材などの煙突構成部材が損傷したりするのを防止できる。
【0010】
前記上側の鉛直部における、前記上側出隅コーナー部の延び方向に沿う幅方向の両側にそれぞれ前記垂下材が配置され、
前記上側出隅受け部が、前記両側の垂下材の下端部どうしに架け渡された水平棒材を含むことが好ましい。
これによって、上側出隅コーナー部において吊ケーブルを水平棒材に当てて屈曲させることができる。
水平棒材は、自軸まわりに回転自在であることが好ましい。
【0011】
前記下側出隅受け部が、前記一対の車輪どうしの距離と対応する距離だけ離れて、前記下側出隅コーナー部を構成する前記斜め底面と前記下側の鉛直壁面とに宛がわれるように屈曲された一対の下側出隅当て板と、これら下側出隅当て板に架け渡された連結ロッドとを含むことが好ましい。
これによって、下側出隅コーナー部において、一対の車輪がそれぞれ対応する下側出隅当て板上を通過できる。吊ケーブルは連結ロッドに当てて屈曲させることができる。
連結ロッドは、自軸まわりに回転自在であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斜行部を有する煙突の内部を確実に点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る煙突内点検装置の吊り補助手段の設置工程を示す、煙突の側面断面図である。
【
図2】
図2は、前記設置工程の続きを示す、煙突の側面断面図である。
【
図3】
図3は、前記設置工程の終了段階を示す、煙突の側面断面図である。
【
図4】
図4は、前記煙突内点検装置の点検ユニットを用いた煙突の上側鉛直部内の点検工程を示す、煙突の側面断面図である。
【
図5】
図5は、前記点検ユニットを用いた煙突の斜行部内の点検工程を示す、煙突の側面断面図である。
【
図6】
図6は、前記点検工程における前記煙突の上側出隅コーナー部の周辺部を下側かつ後方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、前記点検ユニットが斜行部から下側出隅コーナー部にさしかかった状態における、下側出隅コーナー部の周辺部を上側かつ前方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、前記点検ユニットが斜行部内から下側出隅コーナー部へ移行する状態を示す、煙突の側面断面図である。
【
図9】
図9は、前記点検ユニットを用いた煙突の下側鉛直部内の点検工程を示す、煙突の側面断面図である。
【
図10】
図10は、
図9の工程における下側出隅コーナー部の周辺部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、高層ビルなどの建物Bには、ボイラなどからの排ガスを放出する煙突1が付設されている。煙突1は、中間の斜行部3と、斜行部3より上側の鉛直部2と、斜行部3より下側の鉛直部4を含む。上側の鉛直部2が建物Bの屋上から上へ突出されている。上下の鉛直部2,4は前後(
図1において左右)にずれている。斜行部3が、これら鉛直部2,4を繋げるように斜めに延びている。煙突1は、斜行部3においてクランク状に屈曲されている。
【0015】
斜行部3の斜め天井3aと、上側の鉛直部2の前方(
図1において右側)の鉛直壁面2aとによって、上側出隅コーナー部3cが作られている。
斜行部3の斜め底面3bと、下側の鉛直部4の後方(
図1において左側)の鉛直壁面4bとによって、下側出隅コーナー部3dが作られている。
図6及び
図10に示すように、これら出隅コーナー部3c,3dは、煙突1の幅方向すなわち左右方向(
図1において紙面と直交する方向)へ延びている。
【0016】
図1に示すように、建物Bの屋上における煙突1の上端部のまわりに架台40が組まれている。架台40に煙突内点検装置10が吊支持されている。
図4に示すように、煙突内点検装置10は、点検ユニット11と、吊り補助手段20を備えている。
【0017】
図7に示すように、点検ユニット11は、カメラヘッド12と一対の車輪13を備えている。カメラヘッド12は、筒形状になっている。カメラヘッド12の先端部12d及び先端付近の側方部にカメラの対物レンズ12aが設けられている。なお、対物レンズ12aは、カメラヘッド12の先端部12dだけ、又は側方部だけに設けられていてもよい。
【0018】
カメラヘッド12の基端部12bには、吊ケーブル14の先端が接続されている。詳細な図示は省略するが、吊ケーブル14の内部には、カメラヘッド12に繋がる信号ケーブル及び電源ケーブルが収容されている。吊ケーブル14は、点検ユニット11を吊り支持する強度を有している。カメラヘッド12は、吊ケーブル14で吊られることによって、先端部12dを下方へ向けて、煙突1の上端の開口から煙突1の内部に吊り下げ可能である。
【0019】
図7に示すように、カメラヘッド12の両側方に一対の車輪13が回転可能に設けられている。車輪13は、カメラヘッド12に対して自由回転可能であり、かつ煙突1の内壁に沿って転動可能である。
車輪13の車軸15は、カメラヘッド12の先端部12dと基端部12bを結ぶ軸線方向に対して直交している。詳しくは、車軸15は、カメラヘッド12の中間部と直交(交差)している。カメラヘッド12の中間部の前面部には、車軸受け12cが設けられている。車軸受け12cに車軸15の中央部が回転可能に支持されている。車軸15の両端部に車輪13が設けられている。
【0020】
図4に示すように、カメラヘッド12の先端部12dから基端部12bまでの長さL
12は、各車輪13の外直径D
13より短い(L
12<D
13)。より好ましくは、カメラヘッド12の車軸受け12cから先端部12dまでの先端側長さL
12d及び車軸受け12cから基端部12bまでの基端側長さL
12bは、それぞれ車輪13の半径(D
13/2)より小さい(L
12d<(D
13/2)、L
12b<(D
13/2))。
【0021】
図7に示すように、各車輪13の外直径D
13と一対の車輪13どうしの距離(輪距)L
13との比は、好ましくはD
13:L
13=1:0.75~1:1.5であり、より好ましくはD
13:L
13=1:0.9~1:1.1である。一層好ましくはD
13:L
13≒1:1である。
【0022】
図1に示すように、煙突内点検装置10の吊り補助手段20は、垂下材21と、水平棒材22(上側出隅受け部)と、下側受け吊材23と、下側出隅受け部30を含む。
垂下材21は、例えば円柱状の鋼製棒材によって構成されている。
図6に示すように、垂下材21は、上側の鉛直部2における左右両側(幅方向の両側)にそれぞれ2本ずつ平行に配置されている。なお、左右の各垂下材21の数は2本に限らず、1本でもよく、3本以上でもよい。
図1に示すように、各垂下材21は、架台40から上側鉛直部2内に鉛直に垂下されている。垂下材21の上端部が、架台40に直接に連結されて吊支持されていてもよく、架台40からワイヤロープなどの吊り材が吊り下げられ、該吊り材に垂下材21の上端部が連結されていてもよい。
図2~
図3に示すように、垂下材21は、架台40に沿って前後(
図2において左右)へ水平スライド可能である。
【0023】
図6に示すように、左右の垂下材21の下端部間に水平棒材22が水平に架け渡されている。水平棒材22は、円柱状の鋼製棒材によって構成されている。水平棒材22の両端部が、それぞれベースブラケット24を介して、対応する垂下材21の下端部に連結されて支持されている。好ましくは、水平棒材22は、自軸まわりに回転自在になっている。
【0024】
ベースブラケット24の前側面(
図6において右裏面)には、上側出隅当て板25が設けられている。上側出隅当て板25は、互いに連なる2つの当て板部25a,25bを有し、「く」字状に屈曲された板状に形成されている。当て板部25aは、鉛直をなしてベースブラケット24の前側面(
図6において右裏面)に当接されて固定されている。当て板部25bは、当て板部25aの下端から鈍角をなして前方(
図6において右奥)かつ下方へ斜めに突出されている。当て板部25a,25bどうしの角度すなわち上側出隅当て板25の屈曲角度は、上側出隅コーナー部3cの角度と一致するように調整されている。
なお、上側出隅当て板25の屈曲角度が任意に調整可能かつ調整後の角度に保持可能であってもよい。
【0025】
図6に示すように、左右の各垂下材21に沿って一対の下側受け吊材23が配置されている。各下側受け吊材23は、ワイヤロープによって構成されている。下側受け吊材23は、架台40から垂下されて、対応する垂下材21の外側を垂下材21と並行に延びている。さらに、下側受け吊材23は、ベースブラケット24のガイド孔24gに通され、垂下材21より下方へ延びている。
なお、下側受け吊材23は、対応する垂下材21の内部に挿通されていてもよい。
【0026】
図10に示すように、一対の下側受け吊材23によって下側出隅受け部30が吊支持されている。下側出隅受け部30は、一対の下側出隅当て板31と、3つ(複数)の連結ロッド32,33,34を含む。各下側出隅当て板31は、鈍角をなすように連結された2つの当て板部31a,31bを有し、「く」字状に屈曲された板状に形成されている。当て板部31a,31bどうしの角度すなわち下側出隅当て板31の屈曲角度は、下側出隅コーナー部3dの角度と一致するように調整されている。
なお、下側出隅当て板31の屈曲角度が任意に調整可能かつ調整後の角度に保持可能であってもよい。
【0027】
一対の下側出隅当て板31は、車輪13どうしの距離L13と対応する距離だけ離れている。好ましくは、左側の下側出隅当て板31の幅方向の中央部と、右側の下側出隅当て板31の幅方向の中央部との距離が、車輪13どうしの距離L13とほぼ一致している。
【0028】
図10に示すように、これら下側出隅当て板31に連結ロッド32,33,34が水平に架け渡されている。連結ロッド32,33,34を介して一対の下側出隅当て板31どうしが連結されている。各連結ロッド32,33,34は、細長い円形断面の鋼製棒材によって構成されている。上側の連結ロッド32の両端部は、第1当て板部31aの先端部(当て板部32bとは反対側の端部)に連結されている。中央の連結ロッド33の両端部は、当て板部31a,31bどうしの連結部すなわち下側出隅当て板31の屈曲部31cに連結されている。下側の連結ロッド34の両端部は、第2当て板部31bの先端部(当て板部32aとは反対側の端部)に連結されている。
【0029】
これら連結ロッド32~34のうち少なくとも中央の連結ロッド33は、自軸まわりに回転自在になっている。
図10に示すように、中央の連結ロッド33の両端部は、他の連結ロッド32,34よりも幅方向の外方へ延び出ている。該中央の連結ロッド33の両端部にそれぞれ対応する下側受け吊材23の下端部が繋着されている。
両側の連結ロッド32,34の両端部にはコロ35が回転可能に設けられている。
【0030】
前記の煙突内点検装置10を用いて、次のようにして、煙突1内の点検が行われる。
図1に示すように、まず、煙突1の上端部のまわりに架台40を組む。該架台40に吊り補助手段20を吊支持させる。
例えば、上側鉛直部2の後方(
図1において左側)の鉛直壁面2bに沿って垂下材21及び水平棒材22を吊り下げる。更に、垂下材21より下方に下側出隅受け部30を吊り下げる。
【0031】
垂下材21の下端部及び水平棒材22を、斜行部3の上端部付近に配置されるように高さ調整する。これによって、下側出隅受け部30のコロ35を斜め底面3bに着地させる。
さらに、下側受け吊材23を繰り出す。これによって、コロ35が斜め底面3b上を転動しながら、下側出隅受け部30が斜め底面3bに沿って下降される。コロ35を設けることによって、下側出隅当て板31が斜め底面3bと摺擦されるのを回避できる。
そして、
図2に示すように、下側出隅受け部30を下側出隅コーナー部3dに位置させ、下側出隅当て板31の屈曲部31cを下側出隅コーナー部3dに被せる。これによって、連結ロッド33が、下側出隅コーナー部3dと近接かつ平行に配置される(
図10参照)。第1当て板部31aは斜め底面3bに宛がわれ、第2当て板部31bは鉛直壁面4bに宛がわれる。
【0032】
次いで、
図2~
図3に示すように、垂下材21を、架台40に沿って前方(
図2において右側)へスライドさせる。垂下材21と一緒に水平棒材22も前方へ移行される。
そして、
図3に示すように、垂下材21を鉛直壁面2aに添わせるとともに、垂下材21の下端部がちょうど上側出隅コーナー部3cの高さに配置されるように高さ調整して、第1当て板部25aを鉛直壁面2aに宛がい、第2当て板部25bを斜め天井3aに宛がう(
図6参照)。これによって、水平棒材22が、上側出隅コーナー部3cと近接かつ平行に配置される。
このようにして、吊り補助手段20が煙突1内にセットされる。
【0033】
続いて、
図4に示すように、架台40における煙突1の上端開口の直上に滑車44を設け、吊ケーブル14を滑車44に掛け回し、該吊ケーブル14の先端の点検ユニット11を煙突1内に吊り降ろす。
そして、
図4の実線に示すように、カメラヘッド12によって煙突1の内壁を上側鉛直部2から順次撮影し点検する。
好ましくは、滑車44を前後(
図4において左右)に位置調整することによって、点検ユニット11を上側鉛直部2の後方の鉛直壁面2bに寄せて、車輪13を鉛直壁面2bに接触させる。これによって、車輪13が鉛直壁面2b上を転動される。
【0034】
図4の二点鎖線にて示すように、やがて点検ユニット11が斜行部3に達し、車輪13が斜め底面3bに着地される。車輪12の直径はカメラヘッド12の長さより大きく(L
12<D
13)、更に車輪13の半径がカメラヘッド12の先端側長さL
12dより大きいから(L
12d<(D
13/2)、カメラヘッド12が斜め底面3bにぶつかることはない。これによって、斜行部3への到達時におけるカメラヘッド12の損傷を回避でき、かつ斜め底面3bを構成する断熱材の損傷を回避できる。
【0035】
図5に示すように、さらに、吊ケーブル14を繰り出すことで、車輪13が斜め底面3bに沿って転動される。したがって、点検ユニット11を斜め底面3bに沿って下方へ走行させながら、カメラヘッド12によって斜行部3の内壁を撮影して点検できる。カメラヘッド12は、斜め底面3bと摺擦されることがなく、斜行部3内を円滑に移動できる。したがって、斜行部3内の移動時におけるカメラヘッド12の損傷を防止でき、かつ斜め底面3bを構成する断熱材の損傷を防止できる。
点検ユニット11における車輪径D
13と輪距L
13との比を前記所定範囲内に設定しておくことによって、点検ユニット11が横倒しになるのを防止でき、斜行部3内において点検ユニット11を安定的に走行させることができる。
【0036】
図5の二点鎖線に示すように、点検ユニット11が斜行部3内の下側部へ移行されるのに伴い、吊ケーブル14が、滑車44から点検ユニット11へ向かって前方(
図5において右)へ傾く。
図5の実線及び
図6に示すように、やがて、吊ケーブル14の中間部が、上側出隅コーナー部3cに達する。該上側出隅コーナー部3cと吊ケーブル14との間には、水平棒材22が介在されている。したがって、吊ケーブル14の中間部は、上側出隅コーナー部3cと直接あたるのではなく、水平棒材22に当たって屈曲される。これによって、吊ケーブル14が、上側出隅コーナー部3cとの摺擦によって損傷されるのを防止できる。ひいては、吊ケーブル14が破断してカメラヘッド12が落下するのを確実に防止できる。また、上側出隅コーナー部3cを構成する断熱材が、吊ケーブル14の摺擦によって損傷されるのを防止できる。
【0037】
図7に示すように、その後、点検ユニット11は、下側出隅コーナー部3dに達する。
図8に示すように、このとき、一対の車輪13が、それぞれ下側出隅当て板31に乗り上げて転動しながら、第1当て板部31a、屈曲部31c、第2当て板部31bの順に通過する。したがって、車輪13が連結ロッド32,33,34に引っ掛かるのを防止できる。
【0038】
点検ユニット11における車輪径D13と輪距L13との比を前記所定範囲内に設定しておくことによって、下側出隅コーナー部3dにおいて点検ユニット11が横倒しになったり横向きになったりするのを防止できる。この結果、点検ユニット11が下側出隅コーナー部3dを安定的かつ円滑に乗り越えることができる。
ちなみに、車輪径D13に対して輪離L13が小さ過ぎると、点検ユニット11がローリング(横倒し)を起こしやすい。車輪径D13に対して輪離L13が大き過ぎると、点検ユニット11が斜行部の出隅コーナー部を乗り越える際にヨーイング(横向き回転)を起こしやすい。
また、車輪径をカメラヘッド12の長さより大きくしておくことで(L12<D13)、カメラヘッド12が下側出隅コーナー部3dにぶつかることがない。したがって、下側出隅コーナー部3dの通過時におけるカメラヘッド12の損傷を防止でき、かつ下側出隅コーナー部3dを構成する断熱材の損傷を防止できる。
【0039】
図9に示すように、下側出隅コーナー部3dを通過後の点検ユニット11は、下側鉛直部4内に導入され、カメラヘッド12によって下側鉛直部4の内壁が撮影されて点検される。
図9及び
図10に示すように、点検ユニット11が下側鉛直部4に移行されると、吊ケーブル14が下側出隅コーナー部3dに近接される。下側出隅コーナー部3dと吊ケーブル14との間には、下側出隅受け部30の特に連結ロッド33が介在されている。したがって、吊ケーブル14は、下側出隅コーナー部3dと直接あたるのではなく、連結ロッド33に当たって屈曲される。これによって、吊ケーブル14が、下側出隅コーナー部3dとの摺擦によって損傷されるのを防止できる。ひいては、吊ケーブル14が破断してカメラヘッド12が落下するのを確実に防止できる。また、下側出隅コーナー部3dを構成する断熱材が、吊ケーブル14の摺擦によって損傷されるのを防止できる。
このようにして、煙突1内3において点検ユニット11を円滑に吊り降ろしながら、カメラヘッド12によって煙突1内を撮影して点検することができる。
【0040】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、吊り補助手段20を省略してもよい。すなわち、煙突内点検装置10は少なくともカメラヘッド12及び車輪13を含む点検ユニット11を備えていればよい。
車輪13は少なくとも一対(2つ)有ればよく、3つでも4つ(2対)以上有ってもよい。
点検対象は、斜行部を有する煙突であればよく、高層ビルの煙突に限らず、工場などの煙突であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば高層ビルの煙突に内部の点検に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
B 建物
1 煙突
2 上側の鉛直部
2a 鉛直壁面
3 斜行部
3a 斜め天井
3b 斜め底面
3c 上側出隅コーナー部
3d 下側出隅コーナー部
4 下側の鉛直部
4b 鉛直壁面
10 煙突内点検装置
11 点検ユニット
12 カメラヘッド
13 車輪
14 吊ケーブル
15 車軸
20 吊り補助手段
21 垂下材
22 水平棒材(上側出隅受け部)
23 下側受け吊材
25 上側出隅当て板
30 下側出隅受け部
31 下側出隅当て板
33 連結ロッド
40 架台