(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240802BHJP
G01N 21/91 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/91 A
G01N21/91 B
(21)【出願番号】P 2020173373
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐太
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/060777(WO,A2)
【文献】特開2020-106493(JP,A)
【文献】特開2019-105785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
F21H 1/00 - F21V 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射面を紫外線により照射する紫外線LEDと、該紫外線LEDから放射される光線を集光する集光レンズと、該集光レンズを通過した入射光線をリニアフレネルレンズに入射させ、前記被照射面上の任意の一方向にのみさらに集光する前記リニアフレネルレンズとを備える紫外線照射装置であって、
前記紫外線LED光源の中心を原点、前記被照射面上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、そのX軸方向に直交する前記被照射面上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LEDの光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記リニアフレネルレンズは、X軸方向にのみ集光するレンズであり、Z軸負方向に前記紫外線LEDと前記被照射面との間に位置し、
前記被照射面は、Z軸負方向に前記リニアフレネルレンズから所定の距離離れて位置する紫外線照射装置において、
前記リニアフレネルレンズは、X軸及びZ軸の存在するXZ平面上において、Z軸との成す角が25度であり、原点を通る、2つの仮想直線のいずれよりも内側に設けられ、
または、
前記リニアフレネルレンズは、XZ平面上において原点を通る仮想直線であって該仮想直線と
Z軸との成す角が25度の仮想直線と、30度の仮想直線が、Z軸負方向において、X軸正方向とX軸負方向に1組ずつあり、この2組の仮想直線のそれぞれの、前記25度の仮想直線と前記30度の仮想直線の間には、Y方向に長い縦長状のスリットを備えており、
更に前記紫外線照射装置は反射板を備え、また前記反射板は、XZ平面上において原点を通り、
Z軸との成す角が30度である2つの仮想直線の前記リニアフレネルレンズにおいて内側に入射する前記入射光線のうち、最も外側の2つの光線が前記リニアフレネルレンズから反射した反射光線を、その周辺の光線とともに、前記リニアフレネルレンズの外側か、または前記縦長
状のスリットを通過するように、再反射可能に設けられることを特徴とする、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置は、前記紫外線LEDと前記リニアフレネルレンズとを取り囲み、前記紫外線LEDから発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタが配置されることを特徴とする、
請求項1に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面状態を解析する紫外線探傷装置に関するものであり、より詳細には蛍光磁粉探傷や蛍光浸透探傷等の蛍光体の励起に用いる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材等の被検査物の表面の探傷検査としては、非破壊検査方法の一種である、磁粉探傷試験や浸透探傷試験が知られている。磁粉探傷試験では、被検査物の表面に磁粉または磁粉を含有する磁粉溶液を適用するとともに、被検査物に磁場を印加する等して被検査物を磁化する。被検査物の表面のクラック等の欠陥には磁束が集中するため、この磁束に磁粉が引き寄せられて磁粉による指示模様が形成される。そして、この磁粉指示模様を観測することで欠陥を検査する。磁粉探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、磁粉に蛍光体を含有した蛍光磁粉を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0003】
一方で、浸透探傷試験では、まず、浸透液を被検査物の表面に適用して表面のクラック等の欠陥にこの浸透液を浸透させる。次に、表面に付着している余剰浸透液を除去し、現像剤粉末を表面に塗布して欠陥に浸透している浸透液を毛細管現象により表面に吸い出す。そして、この吸い上げられた浸透液による浸透指示模様を観察することで欠陥を検査する。浸透探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、蛍光体を含有する蛍光浸透液を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0004】
磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合には、被検査物に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させる必要がある。紫外線を照射する紫外線照射装置としては、光源に紫外線LED(Light Emitting Diode)を用いるものが知られている。
【0005】
LEDを集光レンズで集光し、更にリニアフレネルレンズで再び集光する場合、LEDで集光した光がリニアフレネルレンズに入射したときに反射が生じてしまう。このため、このような方法で照度を確保する場合、余分なエネルギーを確保しておかなければならないという問題が生じていた。
【0006】
そこで、特許文献1では、反射板を用いて拡散する光を無駄なく使用する技術が開示されている。詳細には、特許文献1では、LEDの両側および上部にレンズを有するレンズ一体型チップ状LEDを両側にレンズが取り付いている方向に複数個直線上に配置し、この直線上に配置した前記LEDブロックを複数個並列に配置し、かつ直線上に配置したLEDブロック間にレンズ一体型チップ状LEDに対して90度以上の角度を有する光反射板を取り付けている技術が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載された技術は、無駄な光を反射板で反射することによりエネルギー効率を改善することはできるが、一定程度の照度を確保するという非破壊検査における要請にこたえるため、集光レンズを用い、更にリニアフレネルレンズを用いた場合にそのリニアフレネルレンズから反射する光に対し、適切に再反射をして被照射面に照射をし、被照射面において均一で強力な配光を得ることは実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-73469号公報
【文献】特開2014-194914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、紫外線LEDによって、紫外線が照射される被照射面において、複数レンズを用いた場合に2つめのレンズにおいて反射が起こった場合でもこれを適切に再反射することによりエネルギー効率を改善し、その結果より少ないエネルギーで均一で強力な配光を実現することが課題となっている。
【0010】
そこで、紫外線LEDによって紫外線が照射される被照射面のにおいて、少ないLEDで高い紫外線放射照度かつ均一な紫外線放射照度分布が得られる紫外線照射装置の開発が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面状態を解析する紫外線探傷装置において、より少ないLEDや、エネルギーで、被照射面の照射領域における高い紫外線放射照度を実現でき、紫外線探傷検査の精度を向上させる紫外線照射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の紫外線照射装置では、被照射面を紫外線により照射する紫外線LEDと、該紫外線LEDから放射される光線を集光する集光レンズと、該集光レンズを通過した入射光線をリニアフレネルレンズに入射させ、前記被照射面上の任意の一方向にのみさらに集光する前記リニアフレネルレンズとを備える紫外線照射装置であって、
前記紫外線LED光源の中心を原点、前記被照射面上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、そのX軸方向に直交する前記被照射面上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LEDの光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記リニアフレネルレンズは、X軸方向にのみ集光するレンズであり、Z軸負方向に前記紫外線LEDと前記被照射面との間に位置し、
前記被照射面は、Z軸負方向に前記リニアフレネルレンズから所定の距離離れて位置する紫外線照射装置において、
前記リニアフレネルレンズは、X軸及びZ軸の存在するXZ平面上において、Z軸との成す角が25度であり、原点を通る、2つの仮想直線のいずれよりも内側に設けられ、
または、
前記リニアフレネルレンズは、XZ平面上において原点を通る仮想直線であって該仮想直線とZ軸との成す角が25度の仮想直線と、30度の仮想直線が、Z軸負方向において、X軸正方向とX軸負方向に1組ずつあり、この2組の仮想直線のそれぞれの、前記25度の仮想直線と前記30度の仮想直線の間には、Y方向に長い縦長状のスリットを備えており、
更に前記紫外線照射装置は反射板を備え、また前記反射板は、XZ平面上において原点を通り、Z軸との成す角が30度である2つの仮想直線の前記リニアフレネルレンズにおいて内側に入射する前記入射光線のうち、最も外側の2つの光線が前記リニアフレネルレンズから反射した反射光線を、その周辺の光線とともに、前記リニアフレネルレンズの外側か、または前記縦長状のスリットを通過するように、再反射可能に設けられることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の紫外線照射装置では、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LEDと前記リニアフレネルレンズとを取り囲み、前記紫外線LEDから発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタが配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紫外線照射装置は、被照射面を紫外線により照射する紫外線LEDと、該紫外線LEDから放射される光線を集光する集光レンズと、該集光レンズを通過した入射光線をリニアフレネルレンズに入射させ、前記被照射面上の任意の一方向にのみさらに集光する前記リニアフレネルレンズとを備える紫外線照射装置であって、
前記紫外線LED光源の中心を原点、前記被照射面上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、そのX軸方向に直交する前記被照射面上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LEDの光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記リニアフレネルレンズは、X軸方向にのみ集光するレンズであり、Z軸負方向に前記紫外線LEDと前記被照射面との間に位置し、
前記被照射面は、Z軸負方向に前記リニアフレネルレンズから所定の距離離れて位置する紫外線照射装置において、
前記リニアフレネルレンズは、X軸及びZ軸の存在するXZ平面上において、Z軸との成す角が25度であり、原点を通る、2つの仮想直線のいずれよりも内側に設けられ、
または、
前記リニアフレネルレンズは、XZ平面上において原点を通る仮想直線であって該仮想直線とZ軸との成す角が25度の仮想直線と、30度の仮想直線が、Z軸負方向において、X軸正方向とX軸負方向に1組ずつあり、この2組の仮想直線のそれぞれの、前記25度の仮想直線と前記30度の仮想直線の間には、Y方向に長い縦長状のスリットを備えており、
更に前記紫外線照射装置は反射板を備え、また前記反射板は、XZ平面上において原点を通り、Z軸との成す角が30度である2つの仮想直線の前記リニアフレネルレンズにおいて内側に入射する前記入射光線のうち、最も外側の2つの光線が前記リニアフレネルレンズから反射した反射光線を、その周辺の光線とともに、前記リニアフレネルレンズの外側か、または前記縦長状のスリットを通過するように、再反射可能に設けられることを特徴とするので、紫外線LEDから出射した光線が集光レンズを通過し入射光線としてリニアフレネルレンズに入射し反射した光のうち半値角の光線として強度が比較的強く保持されている角度の、リニアフレネルレンズに入射した光線の反射光につき、反射板により再反射をし、さらにその光がレンズを介することなく直接被照射面を照射することとなるので、よりエネルギー効率を高めながら被照射面の照射領域において高い紫外線放射照度を確保することができる。
【0015】
更に、本発明の紫外線照射装置では、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LEDと前記リニアフレネルレンズとを取り囲み、前記紫外線LEDから発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタが配置されることを特徴とするので、可視光をカットすることが可能となり、可視光が照射されてしまう場合に比べて作業環境が改善され、可視光による検査員によるキズの見落としの防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る紫外線照射装置1の概略正面図である。
【
図2】本実施形態に係る紫外線照射装置1を示す
図1の側面図である。
【
図3】
図1の紫外線LED6からリニアフレネルレンズ3にかけての部分を光線を主に説明するため拡大した説明図である。
【
図4】
図3に仮想直線11、12を用いて説明をするための説明図である。
【
図5】本発明に係る紫外線照射装置1の他の一例における紫外線LED6からリニアフレネルレンズ3にかけての部分を拡大して説明する図である。
【
図6】(X)は
図5のリニアフレネルレンズ3の上面図、(Y)はその側面図、(Z)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。
図1は本実施形態に係る紫外線照射装置1の一例が示された幅方向(X軸方向)の断面側面図であり、
図2は
図1の紫外線照射装置1の幅方向と直交する長手方向(Y軸方向)の断面側面図である。
図3は、
図1の紫外線照射装置1を
図1と同様幅方向にみた、いわゆる半値角における光線の軌跡を主に説明するための拡大図であり、
図4は同様に幅方向からみて、仮想直線を用い本発明のリニアフレネルレンズ3の大きさを示すための説明図であり、
図5は紫外線照射装置1の他の一例として、
図4とは異なる部分であるリニアフレネルレンズ3のスリット20につき仮想直線12,13,14,15を用い説明を加えた説明図である。
図6は(X)、(Y)、(Z)はそれぞれ
図5のリニアフレネルレンズ3の上面図、側面図、正面図を示す。なお本開示においてX方向とは
図1に示されるように
図1の横方向であり、X方向で正方向とは
図1の右側で+Xとして示され、負方向とは-Xとして示される。幅方向とはX方向のことであり、幅方向が示された図とはX方向が横軸にとられた図である。Y,Z方向についても同様である。なお、これらXYZ軸の原点は紫外線LED6の光源の中心Oであり、
図1~
図5に示されている。
【0018】
まず紫外線照射装置1は、磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合に、被検査物に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させるために被検査物の表面に紫外線を照射するものであり、被照射面4を紫外線により照射する紫外線LED6と、被照射面4上の任意の一方向(幅方向)に集光するリニアフレネルレンズ3とを備える。
【0019】
紫外線照射装置1は、紫外線LED6とリニアフレネルレンズ3とを取り囲み、紫外線LED6から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する図示しない筐体を更に備えてもよい。紫外線出射口には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタを配置することが好ましい。この紫外線透過フィルタは、紫外線LED6から発せられる僅かな可視光を可視光の波長範囲である、概ね400nm~700nmの範囲でカットするものであり、被検査物から検出された欠陥がグラインダー等で切削された被検査物表面の金属光沢面を検査する際に、金属光沢面に可視光が反射して作業員が眩しくなることを防止することで検査作業を改善することができる。
【0020】
図1に示すように、リニアフレネルレンズ3は、X方向に集光するレンズであり、Z軸負方向に、紫外線LED6と被照射面4との間に位置し、被照射面4は、Z軸負方向にリニアフレネルレンズ3から所定の距離離れて位置するものとする。
【0021】
リニアフレネルレンズ3は、蒲鉾形状のレンズ(例えばシリンドリカルレンズ)の表面を複数の直線で区分けし、それら区分けされた各区間(フレネル面)の高さを概ね一様にするために、隣り合う区間の間に段差がつけられたレンズにおいて、各フレネル面のフレネル角度を特別に調整して形成したものである。また、リニアフレネルレンズ3には、フレネル面および段差を付けるためのライズ面が交互に形成されている。なお、上記フレネル角度を調整する構成については後記で詳細に説明する。
【0022】
このようなフレネル面およびライズ面を形成するために、リニアフレネルレンズ3の一方の面には、複数本の溝が、直線状に互いに平行に(かつ、Y軸方向に平行に)形成される。そして、各溝は、1つのフレネル面と1つのライズ面の組によって構成されている。
【0023】
このフレネル面のそれぞれは、非球面レンズの形状に一致する面になっており、ライズ面のそれぞれは、リニアフレネルレンズ3の上面である平滑面24に対してにほぼ垂直に切り立った略平面になっている。
【0024】
また、リニアフレネルレンズ3、70は、中央面を対称面として面対称な形状となっている。中央面は、リニアフレネルレンズ3、70の上面に対して垂直かつ溝と平行な面であり、X方向におけるリニアフレネルレンズ3、70の中央に位置している。
【0025】
リニアフレネルレンズ3、70が、中央面を対称面として面対称となっているので、中央面から一方側に配置される各溝の向きは、中央面から他方側に配置された各溝の向きとは逆になっている。より具体的には、
図6に示すように、一方側では、右側(X軸正の方向)に向かって下がるように各フレネル面が傾斜しているが、他方側では、左側(X軸負の方向)に向かって下がるよう各フレネル面が傾斜している。
【0026】
図1では、更に反射板5を備えた紫外線照射装置1が示される。Oの位置に紫外線LED6があり、そのZ軸負方向、つまり鉛直方向にリニアフレネルレンズ3があり、Oの幅方向には2つの反射板5がOを取り囲むように内方に、より詳細にはリニアフレネルレンズ3の方向と略同方向に向けて反射可能なように備えられている。
【0027】
図1を用いてより詳細に紫外線照射装置1を説明する。まずOの紫外線LED6を光源として光線が出射され、
図3に示されるような集光レンズ2によって集光される。この集光された光線を入射光線10とする。この入射光線10は、
図1、
図3に示されるように、リニアフレネルレンズ3にて反射し、その一部が反射板5に入射する。この反射板5は、後述する半値角付近の入射光線10がリニアフレネルレンズ3によって反射されたとき、その反射した光を反射光線とすると、反射光線を再反射できる位置にある。さらに反射板5は、再反射した光線がリニアフレネルレンズ3の外側を通り、リニアフレネルレンズ3に入射した入射光線10のうちこれを通過してリニアフレネルレンズ3により集光された光線が被照射面4を照射する部分と、被照射面4上の照射領域とが完全に、あるいはほぼ重なるような照射領域を、再反射した光線で被照射面4をリニアフレネルレンズ3を介さず直接照射可能な位置に設けられる。これによりリニアフレネルレンズ3による反射板5により再反射された光線の再度の反射を避けることができ、エネルギー効率を改善することができる。
【0028】
図2では、
図1のY方向を示した側面図が示される。反射板5がリニアフレネルレンズ3の上部に点線で示される。また、反射範囲50はリニアフレネルレンズ3に入射する、集光レンズ2を通過した光の、紫外線LED6と集光レンズ2の半値角を40度とした場合のリニアフレネルレンズ3上の照射範囲である。このとき、反射範囲50の長さよりも、反射板5のほうが幅が広く、Y方向で、反射板5の幅の範囲にこの反射範囲50が収まっていることが好ましい。これにより、リニアフレネルレンズ3から反射した光を効果的に再反射することができる。反射範囲50のY方向の長さよりも反射板5のY方向の長さが長く、Y方向で反射範囲50が反射板5の長さに収まっていることで、効果的に入射光線10の再反射を行うことができる。なお、表1には半値角付近におけるリニアフレネルレンズ3による反射率、つまりエネルギーロスが示されている。半値角付近はリニアフレネルレンズ3における入射角がおおむね50度付近ということができるが、この場合、表1を参照すると、約11.266パーセントが反射され、従来の構成であれば無駄なエネルギーとなっていた。本実施形態ではこれを活用する構成が開示されている。
【0029】
【0030】
次に
図3を示しながら半値角における光線の軌跡についてより詳細に説明する。
図3はXZ平面における断面図である。リニアフレネルレンズ3のフレネル面やライズ面については省略している。まず、紫外線LED6から出射した光が集光レンズ2に集光され、その後入射光線10としてリニアフレネルレンズ3の平滑面24に入射する。この入射光線10のうち、集光レンズの特性として照射される光線の、相対放射強度が半分以下になる角度以上の角度の光線は、急激に紫外線強度が低下するという特性がある。このため、半値角までの紫外線を活用することが一般的に行われている。この半値角における光線を示す、光源の中心である原点Oからのびる、Z軸に対して角度αのついた仮想の直線が仮想直線41、42である。そして、リニアフレネルレンズ3の平滑面24において半値角の光線を示す、仮想直線41、42の範囲内となる光である
図3において入射光線10として示される光線が、反射光線11としてリニアフレネルレンズ3に一部反射される。このときリニアフレネルレンズ3に入射した光線のうち、仮想直線41、42の範囲内で最も外側の光線が反射した光線の軌跡を示す直線上に、反射板5があることが好ましい。これにより、半値角付近の比較的強度がつよく、なおかつリニアフレネルレンズ3の外側に再反射した光を通しやすいような光線を反射板5によって的確にとらえることができる。
また、角度αは、一般に紫外線LEDと凸レンズを用いた場合、半値角は40度前後である。つまり、このような指向特性を持つ場合には、角度αは20度ということになる。
そして、反射光線11が、さらに反射板5によって再反射し、入射光線10のうち仮想直線41、42の範囲内で最も外側の光線の近傍の光線、具体的にはXZ平面上で原点Oから鉛直方向を0度とした場合に、18度から21度近辺においてリニアフレネルレンズ3に反射された光であり、紫外線LED6から出射した光線についても、反射板5にて再反射しており、これら光線を範囲で示したものが再反射ビーム60であり、線61、62の間として示される範囲である。
【0031】
次に、
図3とともに
図4を用いてリニアフレネルレンズ3の位置する範囲について説明する。
図4は
図3と同様の視点であるX軸とZ軸の存在するXZ平面上において原点Oを通り、Z軸とのなす角βが25度である仮想直線12、13を用いて、この仮想直線12、13の内側にリニアフレネルレンズ3が収まっていることを示す図である。
図3に示す再反射光線43、44は、半値角における入射光線10の反射板5にて再反射した際の光線を表したものである。
図4に示すように、リニアフレネルレンズ70を略水平に設置するとき、XZ平面上で原点Oを通り、Z軸とのなす角である角βが25度であるような仮想直線を仮想直線12、13としている。この仮想直線12、13の間にリニアフレネルレンズ3が収まり、従って仮想直線12、13の外側にはリニアフレネルレンズ3がない構成となっているので、再反射光線43の近傍の光線である、線61、62で囲まれた光線の束である再反射ビーム60が、リニアフレネルレンズ3の外側を通って
図4では図示していない被照射面3へと直接再反射光を照射することができるため、好適である。再反射光線44についても同様である。詳細には図示していないが
図4の左半分についても同様である。
【0032】
図5を用いて本発明の実施形態の他の一例として、紫外線照射装置1に
図6のようなリニアフレネルレンズ70を用いた場合を示す。
図5のリニアフレネルレンズ70は、スリット20を設けている。その他、反射板5の位置などは
図4の場合と同様である。スリット20は、リニアフレネルレンズ70を略水平に設置するとき、XZ平面上で原点Oを通り、Z軸とのなす角である角βが25度であるような仮想直線12、13と、同じくXZ平面上で原点Oを通りZ軸とのなす角である角Θが30度であるような仮想直線14、15に囲まれ、リニアフレネルレンズ3の平滑面24上の領域である領域30の幅よりも広い幅を有している。
図6を参照すると、この領域30より広い幅を有するのは短辺21である。しかし必ずしも
図6のような矩形状のスリット20である必要はなく、楕円形状などでも、幅が確保されていれば形は異なっていてもよい。また、スリット20は長辺22を有しており、この長辺がY方向に伸びている。スリットの形状が矩形状でない場合でも、Y方向に長いスリットであることに変わりはない。また、
図6においてリニアフレネルレンズ70は平滑面24及びフレネルを有する面23を備えている。フレネルを有する面23が下方向、平滑面24を紫外線LED6のある方向である上方向に向け、
図1等に示されるように、紫外線照射装置1においては略水平に設ける。これは、スリット20の説明以外はリニアフレネルレンズ3においても同様である。
【0033】
図5に示すこのスリット20においても、
図4と同様に、リニアフレネルレンズ70から反射した光線で、半値角のものを反射した光線が、反射板5により再反射される。再反射された光線は、
図4と同様に同様に反射され、この
図4において再反射ビーム60にあたる部分が、スリット20を通過し、また再反射ビーム60は、リニアフレネルレンズ70のスリット20の内側の領域に紫外線LED6から入射し、リニアフレネルレンズ70を通過した光線により被照射面4において照射されている照射領域と、その照射範囲が完全に、あるいはほぼ重なるような位置に設けられ、また再反射ビーム60はリニアフレネルレンズ70を介さず被照射面4を直接照射するよう構成されている。
【0034】
図1にもどり、被照射面4の寸法等につき説明する。被照射面4の寸法は限定されるものではないが、例えば、リニアフレネルレンズ3、70から被照射面4までの距離が600mmで、被照射面の
図1における幅方向の照射幅が50mm~200mmの照射範囲を照射する場合には、幅方向に均一に照射する観点から、X方向の中心(ゼロ点)付近のフレネル角度は、4度~37度で構成されるのが好ましい。また、幅方向の両端部におけるフレネル角度は、幅方向に均一に照射する観点から、22度~52度で構成されるのが好ましい。
【0035】
ここで、本発明のリニアフレネルレンズ3、70の典型的な寸法及び材質について説明する。リニアフレネルレンズ3における各溝のX方向の一辺の長さは、約0.3mmである。各フレネル面およびライズ面のサイズは、フレネル面のX方向の長さが約0.25mm~0.40mmであり、ライズ面のZ軸方向の高さが約0.05mm~0.15mmである。この場合、リニアフレネルレンズ3にはフレネル面およびライズ面がそれぞれ約162個形成される。なお、これらの寸法は限定されるものではなく、均一な紫外線放射照度分布を得る観点から適宜設計することができる。
【0036】
リニアフレネルレンズ3、70の材質としては、従来用いられる透明な樹脂を用いることができ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、シリコン樹脂等が用いられ、これらの樹脂と、フレネルレンズの逆形状を有する金型を用いて、プレス成形法、重合成形法等の方法により成形すればよい。
【実施例】
【0037】
実施例1の紫外線照射装置1に用いられるリニアフレネルレンズ3は、アクリル樹脂製であり、改良型リニアフレネルレンズから600mmの離れた距離に位置する被照射面のX方向の照射幅200mmの照射範囲における紫外線放射照度の均一化を目的として、面長50mm、厚さt=0.3mm、ピッチ=0.3mmであり、フレネル角度が14.047度~47.192度で連続的に変化するように構成し、加工によって作製した。なお、紫外線LED6は、ピーク波長が365nmであるものが用いられた。
<評価方法>
(紫外線放射照度分布試験)
実施例1の紫外線照射装置1を用いた場合における被照射面の紫外線放射照度分布が測定された。改良型リニアフレネルレンズから600mmの離れた距離に位置する被照射面のX軸方向の照射幅200mmの領域における紫外線放射照度分布を測定し、紫外線放射照度分布の改善度合いを測定した。改善度合いの測定方法としては、照射幅全域において、紫外線放射照度の平均値の±10パーセントの範囲に紫外線放射照度が収まっており、紫外線放射照度が均一化されている場合にその均一化されている照度を比較することとした。
【0038】
比較例では、本開示の発明と同様の構成であり、紫外線LED6、集光レンズ2を実施例1と同様の配置で備えていた。しかしリニアフレネルレンズについては本発明の特徴、すなわち仮想直線12、13の範囲内にリニアフレネルレンズが収まっている、リニアフレネルレンズにスリットが設けられている、反射板5を備える、といった特徴は有していなかった。
【0039】
この紫外線放射照度測定試験により照度を比較した結果、以下の結果が得られた。すなわち、比較例による紫外線放射照度の結果を100%とすると、実施例では被照射面4においておおむね105~115%前後の紫外線放射照度が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び紫外線照射装置を備える紫外線探傷装置に好適に利用することができる。しかしながら、本開示は、上述された実施形態、及び実施例に限定されるものではない。本開示の紫外線照射装置は、紫外線を利用する、コンタミネーションチェック、漏洩検査、脱脂洗浄の確認等のいるあらゆる試験や検査に有用である。また、本開示の紫外線探傷装置は、蛍光磁粉探傷装置に限定されるものではなく、蛍光浸透液を用いて被検査物の表面の欠陥を探傷する浸透探傷装置であっても良く、紫外線を利用して欠陥を探傷するあらゆる紫外線探傷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 紫外線照射装置
2 集光レンズ
3、70 リニアフレネルレンズ
4 被照射面
5 反射板
6 紫外線LED
10 入射光線
11 反射光線
12、13、14、15 仮想直線
20 スリット
21 短辺
22 長辺
23 フレネルを有する面
24 平滑面
30 領域
41、42 仮想直線
43、44 再反射光線
60 再反射ビーム