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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E01C19/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020186999
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076577
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞下 哉葵
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴尚
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157407(JP,A)
【文献】特開2006-256592(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004721(JP,U)
【文献】特開2019-170271(JP,A)
【文献】特開2020-133350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0019192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体の前側及び後側にそれぞれ回転可能に支持された前輪及び後輪と、
前記機体の前方の障害物を検出するように構成された第1検出装置と、
前記機体の後方の障害物を検出するように構成された第2検出装置と、
報知装置と、
前記第1検出装置及び前記第2検出装置によって検出された障害物情報に基づいて前記報知装置を制御する制御装置と、
前記機体に取付けられ、前記前輪の前方に配設された第1巻込み防止装置と、
前記機体に取付けられ、前記後輪の後方に配設された第2巻込み防止装置と、を備える転圧機械において、
前記第1巻込み防止装置及び前記第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方は、使用位置と非使用位置との間で上下方向に移動可能となるように前記機体に取付けられており、前記使用位置は、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲外の位置にあり、前記非使用位置は、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲内の位置にある、ことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記第1巻込み防止装置及び前記第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方には、作業者がそれらを前記使用位置と前記非使用位置との間で移動操作するための取っ手が設けられており、
前記取っ手は、前記第1巻込み防止装置及び前記第2巻込み防止装置が前記使用位置にある状態において、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲外に位置し、且つ、前記作業者による移動操作の際に前記作業者が前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲内に位置するように、前記第1巻込み防止装置及び前記第2巻込み防止装置に取付けられている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に関し、特に巻込み防止装置を備える転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧機械には、周辺で作業する作業者が車輪に巻込まれることを防止する目的で、巻込み防止装置を備えたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の巻込み防止装置は、上端が前輪支持部の前部に固定された金属製の柵である固定部と、上端が当該固定部の下端に例えばヒンジを介して取付けられ且つ下端が後方に向かって回動可能な金属製の柵である可動部とを含んで構成されている。
【0004】
そして、特許文献1に記載の巻込み防止装置は、障害物が可動部に接触し、可動部の下端が後方に向かって回動した場合に、前輪に障害物が巻き込まれる直前であることを検出するように構成されている。さらに、当該巻込み防止装置は、前輪に障害物が巻き込まれる直前であることを検出した場合に、転圧機械のオペレータや当該転圧機械の周辺で作業をしている作業者に対し、所定の警告等を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-157407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、転圧機械は例えば段差の大きい路面の締固め作業を行うことがあり、当該締固め作業中に、巻込み防止装置の可動部が段差に接触するおそれがあった。また、転圧機械は例えば作業現場へ搬送するために輸送車両へ積み込まれることがあり、当該積み込み作業中に、巻込み防止装置の可動部が輸送車両に接触するおそれもあった。このように巻込み防止装置に本来検出したい障害物以外の接触が生じる場合、転圧機械による作業(例えば締固め作業や積み込み作業)が一時的に中断されることがある。そして、締固め作業等の一時中断を防止することを目的として、作業内容に応じて巻込み防止装置を一時的に取り外すことがあった。
【0007】
しかし、締固め作業中に巻込み防止装置を転圧機械から一時的に取り外した場合、作業内容の変更に伴い当該巻込み防止装置を再取付けする必要があり、また積み込み作業中に巻込み防止装置を転圧機械から一時的に取り外した場合には、締固め作業を開始する際に当該巻込み防止装置を再取付けする必要がある。そして、このような再取付け作業を行っている間は作業等が一時的に中断されることから、作業の進行が非効率となるおそれがあった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻込み防止装置の一時的な取り付け、取り外し作業を必要とせず、作業を効率的に進行することを可能にした転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の転圧機械は、機体と、前記機体の前側及び後側にそれぞれ回転可能に支持された前輪及び後輪と、前記機体の前方の障害物を検出するように構成された第1検出装置と、前記機体の後方の障害物を検出するように構成された第2検出装置と、報知装置と、前記第1検出装置及び前記第2検出装置によって検出された障害物情報に基づいて前記報知装置を制御する制御装置と、前記機体に取付けられ、前記前輪の前方に配設された第1巻込み防止装置と、前記機体に取付けられ、前記後輪の後方に配設された第2巻込み防止装置と、を備える転圧機械において、前記第1巻込み防止装置及び前記第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方は、使用位置と非使用位置との間で上下方向に移動可能となるように前記機体に取付けられており、前記使用位置は、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲外の位置にあり、前記非使用位置は、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲内の位置にある、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の転圧機械によれば、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方は、使用位置と非使用位置との間で上下方向に移動可能となるように前記機体に取付けられている。このため、例えば段差の大きい路面の締固め作業や輸送車両への積み込み作業など、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置が障害物に接触する可能性がある作業を行う場合であっても、当該巻込み防止装置を上側(非使用位置)に移動することで、当該巻込み防止装置の障害物への接触を回避することができる。また、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置を上下動させることで作業内容の変更に対応可能となるため、作業内容の変更に伴う当該巻込み防止装置の再取付けが不要になる。このようにして、巻込み防止装置における本来検出したい障害物以外の接触を回避することができるとともに、巻込み防止装置の再取付けによる作業等の一時中断を回避することができ、作業を効率的に進行することができる。また、本発明の転圧機械によれば、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方は、下側に位置する状態(使用位置)において、第1検出装置及び第2検出装置による検出範囲外にある。このため、当該巻込み防止装置を下側に位置させた状態で締固め作業等を行う場合であっても、巻込み防止装置は第1検出装置及び第2検出装置によって検出されることがない。よって、当該検出装置による巻込み防止装置の誤検出が回避され、ひいては作業の一時中断が回避され、作業を効率的に進行することができる。以上のようにして、巻込み防止装置への接触を抑制しつつ、作業を効率的に進行することを可能にした転圧機械を提供することができる。さらに、本発明の転圧機械によれば、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置の少なくともいずれか一方は、上側に位置する状態(非使用位置)において、第1検出装置及び前記第2検出装置による検出範囲内にある。このため、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置の非使用位置(即ち、巻込み防止機能を発揮していない状態)で転圧機械による作業を行う場合であっても、運転席にいるオペレータは、第1巻込み防止装置及び第2巻込み防止装置の作動状態を確実に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る転圧機械の概略構成を示す右側面図であり、巻込み防止装置が下側に位置する状態を示すとともに、ECUによる制御を併せて示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る転圧機械の概略構成を示す右側面図であり、巻込み防止装置が上側に位置する状態を示す図である。
図3図1に示す転圧機械の正面図である。
図4図1に示す転圧機械の背面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る巻込み防止装置の変形例を概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る巻込み防止装置の別の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る転圧機械1の概略構成を示す右側面図であり、巻込み防止装置60が下側に位置する状態(使用位置)を示すとともに、ECU40(制御装置)による制御を併せて示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る転圧機械1の概略構成を示す右側面図であり、巻込み防止装置60が上側に位置する状態(非使用位置)を示す図である。図3は、図1に示す転圧機械1の正面図である。図4は、図1に示す転圧機械1の背面図である。
【0014】
なお、説明の便宜上、転圧機械1の進行方向を基準に運転席16内の作業者から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は、転圧機械1の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は転圧機械1の左右(車幅)方向を示し、矢印「上」及び「下」は転圧機械1の上下方向を示している。
【0015】
転圧機械1は、アスファルトを平らにし、押し固めて道路を舗装する所謂タイヤローラであって、図1に示すように機体10と車輪20とを備えている。車輪20は、例えばゴムタイヤからなり、機体10の前側に回転可能に支持された前輪22と、機体10の後側に回転可能に支持された後輪24とから構成されている。具体的には、前輪22及び後輪24は、後述する前輪支持部12及び後輪支持部(図示せず)に回転可能に支持されている。前輪22及び後輪24は、左右方向に所定の間隔を空けて、複数個が並んで配置されている。なお、図1及び図2では、転圧機械1の直進状態での前輪22が実線により示されており、転圧機械1の旋回状態での前輪22の一部が二点鎖線により示されている。つまり、旋回状態にある前輪22の最前端は、直進状態にある前輪の最前端よりも前方に位置する。
【0016】
図1に示すように、機体10は、本体部11、前輪支持部12、運転席16、及び落下防止柵18を含んで構成されている。本体部11の前側には前輪支持部12が設けられており、当該前輪支持部12は後述するハンドルの操作に応じて左右方向に回動するように構成されている。また、本体部11の後側には後輪24を回転可能に支持する後輪支持部(図示せず)が設けられている。また、本体部11の上側には運転席16が設けられている。当該運転席16内には、オペレータが操作するハンドル(図示せず)が設けられており、当該オペレータがハンドルを操作することで前輪支持部12が左右方向に回動し、ひいては前輪22が左右方向に回動する。また、本体部11には、運転席16の後方に落下防止柵18が設けられている。
【0017】
さらに、本体部11には、図示しないエンジンルームが設けられており、このエンジンルーム内にはHSTシステムが配置されている。当該HSTシステムは、エンジン、走行用油圧ポンプ、ギヤポンプ、及び走行用油圧モータ等を含んで構成される。このHSTは、エンジンの駆動力を利用して走行用油圧ポンプやギヤポンプ等のポンプを作動させることで作動油を循環させ、作動油の循環によって機体10の駆動、減速、及び停止を行うことが可能とされる、所謂油圧式無段変速機である。なお、HSTの構成自体は公知のものであるため、その詳細な説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、転圧機械1は、さらに、機体10の前後に設けられたセンサ30と、機体10に設けられたECU40と、運転席16の近傍に設けられた警告ランプ50(報知装置)と、機体10の前後に設けられた巻込み防止装置60とを含んで構成されている。
【0019】
センサ30は、機体10の前方の障害物を検出するように構成された前側センサ32(第1検出装置)と、機体10の後方の障害物を検出するように構成された後側センサ34(第2検出装置)とを含む。図1に示すように、前側センサ32は本体部11の前側に取付けられており、後側センサ34は落下防止柵18に取付けられている。前側センサ32及び後側センサ34は夫々、赤外線を機体10の前方及び後方に照射し、反射する赤外線を受信し、受信した赤外線によって障害物を検出する赤外線センサである。図1及び図2に示すように、前側センサ32は、検出範囲上限値A及び検出範囲下限値Bの間を障害物の検出範囲として設定されており、後側センサ34は、検出範囲上限値C及び検出範囲下限値Dの間を障害物の検出範囲として設定されている。
【0020】
なお、前側センサ32及び後側センサ34の各々はそれ自体の性能に基づく所定の検出範囲を有しているところ、実際には、ECU40によって前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲を所定範囲に制限する制御が行われている。このため、本明細書及び特許請求の範囲で使用される「検出範囲」とは、前側センサ32及び後側センサ34それ自体の性能に基づく検出範囲の限界を意味するのではなく、ECU40によって所定範囲に制限された検出範囲を意味する。本実施形態において、前側センサ32及び後側センサ34による左右方向での検出範囲は、機体10の幅方向長さと同等又は略同等に設定されている。
【0021】
図1に示すように、ECU40は、前側センサ32及び後側センサ34によって検出された障害物情報を受信し、当該障害物情報に基づいて所定の報知信号を警告ランプ50に送信するように構成されている。具体的には、ECU40は、前側センサ32及び後側センサ34から受信した障害物情報に基づいて、機体10の前方及び後方に障害物があるか否かを判別し、当該障害物が存在すると判断した場合に、警告ランプ50に所定の報知信号を送信するように構成されている。これにより、警告ランプ50を通じて、機体10の周辺にいる作業者及び運転席16にいるオペレータへの警告が行われる。ECU40は、エンジンの運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
【0022】
図1に示すように、ECU40の入力側には、前側センサ32及び後側センサ34が電気的に接続される。これにより、ECU40は、前側センサ32及び後側センサ34から受信した障害物情報に基づいて、機体10の前方及び後方に障害物が存在するか否かの判断することが可能となる。また、ECU40の出力側には、警告ランプ50、前側センサ32、及び後側センサ34が電気的に接続される。警告ランプ50は、ECU40からの報知信号を受信し、当該報知信号に基づいて作業者に障害物情報を報知するように構成されている。具体的には、ECU40は、警告ランプ50を点灯させることで機体10の周囲にいる作業者等に視認させて警告することを可能とする。また、前側センサ32及び後側センサ34は、ECU40から送信された検出範囲変更信号を受信し、当該信号に基づいて前側センサ32の検出範囲上限値A及び下限値B、後側センサ34の検出範囲上限値C及び下限値Dの設定が変更される。
【0023】
図1から図4に示すように、巻込み防止装置60は、機体10に取付けられ、前輪22の前方に配設された前側巻込み防止装置62(第1巻込み防止装置)と、機体10に取付けられ、後輪24の後方に配設された後側巻込み防止装置64(第2巻込み防止装置)と、作業者等が前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を操作するための取っ手66とを含んで構成されている。
【0024】
図1に示すように、前側巻込み防止装置62は、前輪支持部12の前部に固定された前側支持部62aと、基端側において当該前側支持部62aに回動可能に取り付けられた前側リンク部62bと、当該前側リンク部62bの先端側に回動可能に取付けられた前側ガード柵62cとを含んで構成されている。
【0025】
図1に示すように、前側支持部62aは、前輪支持部12の前部に固定され、且つ前輪22の前方に配設される平板状の金属製部材である。前側支持部62aは、左右方向に面する側面を含む。また、前側リンク部62bは、図3に示すように左右方向に離間して2つ配置されている。前側リンク部62bの各々は、図1に示すように上下方向に離間して配置される棒状の一対の金属製部材から構成されている。前側リンク部62bの各々は、図1に示すように前側支持部62aの側面に回動自在に支持されている。なお、図1では、2つの前側リンク部62bのうち、右側に配置される前側リンク部のみが示されている。さらに、前側ガード柵62cは、図3に示すように、複数の棒状部材によって格子状に形成され、前後方向に開口する部分に網目状部材が配設された金属製の柵である。
【0026】
図1に示すように、前側巻込み防止装置62は、前側ガード柵62cが下側に位置(使用位置)する状態において、前側ガード柵62cを前輪22の前方に位置付けつつ、路面との間の隙間を狭くして障害物等が前輪22に巻き込まれることを防止するものである。なお、図1及び図2では、転圧機械1の直進状態での前側ガード柵62cが実線により示されており、転圧機械1の旋回状態での前側ガード柵62cの一部が二点鎖線により示されている。つまり、旋回状態にある前側ガード柵62cの最前端は、直進状態にある前側ガード柵62cの最前端よりも前方に位置する。
【0027】
図1に示すように、後側巻込み防止装置64は、本体部11の後部に固定された後側支持部64aと、基端側において当該後側支持部64aに回動可能に取り付けられた後側リンク部64bと、当該後側リンク部64bの先端側に回動可能に取付けられた後側ガード柵64cとを含んで構成されている。
【0028】
図1に示すように、後側支持部64aは、本体部11の後部に固定され、且つ後輪24の後方に配設される平板状の金属製部材である。後側支持部64aは、左右方向に面する側面を含む。また、後側リンク部64bは、図4に示すように、左右方向に離間して2つ配置されている。後側リンク部64bの各々は、図1に示すように上下方向に離間して配置される棒状の一対の金属製部材から構成されている。後側リンク部64bの各々は、図1に示すように前側支持部62aの側面に回動自在に支持されている。なお、図1では、2つの後側リンク部64bのうち、右側に配置される後側リンク部のみが示されている。さらに、後側ガード柵64cは、図4に示すように、複数の棒状部材によって格子状に形成され、前後方向に開口する部分に網目状部材が配設された金属製の柵である。
【0029】
図1に示すように、後側巻込み防止装置64は、後側ガード柵64cが下側に位置(使用位置)する状態において、後側ガード柵64cを後輪24の後方に位置付けつつ、路面との間の隙間を狭くして障害物等が後輪24に巻き込まれることを防止するものである。
【0030】
前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64は、使用位置と非使用位置との間で上下方向に移動可能となるように機体10に取付けられている。具体的には、図1及び図2に示すように、前側巻込み防止装置62は、前側支持部62aに支持される前側リンク部62bの基端側を基点として上下方向に回動するように構成されている。これにより、前側巻込み防止装置62において、前側リンク部62bの先端側に支持された前側ガード柵62cが上下方向に移動する。同様に、後側巻込み防止装置64は、後側支持部64aに支持される後側リンク部64bの基端側を基点として上下方向に回動するように構成されている。これにより、後側巻込み防止装置64において、後側リンク部64bの先端側に支持された後側ガード柵64cが上下方向に移動する。なお、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の両方が上下方向に移動可能となるように機体10に取付けられている必要はなく、いずれか一方のみを上下方向に移動可能となるようにしても良い。
【0031】
前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64は、使用位置(下側に位置する状態)において前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲外にある。具体的には、図1に示すように、前側巻込み防止装置62は、使用位置において、当該前側巻込み防止装置62において最前部に位置する前側ガード柵62cが、前側センサ32の検出範囲下限値Bよりも後側且つ下側に位置するように構成されている。当該前側巻込み防止装置62は、転圧機械1が旋回状態(図1の二点鎖線参照)にある場合であっても、前側ガード柵62cが前側センサ32の検出範囲外(検出範囲下限値Bよりも後側且つ下側に)に位置するように構成されている。後側巻込み防止装置64は、下側に位置する状態において、当該後側巻込み防止装置64において最後部に位置する後側支持部64a及び後側ガード柵64cが、後側センサ34の検出範囲下限値Dよりも前側且つ下側に位置するように構成されている。なお、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の両方が使用位置において前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲外にある必要はなく、いずれか一方のみを使用位置において前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲外にしても良い。
【0032】
また、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64は、非使用位置(上側に位置する状態)において前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲内に位置する。具体的には、図2に示すように、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の両方は、非使用位置(上側に位置する状態)において、例えばストッパピン等を用いて固定可能となるように構成されている。より詳細には、前側巻込み防止装置62は、非使用位置(上側に位置する状態)において、前側ガード柵62cが少なくとも部分的に前側センサ32の検出範囲下限値Bよりも前側且つ上側に位置するように構成されている。当該前側巻込み防止装置62は、転圧機械1が直進状態(図1の実線参照)にある場合であっても、前側ガード柵62cが少なくとも部分的に前側センサ32の検出範囲内(検出範囲下限値Bよりも前側且つ上側)に位置するように構成されている。後側巻込み防止装置64は、非使用位置(上側に位置する状態)において、後側ガード柵64cが少なくとも部分的に後側センサ34の検出範囲下限値Dよりも後側且つ上側に位置するように構成されている。なお、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の両方が、非使用位置において前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲内に位置する必要はなく、一方のみを非使用位置において前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲内に位置するようにしても良い。
【0033】
なお、本実施形態においては、前側ガード柵62cが下側に位置する状態における前側センサ32の検出範囲下限値B(図1)と、前側ガード柵62cが上側に位置する状態における前側センサ32の検出範囲下限値B(図2)とが異なって設定されている。当該前側センサ32の検出範囲下限値Bは、前側ガード柵62cの上下移動に応じて、ECU40によって自動的に変更されてもよいし、運転席16のオペレータによる所定の操作に応じて適宜変更されるものであってもよい。
【0034】
取っ手66は、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64に設けられている。具体的には、図3及び図4に示すように、取っ手66は、前側ガード柵62cに設けられた前側取っ手66a(図3)と、後側ガード柵64cに設けられた後側上部取っ手66b及び後側下部取っ手66c(図4)とを含んで構成されている。図3に示すように、前側取っ手66aは、前側ガード柵62cにおいて左右方向に延在する部分により構成されている。図4に示すように、後側上部取っ手66bは、後側ガード柵64cの上部に設けられた部分であり、後側ガード柵64cに取付けられた別部材により構成されている。また、後側下部取っ手66cは、後側ガード柵64cの下部に設けられた部分であり、後側ガード柵64cにおいて左右方向に延在する部分により構成されている。後側上部取っ手66b及び後側下部取っ手66cは、作業者によって体格が様々であることを考慮して準備されている。なお、取っ手66は、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64のいずれか一方のみに設けるようにしても良い。
【0035】
前側取っ手66aは、前側巻込み防止装置62が使用位置(下側に位置する状態)において、前側センサ32による検出範囲外にある。具体的には、前側取っ手66aは、前側巻込み防止装置62の使用位置において、前側センサ32の検出範囲下限値Bよりも後側且つ下側に位置するように構成されている。前側取っ手66aは、転圧機械1が旋回状態(図1の二点鎖線参照)にある場合であっても、前側センサ32の検出範囲外(検出範囲下限値Bよりも後側且つ下側に)に位置するように構成されている。また、後側上部取っ手66b及び後側下部取っ手66cは、後側巻込み防止装置64の使用位置において、後側センサ34による検出範囲外にある。具体的には、後側上部取っ手66b及び後側下部取っ手66cは、後側巻込み防止装置64の使用位置において、後側センサ34の検出範囲下限値Dよりも前側且つ下側に位置するように構成されている。
【0036】
さらに、取っ手66は、作業者による操作の際に当該作業者の少なくとも一部が前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲内に位置するように、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64に取付けられている。具体的には、図3に示すように、前側取っ手66aは、左右方向において前側ガード柵62cの中央部分又は略中央部分に設けられている。また、図4に示すように、後側上部取っ手66b及び後側下部取っ手66cは、左右方向において後側ガード柵64cの中央部分又は略中央部分に設けられている。
【0037】
次いで、本発明の一実施形態に係る転圧機械1の作用、効果について説明する。
【0038】
本発明の一実施形態に係る転圧機械1によれば、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の少なくともいずれか一方は、使用位置と非使用位置との間で上下方向に移動可能となるように機体10に取付けられている。このため、例えば段差の大きい路面の締固め作業や輸送車両への積み込み作業など、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64が障害物に接触する可能性がある作業を行う場合であっても、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を上側(非使用位置)に移動することで、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の障害物への接触を回避することができる。また、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を上下動させることで作業内容の変更に対応可能となるため、作業内容の変更に伴う当該前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の再取付けが不要になる。このようにして、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64における本来検出したい障害物以外の接触を回避することができるとともに、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の再取付けによる締固め作業等の一時中断を回避することができ、作業を効率的に進行することができる。さらに、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を上側(非使用位置)に移動することで、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を容易に視認することが可能になり、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の作動状況を一見して把握することができる。
【0039】
また、本発明の一実施形態に係る転圧機械1によれば、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の少なくともいずれか一方は、使用位置(下側に位置する状態)において、前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲外にある。このため、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を下側に位置させた状態で締固め作業等を行う場合であっても、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64は前側センサ32及び後側センサ34によって検出されることがない。よって、前側センサ32及び後側センサ34による前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の誤検出が回避され、ひいては作業の一時中断が回避され、作業を効率的に進行することができる。以上のようにして、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64への接触を抑制しつつ、作業を効率的に進行することを可能にした転圧機械1を提供することができる。
【0040】
また、本発明の一実施形態に係る転圧機械1によれば、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の少なくともいずれか一方は、上下方向に回動可能となるように機体10に取付けられている。このため、上述したように、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64への接触を抑制しつつ、作業を効率的に進行することが可能になるとともに、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を上下方向に回動する際に、例えばリンク機構(前側リンク部62b及び後側リンク部64b)を用いることで、より少ない力で前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を動かすことができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態に係る転圧機械1によれば、取っ手66は、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64が使用位置(下側に位置する状態)において、前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲外にある。さらに、取っ手66は、作業者による操作の際に当該作業者が前側センサ32及び後側センサ34による検出範囲内に位置するように、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64に取付けられている。このため、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を使用位置にした状態で締固め作業等を行う場合であっても、取っ手66は前側センサ32及び後側センサ34によって検出されることがない。よって、前側センサ32及び後側センサ34による取っ手66の誤検出が回避され、ひいては作業の一時中断が回避され、作業を効率的に進行することができる。さらに、作業者が取っ手66を用いて前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64を上下移動する際に、当該作業者は、前側センサ32及び後側センサ34によって検出される。よって、運転席16にいるオペレータは、警告ランプ50を通じて、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64が作業者により手動操作されていることを確実に認識することができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る転圧機械1によれば、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の少なくともいずれか一方は、非使用位置(上側に位置する状態)において前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲内に位置する。このため、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の非使用位置(即ち、巻込み防止機能を発揮していない状態)で転圧機械1による作業を行う場合であっても、運転席16にいるオペレータは、警告ランプ50を通じて、前側巻込み防止装置62及び後側巻込み防止装置64の作動状態を確実に認識することができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に係る転圧機械1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態に係る巻込み防止装置60の変形例を概略的に示す図である。図5に示す巻込み防止装置60aは、上述の巻込み防止装置60に対して、後側リンク部65bの構成が異なる。上述した巻込み防止装置60においては、後側リンク部64bは上下方向に離間して配置される一対の金属製部材から構成されているものとして説明した。しかし、変形例に係る巻込み防止装置60aにおいては、後側リンク部65bは、一つの金属製部材から構成されてもよい。なお、本変形例は、前側リンク部62bにおいても同様に適用可能である。
【0045】
図6は、本発明の一実施形態に係る巻込み防止装置60の別の変形例を概略的に示す図である。図6に示す巻込み防止装置60bは、上述の巻込み防止装置60に対して、後側リンク部64bに電動化された駆動機構が設けられている点で異なる。上述した巻込み防止装置60においては、後側リンク部64bを手動で上下移動されるものとして説明した。しかし、別の変形例に係る巻込み防止装置60bにおいては、後側リンク部64bは、例えば空気圧シリンダや油圧シリンダ68の伸縮に応じて回動するように構成されてもよい。この際、空気圧シリンダや油圧シリンダ68は、転圧機械1の周辺にいる作業者等の遠隔操作により駆動されてもよいし、運転席16にいるオペレータが操作パネル(図示せず)を操作することで駆動されてもよい。これにより、前側ガード柵62c及び後側ガード柵64cに近づくことなく当該ガード柵の高さを変更すること可能となり、巻込み防止装置60bの操作に伴う安全性を向上させることができる。なお、当該変形例は、前側リンク部62bにおいても同様に適用可能である。
【0046】
また、上記一実施形態では、転圧機械1は1つの機体10に前輪22及び後輪24が設けられているものとして説明した。しかし、転圧機械1は、アーティキュレート式(関節式)の振動ローラであってもよい。この場合、転圧機械1は、連結ピン機構を介してアーティキュレート式に互いに連結されるフロント機体及びリア機体を含んで構成される。当該転圧機械1は、運転席16内のハンドル操作に応じて、図示しない操向機構によりフロント機体が連結ピン機構を介して左右方向(車幅方向)に操向可能となり、ひいては前輪を左右に操舵できるように構成されている。
【0047】
また、上記一実施形態では、報知装置としての警告ランプ50を点灯させることで、機体10の周囲にいる作業者等に視認させて警告することを可能とすることを説明した。しかし、報知装置としては、例えばスピーカであってもよい。この場合、ECU40からの報知信号に基づいて、スピーカからブザー音を出力することで機体10に搭乗するオペレータや機体10の周囲にいる作業者等に音によって警告することが可能となる。また、報知装置としては、例えば回転灯であってもよい。この場合、ECU40からの報知信号に基づいて、回転灯がミラーを回動させながら電球を点灯することで、機体10の周囲にいる作業者等に視認させて警告することが可能となる。
【0048】
また、上記一実施形態では、前側センサ32は本体部11の前側に取付けられているものとして説明した。しかし、前側センサ32は、前輪支持部12に設けられてもよい。この場合、運転席16にいるオペレータがハンドルを操作することで前輪支持部12が左右方向に回動し、これに応じて前側センサ32も向きを変えるため、回動した方向にある障害物を確実に検出することが可能となる。
【0049】
また、上記一実施形態では、前側ガード柵62cは、前側リンク部62bを介して回動により上下移動するものとして説明した。しかし、前側ガード柵62cは、例えばスライドレール等を用いて上下方向に直動するものであってもよい。なお、この点は、後側ガード柵64cにおいても同様に適用可能である。
【0050】
また、上記一実施形態では、前側取っ手66aは、前側ガード柵62cにおいて左右方向に延在する部分により構成されるものとして説明した。しかし、前側取っ手66aは、前側ガード柵62cとは別の部材を当該前側ガード柵62cに取付けて構成されるものであってもよい。この点は、後側下部取っ手66cにおいても同様に適用可能である。また、上記一実施形態では、後側上部取っ手66bは、後側ガード柵64cに取付けられた別部材により構成されるものとして説明した。しかし、後側上部取っ手66bは、後側ガード柵64cにおいて左右方向に延在する部分により構成されるものであってもよい。また、前側取っ手66a、後側上部取っ手66b、及び後側下部取っ手66cは、前側ガード柵62c及び後側ガード柵64cの中央部分又は略中央部分に設けられるものでなくてもよく、例えば前側ガード柵62c及び後側ガード柵64cの左側又は右側に設けられてもよい。
【0051】
また、上記一実施形態では、前側センサ32及び後側センサ34による左右方向での検出範囲は、機体10の幅方向長さと同等又は略同等に設定されているとして説明した。しかし、前側センサ32及び後側センサ34の検出範囲は、左右方向に固定されるものでなくてもよく、その検出範囲は適宜変更され得るものであってよい。
【符号の説明】
【0052】
1 転圧機械
10 機体
22 前輪
24 後輪
32 前側センサ(第1検出装置)
34 後側センサ(第2検出装置)
40 ECU(制御装置)
50 警告ランプ(報知装置)
62 前側巻込み防止装置(第1巻込み防止装置)
64 後側巻込み防止装置(第2巻込み防止装置)
66 取っ手
図1
図2
図3
図4
図5
図6