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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0038 20190101AFI20240802BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F24F1/0038
F24F7/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020190828
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079942
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2021-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ななめ▼木 達史
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】飯星 潤耶
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-347069(JP,A)
【文献】特開昭52-138347(JP,A)
【文献】特開昭49-74104(JP,A)
【文献】実公昭57-25947(JP,Y2)
【文献】特開2000-55435(JP,A)
【文献】特開昭57-207738(JP,A)
【文献】実開昭62-45627(JP,U)
【文献】特開2014-1892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機器(2)が配置される第1空間(S1)、および該第1空間(S1)の下部空間に連続し、且つ天井高さが前記第1空間(S1)よりも低い第2空間(S2)を形成する空間形成部材(20)と、
前記第1空間(S1)のうち前記第2空間(S2)の天井よりも高い部分から排気する排気装置(10)と、
前記第2空間(S2)を冷房する空気調和装置(31)と、
前記第1空間(S1)と前記第2空間(S2)との境界領域(R)に外気を導入する給気機構(40)とを備え、
前記空気調和装置(31)は、前記第2空間(S2)の空気を吸い込む吸込口(32)と、冷却した後前記第2空間(S2)に吹き出す吹出口(33)とを有する室内ユニット(31b)を有し、
前記給気機構(40)は、
外気を吸い込む給気ファン(42)と、
前記第2空間(S2)の天井に設けられ、かつ、前記給気ファン(42)が吹き出した外気を前記境界領域(R)に向けて下向きに吹き出す給気口(43)とを有し、
前記給気口(43)から吹き出された空気が前記境界領域(R)の下部に達した後前記発熱機器(2)近傍を流れて前記第1空間(S1)の天井に向かうように気流を形成する
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1の空調システムにおいて、
前記第1空間(S1)の温度が所定の温度にまで上昇したことが検出されると、前記排気装置(10)と前記給気ファン(42)とを作動させる制御装置(60)をさらに備える
ことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項1または2の空調システムにおいて、
前記空間形成部材(20)は、前記第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分に設けられた排気口(13)を有し、
前記排気装置(10)は、前記第1空間(S1)の空気を前記排気口(13)から吸い込んで排出する
ことを特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つの空調システムにおいて、
前記空間形成部材(20)は、
前記第2空間(S2)の天井を構成する低天井部材(23)と、
前記低天井部材(23)の縁部から上方に向かって延び、前記第1空間(S1)の側壁を形成する側壁部材(22)とを有する
ことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項1または2の空調システムにおいて、
前記給気口(43)は、前記第1空間(S1)と前記第2空間(S2)の境界に沿った面状の気流が生じるように空気を吹き出す
ことを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工場等の大規模空間内に送風機を設置することで大規模空間の空調を行える空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-070480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品を生産する工場では、帯状に延びた生産機器が配置される。生産機器は、製品を製造するための一連の工程を順に処理する。生産機器の両側には、作業者が生産機器を操作するための作業空間が設けられる。この作業空間は、空気調和装置により空調されることによって、該作業空間の快適性が確保される。
【0005】
このような生産機器が運転時に発熱すると、空気が加熱されることにより該生産機器周辺および作業空間の空気の温度が上昇する。そのため、作業空間の空気調和装置の負荷が増大し、空気調和装置の運転にかかるコストが増大する。
【0006】
本開示の目的は、工場内の空気の温度上昇による空気調和装置の負荷を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、発熱機器(2)が配置される第1空間(S1)、および該第1空間(S1)の下部空間に連続し、且つ天井高さが前記第1空間(S1)よりも低い第2空間(S2)を形成する空間形成部材(20)と、
前記第1空間(S1)のうち前記第2空間(S2)の天井よりも高い部分から排気する排気装置(10)と、
前記第2空間(S2)を冷房する空気調和装置(31)とを備える。
【0008】
第1の態様では、第1空間(S1)の天井は第2空間(S2)の天井よりも高い。そのため、発熱機器(2)により加熱された空気は第1空間(S1)の上部空間に滞留しやすくなる。この加熱された空気は、第1空間(S1)のうち第2空間(S2)の天井よりも高い位置から排出されるため、第1空間(S1)の下部空間の温度上昇が抑制される。その結果、第1空間(S1)の下部空間に連続する第2空間(S2)の温度上昇も抑えられ、第2空間の冷房負荷を抑えることができる。ひいては、空調によるコスト増大を抑えることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、
前記空間形成部材(20)は、前記第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分に設けられた排気口(13)を有し、
前記排気装置(10)は、前記第1空間(S1)の空気を前記排気口(13)から吸い込んで排出する。
【0010】
第2の態様では、発熱機器(2)により加熱された空気が第1空間(S1)を上昇し、第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分に設けられた排気口(13)から排気される。そのため、第1空間(S1)に残存する温度の高い空気の量を削減できる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、
前記空間形成部材(20)は、
前記第2空間(S2)の天井を構成する低天井部材(23)と、
前記低天井部材(23)の縁部から上方に向かって延び、前記第1空間(S1)の側壁を形成する側壁部材(22)とを有する。
【0012】
第3の態様では、発熱機器(2)により加熱されて上昇する空気を、第1空間(S1)の側壁部材(22)によって上方へ案内することができる。
【0013】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1空間(S1)と前記第2空間(S2)との境界領域(R)に外気を導入する給気機構(40)を備える。
【0014】
第4の態様では、給気機構(40)から境界領域(R)に吹き出された空気は発熱機器(2)近傍を流れる。この空気は、発熱した発熱機器(2)の熱を奪って第1空間(S1)を上昇する。このような空気の流れが形成されることにより、発熱機器(2)により加熱された空気の排出を促進できる。その結果、発熱機器(2)から第2空間(S2)へ進入する熱の量を削減できる。
【0015】
第5の態様は、第4の態様において、
前記給気機構(40)は、
外気を吸い込む給気ファン(42)と、
前記給気ファン(42)が吹き出した外気を、前記境界領域(R)に向けて下向きに吹き出す給気口(43)とを有する。
【0016】
第5の態様では、給気口(43)から吹き出される空気の流れにより、第1空間(S1)と第2空間(S2)との間の空気の流通を抑制できる。このことにより、発熱機器(2)が設置された第1空間(S1)から第2空間(S2)へ流入する空気の量を削減でき、第2空間の冷房負荷を低減できる。
【0017】
第6の態様は、第5の態様において、
前記給気口(43)は、前記第1空間(S1)と前記第2空間(S2)の境界に沿った面状の気流が生じるように空気を吹き出す。
【0018】
第6の態様では、第1空間(S1)と第2空間(S2)の境界に沿った面状の気流により、第1空間(S1)から第2空間(S2)へ流入する空気の量を、更に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る空調システムが適用される工場内の横断面を示す模式図である。
図2図2は、空調システムが適用される工場内を模式的に示した斜視図である。
図3図3は、空調システムの制御装置とセンサと機器との関係を示すブロック図である。
図4図4は、空調システム動作したときの作業空間の空気の流れを示す模式図である。
図5図5は、変形例1に係る図1相当図である。
図6図6は、変形例2に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
《実施形態》
〈空調システムの全体構成〉
図1および図2に示すように、実施形態の空調システム(1)は、工場の作業空間(S)に適用される。作業空間(S)には、製品を製造するための所定の機器が配置される。作業空間(S)では、作業者が該機器を用いて作業を行う。作業空間(S)は、1つの第1空間(S1)と2つの第2空間(S2)とを有する。
【0022】
第1空間(S1)は、作業空間(S)の中央寄りに配置される。第1空間(S1)は、上から見て縦長の空間である。第1空間(S1)には、生産機器(2)が配置される。生産機器(2)は、本開示の発熱機器(2)である。生産機器(2)は、運転時に発熱する。生産機器(2)は、例えば印刷機器である。生産機器(2)は、製品を製造するための一連の工程を順に処理する。生産機器は、第1空間(S1)の長手方向に配置される。
【0023】
2つの第2空間(S2)は、第1空間(S1)を挟むように配置される。言い換えると、第2空間(S2)は、上から見た第1空間(S1)の幅方向の両側に配置される。第2空間(S2)の天井高さは、第1空間(S1)の天井高さよりも低い。第2空間(S2)は第1空間(S1)の下部空間に連続している。第2空間(S2)では、作業者が第1空間(S1)に配置される生産機器(2)を用いて作業を行う。
【0024】
空調システム(1)は、空間形成部材(20)、排気装置(10)、空気調和装置(31)および給気機構(40)を備える。
【0025】
〈空間形成部材〉
空間形成部材(20)は、2つの低天井部材(23,23)、2つの側壁部材(22,22)、および排気口(13)を有する。
【0026】
低天井部材(23)は、第2空間(S2)の天井を構成する。低天井部材(23,23)の第2空間(S2)側から見た面は、矩形に形成される。各低天井部材(23)には、後述する給気口(43)が設けられる。各低天井部材(23)には、後述する室内ユニット(31b)が設けられる。
【0027】
側壁部材(22,22)は、第1空間(S1)の側壁を形成する。厳密には、側壁部材(22,22)は、第1空間(S1)の上部空間の側壁を形成する。各側壁部材(22)は低天井部材(23)の縁部から上方に向かって延びる。言い換えると、2つの側壁部材(22,22)は向かい合うように配置される。2つの側壁部材(22,22)の上端は同じ高さ位置である。
【0028】
空間形成部材(20)は、高天井部材(21)を有する。高天井部材(21)は、第1空間(S1)の天井を構成する。高天井部材(21)は、一方の側壁部材(22)の上端から他方の側壁部材(22)の上端に亘って設けられる。高天井部材(21)は、第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分である。
【0029】
排気口(13)は、高天井部材(21)に設けられる。排気口(13)には、室外に繋がる排気装置(10)に連通する。排気装置(10)については後述する。
【0030】
〈排気装置〉
排気装置(10)は、第1空間(S1)のうち第2空間(S2)の天井よりも高い部分から作業空間(S)の空気を排気する。具体的に、排気装置(10)は、第1空間(S1)の空気を排気口(13)から吸い込んで室外に排出する。排気装置(10)は、排気ダクト(11)および排気ファン(12)を有する。
【0031】
排気ダクト(11)は、作業空間(S)外に配置される。排気ダクト(11)の一端は、排気口(13)に接続される。排気ダクト(11)の他端は、室外に連通する。
【0032】
排気ファン(12)は、排気ダクト(11)に設けられる。排気ファン(12)は、後述する制御装置(60)に制御される。
【0033】
〈空気調和装置〉
空気調和装置(31)は、第2空間(S2)を冷房する。具体的に、空気調和装置(31)は、室外ユニット(31a)と室内ユニット(31b)とを有する。室外ユニット(31a)と室内ユニット(31b)とは、液連絡管(図示省略)及びガス連絡管(図示省略)を介して互いに接続される。これらが接続されることにより、冷媒回路(図示省略)が構成される。冷媒回路は、蒸発器で空気から熱を吸収し、放熱器で空気へ放熱する冷凍サイクルを行う。
【0034】
室外ユニット(31a)は、室外に設置される。室外ユニット(31a)は、冷媒回路に接続される図示しない室外熱交換器、放熱器、および膨張弁を有する。
【0035】
室内ユニット(31b)は、低天井部材(23)に設置される。室内ユニット(31b)は、天井に設置される天井設置式である。室内ユニット(31b)は、蒸発器(図示省略)と、室内ファン(図示省略)と、吸込口(32)と、吹出口(33)とを有する。室内ファンにより、吸込口(32)から吸い込まれた第2空間(S2)の空気は蒸発器を通過することにより冷却された後、吹出口(33)から第2空間(S2)に吹き出される。
【0036】
〈給気機構〉
給気機構(40)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界領域(R)に外気を導入する。境界領域(R)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界と、その周辺の領域を含む。具体的に、第1空間(S1)側の境界領域(R)は、生産機器(2)の側面の位置までを含む。給気機構(40)は、給気ダクト(41)、給気ファン(42)および給気口(43)を有する。
【0037】
給気ダクト(41)は、作業空間(S)外に配置される。給気ダクト(41)の一端は、給気口(43)に接続される。給気ダクト(41)の他端は、室外に連通する。
【0038】
給気ファン(42)は、外気を吸い込む。具体的に、給気ファン(42)は、給気ダクト(41)に設けられる。給気ファン(42)が回転することにより、外気を給気ダクト(41)に搬送する。給気ファン(42)は、後述する制御装置(60)により制御される。
【0039】
給気口(43)は、低天井部材(23)おける第1空間(S1)寄りに設けられる。給気口(43)は、下方に向けて開口している。そのため、給気ファン(42)により給気口(43)から吹き出される外気は境界領域(R)に向けて下向きに流れる。
【0040】
給気口(43)は、低天井部材(23)における第1空間(S1)寄りの縁に沿って形成される。給気口(43)は、低天井部材(23)の長手方向の一端から他端に亘るようにスリット状に形成される。このことで、給気口(43)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界に沿った面状の気流が生じるように空気を吹き出す。
【0041】
〈センサ〉
空調システム(1)は、第1温度センサ(51)および第2温度センサ(52)を有する。第1温度センサ(51)は、第1空間(S1)に配置される。第1温度センサ(51)は、生産機器(2)の第1空間の温度を測定する。第2温度センサ(52)は、第2空間(S2)に配置される。第2温度センサ(52)は、第2空間(S2)の温度を測定する。
〈制御装置〉
図3に示すように、空調システム(1)は、制御装置(60)を有する。制御装置(60)は、制御装置(60)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。
【0042】
制御装置(60)は、有線または無線により、空調システム(1)の各種の機器およびセンサに接続される。制御装置(60)は、第1~第2温度センサ(52)から入力された信号に基づいて、排気ファン(12)、給気ファン(42)および空気調和装置(31)を制御する。
〈空調システムの動作〉
次に空調システム(1)の動作について図4を用いて説明する。
【0043】
生産機器(2)が稼働されると、制御装置(60)は、空気調和装置(31)を運転する。空気調和装置(31)は、冷風を給気口(43)から第2空間(S2)に供給する。第2空間(S2)の空気は、図示しない換気口から排出される。このことで、第2空間(S2)の空気は、所定の温度に維持される。
【0044】
生産機器(2)の稼働によって該生産機器(2)が発熱すると、第1空間(S1)の生産機器(2)周辺の空気が加熱される。加熱された空気は上昇気流となって、第1空間(S1)の上部空間へ流れる。第1空間(S1)の上部空間では、加熱された空気が滞留する。制御装置(60)は、第1空間(S1)の温度が所定の温度にまで上昇したことを検出すると、排気ファン(12)と給気ファン(42)とを作動させる。
【0045】
排気ファン(12)の作動により、第1空間(S1)の上部空間の滞留した空気は、排気口(13)から排出される。このことで、第1空間(S1)では、下部空間で加熱された空気が上昇して排気口(13)から排出される空気の流れが形成される。
【0046】
給気ファン(42)の作動により、境界領域(R)では、第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界に沿った面状の気流が生じる。この面状の気流により、第1空間(S1)と第2空間(S2)との間の空気の流通が阻害される。従って、第2空間(S2)で冷却された空気の第1空間(S1)への流入は抑制される。同様に、第1空間(S1)で加熱された空気の第2空間(S2)への流入は抑制される。
《実施形態の効果》
実施形態の空調システム(1)は、生産機器(2)が配置される第1空間(S1)、および該第1空間(S1)の下部空間に連続し、且つ天井高さが第1空間(S1)よりも低い第2空間(S2)を形成する空間形成部材(20)と、第1空間(S1)のうち第2空間(S2)の天井よりも高い部分から排気する排気装置(10)と、第2空間(S2)を冷房する空気調和装置(31)とを備える。
【0047】
第1空間(S1)の天井は第2空間(S2)の天井よりも高いため、生産機器(2)により加熱された空気は第1空間(S1)の上部空間に滞留しやくなる。この加熱された空気は、第1空間(S1)のうち第2空間(S2)の天井よりも高い位置から排出されるため、第1空間(S1)の下部空間の空気の温度上昇を抑制できる。その結果、第2空間(S2)の温度上昇も抑えられるため、空気調和装置(31)の負荷を抑えることができる。ひいては、空気調和装置(31)の運転によるコスト増大を抑えることができる。
【0048】
実施形態の空調システム(1)の空間形成部材(20)は、第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分に設けられた排気口(13)を有する。排気装置(10)は、第1空間(S1)の空気を排気口(13)から吸い込んで排出する。
【0049】
このことにより、第1空間(S1)では、下部空間で加熱された空気が第1空間(S1)を上昇し、第1空間(S1)の最も高い部分に設けられた排気口(13)から排気される。そのため、第1空間(S1)に残存する温度の高い空気の量を削減できる。
【0050】
実施形態の空調システム(1)の空間形成部材(20)は、第2空間(S2)の天井を構成する低天井部材(23)と、低天井部材(23)の縁部から上方に向かって延び、前記第1空間(S1)の側壁を形成する側壁部材(22)とを有する。
【0051】
生産機器(2)により加熱された空気は第1空間(S1)を上昇して側壁部材(22)と高天井部材(21)に囲まれた空間に滞留しやすくなる。このことにより、加熱された空気が低天井部材(23)の内側面を伝って第2空間(S2)に流入することが抑制されるため、第2空間(S2)の温度上昇を抑制できる。
【0052】
実施形態の空調システム(1)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界領域(R)に外気を導入する給気機構(40)を備える。
【0053】
給気機構(40)により境界領域(R)に吹き出された空気は、第1空間(S1)の生産機器(2)近傍を流れる。この空気は、発熱した生産機器(2)の熱を奪って第1空間(S1)を上昇する。このような空気の流れが形成されることにより、第1空間(S1)の加熱された空気の排出を促進できる。
【0054】
実施形態の給気機構(40)は、外気を吸い込む給気ファン(42)と、給気ファン(42)が吹き出した外気を、境界領域(R)に向けて下向きに吹き出す給気口(43)とを有する。
【0055】
第1空間(S1)では、下部空間の空気が高天井部材(21)の排気口(13)に向かって流れる上昇気流が生じているため、給気口(43)から境界領域(R)に向けて下向きに吹き出された空気は、生産機器(2)の側面近傍を流れて第1空間(S1)を上昇する。このことにより、確実に発熱した生産機器(2)の熱を奪うことができる。
【0056】
加えて、給気口(43)から境界領域(R)に向けて下向きに吹き出された空気により、第1空間(S1)と第2空間(S2)との間の空気の流通を抑制できる。このため、第2空間(S2)の冷気が第1空間(S1)へ流れることを抑制できると共に、第1空間の加熱された空気が第2空間に流入する空気の量を削減でき、第2空間の冷房負荷を低減できることを抑制できる。
【0057】
加えて、空気調和装置(31)は第2空間(S2)のみを空調するいわゆるゾーン空調を行うことができるため、空気調和装置(31)の運転によるコストを抑えることができる。
【0058】
実施形態の給気口(43)は、第1空間(S1)と第2空間(S2)の境界に沿った面状の気流が生じるように空気を吹き出す。
【0059】
第1空間(S1)と第2空間(S2)の境界に沿った面状の気流は、上から見た第1空間(S1)および第2空間(S2)の境界の一端から他端に亘るように形成される。そのため、第1空間(S1)から第2空間(S2)へ流入する空気の量を更に削減できる。
【0060】
加えて、第2空間(S2)の天井は第1空間(S1)の天井よりも低いため、第1空間(S1)の容積は比較的小さい。空気調和装置(31)は、このような第2空間(S2)のみを冷房すればよいため、空気調和装置(31)の負荷を抑えることができる
〈変形例1〉
変形例1に係る空調システム(1)では、空間形成部材(20)の形状が上記実施形態の空間形成部材(20)の形状と異なる。以下では、変形例1の空調システム(1)の空間形成部材(20)について説明する。
【0061】
図5に示すように、空間形成部材(20)の側壁部材(22)は、低天井部材(23)における第1空間(S1)側の縁部と向かい合う縁部から上方に向かって延びる。
【0062】
生産機器(2)に加熱された空気は、2つの低天井部材(23)の間を通って第1空間(S1)を上昇する。上昇した空気は、排気装置(10)により排気口(13)から排出される。第1空間(S1)と第2空間(S2)との境界領域(R)においては、給気機構(40)により給気口(43)から吹き出される面状の気流が生じる。
【0063】
このことにより、変形例1の場合においても、第1空間(S1)の加熱された空気を排出することが促進できると共に、第2空間(S2)から第1空間(S1)への冷気の移動を抑制できるため、空気調和装置(31)の冷房負荷を低減できる。加えて、第1空間(S1)の上部空間の容積を比較的大きくできる。このことにより、比較的多くの空気を第1空間(S1)の上部空間に滞留させることができる。
【0064】
〈変形例2〉
変形例2に係る空調システム(1)では、空間形成部材(20)の形状が上記実施形態および上記変形例1の空間形成部材(20)の形状と異なる。以下では、変形例2の空調システム(1)の空間形成部材(20)について説明する。
【0065】
図6に示すように、変形例2の空間形成部材(20)は、高天井部材(21)を有さない。側壁部材(22)は、低天井部材(23)の縁部から上方に延び、両側壁部材(22,22)の上端が連結される。このことにより、第1空間(S1)の上部空間は横断面が三角形の形状となる。この場合、第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分は、両側壁部材(22,22)の上端である。
【0066】
変形例2の場合においても、第1空間の下部空間で加熱された空気は、側壁部材(22)で囲まれた空間に滞留し、排気口(13)から排出される。このことにより、第1空間(S1)の加熱された空気の排出が促進されて、第1空間(S1)の温度上昇が抑制される結果、第2空間(S2)の空気調和装置(31)の負荷を抑えることができる。
【0067】
《その他の実施形態》
上記実施形態および変形例においては、以下のような構成としてもよい。
【0068】
第2空間(S2)は1つであってもよい。この場合、第2空間(S2)は、第1空間(S1)の上から見たときの幅方向の片側に配置される。
【0069】
排気口(13)は、第1空間(S1)の天井高さの最も高い部分に設けられていなくてもよい。例えば、高天井部材(21)が傾斜して設けられる場合、排気口(13)は高天井部材(21)の最も高い部分に設けられていなくてもよい。
【0070】
空間形成部材(20)は、側壁部材(22)を有さなくてもよい。例えば、上記実施形態において、側壁部材(22)および高天井部材(21)の代わりに半球状の部材であってもよい。半球状の部材により、第1空間(S1)の上部空間は半球状に形成される。
【0071】
空調システム(1)は、給気機構(40)を有さなくてもよい。
【0072】
空気調和装置(31)は、外気を吸い込んで冷却した後、第2空間(S2)に吹き出すものであってもよい。
【0073】
給気機構(40)は、給気ファン(42)を有さなくてもよい。この場合、給気口(43)からは自然に外気が第2空間(S2)に供給される。
【0074】
給気機構(40)は、給気口(43)から生産機器(2)に向けて吹出してもよい。
【0075】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本開示は、空調システムについて有用である。
【符号の説明】
【0077】
S1 第1空間
S2 第2空間
2 生産機器(発熱機器)
10 排気装置
13 排気口
20 空間形成部材
22 側壁部材
23 低天井部材
31 空気調和装置
40 給気機構
42 給気ファン
43 給気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6