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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】画像処理装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20240802BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H04N1/407
G06T1/00 460C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020197478
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085677
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】奥山 真寛
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-336048(JP,A)
【文献】特開2003-338930(JP,A)
【文献】特開2016-192646(JP,A)
【文献】特開2011-015172(JP,A)
【文献】特開2001-285635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/407
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像データを取得する取得部と、制御部とを備えた画像処理装置であって、
前記制御部は、
入力された前記第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定し、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成し、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出し、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、
前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとのそれぞれにエッジ処理を実行した後に、前記差分を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の画像データの下地領域と、それ以外との領域に分割し、
前記下地領域に基づいて前記下地除去のレベルを決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
第1の下地除去のレベルに基づいて下地除去処理を実行したときに前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分が閾値以上となった場合、前記第2の画像データを出力する代わりに、前記第1の下地除去のレベルよりも低い第2の下地除去のレベルに基づいて下地除去処理を行った第3の画像データを生成し、
前記第1の画像データと、前記第3の画像データとの差分を算出し、
前記差分が、閾値未満となった場合には前記第3の画像データを出力する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記閾値を設定する操作を受け付ける画面を表示する制御を行うことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力された第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定するステップと、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成するステップと、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出するステップと、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力するステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
入力された第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定する機能と、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成する機能と、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出する機能と、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、入力された原稿に下地がある場合において、適切な出力を得るための技術が提案されている。
【0003】
例えば、原稿の画像データを、原稿の下地のオブジェクトを含む複数のオブジェクトに分離するとともに画像データに現れる筋画像を検知し、筋画像の画素が下地オブジェクトに存在し、かつ、筋画像の画素の画素値が下地の代表値に基づいて定められた閾値以下のときに、当該画素を下地オブジェクトとみなす処理を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、下地画素であると判定された画素を除去することにより、下地画素ではない画像データの画素値を保持する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-175270号公報
【文献】特開2016-066872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、下地の上に下地の濃度と近い濃度によって現された薄い文字や薄い図形が含まれる場合、薄い文字や薄い図形が含まれる領域は下地の領域と判定されやすく、下地を除去することにより、薄い文字や薄い図形の情報が消えてしまうという課題があった。
【0007】
上述した課題に鑑み、本開示は、下地除去処理を行った画像と、下地除去処理を行っていない画像との何れかの画像を適切に出力することが可能な画像処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための第1の実施態様は、
第1の画像データを取得する取得部と、制御部とを備えた画像処理装置であって、
前記制御部は、
入力された前記第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定し、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成し、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出し、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、
前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力する
ことを特徴とする画像処理装置である。
【0009】
上述した課題を解決するための第2の実施態様は、
入力された第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定するステップと、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成するステップと、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出するステップと、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力するステップと、
を含むことを特徴とする制御方法である。
【0010】
上述した課題を解決するための第3の実施態様は、
コンピュータに、
入力された第1の画像データに基づいて下地除去のレベルを決定する機能と、
前記下地除去のレベルに基づいて、前記第1の画像データに下地除去処理を行い、下地除去がされた第2の画像データを生成する機能と、
前記第1の画像データと、前記第2の画像データとの差分を算出する機能と、
前記差分が、閾値以上となった場合には前記第1の画像データを出力し、前記差分が、閾値未満となった場合には前記第2の画像データを出力する機能と、
を実現させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、下地除去処理を行った画像と、下地除去処理を行っていない画像との何れかの画像を適切に出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における画像形成装置の外観斜視図である。
図2】第1実施形態における画像形成装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
図3】第1実施形態における下地除去テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図4】第1実施形態における処理の流れを説明するためのフロー図である。
図5】第1実施形態におけるヒストグラムの例を示す図である。
図6】第1実施形態における動作例を説明するための図である。
図7】第1実施形態における動作例を説明するための図である。
図8】第2実施形態における処理の流れを説明するためのフロー図である。
図9】第2実施形態における動作例を説明するための図である。
図10】第3実施形態における処理の流れを説明するためのフロー図である。
図11】第3実施形態における動作例を説明するための図である。
図12】第4実施形態における処理の流れを説明するためのフロー図である。
図13】第4実施形態における判定項目を説明するための図である。
図14】第4実施形態における原稿の種類を説明するための図である。
図15】第5実施形態における画像形成装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
図16】第5実施形態における動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示を実施するための一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されるものではない。
【0014】
[1.第1実施形態]
[1.1 機能構成]
本実施形態の画像形成装置10の機能構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、画像形成装置10の外観斜視図であり、図2は、画像形成装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【0015】
画像形成装置10は、コピー機能、印刷機能、スキャナ機能、メール送信機能等を有するデジタル複合機である。図2に示すように、画像形成装置10は、制御部100と、画像入力部120と、画像形成部130と、表示部140と、操作部150と、記憶部180と、通信部190とを備えて構成される。
【0016】
制御部100は、画像形成装置10の全体を制御する。制御部100は、記憶部180に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、1又は複数の演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit))により構成されている。
【0017】
制御部100は、プログラムを実行することにより、領域分離部102、画像処理部104、エッジ検出部106、情報欠落判定部108、出力制御部110として機能する。
【0018】
領域分離部102は、画像データを所定の領域に分離したり、画像データにおける各画素を所定の領域に含まれる画素であると判定したりする。
【0019】
例えば、領域分離部102は、RGB(R:赤、G:緑、B:青)のそれぞれの色信号における濃度値信号によって、画像データにおける各画素を、下地領域、写真(印画紙写真)領域、文字領域および網点領域のいずれに属するのかを判定する。なお、本実施形態において、領域分離処理とは、1枚の画像の中で文字領域であるのか印画紙領域(写真領域;連続階調領域)であるのか網点領域であるのか、等を切り分けることを指す。文字領域は、文字および記号を含むキャラクタを表す。下地領域は、原稿の地肌部分(背景)を表す。
【0020】
例えば、領域分離部102は、画像データによって示される画像に含まれる画素の判別を行う。各画素の判別は、画像データを下地候補画素、印画紙画素(写真画素)、文字画素、網点画素の何れかに分離して判別する。以降、下地候補画素、印画紙画素、文字画素、網点画素を領域画素という。下地候補画素とは、領域画素判定の工程において、下地画素である可能性の高い画素として抽出される画素である。
【0021】
領域画素に分離するアルゴリズムは、既存の領域分離方法を用いることができ、たとえば、以下に示すような、特開2002-232708号公報に記載の方法などを用いることができる。
(1)注目画素を含むn×m(たとえば、7画素×15画素)の画素ブロックにおける最小濃度値および、最大濃度値を算出する。
(2)算出された最小濃度値及び最大濃度値を用いて最大濃度差を算出する。
(3)注目画素に隣接する画素の濃度差の絶対値の総和である総和濃度繁雑度(たとえば、主走査方向と副走査方向について算出した値の和)を算出する。
(4)算出された最大濃度差と最大濃度差閾値との比較及び算出された総和濃度繁雑度と総和濃度繁雑度閾値との比較を行う。
(5)最大濃度差<最大濃度差閾値および総和濃度繁雑度<総和濃度繁雑度閾値のとき、注目画素は下地・印画紙領域に属すると判定する。
(6)上記条件を満たさないときは、注目画素は文字・網点領域に属すると判定する。
(7)下地・印画紙領域に属すると判定された画素について、注目画素が、最大濃度差<下地・印画紙判定閾値を充たすとき、下地候補画素であると判定し、この条件を充たさないときは、印画紙画素であると判定する。
(8)文字・網点領域に属すると判定された画素について、注目画素が、総和濃度繁雑度<(最大濃度差に文字・網点判定閾値を掛けた値)の条件を充たすとき、文字画素であると判定し、この条件を充たさないときは、網点画素であると判定する。
【0022】
なお、画像データに含まれる下地領域とは、下地候補画素により構成される領域をいう。同様にして、印画紙画素(写真画素)により構成される領域を印画紙領域、文字画素により構成される領域を文字領域、網点画素により構成される領域を網点領域という。
【0023】
画像処理部104は、画像データに対して所々の画像処理を実行する。例えば、画像処理部104は、画像入力部120によって入力された画像の画像データ(第1の画像データ)に含まれる画素の各輝度(濃度)の値を、後述する下地除去テーブル184に定義された値に置換した画像の画像データ(第2の画像データ)を生成する。
【0024】
エッジ検出部106は、画像データからエッジを検出する。例えば、エッジ検出部106は、画像入力部120によって入力された画像や、画像処理部104によって画像処理がされた画像に対して、エッジ検出オペレータ(例えば、Prewitt、あるいはSobelと呼ばれるオペレータ)を適用する。これにより、エッジ検出部106は、エッジの検出対象となる画像をエッジを際立たせた画像に変換したり、エッジの検出対象となる画像からエッジを検出し、検出したエッジのみを現した画像(エッジ画像)を生成したりする。
【0025】
情報欠落判定部108は、2つの画像を比較することで、情報の欠落が生じているか否かを判定する。情報の欠落とは、一方の画像に現れていた文字や図形等が、他方の画像では失われていることをいう。
【0026】
出力制御部110は、画像を出力する制御を行う。例えば、出力制御部110は、出力対象となる画像を画像形成部130を介して出力する制御を行ったり、出力対象となる画像の画像データを通信部190を介して他の装置に送信する制御を行ったりする。
【0027】
画像入力部120は、画像形成装置10に画像データを入力(取得)する。画像入力部120は、例えば、原稿から画像を光学的に読み取って画像データを生成することが可能なスキャナ装置等により構成される。スキャナ装置は、原稿からの反射光像を、RGB(R:赤、G:緑、B:青)にそれぞれ対応し、原稿画像が記録された紙などの記録媒体からの反射光の反射率を表すアナログ信号から成る画像データとしてCCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等のイメージセンサによって読み取る。そして、画像入力部120は、読み取った画像データ(デジタルデータ)を生成することにより、当該画像データを入力する。なお、画像入力部120は、USB(Universal Serial Bus)メモリや、SDカード等の記憶媒体に記憶された画像データを入力してもよいし、通信部190を介して他の装置から取得された画像データを入力してもよい。
【0028】
画像形成部130は、画像データに基づく画像を記録媒体(例えば記録用紙)に形成する。画像形成部130は、例えば、電子写真方式を利用したレーザプリンタ等により構成され、図1の給紙トレイ132から記録用紙を給紙し、記録用紙の表面に画像を形成し、記録用紙を排紙トレイ134から排紙する。
【0029】
表示部140は、各種情報を表示する。表示部140は、例えば、LCD(Liquid crystal display)、有機EL(electro-luminescence)パネル、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置により構成される。
【0030】
操作部150は、画像形成装置10を使用するユーザの操作を受け付ける。操作部150は、ハードキー(例えば、テンキー)やボタン、タッチ操作を検出するセンサ等により構成される。なお、入力されたタッチ操作を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。また、画像形成装置10は、表示部140と操作部150とが一体に形成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0031】
記憶部180は、画像形成装置10の動作に必要な各種プログラムや、各種データを記憶する機能部である。記憶部180は、例えば、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成される。
【0032】
記憶部180は、画像入力部120によって入力された画像データを記憶する記憶領域である画像データ記憶領域182を確保する。また、記憶部180は、画像データの下地除去を行うために用いられる下地除去テーブル184を記憶する。
【0033】
下地除去テーブル184について、図3を参照して説明する。図3(a)は、下地除去テーブル184の例である。図3(a)に示すように、下地除去テーブル184は、入力値と出力値との対応が記憶される。入力値とは、変換前の画像データにおいて注目している画素の色を示す値であり、具体的にはRGBのそれぞれに対応する濃度値(RGBのそれぞれの色に対応する値)である。
【0034】
図3(a)に示すように、出力値は、下地除去のレベルに応じて、レベル1、レベル2といったように、複数のレベル(テーブル)が定義される。なお、本実施形態では、レベルは1から16までの16種類あるとする。
【0035】
また、入力値とレベルとの交点に記載された値は、注目している画素における変換後の濃度値を示す。特に、本実施形態では、変換後の濃度値を出力値という。つまり、下地除去テーブル184は、入力されたR、G、Bのそれぞれ色の濃度値を、色毎に、どの濃度値に変換するかを示したテーブルである。
【0036】
ここで、本実施形態では、濃度値を0から255までの何れかの整数値を取るものとし、下地除去テーブル184には、入力値よりも出力値が大きな値となるように、出力値が定義される。したがって、下地除去テーブル184を用いて画像データの濃度値を変換すると、変換前の画像に比べて変換後の画像は明るい画像となる。これにより、画像に含まれる薄い下地は、下地除去テーブル184に基づいて変換されることにより除去される。
【0037】
本実施形態では、下地除去テーブル184は、レベルの番号が大きくなるに連れ、より明るい画像に変換されるように定義されるものとする。例えば、レベル1では、出力値は入力値と同じ値に置換され、レベルの番号が大きくなるに連れて、輝度が高い画素の輝度をより高い輝度に置換されるように、下地除去テーブル184が定義される。
【0038】
図3(b)は、下地除去テーブル184に記憶された入力値及び出力値の関係をグラフにした図である。図3(b)に示すように、レベルの番号が大きくなればなるほど、中間的な輝度の画素がより高い輝度の画素に置換される。
【0039】
通信部190は、画像形成装置10が外部の装置と、インターネット等の外部ネットワークや、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介してデータの通信を行う。通信部190は、例えば、有線/無線LANで利用されるNIC(Network Interface Card)等の通信装置や通信モジュールにより構成される。
【0040】
[1.2 処理の流れ]
本実施形態における画像形成装置10の制御部100が実行する主な処理について、図4を参照して説明する。図4に示した処理は、例えば、制御部100が、記憶部180に記憶されたプログラムを読み出すことにより実行される。
【0041】
はじめに、制御部100は、画像データを取得する(ステップS102)。例えば、制御部100は、画像入力部120を介して、原稿の画像データを取得したり、記憶媒体に記憶された画像データや他の装置から取得された画像データを取得したりしてもよい。
【0042】
つづいて、制御部100(領域分離部102)は、ステップS102において取得された画像データに基づき、当該画像データによって現される画像を所定の領域に分離する領域分離処理を実行する(ステップS104)。例えば、領域分離部102は、画像データにおける各画素を、下地領域、印画紙領域、文字領域および網点領域のいずれに属するのかを判定する。
【0043】
つづいて、制御部100は、ステップS104の領域の分離結果に基づき、下地領域に含まれる画素の濃度値に基づくヒストグラムを算出する(ステップS106)。ヒストグラムは、例えば、輝度の範囲(区分)を予め定めておき、下地領域に含まれる画素の濃度値の出現頻度を区分毎に計数することにより生成される。
【0044】
具体的には、制御部100は、以下のようにヒストグラムを算出する。まず、制御部100は、下地候補画素と判定された注目画素について、下地候補画素のプレーン毎(信号毎)の平均値の濃度値の比較を行い、注目画素毎に、各色信号間で平均値の最小値を算出し、下地画素ヒストグラムを生成する。このときヒストグラム生成について対象となる範囲は、下地候補画素全体である。したがって、各下地候補画素における色信号毎の濃度値を(R,G,B)とすれば、この下地画素ヒストグラムは、全ての下地候補画素におけるMIN(R,G,B)の値の度数値を表すものである。このヒストグラムの濃度区分数はたとえば、濃度値の小さい方から第1濃度区分、第2濃度区分とし、濃度値の最も大きい区分を第16濃度区分とする16区分を設ける。
【0045】
図5は、ステップS106において生成されるヒストグラムの具体例を示す図である。図5(a)は、0から255までの濃度値を、16ずつの単位で16等分することで16の区分(濃度区分)を定め、画像データに含まれる画素毎の濃度値(入力値)を、区分毎に計数することで、区分毎の出現頻度を示した表(ヒストグラム)である。なお、本実施形態では、16の区分は、区分0から区分15までの区分とする。また、図5(b)は、図5(a)に示したヒストグラムを図示した図である。図5(b)に示すヒストグラムにおいて、横軸は濃度区分を示す濃度値、縦軸が各濃度区分に属する最小値の頻度である度数値を示す。
【0046】
ここで、図5は、下地が存在する場合のヒストグラムを示している。制御部100は、図5に示すように、基本的に単色の画素からなる領域を下地であると判定する。下地は単色濃度の画素しか存在しないため、下地が存在する場合は、図5(b)に示すようにある限られた濃度区分群(たとえば1または2区分からなる濃度区分の集合)にのみ度数値が存在する。たとえば原稿画像データ全体が印画紙領域で構成される場合など、下地が存在しない場合は、下地候補画素として抽出された画素全体を対象にヒストグラムを生成しても、区分幅が拡がった濃度区分群が存在したり、または度数値が大きい濃度区分群が存在しなかったりする。
【0047】
つづいて、制御部100は、入力された画像が下地除去処理を行う画像であるか否かを判定する(ステップS107)。制御部100は、下地除去処理を行う画像であるか否かについて、例えば、以下の手順により判定する。
【0048】
(1)領域画素のカウント
制御部100は、ステップS104において判定した各領域画素について、それぞれ判定された画素の画素数をカウントする。
【0049】
(2)下地判定
制御部100は、入力された画像データに下地が存在するか否かを判定する。例えば、制御部100は、図5(b)に示すように、予め定められた下地判定閾値Sg24よりも度数値が大きく、且つ、その濃度区分幅が下地判定区分幅閾値(たとえば3)よりも小さな濃度区分群が存在すれば下地と判定する。下地判定閾値Sg24は、出力用紙サイズをA4サイズと想定し、解像度を600dpi(dot per inch)とした場合、たとえば10000個に設定する。解像度が600dpiである場合には、A4サイズの出力用紙全体の画素数は、約3.5×10個となる。
【0050】
つづいて、制御部100は、下地候補画素についてのヒストグラムを対象に、下地画素であると判定された濃度区分群のうち、最も小さい濃度区分値を最小の下地画素濃度値Aとする。また、制御部100は、下地の濃度区分群に属する度数値の合計を下地度数値とする。
【0051】
なお、RGB信号を用いた場合、画素値が「0」に近い方が実際の濃度は高く(本実施の形態においては、「濃度値は小さくなる」と表現)、画素値が「255」に近い方が実際の濃度は低くなる(本実施の形態においては、「濃度値は大きくなる」と表現)。
【0052】
(3)原稿種別判定
つづいて、制御部100は、原稿種別の判定を行う。原稿種別の判別方法は、領域画素毎にカウントされた領域画素数を、予め定められている下地領域、印画紙領域、網点領域および文字領域にそれぞれ対応する閾値と比較して原稿全体の種別を判定する。
【0053】
たとえば、文字、網点、印画紙写真の順に検出精度が高いとすると、文字領域の画素の比率が全画素数の30%以上の場合には文字原稿であると判定し、網点領域の画素の比率が全画素数の20%以上の場合には網点原稿(印刷写真原稿)であると判定し、印画紙領域の画素の比率が全画素数の10%以上の場合には印画紙写真原稿であると判定する。また、文字領域の比率と網点領域の比率とが、それぞれ閾値以上であるときは、文字/網点原稿(文字印刷写真原稿)であると判定する。さらに文字領域の比率と印画紙領域の比率とが、それぞれ閾値以上であるときには、文字/写真原稿(文字印画紙写真原稿)であると判定する。
【0054】
(4)下地除去を行う対象の原稿か否かの判定
つづいて、制御部100は、判定した原稿の種別が下地除去を行うべき原稿であるか否かの判定を行う。下地除去を行うべき原稿とは、文字原稿、印画紙領域を含まない原稿、文字/網点原稿(文字印刷写真原稿)で網点領域の比率が小さい原稿(例えば、網点領域の比率が原稿全体に対して40%以下の原稿)などである。
【0055】
(5)下地除去を行う下地があるか否かの判定
下地除去を行うべき原稿であると判定した場合には、制御部100は、下地除去を行うべき下地領域があるか否かを判定する。ヒストグラムから求められた最小の下地画素濃度値Aが、予め定める下地濃度値以上である場合には、下地除去すべき下地領域があると判定し、最小の下地画素濃度値Aが、予め定める下地濃度値未満である場合には、下地領域が下地除去すべきでない領域であると判定する。
【0056】
上述した手順により、制御部100は、画像データに含まれる下地領域が下地除去すべき領域であるか否かを判定する。画像データに含まれる下地領域が下地除去すべき領域である場合は、制御部100は、下地除去処理を実行する(ステップS107;Yes)。一方、制御部100は、画像データに含まれる下地領域が下地除去すべき領域ではない場合は、図4に示した処理を終了する(ステップS107;No)。
【0057】
下地除去処理を実行する場合、制御部100は、下地除去処理に用いる下地除去テーブルを選択するために、ステップS106において生成したヒストグラムから、境界を算出する(ステップS108)。本実施形態における境界とは、ヒストグラムを2つの範囲に分割する箇所をいう。具体的には、例えば、区分12と区分13との間といった箇所が境界となる。
【0058】
境界は、所定の方法で求められればよい。例えば、ヒストグラムにピークとなる区分が2つある場合、当該2つの区分の中間に相当する箇所が境界とされてもよいし、当該2つの区分のうち、最も頻度が低い区分と当該区分に隣接する区分との間を境界とされてもよい。また、ヒストグラムを2つの正規分布の和と仮定し、2つの正規分布のパラメータに基づいて境界が算出されてもよい。このような処理によって算出された境界は、例えば、図5(b)に示す。
【0059】
つづいて、制御部100は、ステップS108において判定した境界に基づいて、下地除去のレベルを判定する(ステップS110)。例えば、制御部100は、境界の隣の区分の番号と対応する番号のレベルを選択する。具体的には、ステップS108において境界が区分12と区分13との間であれば、制御部100は、レベル13を下地除去のレベルとして判定する。そして、制御部100は、当該判定したレベルに対応した下地除去テーブルに基づく下地除去処理を行う。
【0060】
つづいて、制御部100(画像処理部104)は、自動下地処理を実行することで、ステップS102において取得した画像の画像データ(第1の画像データ)から自動的に下地を除去した画像データ(第2の画像データ)を生成する(ステップS112)。自動下地処理は、ステップS102において取得した画像に含まれる各画素の濃度値を下地除去テーブル184に基づいて置換することで、当初取得された画像を明るくした画像に変換する処理をいう。ここでは、ステップS110において下地除去のレベルが判定されているため、制御部100(画像処理部104)は、当該レベルに基づき、濃度値を置換する。なお、本実施形態では、自動下地処理により下地を除去することを、自動下地除去ともいう。
【0061】
なお、下地除去処理は、上述した処理の方法のほか、既存の除去処理を用いることができ、たとえば、特開2000-354167号公報に記載の方法を用いることができる。たとえば、画像データに含まれる下地領域が、下地除去すべき領域であると判定した場合、制御部100は、下地濃度値に対応する下地除去テーブルを選択し、下地除去処理を行う。
【0062】
つづいて、制御部100(エッジ検出部106)は、ステップS112において自動下地除去を行った画像に対して、エッジ処理(エッジの検出)を行う(ステップS114)。なお、制御部100(エッジ検出部106)は、ステップS114の処理と並行して、自動下地除去を行っていない画像に対しても、エッジ処理(エッジの検出)を行う(ステップS116)。
【0063】
つづいて、情報欠落判定部108は、ステップS114においてエッジ処理がされた画像と、ステップS116においてエッジ処理がされた画像とを比較する(ステップS118)。例えば、情報欠落判定部108は、ステップS114においてエッジ処理がされた画像に含まれる画素の濃度値から、ステップS116においてエッジ処理がされた画像における対応する位置の画素の濃度値を引いたモノクロの画像(比較画像)を生成する。この場合、2つの画像の濃度値の大きさが、比較画像の各画素における濃度値として現れる。したがって、比較画像においては、濃度値が大きい画素ほど2つの画像において差分が大きい画素を示し、濃度値が小さい画素ほど2つの画像において差分が小さい画素を示す。
【0064】
つづいて、情報欠落判定部108は、情報の欠落があるか否かを判定する(ステップS120)。例えば、ステップS118において差分画像が生成されている場合、情報欠落判定部108は、差分画像に含まれるがその画素値に基づいて、情報の欠落の程度や情報の欠落が生じている領域の大きさを定量的に算出する。
【0065】
なお、情報の欠落の程度や情報の欠落が生じた領域の大きさに基づいて算出された値を、本実施形態では差分スコアという。情報欠落判定部108は、差分スコアの値が、予め設定された閾値以上である場合、ステップS102において取得(入力)された画像をステップS110において判定した判定パターンに基づいて明るい画像に変換すると、情報の欠落がある(生じる)と判定する。
【0066】
具体的には、情報欠落判定部108は、以下の方法により、差分スコア及び情報の欠落の有無の判定を行う。
(1)所定の濃度値以上の濃度値を有する画素の数に基づく方法
情報欠落判定部108は、差分画像から、予め定められた判定用の濃度値(判定濃度値)以上の画素を計数する。例えば、情報欠落判定部108は、差分画像の各画素に対して濃度値としてMIN(R,G,B)を算出し、算出した濃度値が判定濃度値以上であるか否かを判定する。算出した濃度値が判定濃度値以上であれば、情報欠落判定部108は、当該画素が所定の濃度値以上の濃度値を有する画素であるとして、カウントする。情報欠落判定部108は、このようにカウントすることで計数した画素の数を差分スコアとする。
【0067】
また、情報欠落判定部108は、閾値を、画像の大きさに対する所定の割合(判定割合)の画素数又は画像の大きさに対応する画素数(判定画素数)とする。情報欠落判定部108は、差分スコアが判定割合に基づく画素数又は判定画素数以上である場合、情報の欠落があると判定する。
【0068】
(2)濃度値の総和を差分スコアとする方法
情報欠落判定部108は、差分画像に含まれる画素の濃度値を全て足し合わせた値を差分スコアとする。また、情報欠落判定部108は、閾値を、画像の大きさに対応するスコア(判定スコア)とする。情報欠落判定部108は、差分スコアが判定スコア以上である場合、情報の欠落があると判定する。
【0069】
ステップS120において情報の欠落がないと判定した場合は、制御部100(出力制御部110)は、ステップS102において入力された画像の画像データ(第1の画像データ)に対して、自動下地除去を実施した画像データ(第2の画像データ)を出力する(ステップS120;No→ステップS122)。例えば、出力制御部110は、ステップS112において生成した画像を、画像形成部130を介して記録用紙に形成する制御を行ったり、通信部190を介して他の装置に送信制御を行ったりする。
【0070】
一方で、ステップS120において情報の欠落があると判定された場合は、制御部100(出力制御部110)は、自動下地除去の処理をキャンセル(スキップ)することで、ステップS102において入力された画像の画像データ(第1の画像データ)を出力する(ステップS120;Yes→ステップS124)。
【0071】
[1.3 動作例]
つづいて、本実施形態の動作例を、図6及び図7を参照して説明する。はじめに、図6を参照して、情報の欠落について説明する。
【0072】
図6(a)は、ユーザの操作に基づいて読み取られた原稿の画像P100を示す図である。図6(a)に示すように、画像P100は画像全体に薄い下地が現れている。さらに、画像P100には、濃い文字が現れる領域E100、薄い文字が現れる領域E102、濃い図形が現れる領域E104、薄い図形が現れる領域E106が含まれる。薄い文字や薄い図形とは、下地領域における下地の濃度(輝度)と近い濃度(輝度)によって現された文字や図形をいう。このうち、領域E100及び領域E104は文字領域として分離され、領域E102及び領域E106は印画紙領域や下地領域として分離される可能性が高い。
【0073】
図6(b)は、画像P100に対して、自動下地処理を実行した場合における画像P110を示す図である。画像P100から下地を除去することで、画像P110に示すように、画像全体に現れていた薄い下地は消える(下地が飛ぶ)が、画像P100に現れていた薄い文字や薄い図形も消えてしまう。つまり、画像P100を明るくすることで、薄い文字や薄い図形という情報が欠落してしまう。この結果、画像P110には、濃い文字の領域E110及び濃い図形の領域E112のみが残り、元々存在していた薄い文字や薄い図形は、ユーザによって視認できなくなる。
【0074】
つづいて、図7を参照して、エッジ処理について説明する。図7(a)は、図6(a)に示した画像P100をエッジ処理することにより検出されたエッジの画像P120である。画像P120には、濃い文字のエッジを含む領域E120、薄い文字のエッジを含む領域E122、濃い図形のエッジを含む領域E124、薄い図形のエッジを含む領域E126が含まれる。
【0075】
一方、図7(b)は、図6(b)に示した画像P100をエッジ処理することにより検出されたエッジの画像P130である。画像P130には、濃い文字のエッジを含む領域E130及び濃い図形のエッジを含む領域E134が含まれる。
【0076】
ここで、画像P120と画像P130との画像の差分を取ると、画像P120に含まれる領域E122及び領域E126に含まれるエッジが差分として現れる。したがって、領域E122及び領域E126に含まれるエッジが、画像P100を明るくすることにより欠落する情報として示される。
【0077】
閾値が適切に設定されることにより、領域E122及び領域E126に含まれるエッジに基づく差分スコアの値が閾値以上であると判定され、自動下地除去をキャンセルされる。その結果として、図6(a)に示したような画像P100が画像形成装置10から出力されることとなる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、濃度値に基づいて下地除去処理を実行するか否かの判定や、下地除去テーブルの判定や、入力値である濃度値を出力値に変換する処理を実行することとして説明したが、判定や処理に用いる値は、明度や輝度値であってもよい。この場合、制御部100は、入力されたRGBの濃度値信号に基づく濃度値を、HSV色空間やXYZ色空間における画素値に変換し、明度や輝度値を求める。そして、制御部100は、明度や輝度値に基づき、下地除去処理を実行可否や、下地除去テーブルの判定を行う。また、制御部100は、下地除去テーブルに基づき明度や輝度値を変換し、変換後の画素値を、RGBの濃度信号に変換し直す。このようにすることで、制御部100は、RGBのそれぞれに対応する濃度値を、明度や輝度値に基づき変換することで、下地除去を行うことができる。
【0079】
本実施形態によれば、下地の輝度に併せて下地除去を行った場合に、下地に近い濃度の文字や図形等の情報が下地とともに消えてしまい、必要な情報が欠落するといったことを防ぐことができる。そのため、下地除去で消えてしまうような情報が画像に現れていても、当該情報を消さずに再現させることが自動で可能となる。
【0080】
[2.第2実施形態]
つづいて第2実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と異なり、情報の欠落がある場合に、下地除去の処理の方法(レベル)を切り替える実施形態である。本実施形態は、第1実施形態の図4図8に置き換えたものである。なお、同一の機能部及び処理には同一の符号を付し、説明については省略する。
【0081】
図8を参照して、本実施形態のメイン処理について説明する。本実施形態では、ステップS120において情報の欠落があると判定された場合、制御部100は、ステップS102において取得した画像(第1の画像データ)は出力する処理を省略する。その代わりに、制御部100は、ステップS110において判定したレベルの番号よりも小さい番号のレベルに変更する(ステップS120;Yes→ステップS202)。すなわち、本実施形態では、制御部100は、下地除去のレベル(程度)を弱くした上で、ステップS112から処理を繰り返す。これにより、2回目のステップS112の処理において、画像処理部104は、ステップS102において取得した画像を、当初取得された画像よりも明るく、かつ、1回目にS112を実行したときよりも暗い画像を生成する。
【0082】
この結果、2回目の自動下地除去において生成される画像(第3の画像データ)は、1回目の自動下地除去において生成される画像(第2の画像データ)よりも、ステップS102において取得された画像(第1の画像データ)に近い画像となる。そのため、2回目のステップS118において生成される比較画像に含まれる画素の濃度値は、1回目のステップ118において生成される比較画像に含まれる濃度値よりも小さくなり、差分スコアも小さくなる。
【0083】
このとき、2回目の差分スコアが閾値未満であれば、出力制御部110は、ステップS202において変更されたレベルに基づいて自動下地除去が実施された画像(第3の画像データ)を出力する(ステップS120;No→ステップS124)。
【0084】
なお、ステップS120において再度情報の欠落があると判定した場合(ステップS120;Yes)、制御部100は、ステップS202及びステップS112からステップS120までの処理を再度実行すればよい。なお、2回目以降のステップS202においては、制御部100は、直前に実行したステップS202において判定したレベルの番号よりも小さい番号のレベルに変更することで、下地処理のレベルをさらに弱くする。
【0085】
このように、徐々に下地処理のレベルを弱くすることで、制御部100は、情報が欠落しないレベルにおける下地処理を実行することができ、情報が欠落しない画像データを出力することができる。言い換えれば、制御部100は、差分スコアが閾値未満となる下地除去のレベルを探索し、最適なレベルに基づく自動下地除去を実行することにより、下地除去を最適化することができる。
【0086】
本実施形態における動作例を図9を参照して説明する。図9(a)は、ユーザの操作によって読み取られた原稿の画像P200を示す図である。図9(a)に示すように、画像P200は画像全体に薄い下地が現れており、さらに、濃い文字及び薄い文字と、濃い図形及び薄い図形とが現れている。
【0087】
図9(b)は、画像P200に対して、最適なレベルに基づく自動下地除去が実行された画像P210を示す。画像P210に示すように、最適なレベルに基づく自動下地除去が実行されることにより、下地が除去されつつ、薄い文字及び薄い図形の欠落を防ぐことができる。
【0088】
本実施形態によれば、下地除去を実行することで下地以外の情報が欠落する場合、下地除去の処理の方法を切り替えて、下地以外の情報が欠落しない画像を出力することができる。
【0089】
[3.第3実施形態]
つづいて第3実施形態について説明する。第3実施形態は第1実施形態と異なり、情報の欠落がある場合、欠落した情報に対応する画像に対して輪郭を強調する処理を実行し、欠落した情報に対応する画像を、輪郭を強調した画像に置き換えて出力する実施形態である。本実施形態は、第1実施形態の図4図10に置き換えたものである。なお、同一の機能部及び処理には同一の符号を付し、説明については省略する。
【0090】
図10を参照して、本実施形態のメイン処理について説明する。本実施形態では、ステップS120において情報の欠落があると判定された場合、制御部100(出力制御部110)は、輪郭強調処理を実行する(ステップS120;Yes→ステップS302)。
【0091】
輪郭強調処理とは、下地除去を行い、下地除去により欠落した情報が含まれる領域の画像を、当該領域に含まれる画像に対して輪郭を強調させた画像に置き換える処理をいう。具体的には、制御部100(出力制御部110)は、以下の処理を実行する。
【0092】
(1)下地除去により情報が欠落する領域の特定
制御部100(出力制御部110)は、下地除去を実行することで、情報が欠落する領域を特定する。例えば、制御部100(出力制御部110)は、ステップS118において生成される比較画像のうち、所定の濃度値以上の濃度値の画素を含む領域(所定の差分が現れている領域)を、情報が欠落する領域として特定する。
【0093】
(2)輪郭を強調した画像の生成
制御部100(出力制御部110)は、ステップS102において取得された画像のうち、情報が欠落する領域に含まれる画像を抽出し、抽出した画像に対して、輪郭を強調する処理を実行することで、輪郭を強調した画像を生成する。例えば、制御部100(出力制御部110)は、画像処理部104に対して、情報が欠落する領域に含まれる画像と当該画像に対してエッジ処理を実行した画像とを合成させる処理を実行させることで、輪郭を強調した画像を生成する。
【0094】
(3)自動下地除去後の画像に対する画像の合成
制御部100(出力制御部110)は、自動下地除去がされた画像に対して、情報が欠落する領域の画像を、輪郭を強調した画像に置き換えることで、自動下地除去後の画像と、輪郭を強調した画像とを合成する。これにより、下地除去によって消えた薄い文字や薄い図形は、輪郭のみ強調された文字や図形に置き換わる。
【0095】
なお、制御部100(出力制御部110)は、上述した(3)の処理を行った後、当該処理後の画像の画像データを画像形成部130や通信部190を介して出力すればよい。
【0096】
本実施形態における動作例を図11を参照して説明する。図11(a)は、ユーザの操作に基づいて読み取られた原稿の画像P300を示す図である。図11(a)に示すように、画像P300は画像全体に薄い下地が現れており、さらに、薄い文字が現れる領域E300と、薄い図形が現れる領域E302とが含まれる。
【0097】
図11(b)は、本実施形態によって出力される画像P310を示す図である。図11(b)に示すように、画像P300に含まれる薄い文字及び薄い図形は輪郭が強調された図形に置き換えられるため、画像P310には、輪郭が強調された文字が現れる領域E310と、輪郭が強調された図形が現れる領域E312とが含まれる。
【0098】
本実施形態によれば、下地除去によって情報が欠落することを防ぎ、さらに、下地除去によって欠落するような、薄い文字や薄い図形を、ユーザに対して視認しやすい画像にした上で出力することが可能となる。
【0099】
[4.第4実施形態]
つづいて第4実施形態について説明する。第4実施形態は第1実施形態と異なり、取得された画像の特徴に応じて、下地除去を実行するか否かを切り替える実施形態である。本実施形態は、第1実施形態の図4図12に置き換えたものである。なお、同一の機能部及び処理には同一の符号を付し、説明については省略する。
【0100】
図12を参照して、本実施形態のメイン処理について説明する。本実施形態では、制御部100は、画像入力部120を介して原稿を読み取ったあと、当該原稿の種類を判定する(ステップS402)。
【0101】
原稿の種類の判定について、図13及び図14を参照して説明する。本実施形態では、制御部100は、最初に読み取った原稿の特徴を5つの項目(判定項目)に分けて判定し、次に、それぞれの判定項目の結果に基づいて、原稿の種類を判定する。
【0102】
はじめに、図13を参照して、原稿の特徴に関する判定項目について説明する。図13は、本実施形態における判定項目について、判定項目毎に、判定に用いる情報と、当該判定によって算出される判定結果とを示した表である。本実施形態では、制御部100は、以下の5つの判定項目に対して判定を行う。
【0103】
(1)文字
制御部100は、原稿が文字原稿であるか否かを判定する。文字原稿とは、主に文字によって構成されている原稿をいう。文字原稿であるか否かを判定するために用いる情報は、文字の画像を構成するエッジ画素の総数を用いる。文字の画像を構成するエッジ画素は、例えば、注目している画素と周辺の画素との濃度値の差分が大きく、急な立ち上がりを示すエッジの画素である。
【0104】
制御部100は、読み取った原稿の画像データに含まれる画素を1つ選択し、注目画素を中心とした近傍の範囲(例えば、注目画素を中心とした縦5画素、横5画素のブロック)において、濃度値の変化を算出する。このとき、制御部100は、注目画素と隣接する画素との濃度値の差が予め定められた所定の変化量以上であり、急峻な濃度値の変化が生じていると看做せる場合、注目画素が急な立ち上がりを示すエッジの画素であると判定する。制御部100は、注目画素を1つずつずらして、画像データ全体に対して、急な立ち上がりを示すエッジの画素の数をカウントする。このようにしてカウントした値を、文字の画像を構成するエッジ画素の総数(総文字エッジ画素数)として算出する。
【0105】
制御部100は、総文字エッジ画素数が所定の画素数以上である(所定の大きさの文字領域が存在する)場合、原稿が文字原稿であると判定し、総文字エッジ画素数が所定の画素数未満である場合、原稿が文字原稿ではない(所定の大きさの文字領域が存在しない)と判定する。なお、本実施形態では、原稿が文字原稿であるか否かを示す判定結果を、所定の大きさの文字領域があれば1を、所定の大きさの文字領域がなければ0を示した文字領域判定結果とする。
【0106】
(2)網点
制御部100は、原稿に所定の大きさの網点領域が存在するか否かを判定する。制御部100は、読み取った原稿の画像データに含まれる画素を1つ選択し、注目画素を中心とした近傍の範囲(例えば、注目画素を中心とした縦5画素、横5画素のブロック)において、濃度値の変化を算出する。このとき、制御部100は、ブロック内の濃度値の変化が、網点と看做せる特徴を示しているとき、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判定する。制御部100は、注目画素を1つずつずらして、画像データ全体に対して、網点領域に含まれる画素と看做せる画素の数をカウントする。また、制御部100は、網点領域に含まれる画素と看做せる画素の数(網点画素カウント)に基づき、網点領域の大きさを算出する。
【0107】
制御部100は、網点領域の大きさが所定の大きさ以上であれば、所定の大きさの網点領域が存在すると判定し、網点領域の大きさが所定の大きさ未満であれば、所定の大きさの網点領域が存在しないと判定する。なお、本実施形態では、所定の網点領域が含まれるか否かを示す判定結果を、所定の大きさの網点領域があれば1を、所定の大きさの網点領域がなければ0を示した網点領域判定結果とする。
【0108】
(3)印画紙
制御部100は、原稿に所定の大きさの印画紙領域が存在するか否かを判定する。ここで、印画紙領域の特性を、周囲の濃度値の変化が少ないベタ領域であると仮定する。
【0109】
制御部100は、読み取った原稿の画像データに含まれる画素を1つ選択し、注目画素を中心とした近傍の範囲(例えば、注目画素を中心とした縦5画素、横5画素のブロック)において、濃度値の変化を算出する。このとき、制御部100は、注目画素と隣接する画素との濃度値の差が予め定められた所定の変化量未満であるなど、注目画素の周辺における濃度値の変化が少ない場合、注目画素がベタ領域に含まれる画素であると判定する。制御部100は、注目画素を1つずつずらして、画像データ全体に対して、ベタ領域に含まれる画素と看做せる画素の数をカウントする。また、制御部100は、ベタ領域に含まれる画素と看做せる画素の数(ベタ画素カウント)に基づき、印画紙領域の大きさを算出する。
【0110】
制御部100は、印画紙領域の大きさが所定の大きさ以上であれば、所定の大きさの印画紙領域が存在すると判定し、印画紙領域の大きさが所定の大きさ未満であれば、所定の大きさの印画紙領域が存在しないと判定する。なお、本実施形態では、所定の印画紙領域が含まれるか否かを示す判定結果を、所定の大きさの印画紙領域があれば1を、所定の大きさの印画紙領域がなければ0を示した印画紙領域判定結果とする。
【0111】
(4)ブランク
ブランクとは、文字や記号といった画像が含まれない画像(例えば、白紙の原稿の画像)をいう。制御部100は、画像データに含まれる画素全体を対象にした濃度値のヒストグラム(ブランク判定用ヒストグラム)を生成する。このとき、特定の区分に濃度値の出現頻度が極度に集中している場合、制御部100は、ブランクであると判定する。例えば、画像に文字や図形などが現れず、画像全体が白い画素や所定の濃度値の画素で構成される場合は、所定の区分に、濃度値の出現頻度が極度に集中することとなる。したがって、制御部100は、画像データに含まれる画素の数に対する特定の区分に含まれる画素の数が、所定の割合(例えば、90%)以上である場合や、ヒストグラムの分散が所定の値未満である場合は、ブランクであると判定する。ここで、ブランクと判定する場合に用いられる割合の値や、分散の値の範囲は、予め定められていてもよいし、ユーザによって設定されてもよい。なお、本実施形態では、ブランクであるか否かを示す判定結果を、ブランクであれば1を、ブランクでなければ0を示したブランク判定結果とする。
【0112】
(5)全体ヒストグラム(薄い原稿)
薄い原稿とは、濃度値が高い画素によって文字や記号が現される画像をいう。例えば、制御部100は、画像データに含まれる画素全体を対象にした濃度値のヒストグラム(全体判定用ヒストグラム)を生成する。このとき、ヒストグラムの分散が所定の値以上であり、ヒストグラムの平均が所定の値以上である場合、薄い原稿であると判定する。例えば、制御部100は、全体判定用ヒストグラムの分散が、ブランクの画像(白紙の原稿の画像)と判定する場合における分散の値より大きく、かつ、所定の値よりも小さく、さらに、濃度値の平均値が高い場合、薄い原稿であると判定する。すなわち、画像の濃度値はある程度分散しているものの、濃度値が全体的に高い場合、制御部100は、画像が薄い原稿の画像であると判定する。薄い原稿であると判定する場合に用いられる分散の値や平均値の値は、予め定められていてもよいし、ユーザによって設定されてもよい。なお、本実施形態では、薄い原稿であるか否かを示す判定結果を、薄い原稿であれば1を、薄い原稿以外であれば0を示した全体ヒストグラム結果とする。
【0113】
このようにして、制御部100は、判定項目毎に、0又は1を示すフラグの情報(判定結果)を取得する。
【0114】
つづいて、図14を参照して、判定結果に基づく原稿の種類(モード)の判定及び下地除去の有無について説明する。図14におけるT400は、判定項目毎の判定結果の組み合わせを示す表である。図14におけるT410は、T400に示された判定結果の組み合わせに対応する原稿の種類(モード)を示す表である。図14におけるT420は、T410に示された原稿の種類(モード)に対応する下地除去の有無を示す表である。なお、T400、T410、T420に示した表は、例えば、予め記憶部180に記憶されているものとする。
【0115】
T400における判定項目は、図13に示した判定項目と対応する。また、図13に示した判定結果は、判定項目毎のフラグの情報に対応する。なお、判定結果に1または0の値が含まれていない箇所(具体的には、ハイフンが含まれている箇所)の判定結果は、考慮しないことを示す。
【0116】
また、T410に示すように、本実施形態では、原稿の種類を、ブランクの原稿、文字の原稿、写真の原稿、印刷(網点)を含む原稿、薄い文字を含む原稿、地図等を含む原稿、文字及び印刷(網点)及び写真を含む原稿の7種類の何れかとする。
【0117】
また、本実施形態では、制御部100は、ステップS102において取得した原稿に対する判定項目の判定結果が、原稿の種類に対応する判定項目毎の判定結果の組み合わせの何れかと合致するか否かを、上述した原稿の種類の順番に沿って判定する。
【0118】
例えば、制御部100は、最初に、ステップS102において取得した原稿がブランクの原稿であるか否かを判定する。ここで、図14のE400に示すように、制御部100は、文字領域判定結果と網点領域判定結果と印画紙領域判定結果とが0で、ブランク判定結果が1である原稿は、全体ヒストグラム結果の判定結果に関わらず、原稿の種類がブランクの原稿であると判定する。ステップS102において取得した原稿がブランクの原稿でなければ、制御部100は、次に、当該原稿が文字の原稿であるか否かを判定する。
【0119】
本実施形態では、特に、全体ヒストグラムの結果が1である場合、原稿が薄い文字の原稿又は地図等を含む原稿であると判定される。図14のE402に示すように、制御部100は、文字領域判定結果と全体ヒストグラム結果が1であり、網点領域判定結果と印画紙領域判定結果とブランク判定結果が0である場合は、原稿の種類が薄い文字の原稿と判定する。
【0120】
また、原稿の種類が薄い文字の原稿でない場合は、制御部100は、図14のE404に示すように、全体ヒストグラム結果が1であるか否かを判定する。全体ヒストグラム結果が1であれば、制御部100は、原稿の種類が地図等を含む原稿と判定する。
【0121】
このようにして原稿の種類を判定したら、制御部100は、原稿の種類が薄い文字を含む原稿又は地図等を含む原稿であるか否かを判定する(ステップS404)。
【0122】
原稿の種類が薄い文字を含む原稿又は地図等を含む原稿である場合は、制御部100は、自動下地除去の処理をキャンセル(スキップ)する(ステップS404;Yes→ステップS124)。一方で、原稿の種類が薄い文字を含む原稿又は地図等を含む原稿ではない場合は、制御部100は、ステップS106からステップS112及びステップS122の処理を実行する(ステップS404;No)。
【0123】
なお、図14に示すように、原稿の種類が薄い文字を含む原稿及び地図等を含む原稿に加えて、原稿の種類が、写真の原稿、印刷(網点)を含む原稿である場合も、制御部100は、自動下地除去の処理をキャンセル(スキップ)してもよい。
【0124】
上述した処理により、制御部100は、薄い文字を含む原稿や地図等を含む原稿といった全体的に薄い原稿に対して、下地除去により情報が欠落した画像を出力するといったことを防ぐことができる。
【0125】
本実施形態によれば、薄い文字を含む原稿や地図等を含む原稿のような、原稿の画像を明るくすることで除法が欠落してしまう画像に対しては、下地除去をキャンセルすることができる。これにより、画像形成装置は、原稿の種類に基づいて、適切に下地除去の実施及び不実施を切り替えることができる。
【0126】
[5.第5実施形態]
つづいて第5実施形態について説明する。第5実施形態は、ユーザによって、情報の欠落がある場合における処理の方法や、許容する情報の欠落の量(閾値)を設定することが可能な実施形態である。
【0127】
本実施形態における画像形成装置12の機能構成を図15に示す。図15に示すように、画像形成装置12は、図2に示した画像形成装置10に比べて、さらに、制御部100が設定受付部112として機能する点が異なる。
【0128】
設定受付部112は、情報の欠落がある場合における処理の方法や許容する情報の欠落の量を設定するための設定画面を表示部140に表示する。また、設定受付部112は、設定画面に対するユーザからの操作を受け付ける。
【0129】
情報の欠落がある場合における処理の方法は、例えば、第1実施形態に示したしたように自動下地除去をキャンセルする方法と、第2実施形態に示したように下地除去の最適化を行う方法と、第3実施形態のように輪郭強調処理を実行する方法の何れかとする。また、許容する情報の欠落の量(閾値)は、例えば、判定割合を設定する。なお、閾値として、判定画素数や判定スコアを設定可能にしてもよい。また、制御部100は、設定画面を介した設定に基づいてメイン処理を実行する。
【0130】
図16は、設定受付部112が表示部140に表示する設定画面W500の例である。設定画面W500には、情報の欠落がある場合における処理の方法を選択することが可能なボタンを表示する領域E500と、許容する情報の欠落の量として判定割合(閾値)を設定するためのスライダーを表示する領域E504とが含まれる。また、設定画面W500には、設定内容を確定するためのOKボタンB500と、設定内容を取り消すためのキャンセルボタンB502とが含まれる。
【0131】
例えば、図16において、閾値の設定が1%である場合は、画像データ全体の画素数に対する差分画像に含まれる判定濃度値以上の濃度値を有する画素の数の割合が1%以上であるときには自動下地除去を行わないことを示す。同様に、図16において、閾値が10%であれば、画像データ全体の画素数に対する差分画像に含まれる判定濃度値以上の濃度値を有する画素の数の割合が10%以上であるときには自動下地除去を行わないことを示す。したがって、閾値が小さいほど、自動下地除去がキャンセル(スキップ)されやすくなる。
【0132】
なお、設定画面W500には、領域E502に示すように、薄い文字を含む原稿や地図等を含む原稿に対しては、下地除去をキャンセルすることが選択できるボタンが含まれてもよい。薄い文字を含む原稿や地図等を含む原稿に対して下地除去をキャンセルすることが選択された場合は、制御部100は、第4実施形態に記載した処理を実行すればよい。
【0133】
また、設定画面W500は設定画面の一例である。したがって、情報の欠落がある場合における処理の方法や、許容する情報の欠落の量(閾値)を設定できる画面であれば、設定画面W500に示した設定画面とは異なる画面が設定画面として表示されてもよい。
【0134】
本実施形態によれば、ユーザは、下地除去を行うことにより情報が欠落する場合の処理を所望する内容に切り替えたり、下地除去の処理の実施及び不実施を判定する際の基準となる閾値(許容する情報の欠落の量)を設定できたりする。
【0135】
[6.変形例]
本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0136】
また、上述した実施形態は、説明の都合上、それぞれ別に説明している部分があるが、技術的に可能な範囲で組み合わせて実行してもよいことは勿論である。
【0137】
また、実施形態において各装置で動作するプログラムは、上述した実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えば、RAM)に蓄積され、その後、各種ROM(Read Only Memory)やHDD等の記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。
【0138】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROMや、不揮発性のメモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD (Blu-ray(登録商標) Disk) 等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の何れであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本開示の機能が実現される場合もある。
【0139】
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本開示に含まれるのは勿論である。
【符号の説明】
【0140】
10、12 画像形成装置
100 制御部
102 領域分離部
104 画像処理部
106 エッジ検出部
108 情報欠落判定部
110 出力制御部
112 設定受付部
120 画像入力部
130 画像形成部
140 表示部
150 操作部
180 記憶部
182 画像データ記憶領域
184 下地除去テーブル
190 通信部
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