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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20240802BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F04D29/46 D
F04D29/66 L
F04D29/66 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020206795
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094019
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 瑛也
(72)【発明者】
【氏名】堅田 政範
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339152(JP,A)
【文献】米国特許第03251539(US,A)
【文献】独国特許発明第00967139(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の延びる軸線方向に前記軸線を中心として延びる回転軸、及び前記回転軸に固定されたインペラと、前記回転軸の端部に配置されて前記軸線方向における前記インペラの移動を規制するインペラキャップとを備えるロータと、
前記ロータを覆い、作動流体を内部に流入させる吸込口を有したハウジングと、
前記ハウジングの内部で前記インペラに対して前記軸線方向の第一側に配置され、前記ハウジングから前記軸線を中心とする径方向の内側に向かって延びて、前記軸線周りの周方向に間隔をあけて配置された複数の可動翼を有したインレットガイドベーンと、を備え、
前記径方向における前記可動翼の先端である翼先端部は、前記インペラキャップの外周面に対して前記径方向の外側に配置され、
前記軸線方向における前記翼先端部の少なくとも一部の位置が、前記軸線方向における前記インペラキャップの位置と重なり、
前記翼先端部は、前記軸線と平行な面であり、
前記インペラキャップは、筒状部と、キャップ先端部と、を有し、
前記筒状部は、前記軸線を中心として、前記軸線方向に一定の径で延びる円筒状に形成され、
前記キャップ先端部は、前記筒状部の前記軸線方向における第一側の端部を閉塞し、前記軸線方向の第一側から第二側に向かって次第に径が大きくなるように形成され、
前記インレットガイドベーンは、全開状態で、前記軸線方向に対して前記可動翼の翼コード方向が平行となるよう配置されている状態となり、全閉状態で、前記軸線方向に対し、前記翼コード方向が直交している状態となるように前記可動翼を回転させ、
前記全開状態である場合、前記翼先端部における前縁部は、前記軸線方向において、前記キャップ先端部の前記軸線方向の第一側の先端に対して前記軸線方向の第二側に配置され、前記翼先端部における後縁部は、前記筒状部と、前記軸線方向で重なる位置に配置され、
前記全閉状態である場合、前記軸線方向における前記翼先端部の全域の位置が、前記軸線方向における前記キャップ先端部の位置と重なっている回転機械。
【請求項2】
複数の前記可動翼は、それぞれ、前記径方向に延びる軸部周りに回転可能とされ、
前記可動翼が前記軸線と直交する断面視で最も薄くなるように回転した場合に、前記軸線方向における前記翼先端部の少なくとも一部の位置が、前記軸線方向における前記インペラキャップの位置と重なっている請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記軸線方向における前記翼先端部の全域の位置が、前記軸線方向における前記インペラキャップの位置と重なっている請求項1又は2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記軸線方向から見た際に、前記可動翼の全域は、前記インペラキャップに対して前記径方向の外側に配置されている請求項1からの何れか一項に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、遠心圧縮機は、回転するインペラの内部に作動流体を流通させ、インペラが回転する際に発生する遠心力を利用してガス状態の作動流体を圧縮する。特許文献1に開示されているように、このような遠心圧縮機において、外部から導入する作動流体の流量を調整するため、入口案内翼(インレットガイドベーン)を備えたものがある。特許文献1に開示された構成では、インレットガイドベーン(Inlet Guide Vane:IGV)は、作動量体の入口流量の調整が必要なステージのインペラに対し、流れ方向のさらに上流側に配置されている。インレットガイドベーンは、ハウジングの内周面からハウジングの径方向の内側に向かって延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成において、インレットガイドベーンは、ハウジングの内周面から径方向の内側に延びており、いわゆる片持ち梁状をなしている。このため、インレットガイドベーンの径方向の長さが大きいと、ハウジング内における作動流体の流れによって自励振動(フラッタ)が生じやすくなる。特許文献1に記載の構成では、インレットガイドベーンの径方向の内側の先端部が、回転軸の外周面よりも径方向の内側まで延びている。このため、インレットガイドベーンのベーン本体が長くなり、自励振動が特に生じやすい。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、インレットガイドベーンの自励振動を抑えることができる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、軸線の延びる軸線方向に前記軸線を中心として延びる回転軸、及び前記回転軸に固定されたインペラと、前記回転軸の端部に配置されて前記軸線方向における前記インペラの移動を規制するインペラキャップとを備えるロータと、前記ロータを覆い、作動流体を内部に流入させる吸込口を有したハウジングと、前記ハウジングの内部で前記インペラに対して前記軸線方向の第一側に配置され、前記ハウジングから前記軸線を中心とする径方向の内側に向かって延びて、前記軸線周りの周方向に間隔をあけて配置された複数の可動翼を有したインレットガイドベーンと、を備え、前記径方向における前記可動翼の先端である翼先端部は、前記インペラキャップの外周面に対して前記径方向の外側に配置され、前記軸線方向における前記翼先端部の少なくとも一部の位置が、前記軸線方向における前記インペラキャップの位置と重なり、前記翼先端部は、前記軸線と平行な面であり、前記インペラキャップは、筒状部と、キャップ先端部と、を有し、前記筒状部は、前記軸線を中心として、前記軸線方向に一定の径で延びる円筒状に形成され、前記キャップ先端部は、前記筒状部の前記軸線方向における第一側の端部を閉塞し、前記軸線方向の第一側から第二側に向かって次第に径が大きくなるように形成され、前記インレットガイドベーンは、全開状態で、前記軸線方向に対して前記可動翼の翼コード方向が平行となるよう配置されている状態となり、全閉状態で、前記軸線方向に対し、前記翼コード方向が直交している状態となるように前記可動翼を回転させ、前記全開状態である場合、前記翼先端部における前縁部は、前記軸線方向において、前記キャップ先端部の前記軸線方向の第一側の先端に対して前記軸線方向の第二側に配置され、前記翼先端部における後縁部は、前記筒状部と、前記軸線方向で重なる位置に配置され、前記全閉状態である場合、前記軸線方向における前記翼先端部の全域の位置が、前記軸線方向における前記キャップ先端部の位置と重なっている
【発明の効果】
【0007】
本開示の回転機械によれば、インレットガイドベーンの自励振動を抑えるとともに、インレットガイドベーンとインペラとの間で噴流が生じるのを有効に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る回転機械の概略構成を示す図である。
図2】上記回転機械においてインレットガイドベーンの可動翼を全開状態とした状態の構成を示す断面図である。
図3図2の要部を拡大した断面図である。
図4】上記インレットガイドベーンの可動翼を全閉状態とした状態の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示による回転機械を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
(ギアド圧縮機(回転機械)の構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る回転機械としてのギアド圧縮機(遠心圧縮機)1は、ロータ3と、ハウジング2(図2参照)と、インレットガイドベーン6(図2参照)と、ラジアル軸受12と、スラスト軸受17と、を主に備えている。
【0011】
(ロータの構成)
ロータ3は、ハウジング2に対して、軸線Oを中心として回転可能とされている。ロータ3は、回転軸30と、インペラ40と、インペラキャップ38と、を備えている。
【0012】
回転軸30は、軸線Oの延びる軸線方向Daに軸線Oを中心として延びている。図1に示すように、回転軸30は、一対のラジアル軸受12により軸線O周りに回転自在に支持されている。一対のラジアル軸受12は、軸線方向Daに間隔をあけて配置されている。回転軸30は、一対のスラスト軸受17により、軸線方向Daへの移動が拘束されている。一対のスラスト軸受17は、一対のラジアル軸受12の間で、後述するピニオンギア15に対して軸線方向Daの両側に離間した位置に配置されている。
【0013】
回転軸30は、増速伝達部11を介して外部のモータ等の駆動源(図示無し)に接続されている。増速伝達部11は、ピニオンギア15と、大径ギア16と、を備えている。ピニオンギア15は、一対のラジアル軸受12の間で、回転軸30に固定されている。大径ギア16は、ピニオンギア15に噛み合っている。大径ギア16は、駆動源によって回転駆動される。大径ギア16は、ピニオンギア15よりも外径寸法が大きく設定されている。したがって、ピニオンギア15が固定された回転軸30の回転数は、大径ギア16の回転数よりも大きくなる。つまり、増速伝達部11は、外部の駆動源による大径ギア16の回転数を、ピニオンギア15を介して増速させて回転軸30に伝達する。
【0014】
インペラ40は、回転軸30の軸線方向Daにおける両側の端部にそれぞれ配置されている。図2に示すように、各インペラ40は、本実施形態において、ディスク41とブレード42とカバー43とを備えた、いわゆるクローズドインペラである。なお、インペラ40は、カバー43を有しないオープンインペラであってもよい。
【0015】
ディスク41は、円盤状で、回転軸30に固定されている。ディスク41は、軸線方向Daでカバー43を向く第一面41aと、軸線方向Daで第一面41aと反対側を向く第二面41bと、を有している。第二面41bは、インペラ40における背面である。ここで、図1に示したように、ギアド圧縮機1は、本実施形態において、回転軸30の軸線方向Daにおける両端部にインペラ40を一つずつ備えている。各インペラ40は、軸線方向Daにおいて、背面であるディスク41の第二面41bをピニオンギア15に向け、第一面41aをピニオンギア15とは反対側の回転軸30の端部に向けて配置されている。つまり、回転軸30の第一端に設けられた第一段インペラ40Aと、回転軸30の第二端に設けられた第二段インペラ40Bとでは、背面が互いに向かい合うようにディスク41の向きが軸線方向Daで反対向きに配置されている。
【0016】
以下の説明では、各インペラ40において、ディスク41の第一面41a側を軸線方向Daの第一側Da1とし、第二面41b側を軸線方向Daの第二側Da2とする。すなわち、第一段インペラ40Aと、第二段インペラ40Bとでは、軸線方向Daの第一側Da1と軸線方向Daの第二側Da2とが、互いに反対向きとされている。
【0017】
図2に示すように、ブレード42は、ディスク41の第一面41aからカバー43まで延びている。ブレード42は、軸線O周りの周方向Dcに間隔を隔てて複数配置されている。
【0018】
カバー43は、ディスク41及び複数のブレード42に対し、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。カバー43は、円盤状で、複数のブレード42を覆うように形成されている。
【0019】
作動流体(例えば、空気)は、インペラ40に対し、軸線方向Daの第一側Da1から軸線方向Daの第二側Da2に向かって流れる。各インペラ40には、ディスク41とカバー43との間に、インペラ流路45が形成されている。インペラ流路45は、流入口45iと、流出口45oと、を有している。流入口45iは、インペラ40において、径方向Drの内側Driで軸線方向Daの第一側Da1に向くように開口している。ここで、径方向Drとは、軸線Oを中心とする方向である。流出口45oは、インペラ40の径方向Drの外側Droに向かって開口している。
【0020】
回転軸30の軸線方向Daにおける端部である軸端30sは、インペラ40に対して軸線方向Daの第一側Da1に突出している。軸端30sには、インペラキャップ38が固定されている。インペラキャップ38は、回転軸30とともに回転する。インペラキャップ38は、ロータ3の軸線方向Daにおける端部であるロータ端部3eを形成している。インペラキャップ38は、軸線方向Daにおけるインペラ40の移動を規制している。つまり、インペラキャップ38は、回転軸30から脱落しないようにインペラ40の軸線方向Daの位置を拘束している。
【0021】
図2及び図3に示すように、本実施形態のインペラキャップ38は、筒状部38aと、キャップ先端部38bと、を有している。筒状部38aは、軸線Oを中心として、軸線方向Daに一定の径で延びる円筒状に形成されている。筒状部38aの内側には、回転軸30の軸端30sが挿入されている。キャップ先端部38bは、筒状部38aの軸線方向Daにおける第一側Da1の端部を閉塞している。つまり、キャップ先端部38bは、筒状部38aに対して、軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。キャップ先端部38bは、軸線方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって次第に径が大きくなるように形成されている。本実施形態のキャップ先端部38bは、例えば半球状に形成されている。キャップ先端部38bは、筒状部38aと一体に形成されている。
【0022】
(ハウジングの構成)
図2に示すように、ハウジング2は、ロータ3を覆うように形成されている。ハウジング2は、金属製で、ギアド圧縮機1の外殻を形成する。ハウジング2は、インペラ40が配置される位置に対して、軸線方向Daの第二側Da2に、回転軸30が挿通される軸挿通孔21を有している。ハウジング2は、各インペラ40の周囲に、吸気ノズル22と、排気流路23と、を備える。
【0023】
吸気ノズル22は、ハウジング2の内部に作動流体を流入させる。吸気ノズル22は、軸線方向Daに延びるように筒状に形成されている。吸気ノズル22の内部には、軸線Oを中心とする吸込口22aが形成されている。吸気ノズル22は、吸込口22aを通して、ハウジング2の外部と、インペラ40の径方向Drにおける内側Driに開口したインペラ流路45の流入口45iとに連通している。インペラ40が軸線O周りの周方向Dcに回転することで、吸込口22aを通して、ハウジング2の外部から内部に作動流体が吸い込まれる。
【0024】
排気流路23は、ハウジング2の内部の作動流体をハウジング2の外部に流出させる。排気流路23は、インペラ流路45の流出口45oの径方向Drの外側Droに形成されている。排気流路23は、周方向Dcに連続する渦巻き状をなしている。
【0025】
(インレットガイドベーンの構成)
インレットガイドベーン6は、吸込口22aを通過する作動流体の流量を制御する。インレットガイドベーン6は、ハウジング2の吸気ノズル22の内側に配置されている。つまり、インレットガイドベーン6は、ハウジング2内でインペラ40に対して軸線方向Daの第一側Da1に配置されている。インレットガイドベーン6は、複数の可動翼60を有している。複数の可動翼60は、軸線方向Daから見て円形の断面をなする吸込口22a内に突出するように配置されている。複数の可動翼60は、吸気ノズル22の内周面に沿って、軸線O周りの周方向Dcに均等に間隔をあけて配置されている。
【0026】
可動翼60は、径方向Drに延びる中心軸線Ar周りに回転可能とされている。各可動翼60は、翼本体61と、軸部62とを有している。図3に示すように、各翼本体61は、中心軸線Arの延びる方向(径方向Dr)である翼高さ方向D1に吸気ノズル22の内周面から突出するように延びている。翼本体61は、径方向Drから見たときの断面形状が翼形をなしている。ここで、翼断面形状を有した翼本体61の前縁部611と後縁部612とを結ぶ方向である翼コード方向D2は、翼高さ方向D1(径方向Dr)と直交している。翼本体61は、径方向Drの外側Droから内側Driに向かって、翼コード方向D2の長さ(コード長)が次第に小さくなるように形成されている。
【0027】
翼本体61は、径方向Drの内側Driに翼先端部61sを有している。翼先端部61sは、軸線Oに対して平行な平面である。つまり、翼先端部61sは、軸線Oと平行な断面視において、軸線Oと平行となるように、直線状に延びている。したがって、翼先端部61sは、鋭角に形成されているわけではなく、翼コード方向D2におけるコード長Lが、一定長の面として形成されている。
【0028】
翼先端部61sは、インペラキャップ38に対し、径方向Drの外側Droに微小な間隔をあけて配置されている。本実施形態では、軸線方向Daから見た際に、可動翼60の全域は、筒状部38aよりも径方向Drの外側Droに配置されている。つまり、軸線方向Daから見た際に、翼本体61とインペラキャップ38とは、重なっていない。また、径方向Drにおける翼先端部61sの位置は、可動翼60が回転してもインペラキャップ38に接触しない範囲で、可能な限り筒状部38aの外周面に近いことが好ましい。
【0029】
軸部62は、翼本体61から径方向Drの外側Droに突出して形成されている。軸部62は、翼本体61と一体に形成されている。軸部62は、吸気ノズル22に形成された軸支持穴22hに挿入されている。軸部62は、軸支持穴22hに挿入された状態で、翼駆動装置(図示無し)によって、中心軸線Arを中心に回転可能とされている。これにより、翼本体61は、軸部62と一体に、中心軸線Ar周りに回転可能となっている。各可動翼60では、中心軸線Arを中心として回転させることで吸込口22aを流通する作動流体の流れ方向(軸線方向Da)に対する翼本体61の角度が調整される。複数の可動翼60を、それぞれ中心軸線Arを中心として回転させることで、インレットガイドベーン6が開閉される。
【0030】
ここで、図2及び図3に示すように作動流体の流れ方向(軸線方向Da)に対して可動翼60の翼コード方向D2が平行となるよう配置されている状態が、可動翼60の全開状態とされる。つまり、全開状態は、可動翼60(翼本体61)が軸線Oと直交する断面視で最も厚くなるように回転した状態である。可動翼60が全開状態となることで、吸込口22aを通過する作動流体の流量が最大となる。これに対し、可動翼60を全開状態から中心軸線Ar周りに回転させ、作動流体の流れ方向(軸線方向Da)に対して翼コード方向D2を交差させると、翼本体61で吸込口22aが徐々に遮られていく。その結果、インレットガイドベーン6を通して吸込口22aからインペラ40に流入する作動流体の流量が減る。本実施形態では、図4に示すように、作動流体の流れ方向(軸線方向Da)に対し、翼コード方向D2が直交している状態が、可動翼60の全閉状態とされる。つまり、全閉状態は、可動翼60(翼本体61)が軸線Oと直交する断面視で最も薄くなるように回転した状態である。
【0031】
軸線方向Daにおける翼先端部61sの少なくとも一部の位置は、軸線方向Daにおけるインペラキャップ38の位置と重なっている。つまり、径方向Drから見た際に、翼先端部61sの一部が、インペラキャップ38と重なっている。本実施形態では、軸線方向Daにおける翼先端部61sの全域の位置が、軸線方向Daにおけるインペラキャップ38の位置と重なっている。
【0032】
具体的には、可動翼60が全開状態である場合、翼先端部61sにおける前縁部611sは、軸線方向Daにおいて、キャップ先端部38bの軸線方向Daの第一側Da1の先端38sに対して軸線方向Daの第二側Da2に配置されている。可動翼60が全開状態である場合、翼先端部61sにおける後縁部612sは、筒状部38aと、軸線方向Daで重なる位置に配置されている。
【0033】
また、図4に示すように、可動翼60が全閉状態である場合であっても、軸線方向Daにおける翼先端部61sの少なくとも一部の位置が、軸線方向Daにおけるインペラキャップ38に重なっている。本実施形態では、可動翼60が全閉状態である場合、軸線方向Daにおける翼先端部61sの全域の位置が、軸線方向Daにおけるキャップ先端部38bの位置と重なっている。
【0034】
このようなギアド圧縮機1において、作動流体は、インペラ40が回転軸30と一体に回転することで、吸込口22aからハウジング2の吸気ノズル22内に吸い込まれる。吸込口22a内で、作動流体は、インレットガイドベーン6を通り抜ける際に、インレットガイドベーン6の開度によって、その流量が調整される。インレットガイドベーン6を通り抜けた作動流体は、吸気ノズル22から流入口45iを経てインペラ流路45に取り込まれる。作動流体は、回転軸30と一体に回転するインペラ40で生じる遠心力により、流入口45iから流出口45oに向かって流れる。作動流体は、流入口45iから流出口45oに向かって流れる間に圧縮される。圧縮された作動流体は、流出口45oから径方向Drの外側Droに流出し、径方向Drの外側Droの排気流路23に送り込まれる。作動流体は、排気流路23に沿って軸線O周りに旋回する間に、さらに圧縮される。
【0035】
(作用効果)
上述したようなギアド圧縮機1によれば、インレットガイドベーン6を構成する複数の可動翼60のそれぞれの翼先端部61sの位置が、軸線方向Daにおいて、インペラキャップ38の位置と重なっている。これにより、径方向Drにおける翼本体61の翼高さ方向D1における長さである翼高さHを短くすることができる。翼本体61が短くなることで、翼本体61の振動を抑えることができる。具体的には、翼本体61の無次元振動数Fは、
F=L・ω/V …(1)
で表される。Lは翼本体61の翼コード方向D2における翼先端部61sでのコード長、ωは翼本体61の固有振動数、Vは作動流体の流速である。翼本体61の固有振動数ωは、翼本体61の翼高さHを短くすることが増加する。したがって、翼本体61の翼高さHを短くして可動翼60の固有振動数ωを増加させると、無次元振動数Fが大きくなる。可動翼60は、無次元振動数Fが大きくなるほど、作動流体の流れにともなう自励振動(フラッタ)が生じにくくなる。そのため、翼先端部61sの位置が、軸線方向Daにおいて、インペラキャップ38の位置と重なっていることで、吸込口22aからハウジング2内に流入した作動流体によって可動翼60が自励振動することが抑えられる。
【0036】
また、径方向Drにおける翼先端部61sの位置は、可動翼60が回転しても接触しないような隙間を開けて、インペラキャップ38に近い位置に形成されている。その結果、翼先端部61sとインペラキャップ38の外周面との間が非常に狭くなる。可動翼60を全閉状態とした場合、軸線方向Daから見た際に、吸込口22aの多くの領域が翼先端部61sによって遮られるが、翼先端部61sとインペラキャップ38の外周面との間には、環状の隙間が生じてしまう。その結果、この環状の隙間を通り抜けた作動流体によって噴流が生じてしまう場合がある。このような噴流が生じないように作動流体の流速を抑えると、遠心圧縮機の流量増大の妨げとなってしまう。しかしながら、隙間を微小とすることで、インレットガイドベーン6とロータ端部3eとの間を作動流体が通り抜けてしまうことが抑えられる。したがって、インレットガイドベーン6とロータ端部3eとの間で噴流が生じるのを有効に抑えることができる。
【0037】
また、翼先端部61sが軸線と平行な面として形成されている。これにより、翼先端部61sのコード長Lを大きくできる。その結果、上式(1)において、無次元振動数Fを大きくすることができる。これによっても、翼本体61の振動を抑えることができる。
【0038】
また、インレットガイドベーン6は、翼本体61が軸線Oと直交する断面視で最も薄くなる場合である全閉状態であっても、軸線方向Daにおいて、翼先端部61sの少なくとも一部がインペラキャップ38に重なっている。つまり、可動翼60がどのように回転しても常に、翼先端部61sの一部がインペラキャップ38に重なっている。これにより、径方向Drにおいて、翼本体61がハウジング2とインペラキャップ38との間に収まることとなる。その結果、径方向Drにおける翼本体61の翼高さHをより短くすることができる。このように翼本体61が短くなることで、翼本体61の振動をより抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、翼先端部61sの一部ではなく全域の位置が、軸線方向Daにおいて、インペラキャップ38の位置と重なっている。これにより、径方向Drにおける翼本体61の翼高さ方向D1における長さである翼高さHを非常に短くすることができる。したがって、翼本体61が短くなり、翼本体61の振動を効果的に抑えることができる。
【0040】
また、軸線方向Daから見た際に、可動翼60の全域は、インペラキャップ38に対して径方向Drの外側Droに配置されている。つまり、翼本体61の全体が、軸線方向Daから見た場合に、インペラキャップ38と重ならないように、インペラキャップ38に対して、径方向Drの外側Droに配置されている。これにより、径方向Drにおける翼本体61の翼高さHを短くすることができる。したがって、可動翼60の固有振動数を高めることができる。これにより、上式(1)において、無次元振動数Fが大きくなり、自励振動が生じにくくなる。
【0041】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0042】
なお、上記実施形態では、ギアド圧縮機1の態様として、いわゆる一軸二段の構成を例に説明を行った。しかしながら、ギアド圧縮機1の態様はこれに限定されず、設計や仕様に応じて二軸四段や、それ以上の軸数、段数を備えていてもよい。
【0043】
また、本発明の回転機械は、ギアド圧縮機1に限らず、外部の駆動源によって回転軸30が直接回転駆動される方式の1軸多段の軸流式の遠心圧縮機等、ガスタービンや蒸気タービン等であってもよい。
【0044】
<付記>
実施形態に記載の回転機械1は、例えば以下のように把握される。
【0045】
(1)第1の態様に係る回転機械1は、軸線Oの延びる軸線方向Daに前記軸線Oを中心として延びる回転軸30、及び前記回転軸30に固定されたインペラ40と、前記回転軸30の端部に配置されて前記軸線方向Daにおける前記インペラ40の移動を規制するインペラキャップ38とを備えるロータ3と、前記ロータ3を覆い、作動流体を内部に流入させる吸込口22aを有したハウジング2と、前記ハウジング2の内部で前記インペラ40に対して前記軸線方向Daの第一側Da1に配置され、前記ハウジング2から前記軸線Oを中心とする径方向Drの内側Driに向かって延びて、前記軸線O周りの周方向Dcに間隔をあけて配置された複数の可動翼60を有したインレットガイドベーン6と、を備え、前記径方向Drにおける前記可動翼60の先端である翼先端部61sは、前記インペラキャップ38の外周面に対して前記径方向Drの外側Droに配置され、前記軸線方向Daにおける前記翼先端部61sの少なくとも一部の位置が、前記軸線方向Daにおける前記インペラキャップ38の位置と重なっている。
回転機械とは、例えば、ギアド圧縮機、軸流式の遠心圧縮機、ガスタービン、蒸気タービン等である。
【0046】
この回転機械1において、インレットガイドベーン6を構成する複数の可動翼60のそれぞれの翼先端部61sの少なくとも一部の位置が、軸線方向Daにおいて、インペラキャップ38の位置と重なっている。これにより、径方向Drにおける可動翼60の翼高さ方向D1における長さである翼高さHを短くすることができる。可動翼60が短くなることで、可動翼60の振動を抑えることができる。
【0047】
(2)第2の態様に係る回転機械1は、(1)の回転機械1であって、前記翼先端部61sは、前記軸線Oと平行な面であってもよい。
【0048】
これにより、翼先端部61sのコード長Lを大きくできる。その結果、上式(1)において、無次元振動数Fを大きくすることができる。これにより、可動翼60の振動を抑えることができる。
【0049】
(3)第3の態様に係る回転機械1は、(1)又は(2)の回転機械1であって、複数の前記可動翼60は、それぞれ、前記径方向Drに延びる軸部62周りに回転可能とされ、前記可動翼60が前記軸線Oと直交する断面視で最も薄くなるように回転した場合に、前記軸線方向Daにおける前記翼先端部61sの少なくとも一部の位置が、前記軸線方向Daにおける前記インペラキャップ38の位置と重なっていてもよい。
【0050】
これにより、可動翼60がどのように回転しても常に、翼先端部61sの一部がインペラキャップ38に重なっている。その結果、径方向Drにおける可動翼60の翼高さHをより短くすることができる。このように可動翼60が短くなることで、可動翼60の振動をより抑えることができる。
【0051】
(4)第4の態様に係る回転機械1は、(1)から(3)の何れか一つの回転機械1であって、前記軸線方向Daにおける前記翼先端部61sの全域の位置が、前記軸線方向Daにおける前記インペラキャップ38の位置と重なっている。
【0052】
これにより、径方向Drにおける可動翼60の翼高さ方向D1における長さである翼高さHを非常に短くすることができる。したがって、可動翼60が短くなり、可動翼60の振動を効果的に抑えることができる。
【0053】
(5)第5の態様に係る回転機械1は、(1)から(4)の何れか一つの回転機械1であって、前記軸線方向Daから見た際に、前記可動翼60の全域は、前記インペラキャップ38に対して前記径方向Drの外側Droに配置されていてもよい。
【0054】
これにより、可動翼60の全体が、軸線方向Daから見た場合に、インペラキャップ38と重ならないように、インペラキャップ38に対して、径方向Drの外側Droに配置されている。これにより、径方向Drにおける可動翼60の翼高さHを短くすることができる。これにより、自励振動が生じにくくなる。
【符号の説明】
【0055】
1…ギアド圧縮機(回転機械)
2…ハウジング
3…ロータ
3e…ロータ端部
6…インレットガイドベーン
11…増速伝達部
12…ラジアル軸受
15…ピニオンギア
16…大径ギア
17…スラスト軸受
2…ハウジング
21…軸挿通孔
22…吸気ノズル
22a…吸込口
22h…軸支持穴
23…排気流路
30…回転軸
30s…軸端
38…インペラキャップ
38a…筒状部
38b…キャップ先端部
38s…先端
40…インペラ
40A…第一段インペラ
40B…第二段インペラ
41…ディスク
41a…第一面
41b…第二面
42…ブレード
43…カバー
45…インペラ流路
45i…流入口
45o…流出口
60…可動翼
61…翼本体
61s…翼先端部
611、611s…前縁部
612、612s…後縁部
62…軸部
Ar…中心軸線
D1…翼高さ方向
D2…翼コード方向
Da…軸線方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
H…翼高さ
L…コード長
O…軸線
図1
図2
図3
図4