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  • 特許-マンホール蓋枠構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】マンホール蓋枠構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E02D29/14 Z
E02D29/14 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020208296
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095143
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亮夫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-043459(JP,U)
【文献】特開2010-019411(JP,A)
【文献】特開2010-139018(JP,A)
【文献】実開昭55-088454(JP,U)
【文献】米国特許第04772154(US,A)
【文献】特開2004-316250(JP,A)
【文献】実開昭53-105470(JP,U)
【文献】実開平06-071542(JP,U)
【文献】特開2000-257147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に縁部が垂下されているマンホール蓋と、前記マンホール蓋の縁部が嵌合される嵌合溝を有するマンホール枠とを備えるマンホール蓋枠構造であって、
前記マンホール蓋を前記マンホール枠に嵌合させると、挫滅することによって、前記マンホール枠に対する前記マンホール蓋の横移動を防止する防止部材が、前記マンホール蓋の縁部及び前記マンホール枠の嵌合溝のうちの少なくともいずれか一方に設けられており、
前記防止部材が、前記マンホール蓋または前記マンホール枠を形成するにあたって一体的に備えられていることを特徴とするマンホール蓋枠構造。
【請求項2】
前記防止部材の形状が、径方向に延びる縦リブ状、周方向に延びる縦リブ状、及び円柱状からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のマンホール蓋枠構造。
【請求項3】
前記防止部材の形状が径方向に延びる縦リブ状であって、該防止部材が前記マンホール枠の嵌合溝に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマンホール蓋枠構造。
【請求項4】
前記防止部材の径方向の長さ、又は複数の前記防止部材が存在する領域の径方向幅の長さが、前記マンホール蓋又は前記マンホール枠の製造誤差あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって生じる寸法のバラツキに相当する前記マンホール蓋又は前記マンホール枠の径方向の長さであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のマンホール蓋枠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周縁に縁部が垂下されているマンホール蓋と、前記マンホール蓋の縁部が嵌合される嵌合溝を有するマンホール枠とを備えるマンホール蓋枠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、マンホール蓋及びマンホール枠においては、成型時の製造誤差、あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって寸法のバラツキが生じ得る。そのため、たとえそのような寸法上のバラツキがあったとしても、マンホール蓋がきちんと閉まるように、マンホール蓋をマンホール枠に嵌め込んだときに、マンホール蓋の縁部と、マンホール枠の嵌合溝との間に多少の隙間が生じるような設計がなされている。
【0003】
大きな耐荷重が求められるマンホール蓋は比較的重量があり、マンホール枠との間に多少の隙間があったとしても、横方向にがたつくことは少なかった。しかしながら、それほど大きな耐荷重が求められない用途においては比較的軽量なマンホール蓋が採用されており、軽量であるが故にマンホール蓋ががたつき易いものとなっている。
【0004】
特に、マンホール蓋をマンホール枠に取り付けた直後は、周辺の砂利などが隙間に入り込んでいないため、マンホール蓋とマンホール枠の当接面において砂利などの異物の混入や当接面の傷の発生などがないことから摩擦が少なく、振動等が加えられると、マンホール蓋が横方向にがたつき易く、さらに作業者が足を乗せたはずみなどの外力を受けてマンホール蓋が周方向へ回転してしまうこともある。
【0005】
マンホール蓋のがたつきや回転を抑えるための従来の方法としては、例えば、図7に示すように、マンホール蓋の、マンホール枠との当接面にゴム板Gなどを貼り付けるという方法が挙げられる。
【0006】
尚、このようなマンホール蓋の従来のがたつき防止方法については、広く一般に知られているものであるが適当な文献がないため、先行技術文献を開示しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のマンホール蓋のがたつき防止方法によれば、マンホール蓋にゴム板を人の手で貼り付けなければならず、取り付け作業に手間がかかると共に、貼り付けた後に輸送中や施工時に外れてしまうという虞もある。
【0008】
本発明の目的は、マンホール枠に対するマンホール蓋のがたつきや回転を、より簡便な方法で確実に抑えることのできるマンホール蓋枠構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマンホール蓋枠構造の特徴は、周縁に縁部が垂下されているマンホール蓋と、前記マンホール蓋の縁部が嵌合される嵌合溝を有するマンホール枠とを備えるマンホール蓋枠構造であって、
前記マンホール蓋を前記マンホール枠に嵌合させると、挫滅することによって、前記マンホール枠に対する前記マンホール蓋の横移動を防止する防止部材が、前記マンホール蓋の縁部及び前記マンホール枠の嵌合溝のうちの少なくともいずれか一方に設けられており、
前記防止部材が、前記マンホール蓋または前記マンホール枠を形成するにあたって一体的に備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、防止部材が挫滅することによって、マンホール蓋の縁
部とマンホール枠の嵌合溝とが密着し、その結果、マンホール枠に対するマンホール蓋の
横移動によるがたつきや回転が防止される。よって、取り付け作業などを別途行う必要も
なく、マンホール枠に対するマンホール蓋のがたつきや回転を、より簡便な方法で確実に
抑えることができる。
また本構成によれば、防止部材がマンホール蓋またはマンホール枠に一体的に形成されているため、輸送中や施工時に防止部材が外れてしまう虞がないため施工性が良く、マンホール枠に対するマンホール蓋のがたつきや回転を確実に防止することができる
【0011】
本発明に係るマンホール蓋枠構造においては、前記防止部材の形状が、径方向に延びる縦リブ状、周方向に延びる縦リブ状、及び円柱状からなる群から選択されると好適である。
【0012】
本構成によれば、防止部材の形状がより挫滅及び/又は変形し易い形状となっているため、製造誤差あるいは熱膨張や熱収縮等によりマンホール蓋またはマンホール枠と防止部材とが接触した部分が容易に挫滅及び/又は変形することで密着し、その結果、マンホール枠に対するマンホール蓋のがたつきや回転を、より確実に抑えることができる。
【0013】
本発明に係るマンホール蓋枠構造においては、前記防止部材の形状が径方向に延びる縦リブ状であって、該防止部材が前記マンホール枠の嵌合溝に設けられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、防止部材がマンホール枠の嵌合溝に設けられているため、当該マンホール枠の規格に合う種々のマンホール蓋に対して適用することができて、施工性が良い。
【0017】
本発明に係るマンホール蓋枠構造においては、マンホール蓋枠構造の径方向における前記防止部材の長さ、又は複数の前記防止部材が存在する領域の径方向幅の長さが、前記マンホール蓋又は前記マンホール枠の想定される製造誤差あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって生じる寸法のバラツキに相当するマンホール蓋又はマンホール枠の径方向の長さであると好適である。
【0018】
本構成によれば、マンホール蓋又はマンホール枠において製造誤差あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって生じる寸法のバラツキが生じていたとしても、防止部材を、より確実に挫滅及び/又は変形させることによってマンホール蓋またはマンホール枠と防止部材とが密着した状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】マンホール蓋枠構造の斜視図である。
図2】マンホール枠がマンホール蓋に対して相対的に小さい場合のマンホール蓋枠構造の縦断面図である。
図3】マンホール枠がマンホール蓋に対して相対的に大きい場合のマンホール蓋枠構造の縦断面図である。
図4】防止部材の別実施形態を示す斜視図である。
図5】防止部材の別実施形態を示す斜視図である。
図6】防止部材の別実施形態を示す斜視図である。
図7】従来のマンホール蓋枠構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態におけるマンホール蓋枠構造1は、マンホール蓋2と、マンホール蓋2が嵌め込まれるマンホール枠3とを備える。
【0021】
マンホール蓋2は円盤状の丸型蓋であって、周縁に縁部20が垂下されている。
【0022】
マンホール枠3はリング状の枠であって、周縁に嵌合溝30が形成されている。マンホール蓋2をマンホール枠3に取り付ける際、マンホール蓋2の縁部20が嵌合溝30に嵌合するように構成されている。
【0023】
本実施形態におけるマンホール枠3の嵌合溝30には、径方向内側の側面31から底面33に渡って径方向に延びる縦リブAが設けられている。本実施形態における縦リブAは、マンホール枠3と一体成形されているが、この構成に限定されるものではない。
【0024】
縦リブAは、マンホール蓋2をマンホール枠3に嵌合させると、挫滅及び/又は変形することによって、マンホール蓋2と縦リブAとが密着し、マンホール枠3に対するマンホール蓋2の横移動を防止する防止部材としての機能を備える。
【0025】
図2に示すように、マンホール枠3がマンホール蓋2に対して相対的に小さい場合、マンホール蓋2の外側傾斜面22とマンホール枠3の径方向外側の側面32との間に生じる隙間40が小さく、マンホール蓋2が横方向にがたつき難い。そしてこの場合は、マンホール蓋2の縁部20の内側傾斜面21が、縦リブAと接触することが回避される。
【0026】
一方、マンホール枠3がマンホール蓋2に対して相対的に大きい場合、マンホール蓋2の外側傾斜面22とマンホール枠3の径方向外側の側面32との間に比較的大きな隙間40が生じ得る。その結果、特にマンホール蓋2をマンホール枠3に取り付けた直後は、周辺の砂利などが当該隙間に入り込んでいないため、マンホール蓋とマンホール枠の当接面において砂利などの異物の混入や当接面の傷の発生などがないことから摩擦が少なく、振動等が加えられると、マンホール蓋2が横方向にがたつき易く、さらに作業者が足を乗せたはずみなどの外力を受けてマンホール蓋が周方向へ回転してしまうこともある。
【0027】
しかしながら、本実施形態におけるマンホール蓋枠構造1によれば、図3に示すように、マンホール蓋2をマンホール枠3に取り付ける際、マンホール蓋2の縁部20の内側傾斜面21が縦リブAと接触することになる。このとき、縦リブAの一部が削り取られるように挫滅する、及び/又は縦リブAの一部が変形することによって、マンホール蓋2の縁部20とマンホール枠3の嵌合溝30とが密着する。その結果、マンホール枠3に対するマンホール蓋2の横移動によるがたつきや、周方向への回転が防止される。
【0028】
防止部材である縦リブAの形状は、マンホール蓋2の縁部20の内側傾斜面21に面する縦リブAの勾配が、内側傾斜面の勾配と同一であるか内側傾斜面の勾配よりも急であると好適である。マンホール蓋2をマンホール枠3に嵌合させるときに、マンホール蓋2の縁部20と縦リブAの接触部が最小限になるため、マンホール蓋2の縁部20をマンホール枠3の嵌合溝30に挿入する位置決めがしやすい。
【0029】
防止部材である縦リブAの先端部R2の形状は、円弧形状を形成していると好適である。マンホール蓋2をマンホール枠3に嵌合させるときに、さらに挿入しやすくなる。
【0030】
また、マンホール蓋2の縁部20の蓋縁根元部R1の形状が円弧形状を形成し、マンホール蓋2の縁部20の蓋縁根元部R1の曲率と、防止部材である縦リブAの先端部R2の曲率は、R1>R2であると好適である。マンホール蓋2をマンホール枠3に嵌合させるときに、マンホール蓋2の縁部20の蓋縁根元部R1と縦リブAの先端部R2が接触し、蓋縁根元部R1の押圧により縦リブAの先端部R2が挫滅及び/又は変形し密着することで、マンホール枠に対するマンホール蓋のがたつきや回転を確実に抑えることができる。
【0031】
尚、マンホール蓋2の縁部20の内側傾斜面21には、シボ加工等を施して摩擦係数を上げるような構成としても良い。これにより、マンホール蓋2の回転をより一層防止し易くなる。
【0032】
縦リブAは、同じ形状のものを、周方向に等間隔で三か所以上に設けることが望ましい。これにより、マンホール蓋2をマンホール枠3に取り付ける際、マンホール蓋2の中心軸とマンホール枠3の中心軸とが一致するように嵌め込まれ易くなる。
【0033】
また、縦リブAの幅は、挫滅及び/又は変形のし易さ等に応じて適宜設定して良いが、縦リブAの径方向の長さについては、マンホール蓋2又はマンホール枠3の想定される製造誤差あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって生じる寸法のバラツキに相当するマンホール蓋2又はマンホール枠3の径方向の長さに設定することが望ましい。なお、縦リブAの径方向の最大長さは、マンホール枠3の嵌合溝30の径方向長さから、マンホール蓋2の縁部20の径方向長さを差し引いた長さである。
【0034】
本発明におけるマンホール蓋2及びマンホール枠3に適用可能な構成素材としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)などの合成樹脂が挙げられるが、マンホール蓋2をマンホール枠3に取り付ける際、縦リブAが挫滅及び/又は変形するように構成できるものであれば、これに限定されるものではない。
【0035】
(その他の実施形態)
1.上述の実施形態では、防止部材の形状として、径方向に延びる縦リブAが示されているが、マンホール蓋2をマンホール枠3に取り付ける際に挫滅及び/又は変形可能な形状であれば、この形状に限定されるものではなく、他にも例えば、図4に示すように、周方向に延びる縦リブAとしたり、図5に示すように、周方向に延びる縦リブAを複数設ける構成としたり、あるいは図6に示すように、円柱状のもの複数設けるように構成しても良い。また、図5及び図6に示す構成とした場合、複数の防止部材Aが存在する領域の径方向幅Wの長さについては、マンホール蓋2又はマンホール枠3の想定される製造誤差あるいは施工後の環境条件による熱膨張や熱収縮等によって生じる寸法のバラツキに相当するマンホール蓋2又はマンホール枠3の径方向の長さに設定することが望ましい。
【0036】
2.上述の実施形態では、防止部材である縦リブAを、マンホール枠3の嵌合溝30における、径方向内側の側面31から底面33に渡るように設ける構成が示されているが、この構成に限定されるものではなく、防止部材を、マンホール枠3の嵌合溝30における、径方向外側の側面32から底面33に渡るように設けても良く、もしくは嵌合溝30の両側面に設けても良い。
【0037】
3.上述の実施形態では、防止部材をマンホール枠の嵌合溝に設ける構成が示されているが、この構成に限定されるものではなく、防止部材を、マンホール蓋の縁部に設けるようにしても良い。この場合、例えば、マンホール蓋の縁部の内側面や外側面、もしくはその両側面に設けるようにしても良い。
【0038】
4.本発明に係るマンホール蓋枠構造は、例えば浄化槽のマンホールに適用することができ、特に、小型浄化槽や中型浄化槽に好適に使用することができる。
【0039】
尚、上記の実施形態(その他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、又、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば浄化槽のマンホール蓋のがたつきや回転を抑える技術の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 マンホール蓋枠構造
2 マンホール蓋
20 縁部
21 内側傾斜面
22 外側傾斜面
3 マンホール枠
30 嵌合溝
31 径方向内側の側面
32 径方向外側の側面
33 底面
40 隙間(外側傾斜面22と径方向外側の側面32との隙間)
A 縦リブ(防止部材の一例)
R1 蓋縁根元部(マンホール蓋2の縁部20の根元部分)
R2 先端部(縦リブAの先端部分)
G ゴム板
W 径方向幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7