IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

特許7531384ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法
<>
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図1
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図2
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図3
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図4
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図5
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図6
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図7
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図8
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図9
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図10
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図11
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図12
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図13
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図14
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図15
  • 特許-ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/903 20190101AFI20240802BHJP
   G06Q 50/16 20240101ALI20240802BHJP
【FI】
G06F16/903
G06Q50/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020210420
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097061
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年6月17日 下記アドレスのウェブサイトでオンライン開催されたDICOMO2020シンポジウムのセッション6A-2で公開された論文「ヒトとセンサー情報の紐づけによるビル設備管理業務の効率化方式の提案」にて公開 (http://dicomo.org/) (http://tsys.jp/dicomo/2020/program/program_abst.html) 令和 2年 9月10日 下記アドレスのウェブサイトでオンライン開催されたIWIN2020のSession6の23で公開された論文「Proposal for Method of Efficient Building Facility Management linking Human Sense and Information of BEMS」にて公開 (http://www.infsoc.org/conference/iwin2020/) (http://www.infsoc.org/conference/iwin2020/program)
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-102735(JP,A)
【文献】特開2013-092954(JP,A)
【文献】特開平09-034946(JP,A)
【文献】特開2020-102101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システムであって、
制御部と、
ビル設備の管理に関する履歴データと、
前記履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、前記単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書と、
前記履歴データに基づく推定結果の出力に用いられる学習済モデルと、を記憶する記憶部と、
前記推定結果に関する表示を行う表示部と、を備え、
前記学習済モデルは、前記単語代表語が特徴量として入力された際に、前記ニーズと、前記ニーズが発生した場所または日時とを前記推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルであり、
前記制御部は、
前記単語辞書を用いて、前記履歴データから前記単語代表語を抽出し、
抽出した前記単語代表語を前記特徴量として前記学習済モデルに入力することで、前記学習済モデルから前記ニーズと、前記ニーズが発生する場所または日時とを前記推定結果として出力し、
前記推定結果を前記ニーズごとに集計し、
前記表示部は、前記ニーズごとに集計された前記推定結果を表示する、ニーズ表示システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記ニーズと、前記ニーズが発生する場所または日時と、集計された前記ニーズの数とを、集計された前記ニーズの数が多い順に表示する、請求項1に記載のニーズ表示システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記推定結果を、1年のうちの特定の期間について前記ニーズごとに集計する、請求項1または請求項2に記載のニーズ表示システム。
【請求項4】
前記履歴データは、前記利用者が前記ビル設備に関して問い合わせた内容と、前記利用者が前記内容を問い合わせした原因と、前記利用者の問い合わせに対する前記ビル設備の管理者の対応とが記録されたデータである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のニーズ表示システム。
【請求項5】
前記ニーズは、前記ニーズが発生する場所または日時において、前記利用者が不快に感じる事象またはビルを快適に利用するために前記ビル設備に求める事象に基づくニーズである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のニーズ表示システム。
【請求項6】
ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システムに適用するための学習済モデル生成方法であって、
前記ニーズ表示システムは、
ビル設備の管理に関する履歴データと、
前記履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、前記単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書と、を記憶する記憶部を備え、
前記学習済モデル生成方法は、
学習用データセットの中から学習用データを選択するステップと、
前記学習用データに含まれる前記単語代表語を特徴量として推定モデルに入力することで、前記推定モデルから前記ニーズと、前記ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力するステップと、
前記推定結果と前記学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき前記推定モデルのパラメータを更新するステップとを含む、学習済モデル生成方法。
【請求項7】
ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システムを制御する制御方法であって、
前記ニーズ表示システムは、
ビル設備の管理に関する履歴データと、
前記履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、前記単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書と、
前記履歴データに基づく推定結果の出力に用いられる学習済モデルと、を記憶する記憶部を備え、
前記制御方法は、
前記単語辞書を用いて、前記履歴データから前記単語代表語を抽出するステップと、
抽出した前記単語代表語を特徴量として前記学習済モデルに入力することで、前記学習済モデルから前記ニーズと、前記ニーズが発生する場所または日時とを前記推定結果として出力するステップと、
前記推定結果を前記ニーズごとに集計するステップと、
前記ニーズごとに集計された前記推定結果を表示するステップとを含み、
前記学習済モデルは、前記単語代表語が前記特徴量として入力された際に、前記ニーズと、前記ニーズが発生した場所または日時とを前記推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニーズ表示システム、学習済モデル生成方法、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルのオーナーは、ビルに入居するテナントに対してビル設備に対する不満や満足度を調査することがある。その際、入居者との打合せでのヒアリングやアンケートといった手法によって調査が行われることが多い。
【0003】
しかしながら、ヒアリングやアンケートによる調査では、参加者との時間調整、回答の記録、記録データの集計に手間がかかるため、頻繁に実施することができない。また、入居者は、ヒアリングやアンケートに回答する際に、過去の記憶をきちんと思い出せないことが多い。また、印象に強く残った出来事や思い出しやすい出来事を回答する傾向があるため、調査したデータに偏りが出てしまう。
【0004】
ビル設備に対する不満や満足度を調査したい場合、ビル設備の管理において既に蓄積された履歴データを活用することも考えられる。このような履歴データを蓄積するシステムとしては、たとえば、特開2019-121392号公報(特許文献1)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-121392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムにおいては、蓄積した履歴データを検索することはできるものの、ビル設備に対する不満や満足度などのビル設備に対するニーズを直接的に抽出することはできない。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができるニーズ表示システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うと、ニーズ表示システムは、ビルの利用者のニーズを集計して表示する。ニーズ表示システムは、制御部と、記憶部と、表示部と、を備える。記憶部は、単語辞書と、学習済モデルと、を記憶する。単語辞書は、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。学習済モデルは、履歴データに基づく推定結果の出力に用いられるモデルである。表示部は、推定結果に関する表示を行う。学習済モデルは、単語代表語が特徴量として入力された際に、ニーズと、ニーズが発生した場所または日時とを推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。制御部は、単語辞書を用いて、履歴データから単語代表語を抽出する。制御部は、抽出した単語代表語を特徴量として学習済モデルに入力することで、学習済モデルからニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力する。制御部は、推定結果をニーズごとに集計する。表示部は、ニーズごとに集計された推定結果を表示する。
【0009】
本開示の他の局面に従うと、学習済モデル生成方法は、ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システムに適用するための方法である。ニーズ表示システムは、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書と、を記憶する記憶部を備える。学習済モデル生成方法は、学習用データセットの中から学習用データを選択するステップと、学習用データに含まれる単語代表語を特徴量として推定モデルに入力することで、推定モデルからニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力するステップと、推定結果と学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき推定モデルのパラメータを更新するステップとを含む。
【0010】
本開示のさらに他の局面に従うと、制御方法は、ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システムを制御する。ニーズ表示システムは、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書と、履歴データに基づく推定結果の出力に用いられる学習済モデルと、を記憶する記憶部を備える。制御方法は、単語辞書を用いて、履歴データから単語代表語を抽出するステップと、抽出した単語代表語を特徴量として学習済モデルに入力することで、学習済モデルからニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力するステップと、推定結果をニーズごとに集計するステップと、ニーズごとに集計された推定結果を表示するステップとを含む。学習済モデルは、単語代表語が特徴量として入力された際に、ニーズと、ニーズが発生した場所または日時とを推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。これによって、ヒアリングやアンケートでは収集できない入居者などのビルの利用者の潜在的なニーズを抽出することができる。また、都度記録されている履歴データを情報源として活用するため、ビルの利用者が忘れているニーズも抽出することが可能となり、ビルオーナーまで届かない、現場にのみ存在するニーズデータが収集可能となる。これにより、今まで気づかなかったビルの利用者のためのビルの運用改善や設備改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る検索システムおよびニーズ表示システムのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図2】検索システムおよびニーズ表示システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】履歴データおよび履歴データの分類の一例を示す図である。
図4】検索システムにおける推定モデルの学習について説明する図である。
図5】学習処理(履歴検索用)のフローチャートである。
図6】履歴データから検索用データベースを生成する手順について説明する図である。
図7】検索用データベースの一例を示す図である。
図8】履歴検索処理のフローチャートである。
図9】履歴検索処理を説明する図である。
図10】履歴検索処理を説明する図である。
図11】履歴検索結果の一例を示す図である。
図12】ニーズ表示システムにおける推定モデルの学習について説明する図である。
図13】学習処理(ニーズ抽出用)のフローチャートである。
図14】ニーズ抽出処理のフローチャートである。
図15】ニーズ表示システムにおけるニーズ抽出の流れについて説明する図である。
図16】ニーズ抽出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
[検索システムおよびニーズ表示システムの構成]
まず、本実施の形態に係る検索システム1aおよびニーズ表示システム1bの概略について説明する。図1は、本実施の形態に係る検索システム1aおよびニーズ表示システム1bのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態において、検索システム1aは、サーバ装置10および端末100を備える。サーバ装置10と端末100とは通信可能に構成されている。検索システム1aは、ビル設備の管理に関する履歴データを検索するシステムである。
【0016】
サーバ装置10は、記憶部25を備える。記憶部25には、属性辞書33、単語辞書34、履歴データを含む検索用データベース36が記憶されている。検索システム1aの端末100において、ユーザが履歴を検索する操作を行った場合、属性辞書33、単語辞書34および検索用データベース36を用いて履歴データの検索(「履歴検索」とも称する)が行われ、その結果として、履歴検索結果38が表示される。「履歴データ」および「履歴検索」等については、図3図11を用いて詳細に説明する。
【0017】
また、ニーズ表示システム1bは、サーバ装置10および端末101を備える。サーバ装置10と端末101とは通信可能に構成されている。ニーズ表示システム1bは、ビルの利用者のニーズを集計して表示するシステムである。本実施の形態において、「ニーズ」とは、ニーズが発生する場所または日時において、利用者が不快に感じる事象またはビルを快適に利用するためにビル設備に求める事象に基づくニーズを指す。
【0018】
本実施の形態においては、「ビルの利用者」はビルに入居するテナントを指すが、たとえば、単に、商業ビルを利用する利用者(買い物客など)を指すものであってもよい。
【0019】
ニーズ表示システム1bの端末101においては、ビルの利用者のニーズを集計して表示(「ニーズ抽出」とも称する)することが可能である。端末101おいて、ユーザがニーズ抽出をさせる操作を行った場合、履歴データ、単語辞書34およびニーズ抽出を行うための学習済モデル41を用いてニーズ抽出が行われ、その結果として、ニーズ抽出結果48が表示される。
【0020】
本実施の形態においては、履歴データおよびニーズ抽出に用いられるデータとして、共通の単語辞書34および履歴データが用いられている。履歴データは、本来、ビル設備の管理者が、ビルの利用者からのクレーム等に対して対応した履歴等を記録したデータである。この履歴データにはビルの利用者のニーズが含まれている。本実施の形態においては、この点に着目し、履歴データからニーズが抽出できるように学習が行われた学習済モデル41を用いて、ニーズ抽出ができるように構成している。本実施の形態において、「ビル設備の管理者」はビル設備の管理業務を行う業務担当者などを指す。ニーズ抽出については、図12図16を用いて詳細に説明する。
【0021】
図2は、検索システム1aおよびニーズ表示システム1bの機能構成の一例を示すブロック図である。前述のように、検索システム1aはサーバ装置10および端末100を備え、ニーズ抽出システム1bはサーバ装置10および端末101を備える。
【0022】
図2に示すように、サーバ装置10は、制御部21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、通信インターフェイス24と、記憶部25とを備える。制御部21は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0023】
制御部21は、サーバ装置10全体を総括的に制御する。制御部21は、ROM22に格納されているプログラムをRAM23に展開して実行する。ROM22は、サーバ装置10の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM23は、制御部21がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0024】
通信インターフェイス24は、端末100,101と通信するためのインターフェイスである。記憶部25は、不揮発性の記憶装置である。記憶部25は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)であってもよい。
【0025】
記憶部25は、学習済モデル31と、学習用データセット32と、学習済モデル41と、学習用データセット42と、属性辞書33と、単語辞書34と、検索用データベース36とを記憶している。学習済モデル31および学習用データセット32は、履歴検索のための学習に用いられる。学習済モデル41および学習用データセット42は、ニーズ抽出のための学習に用いられる。これらについては、図4以降の図を用いて詳細に説明する。
【0026】
端末100,101は、制御部121と、ROM122と、RAM123と、通信インターフェイス124と、記憶部125と、入力部126と、表示部127とを備える。制御部121は、たとえば、CPUである。
【0027】
端末100,101は、デスクトップコンピュータ、ノートパソコン、タブレット端末であってもよい。また、端末100で履歴検索を行い、端末101でニーズ抽出を行うシステムに限らず、1台の端末で履歴検索およびニーズ抽出を行わせるように構成してもよい。
【0028】
また、サーバ装置10は、Webサーバとして動作し、端末100,101から所定のURLにアクセスすることで履歴検索結果38やニーズ抽出結果48を表示させるように構成してもよい。あるいは、端末100,101に履歴検索やニーズ抽出を行うためのソフトウェアをインストールし、このソフトウェアを動作させて履歴検索結果38やニーズ抽出結果を表示させるように構成してもよい。
【0029】
制御部121は、端末100,101全体を総括的に制御する。制御部121は、ROM122に格納されているプログラムをRAM123に展開して実行する。ROM122は、端末100,101の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM123は、制御部121がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0030】
通信インターフェイス124は、サーバ装置10と通信するためのインターフェイスである。記憶部125は、不揮発性の記憶装置である。記憶部125は、たとえば、HDDであってもよい。
【0031】
入力部126は、ユーザからの情報処理装置90に対する指示を含む入力を受け付ける。入力部126は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネルである。表示部127は、履歴検索結果38やニーズ抽出結果48などの各種画像を表示する。表示部127は、たとえば、液晶表示器、ディスプレイである。
【0032】
[検索システムにおける履歴データおよびその分類]
図3は、履歴データおよび履歴データの分類の一例を示す図である。図3(A)は、履歴データの一例を示す図である。図3(B)は、履歴データの分類の一例を示す図である。
【0033】
ビルの管理者は、ビル設備の管理に関する履歴データを入力する。履歴データは、ビル設備の管理者が問合せやクレームに対応した際に、その内容を日報という形で履歴として記録するデータである。
【0034】
単語や文章の書き方は定まっていないため、入力者により異なる単語が用いられることがしばしばある。このため、管理者などの文章を入力しない者や自分以外の担当者が履歴データを検索する場合、従来の検索システムにおいては、適切な検索キーワードが分からないために検索精度が落ちてしまっていた。
【0035】
このことで、業務担当者によって、業務の対応スピードや業務の精度にばらつきが生じていた。特に、24時間、365日のローテーション勤務を行う体勢において、その時に勤務している担当者により対応品質が異なることになり、ビル管理サービスの品質を一定に保つことできなくなるといった問題があった。本実施の形態では、検索システム1aは、このような問題を解決するための構成を備える。
【0036】
ビル設備は、10~15年でリプレイスするのが通常であり、設備交換のサイクルが長い。このため、古い設備の知識が必要になるなど、ビル管理の経験を積むのに時間がかかる。また、業界の専門用語やそのビル固有の用語の言い回しを覚える必要があり、また、ビル設備の管理者が使う用語と、テナントが使う言葉とが食い違うことも多い。このような業界特有の事情があるため、検索システムで検索を行う場合、検索を行う者が使う言葉と、履歴データを登録した者が使う言葉と、ビルの利用者が使う言葉とをうまくリンクさせた検索システムを構築する必要がある。
【0037】
特にビル管理においては、水回りのトラブルなど、迅速に対応すべき作業が多いため、検索システムからいかにして迅速に情報を引き出すかが重要なポイントとなる。
【0038】
以下、履歴データの例について説明する。図3(A)に示すように、たとえば、履歴データのNo.1(「履歴データ1」とも称する)には、「機械式駐車場ピット内へ運転手携帯電話落下の件 防災センターより、B3駐車場車室188(機械式駐車場)ピット内へ、運転手様が携帯電話を落としたので対応依頼あり。ピット内に落下している携帯電話を確認。機械式駐車場保守会社の手配が必要となる可能性がある為、駐車場管理にて対応する事となった。駐車場管理者、防災センター担当者立会い確認。18:00 駐車場管理者より携帯電話をピットより回収したとの連絡あり。」が入力されている。
【0039】
履歴データのNo.2(「履歴データ2」とも称する)には、「28階受付社名表示間接照明の管球交換 テナントA様より、28階受付社名表示間接照明の管球交換を夜間に対応依頼あり。19:30 テナント支給管球(型番xxx)2個を交換し点灯確認した。テナントA様へメールにて報告済み。」が入力されている。
【0040】
履歴データのNo.3(「履歴データ3」とも称する)には、「テナント設備(18階会議室 照明スイッチ押し込まれ陥没) 4/2 14:40 テナントB様より、会議室の照明スイッチが押し込まれ、陥没したので対応依頼あり。到着時状況 14:15 会議室の照明スイッチが押込まれ、陥没している状態を確認。プラスチック製取付枠ではスイッチを固定できない為、予備品の金属製取付枠と交換しスイッチ固定。テナントB様立会い確認。オーナー様にメールにて報告済み。」が入力されている。
【0041】
履歴データのNo.4(「履歴データ4」とも称する)には、「10階執務室内出入口扉異音の件 10階執務室内出入口扉で異音がするのを点検で発見した。点検時状況 扉開閉時に扉側面の電気錠用コードとガイドの擦れ音を確認。コードの位置調整及びグリス塗布後、異音解消を確認。オーナー様へメールにて報告済み。」が入力されている。
【0042】
このような履歴データの文章は、3つの文章に分割して分類することができる。1つ目は、ビルの利用者がビル設備に関して問い合わせた内容(以下、単に「問合せ内容」とも称する)についての文章である。「問合せ内容」は、ビル設備の管理者に対してビルの利用者が何らかのコンタクトを取った場合のその内容(クレーム、相談、連絡など)であればよい。
【0043】
2つ目は、ビルの利用者が内容を問い合わせした原因(以下、単に「原因」とも称する)についての文章である。「原因」は、下記の「対応」を行うに至った理由に相当する。
【0044】
3つ目は、ビルの利用者の問い合わせに対するビル設備の管理者の対応(以下、単に「対応」とも称する)についての文章である。「対応」は、ビル設備の管理者が何らかの作業を行った場合も含む。履歴データの文章は、上記3つの文章のうち少なくとも1つ以上の文章を含む。
【0045】
たとえば、ビル設備において何らかの不具合が発生し、ビルの利用者がビル設備の管理人に対してクレームを言った(問合せをした)ようなケースが想定される。この場合、ビル設備の管理者は、本不具合について「原因」(たとえば、部品の故障)を究明した上で、本不具合を解消するための「対応」(たとえば、故障した部品の交換)を行う。そして、ビル設備の管理人は、「問合せ内容」、「原因」、「対応」について日報としてまとめて、履歴データとしてサーバ10の記憶部25に記憶させる。
【0046】
これらの「問合せ内容」、「原因」、「対応」のぞれぞれに対応する文章は、簡潔な言葉で置き換えることが可能である。本実施の形態においては、このような簡潔な言葉として、2つの単語の組合せで置き換えている。この2つの単語は、主語に相当する単語および述語に相当する単語の組合せ、あるいは、述語に相当する単語および目的語に相当する単語の組合せで構成するのが適切である。
【0047】
たとえば、履歴データ1であれば、「問合せ内容」として「落し物」+「対応」の2単語で表現することができ、「対応」として「保守会社」+「手配」の2単語で表現することができる。なお、履歴データ1において、「原因」に相当する文章はない。
【0048】
履歴データ2であれば、「問合せ内容」として「管球」+「交換」の2単語で表現することができ、「原因」として「球」+「切れ」の2単語で表現することができ、「対応」として「夜間」+「交換」の2単語で表現することができる。
【0049】
履歴データ3であれば、「問合せ内容」として「照明」+「不具合」の2単語で表現することができ、「原因」として「スイッチ」+「破損」の2単語で表現することができ、「対応」として「部品」+「交換」の2単語で表現することができる。
【0050】
履歴データ4であれば、「原因」として「部品」+「擦れ」の2単語で表現することができ、「対応」として「位置」+「調整」の2単語、および、「グリス」+「塗布」の2単語で表現することができる。なお、履歴データ4において、「問合せ内容」に相当する文章はない。
【0051】
このように、履歴データは、ビル設備の管理に特有の文章構造を有しており、また、ビル設備の管理において用いられる特徴的な単語を用いて簡潔に表現することができる。上述のように、履歴データは、「問合せ内容」、「原因」、「対応」という3つの属性を持つ文章に分類することができる。以下、「問合せ内容」、「原因」、「対応」を「属性代表語」と称する。また、各属性代表語に対応する文章を2単語で表したもの(「管球交換」など)を、以下、「属性内容」と称する。
【0052】
このような観点で、記録された履歴データを分析し、これを分類したものが、たとえば、図3(B)のような表である。図3(B)に示すように、「問合せ内容」に対応する属性内容として最も多いものが「蛍光灯不点灯」であり、発生件数はA1件である。「問合せ内容」に対応する属性内容として2番目に多いものが「不審物発見」であり、発生件数はA2件(A1>A2)である。「問合せ内容」に対応する属性内容として3番目に多いものが「トイレ水漏れ」であり、発生件数はA3件(A2>A3)である。
【0053】
「蛍光灯不点灯」は、「蛍光灯」+「不点灯」の2単語で構成される。「不審物発見」は、「不審物」+「発見」の2単語で構成される。「トイレ水漏れ」は、「トイレ」+「水漏れ」の2単語で構成される。問合せ内容については、1位~N1位まで集計している。
【0054】
同様に、「原因」、「対応」についても集計されている。原因については、1位~N2位まで集計している。対応については、1位~N3位まで集計している。本実施の形態においては、履歴データを分類した図3(B)の表に基づき、履歴検索に用いる学習済モデル31の学習用データセットを用意している。図3(B)の表において、どのような語を組合せ属性内容として構成するか、何位までを集計対象とするかが、学習精度を向上させるために重要なポイントとなる。
【0055】
以下、検索システムにおける学習処理について詳細に説明する。以下、学習が完了する前の「学習済モデル31」は、「推定モデル31」とも称する。
【0056】
[検索システムにおける学習処理]
図4は、検索システム1aにおける推定モデル31の学習について説明する図である。検索システムにおける学習処理(「学習処理(履歴検索用)」とも称する)において、学習用データセットは、「単語」を入力として、「属性代表語」および「属性内容」を出力とするデータの組合せである。
【0057】
学習済モデル31(推定モデル31)は、履歴データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語が入力された際に、1以上の属性代表語および属性代表語に関連した属性内容を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。ここで、履歴データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語とは、単語辞書34を用いて履歴データに含まれる単語から抽出した単語であり、ビル管理を行う際に特徴的に用いられる単語である(たとえば、後述する「単語代表語」である)。
【0058】
図4に示すように、学習用データセット32には、単語01と属性代表語01と属性内容01で構成される学習用データセット、単語02と属性代表語02と属性内容02で構成される学習用データセット、単語03と属性代表語03と属性内容03で構成される学習用データセットが含まれる。
【0059】
「単語」は、単語辞書34を用いて抽出された1つまたは複数の単語である。たとえば、単語01は、「修理」である。「修理」に対応する属性代表語01は「対応」であり、「修理」に対応する属性内容02は「部品交換」である。
【0060】
つまり、単語辞書34を用いて抽出された単語に「修理」が含まれている場合、履歴データには「対応」という属性を持つ文章が含まれ、「対応」という属性を持つ文章を2単語で表したものが「部品交換」となるように、学習が行われる。
【0061】
図5は、学習処理(履歴検索用)のフローチャートである。制御部21は、学習処理(履歴検索用)を実行する。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0062】
図5に示すように、学習処理(履歴検索用)を開始すると、制御部21は、S11において、学習用データセット32(履歴検索用)の中から学習用データを選択し、処理をS12に進める。制御部21は、S12において、選択した学習用データ (履歴検索用)の単語データを推定モデル31に入力し、処理をS13に進める。
【0063】
制御部21は、S13において、推定モデル31による推定処理によって、推定結果が出力され、処理をS14に進める。制御部21は、S14において、推定結果と学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき推定モデル31のパラメータを更新し、S15に処理を進める。
【0064】
制御部21は、S15において、全ての学習用データに基づき学習を行ったか否かを判定する。全ての学習用データに基づき学習を行ったと判定された場合(S15でYES)、処理をS16に進める。全ての学習用データに基づき学習を行っていないと判定された場合(S15でNO)、処理をS11に戻す。
【0065】
制御部21は、S16において、学習済みの推定モデル31を学習済モデル31として記憶し、学習処理(履歴検索用)を終了する。
【0066】
図6は、履歴データから検索用データベース36を生成する手順について説明する図である。前述のように、記憶部25は、属性辞書33と単語辞書34と検索用データベース36を記憶している。
【0067】
属性辞書33は、履歴データの属性を代表する属性代表語と、属性代表語に関連する意味を持つ属性関連語とが対応付けられた辞書である。属性代表語は、属性関連語の上位概念に相当する単語を含むものであるが、関連する意味を持つものであれば、必ずしも上位概念に相当する単語でなくてもよい。
【0068】
属性代表語は、ビルの利用者がビル設備に関して問い合わせた内容を代表する言葉である「問合せ内容」と、利用者が内容を問い合わせした原因を代表する言葉である「原因」と、利用者の問い合わせに対するビル設備の管理者の対応を代表する言葉である「対応」とを含む。
【0069】
図5に示すように、たとえば、属性代表語「問合せ内容」に対応する属性関連語は、「疑問」、「質問」、「クレーム」および「警報」である。属性代表語「原因」に対応する属性関連語は、「理由」および「根拠」である。属性代表語「対応」に対応する属性関連語は、「対処」である。
【0070】
単語辞書34は、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。単語代表語は、単語関連語の上位概念に相当する単語を含むものであるが、関連する意味を持つものであれば、必ずしも上位概念に相当する単語でなくてもよい。
【0071】
たとえば、単語代表語「水道」に対応する属性関連語は、「蛇口」である。単語代表語「照明」に対応する属性関連語は、「ライト」、「蛍光灯」、「灯」および「あかり」である。単語代表語「机」に対応する属性関連語は、「テーブル」および「デスク」である。単語代表語「窓」に対応する属性関連語はない。単語代表語「玄関」に対応する属性関連語は、「エントランス」である。
【0072】
以上説明した、属性代表語に対応する属性関連語および単語代表語に対応する単語関連語の組合せは、あくまで例示であり、上記以外の単語によって対応付けてもよい。属性代表語に対する属性関連語をどのように選択するかは、ビル設備の管理に関する業界特有の事情を加味して人の手によって行われる。しかし、これに限らず、機械学習により属性代表語に対する属性関連語を選択させるようにしてもよい。同様に、単語代表語に対する単語関連語をどのようにするかは、人の手によって選択されてもよいし、機械学習により選択されるようにしてもよい。
【0073】
次に、履歴データから検索用データベース36を生成する方法を説明する。検索用データベース36は、履歴データに対して1以上の属性代表語が対応付けられ、属性代表語に関連した属性内容が対応付けられた検索用データが登録されたデータベースである。
【0074】
図示した例では、「1階受付A様から電気がつかないとの連絡があり、夜間交換指定だったため20時に修理」という履歴データ35aに対応する検索用データベース36を生成させている。
【0075】
制御部21は、履歴データ35aから単語の抽出を行う。単語の抽出は、単語辞書34を用いて行う。ここでは、履歴データ35aから「電気」、「つかない」、「修理」の3語を抽出している。単語辞書34による単語の抽出により、設備管理で使用する専門的な用語等や、属性内容の抽出のために適した単語のみを抽出する。
【0076】
制御部21は、履歴データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語を学習済モデル31に入力することで、学習済モデル31から1以上の属性代表語と属性代表語に関連した属性内容とを出力する。
【0077】
この例では、推定結果35bに示されたように、「電気」および「つかない」という単語が学習済モデル31に入力されると、学習済モデル31は、属性代表語として「問合せ内容」を出力するとともに、属性内容として「照明不具合」を出力する。また、「修理」という単語が学習済モデル31に入力されると、学習済モデル31は、属性代表語として「対応」を出力するとともに、属性内容として「部品交換」を出力する。
【0078】
属性内容は、2つの単語代表語の組合せで構成される。「照明不具合」であれば「照明」+「不具合」の2つの単語代表語の組合せで構成されている。「部品交換」であれば「部品」+「交換」の2つの単語代表語の組合せで構成されている。
【0079】
なお、属性内容は、2つの単語代表語の組合せで構成されるものに限らず、その他の任意の単語の組合せで構成されるものであってもよい。また、3つ以上の単語の組合せで構成されるものであってもよいし、文章により構成されるものであってもよい。
【0080】
制御部21は、出力した属性代表語および属性内容を履歴データに対応付けて、検索用データとして検索用データベース36に登録する。
【0081】
この例では、制御部21は、履歴データ35aに、属性代表語「問合せ内容」に対する属性内容「照明不具合」および属性代表語「対応」に対する属性内容「部品交換」を対応付けたものを検索用データベース36に登録している。なお、この例においては、属性代表語「原因」に対する属性内容は存在しない。
【0082】
図7は、検索用データベース36の一例を示す図である。図7に示す検索用データベース36は、図3(A)で示した履歴データから生成したものである。
【0083】
図7に示すように、履歴データ1においては、属性代表語「問合せ内容」に対する属性内容「部品交換」、属性代表語「対応」に対する属性内容「保守会社手配」を対応付けた検索用データ(以下、「検索用データ1」と称する)を検索用データベース36に登録している。
【0084】
履歴データ2においては、属性代表語「問合せ内容」に対する属性内容「管球交換」、属性代表語「原因」に対する属性内容「球切れ」、属性代表語「対応」に対する属性内容「夜間交換」を対応付けた検索用データ(以下、「検索用データ2」と称する)を検索用データベース36に登録している。
【0085】
履歴データ3においては、属性代表語「問合せ内容」に対する属性内容「照明不具合」、属性代表語「原因」に対する属性内容「スイッチ破損」、属性代表語「対応」に対する属性内容「部品交換」を対応付けた検索用データ(以下、「検索用データ3」と称する)を検索用データベース36に登録している。
【0086】
履歴データ4においては、属性代表語「原因」に対する属性内容「部品擦れ」、属性代表語「対応」に対する属性内容「位置調整」および「グリス塗布」を対応付けた検索用データ(以下、「検索用データ4」と称する)を検索用データベース36に登録している。
【0087】
[検索システムにおける履歴検索処理]
次に、検索システム1aにおける履歴検索処理について説明する。図8は、履歴検索処理のフローチャートである。制御部21は、履歴検索処理を実行する。履歴検索処理が実行された結果として、表示部127は、ユーザが入力したキーワードに基づき制御部21が検索用データベース36を検索した検索結果を表示する。
【0088】
図8に示すように、履歴検索処理を開始すると、制御部21は、S21において、属性辞書33を用いて、キーワードに関連する意味を持つ属性代表語を抽出し、処理をS22に進める。キーワードが複数あれば、複数のキーワードについてこの処理を行う。制御部21は、S22において、抽出された属性代表語が対応付けられた検索用データを検索用データベース36の検索対象として決定し、処理をS23に進める。
【0089】
制御部21は、S23において、単語辞書34を用いて、キーワードに関連する意味を持つ単語代表語および単語関連語を抽出し、処理をS24に進める。ここで、属性代表語が抽出されたキーワードについてはS23の処理を行わず、属性代表語が抽出されなかったキーワードについてS23の処理を行う。
【0090】
制御部21は、S24において、検索対象として決定された検索用データに、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれているか否かを判定する。検索対象として決定された検索用データに、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれていると判定された場合(S24でYES)、処理をS25に進める。検索対象として決定された検索用データに、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれていると判定されなかった場合(S24でNO)、処理をS26に進める。
【0091】
制御部21は、S25において、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれている検索用データを表示部127が表示する検索結果に決定し、処理をS25に進める。制御部21は、S26において、履歴データおよび属性内容を検索結果として表示部127に表示させ、履歴検索処理を終了する。
【0092】
以下、履歴検索処理の具体例について説明する。図9および図10は、履歴検索処理を説明する図である。図9に示すように、ユーザが、検索画面37において「クレーム」および「蛍光灯」の2つのキーワードで検索を行ったとする。
【0093】
制御部21は、属性辞書33にキーワード「クレーム」が存在するかを検索する。属性辞書33には、属性代表語「問合せ内容」に対応する属性関連語として「クレーム」が存在するため、制御部21は、属性代表語「問合せ内容」を抽出する。
【0094】
次に、制御部21は、属性辞書33にキーワード「蛍光灯」が存在するかを検索する。属性辞書33には、「蛍光灯」が存在しないため、単語辞書34にキーワード「蛍光灯」が存在するかを検索する。単語辞書34には、単語代表語「照明」に対応する単語関連語として「蛍光灯」が存在する。制御部21は、単語代表語「照明」およびこれに対応する単語関連語「ライト」、「蛍光灯」、「灯」、「あかり」を抽出する。
【0095】
図10に示すように、制御部21は、抽出された属性代表語「問合せ内容」が対応付けられた検索用データ1~3を検索用データベース36の検索対象として決定する。
【0096】
ここで、ユーザは「クレーム」というキーワードで検索している。属性辞書33は、「クレーム」という概念の上位概念に類する広い概念として「問合せ内容」を定義している。本実施の形態においては、「問合せ内容」が対応付けられた検索用データ1~3を検索用データベース36の検索対象として決定することで、「クレーム」という概念よりもより上位の広い概念まで検索対象を広げて、検索するようにしている。
【0097】
さらに、制御部21は、検索対象として決定された検索用データ1~3に、抽出された単語代表語および単語関連語(「照明」、「ライト」、「蛍光灯」、「灯」、「あかり」)のうちのいずれかが含まれているか否かを調べる。本例においては、検索用データ1,2に「照明」が含まれているため、検索用データ2,3を表示部127が表示する検索結果に決定する。
【0098】
ここで、ユーザは「蛍光灯」というキーワードで検索している。単語辞書34は、「蛍光灯」という単語に関連する単語として、「照明」、「ライト」、「灯」、「あかり」を定義付けている。履歴データを入力する際には、「蛍光灯」という単語で入力されるとも限らず、別の単語で入力されることもある。また、キーワードの上位概念あるいは下位概念の単語で関連情報が履歴データに記録されている可能性もある。本実施の形態においては、このような情報まで含めた履歴データを検出可能にしている。
【0099】
検索データベース36は、もっとも上位の概念である「属性代表語」(問合せ内容、原因、対応)と、中位の概念である「属性内容」(照明+不具合等)と、下位概念の単語(履歴データ)とで構成され、単純に下位概念の単語で検索できるのみならず、中位概念、上位概念にまで網を広げて検索することができるようになっている。そして、このような3層の概念を用いて好適な検索システムを構築するためには、単語辞書34によりいかに業界特有の単語や概念を抽出させるか、単語と属性代表語と属性内容との組合せをいかに好適に学習させるかがポイントとなる。
【0100】
図11は、履歴検索結果の一例を示す図である。図11に示すように、履歴検索結果38には、ユーザが「クレーム」および「蛍光灯」の2つのキーワードで検索を行った結果を表示されている。
【0101】
上述のように、検索用データ2,3には「照明」が含まれているため、履歴検索結果38には、検索用データ2,3が表示されている。また、履歴検索結果38には、検索用データに含まれる単語代表語または単語関連語を識別可能な情報が含まれる。具体的には、履歴検索結果38には、「照明」の文字が識別可能となるように、文字「照明」を四角の枠で囲って表示している。
【0102】
本実施の形態においては、以上説明したように構成することで、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。これにより、属人的な文章をその他の担当者が普段使っている単語で検索できるようになり、他人の経験を自分の業務に生かすことができる。
【0103】
[ニーズ表示システムにおける学習処理]
次に、ニーズ表示システム1bにおける学習処理(以下、「学習処理(ニーズ抽出用)」とも称する)について説明する。図12は、ニーズ表示システム1bにおける推定モデル41の学習について説明する図である。
【0104】
上述のように、「ニーズ」とは、ニーズが発生する場所または日時において、利用者が不快に感じる事象またはビルを快適に利用するためにビル設備に求める事象に基づくニーズである。
【0105】
ビルのオーナーは、ビルに入居するテナント(ビルの利用者)に対してビル設備に対する不満や満足度を調査することがある。その際、入居者との打合せでのヒアリングやアンケートといった手法によって調査が行われることが多い。しかしながら、ヒアリングやアンケートによる調査では、参加者との時間調整、回答の記録、記録データの集計に手間がかかるため、頻繁に実施することができない。また、入居者は、ヒアリングやアンケートに回答する際に、過去の記憶をきちんと思い出せないことが多い。また、印象に強く残った出来事や思い出しやすい出来事を回答する傾向があるため、調査したデータに偏りが出てしまう。
【0106】
ビル設備に対する不満や満足度といったニーズを調査したい場合、ビル設備の管理において既に蓄積された履歴データを活用することが考えられる。しかしながら、履歴データは、ビルの管理者がクレーム等に対応した作業履歴を記録するものであるため、履歴データを蓄積させる目的とニーズ調査を行う目的とが一致していない。このため、履歴データからビル設備に対する不満や満足度などのビル設備に対するニーズを直接的に抽出することができない。
【0107】
以上の点を鑑み、本実施の形態では、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出できるようにニーズ表示システム1bを構成している。この履歴データからニーズのみをうまく抽出するための橋渡しとなるのが、学習済モデル41である。
【0108】
このようにニーズを抽出することで、ビルの利用者の潜在的なニーズを発掘することができ、ビルの運用改善や設備改善を行うことで、さらにビルの付加価値を向上させることができる。また、このようなニーズを集計することで、マーケティングデータとしても活用することができる。
【0109】
以下、具体的に説明する。図2などを用いて説明したように、記憶部25は、履歴データと、単語辞書34と、学習済モデル41とを記憶している。上述のように、単語辞書34は、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。
【0110】
履歴データは、利用者がビル設備に関して問い合わせた内容と、利用者が内容を問い合わせした原因と、利用者の問い合わせに対するビル設備の管理者の対応とが記録されたデータである。
【0111】
学習済モデル41は、履歴データに基づく推定結果の出力に用いられるモデルである。また、学習済モデル41は、単語代表語(以下、単に「単語」とも称する)が特徴量として入力された際に、ニーズと、ニーズが発生した場所または日時(以下、単に「場所・日時」とも称する)とを推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。
【0112】
図12に示すように、ニーズ表示システム1bにおける学習処理において、学習用データセットとして、「単語」を入力として、「ニーズ」および「場所・日時」を出力とするデータの組み合わせを用意する。
【0113】
なお、本実施の形態においては、「ニーズ」および「場所・日時」を出力するように構成しているが、これに限らず、履歴検索用の学習処理と同様に、学習用データセットに、属性代表語を含ませるようにしてもよい。つまり、「ニーズ」および「場所・日時」に対して、「問合せ内容」や「原因」などの属性を持たせるようにしてもよい。
【0114】
学習用データセット42には、単語01とニーズ01と場所・日時01とで構成される学習用データセット、単語02とニーズ02と場所・日時02とで構成される学習用データセット、単語03とニーズ03と場所・日時03とで構成される学習用データセットが含まれる。
【0115】
「単語」は、履歴データに含まれる単語に関連する意味を持つ1つまたは複数の単語である。ここで、履歴データに含まれる単語に関連する意味を持つ単語とは、単語辞書34を用いて履歴データに含まれる単語から抽出した単語であり、ビル管理を行う際に特徴的に用いられる単語である(たとえば、「単語代表語」)。
【0116】
たとえば、単語01は、「傘」、「貸す」を含む複数の単語である。これに対応するニーズ01は「貸し傘があるとよい」であり、場所・日時01は「玄関」である。
【0117】
つまり、履歴データに「傘」、「貸す」などが含まれている場合、場所「玄関」において、「貸し傘があるとよい」というニーズがあると認識されるように、学習が行われる。
【0118】
また、たとえば、「入社説明会があるから会議室の温度を2度上げて欲しい」という依頼があったとする。この場合、直接的な要求としては、「温度を2度上げる」ことである。しかしながら、隠れたニーズとして、「入社説明会をするための快適な場所が欲しい」といったニーズが存在する。このようなニーズを引き出すために、いかに学習用データセットを用意するかがポイントとなる。このようなニーズが引き出せた場合、たとえば、ビルのオーナーは、会社説明会をやるような企業が多く入居しているので、そのための場所が必要であることが把握できる。これにより、ビルのサービスを改善することにつながる。
【0119】
検索システムは、ビルの管理者が行った作業に着眼した事象を検索するようなシステムであるが、ニーズ抽出システムは、利用者の感情に着眼した事象を抽出するようなシステムとなっている。このため、推定モデル41は、推定モデル31とは異なり、人の感情がうまく抽出されるように(いつ、どこで、誰が、何をして欲しいのか)学習が行われることになる。また、時間や場所は、利用者の目的にもつながる。たとえば、「廊下」という場所が抽出された場合は、たとえば、「導線が悪い」という潜在的なニーズを引き出すこともできる。
【0120】
図13は、学習処理(ニーズ抽出用)のフローチャートである。制御部21は、学習処理(ニーズ抽出用)を実行する。
【0121】
図13に示すように、学習処理(ニーズ抽出用)を開始すると、制御部21は、S31において、学習用データセット42(ニーズ抽出用)の中から学習用データを選択し、処理をS32に進める。制御部21は、S32において、選択した学習用データ (履歴検索用)の単語データを推定モデル31に入力し、処理をS33に進める。入力されるのは、学習用データセット42に含まれる単語代表語である。
【0122】
制御部21は、S33において、推定モデル41による推定処理によって、推定結果が出力され、処理をS34に進める。出力される推定結果は、ニーズと、ニーズが発生する場所または日時とである。制御部21は、S34において、推定結果と学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき推定モデル41のパラメータを更新し、S35に処理を進める。
【0123】
制御部21は、S35において、全ての学習用データに基づき学習を行ったか否かを判定する。全ての学習用データに基づき学習を行ったと判定された場合(S35でYES)、処理をS36に進める。全ての学習用データに基づき学習を行っていないと判定された場合(S35でNO)、処理をS31に戻す。
【0124】
制御部21は、S36において、学習済みの推定モデル41を学習済モデル41として記憶し、学習処理(ニーズ抽出用)を終了する。
【0125】
[ニーズ表示システムにおけるニーズ抽出処理]
次に、ニーズ表示システム1bにおけるニーズ抽出処理について説明する。図14は、ニーズ抽出処理のフローチャートである。制御部21は、ニーズ抽出処理を実行する。ニーズ抽出処理を行った結果として、表示部127は、推定結果に関する表示を行う。
【0126】
図14に示すように、ニーズ抽出処理を開始すると、制御部21は、S41において、単語辞書34を用いて、履歴データから単語代表語を抽出し、処理をS42に進める。S42において、制御部21は、抽出した単語代表語を特徴量として学習済モデル41に入力することで、学習済モデル41からニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力し、処理をS43に進める。S41,S42の処理は、全ての履歴データに対して行う。
【0127】
S43において、制御部21は、推定結果をニーズごとに集計し、処理をS43に進める。S44において、表示部127は、ニーズごとに集計された推定結果を表示し、ニーズ抽出処理を終了する。以下、具体例を用いて説明する。
【0128】
図15は、ニーズ表示システム1bにおけるニーズ抽出の流れについて説明する図である。ニーズ抽出において使用する単語辞書は、履歴検索において使用する単語辞書と同じである。
【0129】
図15に示すように、「傘を一時的に貸してもらえないかと問い合わせ・・・」という履歴データ45aに対応する推定結果45bを生成させている。
【0130】
制御部21は、単語辞書34を用いて、履歴データ45aから単語代表語を抽出する。この例では、履歴データ45aから単語代表語「傘」、「貸す」などを抽出している。
【0131】
次に、制御部21は、抽出した「傘」、「貸す」などを学習済モデル41に入力し、学習済モデル41からニーズとして「貸し傘があるとよい」と、ニーズが発生する場所または日時(場所・日時)として「玄関」とを推定結果として出力している。
【0132】
この例においては、「傘」や「貸す」といった単語に対して、「貸し傘があると便利である」というニーズが潜在的に存在することを意味している。そして、貸し傘を行う場所として適しているのは玄関(エントランス)であるため、「場所」として玄関が出力されるように、学習が行われている。
【0133】
このようにして、全ての履歴データから推定結果を出力させ、出力された推定結果をニーズごとに集計する。図16は、ニーズ抽出結果の一例を示す図である。
【0134】
たとえば、「玄関」において「貸し傘があるとよい」というニーズを履歴データから集計した結果、123件カウントされたとする。図16に示すように、「玄関」において「貸し傘があるとよい」というニーズは123件あることが示されている。
【0135】
表示部127は、ニーズと、ニーズが発生する場所または日時と、集計されたニーズの数とを、集計されたニーズの数が多い順に表示する。
【0136】
この例では、ニーズの数が多い順に、「玄関」において「貸し傘があるとよい」というニーズ(第1位、123件)、「トイレ」において「洗面台が濡れているのは嫌だ」というニーズ(第2位、112件)、「平日定時外」において「休日・夜間の入館方法が知りたい」というニーズ(第3位、77件)、「1F非常口」において「扉が閉まりにくい」というニーズ(第4位、33件)が表示されている。
【0137】
また、制御部21は、推定結果を、1年のうちの特定の期間についてニーズごとに集計する。本例においては、特定の期間として「1月」~「12月」のいずれかを選択可能になっている。図に示される「1月」~「12月」のいずれかのリンクをクリックすると、クリックした月における集計が行われる。
【0138】
たとえば、2018年~2020年の期間、履歴データが記録された場合、「4月」をクリックすると、2018年4月、2019年4月、2019年4月に記録された履歴データのみが集計対象となる。画面上には、4月のみで集計した結果を表示する。また、2018年4月、2019年4月、2019年4月それぞれの集計結果を表示可能とする。あるいは、2018年4月、2019年4月、2019年4月のニーズの推移が分かるように、グラフ化して表示するようにしてもよい。
【0139】
これにより、4月に生じやすいニーズを把握することができる。なお、月別に集計するものに限らず、任意の期間(たとえば、季節)ごとに集計するものであってもよい。
【0140】
本実施の形態においては、以上説明したように構成することで、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。これによって、ヒアリングやアンケートでは収集できない入居者などのビルの利用者の潜在的なニーズを抽出することができる。また、都度記録されている履歴データを情報源として活用するため、ビルの利用者が忘れているニーズも抽出することが可能となり、ビルオーナーまで届かない、現場にのみ存在するニーズデータが収集可能となる。これにより、今まで気づかなかったビルの利用者のためのビルの運用改善や設備改善が可能となる。
【0141】
[主な構成および効果]
以下、前述した実施の形態の主な構成および効果を説明する。
【0142】
(1-1) 検索システム1aは、ビル設備の管理に関する履歴データを検索する。検索システム1aは、制御部21と、記憶部25と、表示部127と、を備える。記憶部25は、属性辞書33と、単語辞書34と、検索用データベース36と、を記憶する。属性辞書33は、履歴データの属性を代表する属性代表語と、属性代表語に関連する意味を持つ属性関連語とが対応付けられた辞書である。単語辞書34は、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。検索用データベース36は、履歴データに対して1以上の属性代表語が対応付けられ、属性代表語に関連した属性内容が対応付けられた検索用データが登録されたデータベースである。表示部127は、ユーザが入力したキーワードに基づき制御部21が検索用データベース36を検索した検索結果を表示する。制御部21は、属性辞書33を用いて、キーワードに関連する意味を持つ属性代表語を抽出する。制御部21は、抽出された属性代表語が対応付けられた検索用データを検索用データベース36の検索対象として決定する。制御部21は、単語辞書34を用いて、キーワードに関連する意味を持つ単語代表語および単語関連語を抽出する。制御部21は、検索対象として決定された検索用データに、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれている場合、検索用データを表示部127が表示する検索結果に決定する。このように構成することで、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。これにより、属人的な文章をその他の担当者が普段使っている単語で検索できるようになり、他人の経験を自分の業務に生かすことができる。
【0143】
(1-2) 表示部127は、履歴データおよび属性内容を検索結果として表示する。検索結果には、検索用データに含まれる単語代表語または単語関連語を識別可能な情報が含まれる。このように構成することで、検索用データに含まれる単語代表語または単語関連語を認識しやすくなる。
【0144】
(1-3) 制御部21は、履歴データに含まれる単語を学習済モデル31に入力することで、学習済モデル31から1以上の属性代表語と属性代表語に関連した属性内容とを出力する。制御部21は、出力した属性代表語および属性内容を履歴データに対応付けて、検索用データとして検索用データベース36に登録する。このように構成することで、属性代表語および属性内容も含めたデータを検索対象とすることができ、より広い概念の単語で検索することができるため、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。
【0145】
(1-4) 属性内容は、2つの単語代表語の組合せで構成される。このように構成することで、履歴データの内容をより的確かつ簡潔に示した単語が検索対象となるため、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。
【0146】
(1-5) 属性代表語は、ビルの利用者がビル設備に関して問い合わせた内容を代表する言葉と、利用者が内容を問い合わせした原因を代表する言葉と、利用者の問い合わせに対するビル設備の管理者の対応を代表する言葉とを含む。このように構成することで、ビル設備の管理に最適化された方法により履歴データを絞り混むことができる。
【0147】
(1-6) 学習済モデル31は、履歴データに含まれる単語が入力された際に、1以上の属性代表語および属性代表語に関連した属性内容を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。このように構成することで、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。
【0148】
(1-7) 制御方法は、ビル設備の管理に関する履歴データを検索する検索システム1aを制御する。検索システム1aは、記憶部25を備える。記憶部25は、履歴データの属性を代表する属性代表語と、属性代表語に関連する意味を持つ属性関連語とが対応付けられた属性辞書33と、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書34と、履歴データに対して1以上の属性代表語が対応付けられ、属性代表語に関連した属性内容が対応付けられた検索用データが登録された検索用データベース36と、を記憶する。制御方法は、属性辞書33を用いて、ユーザが入力したキーワードに関連する意味を持つ属性代表語を抽出するステップと、抽出された属性代表語が対応付けられた検索用データを検索用データベース36の検索対象として決定するステップと、単語辞書34を用いて、キーワードに関連する意味を持つ単語代表語および単語関連語を抽出するステップと、検索対象として決定された検索用データに、抽出された単語代表語または単語関連語が含まれている場合、検索用データを検索結果として決定するステップと、検索結果を表示するステップと、を含む。このように構成することで、入力されたキーワードに関連する意味を持つ単語を含む履歴データを効率よく検索することができる。これにより、属人的な文章をその他の担当者が普段使っている単語で検索できるようになり、他人の経験を自分の業務に生かすことができる。
【0149】
(2-1) ニーズ表示システム1bは、ビルの利用者のニーズを集計して表示する。ニーズ表示システム1bは、制御部21と、記憶部25と、表示部127と、を備える。記憶部25は、単語辞書34と、学習済モデル41と、を記憶する。単語辞書34は、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた辞書である。学習済モデル41は、履歴データに基づく推定結果の出力に用いられるモデルである。表示部127は、推定結果に関する表示を行う。学習済モデル41は、単語代表語が特徴量として入力された際に、ニーズと、ニーズが発生した場所または日時とを推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。制御部21は、単語辞書34を用いて、履歴データから単語代表語を抽出する。制御部21は、抽出した単語代表語を特徴量として学習済モデル41に入力することで、学習済モデル41からニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力する。制御部21は、推定結果をニーズごとに集計する。表示部127は、ニーズごとに集計された推定結果を表示する。
【0150】
このように構成することで、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。これによって、ヒアリングやアンケートでは収集できない入居者などのビルの利用者の潜在的なニーズを抽出することができる。また、都度記録されている履歴データを情報源として活用するため、ビルの利用者が忘れているニーズも抽出することが可能となり、ビルオーナーまで届かない、現場にのみ存在するニーズデータが収集可能となる。これにより、今まで気づかなかったビルの利用者のためのビルの運用改善や設備改善が可能となる。
【0151】
(2-2) 表示部127は、ニーズと、ニーズが発生する場所または日時と、集計されたニーズの数とを、集計されたニーズの数が多い順に表示する。このように構成することで、好適にニーズを把握することができる。
【0152】
(2-3) 制御部21は、推定結果を、1年のうちの特定の期間についてニーズごとに集計する。このように構成することで、特定の期間にのみ発生するニーズや、特定の期間に対する年ごとのニーズの推移を把握することができる。
【0153】
(2-4) 履歴データは、利用者がビル設備に関して問い合わせた内容と、利用者が内容を問い合わせした原因と、利用者の問い合わせに対するビル設備の管理者の対応とが記録されたデータである。このように構成することで、ビル設備において管理されている履歴データを活用して、好適にニーズを抽出することができる。
【0154】
(2-5) ニーズは、ニーズが発生する場所または日時において、利用者が不快に感じる事象またはビルを快適に利用するためにビル設備に求める事象に基づくニーズである。このように構成することで、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。
【0155】
(2-6) 学習済モデル41生成方法は、ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システム1bに適用するための方法である。ニーズ表示システム1bは、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書34と、を記憶する記憶部25を備える。学習済モデル41生成方法は、学習用データセットの中から学習用データを選択するステップと、学習用データに含まれる単語代表語を特徴量として推定モデル41に入力することで、推定モデル41からニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力するステップと、推定結果と学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき推定モデル41のパラメータを更新するステップとを含む。このように構成することで、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。
【0156】
(2-7) 制御方法は、ビルの利用者のニーズを集計して表示するニーズ表示システム1bを制御する。ニーズ表示システム1bは、ビル設備の管理に関する履歴データと、履歴データに使用される単語を代表する単語代表語と、単語代表語に関連する意味を持つ単語関連語とが対応付けられた単語辞書34と、履歴データに基づく推定結果の出力に用いられる学習済モデル41と、を記憶する記憶部25を備える。制御方法は、単語辞書34を用いて、履歴データから単語代表語を抽出するステップと、抽出した単語代表語を特徴量として学習済モデル41に入力することで、学習済モデル41からニーズと、ニーズが発生する場所または日時とを推定結果として出力するステップと、推定結果をニーズごとに集計するステップと、ニーズごとに集計された推定結果を表示するステップとを含む。学習済モデル41は、単語代表語が特徴量として入力された際に、ニーズと、ニーズが発生した場所または日時とを推定結果として出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されたモデルである。このように構成することで、ビル設備の管理に関する履歴データから、ビルの利用者のニーズを好適に抽出することができる。
【0157】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0158】
1a 検索システム、1b ニーズ抽出システム、10 サーバ装置、21,121 制御部、22,122 ROM、23,123 RAM、24,124 通信インターフェイス、25,125 記憶部、31,41 学習済モデル、32,42 学習用データセット、33 属性辞書、34 単語辞書、35a,45a 履歴データ、35b,45b 推定結果、36 検索用データベース、37 検索画面、38 履歴検索結果、48 ニーズ抽出結果、100,101 端末、127 入力部、128 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16