IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディミューン リミテッドの特許一覧 ▶ インネート ファーマの特許一覧

<>
  • 特許-癌の処置 図1
  • 特許-癌の処置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】癌の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240802BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240802BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020563542
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2019062305
(87)【国際公開番号】W WO2019219658
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】62/671,521
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520348325
【氏名又は名称】インネート ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブドラ,シャード,エッサ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アショク,クマール
(72)【発明者】
【氏名】ソン,シューヤン
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/106656(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/125532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を処置し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法において使用するための組成物の組合せ物であって、
PD-1中和抗体を含有する第1の医薬組成物、及び
NKG2A中和抗体を含有する第2の医薬組成物を含み、
前記PD-1中和抗体は、それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン、並びに配列番号31~33のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む抗PD-L1抗体であり、
前記NKG2A中和抗体は、それぞれ配列番号16~18のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン、並びに配列番号19~21のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む抗NKG2A抗体であり、
前記個人は、マイクロサテライト安定性である大腸癌(MSS-CRC)を有する、組合せ物。
【請求項2】
前記個人は、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
前記個人は、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有する、請求項1又は2に記載の組合せ物。
【請求項4】
前記方法が、
a)前記個人が、MSI-H及び/又はDNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有するかどうかを決定し、任意選択的に、前記個人が、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップであって、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、予備ステップ;及び/又は
b)前記個人が、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有するかどうか、任意選択的に、前記個人が、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップ
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記NKG2A中和抗体は、ヒト抗NKG2A抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項6】
前記NKG2A中和抗体は、HLA-EへのNKG2Aの結合を阻害する抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
前記NKG2A中和抗体は、モナリズマブである、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項8】
前記PD-1中和抗体は、ヒト抗PD-L1抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項9】
前記PD-1中和抗体は、デュルバルマブである、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項10】
前記NKG2A中和抗体は、モナリズマブであり、及び前記PD-1中和抗体は、デュルバルマブである、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項11】
前記第1の医薬組成物及び前記第2の医薬組成物は、同時に、別々に又は連続的に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項12】
前記第1の医薬組成物及び前記第2の医薬組成物は、別々の投与のために処方され、且つ同時又は連続的に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項13】
前記NKG2A中和抗体は、0.1~10mg/kgの範囲の用量で投与され、及び前記PD-1中和抗体は、1~20mg/kgの範囲の用量で投与され、任意選択的に、前記NKG2A中和抗体は、10mg/kgの用量で投与され、及び前記PD-1中和抗体は、20mg/kgの用量で投与され、任意選択的に、前記NKG2A中和抗体は、2週間毎に750mgの一定の用量で投与されるモナリズマブであり、及び前記PD-1中和抗体は、4週間毎に1500mgの一定の用量で投与されるデュルバルマブである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、特にDNAミスマッチ修復欠損によって特徴付けられない癌を処置するためのNKG2A中和剤及びPD-1中和剤の使用に関する。MSS癌の処置が含まれる。本発明は、進行した再発性又は転移性大腸癌を処置するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
NK細胞活性は、活性化シグナル及び阻害性シグナルの両方を含む複雑な機構によって制御される。HLAクラスI欠損標的細胞のNK細胞媒介性の認識及び死滅において重要な役割を果たすいくつかの別個のNK特異的受容体が同定されている。天然細胞毒性受容体(NCR)は、活性化受容体タンパク質の種類及びこれらを発現する遺伝子(NK細胞において特異的に発現される)を指す。NCRの例としては、NKp30、NKp44及びNKp46が挙げられる。これらの受容体は、Igスーパーファミリーのメンバーであり、特異的なモノクローナル抗体によって誘導されるこれらの架橋は、強力なNK細胞活性化をもたらし、その結果、細胞内Ca++レベルの増大、細胞毒性の誘発及びリンホカインの放出並びに多くのタイプの標的細胞に対するNK細胞毒性の活性化が生じる。
【0003】
CD94/NKG2Aは、リンパ球のサブセットにおいて見出される阻害性受容体である。CD94/NKG2Aは、CD94/NKG2A-リガンドHLA-Eを発現する細胞に対する特定のリンパ球のサイトカイン放出及び細胞毒性反応を制限する。また、HLA-Eは、特定の腫瘍細胞及び活性化内皮細胞によって可溶性形態で分泌されることも見出されている。CD94/NKG2Aシグナル伝達を阻害する抗体は、HLA-E発現腫瘍細胞又はウイルス感染細胞に対するCD94/NKG2A陽性NK細胞の応答など、HLA-E陽性標的細胞に対するリンパ球のサイトカイン放出及び細胞溶解活性を増大し得る。従って、抗NKG2A抗体を中和することが癌の処置に有用であり得る。
【0004】
大腸癌(CRC)は、全ての癌の10%~15%を占め、西欧諸国における癌死亡の主な原因である。転移性CRC(mCRC)の処置のための標準治療は、依然として細胞毒性薬の使用である。より最近では、免疫療法薬がCRCにおいて試験されている。Leら(N Engl J Med.2015;372:2509-2520)は、抗プログラム細胞死1免疫チェックポイント阻害剤であるペンブロリズマブを用いてCRCにおける第2相臨床試験を行っており、免疫関連客観的奏効率及び免疫関連PFS率がそれぞれMSI-H CRCについて40%(10人の患者中4人)及び78%(9人の患者中7人)であり、マイクロサテライト安定性/正常(proficient)MSS CRCについて0%(18人の患者中0人)及び11%(18人の患者中2人)であったことが分かった。MSS CRC患者の18人中11人と比較して、MSI-H CRCの10人の患者中1人のみが疾患進行を経験した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、化学療法剤及び/又は標的療法は、非MSI-H CRCを有する患者に十分な及び/又は持続的な抗腫瘍反応を与えない。従って、DNA修復欠損を有さない処置患者に対する利益の改善が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に、MSS-CRCを有するヒト患者がNKG2A中和剤モナリズマブ及びPD-1中和剤デュルバルマブで処置されたときに有望な抗腫瘍反応を示したという観察から生じたものである。PD-1中和剤は、MSS-CRCに適していると考えられていなかったが、これらの2つの薬剤の組み合わせは、MSS-CRCを処置するのに有益であり得ることが意外にも分かった。理論によって拘束されるのを望むものではないが、HLA-E/NKG2A軸(HLA-E/NKG2A axis)の中和により、MSS-CRC腫瘍が宿主免疫系による認識及び/又は溶解に対して感受性になることがあり得る。
【0007】
1つの態様では、本発明は、癌を処置及び/若しくは予防し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法であって、前記個人は、非MSI-High腫瘍を有し、方法は、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で前記個人を処置するステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、腫瘍は、MSI-Lowである。別の実施形態では、腫瘍は、MSSである。一実施形態では、癌又は腫瘍は、大腸癌(CRC)、任意選択的に進行した再発性又は転移性大腸癌(mCRC)である。
【0008】
1つの態様では、本発明は、癌を処置及び/若しくは予防し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法であって、前記個人は、DNAミスマッチ修復(MMR)欠損でない腫瘍を有し、方法は、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で前記個人を処置するステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、腫瘍は、MSI-Lowである。別の実施形態では、腫瘍は、MSSである。一実施形態では、癌又は腫瘍は、大腸癌(CRC)、任意選択的に進行した再発性又は転移性大腸癌(mCRC)である。
【0009】
1つの態様では、本発明は、癌を処置し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法であって、前記個人は、進行した再発性又は転移性大腸癌、任意選択的にMSI-High(MSI-H)でない転移性大腸癌を有し、方法は、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で前記個人を処置するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
1つの態様では、本発明は、癌を処置し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法であって、前記個人は、進行した再発性又は転移性大腸癌、任意選択的に低マイクロサテライト不安定性(MSI-Low)又はマイクロサテライト安定性(MSS)である転移性大腸癌を有し、方法は、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で前記個人を処置するステップを含む、方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、個人において癌、任意選択的にCRC又はmCRCを処置又は予防するための方法であって、(i)DNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及び有効量の、PD-1を中和する薬剤を個人に投与するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
一実施形態では、個人において癌、任意選択的にCRC又はmCRCを処置又は予防するための方法であって、(i)MSI-High腫瘍でない腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及び有効量の、PD-1を中和する薬剤を個人に投与するステップとを含む方法が提供される。
【0013】
一実施形態では、個人において癌、任意選択的にCRC又はmCRCを処置又は予防するための方法であって、(i)MSS腫瘍である腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及び有効量の、PD-1を中和する薬剤を個人に投与するステップとを含む方法が提供される。
【0014】
別の実施形態では、癌、任意選択的にCRC又はmCRCを有する個人が、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤による処置から特定の利益を得るかどうか、そのような処置に応答するかどうか及び/又はそのような処置に好適であるかどうかを決定するための方法が提供され、この方法は、前記個人が、DNAミスマッチ修復欠損である腫瘍を有するかどうかを決定するステップを含み、腫瘍がDNAミスマッチ修復欠損でないという決定は、個人が、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びヒトPD-1ポリペプチドを中和する薬剤による処置から特定の利益を得、そのような処置に応答し、且つ/又はそのような処置に好適であることを示す。
【0015】
別の実施形態では、癌、任意選択的にCRC又はmCRCを有する個人が、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤による処置から特定の利益を得るかどうか、そのような処置に応答するかどうか及び/又はそのような処置に好適であるかどうかを決定するための方法が提供され、この方法は、前記個人が、マイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有する(例えば、個人がMSS腫瘍を有する)かどうかを決定するステップを含み、腫瘍がマイクロサテライト不安定性を有さない(例えば、個人がMSS腫瘍を有する)という決定は、個人が、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びヒトPD-1ポリペプチドを中和する薬剤による処置から特定の利益を得、そのような処置に応答し、且つ/又はそのような処置に好適であることを示す。
【0016】
マイクロサテライト不安定性は、DNAミスマッチ修復(MMR)障害に起因する遺伝的易変異性の状態である。MSIの存在は、MMRが正常に機能していないことの表現型エビデンスを表す。ほとんどの場合、MSI腫瘍における不安定性の遺伝的基盤は、5つのヒトMMR遺伝子:MSH2、MLH1、MSH6、PMS2及びPMS1のいずれか1つ又は複数の遺伝的な生殖細胞系列の変化である。従って、腫瘍におけるマイクロサテライト不安定性は、マイクロサテライトマーカー及び/又はMMR遺伝子を評価することによって決定され得る。
【0017】
一実施形態では、腫瘍がマイクロサテライト不安定性を有さない(例えば、腫瘍がマイクロサテライト安定性(MSS)である)個人を同定するステップは、(a)腫瘍細胞を含む個人から生体サンプルを得るステップ(例えば、生検を得ることを含む)と、(b)生体サンプル中の腫瘍細胞のマイクロサテライトステータスを決定するステップとを含む。個人が、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられない腫瘍を有する(例えば、腫瘍は、MSSであり、腫瘍は、マイクロサテライト安定性によって特徴付けられる)という所見は、個人が、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で有利に処置され得ることを示す。
【0018】
一実施形態では、腫瘍細胞のマイクロサテライトステータスを決定するステップは、腫瘍細胞におけるDNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を検出するステップを含み、任意選択的に、MMRタンパク質は、MSH2、MLH1、MSH6、PMS2及びPMS1から選択され、任意選択的に、MMR遺伝子又はタンパク質は、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される。一実施形態では、個人が、少なくとも1つのMMRタンパク質の減少又は非存在によって特徴付けられる腫瘍を有するという所見は、腫瘍が、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられることを示す。腫瘍が少なくとも1つのMMRタンパク質の減少又は非存在を有さない個人は、腫瘍がマイクロサテライト安定性(例えば、MSS)によって特徴付けられることを示すものと規定され得、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で有利に処置され得る。MMRタンパク質の減少は、例えば、DNAミスマッチ修復欠損を評価するための標準方法及び指針に従って評価され得る。任意選択的に、MMRタンパク質の発現の減少は、MSSに関連する基準値と比較した減少に相当し得;任意選択的に、MMRタンパク質の発現の減少は、MSIに関連する基準値に相当する。代わりに、少なくとも1つのMMRタンパク質の減少は、例えば、同じ個人の健康な組織中で測定される同じMMRタンパク質のレベル、又は異なる期間で分析される同じ個人の腫瘍サンプル中で測定される同じMMRタンパク質のレベル、又は癌に罹患していない個人などの健康な個人からの生体サンプル中の同じMMRタンパク質の平均レベルであり得る基準値との比較によって評価され得る。
【0019】
一実施形態では、腫瘍細胞のマイクロサテライトステータスを決定するステップは、マイクロサテライトマーカー又はマイクロサテライトマーカーパネルの変化を検出するステップを含む。任意選択的に、変化は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24、MONO27、D5S346、D2S123及びD17S250からなる群から、より特定的にはBAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される1つ又は複数のマイクロサテライトマーカー中で検出される。腫瘍が高頻度マイクロサテライト不安定性を有さない個人は、腫瘍がマイクロサテライト安定性(MSS)又は低マイクロサテライト不安定性(MSI-Low)によって特徴付けられることを示し、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤及びPD-1を中和する薬剤で有利に処置され得る。
【0020】
一実施形態では、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤は、任意選択的に、ヒトHLA-E及びヒトNKG2Aタンパク質間の相互作用を阻害することにより、ヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和するタンパク質(例えば、抗体)である。一実施形態では、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤は、ヒトNKG2Aポリペプチドに結合し、且つヒトHLA-E及びヒトNKG2Aタンパク質間の相互作用を阻害することによるか又はそれによらずにヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和するタンパク質(例えば、抗体)である。一実施形態では、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤は、ヒトHLA-Eポリペプチドに結合し、ヒトHLA-E及びヒトNKG2Aタンパク質間の相互作用を阻害するタンパク質(例えば、抗体)である。
【0021】
一実施形態では、ヒトPD-1ポリペプチドを中和する薬剤は、PD-1の阻害活性を中和する抗PD-1又は抗PDL-1抗体である。個人は、ヒトであると規定され得る。
【0022】
一実施形態では、DNAミスマッチ修復欠損によって特徴付けられない腫瘍(例えば、CRC、mCRC)を有する個人において腫瘍浸潤CD8+T細胞及び/又はNK細胞の活性及び/又は数を増大する方法が提供され、この方法は、治療的に有効な量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する化合物及び治療的に有効な量の、PD-1ポリペプチドを中和する化合物を個人に投与するステップを含む。
【0023】
一実施形態では、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられない腫瘍(例えば、CRC、mCRC)(例えば、MSSとして特徴付けられる癌)を有する個人において腫瘍浸潤CD8+T細胞及び/又はNK細胞の活性及び/又は数を増大する方法が提供され、この方法は、治療的に有効な量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する化合物及び治療的に有効な量の、PD-1ポリペプチドを中和する化合物を個人に投与するステップを含む。
【0024】
一実施形態では、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられない大腸癌(例えば、mCRC)(例えば、MSSとして特徴付けられる癌)の処置に使用するための、NKG2Aを中和する薬剤、任意選択的に抗NKG2A抗体が提供され、NKG2Aを中和する薬剤は、PD-1を中和する薬剤、任意選択的に抗PD-1又は抗PD-L1抗体と併用して投与される。
【0025】
一実施形態では、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられない大腸癌(例えば、mCRC)(例えば、MSSとして特徴付けられる癌)の処置に使用するための、ヒトPD-1ポリペプチドを中和する薬剤、任意選択的に抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体が提供され、ヒトPD-1ポリペプチドを中和する薬剤は、阻害性受容体NKG2Aを中和する薬剤、任意選択的に抗NKG2A抗体と併用して投与される。
【0026】
本明細書の任意の実施形態の1つの態様では、個人は、放射線療法、手術、化学療法及び/又は生物剤による処置による以前の処置を受けている。
【0027】
これらの態様は、本明細書で提供される本発明の説明においてより詳細に記載されており、付加的な態様、特徴及び利点は、本明細書で提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】MSS-CRC試験の拡大コホートにおける各患者(横軸)についてのベースラインからの腫瘍サイズの最良の変化(%、左側の縦軸)及び評価可能な集団における治療反応の期間(週数、z軸)の3次元表示である。
図2図1と比較してより長い期間におけるMSS-CRC試験の拡大コホートにおける各患者(横軸)についてのベースラインからの腫瘍サイズの最良の変化(%、左側の縦軸)及び評価可能な集団における治療反応の期間(週数、z軸)の3次元表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ又は複数を意味し得る。特許請求の範囲において使用される場合、単語「含む」と共に使用されると、単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の又はそれを超えるものを意味し得る。
【0030】
「含む」が使用される場合、これは、任意選択的に、「から本質的になる」又は「からなる」によって置き換えることができる。
【0031】
NKG2A(OMIM161555、その開示全体は、参照によって本明細書に援用される)は、転写物のNKG2グループのメンバーである(Houchins,et al.(1991)J.Exp.Med.173:1017-1020)。NKG2Aは、25kbに及ぶ7つのエクソンによってコードされ、いくらかの差別的スプライシングを示す。CD94と一緒に、NKG2Aは、NK細胞、α/βT細胞、γ/δT細胞及びNKT細胞のサブセットの表面において見出されるヘテロ二量体の阻害性受容体CD94/NKG2Aを形成する。阻害性KIR受容体と同様に、それは、その細胞質ドメインにITIMを有する。本明細書で使用される場合、「NKG2A」は、NKG2A遺伝子又はコード化タンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを指す。ヒトNKG2Aは、以下の配列:
【化1】
の233のアミノ酸を3つのドメインに含み、細胞質ドメインが残基1~70を含み、膜貫通領域が残基71~93を含み、細胞外領域が残基94~233を含む。
【0032】
NKG2C(OMIM602891、その開示全体は、参照によって本明細書に援用される)及びNKG2E(OMIM602892、その開示全体は、参照によって本明細書に援用される)は、転写物のNKG2グループの2つの他のメンバーである(Gilenke,et al.(1998)Immunogenetics 48:163-173)。CD94/NKG2C及びCD94/NKG2E受容体は、NK細胞及びT細胞などのリンパ球のサブセットの表面において見出される活性化受容体である。
【0033】
HLA-E(OMIM143010、その開示全体は、参照によって本明細書に援用される)は、細胞表面で発現され、例えば他のMHCクラスI分子のシグナル配列に由来する断片などのペプチドの結合によって制御される非古典的なMHC分子である。HLA-Eの可溶性型も同定されている。そのT細胞受容体結合特性に加えて、HLA-Eは、CD94/NKG2A、CD94/NKG2B及びCD94/NKG2Cに特異的に結合することにより、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びT細胞(α/β及びγ/δ)のサブセットに結合する(例えば、その開示全体が参照によって本明細書に援用されるBraud et al.(1998)Nature 391:795-799を参照されたい)。HLA-Eの表面発現は、CD94/NKG2A+NK、T又はNKT細胞クローンによる溶解から標的細胞を保護する。本明細書で使用される場合、「HLA-E」は、HLA-E遺伝子又はコード化タンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームを指す。
【0034】
本発明との関連において、「NKG2A」又は「CD94/NKG2A」、「陽性リンパ球」又は「制限リンパ球」は、細胞表面においてCD94/NKG2Aを発現するリンパ球系(例えば、NK-、NKT-及びT細胞)の細胞を指し、これは、例えば、CD94及びNKG2A上の複合エピトープ又は及びNKG2A単独上のエピトープを特異的に認識する抗体を用いるフローサイトメトリーによって検出することができる。また、「NKG2A陽性リンパ球」は、リンパ球由来の不死細胞株(例えば、NKL、NK-92)も含む。
【0035】
本発明との関連において、「NKG2Aの阻害活性を低下させる」、「NKG2Aを中和する」又は「NKG2Aの阻害活性を中和する」は、CD94/NKG2Aが細胞内プロセスに悪影響を与えるその能力において阻害され、サイトカイン放出及び細胞毒性応答などのリンパ球応答をもたらすプロセスを指す。これは、例えば、NK-又はT細胞ベースの細胞毒性アッセイにおいて測定することができ、このアッセイでは、CD94/NKG2A陽性リンパ球によるHLA-E陽性細胞の死滅を刺激する治療用化合物の能力が測定される。一実施形態では、NKG2Aを中和する抗体調製物は、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞毒性の少なくとも10%の増強、任意選択的に前記リンパ球細胞毒性の少なくとも40%又は50%の増強、任意選択的に前記リンパ球細胞毒性の少なくとも70%の増強、任意選択的にNK細胞毒性の少なくとも70%の増強を引き起し、本明細書で記載される細胞毒性アッセイが参照される。抗NKG2A抗体がCD94/NKG2AのHLA-Eとの相互作用を低減又は遮断すれば、CD94/NKG2A制限リンパ球の細胞毒性が増大され得る。これは、例えば、例えばCD94/NKG2Aを発現するNK細胞及びHLA-Eを発現する標的細胞を用いて、標準的な4時間インビトロ細胞毒性アッセイにおいて評価することができる。CD94/NKG2AがHLA-Eを認識して、リンパ球媒介性の細胞溶解を防止する阻害性シグナル伝達の開始及び伝播をもたらすため、このようなNK細胞は、HLA-Eを発現する標的を効率的に死滅させない。このようなインビトロ細胞毒性アッセイは、例えば、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)に記載されるように、当技術分野において周知の標準的な方法によって実行することができる。また、抗体がリンパ球を刺激してP815、K562細胞又は適切な腫瘍細胞などの標的細胞を死滅させる能力を評価するためのクロム放出及び/又は他のパラメータは、Sivori et al.,J.Exp.Med.1997;186:1129-1136;Vitale et al.,J.Exp.Med.1998;187:2065-2072;Pessino et al.J.Exp.Med.1998;188:953-960;Neri et al.Clin.Diag.Lab.Immun.2001;8:1131-1135;Pende et al.J.Exp.Med.1999;190:1505-1516(これらのそれぞれの開示全体は、参照によって本明細書に援用される)に開示されている。標的細胞は、NK細胞の添加前に51Crによって標識化され、次に死滅の結果としての細胞から培地への51Crの放出に比例するように死滅が推定される。CD94/NKG2AがHLA-Eへ結合するのを防止する抗体を添加すると、結果的に、CD94/NKG2Aによる阻害性シグナル伝達の開始及び伝播が防止される。従って、このような薬剤の添加の結果、リンパ球媒介性の標的細胞の死滅が増大される。このステップは、これにより、CD94/NKG2Aに誘導される負のシグナル伝達を例えばリガンド結合の遮断によって防止する薬剤を同定する。特定の51Cr放出細胞毒性アッセイにおいて、CD94/NKG2A発現NKエフェクター細胞は、HLA-E陰性LCL721.221標的細胞を死滅させることができるが、HLA-E発現LCL721.221-Cw3対照細胞についてあまり死滅させない。対照的に、CD94/NKG2Aを欠いているYTSエフェクター細胞は、両方の細胞株を効率的に死滅させる。従って、NKエフェクター細胞は、CD94/NKG2AによるHLA-E誘導性阻害性シグナル伝達のために、HLA-ELCL721.221-Cw3細胞をあまり効率的に死滅させない。このような51Cr放出細胞毒性アッセイにおいて、NK細胞が、本明細書で記載される遮断性の抗CD94/NKG2A抗体と共にプレインキュベートされる場合、HLA-E発現LCL721.221-Cw3細胞は、抗体濃度に依存した方式でより効率的に死滅される。また、抗NKG2A抗体の阻害活性(すなわち細胞毒性増強能)は、いくつかの他の方法のいずれかにおいて、例えば、例えばSivori et al.,J.Exp.Med.1997;186:1129-1136(その開示は、参照によって本明細書に援用される)に記載されるような、細胞内遊離カルシウムに対するその効果によって評価することもできる。NK細胞の細胞毒性の活性化は、例えば、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ産生)又は細胞毒性マーカー(例えば、CD107又はCD137動員)の増大を測定することによって評価することができる。例示的なプロトコルでは、PBMCからのIFN-yの産生は、培養下で4日後に細胞表面及び細胞質内染色並びにフローサイトメトリーによる分析によって評価される。簡単に言うと、ブレフェルジンA(Sigma Aldrich)が培養の最後の4時間に5μg/mlの最終濃度で添加される。次に、細胞は、透過処理(IntraPrep(商標);Beckman Coulter)及びPE-抗IFN-y又はPE-IgG1(Pharmingen)による染色前に抗CD3及び抗CD56モノクローナル抗体と共にインキュベートされる。ポリクローナル活性化NK細胞からのGM-CSF及びIFN-yの産生は、ELISA(GM-CSF:DuoSet Elisa,R&D Systems,Minneapolis,MN、IFN-y:OptElA set、Pharmingen)を用いて上清において測定される。
【0036】
一実施形態では、DNAミスマッチ修復欠損によって特徴付けられない腫瘍(例えば、CRC、mCRC)を有する個人において腫瘍浸潤CD8+T細胞及び/又はNK細胞の活性及び/又は数を増大する方法が提供され、この方法は、治療的に有効な量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する化合物及び治療的に有効な量の、PD-1ポリペプチドを中和する化合物を個人に投与するステップを含む。
【0037】
一実施形態では、マイクロサテライト不安定性によって特徴付けられない腫瘍(例えば、CRC、mCRC)(例えば、MSSとして特徴付けられる癌)を有する個人において腫瘍浸潤CD8+T細胞及び/又はNK細胞の活性及び/又は数を増大する方法が提供され、この方法は、治療的に有効な量の、阻害性受容体NKG2Aを中和する化合物及び治療的に有効な量の、PD-1ポリペプチドを中和する化合物を個人に投与するステップを含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「処置」及び「処置すること」などは、一般に、所望の薬理学的及び生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患、その症状若しくは病態を予防するか若しくは部分的に予防する点で予防的であり得、且つ/又は疾患、病態、症状若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な治癒の点で治療的であり得る。本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患に罹患しやすいが、依然として罹患していると診断されていない対象において、疾患を発症しないように予防すること(例えば、予防的早期無症候性介入);(b)例えば、疾患に罹患していると診断された対象において疾患を抑制すること、例えばその進行を食い止めること;又は疾患を軽減すること、例えば疾患及び/若しくはその症状若しくは病態を退縮させること(例えば、損傷の改善若しくは修復)を含む。任意選択的に、処置は、腫瘍負荷の減少、病変のサイズ及び/又は数の減少、癌の進行の軽減若しくは遅延(例えば、無増悪生存率の増加)、癌転移の遅延若しくは予防及び/又は生存率の増加を引き起こし得る(例えば、それらを引き起こす方法として特徴付けられ得る)。任意選択的に、処置は、例えば、標準的な基準、任意選択的にRECIST基準に従い、対象における安定、部分奏効又は完全奏効を引き起こすか又は提供し得る(例えば、それらを引き起こすか又は提供する方法として特徴付けられ得る)。
【0039】
「癌の処置」などがNKG2A中和剤(例えば、抗体)及び/又はPD-1中和剤(例えば、抗体)と関連して言及される場合には常に以下のことが含まれる:
(a)癌を処置する方法であり、前記方法は、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤を(例えば、薬学的に許容可能な担体材料中で一緒に又はそれぞれ別々に)、癌の処置を可能にする用量(治療的に有効な量)、任意選択的に本明細書で指定される用量(量)において、このような処置を必要としている個人、哺乳類、特にヒトに投与する(少なくとも1つの処置のために)ステップを含み;
(b)癌の処置のためのNKG2A中和剤及びPD-1中和剤の使用;
(c)癌(特にヒトにおける)の処置に使用するためのNKG2A中和剤及びPD-1中和剤;
(d)癌(特にヒトにおける)の処置に使用するためのNKG2A中和剤であり、前記NKG2A中和剤は、PD-1中和剤と併用して投与され;
(e)癌(特にヒトにおける)の処置に使用するためのPD-1中和剤であり、前記PD-1中和剤は、NKG2A中和剤と併用して投与され;
(f)癌の処置のための医薬品を製造するためのNKG2A中和剤及びPD-1中和剤の使用、
(g)NKG2A中和剤及び/又はPD-1中和剤を薬学的に許容可能な担体と混合することを含む、癌の処置のための医薬品を製造するためにNKG2A中和剤及びPD-1中和剤を使用する方法、
(h)癌の処置のために適切な有効用量のNKG2A中和剤及び/又はPD-1中和剤を含む医薬品;
(i)本出願が提出された国において特許が認められる主題に従う(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び(h)の任意の組み合わせ。
【0040】
「生検」という用語は、本明細書で使用される場合、診断の確立などの検査の目的で組織を除去することと定義される。生検のタイプの例としては、例えば、シリンジに取り付けられた針を介した吸引の適用によるもの;組織の断片の機器による除去によるもの;内視鏡を介する適切な機器を用いた除去によるもの;外科的切除、例えば病変全体の外科的切除によるものなどが挙げられる。
【0041】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を指す。重鎖内の定常ドメインのタイプに応じて、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのサブクラス又はアイソタイプにさらに分類される。例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のペアのポリペプチド鎖で構成され、各ペアは、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100~110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を画定する。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「アルファ」、「デルタ」、「イプシロン」、「ガンマ」及び「ミュー」と呼ばれる。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造及び三次元配置は、周知である。IgGは、生理学的状況下で最も一般的な抗体であり、研究室環境で最も容易に作製されるため、本明細書で使用される抗体の例示的な種類である。任意選択的に、抗体は、モノクローナル抗体である。抗体の特定の例は、ヒト化、キメラ、ヒト又は別の方法でヒトに適した抗体である。また、「抗体」は、本明細書に記載される抗体のいずれかの任意の断片又は誘導体も含む。
【0042】
「特異的に結合する」という用語は、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ又は単離した標的細胞の表面に存在する天然タンパク質のいずれかを用いて評価されるとき、抗体が、好ましくは、競合的結合アッセイにおいて結合パートナー、例えば抗NKG2A抗体についてNKG2A、抗PD-L1抗体についてPD-L1、抗PD-1抗体についてPD-1に結合できることを意味する。特異的な結合を決定するための競合的結合アッセイ及び他の方法は、当技術分野において周知である。例えば、結合は、放射標識、質量分析などの物理的方法又は例えば細胞蛍光測定分析(例えば、FACScan)を用いて検出される直接若しくは間接的な蛍光標識によって検出することができる。対照の非特異的な薬剤で見られる量を超える結合は、その薬剤が標的に結合することを示す。NKG2Aに特異的に結合する薬剤は、単独のNKG2A又はCD94との二量体としてのNKG2Aに結合し得る。
【0043】
抗体が特定のモノクローナル抗体「と競合する」と言われる場合、それは、組換え分子(例えば、NKG2A)又は表面発現分子(例えば、NKG2A)のいずれかを用いる結合アッセイにおいて抗体がモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいて、配列番号4~8のいずれかの重鎖可変領域及び配列番号9の軽鎖可変領域を有する抗体の、NKG2Aポリペプチド又はNKG2A発現細胞に対する結合を低減すると、抗体は、このような抗体とそれぞれ「競合する」と言われる。
【0044】
「親和性」という用語は、本明細書で使用される場合、エピトープに対する抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は、非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は、非結合抗原のモル濃度である)として定義される解離定数Kdによって与えられる。親和性定数Kは、1/Kdにより定義される。モノクローナル抗体の親和性を決定する方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)において見出すことができ、これらの参考文献は、参照によって本明細書に完全に援用される。モノクローナル抗体の親和性を測定するための当技術分野において周知の1つの標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置を用いた分析によるものなど)の使用である。
【0045】
本明細書に関連して、「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を指定する。
【0046】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基を指し、抗体が結合する抗原上の区域又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基と、特異的抗原結合抗体又はペプチドにより効果的に遮断されるアミノ酸残基、すなわち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基とを含み得る。それは、例えば、抗体又は受容体と結合し得る複雑な抗原分子上の最も単純な形態又は最小の構造領域である。エピトープは、直線的又は立体構造的/構造的であり得る。「直線的エピトープ」という用語は、アミノ酸の直鎖配列(一次構造)上で連続するアミノ酸残基で構成されるエピトープとして定義される。「立体構造的又は構造的エピトープ」という用語は、全てが連続しているわけではなく、従って分子の折り畳み(二次、三次及び/又は四次構造)により互いに近接されるアミノ酸の直鎖配列の分離部を表すアミノ酸残基で構成されるエピトープとして定義される。立体構造的エピトープは、三次元構造に依存する。「立体構造的」という用語は、従って、「構造的」と互換的に使用されることが多い。
【0047】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化合物、化合物の混合物、生物学的巨大分子又は生物学的材料から作製される抽出物を示すために使用される。「治療薬」という用語は、生物活性を有する薬剤を指す。
【0048】
本明細書の目的のために、「ヒト化」又は「ヒト」抗体は、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンの定常及び可変フレームワーク領域が動物免疫グロブリンの結合領域、例えばCDRと融合された抗体を指す。このような抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を保持するが、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように設計される。このような抗体は、抗原負荷に応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作された」トランスジェニックマウス又は他の動物から得ることができる(例えば、その教示全体が参照によって本明細書に援用されるGreen et al.(1994)Nature Genet 7:13;Lonberg et al.(1994)Nature 368:856;Taylor et al.(1994)Int Immun 6:579を参照されたい)。また、完全ヒト抗体は、遺伝子又は染色体トランスフェクション法及びファージディスプレイ技術によって構築することができ、これらは、全て当技術分野において知られている(例えば、McCafferty et al.(1990)Nature 348:552-553を参照されたい)。また、ヒト抗体は、インビトロの活性化B細胞により生成することもできる(例えば、参照によってその全体が援用される米国特許第5,567,610号明細書及び米国特許第5,229,275号明細書を参照されたい)。
【0049】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なる若しくは改変されたクラス、エフェクター機能及び/若しくは種の定常領域又はキメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結されるように、定常領域又はその一部が改変、置換又は交換された抗体分子であるか、或いは(b)可変領域又はその一部が、異なる又は改変された抗原特異性を有する可変領域によって改変、置換又は交換された抗体分子である。
【0050】
「Fcドメイン」、「Fc部分」及び「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のC末端断片、例えばヒトγ(ガンマ)重鎖の約アミノ酸(aa)230~約aa450又は他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体のα、δ、ε及びμ)におけるその対応物の配列又はその天然に存在するアロタイプを指す。他に規定されない限り、本開示の全体を通して、免疫グロブリンに対して一般的に容認されたKabatのアミノ酸番号付けが使用される(Kabat et al.(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.,United States Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MDを参照されたい)。
【0051】
「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」という用語は、材料がその天然の状態で見出される際に通常付随される成分を実質的又は本質的に含まない材料を指す。純度及び均質性は、通常、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製される。
【0052】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマーと、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーとに適用される。
【0053】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入又は天然核酸若しくはタンパク質の改変によって修飾されていること、或いは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態において見出されない遺伝子を発現するか、或いは改変されていなければ異常発現されるか、低発現されるか、又は全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0054】
本明細書に関連して、ポリペプチド又はエピトープに「結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性により前記決定基に結合する抗体を示す。
【0055】
「同一性」又は「同一性の」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基の鎖間のマッチの数によって決定されるようなポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により対処されるギャップアライメント(存在する場合)による2つ以上の配列の小さい方の間での同一のマッチのパーセントを測る。関連ポリペプチドの同一性は、既知の方法によって容易に計算することができる。このような方法には、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;及びCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
同一性を決定する方法は、試験される配列間の最大マッチを与えるように設計される。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記載される。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム方法としては、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含むGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他の供給源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.、上記)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0057】
NKG2A中和治療剤
NKG2A中和剤は、ヒトCD94/NKG2A受容体又はそのリガンドHLA-Eの細胞外部分に結合し、CD94/NKG2A陽性リンパ球の表面で発現されるヒトCD94/NKG2A受容体の阻害活性を低下させる。一実施形態では、薬剤は、CD94/NKG2Aへの結合においてHLA-Eと競合する。すなわち、薬剤は、CD94/NKG2AとそのリガンドHLA-Eとの間の相互作用を遮断する。別の実施形態では、薬剤は、NKG2Aに結合するが、CD94/NKG2Aへの結合においてHLA-Eと競合しない。すなわち、薬剤は、HLA-Eと同時にCD94/NKG2Aに結合することができる。一実施形態では、薬剤は、NKG2Aに結合する抗体である。抗体は、CD94及びNKG2A上の複合エピトープ又は及びNKG2A単独上のエピトープに結合し得る。別の実施形態では、薬剤は、HLA-Eに結合し、ヒトHLA-E及びヒトNKG2Aタンパク質間の相互作用を阻害する抗体である。
【0058】
1つの態様では、NKG2A中和剤は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体及びキメラ抗体から選択される抗体である。1つの態様では、薬剤は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体に由来する定常ドメインを含む。1つの態様では、薬剤は、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgM抗体から選択される抗体の断片である。1つの態様では、薬剤は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、Fv断片、重鎖Ig(ラマ又はラクダIg)、VHH断片、単一ドメインFV及び単鎖抗体断片から選択される抗体断片である。1つの態様では、薬剤は、scFV、dsFV、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、カッパボディ、IgNAR;及び多特異性抗体から選択される合成又は半合成抗体由来の分子である。
【0059】
任意選択的に、抗NKG2A抗体は、ヒトFcγ受容体、例えばCD16に対する実質的な特異的結合を示さない。任意選択的に、抗NKG2A抗体は、実質的な特異的結合を欠いており、或いはヒトCD16、CD32A、CD32B又はCD64の1つ若しくは複数又は全てに対する低い又は低減された特異的結合を有する。例示的な抗体は、Fcγ受容体に結合しないか又は低い結合を有することが知られている様々な重鎖の定常領域を含み得る。1つのこのような例は、ヒトIgG4定常領域である。一実施形態では、IgG4抗体は、インビボでの半抗体の形成(fabアーム交換)を防ぐような修飾を含み、例えば、抗体は、EUインデックスに従う228位に対応する残基241におけるセリンからプロリンへの突然変異を含むIgG4重鎖を含む(Kabat et al.,“Sequences of proteins of immunological interest”,5th ed.,NIH,Bethesda,ML,1991)。このような修飾IgG4抗体は、結合親和性を変化させ得る一価の様式でNKG2Aに結合するようにインビボでfabアーム交換を受ける天然IgG4と対照的に、インビボで原形を保ち、NKG2Aへの二価(高親和性)結合を維持する。代わりに、Fab又はF(ab’)2断片などの定常領域を含まない抗体断片を使用して、Fc受容体結合を回避することができる。Fc受容体結合は、例えば、BIACOREアッセイにおいて抗体のFc受容体タンパク質への結合を試験することを含む、当技術分野において知られている方法に従って評価することができる。また、Fc受容体への結合を最小限又は除去するようにFc部分が修飾された任意のヒト抗体タイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)を使用することもできる(例えば、参照によってその開示が本明細書に援用される国際公開第03101485号パンフレットを参照されたい)。Fc受容体結合を評価するためのアッセイ、例えば細胞ベースのアッセイなどは、当技術分野において周知であり、例えば国際公開第03101485号パンフレットに記載されている。
【0060】
従って、本発明は、NKG2Aに結合する抗体又は他の薬剤に関する。1つの態様では、抗体は、ヒトNKG2C及び/又はNKG2Eに対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aに結合する。
【0061】
本発明の1つの態様では、薬剤は、CD94/NKG2Aシグナル伝達を妨害することにより、例えばNKG2AによるHLA-Eの結合を妨害すること、CD94/NKG2A受容体の立体構造変化を防止若しくは誘導すること並びに/又はCD94/NKG2A受容体の二量体化及び/若しくはクラスター化に影響することにより、CD94/NKG2A発現リンパ球のCD94/NKG2A媒介性の阻害を低減する。
【0062】
本発明の1つの態様では、薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。さらに好ましい態様では、薬剤は、NKG2Cに対するよりも少なくとも150、200、300、400又は10,000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。本発明の別の態様では、薬剤は、NKG2C、NKG2E及び/又はNKG2H分子に対するよりも少なくとも100倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。さらに好ましい態様では、薬剤は、NKG2C、NKG2C及び/又はNKG2H分子に対するよりも少なくとも150、200、300、400又は10,000倍低いKDでNKG2Aの細胞外部分に結合する。これは、例えば、BiaCore実験において測定することができ、固定化CD94/NKG2A(例えば、CD94/NKG2発現細胞から精製されるか又は生物系で産生される)の細胞外部分に結合する薬剤の能力が測定され、同じアッセイにおいて同様に生成されたCD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体に対する薬剤の結合と比較される。代わりに、CD94/NKG2Aを天然に発現するか、又は過剰発現(例えば、一過性又は安定したトランスフェクション後)する細胞への薬剤の結合が測定され、CD94/NKG2C及び/又は他のCD94/NKG2変異体を発現する細胞の結合と比較され得る。抗NKG2A抗体は、任意選択的に、CD94と一緒に阻害性受容体を形成するNKG2Aスプライス変異体であるNKG2Bと結合し得る。一実施形態では、親和性は、例えば、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書に援用される)の実施例8に示されるようにBiacoreによって共有結合で固定化されたNKG2A-CD94-Fc融合タンパク質への結合を評価することにより、米国特許第8,206,709号明細書に開示される方法を用いて測定することができる。
【0063】
抗NKG2A抗体は、例えば、例えばVH1_18、VH5_a、VH5_51、VH1_f及びVH1_46から選択されるヒトアクセプター配列からのVHヒトアクセプターフレームワークと、JH6 J-セグメント又は当技術分野で知られている他のヒト生殖系VHフレームワーク配列とを含むヒト化抗体であり得る。VL領域ヒトアクセプター配列は、例えば、VKI_O2/JK4であり得る。
【0064】
一実施形態では、抗体は、抗体Z270に基づくヒト化抗体である。種々のヒト化Z270重鎖可変領域は、配列番号4~8に示され、任意選択的にC末端セリン(S)残基をさらに含む。配列番号4のHumZ270VH6可変領域は、ヒトVH5_51遺伝子に基づき;配列番号5のHumZ270VH1可変領域は、ヒトVH1_18遺伝子に基づき;配列番号6のhumZ270VH5可変領域は、ヒトVH5_a遺伝子に基づき;配列番号7のhumZ270VH7可変領域は、ヒトVH1_f遺伝子に基づき;配列番号8のhumZ270VH8可変領域は、ヒトVH1_46遺伝子に基づき;これらは、全てヒトJH6 J-セグメントを有する。これらの抗体のそれぞれは、NKG2Aへの高親和性結合を保持しており、ヒト化構築物のそれぞれのKabat H-CDR2の6つのC末端アミノ酸残基がヒトアクセプターフレームワークと同一であるため、抗体に対する宿主免疫応答の可能性が低い。アライメントプログラムVectorNTIを用いて、humZ270VH1とhumZ270VH5、-6、-7及び-8との間の以下の配列同一性を得た:78,2%(VH1対VH5)、79,0%(VH1対VH6)、88,7%(VH1対VH7)及び96,0%(VH1対VH8)。
【0065】
1つの態様では、薬剤は、(i)配列番号4~8又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、(ii)配列番号9又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む。1つの態様では、薬剤は、(i)配列番号10~14のいずれかのアミノ酸配列又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖と、(ii)配列番号15のアミノ酸配列又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0066】
配列番号4~8のいずれかの重鎖可変領域と、配列番号9の軽鎖可変領域とを有する抗体は、NKG2Aの阻害活性を中和するが、実質的に活性化受容体NKG2C、NKG2E又はNKG2Hに結合しない。さらに、この抗体は、細胞表面のNKG2Aへの結合についてHLA-Eと競合する。1つの態様では、薬剤は、配列番号4~8のいずれかのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域に由来するH-CDR1、H-CDR2及び/又はH-CDR3配列を含む。本発明の1つの態様では、薬剤は、配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域に由来するL-CDR1、L-CDR2及び/又はL-CDR3配列を含む。
【0067】
重鎖可変領域
VH6
【化2】
VH1:
【化3】
VH5:
【化4】
VH7:
【化5】
VH8:
【化6】
【0068】
軽鎖可変領域
【化7】
【0069】
重鎖(可変領域ドメインアミノ酸に下線)
VH6:
【化8】
VH1:
【化9】
VH5:
【化10】
VH7:
【化11】
VH8:
【化12】
【0070】
軽鎖(可変領域ドメインアミノ酸に下線)
【化13】
【0071】
モナリズマブ、重鎖及び軽鎖におけるCDR
Kabat番号付けスキームに従う重鎖CDR:
H-CDR1:SYWMN(配列番号16)
H-CDR2:RIDPYDSETHYAQKLQG(配列番号17)
H-CDR3:GGYDFDVGTLYWFFDV(配列番号18)
Kabat番号付けスキームに従う軽鎖CDR:
L-CDR1:RASENIYSYLA(配列番号19)
L-CDR2:NAKTLAE(配列番号20)
L-CDR3:QHHYGTPRT(配列番号21)
【0072】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号4~8(又は配列番号10~14)の残基31~35に対応するH-CDR1、配列番号4~8(又は配列番号10~14)の残基50~60(任意選択的に、ヒト由来のアミノ酸を含む場合、50~66)に対応するH-CDR2及び配列番号4~8(又は配列番号10~14)の残基99~114(Kabatに従って95~102)に対応するH-CDR3を含む抗体である。一実施形態では、配列番号4~8(又は配列番号10~14)の残基50~66に対応するH-CDR2である。任意選択的に、CDRは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0073】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号9又は15の残基24~34に対応するL-CDR1、配列番号9又は15の残基50~56に対応するL-CDR2及び配列番号9又は15の残基89~97に対応するL-CDR3を含む抗体である。任意選択的に、CDRは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
【0074】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、配列番号4~8の残基31~35に対応するH-CDR1、配列番号4~8の残基50~60(任意選択的に50~66)に対応するH-CDR2及び配列番号4~8の残基99~114(Kabatに従って95~102)に対応するH-CDR3、配列番号9の残基24~34に対応するL-CDR1、配列番号9の残基50~56に対応するL-CDR2及び配列番号9の残基89~97に対応するL-CDR3を含む抗体である。
【0075】
1つの態様では、抗NKG2A抗体は、それぞれ配列番号16~18のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号19~21のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む抗体である。
【0076】
1つの態様では、薬剤は、配列番号5の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗NKG2A抗体であるモナリズマブである。1つの態様では、薬剤は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号15の軽鎖アミノ酸配列を有する抗NKG2A抗体であるモナリズマブである。
【0077】
1つの態様では、薬剤は、配列番号22のアミノ酸配列を有するVHに由来するH-CDR1、H-CDR2及び/又はH-CDR3配列を含む。本発明の1つの態様では、薬剤は、配列番号23のアミノ酸配列を有するVLに由来するL-CDR1、L-CDR2及び/又はL-CDR3配列を含む。1つの態様では、薬剤は、配列番号22のアミノ酸配列を有するVHに由来するH-CDR1、H-CDR2及び/又はH-CDR3配列並びに配列番号23のアミノ酸配列を有するVLに由来するL-CDR1、L-CDR2及び/又はL-CDR3配列を含む。配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号23の軽鎖可変領域を有する抗体は、NKG2Aの阻害活性を中和し、また活性化受容体NKG2C、NKG2E又はNKG2Hに結合する。この抗体は、細胞表面のNKG2Aへの結合についてHLA-Eと競合しない(すなわち、それは、NKG2Aの非競合的アンタゴニストである)。
【化14】
【化15】
【0078】
1つの態様では、薬剤は、任意選択的に、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるアミノ酸置換を有する、重鎖可変(V)ドメインのアミノ酸残基31~35、50~60、62、64、66及び99~108(配列番号22並びに軽鎖可変(V)ドメインのアミノ酸残基24~33、49~55及び88~96(配列番号23)を含む。1つの態様では、薬剤は、ヒト化抗体、例えば開示内容が参照により本明細書に援用されるPCT公開番号国際公開第2009/092805号パンフレットに開示される重鎖及び軽鎖可変領域を含む薬剤である。
【0079】
1つの態様では、薬剤は、上記の抗体のいずれかが結合するCD94/NKG2Aエピトープに対して産生された完全ヒト抗体である。
【0080】
上記の抗体を使用可能であるが、抗体がNKG2Aの阻害活性の中和を引き起す限り、他の抗体もNKG2Aポリペプチドの任意の部分を認識して、それに対して産生され得ることが理解されるであろう。例えば、NKG2A、好ましくは(しかし、排他的ではない)ヒトNKG2Aの任意の断片又はNKG2A断片の任意の組み合わせを免疫原として使用して、抗体を産生させることができ、抗体は、本明細書に記載されるようにNKG2A発現NK細胞においてそのようにできる限り、NKG2Aポリペプチド内の任意の位置のエピトープを認識することができる。任意選択的に、エピトープは、配列番号4~8の重鎖可変領域及び配列番号9の軽鎖可変領域を有する抗体によって特異的に認識されるエピトープである。
【0081】
1つの態様では、薬剤は、ヒトCD94/NKG2A受容体の細胞外部分への結合において、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書に援用される)に開示されるhumZ270抗体と競合する。競合的結合は、例えば、BiaCore実験において測定することができ、humZ270で飽和された固定化CD94/NKG2A受容体(例えば、CD94/NKG2発現細胞から精製されるか又は生物系で産生される)の細胞外部分に結合するための薬剤の能力が測定される。代わりに、CD94/NKG2A受容体を天然に発現するか、又は過剰発現(例えば、一過性又は安定したトランスフェクション後)する細胞(これは、飽和用量のZ270と共にインキュベートされている)への薬剤の結合が測定される。一実施形態では、競合的結合は、例えば、米国特許第8,206,709号明細書(その開示は、参照によって本明細書に援用される)の実施例15に示されるようにフローサイトメトリーによってBa/F3-CD94-NKG2A細胞への結合を評価することにより、米国特許第8,206,709号明細書に開示される方法を用いて測定することができる。
【0082】
PD-1中和剤
本明細書で使用される場合、「PD-1」という用語は、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含む、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーであるタンパク質プログラム細胞死1(PD-1)(「プログラム細胞死1」とも呼ばれる)を指す。完全なヒトPD-1配列は、以下のように示されるGenBank受託番号U64863において見出され得る。
【化16】
【0083】
「PD-1」は、PD-1遺伝子又はコード化タンパク質の任意の変異体、誘導体又はアイソフォームも含む。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞及び骨髄細胞上で発現される(Okazaki et al.(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。このファミリーの最初のメンバー、CD28及びICOSは、モノクローナル抗体の添加後のT細胞増殖の増大に対する機能的効果によって発見された(Hutloff et al.(1999)Nature 397:263-266;Hansen et al.(1980)Immunogenics 10:247-260)。PD-1に対する2つのリガンドPD-L1及びPD-L2が同定されており、これらは、PD-1への結合時にT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al.(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al.(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carter et al.(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1及びPD-L2の両方は、PD-1に結合するが、他のCD28ファミリーメンバーに結合しないB7相同体である。
【0084】
完全なヒトPD-L1配列は、UniProtKB/Swiss-Prot、識別子Q9NZQ7-1で見出すことができ、以下のように示される。
【化17】
【0085】
PD-L1は、様々なヒト癌で豊富にある(Dong et al.(2002)Nat.Med.8:787-9)。PD-1とPD-L1との相互作用により、腫瘍浸潤リンパ球が減少し、T細胞受容体に媒介される増殖が減少し、癌性細胞による免疫回避が起こる(Dong et al.(2003)J.Mol.Med.81:281-7;Blank et al.(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishi et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所的な相互作用を阻害することによって反転させることができ、この効果は、PD-1とPD-L2との相互作用が同様に遮断されるときに相加的である。
【0086】
PD-1中和剤は、PD-1を中和する薬剤であるか、又はヒトPD-1の阻害活性を低下させる。本発明との関連において、「ヒトPD-1の阻害活性を低下させる」、「PD-1を中和する」又は「ヒトPD-1の阻害活性を中和する」は、PD-1と、その結合パートナー(PD-L1又はPD-L2など)の1つ又は複数との相互作用から生じる、PD-1のシグナル伝達能力が阻害されるプロセスを指す。PD-1の阻害活性を中和する薬剤は、PD-1と、その結合パートナー(PD-L1、PD-L2など)の1つ又は複数との相互作用から生じるシグナル伝達を低減するか、遮断するか、阻害するか、抑止するか又は妨げる。それにより、このような薬剤は、増殖、サイトカイン産生及び/又は細胞毒性などのT細胞エフェクター機能を促進するように、Tリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減することができる。PD-1中和剤は、PD-1及び/又はその結合パートナー、例えばPD-L1及びPD-L2の1つ又は複数と相互作用し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、PD-1へのPD-L1の結合を阻害する抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、PD-L1へのPD-1の結合を阻害する抗PD-1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、免疫付着因子(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含む免疫付着因子である。
【0088】
いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、抗体YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ、Tecentriq(登録商標))、MDX-1105及びデュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi(登録商標))からなる群から選択される。BMS-936559としても知られているMDX-1105は、国際公開第2007/005874号パンフレットに記載される抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、国際公開第2010/077634号パンフレットに記載される抗PD-L1である。本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例及びその作製方法は、参照により本明細書に援用される国際公開第2010/077634 A1号パンフレット及び米国特許第8,217,149号明細書にも記載されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、デュルバルマブであるPD-L1抗体である。デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi(商標))は、PD-1及びCD80受容体の両方へのPD-L1の結合を阻害することが可能である、ヒトPD-L1に対するヒトモノクローナル抗体である。デュルバルマブに関連する開示は、参照により本明細書に援用される米国特許第8,779,108号明細書及び同第9,493,565号明細書に見出され得る。デュルバルマブは、アミノ酸配列配列番号26及び配列番号27のそれぞれの重鎖及び軽鎖を有する。デュルバルマブの重鎖可変領域は、配列番号24に示され、デュルバルマブの軽鎖可変領域は、配列番号25に示される。
【0090】
別の実施形態では、PD-1中和剤は、PD-L1への結合についてデュルバルマブと競合する抗PD-L1抗体(又はその抗原結合部分)である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブと同じエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブと同じ重鎖及び軽鎖CDRを有する。
【0091】
1つの態様では、PD-1中和剤(例えば、デュルバルマブに由来する薬剤)は、(i)配列番号24又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の重鎖可変領域、及び(ii)配列番号25又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む。1つの態様では、PD-1中和剤(例えば、デュルバルマブに由来する薬剤)は、(i)配列番号26又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の重鎖、及び(ii)配列番号27又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の軽鎖を含む。1つの態様では、PD-1中和剤は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に由来するH-CDR1、H-CDR2及び/又はH-CDR3配列を含む。1つの態様では、PD-1中和剤は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域に由来するL-CDR1、L-CDR2及び/又はL-CDR3配列を含む。任意選択的に、CDRは、Kabatに従って決定される。
【0092】
1つの態様では、PD-1中和剤は、それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号31~33のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3ドメインを含む。
【0093】
デュルバルマブの重鎖可変領域:
【化18】
【0094】
デュルバルマブの軽鎖可変領域
【化19】
【0095】
デュルバルマブの重鎖(可変領域に下線)
【化20】
【0096】
デュルバルマブの軽鎖(可変領域に下線)
【化21】
【0097】
デュルバルマブ、重鎖CDR:
H-CDR1:GFTFSRYWMS(配列番号28)
H-CDR2:NIKQDGSEKYYVDSVKG(配列番号29)
H-CDR3:EGGWFGELAFDY配列番号30)
【0098】
デュルバルマブ、軽鎖CDR:
L-CDR1:RASQRVSSSYLA(配列番号31)
L-CDR2:DASSRAT(配列番号32)
L-CDR3:QQYGSLPWT(配列番号33)
【0099】
別の実施形態では、PD-1中和剤は、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq(登録商標)、CAS登録番号1422185-06-5)である抗PD-L1抗体である。任意選択的に、抗PD-L1抗体は、アミノ酸配列:
【化22】
又は
【化23】
を含む重鎖可変領域並びにアミノ酸配列:
【化24】
を含む軽鎖可変領域を含む。
【0100】
1つの態様では、PD-1中和剤は、(i)配列番号37又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の重鎖若しくは重鎖可変領域、及び(ii)配列番号38又はそれと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%若しくは99%同一のアミノ酸配列の軽鎖若しくは軽鎖可変領域を含む。
【化25】
【化26】
【0101】
いくつかの実施形態では、PD-1中和剤は、PD-L1へのPD-1の結合を阻害する抗PD-1抗体である。一実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブである。ニボルマブ(「OPDIVO(登録商標)」としても知られている;以前には5C4、BMS-936558、MDX-1106又はONO-4538と示されていた)は、PD-1リガンド(PD-L1及びPD-L2)との相互作用を選択的に防止し、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を阻害する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号明細書;Wang et al.,2014 Cancer Immunol Res.2(9):846-56)。別の実施形態では、抗PD-1抗体又はそのフラグメントは、PD-1への結合についてニボルマブと競合する。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じ重鎖及び軽鎖CDRを有する。
【0102】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブである。ペンブロリズマブ(「KEYTRUIDA(登録商標)」、ランブロリズマブ及びMK-3475としても知られている)は、ヒト細胞表面受容体PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、米国特許第8,900,587号明細書)に記載されている。ペンブロリズマブは、再発性又は難治性黒色腫及び進行NSCLCの処置についてFDAによって認可されている。別の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)は、PD-1への結合についてペンブロリズマブと競合する。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブと同じエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブと同じ重鎖及び軽鎖CDRを有する。
【0103】
抗体などのNKG2A中和剤又はPD-1中和剤は、1mg/ml~500mg/mlの濃度で医薬製剤中に取り込むことができ、ここで、前記製剤は、2.0~10.0のpHを有する。NKG2A中和剤及びPD-1中和剤は、同じであるか又は別個の医薬製剤に含まれ得る。製剤は、緩衝系、保存剤、等張化剤、キレート剤、安定剤及び界面活性剤をさらに含み得る。一実施形態では、医薬製剤は、水性製剤、すなわち水を含む製剤である。このような製剤は、通常、溶液又は懸濁液である。さらなる実施形態では、医薬製剤は、水溶液である。「水性製剤」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤であると定義される。同様に、「水溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液であると定義され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液であると定義される。
【0104】
別の実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥製剤であり、使用前に医師又は患者によって溶媒及び/又は希釈剤が添加される。
【0105】
別の実施形態では、医薬製剤は、事前に溶解することなく直ちに使用可能な乾燥製剤(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥)である。
【0106】
さらなる態様では、医薬製剤は、このような抗体及び緩衝剤の水溶液を含み、ここで、抗体は、1mg/ml以上の濃度で存在し、前記製剤は、約2.0~約10.0のpHを有する。
【0107】
別の実施形態では、製剤のpHは、約2.0~約10.0、約3.0~約9.0、約4.0~約8.5、約5.0~約8.0及び約5.5~約7.5からなるリストから選択される範囲内である。
【0108】
さらなる実施形態では、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定の緩衝剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。
【0109】
さらなる実施形態では、製剤は、薬学的に許容可能な保存剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、等張剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、キレート剤も含む。本発明のさらなる実施形態では、製剤は、安定剤をさらに含む。さらなる実施形態では、製剤は、界面活性剤をさらに含む。便宜上、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995が参照される。
【0110】
本発明の医薬製剤中に他の成分が存在することも可能である。このような付加的な成分には、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、増量剤、浸透圧調整剤、キレート剤、金属イオン、油性媒体、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジンなどのアミノ酸)が含まれ得る。このような付加的な成分は、当然ながら、本発明の医薬製剤の全体的な安定性に悪影響を与えてはならない。
【0111】
本発明に係る医薬組成物の投与は、いくつかの投与経路(例えば、静脈内)を介して行われ得る。また、適切な抗体製剤は、他の既に開発された治療用モノクローナル抗体による経験を検討することにより決定することができる。
【0112】
キットも提供され、例えば、キットは、
(i)抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤及び抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する医薬組成物、又は
(ii)抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する第1の医薬組成物及び抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤を含有する第2の医薬組成物、又は
(iii)抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤を含有する医薬組成物及び抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤と共に前記NKG2A中和剤を投与するための使用説明書、又は
(iv)抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する医薬組成物及び抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤と共に前記PD-1中和剤を投与するための使用説明書
を含む。
【0113】
医薬組成物は、任意選択的に、薬学的に許容可能な担体を含むものと規定され得る。NKG2A又はPD-1中和剤は、任意選択的に、本明細書における方法のいずれかに使用するために適合された治療的に有効な量で存在するものと規定され得る。キットは、実践者(例えば、医師、看護師又は患者)が、このキットに含まれる組成物を、癌(例えば、固形腫瘍、特にDNAミスマッチ修復欠損でなく、且つ/又は2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍)を有する患者に投与することを可能にする使用説明書(例えば、投与スケジュールを含む)も任意選択的に含み得る。任意の実施形態では、キットは、任意選択的に、前記NKG2A中和剤を前記PD-1中和剤と同時に、別々に又は連続的に投与するための使用説明書を含み得る。キットは、シリンジも含み得る。
【0114】
任意選択的に、キットは、上に示される方法に従う単回投与のために、有効量のNKG2A中和剤及び/又は抗PD-1若しくはPD-L1抗体などのPD-1中和剤をそれぞれ含有する単回用量の医薬組成物の複数のパッケージを含む。医薬組成物を投与するのに必要な機器又はデバイスもキットに含まれ得る。例えば、キットは、ある量の抗NKG2A、抗PD-1又は抗PD-L1抗体を含有する1つ又は複数の予め充填されたシリンジを提供し得る。
【0115】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者の癌又は腫瘍を処置するためのキットであって、前記癌又は腫瘍は、MSI-Hでなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復欠損でなく、キットは、
(a)配列番号4~8のいずれかに記載される配列を有する重鎖可変領域のH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号9に記載される配列を有する軽鎖可変領域のL-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、ある用量の抗NKG2A抗体;及び/又は
(b)ある用量の抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体、任意選択的にある用量のデュルバルマブ、任意選択的にデュルバルマブの重鎖及び軽鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン、任意選択的に配列番号24に記載される配列を有する重鎖可変領域のH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号25に記載される配列を有する軽鎖可変領域のL-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、ある用量の抗PD-L1抗体;並びに
(c)任意選択的に、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて前記抗NKG2A抗体及び/又は前記抗PD-1若しくはPD-L1抗体を使用するための使用説明書
を含む、キットを提供する。
【0116】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者の癌又は腫瘍を処置するためのキットであって、前記癌又は腫瘍は、MSI-Hでなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復欠損でなく、キットは、
(a)それぞれ配列番号16~18の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号19~21の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、ある用量の抗NKG2A抗体;及び/又は
(b)それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号31~33のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、ある用量の抗PD-L1抗体;並びに
(c)任意選択的に、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて前記抗NKG2A抗体及び/又は前記抗PD-1若しくはPD-L1抗体を使用するための使用説明書
を含む、キットを提供する。
【0117】
悪性腫瘍の診断、予後及び処置
DNAミスマッチ修復欠損でなく、且つ/又はマイクロサテライト安定性である腫瘍によって特徴付けられる癌、特に大腸癌、任意選択的に進行した再発性又は転移性大腸癌の診断、予後、監視及び処置において有用な方法が記載される。本明細書で使用される場合、大腸癌(CRC)は、結腸癌、直腸癌及び大腸癌(結腸部及び直腸部の両方の癌)を指す。
【0118】
マイクロサテライトは、ゲノム全体に分布しているDNAの反復配列である。これらのマイクロサテライトの長さは、個人間で大きく異なるが、各個人は、一定の長さのマイクロサテライトを有する。これらの反復配列は、一般的であり、正常である。ヒトにおいて最もよく見られるマイクロサテライトは、CAのジヌクレオチドリピートであり、これは、ゲノムにわたって何万回も発生する。しかしながら、DNA修復遺伝子の突然変異を有する細胞において、これらの配列の一部は、エラーを蓄積し、より長く又はより短くなる。個人のDNA中の異常に長い又は短いマイクロサテライトの発生は、マイクロサテライト不安定性(MSI)と呼ばれる。マイクロサテライト不安定性は、DNAミスマッチ修復(MMR)障害に起因する遺伝的易変異性の状態である。マイクロサテライト不安定性(MSI)の存在は、MMRが正常に機能していないことの表現型エビデンスを表す。マイクロサテライト不安定性の非存在は、マイクロサテライト安定性(MSS)と呼ばれる。
【0119】
MSIは、大腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌及び胃癌を含むいくつかの癌の主要な要因である(Soreide et al.(2006)The British Journal of Surgery 93:395-406;Ali-Fehmi et al.(2006)International Journal of Gynecological Pathology 25:223-229;Vauhkonen et al.(2006)Clinical Gastroenterology 20:651-674)。
【0120】
大腸癌研究は、MSI発生のための2つの機構を実証した。第1の機構は、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)又はリンチ症候群にあり、DNAミスマッチ修復遺伝子の遺伝性突然変異により、マイクロサテライトリピート複製エラーが修正されなくなる。複製エラーは、主要な腫瘍抑制遺伝子、最終的に癌の予防を不活性化するか又は変化させるフレームシフト突然変異をもたらす。MSIが大腸癌を引き起こす第2の機構は、重要なDNAミスマッチ修復遺伝子をサイレンシングするエピジェネティックな変化である。いずれの場合も、腫瘍抑制遺伝子コード領域内のマイクロサテライトの挿入及び欠失は、無制御な細胞分裂及び腫瘍成長をもたらす。
【0121】
5つのマーカーは、HNPCC腫瘍におけるMSIについてスクリーニングするためにアメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute)によって推奨されている(「Bethesdaマーカー」と呼ばれることが多い)。MSI存在のこれらの5つのマーカーは、2つのモノヌクレオチドリピートBAT25及びBAT26並びに3つのジヌクレオチドリピートD5S346、D2S123及びD17S250である(Umar et al(2004)Journal of the National Cancer Institute 96:261-268)。一般に、5つの「Bethesdaマーカー」の2つにおけるMSI検出が陽性結果又は高確率のMSI(MSI-High又はMSI-H)と見なされる。生体サンプル中のMSIを検出するための標準方法としては、それらの感受性及び特異性のために選択される5つのモノヌクレオチドマーカーを含むPromega(商標)のマイクロサテライト不安定性アッセイ(MSI Analysis System)の使用が挙げられ、これらの5つのマーカーは、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27である(Bacher et al.(2004)Disease Markers 20:237-250)。
【0122】
ほとんどの場合、MSI腫瘍における不安定性の遺伝的基盤は、5つのヒトMMR遺伝子:MSH2、MLH1、MSH6、PMS2及びPMS1のいずれか1つ又は複数の遺伝的な生殖細胞系列の変化である。
【0123】
選択されたテトラヌクレオチドリピートにおける増加したマイクロサテライト変化(EMAST)と呼ばれる別のMSIが最近発見された。しかしながら、EMASTは、MMRに由来しない点で独特であり、それは、一般的に、TP53突然変異に関連している(Boland et al.(2010)Gastroenterology 138(6):2073-2087)。
【0124】
従って、腫瘍におけるマイクロサテライト不安定性は、マイクロサテライトマーカー及び/又はMMR遺伝子を評価することによって決定され得る。
【0125】
特定の実施形態では、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤の組み合わせで処置される個人は、不安定性(MSS)を有さず、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2遺伝子又はタンパク質(任意選択的にさらなるPMS1)のいずれにおいても変化(例えば、突然変異、発現の欠損)を有さない。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明は、個人において腫瘍、例えば結腸直腸腫瘍を処置する方法であって、(i)DNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量のNKG2A中和剤及び有効量のPD-1中和剤を個人に投与するステップとを含む方法を含む。任意選択的に、個人は、マイクロサテライト不安定性を有さず(MSS安定性である)、且つMSH2、MLH1、MSH6及びPMS2遺伝子又はタンパク質のいずれにおいても変化を有さない腫瘍を有する。
【0127】
腫瘍のDNAミスマッチ修復ステータス、任意選択的に個人のMMRステータス及び/又はマイクロサテライトステータスは、任意の組成物を投与するか又は本明細書に開示される任意の方法を用いる前に測定され得る。
【0128】
個人、例えば生検からの生体サンプルが入手され、評価され得る。MMRステータス及び/又はマイクロサテライトステータスは、当技術分野において公知の任意の方法によって決定され得る。例えば、Umar et al.Journal of the National Cancer Institute 2004;96(4):261-268及びBacher et al.Disease Markers 2004;20:237-250を参照されたい。一実施形態では、MMRステータスは、以下のタンパク質:MLH1、MSH2、MSH6又はPMS2のいずれか1つ又は複数の発現の存在又は非存在を実証する免疫組織化学的分析によって評価される。一実施形態では、マイクロサテライトステータスは、マイクロサテライトマーカー、例えばBAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24、MONO27、D5S346、D2S123及びD17S250において高頻度マイクロサテライト不安定性を検出することによって評価される。一実施形態では、2つ以上のマイクロサテライトマーカー、例えばBAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及び/又はMONO27について検出されるマイクロサテライト不安定性は、MSI-Hステータスを示す一方、単一のMSIマーカーについてのマイクロサテライト不安定性又は試験されるMSIマーカーのいずれについても不安定性を有さないことは、それぞれ低マイクロサテライト不安定性(MSI-L)及びマイクロサテライト安定性(MSS)として解釈される。
【0129】
一実施形態では、DNAミスマッチ修復欠損でないか又はMSSである腫瘍は、マイクロサテライト不安定性を有さないか、又は2つ未満以上のマイクロサテライトマーカー、例えばBAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24又はMONO27において検出されるマイクロサテライト不安定性を有し、且つタンパク質MLH1、MSH2、MSH6又はPMS2のいずれか1つ又は複数におけるタンパク質発現の非存在を有さない。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明は、個人において腫瘍、例えば結腸直腸腫瘍を処置する方法であって、(i)MSS腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量のNKG2A中和剤を個人に投与し、任意選択的に有効量のPD-1中和剤を個人にさらに投与するステップとを含む方法を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍、例えば結腸直腸腫瘍を処置する方法であって、(i)MSI-High(MSI-H)腫瘍(例えば、MSS又はMSI-Low腫瘍)でない腫瘍を有する個人を同定するステップと、(ii)有効量のNKG2A中和剤を個人に投与し、任意選択的に有効量のPD-1中和剤を個人にさらに投与するステップとを含む方法を提供する。
【0131】
一実施形態では、MSI-H腫瘍は、少なくとも約30%超の不安定MSIマーカーを有する。一実施形態では、MSI-L腫瘍は、不安定MSIマーカーを有するが、前記腫瘍のMSIマーカーの約10%未満、約20%未満又は約30%未満が不安定MSIマーカーである。一実施形態では、MSS腫瘍は、不安定MSIマーカーを有さない。いくつかの実施形態では、試験されるMSIマーカーの約30%未満、約20%未満又は約10%未満が不安定性を示すとき、大腸癌は、MSI-Lである。いくつかの実施形態では、試験されるMSIマーカーが不安定性を示さないとき、大腸癌は、MSSである。
【0132】
特定の実施形態では、本発明は、MSI-L又はMSSである癌を処置する方法に関する。
【0133】
特定の実施形態では、本発明は、癌を処置する方法であって、1)腫瘍のマイクロサテライトステータスを特定するステップと、2)マイクロサテライトステータスに基づいて、治療剤(例えば、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤)を対象に投与するステップとを含む方法に関する。他の実施形態では、対象は、MSI-Lを有する。実施形態では、患者は、MSI安定性である。
【0134】
非DNAミスマッチ修復欠損腫瘍を有する個人を処置するとき、ヒトNKG2Aポリペプチドの阻害活性を中和する化合物(例えば、抗体)は、有利には、本明細書に記載される処置レジメンに従い、任意選択的に癌細胞を除去するための手術を受けたか又は受けている、癌を有する個人に投与することができる。癌、特にCRC及びmCRCに罹患した対象を処置するために、任意選択的にPD-1中和剤、例えば中和抗PD-1又は抗PD-L1抗体の非存在下で又は任意選択的にそれらと併用した中和抗NKG2A抗体である。一実施形態では、本発明は、固形腫瘍(例えば、固形腫瘍、進行した難治性固形腫瘍)を有する対象を処置するために、抗NKG2A抗体及び任意選択的にさらに組み合わせて抗PD-1抗体を提供する。特定の実施形態では、抗NKG2A抗体は、配列番号4~8のいずれかの重鎖可変領域及び配列番号9の軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、PD-1の阻害活性を中和する抗体は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ及びMPDL3280A、特にデュルバルマブからなる群から選択される。
【0135】
本明細書で使用される場合、補助的又は併用投与(同時投与)には、同一若しくは異なる剤形における化合物の同時投与又は化合物の別々の投与(例えば、連続投与)が含まれる。従って、NKG2A中和剤は、PD-1中和剤と併用され得る。例えば、抗NKG2A抗体及び抗PD-1又は抗PD-L1抗体は、単一の製剤において同時に投与することができる。代わりに、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤は、別々の投与のために処方されることが可能であり、同時又は連続的に投与される。
【0136】
任意選択的に、個人は、耐性、非応答性である癌、手術及び/又は治療剤、例えば化学療法剤又は放射線療法による処置にもかかわらず、(例えば、その間又はその後に)再発及び/又は進行した癌を有し得る。本明細書の任意の実施形態では、処置応答は、周知の基準、例えば固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)(第1.1版など)に従って定義及び/又は評価することができ、Eisenhauer et al.(2009)Eur.J.Cancer 45:228-247又はImmune-Related Response Criteria(irRC)を参照されたく、Wolchock et al.(2009)Clinical Cancer Research 15:7412-7420を参照されたい。
【0137】
別の実施形態では、本開示は、DNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有する個人においてCRCの処置又は予防のための方法であって、
a)DNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有する個人を同定し、任意選択的に個人から腫瘍細胞を含む生体サンプルを取得し、腫瘍がDNAミスマッチ修復欠損であるかどうかを決定するステップと、
b)個人からのサンプル中のPD-L1を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍浸潤マクロファージ)を検出するステップと、
c)PD-L1を発現する細胞がサンプルに含まれることが決定される際、PD-1の阻害活性を中和する薬剤と併用して、NKG2Aの阻害活性を中和する薬剤を個人に投与するステップと
を含む方法を提供する。PD-L1基準レベルは、任意の好適な従来使用される基準レベルによって特徴付けられ得る。(例えば、免疫組織化学に基づくアッセイを用いて)例えば腫瘍細胞又は腫瘍組織サンプルに由来する細胞の1%以上、任意選択的に5%以上、任意選択的に10%以上、任意選択的に50%以上がPD-L1を発現する場合である。このようなアッセイの例としては、Dako Denmark A/S製のpharmDxによるPD-L1 IHC 22C3アッセイが挙げられる。このアッセイでは、PD-L1発現レベルは、腫瘍割合スコア(TPS)、PD-L1についての腫瘍細胞染色の割合(0%~100%)を用いて測定される。任意選択的に、基準レベルは、非高PD-L1発現のレベルであり、任意選択的に50%未満の腫瘍細胞がPD-L1を発現する(例えば、患者は、50%未満のTPSを有する)。
【0138】
本明細書に記載される処置レジメン及び方法は、個人から得られる生体サンプル(例えば、癌細胞、癌組織又は癌隣接組織を含む生体サンプル)中の細胞におけるHLA-Eの発現を検出する前のステップを伴うか又は伴わずに使用され得る。一実施形態では、本明細書に開示される方法で処置される癌は、高レベルのHLA-Eによって特徴付けられる癌である。しかしながら、癌を有する患者は、腫瘍細胞の表面上のHLA-Eの発現を評価するために、前の検出ステップを伴うか又は伴わずにNKG2A中和剤で処置され得ることが理解されるであろう。有利には、処置方法は、個人からの腫瘍の生体サンプル中(例えば、腫瘍細胞上)のHLA-E核酸又はポリペプチドを検出するステップを含み得る。生体サンプルがHLA-Eを発現する(例えば、著しく発現する;基準と比較して高レベルでHLA-Eを発現する、抗HLA-E抗体による高い強度の染色)という決定は、個人が、NKG2Aを阻害する薬剤による処置から強力な利益を有し得る癌を有することを示す。一実施形態では、本方法は、生体サンプル中のHLA-E核酸又はポリペプチドの発現のレベルを決定し、このレベルを健常者に対応する基準レベル(例えば、値、弱い細胞表面染色など)と比較するステップを含む。生体サンプルが基準レベルと比較して増加したレベルでHLA-E核酸又はポリペプチドを発現するという決定は、個人が、NKG2Aを阻害する薬剤で処置され得る癌を有することを示し得る。
【0139】
個人が、HLA-Eポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかの決定は、例えば、癌細胞を含む個人からの生体サンプルを入手(例えば、生検の実施により)し、前記細胞を、HLA-Eポリペプチドに結合する抗体と接触させ、且つ細胞がその表面上でHLA-Eを発現するかどうかを検出することを含み得る。任意選択的に、個人が、HLA-Eを発現する癌細胞を有するかどうかの決定は、免疫組織化学アッセイを実行することを含む。任意選択的に、個人が、HLA-Eを発現する癌細胞を有するかどうかの決定は、フローサイトメトリーアッセイを実行することを含む。
【0140】
この処置方法では、NKG2A中和剤が抗PD-1又は抗PD-L1抗体と併用して投与されるとき、NKG2A中和剤及び抗PD-1又は抗PD-L1抗体は、別々に、一緒に若しくは順次又は混液で投与され得る。いくつかの実施形態では、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与前に投与される。例えば、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与の約0~30日前に投与され得る。いくつかの実施形態では、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与の約30分間~約2週間、約30分間~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日又は約1~5日前に投与される。いくつかの実施形態では、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態では、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与後に投与される。例えば、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与の約0~30日後に投与され得る。いくつかの実施形態では、NKG2A中和剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与の約30分間~約2週間、約30分間~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日又は約1~5日後に投与される。
【0141】
抗NKG2A抗体でヒトを処置するための例示的な処置プロトコルは、例えば、NKG2Aを阻害する抗体を有効量で患者に投与するステップを含み、本方法は、少なくとも1回の投与サイクルを含み、ここで、少なくとも1回の用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量で投与される。一実施形態では、投与サイクルは、2週間~8週間である。
【0142】
抗NKG2A抗体でヒトを処置するための例示的な処置プロトコルは、例えば、NKG2Aを阻害する抗体及びヒトPD-1の阻害活性を中和する抗体のそれぞれを有効量で患者に投与するステップを含み、本方法は、少なくとも1回の投与サイクルを含み、ここで、少なくとも1回の用量の抗NKG2A抗体が0.1~10mg/kg体重又は1~10mg/kg体重の用量で投与され、少なくとも1回の用量の抗PD-1又は抗PD-L1抗体が1~20mg/kg体重の用量で投与される。一実施形態では、投与サイクルは、2週間~8週間である。
【0143】
一実施形態では、本方法は、少なくとも1回の投与サイクルを含み、サイクルは、8週間以下の期間であり、少なくとも1回のサイクルのそれぞれについて、2回、3回又は4回の用量の抗NKG2A抗体が1~10mg/kg体重の用量で投与される。一実施形態では、各サイクルは、1~20mg/kg体重の用量での2回、3回又は4回の用量の抗PD-1又は抗PD-L1抗体の投与をさらに含む。
【0144】
抗NKG2A抗体は、(例えば、PBMCにおいて、NKG2A発現細胞に対して抗NKG2A抗体を漸増させることによって評価される際に)実質的に完全な(例えば、90%、95%)受容体飽和に必要な濃度の少なくとも10、20若しくは30倍高い循環濃度を達成する量において、又は任意選択的に(例えば、PBMCにおいて、NKG2A発現細胞に対して抗NKG2A抗体を漸増させることによって評価される際に)実質的に完全な受容体飽和に必要な濃度の少なくとも10、20若しくは30倍高い血管外組織(例えば、腫瘍組織又は環境)中での濃度を達成する量において有利に投与され得る。
【0145】
NKG2A+ NK細胞応答は、HLA-E発現標的細胞に対するNKG2A発現NK細胞の細胞傷害活性の好適なアッセイを用いて評価され得る。例としては、NK細胞活性化のマーカー、例えばCD107又はCD137発現に基づくアッセイが挙げられる。有利には、少なくとも10μg/mlの連続(最低)組織濃度を達成及び/又は維持するような量の抗NKG2A抗体が投与され得る。例えば、組織中の10μg/mlを達成/維持するために達成及び/又は維持される血中濃度は、100~110μg/ml、100~120μg/ml、100~130μg/ml、100~140μg/ml、100~150μg/ml、100~200μg/ml、100~250μg/ml又は100~300μg/mlであり得る。
【0146】
約10μg/mlのNKG2A+ NK細胞応答についてのEC100を有する、本明細書の実施例において使用されるhumZ270(モナリズマブ)などの抗NKG2A抗体のための例示的な処置プロトコルは、少なくとも1回の投与サイクルを含み、ここで、少なくとも1回の用量の抗NKG2A抗体が約10mg/kg、任意選択的に2~10mg/kg、任意選択的に4~10mg/kg、任意選択的に6~10mg/kg、任意選択的に2~6mg/kg、任意選択的に2~8mg/kg又は任意選択的に2~4mg/kg体重の用量で投与される。任意選択的に、少なくとも2、3、4、5、6、7又は8回の用量の抗NKG2A抗体が投与される。一実施形態では、投与サイクルは、2週間~8週間である。一実施形態では、投与サイクルは、8週間である。一実施形態では、投与サイクルは、8週間であり、2週間毎に1回の用量の抗NKG2A抗体(すなわち合計で4回の用量)を投与することを含む。
【0147】
本明細書の実施形態のいずれかの1つの態様では、抗NKG2A抗体は、約2週間毎に1回投与される。
【0148】
抗NKG2A抗体と共に使用するための例示的な処置プロトコルは、例えば、抗NKG2A抗体の少なくとも2回の連続する投与間において、少なくとも40μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を維持するのに有効な量で1ヶ月に2回、抗NKG2A抗体を患者に投与することを含み、2~10mg/kg、任意選択的に2~6mg/kg、任意選択的に2~4mg/kg、任意選択的に約4mg/kg体重である。これらの用量は、任意選択的に、処置サイクル全体を通して少なくとも40μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を提供するように投与され得る。40μg/mlの抗NKG2A抗体の血中濃度を達成することは、約4μg/mlの組織(例えば、血管外組織、腫瘍環境)濃度を提供することが予測され、これは、従って、ヒト化Z270(モナリズマブ)などの抗体についてのEC50に対応する。
【0149】
抗NKG2A抗体と共に使用するための例示的な処置プロトコルは、例えば、有効量の抗NKG2A抗体を患者に投与することを含み、抗体は、抗NKG2A抗体の少なくとも2回の連続する投与間において、少なくとも100μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を維持するのに有効な量で1ヶ月に2回投与され、4~10mg/kg、任意選択的に4~6mg/kg、任意選択的に4~8mg/kg、任意選択的に約4mg/kg、任意選択的に約6mg/kg、任意選択的に約8mg/kg又は任意選択的に約10mg/kgである。これらの用量は、任意選択的に、処置サイクル全体を通して少なくとも100μg/mlの抗NKG2A抗体の連続血中濃度を提供するように投与され得る。100μg/mlの抗NKG2A抗体の血中濃度を達成することは、約10μg/mlの組織(例えば、血管外、腫瘍環境)濃度を提供することが予測され、これは、従って、ヒト化Z270などの抗体についてのEC100に対応する。
【0150】
特定の実施形態では、抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)の用量(例えば、各用量)が0.1、0.3、1、3、4、6、8又は10mg/kgで投与される。特定の実施形態では、抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)の用量(例えば、各用量)が7.5mg、22.5mg、75mg、225mg又は750mgの一定の用量で投与され、任意選択的に2週間毎に投与される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体の用量(例えば、各用量)が1~20mg/kg、任意選択的に10mg/kgで投与される。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)の用量(例えば、各用量)が10、15、20又は25mg/kg、任意選択的に750mgの総用量、任意選択的に1500mgの総用量で投与され、任意選択的に4週間毎に投与される。特定の実施形態では、併用療法により、抗PD-1又はPD-L1抗体をより低い用量で投与することが可能となる。
【0151】
一実施形態では、抗NKG2A抗体及び抗PD-1又は抗PD-L1抗体は、以下の用量で投与される:
(a)0.1~10mg/kgの抗NKG2A抗体及び(i)1~10mg/kgの抗PD-1抗体又は(ii)1~20mg/kgの抗PD-L1抗体;
(b)1~10mg/kgの抗NKG2A抗体及び(i)1~10mg/kgの抗PD-1抗体又は(ii)1~20mg/kgの抗PD-L1抗体;
(c)225mgの抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)及び750mg/kgの抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ);
(d)750mgの抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)及び750mg/kgの抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ);
(e)225mgの抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)及び1500mg/kgの抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ);又は
(f)750mgの抗NKG2A抗体(例えば、モナリズマブ)及び1500mg/kgの抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)。
【0152】
本明細書の実施形態のいずれかの1つの態様では、抗NKG2A抗体は、約2週間毎に1回、任意選択的に4週間毎に1回投与される。本明細書の実施形態のいずれかの1つの態様では、抗PD-1又は抗PD-L1抗体は、約4週間毎に1回投与される。
【0153】
一実施形態では、抗PD-1又は抗PD-L1抗体及び/若しくは抗NKG2A抗体は、静脈内(i.v.)投与される。一実施形態では、抗PD-1又は抗PD-L1抗体は、4週間毎に投与され、抗NKG2A抗体は、2週間毎に投与され、ここで、4週間毎に、抗PD-1又は抗PD-L1抗体及びNKG2A抗体は、同日に投与され、任意選択的にさらに静脈内(i.v.)投与される。
【0154】
一実施形態では、NKG2Aを阻害する薬剤(及び任意選択的にさらにヒトPD-1の阻害活性を中和する薬剤)による処置に個人が適しているかどうかを評価するための方法であって、個人からの生体サンプルにおいて腫瘍DNAミスマッチ修復ステータスを評価するステップを含む方法が提供される。個人が、DNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有するという決定は、患者が、任意選択的に、さらにヒトPD-1の阻害活性を中和する薬剤と併用して、NKG2Aを阻害する薬剤で処置され得る癌を有することを示す。一実施形態では、本方法は、本明細書に開示される投与レジメンに従って投与される、NKG2Aを阻害する薬剤及びヒトPD-1の阻害活性を中和する薬剤による処置に個人が適しているかどうかを評価するのに使用される。
【0155】
別の態様では、癌の進行のリスクを低下させ、CRC、任意選択的にmCRCにおけるさらなる癌のリスクを低下させ、且つ/又はヒト個人における癌の進行を低減するための治療レジメンを提供する方法であって、本開示に従う投与量及び頻度である量のNKG2A中和剤及びPD-1中和剤を患者に投与するステップを含む方法が提供される。さらなる態様では、ヒト患者などの個人において癌、特に大腸癌の寛解を促進する方法であって、個人における癌の寛解を促進するように、本開示に従う投与量及び頻度において、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤を含む医薬組成物を個人に投与するステップを含む方法が提供される。さらなる態様では、ヒト患者などの個人において癌、特に大腸癌の再発を防止する方法であって、癌は、以前の抗癌治療後、寛解期にあり、方法は、個人における癌の寛解を促進するように、本開示に従う投与量及び頻度において、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤を含む組成物を個人に投与するステップを含む、方法が提供される。さらなる態様では、癌、特に大腸癌と診断されたヒト患者において関連する期間にわたる生存の可能性を高める方法であって、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤を含む医薬組成物を患者に投与するステップを含む方法が提供される。別の態様では、癌患者のクオリティオブライフを改善するための方法であって、患者のクオリティオブライフを改善するのに有効な量において、NKG2A中和剤及びPD-1中和剤を含む医薬組成物を患者に投与するステップを含む方法が提供される。さらなる態様では、本明細書に記載される方法は、例えば、癌細胞の総数が減少されるようにヒトにおける癌細胞の数を有意に減少させるために適用され得る。関連する意味において、ヒト癌患者などの哺乳類における癌細胞、特に大腸癌細胞を死滅させる(例えば、そのような細胞の死亡を直接又は間接的に引き起こす)方法が提供される。本明細書に記載される方法のさらに他の実施形態では、前記個人は、MSI-High(MSI-H)でなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復(MMR)欠損でない腫瘍を有する。
【0156】
PD-1中和剤と併用したNKG2A中和剤は、1つ又は複数のさらなる治療剤又は治療との併用投与(同時投与)で投与され得る。
【実施例
【0157】
実施例1:用量設定は、モナリズマブと併用したデュルバルマブの第1相多施設共同、非盲検、単群用量漸増及び用量拡大試験である。
モナリズマブ(WHO Drug Information Vol.30,No.1,2016を参照されたい;IPH2201とも呼ばれる;配列番号11の重鎖及び配列番号15の軽鎖を有する抗体)と併用したデュルバルマブの第1相、多施設共同、非盲検、単群用量漸増及び用量拡大試験を、選択された進行した固形腫瘍を有する成人対象における安全性、忍容性、PK、免疫原性、薬力学及び抗腫瘍活性を評価するために行った。試験は、2つのパート:用量漸増及び用量拡大からなっていた。
【0158】
対象に2回の別個の静脈内(IV)注入によってデュルバルマブ及びモナリズマブを投与した。対象に対して、許容できない毒性、確定進行(PD)の証明又は別の理由による対象の離脱の証明までデュルバルマブ及びモナリズマブを投与した。
【0159】
組み入れ基準には、以下が含まれる:
1.対象は、進行した再発性又は転移性癌が組織学的に証明されていなければならない。
2.対象は、選択された進行した固形腫瘍を有し、再発性/転移性状況において、少なくとも1回の標準的な全身治療を受けて、増悪又は難治性を示していなければならない。
3.対象は、RECIST v1.1によって測定可能な少なくとも1つの病変を有さなければならない。
【0160】
除外基準は、以下のとおりであった:
1.免疫療法剤による以前の処置。抗腫瘍ワクチンによる以前の処置は、メディカルモニターとの協議により許容される場合がある。
2.単独又は併用でのデュルバルマブを含む臨床試験への以前の参加、この試験は、登録の目的を有し、主要エンドポイントの分析は、依然として完了されていない。
3.デュルバルマブ及びモナリズマブの最初の投与前の4週間以内に何らかの従来の又は試験中の抗癌治療を受けていること。
4.癌治療のための何らかの同時の化学療法、免疫療法、生物療法又はホルモン療法。癌に関連しない病態のためのホルモンの同時使用は、許容可能である。苦痛緩和の目的のための孤立性病変の局所治療は、メディカルモニターとの事前協議及びメディカルモニターによる同意を得て、DLT評価期間を越えると許容可能である。
5.最初の投与前の14日以内の免疫抑制薬の現在の使用又は以前の使用。
【0161】
連続コホートにおける対象に対して、4つのうちの1つの計画された用量レベル(22.5、75、225又は750mgで2週間毎(Q2W)のモナリズマブと併用してデュルバルマブ(1500mgを4週間毎(Q4W))を投与した。
【0162】
漸増するモナリズマブ及びデュルバルマブで処置された15人の患者において、中止につながる治療関連の有害事象(TRAE)はなく、グレード3/4のTRAEはなく、DLTはなく、死亡はなく;MTDに到達しなかった。いずれかのグレードのTRAEが12人の患者(80%)において観察され;最も多いのは、下痢であった(n=4)。拡大における40人の患者の安全性は、漸増と同様であった:19人の患者(48%)は、いずれかのグレードのTRAEを有しており、1人の患者がグレード3/4のTRAE(敗血症)を有していた。併用した両方の薬物のPKは、相互作用を示さなかった。モナリズマブPKは、最も高い用量レベルで線形に近づき、従ってこれが拡大パートのために選択された。
【0163】
試験の用量漸増パートの最後に、最大耐量(MTD)に到達せず、モナリズマブ(750mg Q2W)及びデュルバルマブ(1500mg Q4W)のコホート4の投与は、用量漸増委員会(DEC)によって安全であると見なされた。次に、それらの用量は、現在進行中の試験の用量拡大パートに用いられる。デュルバルマブ1500mg Q4W及びモナリズマブ7.5mg Q2Wの用量を用いた用量デエスカレーション(de-escalation)コホートは、許容できない毒性が最初の用量レベルで生じた場合に実施されることになる。
【0164】
実施例2:第I相臨床試験のCRC用量拡大パートにおいてモナリズマブ及びデュルバルマブで処置されたMSS大腸癌患者の応答
第1相試験の用量拡大パートは、現行の治療で十分に処置されない癌に対応する4つのコホートに患者を組み入れることを目的としている。コホートの1つは、再発性又は転移性MSS-CRCの対象を含んでいた。MSS-CRCコホートにおいて、全ての対象は、スクリーニング中に証明された突然変異試験及び登録のための疾患評価により確定された腫瘍部位を有する必要があり、CRC癌は、試験によって証明した際にDNAミスマッチ修復欠損(マイクロサテライト不安定性)を有していてはならない。
【0165】
DNAミスマッチ修復欠損は、(i)マイクロサテライトマーカー(BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24若しくはMONO-27)の2つ以上のパネルにおいて検出される変化を有する高頻度マイクロサテライト不安定性、又は(ii)以下のタンパク質:MLH1、MSH2、MSH6若しくはPMS2のいずれか1つ若しくは複数のタンパク質発現の非存在を示す免疫組織化学的分析のいずれかによって定義された。
【0166】
対象コホートに対して、2週間毎(Q2W)に750mgのモナリズマブと併用してデュルバルマブ(1500mgを4週間毎(Q4W))を投与した。
【0167】
結果は、MSS-CRC拡大コホートにおいて(少なくとも3回の以前の治療を受けた患者の58%、n=37が有効性について評価可能)、3人の確定した部分奏効(PR)(応答が部分奏効から不確定完全奏効へと改善された1人の患者を含む)、11人の安定(SD)(200日間超にわたって治療を続けた、腫瘍の減少を有する3人の患者を含む)があったことを示した。16週の時点での病勢コントロール率(DCR)は、24%であった。
【0168】
MSS-CRC拡大コホートにおけるベースラインからの腫瘍サイズの変化率パーセント及び処置期間が図1に表される。
【0169】
上述されるCRCにおけるモナリズマブ及びデュルバルマブに関する第I相臨床試験の用量拡大パートの更新は、以下の結果を示す。
【0170】
対象コホートに対して、2週間毎(Q2W)に750mgのモナリズマブと併用してデュルバルマブ(1500mgを4週間毎(Q4W))を投与した。
【0171】
結果は、MSS-CRC拡大コホートにおいて(少なくとも3回の以前の治療を受けた患者の60%、n=39が有効性について評価可能)、1人の確定した完全奏効、2人の確定した部分奏効(PR)及び11人の安定(SD)(表1及び2)があったことを示した。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【0174】
16週の時点での病勢コントロール率(DCR)は、31%であり、24週の時点で18%であった(表3)。
【0175】
【表3】
【0176】
これまでに得られた中央値OSは、有望であり、10.6ヶ月であり、これは、同様の集団において、5.7ヶ月のLonsurf/TAS-102の中央値OS(Mayer et al,2015,N.Engl.J.Med.372:1909-1919)又は6.4ヶ月のレゴラフェニブで報告された中央値OS(Grothey et al,Lancet 2013、381(9863):303-312)と比較して有利である。
【0177】
このMSS-CRC拡大コホートにおけるベースラインからの腫瘍サイズの変化率パーセント及び処置期間は、図1と比較してより長い期間において図2に表される。
【0178】
結論として、モナリズマブ及びデュルバルマブのこのファーストインヒューマンの組み合わせの用量漸増が完了され、管理可能な毒性プロファイルが実証された。データは、モナリズマブ及びデュルバルマブの組み合わせが、PD-1/PD-L1遮断に対して従来非応答性の集団である、MSS-CRCを有する患者に改善された利益をもたらすことができたことを示す。
【0179】
本明細書において援用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に援用され、且つ本明細書の他の箇所で行われる任意の別個に提供される特定の文献の援用に関係なく、各参考文献が参照によって援用されると個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書で説明された場合と同じ程度まで(法律で許容される最大範囲まで)援用される。
【0180】
他に規定されない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概略値を代表する(例えば、特定の因子又は測定に関して提供される全ての正確な例示的な値は、必要に応じて「約」によって修飾される対応する概略測定値も提供すると考えることができる)。数に関連して「約」が使用される場合、これは、規定される数の+/-10%に対応する値を含むと規定され得る。
【0181】
1つ又は複数の要素に関して、「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を用いて本発明の任意の態様又は実施形態を本明細書で記載することは、他に規定されない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「を実質的に含む」、本発明の同様の態様又は実施形態に対する支持を提供することが意図される(例えば、本明細書において特定の要素を含むと記載される組成物は、他に規定されない限り又は文脈により明らかに否定されない限り、その要素からなる組成物も記載すると理解されるべきである)。
【0182】
本明細書において提供されるいずれか及び全ての例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することのみが意図され、他で主張されない限り、本発明の範囲に限定を課さない。本明細書中の言葉は、特許請求されていない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されてはならない。
本発明は、以下を提供する。
1. 癌を処置し、且つ/又は抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを、それを必要としている個人において行う方法であって、前記個人は、MSI-High(MSI-H)でなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復(MMR)欠損でない腫瘍を有し、前記方法は、治療的に有効な量のNKG2A中和剤及び治療的に有効な量のPD-1中和剤を前記個人に投与するステップを含む、方法。
2. 前記個人は、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、上記1に記載の方法。
3. 前記個人は、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有する、上記1又は2に記載の方法。
4. 前記個人は、マイクロサテライト安定性(MSS)である腫瘍を有する、上記1~3のいずれかに記載の方法。
5. 前記個人は、大腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択される癌を有する、上記1~4のいずれかに記載の方法。
6. 前記個人は、大腸癌、任意選択的に進行した再発性又は転移性大腸癌を有する、上記1~5のいずれかに記載の方法。
7. 前記個人は、MSS-大腸癌(MSS-CRC)を有する、上記1~6のいずれかに記載の方法。
8. a)前記個人が、MSI-H及び/又はDNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有するかどうかを決定し、任意選択的に、前記個人が、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップであって、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、予備ステップ;及び/又は
b)前記個人が、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有するかどうか、任意選択的に、前記個人が、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップ
を含む、上記1~7のいずれかに記載の方法。
9. 前記NKG2A中和剤は、ヒトNKG2Aタンパク質に結合する抗体、任意選択的にヒト化又はヒト抗NKG2A抗体である、上記1~8のいずれかに記載の方法。
10. 前記NKG2A中和剤は、HLA-EへのNKG2Aの結合を阻害する抗体である、上記1~8のいずれかに記載の方法。
11. 前記NKG2A中和剤は、それぞれ配列番号16~18の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号19~21の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、上記1~10のいずれかに記載の方法。
12. 前記NKG2A中和剤は、モナリズマブである、上記1~11のいずれかに記載の方法。
13. 前記PD-1中和剤は、抗体である、上記1~12のいずれかに記載の方法。
14. 前記PD-1中和剤は、ヒトPD-1ポリペプチドに結合する抗体であり、任意選択的に、前記PD-1中和剤は、ヒト抗PD-1抗体である、上記1~13のいずれかに記載の方法。
15. 前記PD-1中和剤は、ヒトPD-L1ポリペプチドに結合する抗体であり、任意選択的に、前記PD-1中和剤は、ヒト抗PD-L1抗体である、上記1~13のいずれかに記載の方法。
16. 前記PD-1中和剤は、それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号31~33のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、上記1~13又は15のいずれかに記載の方法。
17. 前記PD-1中和剤は、デュルバルマブである、上記1~13又は15若しくは16のいずれかに記載の方法。
18. 前記NKG2A中和剤は、モナリズマブであり、及び前記PD-1中和剤は、デュルバルマブである、上記1~13又は15~17のいずれかに記載の方法。
19. 前記NKG2A中和剤及び前記PD-1中和剤は、同時に、別々に又は連続的に投与される、上記1~18のいずれかに記載の方法。
20. 前記NKG2A中和剤及び前記PD-1中和剤は、別々の投与のために処方され、且つ同時又は連続的に投与される、上記1~19のいずれかに記載の方法。
21. 前記NKG2A中和剤は、0.1~10mg/kgの範囲の用量で投与され、及び前記PD-1中和剤は、1~20mg/kgの範囲の用量で投与され、任意選択的に、前記NKG2A中和剤は、10mg/kgの用量で投与され、及び前記PD-1中和剤は、20mg/kgの用量で投与され、任意選択的に、前記NKG2A中和剤は、2週間毎に750mgの一定の用量で投与されるモナリズマブであり、及び前記PD-1中和剤は、4週間毎に1500mg/kgの一定の用量で投与されるデュルバルマブである、上記1~20のいずれかに記載の方法。
22. MSS-CRC患者の腫瘍に対する抗腫瘍活性を増大するためのキットであって、
(i)抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤及び抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する医薬組成物、又は
(ii)抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する第1の医薬組成物及び抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤を含有する第2の医薬組成物、又は
(iii)抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤を含有する医薬組成物及び抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤と共に前記NKG2A中和剤を投与するための使用説明書、又は
(iv)抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体などのPD-1中和剤を含有する医薬組成物及び抗NKG2A抗体などのNKG2A中和剤と共に前記PD-1中和剤を投与するための使用説明書
を含み、MSS-CRCの処置であって、それを必要としている患者におけるMSS-CRCの処置での使用のために適合されたキット。
23. MSS-CRCの処置における使用のための使用説明書をさらに含む、上記22に記載のキット。
24. 前記NKG2A中和剤は、モナリズマブであり、及び前記PD-1中和剤は、デュルバルマブである、上記22又は23に記載のキット。
25. 癌を有するヒト個人を処置するのに使用するためのNKG2A中和剤であって、前記個人は、MSI-Hでなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復(MMR)欠損でない腫瘍を有し、前記NKG2A中和剤は、PD-1中和剤と併用して投与される、NKG2A中和剤。
26. 癌を有するヒト個人を処置するのに使用するためのPD-1中和剤であって、前記個人は、MSI-Hでなく、且つ/又はDNAミスマッチ修復(MMR)欠損でない腫瘍を有し、前記PD-1中和剤は、NKG2A中和剤と併用して投与される、PD-1中和剤。
27. 前記個人は、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、上記25又は26に記載の使用のための薬剤。
28. 前記個人は、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有し、任意選択的に、前記個人は、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有する、上記25~27のいずれかに記載の使用のための薬剤。
29. 前記個人は、マイクロサテライト安定性(MSS)である腫瘍を有する、上記25~28のいずれかに記載の使用のための薬剤。
30. 前記個人は、大腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択される癌を有する、上記25~29のいずれかに記載の使用のための薬剤。
31. 前記個人は、大腸癌、任意選択的に進行した再発性又は転移性大腸癌を有する、上記25~30のいずれかに記載の使用のための薬剤。
32. 前記個人は、MSS-大腸癌(MSS-CRC)を有する、上記25~31のいずれかに記載の使用のための薬剤。
33. 前記個人は、
a)前記個人が、MSI-H及び/又はDNAミスマッチ修復欠損でない腫瘍を有するかどうかを決定し、任意選択的に、前記個人が、2つ以上のマイクロサテライトマーカーにおいて検出されるマイクロサテライト不安定性を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップであって、任意選択的に、前記個人は、BAT-25、BAT-26、NR-21、NR-24及びMONO27からなる群から選択される前記マイクロサテライトマーカーの2つ以上において検出される変化を有さない腫瘍を有する、予備ステップ;及び/又は
b)前記個人が、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質の発現の変化を有さない腫瘍を有するかどうか、任意選択的に、前記個人が、MSH2、MLH1、MSH6及びPMS2から選択される少なくとも1つのMMRタンパク質の低下した発現又は発現の非存在を有さない腫瘍を有するかどうかを決定する予備ステップ
を受けている、上記25~32のいずれかに記載の使用のための薬剤。
34. 前記NKG2A中和剤は、ヒト化又はヒトNKG2Aタンパク質に結合する抗体、任意選択的にヒト又はヒト化抗NKG2A抗体である、上記25~33のいずれかに記載の使用のための薬剤。
35. 前記NKG2A中和剤は、HLA-EへのNKG2Aの結合を阻害する抗体である、上記25~33のいずれかに記載の使用のための薬剤。
36. 前記NKG2A中和剤は、それぞれ配列番号16~18の配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号19~21の配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、上記25~34のいずれかに記載の使用のための薬剤。
37. 前記NKG2A中和剤は、モナリズマブである、上記25~34又は36のいずれかに記載の使用のための薬剤。
38. 前記PD-1中和剤は、抗体である、上記25~37のいずれかに記載の使用のための薬剤。
39. 前記PD-1中和剤は、ヒトPD-1ポリペプチドに結合する抗体であり、任意選択的に、前記PD-1中和剤は、ヒト抗PD-1抗体である、上記25~38のいずれかに記載の使用のための薬剤。
40. 前記PD-1中和剤は、ヒトPD-L1ポリペプチドに結合する抗体であり、任意選択的に、前記PD-1中和剤は、ヒト抗PD-L1抗体である、上記25~39のいずれかに記載の使用のための薬剤。
41. 前記PD-1中和剤は、配列番号28~30のアミノ酸配列を有する重鎖H-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号31~33のアミノ酸配列を有する軽鎖L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3ドメインを含む、上記25~39のいずれかに記載の使用のための薬剤。
42. 前記PD-1中和剤は、デュルバルマブである、上記25~39又は41のいずれかに記載の使用のための薬剤。
43. 前記NKG2A中和剤は、モナリズマブであり、及び前記PD-1中和剤は、デュルバルマブである、上記25~39又は41若しくは42のいずれかに記載の使用のための薬剤。
44. 前記NKG2A中和剤及び前記PD-1中和剤は、同時に、別々に又は連続的に投与される、上記25~43のいずれかに記載の使用のための薬剤。
45. 前記NKG2A中和剤及び前記PD-1中和剤は、別々の投与のために処方され、且つ同時又は連続的に投与される、上記25~44のいずれかに記載の使用のための薬剤。
46. 前記NKG2A中和剤は、0.1~10mg/kgの範囲の用量で投与され、及び前記PD-1中和剤は、1~20mg/kgの範囲の用量で投与され、任意選択的に、前記NKG2A中和剤は、2週間毎に750mgの一定の用量で投与されるモナリズマブであり、及び前記PD-1中和剤は、4週間毎に1500mgの一定の用量で投与されるデュルバルマブである、上記25~45のいずれかに記載の使用のための薬剤。
図1
図2
【配列表】
0007531404000001.app