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特許7531410光走査装置、画像形成装置、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】光走査装置、画像形成装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20240802BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240802BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20240802BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20240802BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101M
H04N1/113
G03G15/04 111
G03G15/00 303
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021003649
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108575
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-262580(JP,A)
【文献】特開2014-012355(JP,A)
【文献】特開2005-262478(JP,A)
【文献】特開2019-132899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0078721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、
前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、
前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部と、
前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号部と、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、
決定されたオフセット値の1次遅れ信号を生成する1次遅れ信号生成部と、
前記オフセット値の1次遅れ信号を前記シェーディング補正信号に重ね合わせる重ね合わせ部と、
前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、
を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記レーザ発光部の発光量を検出する光量検出部を設け、
前記レーザドライバ制御部は、前記光量検出部が検出した前記レーザ発光部の発光量が目標光量になるように制御するものであり、
前記オフセット値決定部は、前記目標光量に応じたオフセット値を決定することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記レーザドライバ制御部は、前記光走査部がライン走査する毎に前記光量検出部が検出した前記レーザ発光部の発光量が目標光量になるように制御する定常光量制御を行うものであり、
前記1次遅れ信号生成部は、ライン走査時間あたりに変化する光量と定常光量制御で戻す光量が釣り合う範囲内に時定数の下限値を設定したものであることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光走査部が前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査する対象物が画像形成装置の感光体ドラムであり、
前記レーザ発光部の目標光量の信号を前記感光体ドラムの副走査方向の目標光量の基準電圧に応じて制御するものであり、
前記レーザドライバ制御部は、前記光走査部がライン走査する毎に前記光量検出部が検出した前記レーザ発光部の発光量が目標光量になるように制御する定常光量制御を行うものであり、
前記シェーディング補正信号部は、前記副走査方向へのシェーディング補正信号を出力するものであるであり、
前記1次遅れ信号生成部は、前記副走査方向へのシェーディング補正の変化周期よりも小さくなるように時定数の上限値を設定したものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちの1項に記載の光走査装置と、
前記光走査部が前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置の制御方法であって、
前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力工程と、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、
決定されたオフセット値の1次遅れ信号を生成する1次遅れ信号生成工程と、
前記オフセット値の1次遅れ信号を前記シェーディング補正信号に重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置のコンピュータが、
前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力機能と、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、
決定されたオフセット値の信号の1次遅れ信号を生成する1次遅れ信号生成機能と、
前記オフセット値の1次遅れ信号を前記シェーディング補正信号に重ね合わせる重ね合わせ機能と、
前記重ね合わせ機能において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能と、
を実現するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、画像信号に基づく画像を記録用紙(シート状の画像記録媒体)に形成する処理過程で、感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光処理のためにレーザダイオード(発光素子)の発光するレーザ光で感光体ドラムを被走査体として走査する光走査装置が搭載されている。
【0003】
一般に、レーザダイオードは、入力電流を増加させていくと閾値電流で光出力が立ち上がる特性を有している。その特性からレーザ発振の立ち上がり時間の遅れを短くするため常時バイアス電流を流すようにしているのが一般的であった。
【0004】
バイアス電流に関し、バイアス電流を固定せずに、温度変化や計時変化によって生じる閾値電流の変化に追従するため、閾値電流の変化に応じてバイアス電流を自動調整するオートバイアス回路方式の発光素子駆動装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、特許文献1のようなオートバイアス回路を採用することなく、固定のバイアス電流から超過した分の電流が、アナログ信号に比例して増減するレーザドライバに関する技術が有る。
【0006】
固定バイアス電流に関し、特許文献2は、オートバイアス制御機能を有していない光駆動部を用いて光源の射出光量を補正する光走査装置を開示する。
【0007】
特許文献2は、レーザダイオードの光量と電流の特性(PI特性)を温度毎に記憶させた上で、目標光量に応じてレーザドライバ制御用のアナログ信号の電圧値を算出することを開示する。特許文献2では、次の課題が有った。
【0008】
環境やライフ(使用時間)補正等の目標光量の変化に応じて、再度、アナログ信号の電圧値を算出する必要が有り、処理に時間を要した。
【0009】
低い目標光量でシェーディングを実施する場合、シェーディングの分解能が悪くなっていた。
【0010】
レーザダイオードのPI特性や根元光量が個別にばらついた場合、目標光量にずれを生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-298178号公報
【文献】特開2018-69518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の問題点を解消するためシェーディング補正値をオフセット制御することが考えられるが、シェーディングをオフセット制御する信号の変化が大きい場合にレーザの動作点が変わり目標光量に制御するのが困難になる場合が有る。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑み、目標光量の変化に応じた処理に時間を要することがなく、シェーディングを行った場合に分解能が維持され、目標光量の制御にずれが生じることを防止できる光走査装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部を駆動する駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部と、前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号部と、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、決定されたオフセット値の信号の位相遅れを補償する位相遅れ補償部と、位相遅れが補償されたオフセット値の信号を前記シェーディング補正値の信号に重ね合わせる重ね合わせ部と、前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、を備えたことを特徴とする光走査装置である。
【0015】
また、本発明は、前記の光走査装置の前記レーザ発光部から出射するレーザ光を前記光走査部が走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
また、本発明は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置の制御方法であって、前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力工程と、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、決定されたオフセット値の信号の位相遅れを補償する位相遅れ補償工程と、位相遅れが補償されたオフセット値の信号を前記シェーディング補正値の信号に重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、を含むことを特徴とする制御方法である。
【0017】
本発明は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置のコンピュータが、前記対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力機能と、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、決定されたオフセット値の信号の位相遅れを補償する位相遅れ補償機能と、位相遅れが補償されたオフセット値の信号を前記シェーディング補正値の信号に重ね合わせる重ね合わせ機能と、前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能と、を実現するプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光走査装置等によれば、オフセット値決定部で決定されたオフセット値の信号の位相遅れを補償する位相遅れ補償部と、位相遅れが補償されたオフセット値の信号を前記シェーディング補正値の信号に重ね合わせる重ね合わせ部と、前記重ね合わせ部において重ね合わされた信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部とを有するので、目標光量の変化に応じた処理に時間を要することがなく、シェーディングを行った場合に分解能が維持され、目標光量の制御にずれが生じることを防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の外観図である。
図2】画像形成装置及び光走査装置の制御ブロック図である。
図3】光走査部の機械的構成の説明図である。
図4】光走査装置におけるレーザドライバの制御系を示す制御ブロック図である。
図5】位相遅れ補償部と重ね合わせ部の具体的な回路構成の説明図である。
図6】レーザ素子の駆動電流と出力光量の関係グラフ上の動作イメージ図であって、(a)がオフセット値の信号Voffsetに変動が有る場合、(b)が定常APCがかかる場合の図である。
図7】光走査装置において各部の信号の関係を説明する図であり、(a)がBD信号、(b)がシェーディング補正値の信号(Vshade)、(c)がオフセット値の信号(Voffset)、(d)が位相遅れ補償されたオフセット値の信号(Vcoef)、(e)がオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)、(f)がAPC用信号(XSH)、(g)が画像データ信号、(h)に光出力を示す。
図8】比較例に係る光走査装置におけるレーザドライバの制御系を示す制御ブロック図である。
図9】比較例に係る光走査装置における各部の信号の関係を説明する図であり、(a)がBD信号、(b)がシェーディング補正値の信号(Vshade)、(c)がオフセット値の信号(Voffset)、(d)がオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)、(e)がAPC用信号(XSH)、(f)が画像データ信号、(g)に光出力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して本発明を実施するための一実施形態について説明する。
【0021】
なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲は、以下の記載に限定されない。
【0022】
[1. 第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る画像形成装置10の構成について説明する。
【0023】
[1.1 全体構成]
図1は、上部に原稿読取部112を備えて原稿の画像を読取り、電子写真方式により画像を出力する画像形成装置である。画像形成装置10には、多機能プリンタ(Multifunction Printer)を例に挙げることができる。
【0024】
画像形成装置10は、図2の制御系図に示すように、主に、制御部100と、画像入力部110と、原稿読取部112と、画像処理部120と、画像形成部130と、操作部140と、表示部150と、記憶部160と、通信部170とを備え、光走査装置200の機能も有する。
【0025】
[1.2 機能構成]
制御部100は、画像形成装置10を制御するための機能部である。
【0026】
制御部100は、各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えば1又は複数の演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit))等により構成されている。
【0027】
画像入力部110は、画像形成装置10に入力される画像データを読み取るための機能部である。そして、画像入力部110は、原稿の画像を読み取る機能部である原稿読取部112と接続され、原稿読取部112から出力される画像データを入力する。
【0028】
また、画像入力部110は、USBメモリや、SDカード等の記憶媒体から画像データを入力してもよい。また、他の端末装置と接続を行う通信部170により、他の端末装置から画像データを入力してもよい。
【0029】
原稿読取部112は、コンタクトガラス(不図示)に載置された原稿を光学的に読み取り、画像処理部120へ読み取ったデータを渡す機能を有する。
【0030】
画像形成部130は、画像データに基づく出力データを記録媒体(例えば記録用紙)に形成するための機能部である。例えば、図1に示すように、給紙カセット122から記録用紙を給紙し、画像形成部130において記録用紙の表面に画像が形成された後に排紙トレイ124から排紙される。画像形成部130は、電子写真方式を利用した電子写真プロセスを利用したレーザプリンタにより構成されている。
【0031】
画像形成部130の電子写真プロセスは、後述する光走査装置200によって、感光体ドラム(像担持体)130a(図3参照)表面に画像データに対応するレーザビーム(レーザ光に相当)を走査して静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーによって現像し、現像したトナー像を記録媒体上に転写及び定着して画像を形成するものである。
【0032】
画像処理部120は、原稿読取部112で読み込まれた画像データに基づき、設定されたファイル形式(TIFF,GIF,JPEG等)に変換する機能を有する。そして、画像処理が施された画像データに基づき出力画像を形成する。
【0033】
操作部140は、ユーザによる操作指示を受け付けるための機能部であり、各種キースイッチや、接触による入力を検出する装置等により構成されている。ユーザは、操作部140を介して、使用する機能や出力条件を入力する。
【0034】
表示部150は、ユーザに各種情報を表示するための機能部であり、例えばLCD(Liquid crystal display)等により構成されている。
【0035】
すなわち、操作部140は、画像形成装置10を操作するためのユーザインターフェースを提供し、表示部150には、画像形成装置の各種設定メニュー画面やメッセージが表示される。
【0036】
なお、画像形成装置10は、図1に示すように、操作部140の構成として、操作パネル141と、表示部150とが一体に形成されているタッチパネルを備えてもよい。この場合において、タッチパネルの入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。
【0037】
記憶部160は、画像形成装置10の動作に必要な制御プログラムを含む各種プログラムや、読み取りデータを含む各種データやユーザ情報が記憶されている機能部である。記憶部160は、例えば、不揮発性のROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。また、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)を備えてもよい。
【0038】
通信部170は、外部の装置と通信接続を行う。通信部170としてデータの送受信に用いられる通信インターフェース(通信I/F)が設けられている。通信I/Fにより、画像形成装置10でのユーザによる操作によって、画像形成装置10の記憶部に格納されるデータを、ネットワークを介して接続される他のコンピュータ装置へデータの送受信をすることができる。
【0039】
[1.3 光走査装置200]
図2に示すように、画像形成装置10には光走査装置200が搭載されている。
図3は、光走査装置200の光走査部220の機械的構成を示す。
【0040】
図3に示すように、光走査部220は、レーザ光を感光体ドラム130a上に走査して感光体ドラム130a上に静電潜像を形成するものである。
【0041】
光走査部220は、レーザビーム(レーザ光)を発生するレーザ発光部200aを備え、該レーザ発光部200aから出射されるレーザビームの出射方向には、入射されたレーザビームを平行ビームに変換するコリメータレンズ200bと、略中央部に開口200c1が形成された板状部材により構成されたアパーチャ200cと、後述するドラム上にレーザビームをスポットで集光させると共に、レーザビームの走査を両端と中央で同速にするfθレンズ200dとの組み合わせにより入射されたレーザビームを拡大する凹レンズ200eと、シリンドリカルレンズ200fと、入射ビーム折返しミラー200gとが順次配設されたものである。
【0042】
また、入射ビーム折返しミラー200gによるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d及び複数の反射面を外周面に備えたポリゴンミラー200hが順に配設されており、ポリゴンミラー200hの反射面によるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d、反射ミラー200i、ポリゴンミラー200hの面倒れ補正を行う出射ビーム折返しミラー200j、感光体ドラム130aが配設されている。
【0043】
反射ミラー200iに反射した反射光は、ビームディテクトセンサ(BDセンサ)200kで検出する。BDセンサ200kは、レーザビームの受光量の大きさに応じた検出信号を出力する光センサである。BDセンサ200kは、レーザビームの主走査領域(感光体ドラム130aの軸方向に沿った走査領域)の始端側からの反射光を検知する機能を有し、感光体ドラム130aに静電潜像を書き込むタイミングの制御に用いるものである。
【0044】
また、レーザ発光部200aは、そのレーザ出射量を検出するPD(フォトダイオード)を備えた光量検出部280を近傍に備えている。
【0045】
図4は、光走査装置200におけるレーザドライバの制御系の制御ブロック図,図5は位相遅れ補償回路を説明する具体的な回路構成図を示す。
【0046】
光走査装置200は、図2図4に示すように、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部(レーザデバイスLD:Laser Device)200aと、レーザ発光部駆動用のレーザドライバ(LD Driver)210と、レーザ発光部200aから出射するレーザビーム(レーザ光)を対象物の感光体ドラム130a上に走査する光走査部220と、対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正値の信号(Vshade)を出力するシェーディング補正信号部230と、レーザ発光部200aの目標光量(Vref)に基づき、レーザ発光部200aに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部240と、決定されたオフセット値の信号(Voffset)の位相遅れを補償する位相遅れ補償部(決定されたオフセット値の信号の1次遅れ信号を生成する1次遅れ信号生成部)250と、位相遅れが補償されたオフセット値の信号(Vcoef)をアナログ信号(シェーディング補正値の信号(Vshade))に重ね合わせる重ね合わせ部(重ね合わせ回路)260と、重ね合わせ部260において重ね合わされた信号(Vsw)をレーザドライバ210に入力することによって、レーザ発光部200aの発光量を制御するレーザドライバ制御部270と、を備えている。
【0047】
光走査装置200おいて、光走査部220の制御系は、図4に示すレーザ走査ユニット220aを有する。レーザ走査ユニット220aは,制御部100の制御信号によって、シェーディング補正信号部230及びオフセット値決定部240から出力された信号をレーザドライバ210に入力するためのものであり、特定用途向け集積回路(LSUASIC)で構成されている。このレーザ走査ユニット220aの集積回路(LSUASIC)には、基準クロック信号200mと、BDセンサ200kの検出信号が入力される。
【0048】
シェーディング補正信号部230の出力するシェーディング補正値の信号(Vshade)は、予め実験等で得られており、記憶部160のROM等に記憶される。シェーディング補正値の信号(Vshade)はアナログ電圧信号である。レーザドライバ210は、シェーディング補正値の信号の入力によって、レーザ発光部200aのバイアス電流からの超過分の電流が比例するように制御する。読み出しは、BDセンサ200kの検出信号に基づいて、主走査方向における感光体ドラム130a表面に対するレーザビームの照射位置に応じて記憶部160から順次読み出される。
【0049】
オフセット値決定部240の出力するオフセット値の信号(Voffset)はアナログ電圧信号である。シェーディング割合の補正用の電圧信号であり、レーザ発光部200aのバイアス電流から閾値までの電流を付加するものである。
【0050】
位相遅れ補償部250がオフセット値の信号(Voffset)の位相遅れを補償した電圧信号(Vcoef)を出力する。
【0051】
また、レーザ発光部200aの近傍には設けられたPD(フォトダイオード)からなる光量検出部280が検出したレーザ発光部200aの発光量に基づき、レーザドライバ制御部270とレーザ走査ユニット220aが、レーザ発光部200aの発光量を目標光量になるように制御する(後述のAPC)ものである。
【0052】
具体的には、目標光量の信号は副走査方向の基準電圧(Vref)に応じて制御する。この基準電圧信号(Vref)は後述のAPCの基準電圧となりレーザドライバ210に入力する。レーザドライバ210は、この基準電圧信号(Vref)に発光光量が比例するようにレーザ発光部200aの電流を制御する。
【0053】
光量検出部280は、例えばレーザダイオード(レーザ発光部200a)に内蔵されたフォトダイオード(PD:Photo Diode)を有したものである。また、レーザドライバ制御部270は、この光量検出部280が検出したレーザ発光部200aの光出力(光パワー)をモニタし、その光出力が目標光量になるように基準電圧信号(Vref)のレベルに応じた一定値になるようにレーザ発光部200aの駆動電流を自動的に制御するAPC(Automatic Power Control)の制御方式を採用したものである。
【0054】
なお、APCには、大きく分けて初期APCと定常APCが有る。初期APCはレーザ発光素子の初期化時に行う点灯モードのことを言い、初期化若しくは1stAPCと称される。また、定常APCはライン走査ごとに行うAPCのことを言い、line APC若しくは単にAPCと称される。
【0055】
図4において、光走査部220の制御系から出力される信号XSHは、APC用信号であって、このXSH信号の有効時(Low時)にAPCが実行される。また、画像データがレーザドライバ210に向けて出力され、これによって、感光体ドラム130aに画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0056】
また、BDセンサ200kの検知信号は、一般的に定常APCにおけるモニタリングと同期検出が同時に行われるように使用される。
【0057】
図5は、位相遅れ補償部250と重ね合わせ部260の具体的な回路構成を示す。図5に示すように、シェーディング補正値の信号(Vshade)は抵抗Raを介した経路s1を経由し、また、オフセット値の信号(Voffset)は位相遅れ補償部(位相遅れ補償回路)250を介した経路s2を経由して、接続部c1(重ね合わせ部(重ね合わせ回路)260)で重ね合わせされる。重ね合わせされたことによって、シェーディング補正信号が位相補償されたオフセット信号でオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)がレーザドライバ210に入力される。なお、接続部c1には大地(G)との間に抵抗Rcが設けられている。また、レーザダイオード(レーザ発光部200a)のアノードとフォトダイオード(PD)のカソードには、電源電圧Vccが印加されている。
【0058】
位相遅れ補償部250の具体的回路においては、オペアンプ(Amp)250aの反転入力(-)側に出力電圧Voutが入力されるボルテージフォロワ回路を構成する。オペアンプ(Amp)250aの非反転入力(+)には、抵抗R、コンデンサCを経由してオフセット値の信号(Voffset)が入力される。
【0059】
オペアンプ(Amp)250aの出力信号が位相遅れが補償されたオフセット値の信号(Vcoef)となり抵抗Rbを経由して接続部c1に伝達される。
【0060】
位相遅れ補償部250において、抵抗RとコンデンサCによるCR回路が接続されそのCR回路の時定数τに応じて、オフセット値の信号(Voffset)の位相遅れが補償される。
【0061】
時定数τについて次のようになる。
まず、CR回路におけるコンデンサCの電圧Vc(t)は下式が成り立つ。
【0062】
Vc(t)=E(1-exp{-1/CR)t})
E:電圧値(オフセット値の信号電圧(Voffset)の大きさ)
exp{x}:自然対数eのx乗を表す指数関数
t:時間
CR:時定数τ
【0063】
このコンデンサの電圧が非反転入力(+)の入力電圧となるので時定数で設定される遅れ補償ができる。
【0064】
図5の回路では、目標光量(の基準電圧Vref)に応じたオフセット(信号Voffset)をかける回路に位相遅れ補償部(1次遅れ信号生成部)250を付加しているので、オフセット値の変化量が大きい場合に1ライン当たりの変動量が小さくなり、定常APCによって目標光量に戻すことができる。
【0065】
[1.4 動作例]
レーザ素子の駆動電流Iと出力光量Pとの動作イメージを、図6(a)、(b)に示す。オフセット値の信号Voffsetに変動が有ると(図6(a)では上方に変動する)と、定常APCがかかることにより、変動を補償することができる(図6(b)で下方に戻す動作をする)。
【0066】
位相遅れ補償部(1次遅れ信号生成部)250の時定数τは、適切な範囲に設定する必要が有る。
【0067】
したがって、位相遅れ補償部(1次遅れ信号生成部)250は、ライン走査時間あたりに変化する光量と定常光量制御で戻す光量が釣り合う範囲内に時定数τの下限値を設定したことが好適である。
【0068】
また、位相遅れ補償部250は、副走査シェーディングの変化周期よりも小さくなるように時定数τの上限値を設定したことが好適である。
【0069】
時定数τを副走査シェーディングの変化周期よりも、大きく設定してしまうと、副走査シェーディングを実施しても目標光量に追従しなくなってしまうため、副走査シェーディングの変化周期よりも小さくなるように時定数τの上限値を設定することが好ましい。
【0070】
なお、付言すると、図5において、オフセット値の信号(Voffset)でオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)は、シェーディング補正値の信号(Vshade)とオフセット値の信号(Voffset)の重ね合わせの理により求められる。
【0071】
Vsw=(Vshade×RbRc+Voffset×RcRa)/(RaRb+RbRc+RcRa)
【0072】
図7は、図4に示す光走査装置200における各部の信号の関係を説明するグラフであり、(a)にBD信号、(b)にシェーディング補正値の信号(Vshade)、(c)にオフセット値の信号(Voffset)、(d)に位相遅れ補償されたオフセット値の信号(オフセット値の1次遅れ信号)(Vcoef)、(e)にオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)、(f)にAPC用信号(XSH)、(g)に画像データ信号、(h)に光出力を示す。
【0073】
図7に(c)に示すように、オフセット値の信号(Voffset)がステップ状の急激な立ち上がりであっても、同(d)に矢印(Vcoef1)で示すように、位相遅れ補償されたオフセット値の信号(オフセット値の一次遅れ信号)(Vcoef)は緩やかに立ち上がる。それに伴って、同(e)に矢印(Vsw1)で示すように、重ね合わせされたアナログ信号(Vsw)も緩やかに上昇していく。
【0074】
したがって、同(h)に示すように光出力は、オフセット値の信号が立ち上がっても、緩やかな上昇をし、オフセット後も画像データに応じた光出力がオフセット前に比べて例えば101%の上昇になり、APC発光も立ち上がりで例えば101%に上昇するため100%の光量にAPCで直ぐに戻ることが見て取れる。
【0075】
[1.5 比較例]
比較例について説明する。比較例は図8に示すように、実施形態の光走査装置から位相遅れ補償部(位相遅れ補償回路)を除いた光走査装置300である。実施形態と同様部分に同一符号を付している。光走査装置300の各部信号に関し、図9の(a)にBD信号、(b)にシェーディング補正値の信号(Vshade)、(c)にオフセット値の信号(Voffset)、(d)にオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)、(e)にAPC用信号(XSH)、(f)に画像データ信号、(g)に光出力を示す。
【0076】
比較例の光走査装置300は、実施形態のような位相遅れ補償部(1次遅れ信号生成部)がないため、オフセット値の信号(Voffset)が直接、シェーディング補正値の信号(Vshade)に重ね合わされた信号(Vsw)がレーザドライバ210に入力される。そのため、図9に示すように、オフセット値の信号(Voffset)の変動によってレーザ発光部200aの出力が大きく変動する。
【0077】
具体的には、図9(c)に示すように、オフセット値の信号(Voffset)がステップ状の急激な立ち上がりを示すと、同(d)に示すように、レーザドライバの入力するアナログ信号(Vsw)もオフセット値の信号(Voffset)に応じて急峻に立ち上がる。それに伴って、同(g)に示すように、過発光の個所が生じる(図中斜線で示す領域)。
【0078】
したがって、同(g)に示すようにレーザ発光部200aの光出力は、重ね合わせされたアナログ信号(Vsw)に応じて急激な立ち上がりが生じ、画像データに関連する光出力に過発光化の部分(ハッチング部分Po)が生じ、APC発光についても過発光の部分(ハッチング部分Pr)が生じる。過発光の部分では徐々に100%の光量に戻るが、以下の問題のある事象が生じる。
【0079】
この比較例のように位相遅れ補償部のない状態であると、目標光量に応じてオフセットをかける構成であるので、オフセット値に変化が生じると、レーザの動作点が変わることから以下の事象が生じる可能性が有る。
【0080】
オフセット値を大きく変化させると、目標光量と違う光量が出力され、画像形成の際の濃度が狂ってしまう。
【0081】
また、オフセット値を大きく変化させると、レーザ発光素子が過発光し、故障の可能性が有る。
【0082】
また、オフセット値の変化量が大きい場合、APCをある程度長く実施しないと、目標光量に到達しない。
【0083】
副走査シェーディング実施時や、サーミスタの異常時にオフセット値が大きく変化する場合が有る。
[1.6 実施形態の効果]
【0084】
[1.6 実施形態の効果]
実施形態の光走査装置200においては、位相遅れ補償部(一時遅れ信号生成部)を設けているため、比較例で想定されるような事象が生じないという顕著な作用効果を奏する。
【0085】
すなわち、オフセット値を大きく変化させても、目標光量と違う光量が出力されない。
【0086】
また、オフセット値を大きく変化させても、レーザ発光素子が過発光しない。
【0087】
また、オフセット値を大きく変化してしまう以下のケース等でレーザ発光素子が故障しない。例えば、副走査シェーディング時、サーミスタ異常時、ノイズ印刷時、ソフト設定ミス時などの場合、故障しない。
【0088】
また、オフセット値の変化量が大きい場合でも、定常APCで目標光量に戻すことができる。
【0089】
また、1ライン操作時間当たりの変動量を小さくすることができる。
【0090】
また、副走査シェーディングを実施しても、目標光量に追従させることができる。
【0091】
よって、実施形態によれば、目標光量の変化に応じた処理に時間を要することがなく、シェーディングを行った場合に分解能が維持され、目標光量にずれを生じることを防止できる等の優れた効果を奏する。
【0092】
以上、実施形態について説明してきたが、具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0093】
また、実施形態において、各装置で動作するプログラムは、上述の実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えばRAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行われる。
【0094】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えばROMや不揮発性メモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versataile Disc)、MO(magneto Optical Disc)、(MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の非一時的記録媒体であればいずれでもよい。
【0095】
また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示の基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合も有る。
【0096】
また、プログラムを市場に流通させる場合、可搬型の記憶装置にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されるサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのはもちろんである。
【0097】
また、上述した実施形態に置ける各装置の一部又は全部を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現してもよい。各装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部又は全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0098】
10 画像形成装置
100 制御部
130 画像形成部
130a 感光体ドラム
160 記憶部
200 光走査装置
230 シェーディング補正信号部
240 オフセット値決定部
250 位相遅れ補償部
260 重ね合わせ部
270 レーザドライバ制御部
280 光量検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9