IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧 ▶ アール・ビー・コントロールズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-リモコン 図1
  • 特許-リモコン 図2
  • 特許-リモコン 図3
  • 特許-リモコン 図4
  • 特許-リモコン 図5
  • 特許-リモコン 図6
  • 特許-リモコン 図7
  • 特許-リモコン 図8
  • 特許-リモコン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】リモコン
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/12 20060101AFI20240802BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240802BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H05K7/12 B
H05K7/12 C
H05K5/02 E
H05K5/02 L
H04Q9/00 371Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021022435
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124669
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】横井 康徳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 喜彦
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-310448(JP,A)
【文献】特開平06-303668(JP,A)
【文献】特開2000-151129(JP,A)
【文献】特開2012-138487(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088468(WO,A1)
【文献】特開2009-216348(JP,A)
【文献】特開2004-234922(JP,A)
【文献】特開2006-332574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
H05K 5/00 - 5/06
H04Q 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が形成された側壁の表壁面に装着され、装着状態で前記挿通孔を囲む固定具と、
前記挿通孔に挿通する通信線を有し、前記固定具に固定されるリモコン本体とを備え、
前記固定具は、前記表壁面から離隔するように延びる係合片を有し、
前記リモコン本体は、前記固定具側に樹脂製の下ケースを有し、
前記下ケースに前記係合片と係合する被係合片が形成され、
前記係合片と前記被係合片とは、前記表壁面に装着された前記固定具に向かって前記リモコン本体を近づけることにより、前記被係合片が弾性変形した後に弾性復帰して互いに係合し、
前記固定具と前記リモコン本体とは、前記表壁面と平行な面内で回転不能とされつつ、前記係合片と前記被係合片との係合によって互いに固定され、
前記係合片には、前記表壁面と対面する係止面と、前記係止面と交差して延びる係合停止面とが形成され、
前記被係合片は、前記係合片と前記被係合片との係合時に前記係止面と当接する被係止面と、前記係合時に前記係合停止面と当接する被係合停止面と、前記表壁面に装着された前記固定具に向かって前記リモコン本体を近づける際に前記係合片を摺動させることで前記被係止面及び前記被係合停止面を弾性変形させる案内面とを有し、
前記被係合片は、前記表壁面側に設けられた基部と、前記表壁面及び前記リモコン本体から離隔する方向に向かって前記基部から延びる傾斜部とを有し、
前記被係止面及び前記被係合停止面は、前記傾斜部よりも前記表壁面から離隔して形成され
前記固定具は、前記表壁面から離隔するように延びる仮固定片を有し、
前記リモコン本体は、前記仮固定片と係合する被仮固定片を有し、
前記仮固定片と前記被仮固定片とは、前記表壁面に装着された前記固定具から前記リモコン本体が離隔することを規制可能であり、
前記仮固定片は前記係合片と対向して設けられ、
前記被仮固定片は前記被係合片と対向して設けられ、
前記仮固定片には、前記表壁面と対面する規制面と、前記規制面と交差して延びる被転動面とが形成され、
前記被仮固定片は、前記仮固定片と前記被仮固定片との係合時に前記規制面と当接する被規制面と、前記被係合片から離隔する方向に突出し、中心軸周りで曲面とされ、前記係合時に前記被転動面を転動する転動面とを有し、
前記転動面は、前記被転動面と当接して前記被転動面上を前記中心軸周りに転動し、前記リモコン本体を前記側壁に向けて前記中心軸周りで揺動させることを特徴とするリモコン。
【請求項2】
前記被係合片は、前記傾斜部の前端から前方に水平に延びる当接部と、前記当接部より前記リモコン本体から離隔する方向に延びる案内部とを有し、
前記案内部の前面に前記被係止面が形成され、
前記当接部における前記リモコン本体から離隔する方向を向く面に前記被係合停止面が形成されている請求項1記載のリモコン。
【請求項3】
前記リモコン本体は、前記固定具と前記リモコン本体とが固定された状態で前記表壁面を正面から見て、前記係合片及び前記被係合片を目視不能としている請求項1又は2記載のリモコン。
【請求項4】
前記表壁面と前記リモコン本体との間を封止し、前記挿通孔への水の浸入を防ぐパッキンを備えている請求項1乃至のいずれか1項記載のリモコン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリモコンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来のリモコンが開示されている。これらのリモコンは、固定具と、リモコン本体とを備えている。固定具は、挿通孔が形成された側壁の表壁面に装着され、装着状態で挿通孔を囲んでいる。リモコン本体は、挿通孔に挿通する通信線を有し、固定具に固定される。
【0003】
より詳細には、固定具は、表壁面から離隔する4つの係合凸部を有している。係合凸部は特許文献2のリモコンでは爪部と称されている。係合凸部は、表壁面に対して垂直に延びた後、鉤部が上方に垂直に屈曲している。鉤部は固定具との間に溝部を形成している。リモコン本体は、係合凸部を挿通する4つの係合孔を有している。係合凸部と係合孔とは組をなしている。係合孔は特許文献2のリモコンでは切欠きと称されている。
【0004】
これらのリモコンを側壁に固定する際、固定具を側壁の表壁面に装着した後、リモコン本体を固定具に近づけて各係合孔に各係合凸部を挿通し、さらにリモコン本体を表壁面に沿って下方に摺動する。これにより、リモコン本体の各係合孔の縁が固定具の各溝部に係合し、係合凸部と係合孔とがそれぞれ互いに係合する。このため、固定具とリモコン本体とは、固定具とリモコン本体とをビスによって固定しなくても、表壁面と平行な面内で回転不能とされつつ、互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-56626号公報
【文献】特開2000-209685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のリモコンでは、リモコンを側壁に固定する際、リモコン本体を固定具に近づけた後、さらにリモコン本体を表壁面に沿って下方に摺動しなければならず、面倒である。
【0007】
特に、表壁面とリモコン本体との間から挿通孔への水の浸入を防止するため、リモコンが表壁面とリモコン本体との間にパッキンを備える場合には、パッキンの摩擦抵抗によってリモコン本体を下方に摺動させ難く、施工性の改善が求められる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、側壁に固定する際に優れた施工性を発揮可能なリモコンを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリモコンは、挿通孔が形成された側壁の表壁面に装着され、装着状態で前記挿通孔を囲む固定具と、
前記挿通孔に挿通する通信線を有し、前記固定具に固定されるリモコン本体とを備え、
前記固定具は、前記表壁面から離隔するように延びる係合片を有し、
前記リモコン本体は、前記固定具側に樹脂製の下ケースを有し、
前記下ケースに前記係合片と係合する被係合片が形成され、
前記係合片と前記被係合片とは、前記表壁面に装着された前記固定具に向かって前記リモコン本体を近づけることにより、前記被係合片が弾性変形した後に弾性復帰して互いに係合し、
前記固定具と前記リモコン本体とは、前記表壁面と平行な面内で回転不能とされつつ、前記係合片と前記被係合片との係合によって互いに固定され、
前記係合片には、前記表壁面と対面する係止面と、前記係止面と交差して延びる係合停止面とが形成され、
前記被係合片は、前記係合片と前記被係合片との係合時に前記係止面と当接する被係止面と、前記係合時に前記係合停止面と当接する被係合停止面と、前記表壁面に装着された前記固定具に向かって前記リモコン本体を近づける際に前記係合片を摺動させることで前記被係止面及び前記被係合停止面を弾性変形させる案内面とを有し、
前記被係合片は、前記表壁面側に設けられた基部と、前記表壁面及び前記リモコン本体から離隔する方向に向かって前記基部から延びる傾斜部とを有し、
前記被係止面及び前記被係合停止面は、前記傾斜部よりも前記表壁面から離隔して形成され
前記固定具は、前記表壁面から離隔するように延びる仮固定片を有し、
前記リモコン本体は、前記仮固定片と係合する被仮固定片を有し、
前記仮固定片と前記被仮固定片とは、前記表壁面に装着された前記固定具から前記リモコン本体が離隔することを規制可能であり、
前記仮固定片は前記係合片と対向して設けられ、
前記被仮固定片は前記被係合片と対向して設けられ、
前記仮固定片には、前記表壁面と対面する規制面と、前記規制面と交差して延びる被転動面とが形成され、
前記被仮固定片は、前記仮固定片と前記被仮固定片との係合時に前記規制面と当接する被規制面と、前記被係合片から離隔する方向に突出し、中心軸周りで曲面とされ、前記係合時に前記被転動面を転動する転動面とを有し、
前記転動面は、前記被転動面と当接して前記被転動面上を前記中心軸周りに転動し、前記リモコン本体を前記側壁に向けて前記中心軸周りで揺動させることを特徴とする。
【0010】
本発明のリモコンでは、リモコンを側壁に固定する際、表壁面に装着された固定具に向かってリモコン本体を近づけるだけで、固定具の係合片とリモコン本体の被係合片とが係合する。この際、係合片が弾性変形した後に弾性復帰する。このため、リモコン本体を表壁面に沿って摺動する必要がない。
【0011】
したがって、本発明のリモコンは、側壁に固定する際に優れた施工性を発揮可能である。
【0012】
固定具とリモコン本体とを表壁面と平行な面内で回転不能とするためには、係合片と被係合片とを複数組設けたり、固定具とリモコン本体との間に回転不能な手段を講じたりすることが可能である。
【0013】
係合片には、表壁面と対面する係止面と、係止面と交差して延びる係合停止面とが形成される。また、被係合片は、係合片と被係合片との係合時に係止面と当接する被係止面と、係合時に係合停止面と当接する被係合停止面と、表壁面に装着された固定具に向かってリモコン本体を近づける際に係合片を摺動させることで被係止面及び被係合停止面を弾性変形させる案内面とを有している。この場合、固定具に向かってリモコン本体を近づける際、リモコン本体が固定具に近づくに従い、やがて被係合片の案内面が係合片に当接し、更に案内面が係合片を摺動することで被係合片の被係止面及び被係合停止面が弾性変形するため、リモコン本体を固定具に容易に取り付けることが可能となり、優れた施工性を発揮する。
【0014】
固定具は、表壁面から離隔するように延びる仮固定片を有する。また、リモコン本体は、仮固定片と係合する被仮固定片を有する。そして、仮固定片と被仮固定片とは、表壁面に装着された固定具からリモコン本体が離隔することを規制可能である。この場合、仮固定片及び被仮固定片は、係合片と被係合片との係合を阻害せず、優れた施工性を維持する。
【0015】
仮固定片は係合片と対向して設けられ、被仮固定片は被係合片と対向して設けられている。この場合、仮固定片及び被仮固定片が固定具とリモコン本体との回転不能な手段に相当する。また、仮固定片及び被仮固定片は、少なくとも一方が弾性変形して係合する係合片及び被係合片と対向して設けられていることから、工具を用いることなく、固定具からリモコン本体を外すことが可能であるため、メンテナンス性が向上する。
【0016】
仮固定片には、表壁面と対面する規制面と、規制面と交差して延びる被転動面とが形成される。被仮固定片は、仮固定片と被仮固定片との係合時に規制面と当接する被規制面と、被係合片から離隔する方向に突出し、中心軸周りで曲面とされ、係合時に被転動面を転動する転動面とを有する。そして、転動面は、被転動面と当接して被転動面上を中心軸周りに転動し、リモコン本体を側壁に向けて中心軸周りで揺動させる。この場合、リモコン本体を揺動させて固定具に近づけることができる。また、転動面が被転動面上を転動するため、固定具とリモコン本体とを滑らかに係合させることができる。
【0017】
リモコン本体は、固定具とリモコン本体とが固定された状態で表壁面を正面から見て、係合片及び被係合片を目視不能としていることが好ましい。この場合、リモコンが美感を呈する。
【0018】
表壁面とリモコン本体との間を封止し、挿通孔への水の浸入を防ぐパッキンを備えていることが好ましい。本発明のリモコンは、パッキンを備えていても、パッキンが施工の妨げとはならない。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリモコンは、側壁に固定する際に優れた施工性を発揮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例のリモコンの分解斜視図である。
図2図2は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの分解斜視図である。
図3図3は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの他の角度からの分解斜視図である。
図4図4は、実施例のリモコンに係り、リモコン本体における下ケースの一部拡大斜視図である。
図5図5は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの固定前の一部断面図である。
図6図6は、実施例のリモコンに係り、固定具と、揺動時のリモコン本体の下ケースとの一部断面図である。
図7図7は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの固定後の一部断面図である。
図8図8は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの固定前の一部断面図である。
図9図9は、実施例のリモコンに係り、固定具と、リモコン本体の下ケースとの固定後の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、実施例のリモコン100は、固定具1と、リモコン本体3と、パッキン5と、グロメット7とを備えている。このリモコン100を側壁Wに固定する。以下、側壁Wの正面に向かい、側壁Wから離隔する方向をリモコン100の前方、側壁Wの奥に向かう方向をリモコン100の後方、側壁Wの右側をリモコン100の右側、側壁Wの左側をリモコン100の左側、側壁Wの上側をリモコン100の上側、側壁Wの下側をリモコン100の下側と規定する。他の図面は全てこの方向に従う。
【0022】
固定具1は板金製である。固定具1は水平方向に長い略長方形状をなす固定具本体9を有している。固定具本体9の中央には開口9aが貫設されている。また、固定具本体9の右端及び左端には固定孔9b、9cが貫設されている。パッキン5は固定具1の開口9a内に設けられる。
【0023】
固定具本体9の上縁には、右端近傍に位置する第1係合片11と、左端近傍に位置する第2係合片13とが形成されている。また、固定具本体9の下縁には、右端近傍に位置する第1仮固定片19と、左端近傍に位置する第2仮固定片21とが形成されている。第1係合片11と第1仮固定片19とは上下で対面しており、第2係合片13と第1仮固定片21とは上下で対面している。つまり、第1、2係合片11、13と、第1、2仮固定片19、21とは、略矩形状に形成された固定具9における対向する面に設けられている。
【0024】
第1、2係合片11、13は、図2及び図3に示すように、固定具本体9から垂直に前方に延びる2本の板状の係合柱部15、15と、両係合柱部15、15が先端で互いに繋がった板状の係合連結部17とからなるU字状をなしている。係合連結部17には、図8に示すように、後方を向く係止面12aと、下方を向く係合停止面12bとが形成されている。つまり、第1、2係合片11、13には、側壁Wの表壁面W2と対面する係止面12aと、係止面12aと交差して延びる係合停止面12bとが形成されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、第1、2仮固定片19、21は、固定具本体9から垂直に前方に延びる2本の板状の仮固定柱部23、23と、両仮固定柱部23、23が先端で互いに繋がった板状の仮固定連結部25とからなるU字状をなしている。第1、2仮固定片19、21の各仮固定柱部23、23は第1、2係合片11、13の各係合柱部15、15よりも突出長さが短い。図5に示すように、仮固定連結部25には後方を向く規制面20aが形成され、両仮固定柱部23、23には上方を向く被転動面20bが形成されている。つまり、第1、2仮固定片19、21には、側壁Wの表壁面W2と対面する規制面20aと、規制面20aと交差して延びる被転動面20bとが形成されている。
【0026】
図1に示すように、リモコン本体3は、固定具1側から順に、下ケース31と、基板33と、上ケース35と、カバー37とからなる。
【0027】
下ケース31は樹脂製である。下ケース31は、水平方向に長い略長方形状をなす背板39と、背板39の上縁で前方に延びる上板41と、背板39の右縁で前方に延びる右板43と、背板39の左縁で前方に延びる左板45と、背板39の下縁で前方に延びる下板47とからなる。上板41、右板43、下板47及び左板45は、背板39から同一長さだけ突出し、背板39の周囲で連続している。これによって下ケース31は容器状になっている。背板39の中央には開口39aが貫設されている。グロメット7は、通信線33a、33bを挿通しつつ下ケース31の開口39aに保持される。
【0028】
下ケース31の上板41には、図2に示すように、右端近傍に位置する第1被係合片51と、左端近傍に位置する第2被係合片53とが形成されている。また、下ケース31の下板47には、図3に示すように、右端近傍に位置する第1被仮固定片61と、左端近傍に位置する第2被仮固定片63とが形成されている。第1被係合片51と第1被仮固定片61とは上下で背面しており、第2被係合片53と第1被仮固定片63とは上下で背面している。つまり、第1、2被係合片51、53と、第1、2被仮固定片61、63とは、略矩形状に形成された下ケース31における対向する面に設けられている。
【0029】
図8に示すように、第1、2被係合片51、53は、背板39の上端から上方にやや延びる基部55と、基部55から前方にやや上昇しながら延びる傾斜部56と、傾斜部56の前端から前方に水平に延びる当接部57とを有している。当接部57の上面にはコ字形状をなして傾斜部56の上面と面一になっている案内部58が形成されている。案内部58の前面は、前方を向いており、第1、2係合片11、13の係止面12aと当接する被係止面52aとされている。当接部57の上面は、上方を向いており、第1、2係合片11、13の係合停止面12bと当接する被係合停止面52bとされている。傾斜部56及び案内部58の上面は、後方から前方に向かって斜め上方に延びており、第1、2係合片11、13の係合連結部17を案内する案内面52cとされている。
【0030】
図3~5に示すように、第1、2被仮固定片61、63は、背板39の下端から下方に短く突出する突出部62と、突出部62の左右に膨出された転動部64とを有している。突出部62の前面は、前方を向いており、第1、2仮固定片19、21の規制面20aと当接する被規制面62aとされている。転動部64の下端には、転動面64aが形成されている。転動面64aは、後方に向かいながら下方に突出し、水平に延びる中心軸S周りの円筒面の一部をなしている。転動面64aは、第1、2仮固定片19、21の被転動面20bと当接するようになっている。
【0031】
図1に示すように、基板33は、模式化して図示しているが、下ケース31内に移動不能に収納される。基板33は、複数の図示しないボタンと、図示しない表示装置と、複数本の通信線33a、33bとを有している。上ケース35を介してカバー37上で基板33の各ボタンが操作されることにより、その入力が通信線33a、33bによって外部に送信されるようになっている。
【0032】
上ケース35も樹脂製である。上ケース35は、水平方向に長い略長方形状をなす前板65と、前板65の上縁で後方に延びる上板67と、前板65の右縁で後方に延びる右板69と、前板65の左縁で後方に延びる左板71と、前板65の下縁で後方に延びる下板73とからなる。上板67、右板69、下板73及び左板71は、前板65から同一長さだけ突出し、前板65の周囲で連続している。これによって上ケース35も容器状になっている。前板65には複数個の開口65aが貫設されている。上ケース35は基板33を収納した下ケース31と嵌合されるようになっている。各開口65aは基板33の表示装置及び各ボタンに対応している。
【0033】
上ケース35は固定具1及び下ケース31より一回り大きくされており、固定具1の第1、2係合片11、13及び第1、2仮固定片19、21と、下ケース31の第1、2被係合片51、53及び第1、2被仮固定片61、63とは上ケース35によって外側から覆われている。
【0034】
カバー37は上ケース35の前板65に張り付けられるようになっている。カバー37は、上ケース35及び下ケース31内の防水を図りつつ、基板33の表示部を透視できるようになっているとともに、基板33の各ボタンを押圧できるようになっている。
【0035】
以上のように構成されたリモコン100は以下のように側壁Wに固定される。側壁Wには通信線33a、33bを挿通するための挿通孔W1が予め形成されている。まず、ビス75、77が固定具1の固定孔9b、9cを介して側壁Wにねじ込まれ、固定具1が側壁Wの表壁面W2に装着される。また、下ケース31、グロメット7、基板33、上ケース35及びカバー37は組付けられてリモコン本体3とされている。
【0036】
リモコン本体3からグロメット7を経て後方に延びる通信線33a、33bは、パッキン5を挿通して挿通孔W1内に延ばされ、図示しない接続線と接続される。パッキン5は、表壁面W2とリモコン本体3との間を封止し、挿通孔W1への水の浸入を防ぐ。この後、図6に示すように、固定具1の第1仮固定片19とリモコン本体3の第1被仮固定片61とを対面させ、第1仮固定片19の両仮固定柱部23、23間に第1被仮固定片61を上方から挿入する。また、固定具1の第2仮固定片21とリモコン本体3の第2被仮固定片63とを対面させ、第2仮固定片21の両仮固定柱部23、23間に第2被仮固定片61を上方から挿入する。
【0037】
そして、第1、2仮固定片19、21の規制面20aに第1、2被仮固定片61、63の被規制面62aを当接させるとともに、第1、2仮固定片19、21の被転動面20bに第1、2被仮固定片61、63の転動面64aを当接させる。この後、転動面64aを被転動面20b上で中心軸S周りに転動させ、リモコン本体3を側壁Wに向けて中心軸S周りで揺動させる。
【0038】
この間、図9に示すように、リモコン本体3の上部が固定具1に近づくに従い、やがて第1、2被係合片51、53の案内面52cが第1、2係合片11、13の係合連結部17に当接し、さらに案内面52cが係合連結部17を摺動する。このため、第1、2被係合片51、53における傾斜部56、当接部57及び案内部58が表壁面W2に平行なやや下方に弾性変形する。
【0039】
そして、第1、2係合片11、13の係合停止面12bが第1、2被係合片51、53における当接部57の被係合停止面52bと当接し、第1、2係合片11、13の係止面12aが第1、2被係合片51、53における案内部58の被係止面52aと当接し、第1、2被係合片51、53の弾性変形が復帰する。
【0040】
こうして、このリモコン100では、固定具1の第1、2係合片11、13とリモコン本体3の第1、2被係合片51、53とが係合する。このため、このリモコン100では、固定具1とリモコン本体3とは、固定具1とリモコン本体3とをビスによって固定しなくても、またリモコン本体3を表壁面W2に沿って摺動しなくても、表壁面W2と平行な面内で回転不能とされつつ、互いに固定される。この優れた施工性は、リモコン100が固定具1とリモコン本体3との間にパッキン5を備えていても実現されている。
【0041】
特に、このリモコン100では、固定具1が第1、2係合片11、13の他に第1、2仮固定片19、21を有し、リモコン本体3の下ケース31が第1、2被係合片51、53の他に第1、2被仮固定片61、63を有している。このため、第1、2仮固定片19、21と第1、2被仮固定片61、63とが表壁面W2に装着された固定具1からリモコン本体3が離隔することを規制する。このため、第1、2仮固定片19、21及び第1、2被仮固定片61、63は、第1、2係合片11、13と第1、2被係合片51、53との係合を阻害せず、優れた施工性を維持する。
【0042】
そして、中心軸S周りに曲面とされた転動面64aは、被転動面20bと当接して被転動面20b上を中心軸S周りに転動し、リモコン本体3を側壁Wに向けて中心軸S周りで揺動させる。このため、表壁面W2に装着された固定具1に向かってリモコン本体3を揺動して近づけることが可能になっている。また、転動面64aが被転動面20b上を転動するため、固定具1とリモコン本体3とを滑らかに係合させることができる。
【0043】
また、このリモコン100では、第1、2係合片11、13及び第1、2被係合片51、53が2組であり、第1、2仮固定片19、21及び第1、2被仮固定片61、63が2組であり、第1、2係合片11、13及び第1、2被係合片51、53と、第1、2仮固定片19、21及び第1、2被仮固定片61、63とはそれぞれ対向する面に設けられている。そして、第1、2係合片11、13の係合停止面12bと第1、2被係合片51、53の被係合停止面52b及び第1、2固定片19、21の被転動面20bと第1、2被固定片61、63の転動面64aとが当接している。これらのことから、固定具1とリモコン本体3とが回転不能となっている。さらに、第1、2係合片11、13と第1、2被係合片51、53とが係合している状態において、第1、2被固定片61、63の被規制面62aが第1、2固定片19、21の規制面20aに当接することで、固定具1に取り付けたリモコン本体3が前方側に外れ難く、固定具1に対して容易に固定させることが可能となっている。
【0044】
また、このリモコン100は、表壁面W2に装着された固定具1に向かってリモコン本体3を近づけるだけで側壁Wに固定できることから、設置位置に制約を生じ難い。
【0045】
したがって、実施例のリモコン100は、側壁Wに固定する際に優れた施工性を発揮可能であり、設置位置に制約を生じ難い。
【0046】
また、このリモコン100では、固定具1とリモコン本体3とが固定された状態において、上ケース35が固定具1の第1、2係合片11、13及び第1、2仮固定片19、21と、下ケース31の第1、2被係合片51、53及び第1、2被仮固定片61、63とを外側から覆っていることから、表壁面W2を正面から見て、第1、2係合片11、13及び第1、2仮固定片19、21と、第1、2被係合片51、53及び第1、2被仮固定片61、63を目視不能としている。上ケース35は、下ケース31とともに基板33を覆う部材であり、リモコン本体3を構成するために必須の部材である。このため、このリモコン100は、別部材を要することなく、高い美感を呈する。
【0047】
さらに、メンテナンス等によりリモコン本体3を固定具1から取り外す必要がある場合には、リモコン本体3を固定具1に対してやや上方に摺動させる。第1、2仮固定片19、21及び第1、2被仮固定片61、63が第1、2係合片11、13及び第1、2被係合片51、53と対向して設けられており、第1、2被係合片51、53は表壁面W2に平行なやや下方に弾性変形する。こうすることにより第1、2被仮固定片61、63が第1、2仮固定片19、21から抜け、第1、2係合片11、13と第1、2被係合片51、53との係合を容易に外すことができる。このため、このリモコン100では、工具を用いることなく、固定具1からリモコン本体3を外すことが可能であるため、メンテナンス性が向上している。
【0048】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0049】
すなわち、実施例のリモコン100は略矩形状であるが、本発明のリモコンは略矩形状に限定されず、楕円形状等であってもよい。
【0050】
また、実施例の略矩形状のリモコン100では、第1係合片11と第1仮固定片19とが上下で対面し、第2係合片13と第1仮固定片21とは上下で対面することにより、第1係合片11と第1仮固定片19とが対向し、第2係合片13と第1仮固定片21とが対向しているが、対向は対面に限定されず、左右にずれていてもよい。つまり、リモコンが略矩形状の場合、係合片と仮固定片との組み合わせ及び被係合片と被仮固定片との組み合わせは、リモコンのそれぞれ対向する面に設けられておれば、実施例の位置からずれていてもよい。
【0051】
また、リモコンが略矩形状の場合、係合片、仮固定片、被係合片及び被仮固定片をリモコンの上下の面に設けるのではなく、これらをリモコンの左右の面に設けてもよい。また、係合片及び被係合片をリモコンの左右の面に設け、仮固定片及び被仮固定片をリモコンの下の面に設けてもよい。仮固定片及び被仮固定片がリモコンの下の面に設けられておれば、固定具とリモコン本体とが固定された状態で表壁面を正面から見て、仮固定片及び被仮固定片を目視し難く、リモコンが美感を呈する。
【0052】
仮固定片及び被仮固定片を設けず、リモコンの上下に係合片及び被係合片を設けてもよい。
【0053】
実施例のリモコン100では、被係合片が弾性変形したが、係合片が弾性変形する構成、または被係合片及び係合片が弾性変形する構成であってもよい。また、実施例のリモコン100では、弾性変形の方向が表壁面W2に平行であるが、本発明は他の方向に弾性変形する場合も含む。
【0054】
係合片の突出方向は表壁面W2に対して垂直でなくてもよい。被係合片及び被仮固定片を上ケース35に設けてもよい。
【0055】
実施例のリモコン100では、第1、2被仮固定片61、63の転動面64aが中心軸S周りの円筒面の一部をなしているが、転動面は中心軸S周りの曲面、例えば中心軸Sに中心をもつ球面の一部であってもよい。
【0056】
係合片、被係合片、仮固定片及び被仮固定片の数は、実施例のような2個ずつには限定されない。
【0057】
実施例のリモコン100は、固定具1とリモコン本体3との間にパッキン5を備えているが、側壁Wの表壁面W2とリモコン100との間にコーキングを施工できる場合には、パッキンを省略することが可能である。また、係合片、被係合片、仮固定片又は被仮固定片の形状は実施例に限定されない。例えば、実施例の係合片及び固定片はU字状をなしていたが、J字状又はL字状に構成されていてもよい。また、実施例では、被固定片の転動部は突出部の左右に2個形成されているが、転動部は1個又は3個以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、浴室用、キッチン用等のリモコンに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
W1…挿通孔
W…側壁
W2…表壁面
1…固定具
33a、33b…通信線
3…リモコン本体
11、13…第1、2係合片(係合片)
51、53…第1、2被係合片(被係合片)
19、21…第1、2仮固定片(仮固定片)
61、63…第1被仮固定片(被仮固定片)
12a…係止面
12b…係合停止面
52a…被係止面
52b…被係合停止面
52c…案内面
20a…規制面
62a…被規制面
20b…被転動面
64a…転動面
5…パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9