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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/02 20060101AFI20240802BHJP
   A47L 9/30 20060101ALI20240802BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A47L9/02 Z
A47L9/30
A47L9/28 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035062
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135324
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 将
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 叶登
(72)【発明者】
【氏名】神谷 優
(72)【発明者】
【氏名】富崎 一秀
(72)【発明者】
【氏名】西田 昂司
(72)【発明者】
【氏名】中居 貴弘
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0021184(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0101730(US,A1)
【文献】特開2010-005094(JP,A)
【文献】特開2015-195156(JP,A)
【文献】特開2013-220205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0002167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02
A47L 9/30
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力を発生させるファンモータと、前記ファンモータによって吸引されたごみを吸い上げる吸口体と、前記吸口体と連通し、吸い上げたごみを集塵する集塵部とを備えた電気掃除機であって、
前記吸口体は、被掃除面を照射する照射部を備え、
前記照射部は、異なる色の光を発光する複数の発光部と、
前記発光部からの光が入射し、前記吸口体の前方から被掃除面に向けて照射する複数のレンズを備え、
前記光の種類に応じて前記レンズの形状が異なり、
前記複数の発光部は、少なくとも白色と緑色の光を発光させ、
前記照射部は、前記白色の光と前記緑色の光を前記レンズから照射することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
請求項に記載の電気掃除機において、
前記複数の発光部を実装する基板を備え、
前記基板は電力の入力を調整する入力調整部を備え、
前記緑色の光を発光する発光部は、前記基板に供給された電力により発光し、
前記白色の光を発光する発光部は、前記入力調整部により調整された電力により発光することを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
請求項に記載の電気掃除機において、
前記複数のレンズを固定するレンズ固定部材と、をさらに備え、
前記レンズ固定部材の少なくとも照射側の表面には、シボ加工を施したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
請求項に記載の電気掃除機において、
前記シボ加工は、前記レンズ固定部材の中央部分の加工を強くし、前記レンズ固定部材の中央部分から前記吸口体の左右方向外側に位置する外側部に向かうに従い、加工を弱くしたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
請求項に記載の電気掃除機において、
前記複数の発光部はLEDであって、
前記LEDの中には複数の光源が内蔵され、
前記複数の光源は被掃除面に対して平行に前記LED内に配置されていることを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気掃除機で掃除する場合、使用者は、床、棚上等の掃除対象面を目視で確認し、塵埃等のごみを集塵する。このとき、使用者から見てごみの視認性が低い場合、掃除残しが生じたり、ごみが無い場所の掃除により効率性の低下が生じたりする。そこで、掃除対象面のごみの視認性向上に関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、塵埃を含む気体を吸入する吸込口を有する吸口体と、前記吸口体に配置される発光ダイオードとを備え、前記吸込み体に接触するように又は床面とほぼ平行に配置したとき、前記発光ダイオードから発して前記吸口体の外部に照射される光の照射範囲が床面とほぼ平行に延びる方向から下方の方向に広がるように、前記発光ダイオードは前記吸口体に配置されている電気掃除機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2008/035478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術においては、床面に対する発光ダイオードの照射範囲については考慮されていなかった。このため、照射した光が被掃除面に十分に行き渡らず、ごみを見逃してしまうという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、被掃除面に対する光の照射範囲を向上させ、ごみの認識性を向上させることができる電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、吸引力を発生させるファンモータと、前記ファンモータによって吸引されたごみを吸い上げる吸口体と、前記吸口体と連通し、吸い上げたごみを集塵する集塵部とを備えた電気掃除機であって、前記吸口体は、被掃除面を照射する照射部を備え、前記照射部は、異なる色の光を発光する複数の発光部と、前記発光部からの光が入射し、前記吸口体の前方から被掃除面に向けて照射する複数のレンズを備え、前記光の種類に応じて前記レンズの形状が異なり、前記複数の発光部は、少なくとも白色と緑色の光を発光させ、前記照射部は、前記白色の光と前記緑色の光を前記レンズから照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被掃除面に対する光の照射範囲を向上させ、ごみの認識性を向上させることができる電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に実施例1に係る電気掃除機の外観斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る電気掃除機に備えられる操作部の上面図である。
図3】本発明の実施例1に係る吸口体を上方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係る吸口体を下方から見た斜視図である。
図5】上ケース及びレンズ固定部材を取外した状態において吸口体を上方から見た斜視図である。
図6図5においてレンズ固定部材を装着した状態を示す吸口体の斜視図である。
図7】上ケース及びバンパーを取外した状態における吸口体の前部を拡大した側面図であり、
図8】上ケースを裏面側から見た斜視図である。
図9】照射する光の色相を説明するマンセル表色系の色相環である。
図10】本発明の実施例1に係る電気掃除機のブロック図である。
図11】本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を前方から見た正面図である。
図12】本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を後方から見た背面図である。
図13】本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を下方から見た下面図である。
図14図12のXIV-XIV線断面図である。
図15】本発明の実施例2に係るレンズ固定部材の正面図である。
図16】本発明の実施例2に係るレンズ固定部材を後方から見た斜視図である。
図17】本発明の実施例3に係るレンズ固定部材を前方から見た斜視図である。
図18】本発明の実施例3に係るレンズ固定部材を後方から見た斜視図である。
図19図18のXIX―XIX線断面図である。
図20】本発明の実施例4に係るレンズ固定部材を前方から見た正面図である。
図21】本発明の実施例5に係るLEDチップ構造の説明図である。
図22】本発明の実施例5に係るLEDチップ構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0011】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明に実施例1に係る電気掃除機100の外観斜視図である。電気掃除機100は、ハンディ状態、スティック状態など各種の使用形態に変更し、床面、棚の上面等の被掃除面(不図示)を掃除できるものである。以下の例では、被掃除面は例えばフローリングであるものとする。電気掃除機100は、図示の例に限られず、ロボット掃除機でもよい。また、電気掃除機100は、キャニスター式、紙パック式、サイクロン式でもよい。
【0013】
電気掃除機100が収納される支持台70は、電気掃除機100に延長管300(付属品)及び標準の吸口体200(付属品)を接続したスティック状態で収納するものであり、ベース71及びスタンド72を備えて構成される。延長管300の周壁内部には、制御装置500(図10)と照射部202(図3)とを接続する2本の通電系統261,261(図10)が配置される。電気掃除機100は、何れも不図示の小型吸口(付属品)、ほうき型吸口(付属品)、延長ホース(付属品)等を接続して用いることができる。吸口体200は、ブラシモータ233(図5)によって回転ブラシ201(図4)が回転するパワーブラシ式である。
【0014】
電気掃除機100は、掃除機本体1、吸口体200、ダストケース2(集塵部)、及び、直流電力を蓄える蓄電池3を備える。掃除機本体1は、本体部10、モータケース11、及びハンドル12を備える。本体部10は、延長管300を通じて吸口体200に接続され、モータケース11に収容されたファンモータ(不図示)が発生させる吸引力により、吸口体200を通して床面のごみが吸い上げられる。吸い上げられたごみは、吸口体200と連通するダストケース2に集塵される。モータが使用する電力は、蓄電池3により供給される。なお、後記する制御装置500(図10)は、掃除機本体1(具体的には本体部10)に備えられる。使用者はハンドル12を把持しながら吸口体200を所望の方向に移動させることで、床面を掃除できる。掃除機本体1は、ハンドル12(図1)の正面側に、ボタン124,125(第1操作部。図2)を含む操作部121が設置される。
【0015】
図2は、本発明の実施例1に係る電気掃除機100に備えられる操作部121の上面図である。操作部121は、モータケース11(図1)に収容されたファンモータの回転速度制御により、吸込口203(図4)を通じた吸引力を異なるようにすることで、運転モードを変更するボタン124,125を備える。ボタン124は、所定の吸引力となるようにモータを駆動させる。ボタン125は、ボタン124の押下時の吸引力より強い吸引力となるようにモータを駆動させる。
【0016】
モータケース11(図1)に収容されたモータ、及び、回転ブラシ201(図4)の双方の駆動停止中、ボタン124,125の押下により、対応する吸引力となるようにモータが駆動する。回転ブラシ201は、何れの場合も同じ回転速度で回転する。また、電気掃除機100の運転中、ボタン124,125を所定時間内(例えば5秒以内)に所定時間以上押下(例えば1秒以上長押し)することで、これらの駆動力をそれぞれ所定時間上昇させるように構成される。
【0017】
操作部121は、蓄電池3(図1)の電池残量低下を点滅により報知するランプ122と、吸引力低下の検知によってダストケース2に収容されたフィルタ(不図示)の目詰まりを点滅により報知するランプ123とを備える。更に、操作部121は、モータケース11(図1)に収容されたモータ、及び、回転ブラシ201(図4)の双方の駆動停止により電気掃除機100の運転を停止するボタン126を備える。
【0018】
詳細は後記するが、吸口体200(図3)は、被掃除面に向けて光を照射可能な照射部202(図3)を備え、現在の運転モードに対応するボタン124,125の押下により、照射部202が発光する。ボタン124,125が押下され、モータ、及び回転ブラシ201が動作中は、照射部202が発光し、床面を照射するようにしているので、床面上にあるごみの認識がし易くなり、電気掃除機100の操作性を向上できる。
【0019】
次に吸口体200の構成について説明する。図3は、本発明の実施例1に係る吸口体を上方から見た斜視図であり、図4は、本発明の実施例1に係る吸口体を下方から見た斜視図である。図5は、上ケース及びレンズ固定部材を取外した状態において吸口体を上方から見た斜視図であり、図6は、図5においてレンズ固定部材を装着した状態を示す吸口体の斜視図である。図7は、上ケース及びバンパーを取外した状態における吸口体の前部を拡大した側面図であり、図8は、上ケースを裏面側から見た斜視図である。
【0020】
吸口体200は、被掃除面に向かって開口した吸込口203を有する下ケース241と、下ケース241の上方に配置された上ケース242と、下ケース241及び上ケース242の後方に配置された接続管205を備えている。接続管205の内部には、吸込口203と連通する風路204が形成されている。下ケース241及び上ケース242との間には、下ケース241及び上ケース242の気密を保持すると共に、吸口体200が家具等に衝突した際の衝撃を吸収するバンパー248が備えられている。
【0021】
下ケース241の吸込口203には、ブラシモータ233によって回転駆動される回転ブラシ201が備えられている。下ケース241の下方には、被掃除面と接し吸口体200を移動させるための車輪206,207と、吸口体200が被掃除面から離れた時に回転ブラシ201の回転を停止させるための床面スイッチ234が備えられている。
【0022】
吸口体200の前方には、光を正面側に照射可能に構成された照射部202が備えられている。照射部202は、発光部として複数のLED221(LED2211a,2211b,2212a,2212b)と、複数のLED221の前方に配置され、複数のLED221のそれぞれに対応した複数のレンズ223(レンズ2231a,2231b,2232a,2232b)から構成されている。複数のレンズ223(レンズ2231a,2231b,2232a,2232b)はレンズ固定部材220に固定されている。このレンズ固定部材220は照射部202の一部を構成している。
【0023】
複数のLED221(LED2211a,2211b,2212a,2212b)は、基板222に実装されている。基板222は、基板222の平面部が上下方向に立設するように、支持部231によって支持される。支持部231は、基板222の長手方向両端部を正面及び裏面から挟むように下ケース241に形成されている。また、支持部231は、図7に示すように上方が下方に対して吸口体200の前方に位置するように所定の角度θ1だけ傾斜するように配置されている。そして、支持部231に装着される基板222も同様に、基板222の平面部の上方が下方に対して吸口体200の前方に位置するように所定の角度θ1だけ傾斜するように配置されている。
【0024】
実施例1では、基板222の平面部を上下方向に立設するようにしているので、複数のLED221を前方に向けることができる。また、基板222は吸口体200の左右方向の全幅に至らず、中央部に配置している。
【0025】
基板222の上方に位置する端面には、複数の凹部243が形成されている。
【0026】
レンズ固定部材220は、前方の平面部が垂直な方向である上下方向に立設するように配置される。レンズ固定部材220の上方には、吸口体200の後方に向かって延びた複数の延設部2201が形成され、さらに複数の延設部2201のそれぞれには、延設部2201の中央部から吸口体200の後方に向かって延びた複数の凸部2202が形成されている。凸部2202の左右両側には、肩部2203が形成されている。レンズ固定部材220の下方には、下方に向かって突出した突起部2204が形成されている。
【0027】
レンズ固定部材220を吸口体200の下ケース241に固定するにあたっては、まずレンズ固定部材220の突起部2204を下ケース241に形成した溝部244に挿入する。これによって、レンズ固定部材220は下ケース241に支持される。そして、レンズ固定部材220の凸部2202を基板222の凹部243に挿入するようにする。その後、下ケース241の上方から上ケース242を装着する。図8に示すように、上ケース242の裏面には、上方に向かって凹んだ溝部245と、溝部245の後方であって上ケース242の裏面の上方から下方に向かって突出した複数の基板規制リブ246と、溝部245の前方であって上ケース242の裏面の上方から下方に向かって突出した複数のレンズ固定部材規制リブ247が形成されている。
【0028】
基板222の凹部243にレンズ固定部材220の凸部2202が挿入されると、レンズ固定部材220の左右方向の移動が規制される。また、凸部2202の左右両側に形成した肩部2203が基板222の前方の平面部と接触するので、レンズ固定部材220の後方向の移動が規制される。さらに、下ケース241に上ケース242を装着すると、基板222の上方端部が溝部245に挿入されると共に、基板222の平面部の後方に複数の基板規制リブ246が位置し、基板222の後方への移動が規制される。また、下ケース241に上ケース242を装着すると、レンズ固定部材220が上ケース242によって覆われ、レンズ固定部材220の上方向の移動が規制されると共に、レンズ固定部材220の平面部の後方に複数のレンズ固定部材規制リブ247が位置し、基板222の後方への移動が規制される。吸口体200を移動させて被掃除面の掃除を行うと、レンズ固定部材220が家具等に衝突し、その衝撃力が延設部2201及び肩部2203を介して基板222に伝達され、基板222が破損する恐れがある。しかしながら、実施例1では上ケース242の裏面に複数のレンズ固定部材規制リブ247を備えるようにしているので、レンズ固定部材220が受けた衝撃力をレンズ固定部材規制リブ247で受けることができ、レンズ固定部材220が受けた衝撃力が基板222に伝達し、基板222を破損するのを抑制することができる。
【0029】
以上のように、実施例1の構成によれば、複数のLED221(LED2211a,2211b,2212a,2212b)と複数のレンズ223(レンズ2231a,2231b,2232a,2232b)との位置が固定され、所定の距離が維持されるので、レンズ223に入射するLED221(LED2211a,2211b,2212a,2212b)からの光のばらつきを抑制でき、被掃除面に対する照射範囲を安定することができる。また、レンズ固定部材220が衝撃力を受けた場合であっても、レンズ固定部材規制リブ247で受けることができるので、複数のLED221(LED2211a,2211b,2212a,2212b)と複数のレンズ223(レンズ2231a,2231b,2232a,2232b)との距離が変化するのを抑制することができる。
【0030】
実施例1では、上述したように、基板222は上方が下方に対して吸口体200の前方に位置するように所定の角度θ1だけ傾斜するように配置されている。これに合わせ、レンズ2232bの中心線L1は、図7に示すように前方が後方に対して下方に向くように、水平線に対して所定の角度θ2だけ傾斜させている。このように構成することにより、実施例1ではレンズ2232bを通したLED2212bの光を被掃除面に向けて照射することができる。なお、図示はしないが、レンズ2231a,2231b,2232aについても同様に、レンズ2231a,2231b,2232aの中心線を被掃除面に向くように傾斜させている。
【0031】
実施例1では複数のLED2211a,2211b及びLED2212a,2212bを備えており、これらが交互に配置されている。実施例1では、LED2211a,2211bに白色のLEDを用い、LED2212a,2212bに緑色のLEDを用いる。すなわち、吸口体200の左右方向(幅方向)の左から右にかけて、緑・白・緑・白・緑・白・緑の順にLEDが並んでいる。換言すると、吸口体200に配置するLEDは、中央部に白色、その左右両側に緑色を配置した緑・白・緑の組合せとなるように配置している。
【0032】
そして、実施例1では、緑色及び白色の複数色のLEDを同時に点灯させ、複数色のLEDを混合させた状態で床面に光を照射している。緑色及び白色の複数色のLEDを選択した理由について説明する。
【0033】
図9は、照射する光の色相を説明するマンセル表色系の色相環(以下、適宜マンセル色環という)である。マンセル色環は中心P0を有する環状のマンセル色票であり、図示の例では、円周を20等分した20色相を有する。円周上の記号は色相(「色」と同義)を表し、Rは赤、Yは黄色、Gは緑、Bは青、Pは紫を意味する。
【0034】
例えば、被掃除面が吸収し易い色である吸収色の光を照射部202から照射すれば、被掃除面が光を吸収するため、ごみによって反射した光を使用者が視認し易くなり、ごみの位置を確認し易くできる。そこで、例えば、照射部202は、被掃除面の吸収色の光として、図8に示すマンセル色環において、20色相のうちの、被掃除面の色に対応する色相に隣接する2つの色相間の領域以外の領域に属する色相を有する非同系色の光を照射する。非同系色の光を照射することで被掃除面に光を吸収し易くさせて反射を抑制し、ごみを目立たせ易くできるため、ごみの視認性を向上できる。
【0035】
例えば、被掃除面の色相C1についていえば、20色相のうちの色相C1に隣接する色相は、色相5YR及び色相10YRである。色相C1を含む色相5YRと色相10YRとの間の領域が被掃除面の色相C1と同系色であると定義すると、照射部202は、当該同系色以外の領域に属する色相である非同系色の光を照射する。なお、単色の光が照射される場合には、非同系色の中から任意の1色が、複数色の光Lが照射される場合には任意の2色以上が選択可能である。
【0036】
実施例1では、照射部202は、緑色(5G)及び白色の複数色のLEDを同時に点灯させ、複数色のLEDを混合させた状態で床面に光を照射している。
【0037】
例えば、被掃除面が木床のフローリングの場合、一般的に、黄色(5Y)と紫色(5P)との間の木の色に近い。このため、色相5Yと色相5Pとの間の領域以外の領域の色相の光、具体的には例えば、黄緑色(7.5GY)と青色(5B)との間の色相の光を照射すれば、ごみと被掃除面との色差を大きくでき、ごみを目立たせ易くできる。そこで、実施例1では照射部202として緑色のLEDを備えるようにしている。
【0038】
図10は、本発明の実施例1に係る電気掃除機のブロック図である。掃除機本体1の制御装置500には、操作部121のボタン124,125及び蓄電池3が接続されている。操作部121のボタン124,125が押下されると、制御装置500は、蓄電池3から電力供給を受け、延長管300に配線された2本の通電系統261,261を通じて吸口体200への電力供給を行う。吸口体200では接続端子251で電力を受け、基板222に電力を供給する。LED2212は、基板222に供給された電力により、緑色の光を発光する。一方、LED2211a,2211bは、入力調整部2215により調整された電力により、白色の光を発光する。LED2212a,2212bでは基板222で受けた最大電力の状態で緑色の光を発光するが、LED2211a,2211bでは最大電力から絞られた電力の状態で白色の光を発光する。白色のLED2211a,2211b及び緑色のLED2212a,2212bを同時に最大電力で発光させると、色むらが生じてしまい、ごみの視認性が低下する。そこで、実施例1では、入力調整部2215により白色のLED2211a,2211bに供給する電力を調整して、色むらを抑制するように調整する。白色のLED2211a,2211b及び緑色のLED2212a,2212bには、光の発光量に個体差があるので、入力調整部2215では抵抗値を変更して個別に色のLED2211a,2211bに供給する電力を調整する。このように構成することにより、実施例1では色むらを抑制した光を得ることができる。
【0039】
次に、照射部202の一部を構成するレンズ固定部材220の構成について説明する。図11は、本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を前方から見た正面図であり、図12は、本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を後方から見た背面図である。図13は、本発明の実施例1に係るレンズ固定部材を下方から見た下面図であり、図14は、図12のXIV-XIV線断面図である。
【0040】
上述したように、実施例1では、レンズ2231a,2231bからは白色の光が照射され、レンズ2232a,2232bからは緑色の光が照射される。レンズ2231a,2231bとレンズ2232a,2232bは、光の入射側(後方側)から光の照射側(前方側)に向かって径が拡大するように円錐状に形成されている。また、レンズ2231a,2231bとレンズ2232a,2232bは光の照射側(前方側)におけるレンズの直径が異なっている。すなわち、レンズ2231a,2231bの照射側(前方側)の直径D1は、レンズ2232a,2232bの照射側(前方側)の直径D2よりも大きく形成している(D1>D2)。さらにレンズ2231a,2231bとレンズ2232a,2232bは、照射側(前方側)から入射側(後方側)に向かって凹んでおり、白色の光を照射するレンズ2231a,2231bの照射側(前方側)の曲率半径2231aR,2231bRは、緑色の光を照射するレンズ2232a,2232bの照射側(前方側)の曲率半径2232aR,2232bRよりも大きく形成している(2231aR>2232aR、2231bR>2232bR)。
【0041】
このため、白色の光を照射するレンズ2231a,2231bは、集光度合いが高くなっている。一方、緑色の光を照射するレンズ2232a,2232bは、白色の光を照射するレンズ2231a,2231bより曲率半径が小さいので、集光度合いが低くなっている。換言すると、緑色の光を照射するレンズ2232a,2232bは、白色の光を照射するレンズ2231a,2231bよりも画角が広い。実施例1では画角が異なるレンズを組み合わせて使用しているので、被掃除面に吸収される緑色の光を拡散させ、白色の光を絞って明るくしごみの視認性を向上させている。前述したよう、白色のLED2211a,2211bは、入力調整部2215により供給される電力が調整されているので、緑色のLED2212a,2212bに対し過度に照射されることがなく、色むらを抑制することができる。
【0042】
以上説明したように、実施例1によれば、白色のLED2211a,2211bと緑色のLED2212a,2212bとを同時に点灯させて被掃除面を照射するようにしているので、例えばフローリングにおいては緑色のLED2212a,2212bの光をフローリングに吸収し易くさせて反射を抑制し、白色のLED2211a,2211bの光によってごみを目立たせ易くできるため、ごみの視認性を向上させた電気掃除機を提供することができる。
【実施例2】
【0043】
図15及び図16を用いて、本発明の実施例2について説明する。実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図15は、本発明の実施例2に係るレンズ固定部材の正面図であり、図16は、本発明の実施例2に係るレンズ固定部材を後方から見た斜視図である。実施例2において実施例1と異なるところは、左右方向に配置したレンズの形状にある。
【0044】
実施例1では、レンズ固定部材220に配置したレンズを全て円錐状に形成したが、実施例2では吸口体200の中央部のレンズを円錐状に形成し、円錐状に形成したレンズの左右方向両側のレンズを吸口体200の左右方向に延びた横長状に形成している。
【0045】
円錐状に形成したレンズ2231a,2232aの左右方向両側には、横長レンズ2233が形成されている。横長レンズ2233の後方(背面)には、左右方向に延びた入射凹部2233dが形成されている。レンズ2231a及びレンズ2232aに対向するLED2211a,2212a以外の複数のLED(白色のLED2211b、緑色のLED2212b)は、入射凹部2233dと対向させる。横長レンズ2233から入射した白色の光及び緑色の光は、合成されてレンズ固定部材220の前方から横長レンズ2233の全幅に亘って照射され、吸口体200の近傍を照射する。一方、レンズ固定部材220の中央部に配置されたレンズ2231a及びレンズ2232aから照射された光は、横長レンズ2233の照射光よりも離れた位置を照射する。
【0046】
実施例2によれば、レンズ固定部材220の中央部に円錐状のレンズ2231a及びレンズ2232aを配置し、レンズ固定部材220の左右方向両側に左右方向に延びた横長レンズ2233を配置するようにしているので、吸口体200の近くの位置にあるごみ及び吸口体200から離れた位置にあるごみの視認性を向上することができる。
【0047】
また、実施例2によれば、レンズ固定部材220の左右方向両側に左右方向に延びた横長レンズ2233を配置したことにより、レンズ固定部材220の幅方向に亘って光を照射でき、吸口体200の幅を認識し易くなる。
【実施例3】
【0048】
図17乃至図18を用いて、本発明の実施例3について説明する。実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図17は、本発明の実施例3に係るレンズ固定部材を前方から見た斜視図であり、図18は、本発明の実施例3に係るレンズ固定部材を後方から見た斜視図であり、図19は、図18のXIX―XIX線断面図である。実施例3において実施例1と異なるところは、レンズ固定部材220の左右方向両側に配置したレンズの形状にある。
【0049】
複数のレンズのうち、吸口体200の中央部に配置したレンズ2231a及びレンズ2232aの照射側(前方側)の曲率半径2231aR,2232aRの中心線は、吸口体200の前方を向いている。
【0050】
吸口体200の中央部に配置したレンズ(レンズ2231a及びレンズ2232a)の左右方向両側に配置したレンズ2231c及びレンズ2232cの照射側(前方側)の曲率半径2231cR,2232cRの中心線は、吸口体200の前方に対し、それぞれ所定の角度θ3、θ4だけ吸口体200の左右方向外側を向くように傾斜させている。実施例3では、角度θ3、θ4を15度としている。レンズ2231cからは白色のLED光が照射され、レンズ2232cからは緑色のLED光が照射される。
【0051】
実施例3によれば、レンズ2231c及びレンズ2232cの照射側(前方側)の曲率半径2231cR,2232cRの中心線を、吸口体200の前方に対し、それぞれ角度θ3、θ4だけ吸口体200の左右方向外側を向くように傾斜させ、白色のLED2211bと緑色のLED2212bとを同時に点灯させて被掃除面を照射するようにしているので、吸口体200の左右両端にあるごみの視認性を向上させることができ、吸口体200の左右両端にあるごみの吸い残しを抑制できる電気掃除機を提供することができる。
【実施例4】
【0052】
図20を用いて、本発明の実施例4について説明する。実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図20は、本発明の実施例4に係るレンズ固定部材を前方から見た正面図である。実施例4において実施例1と異なるところは、レンズ固定部材220の表面にシボ加工を施した点にある。
【0053】
図20において、レンズ固定部材220の少なくとも照射側の表面には、細かい凹凸を形成するシボ加工が施され、レンズ固定部材220の表面が曇ったような状態となっている。実施例3では実施例1と同様、白色のLED光と緑色のLED光を同時に発光させ、白色のLED光に供給する電力を調整して色むらを抑制するようにしているが、シボ加工を施したレンズ固定部材220に白色のLED光と緑色のLED光を入射させると、細かく形成された凹凸による光が乱反射し、白色のLED光と緑色のLED光が混ざり合う。
【0054】
実施例3では、レンズ固定部材220の表面にシボ加工を施すにあたり、レンズ固定部材220の中央部220aのシボ加工を強め、中央部220aから吸口体200の左右方向外側に位置する外側部220bに向かうに従い、シボ加工を弱めるようにしている。
【0055】
実施例3によれば、レンズ固定部材220の表面にシボ加工を施すようにしているので、より色むらの少ない光を被掃除面に照射することができる。
【0056】
なお、シボ加工は施す場合には、レンズ固定部材220の表面全体に均一に施すようにしてもよい。
【0057】
以上説明した実施例1~3では、白色のLED光と緑色のLED光を用いるようにしたが、例えばLED221を全て白色LEDとし、一部のレンズ2232a,2232b,2232cを緑色のレンズを用いるようにしても良い。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【実施例5】
【0059】
図21及び図22を用いて、本発明の実施例5について説明する。実施例1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図21は、本発明の実施例5に係るLED221内のLEDチップの配置図である。図22は、本発明の実施例5との比較のために用いるLEDチップの配置図である。本実施例では、1つのLEDチップを部品中央に内蔵するLEDではなく、図21に示される通り、1つのLEDチップだけで必要な光量が得られない場合に2つ以上のLEDチップを部品中央から外れた位置に並べて内蔵するLEDが市場に多くあるため、LEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)の2つが並んで内蔵されているLED221の使用を想定している。LEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)の中央の黒点を光源とすると、LED221をLEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)が床面と平行になるように配置することで、LEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)の光源について、床面からの高さが同じになるため進行方向に対する照射範囲が重なり、均一に床面を照射することができる。なお、比較として図22に示される通りLED221内のLEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)を床面と垂直に配置すると、LEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)の光源について、床面からの高さが異なるためLEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)の進行方向に対する照射範囲が重ならずに、床面に縞模様ができてしまい、ごみの視認性をよくするという効果を達成しがたくなる。そのため、本実施例ではLEDチップ1(22101)とLEDチップ2(22102)は床面と平行になるように配置することによって、床面を均一に照射し、ごみの視認性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…掃除機本体、2…ダストケース、3…蓄電池、10…本体部、11…モータケース、12…ハンドル、70…支持台、71…ベース、72…スタンド、100…電気掃除機、121…操作部、122,123…ランプ、124,125,126…ボタン、200…吸口体、201…回転ブラシ、202…照射部、203…吸込口、204…風路、205…接続管、206,207…車輪、220…レンズ固定部材、220a…中央部、220b…外側部、2201…延設部、2202…凸部、2203…肩部、2204…突起部、221,2211a,2211b,2212a,2212b…LED、2215…入力調整部、222…基板、223,2231a,2231b,2231c,2232a,2232b…レンズ、2231aR,2231bR,2231cR,2232aR,2232bR,2232cR…曲率半径、2233…横長レンズ、2233d…入射凹部、231…支持部、233…ブラシモータ、234…床面スイッチ、241…下ケース、242…上ケース、243…凹部、244,245…溝部、246…基板規制リブ、247…レンズ固定部材規制リブ、248…バンパー、251…接続端子、261…通電系統、300…延長管、500…制御装置
図1
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