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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A01D41/127 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021082327
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175696
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀 高範
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278539(JP,A)
【文献】特開2004-024056(JP,A)
【文献】特開2017-176061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0245557(US,A1)
【文献】特開2005-211045(JP,A)
【文献】特開昭53-122533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、
前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、
前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、
前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、
前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え
前記推定部は、前記一番物回収量と前記二番物回収量との和に基づいて前記作物の量を推定し、
前記一番物回収量と前記二番物回収量との和は、前記作物が前記脱穀装置に入ってきたタイミングよりも第1時間後に回収された前記一番物に係る一番物回収量と前記タイミングよりも第2時間後に回収された前記二番物に係る二番物回収量との和であり、
前記推定部は、前記タイミングよりも第3時間前に回収された前記二番物に係る二番物回収量を減じて推定する管理システム。
【請求項2】
前記第1時間は、前記作物が前記脱穀装置に入ってから前記一番物回収部に回収され始めるまでの時間であり、
前記第2時間は、前記作物が前記脱穀装置に入ってから前記二番物回収部に回収され始めるまでの時間である請求項に記載の管理システム。
【請求項3】
前記第3時間は、前記二番物が前記二番物回収部により回収されてから前記選別部に還元されるまでに要する時間である請求項1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記収穫機の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報と前記推定部により推定された前記作物の量とを互いに関連付けたマップを生成するマップ生成部と、を備える請求項1からのいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項5】
圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、
前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、
前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、
前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、
前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え、
定された前記作物の量に基づいて、前記脱穀装置の設定を変更可能な機器設定値である脱穀パラメータを設定する設定部を備える管理システム。
【請求項6】
圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、
前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、
前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、
前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、
前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え、
推定された前記作物の量に基づいて、機体の走行速度を制御する走行制御部を備える管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の作物を収穫する収穫部と、当該収穫部によって収穫された作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の作物を収穫する収穫機が利用されている。このような収穫機として、例えば特許文献1に記載のコンバインがある。
【0003】
特許文献1に記載されるコンバインは、刈取部で刈り取った穀稈を脱穀部で脱穀処理して穀粒として回収し、その穀粒を穀粒搬送装置によって搬送して貯留タンクに貯留するように構成されている。また、このコンバインは、穀粒搬送装置における穀粒搬送に伴う駆動負荷を検出し、検出された駆動負荷に基づいて穀粒収穫量を求めるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-333526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、コンバインの収穫作業を制御するにあたり、収穫量に基づいて制御することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載されるコンバインは、揺動選別板から漏下した穀粒を一番物として回収するだけでなく、一番物として回収されなかった穀粒を二番物として回収し、選別装置上に還元するように構成されている。このため、収穫された穀粒は、脱穀装置において一時的に滞留するものがあり、特許文献1に記載の技術あっては、正確に収穫量を求めることができず、改良の余地がある。
【0006】
そこで、収穫機の脱穀装置に導入された穀粒の量を把握することが可能な収穫機を管理する管理システムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る管理システムの特徴構成は、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え、前記推定部は、前記一番物回収量と前記二番物回収量との和に基づいて前記作物の量を推定し、前記一番物回収量と前記二番物回収量との和は、前記作物が前記脱穀装置に入ってきたタイミングよりも第1時間後に回収された前記一番物に係る一番物回収量と前記タイミングよりも第2時間後に回収された前記二番物に係る二番物回収量との和であり、前記推定部は、前記タイミングよりも第3時間前に回収された前記二番物に係る二番物回収量を減じて推定する点にある。
【0008】
脱穀装置に導入された(入ってきた)作物の量は、脱穀装置から出ていく量と同程度の量であると想定される。そこで、上述した特徴構成を有する管理システムによれば、脱穀装置から出ていく一番物の回収量と二番物の回収量とに基づいて、脱穀装置に入ってきた作物の量を推定するので、脱穀装置に導入された穀粒の量を把握することが可能となる。
【0009】
【0010】
このような構成とすれば、推定部が脱穀装置に入ってきた作物の量の推定は簡素な演算で正確に行うことが可能となる。また、高性能な演算処理ユニットを必要としないので、安価な構成で実現できる。
【0011】
【0012】
このような構成とすれば、脱穀装置に作物が入ってから出ていくまでの時間を考慮して脱穀装置に入ってきた作物の量を推定することが可能となる。
【0013】
また、前記第1時間は、前記作物が前記脱穀装置に入ってから前記一番物回収部に回収され始めるまでの時間であり、前記第2時間は、前記作物が前記脱穀装置に入ってから前記二番物回収部に回収され始めるまでの時間であると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、脱穀装置に作物が入ってから出ていくまでの時間を考慮して脱穀装置に入ってきた作物の量を推定できるので、より正確に推定することが可能となる。
【0015】
【0016】
このような構成とすれば、脱穀装置に作物が入る前に、二番物として回収されていた作物の量を考慮して脱穀装置に入ってきた作物の量を推定することが可能となる。
【0017】
また、前記第3時間は、前記二番物が前記二番物回収部により回収されてから前記選別部に還元されるまでに要する時間であると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、脱穀装置に作物が入ってから選別部に還元されるまでの時間を考慮して脱穀装置に入ってきた作物の量を推定できるので、より正確に推定することが可能となる。
【0019】
また、前記収穫機の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報と前記推定部により推定された前記作物の量とを互いに関連付けたマップを生成するマップ生成部と、を備えると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、作物の量を示す情報が付加された圃場のマップを生成することができる。このようなマップを、次の圃場での栽培に利用することで、例えば収量の増大を図ることが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る管理システムの特徴構成は、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え、推定された前記作物の量に基づいて、前記脱穀装置の設定を変更可能な機器設定値である脱穀パラメータを設定する設定部を備える点にある。
【0022】
このような特徴構成とすれば、一番物回収量と二番物回収量とに基づいて設定された脱穀パラメータにより、脱穀制御を行うことができる。したがって、収穫機が適切に選別された選別処理物を貯留することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る管理システムの特徴構成は、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された前記作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムであって、前記脱穀装置は、前記作物を脱穀する脱穀部と、前記脱穀部の下方に設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する選別部と、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有するものであり、前記一番物の回収量を一番物回収量として検出する一番物センサと、前記二番物の回収量を二番物回収量として検出する二番物センサと、前記一番物回収量と前記二番物回収量とに基づいて、前記収穫部から前記脱穀装置に入ってきた前記作物の量を推定する推定部と、を備え、推定された前記作物の量に基づいて、機体の走行速度を制御する走行制御部を備える点にある。
【0024】
このような構成とすれば、一番物回収量と二番物回収量とに基づいて推定された作物の量により、収穫機が収穫する作物の量を設定することができる。したがって、脱穀装置に搬送される作物の量を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コンバインの右側面図である。
図2】脱穀装置の縦断左側面図である。
図3】穀粒タンク、揚穀装置、及び脱穀装置の正面図である。
図4】一番物センサの設置例を示す図である。
図5】二番物センサの設置例を示す図である。
図6】管理システムの構成を示すブロック図である。
図7】脱穀装置に入ってきた作物の量の推定に係るモデル図である。
図8】脱穀装置に入ってきた作物の量の推定で利用される一番物の回収量と二番物の回収量とを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る管理システムは、圃場の作物を収穫する収穫部と、当該収穫部によって収穫された作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理するように構成されている。以下、本実施形態の管理システム1について説明する。また、本実施形態では、収穫機として、コンバイン3を例に挙げて説明する。
【0027】
図1は本実施形態に係るコンバイン3の全体右側面図である。図2は本実施形態に係るコンバイン3が備える脱穀装置10の縦断左側面図である。なお、以下では、本実施形態のコンバイン3について、脱穀装置10に、収穫された作物の全稈を投入するコンバイン、所謂普通型コンバインを例に挙げて説明する。もちろん、コンバイン3は自脱型コンバインであっても良い。また、本実施形態では、クローラ式のコンバインを例に挙げて説明するが、ホイール式のコンバインであっても良い。
【0028】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味するものとする。更に、「上」(図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(図1に示す矢印Dの方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。また、「左」は機体左側、「右」は機体右側である。
【0029】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、コンバイン3は、収穫部H、脱穀装置10、クローラ式の走行装置11、運転部12、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール(「位置情報取得部」の一例)90を備えている。
【0030】
走行装置11は、コンバイン3における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン3に搭載されたエンジンEからの動力によって駆動する。そして、コンバイン3は、走行装置11によって自走可能である。
【0031】
脱穀装置10、運転部12、及び穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12にはオペレータが搭乗可能である。穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール90は運転部12の上面に取り付けられている。
【0032】
収穫部Hは、コンバイン3における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、切断装置15及びリール17を含んでいる。
【0033】
切断装置15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。切断装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0034】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。コンバイン3は、切断装置15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0035】
収穫部Hにより収穫された作物(刈取穀稈)は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置10へ搬送される。
【0036】
脱穀装置10において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0037】
また、図1に示されるように、運転部12には、通信端末4が配置されている。通信端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。図1では、通信端末4は、運転部12に固定されている状態が示されるが、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン3の機外に位置していても良い。
【0038】
〔脱穀装置の構成〕
図2に示されるように、脱穀装置10は、扱胴22によって作物を脱穀する脱穀部41と、脱穀処理物を揺動選別処理する選別部42と、一番物回収部26と、二番物回収部27と、二番物還元装置32とを備える。
【0039】
脱穀部41は、脱穀装置10における上部領域に配置され、脱穀部41の下方に、受網23が設けられ、選別部42は、受網23の下方に設けられる。選別部42は、受網23から漏下してきた脱穀処理物を、回収すべき穀粒を含む選別処理物と、排藁等の排出物とに選別する。
【0040】
脱穀部41は、脱穀装置10の左右の側壁と、天板53と、受網23とに囲われた扱室21を備える。扱室21には、回転によって作物を脱穀処理する扱胴22と、複数の送塵弁53aとが備えられている。搬送部16によって搬送された作物は、扱室21に投入され、扱胴22によって脱穀処理される。扱胴22によって連れ回される作物は、送塵弁53aの送り作用によって後方に向けて移送される。
【0041】
送塵弁53aはプレート状であり、天板53の内面(下面)に前後方向に沿って所定の間隔で設けられる。送塵弁53aは、平面視で回転軸心Xに対して傾斜する姿勢で設けられる。そのため、それぞれの送塵弁53aは、扱室21において扱胴22と共に回転する刈取穀稈を後側に移動させる力を作用させる。また、送塵弁53aは、回転軸心Xに対する傾斜角度を調整することができる。扱胴22内を作物が後方に送られる速度は、送塵弁53aの傾斜角度により決まる。また、作物が脱穀される脱穀効率は、作物が扱胴22内を送られる速度にも影響される。その結果、作物が脱穀される処理能力は、様々な手段を用いて調整することができるが、送塵弁53aの傾斜角度を変更することを1つの手段として調整することができる。特に図示はしないが、送塵弁53aの傾斜姿勢を変更制御可能な送塵弁制御機構が備えられており、送塵弁53aの傾斜角度を自動的に変更することが可能である。
【0042】
選別部42は、シーブケース33を有する揺動選別装置24と唐箕19とを備える。唐箕19は、選別部42の前部領域の下部領域に設けられ、揺動選別装置24の前側から後方に向かって、処理物の搬送方向に沿って選別風を発生させる。選別風は、比較的比重の軽い排藁等をシーブケース33の後側に向けて送り出す作用を有する。また、揺動選別装置24においては、揺動駆動機構43によってシーブケース33が揺動することにより、シーブケース33の内部の脱穀処理物が後方に移送されながら揺動選別処理が行われる。このような理由から、以下の説明では、揺動選別装置24において、処理物の搬送方向の上流側が前端あるいは前側と称され、下流側が後端あるいは後側と称される。なお、唐箕19の選別風は強度(風量、風速)を変更することができる。選別風を強くすると、脱穀処理物を後方に送り出し易くなり、選別速度が高くなる。逆に、選別風を弱くすると、脱穀処理物が長くシーブケース33内に留まり、選別精度が高くなる。そのため、唐箕19の選別風は強度を変更することにより、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整することができる。特に図示はしないが、唐箕19の選別風の強度を変更制御可能な唐箕制御機構が備えられており、唐箕19の選別風の強度を自動的に変更することができる。
【0043】
シーブケース33の前半部分には、第一チャフシーブ38が備えられ、シーブケース33の後半部分には、第二チャフシーブ39が備えられている。一般的な構成であるため特に説明はしないが、シーブケース33には、第一チャフシーブ38等以外に、グレンパンやグレンシーブ40が備えられている。受網23を漏下した脱穀処理物は、第一チャフシーブ38や第二チャフシーブ39に落下する。脱穀処理物のほとんどは、受網23から第一チャフシーブ38を含むシーブケース33の前半部分に対して漏下してきて、シーブケース33の前半部分によって粗選別及び精選別される。一部の脱穀処理物は、受網23から第二チャフシーブ39に対して漏下してきたり、第一チャフシーブ38において漏下せずに第二チャフシーブ39まで移送されてきたりして、第二チャフシーブ39において漏下選別される。
【0044】
第一チャフシーブ38の下方には、上記グレンシーブ40が備えられている。すなわち、揺動選別装置24は、第一チャフシーブ38の下方に設けられたグレンシーブ40を備えている。グレンシーブ40は、パンチングメタルや網体等の多孔部材によって構成され、第一チャフシーブ38から漏下してきた脱穀処理物を受け止めて漏下選別する。
【0045】
シーブケース33の前半部分の下方に、スクリュー式の一番物回収部26が備えられ、シーブケース33の後半部分の下方に、スクリュー式の二番物回収部27が備えられている。シーブケース33の前半部分によって選別処理されて漏下してきた一番物、すなわち、選別部42によって選別された選別処理物のうちの一番物は、一番物回収部26によって回収されて、穀粒タンク14の側(機体左右方向右側)に向けて搬送される。シーブケース33の後半部分(第二チャフシーブ39)によって選別処理されて漏下してきた二番物(一般的に選別処理精度が低く、切藁などの比率が高い)、すなわち、選別処理物のうちの二番物は、二番物回収部27によって回収される。二番物は、脱穀処理物のうち、選別処理物として選別されなかった脱穀処理物が相当する。二番物回収部27によって回収された二番物は、二番物還元装置32によって選別部42の前部に還元され、シーブケース33によって再選別される。
【0046】
第一チャフシーブ38には、脱穀処理物の移送(搬送)方向(前後方向)に沿って並んで設けられた複数の板状のチャフリップが備えられている。各チャフリップは、後端側ほど斜め上方に向かう傾斜姿勢で配置されている。チャフリップの傾斜角度は可変であり、傾斜角度を急にするほど、隣り合うチャフリップ同士の間隔が広がり、脱穀処理物が漏下し易くなる。すなわち、複数のチャフリップの姿勢を変更することで漏下開度を変更可能に構成されている。そのため、チャフリップの傾斜角度を調整することにより、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整することができる。チャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能なリップ制御機構が備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0047】
第二チャフシーブ39も、第一チャフシーブ38と同様の構成である。第二チャフシーブ39のチャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能な角度制御機構も備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0048】
図3は穀粒タンク14、揚穀装置29、及び脱穀装置10の正面図であり、図4は揚穀装置29の縦断右側面図である。図3及び図4に示すように、一番物回収部26によって回収された選別処理物を穀粒タンク14に搬送する揚穀装置29が備えられている。揚穀装置29は、脱穀装置10と穀粒タンク14との間に配置され、上下方向に沿った姿勢で立設されている。揚穀装置29は、バケットコンベア式に構成されている。揚穀装置29によって揚送された選別処理物は、揚穀装置29の上端部において、横送り搬送装置30に受け渡される。横送り搬送装置30は揚穀装置29に隣り合う状態で連結されている。横送り搬送装置30は、スクリューコンベア式に構成され、穀粒タンク14の前部左側の壁部から穀粒タンク14の内部に突っ込まれている。横送り搬送装置30は、機体横向き軸芯Y1まわりに回転するスクリュー部30Sを有する。横送り搬送装置30のタンク内部側の端部には穀粒放出装置30Aが備えられ、選別処理物(穀粒)は、穀粒放出装置30A内に設けられる板状の放出回転体30Bを介して穀粒タンク14内に投擲される。
【0049】
揚穀装置29においては、図3及び図4に示すように、駆動スプロケット29Aと従動スプロケット29Bとにわたって巻き掛けられた無端回動チェーン29Cの外周側に複数のバケット31が一定間隔で取り付けられている。揚穀装置29は、選別処理物が収納されたバケット31が上昇する送り経路29Dと、選別処理物を横送り搬送装置30に排出した後のバケット31が下降する戻り経路29Eとを備える。送り経路29Dと戻り経路29Eとは、送り経路29Dが後側になるように、穀粒タンク14の左側壁14aに沿って並んで配置される。
【0050】
揚穀装置29と横送り搬送装置30との間に一番物センサ60が備えられている。一番物センサ60は、揚穀装置29の上端部において、バケット31から横送り搬送装置30に受け渡される選別処理物の量を測定するように配置される。一番物センサ60は、揚穀装置29及び横送り搬送装置30によって搬送される穀粒、すなわち一番物回収部26により回収された一番物の回収量を一番物回収量として検出する。一番物センサ60は、揚穀装置29の天板61に設けられた膨出部65に備えられ、膨出部65から揺動可能に支持されるアーム部63を有する。バケット31から投擲された穀粒によりアーム部63が揺動し、揺動角度に基づいて一番物の回収量を検出する。
【0051】
上述したように、二番物は二番物還元装置32によって揺動選別装置24の前部である上流側に還元される。具体的には、図5に示されるように、二番物還元装置32の二番物排出口32Aは、円弧状の受網23における径方向外側の位置(受網23の側方であって、二番物が受網23を通らない位置)に設けられ、この位置において二番物が排出される。二番物センサ70は、二番物回収部27によって回収された二番物の回収量を二番物回収量として検出する。したがって、本実施形態では、二番物センサ70は、二番物還元装置32の二番物排出口32Aに設けられる。
【0052】
図5に示されるように、二番物排出口32Aは受網23側に向けて設けられる。図5に示されるように、二番物排出口32Aの近傍には、二番物還元装置32を構成するスクリューとともに回転する回転羽根32Bが設けられ、二番物還元装置32によって搬送された二番物は、脱穀部41の側壁50に形成された挿通孔を介して回転羽根32Bによって二番物排出口32Aから径方向外側に放出される。放出された二番物は、二番物センサ70が有する揺動アーム部72に向けて案内部32Cにより案内される。これにより、二番物が揺動アーム部72を揺動し、揺動角度に基づいて二番物の回収量を測定する。
【0053】
次に、管理システム1による作物の量の推定について説明する。図6は管理システム1による作物の量の推定に係る機能部を示すブロック図である。管理システム1は、図6に示されるように、一番物センサ60、一番物検出結果記憶部68、二番物センサ70、二番物検出結果記憶部78、推定部80、設定部85を備えて構成される。
【0054】
一番物センサ60は、上述したように、一番物回収部26により回収された一番物の回収量を検出する。一番物センサ60の検出結果は、検出された時間を示す時間情報と関連付けされて、順次、一番物検出結果記憶部68に記憶される。一番物検出結果記憶部68に記憶された一番物センサ60の検出結果は、所定時間経過すると消去しても良いし、ユーザの消去指示に応じて消去するように構成しても良い。
【0055】
二番物センサ70は、上述したように、二番物回収部27により回収された二番物の回収量を検出する。二番物センサ70の検出結果は、検出された時間を示す時間情報と関連付けされて、順次、二番物検出結果記憶部78に記憶される。二番物検出結果記憶部78に記憶された二番物センサ70の検出結果は、所定時間経過すると消去しても良いし、ユーザの消去指示に応じて消去するように構成しても良い。
【0056】
推定部80は、一番物回収量と二番物回収量とに基づいて、収穫部Hから脱穀装置10に入ってきた作物の量を推定する。一番物回収量は上述した一番物検出結果記憶部68から取得され、二番物回収量は上述した二番物検出結果記憶部78から取得される。収穫部Hから脱穀装置10に入ってきた作物とは、収穫部Hにより収穫され、搬送部16を介して脱穀装置10に搬送されてきた作物にあたる。
【0057】
したがって、推定部80は、一番物検出結果記憶部68から取得した一番物回収量と二番物検出結果記憶部78から取得した二番物回収量とに基づいて、収穫部Hにより収穫され、搬送部16を介して脱穀装置10に搬送されてきた作物の量を推定する。
【0058】
ここで、作物の量の推定について、図7のモデル図を用いて説明する。任意の時点(あるいは任意の時刻)(「n」とする)において、収穫部Hから搬送部16を介して脱穀装置10に搬送されてきた作物の量をG(n)、一番物センサ60により検出された一番物の回収量をF(n)、二番物センサ70により検出された二番物の回収量をS(n)とする。
【0059】
時点nにおいて、搬送部16を介して脱穀装置10に搬送されてきた作物の量は、上述したようにG(n)となる。このG(n)の作物は脱穀装置10において脱穀処理されるが、脱穀装置10から一番物及び二番物として回収され、脱穀装置10から排出される。一番物として回収されるには、時点nから時間αだけ経過した後となり、二番物として回収されるには、時点nから時間βだけ経過した後となる。このため、一番物センサ60の検出結果としては、時点nから時間αが経過した後の検出結果、すなわちF(n+α)となる。同様に、二番物センサ70の検出結果としては、時点nから時間βが経過した後の検出結果、すなわちS(n+β)となる。
【0060】
したがって、推定部80は、一番物回収量と二番物回収量との和に基づいて作物の量を推定することになる。また、上述したように時間αや時間βを考慮すると、換言すれば、一番物回収量と二番物回収量との和は、作物が脱穀装置10に入ってきたタイミング(上記「時点n」に相当)よりも第1時間(上記「時間α」に相当)後に回収された一番物に係る一番物回収量とタイミングよりも第2時間(上記「時間β」に相当)後に回収された二番物に係る二番物回収量との和である。
【0061】
ここで、第1時間(時間α)は、作物が脱穀装置10に入ってから一番物回収部26に回収され始めるまでの時間である。したがって、第1時間は、脱穀装置10と当該脱穀装置10の設定に起因するものとなる。また、第2時間(時間β)は、作物が脱穀装置10に入ってから二番物回収部27に回収され始めるまでの時間である。したがって、第2時間も、脱穀装置10と当該脱穀装置10の設定に起因するものとなる。
【0062】
ここで、脱穀装置10の状況によっては、搬送部16を介して脱穀装置10に作物が搬送されてきた時(時点n)には、二番物回収部27に回収された二番物が二番物還元装置32により脱穀装置10に還元されてきている場合もある。このような二番物は、G(n)の量の作物が脱穀装置10に入ってきたタイミング(時点n)よりも、先に搬送部16を介して脱穀装置10に搬送されてきた作物にあたる。このため、推定部80は、脱穀装置10に作物が入ってきたタイミング(時点n)よりも、第3時間(時間γ)前に二番物回収部27に回収された二番物に係る二番物回収量、すなわちS(n-γ)を減じて推定すると良い。ここで、第3時間(時間γ)は、二番物が二番物回収部27により回収されてから選別部42に還元されるまでに要する時間である。したがって、第3時間は、脱穀装置10と当該脱穀装置10の設定に起因するものとなる。
【0063】
以上、まとめると、あるタイミング(時点n)における、脱穀装置10に入ってきた作物の量及び排出される作物の量は以下の(1)式で表される。
【数1】
【0064】
したがって、あるタイミング(時点n)における、搬送部16を介して脱穀装置10に入ってきた作物の量は、以下の(2)式で表される。
【数2】
【0065】
推定部80は、(2)式に基づきあるタイミング(時点n)における、搬送部16を介して脱穀装置10に入ってきた作物の量を推定することで、正確に推定することが可能となる。
【0066】
なお、上述のように一番物センサ60の検出結果は一番物検出結果記憶部68に記憶され、二番物センサ70の検出結果は二番物検出結果記憶部78に記憶される。上記のように推定部80が推定するために、一番物検出結果記憶部68及び二番物検出結果記憶部78には、図8に示されるように、時系列に沿って検出結果を記憶すると良い。
【0067】
図6に戻り、衛星測位モジュール90は、コンバイン3の位置を示す位置情報を取得する。衛星測位モジュール90は、人工衛星GSからのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号(GPS信号を含む)を受信して、自車位置を取得する。なお、衛星測位モジュール90による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール90に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは、コンバイン3において衛星測位モジュール90と別の箇所に配置されても良い。衛星測位モジュール90により取得された位置情報は、後述するマップ生成部95に伝達される。
【0068】
マップ生成部95は、位置情報と推定部80により推定された作物の量とを互いに関連付けたマップを生成する。マップとは、コンバイン3が収穫作業を行う圃場の位置や形状を示すものであり、本実施形態では、複数の区画に分割してメッシュ状に形成されている。このような区画は、例えばコンバイン3の作業幅に応じて分割すると好適である。このようなマップは、マップ記憶部96に記憶されている場合には、当該マップ記憶部96に記憶されているマップを用いると良い。また、マップ記憶部96に記憶されていない場合には、マップ生成部95が新たに生成し、マップ記憶部96が記憶すると良い。なお、マップ記憶部96は、コンバイン3(例えば通信端末4)に設けても良いし、通信端末4を介して通信する管理システム1が有するサーバ(図示せず)に設けても良い。
【0069】
マップ生成部95は、このようなマップの区画に対して、推定部80により推定された作物の量を関連付ける。これにより、圃場における位置情報と、推定された作物の量とを互いに関連付けたマップを作成することが可能となる。なお、上述したように、推定部80が推定する作物の量は、脱穀装置10に入ってきた作物の量である。このため、作物が脱穀装置10に入ってくるタイミングと、当該作物がコンバイン3に収穫されたタイミングとは、互いに異なる。一方、コンバイン3は、上述したように衛星測位モジュール90により当該コンバイン3の位置情報が取得されるが、上記2つのタイミングが異なるため、脱穀装置10に入ってきた作物の量(推定した量)を、マップの区画に関連付けする場合、マップ生成部95はコンバイン3が作物を収穫してから脱穀装置10に入ってくるまでの間に走行した距離に基づいて、位置情報を修正した上でマップの区画に関連付けすると良い。
【0070】
設定部85は、推定された作物の量に基づいて、脱穀パラメータを設定する。推定された作物の量とは、推定部80により推定された脱穀装置10に入ってくる作物の量である。脱穀パラメータとは、脱穀装置10の設定を変更可能な機器設定値であって、具体的には脱穀装置10が備える脱穀部41の脱穀に関する設定を変更可能なパラメータや、選別部42の選別に関する設定を変更可能なパラメータが相当する。脱穀部41における脱穀に関する設定を変更可能なパラメータとは、扱胴22の回転支軸の回転速度を設定する設定値や、送塵弁53aの天板53に対する取付角度を設定する設定値が相当する。また、選別部42における選別に関する設定を変更可能なパラメータとは、唐箕19からの選別風の風量を設定する設定値や、チャフシーブの漏下開度を設定する設定値や、揺動選別装置24を揺動させる揺動駆動機構43の揺動速度や揺動量を設定する設定値が相当する。更には、コンバイン3の走行速度を増減することで、コンバイン3が刈り取る作物の量を変化させることが可能であるが、このようなコンバイン3の走行速度も、脱穀パラメータに含まれる。
【0071】
設定部85は、作物の量に応じて、適切に脱穀できる脱穀パラメータ、すなわち、受網23から漏下する処理物の量に対する、一番物回収部26により回収される一番物の量の割合である選別度(あるいは選別効率)が適切なものとなるように脱穀パラメータを設定する。
【0072】
脱穀装置10は、設定部85により設定された脱穀パラメータに基づいて脱穀処理を行う。すなわち、設定部85は、上述した脱穀パラメータにより、脱穀装置10の脱穀部41及び選別部42を制御する。したがって、設定部85は、一番物センサ60及び二番物センサ70の夫々の測定結果に基づき、脱穀装置10に入ってくる作物の量が低減するように、フィードバック制御を行っていることとなり、適切に収穫作業を行うことが可能となる。
【0073】
上述したように、コンバイン3の走行速度も脱穀パラメータに含まれる。すなわち、走行速度に応じて、コンバイン3が収穫する作物の量を異ならせることができる。そこで、走行制御部88は、推定された作物の量に基づいて、機体の走行速度を制御すると良い。これにより、脱穀装置10に入ってくる作物の量を変更することが可能となる。
【0074】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、一番物センサ60が、揚穀装置29の天板61に設けられた膨出部65に備えられるとして説明したが、他の場所に設けることも可能である。また、一番物センサ60は、バケット31から投擲された穀粒によりアーム部63が揺動し、揺動角度に基づいて一番物の回収量を測定するとして説明したが、例えば一番物回収部26が有するスクリューを回転させるアクチュエータに作用する負荷(例えば負荷電流)に基づいて算定することも可能である。
【0075】
上記実施形態では、二番物センサ70は、二番物還元装置32の二番物排出口32Aに設けられるとして説明したが、他の場所に設けることも可能である。また、二番物センサ70は、案内部32Cにより案内された二番物により揺動アーム部72が揺動し、揺動角度に基づいて二番物の還元量を測定するとして説明したが、例えば二番物回収部27が有するスクリューを回転させるアクチュエータに作用する負荷(例えば負荷電流)に基づいて算定することも可能である。
【0076】
上記実施形態では、管理システム1が、マップ生成部95を備えているとして説明したが、管理システム1はマップ生成部95を備えずに構成することも可能である。
【0077】
上記実施形態では、設定部85は、推定された作物の量に基づいて、脱穀パラメータを設定するとして説明したが、設定部85を備えずに構成することも可能であって、係る場合には、例えば推定された作物の量を作業者に提示し、提示された作物の量に基づいて作業者が脱穀パラメータを設定するように構成することで、適切に選別処理を行うことが可能である。
【0078】
上記実施形態では、走行制御部88が、推定された作物の量に基づいて、機体の走行速度を制御するとして説明したが、走行制御部88は、推定された作物の量に基づいて、機体の走行速度を制御しないように構成することも可能である。
【0079】
上記実施形態では、一番物検出結果記憶部68、二番物検出結果記憶部78、推定部80、設定部85、マップ生成部95、マップ記憶部96がコンバイン3に設けられているとして説明したが、これらは少なくとも一部が、コンバイン3が通信可能な管理端末に設けられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、圃場の作物を収穫する収穫部と、当該収穫部によって収穫された作物の脱穀処理を行う脱穀装置とを備えた収穫機を管理する管理システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:管理システム
3:コンバイン(収穫機)
10:脱穀装置
26:一番物回収部
27:二番物回収部
32:二番物還元装置
41:脱穀部
42:選別部
60:一番物センサ
70:二番物センサ
80:推定部
85:設定部
88:走行制御部
90:衛星測位モジュール(位置情報取得部)
95:マップ生成部
H:収穫部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8