IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタルモーター株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ベルトアクチュエータのシリーズ
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/06 20060101AFI20240802BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20240802BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F16H19/06
F16H1/16 Z
H02K7/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021102546
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001679
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和志
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140914(JP,A)
【文献】特開平5-180296(JP,A)
【文献】特開2008-101642(JP,A)
【文献】特開2004-266980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/06
F16H 1/16
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと第1プーリーとを有するベルトアクチュエータ機構ユニットと、
前記ベルトを駆動するためのモーターとフェースギヤと第2プーリーとを有するモータープーリーユニットと
を備え、
前記ベルトアクチュエータ機構ユニットが、複数のベルトアクチュエータ機構ユニットからなる第1の群から選択され、
前記モータープーリーユニットが、複数のモータープーリーユニットからなる第2の群から選択される、
ベルトアクチュエータのシリーズ。
【請求項2】
前記第1の群に含まれる複数の前記ベルトアクチュエータ機構ユニットは、直線状のガイドレールと、前記ベルトの一端部が固定され前記ガイドレールに沿って移動可能なガイドブロックとを備え、前記ベルトが前記第1プーリーに架け渡されており、
前記ベルトアクチュエータ機構ユニットによって前記ガイドレールの長さが異なる、
請求項1に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
【請求項3】
前記第2の群に含まれる複数の前記モータープーリーユニットにおいて、前記第2プーリー及び前記フェースギヤが軸支されており、前記モーターの出力軸に設けられたピニオンと前記フェースギヤとが噛合している、請求項1又は2に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
【請求項4】
前記第2の群において、前記モータープーリーユニットによって前記フェースギヤの径が異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
【請求項5】
前記第2の群に含まれる複数の前記モータープーリーユニットは、前記ベルトアクチュエータ機構部との組付けの際に前記ベルトアクチュエータ機構ユニットから引き出された前記ベルトを前記モータープーリーユニット内でガイドするベルト案内部を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトアクチュエータのシリーズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のベルトアクチュエータとしては、例えば、特許文献1に示すようなものがある。
特許文献1は、本出願人の特許であり、一対のプーリー相互間にベルトを架け渡し、一方のプーリーに駆動源から回転動力を伝達して駆動するベルトアクチュエータにおいて、前記駆動源から動力を伝達されるプーリーの支持シャフトにフェースギヤを設け、このフェースギヤに前記駆動源の出力軸に設けられたギヤを噛合させており、前記支持シャフトに、径の異なる複数のフェースギヤを同心状に配設するとともに、これら各フェースギヤを軸方向に移動可能に装着し、前記出力軸のギヤに噛合させるフェースギヤを選択することでギヤ比を選択可能に構成し、前記フェースギヤの支持シャフトに直交するように前記駆動源の出力軸を設け、前記ベルトの長手方向に駆動源を設けたことにある。また、前記ベルトに移動体を組付けるガイドブロックを装着したことにある。
【0003】
特許文献1によれば、フェースギヤを用いたことにより、従来のものより省スペース化できるとともに、部品点数を削減することができる。
また、支持シャフトに、径の異なる複数のフェースギヤを同心状に配設するとともに、これら各フェースギヤを軸方向に移動可能に装着し、駆動源の出力軸のギヤに噛合させるフェースギヤを選択することでギヤ比を選択可能に構成したので、部品の変更や分解することなく、必要に応じてギヤ比を変えることができる。
さらに、フェースギヤの支持シャフトに直交するように駆動源の出力軸を設けたので、省スペース化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6267978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のベルトアクチュエータにあっては、プーリーの支持シャフトに、径の異なる複数のフェースギヤを同心状に配設するとともに、これら各フェースギヤを軸方向に移動可能に装着し、駆動源の出力軸のギヤに噛合させるフェースギヤを選択することでギヤ比を選択可能に構成したので、部品の変更や分解がなく、必要に応じてギヤ比を変えることができるとなっているが、実際には、2種類程度のフェースギヤを同心状に配設することしかできず、多くのギヤ比を選択することができなかった。
また、ギヤ比を容易に変更することができないため、径の異なる複数のフェースギヤを同心状に配設していても、当初に選択したフェースギヤ以外の同心状に配設したフェースギヤは、使用されることがなく、無駄になっていた。
このフェースギヤに噛合できるピニオンが設けられた出力軸の駆動源(モーター)であれば、駆動源(モーター)を交換することができるが、異なるピニオンの出力軸の駆動源(モーター)は、組合せることができなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、比較的多くのギヤ比に対応可能なベルトアクチュエータのシリーズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るベルトアクチュエータのシリーズは、ベルトと第1プーリーとを有するベルトアクチュエータ機構ユニットと、前記ベルトを駆動するためのモーターとフェースギヤと第2プーリーとを有するモータープーリーユニットとを備え、前記ベルトアクチュエータ機構ユニットが、複数のベルトアクチュエータ機構ユニットからなる第1の群から選択され、前記モータープーリーユニットが、複数のモータープーリーユニットからなる第2の群から選択される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的多くのギヤ比に対応可能なベルトアクチュエータのシリーズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】ベルトアクチュエータの平面図である。
図1B図1AのI-I線断面図である。
図2A】モータープーリーユニットの拡大平面図である。
図2B図2AのII-II線断面図である。
図2C図2Bの部分Dの拡大図である。
図3】モータープーリーユニットを交換する様子を示す斜視図である。
図4A】モータープーリーユニット交換後のベルトアクチュエータの平面図である。
図4B図4AのIV-IV線断面図である。
図5A】さらに別のモータープーリーユニットに交換した後のベルトアクチュエータの平面図である。
図5B図5AのV-V線断面図である。
図6】モータープーリーユニットの構成パターンを示す説明図である。
図7】ベルトアクチュエータ機構ユニットとモータープーリーユニットの構成パターンを示す説明図である。
図8】モータープーリーユニットに対するタイミングベルトの架け渡しの様子を示す説明図である。
図9】タイミングベルトの取付けの様子を示す説明図である。
図10】モータープーリーユニットの別の例を示す斜視図である。
図11】ベルト案内部の別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0011】
図1A図1B及び図2A図2Cに示すように、ベルトアクチュエータ100は、外形が細長い直方体状のベルトアクチュエータ機構ユニットAと、モータープーリーユニットBとを備えている。ベルトアクチュエータ機構ユニットAは、その長手方向が水平方向(紙面左右方向)である。紙面左方向を第1方向Y1と呼び、紙面右方向を第2方向Y2と呼ぶ。モータープーリーユニットBは、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの第2方向側の端部に取り付けられている。
【0012】
ベルトアクチュエータ機構ユニットAは、第1方向側の端部に配置された第1プーリー26を備えている。モータープーリーユニットBは、第2プーリー2を備えている。第1プーリー26及び第2プーリー2は、対をなしており、いずれも軸方向が鉛直方向である。また、ベルトアクチュエータ機構ユニットAは、第1プーリー26及び第2プーリー2に架け渡されたタイミングベルト17と、このタイミングベルト17によって操作されるテーブル12とを備えている。
【0013】
また、ベルトアクチュエータ機構ユニットAは、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向に延びていてその長手方向に垂直な面に沿った断面形状が凹状のスライダフレーム9と、スライダフレーム9の底面にねじ等により締結されてベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向に延びるガイドレール10とを備えている。ベルトアクチュエータ機構ユニットAはさらに、ガイドレール10に沿って直線状に動くガイドブロック(テーブルブロック)11を備えている。このガイドブロック11にテーブル12が取り付けられている。スライダフレーム9の第1方向側の端部は、エンドプレート21で覆われている。
【0014】
ベルトアクチュエータ機構ユニットAの第1方向側の端部において、テンションプレート18とベアリングハウジング19とにより、一対のベアリング25a及び25bが保持されている。両ベアリングを介して回転自在に支持された第1プーリーシャフト20が鉛直方向に設けられており、この第1プーリーシャフト20に対して前述の第1プーリー26が締結されている。
【0015】
タイミングベルト17は、幅方向が鉛直方向であり、長手方向一端部がテーブル12に固定され、前述のとおり第1プーリー26及び第2プーリー2に架け渡されている。
【0016】
テンションプレート18は、テンション調整ねじ22によりエンドプレート21に取り付けられている。詳細は後述するが、ベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットBとが組み付けられた際に、タイミングベルト17のテンションの調整をテンション調整ねじ22により行うことができる。
【0017】
スライダフレーム9の上面の開口部は、防塵シート24で覆われている。防塵シート24の一部は、テーブル12の上部にあるシートスロープ13と、シートスロープ13の上部にあるシート押え部15とに挟まれており、テーブルカバー14で固定されている。テーブル12が直線駆動する際に、防塵シート24と摺動する。スムーズに摺動するように、シート押えスプリング16を設けても良い。
【0018】
モータープーリーユニットBにおいて、第2プーリーシャフト4が鉛直方向に設けられている。第2プーリーシャフト4の両端部は、プーリーケース5とプーリーフランジ6により保持された一対のベアリング7a及び7bにより回転自在に支持されている。この第2プーリーシャフト4に対して、第2プーリー2が軸線上を支持されて装着されている。第2プーリーシャフト4には、第2プーリー2の下方に、上面の周縁部に歯溝3aが刻設されたリング状のフェースギヤ3が装着されている。モーター1の、第1方向Y1に突出した出力軸1aには、フェースギヤ3の歯溝3aに噛合する歯溝が歯切り加工されたモーターピニオン1a1が設けられている。
【0019】
モータープーリーユニットBにおいては、モーター1が回転すると、第2プーリー2がモーター1の出力軸1aと直交する鉛直方向の軸を回転軸として回転する。
【0020】
図3に示すように、モータープーリーユニットBのプーリーケース5における第1方向側の端面5aには、ベルトアクチュエータ機構ユニットAから引き出されたタイミングベルト17を第2プーリー2に架け渡すための穴5b1(紙面奥)及び穴5b2(紙面手前)が水平方向に間隔を置いて設けられている。
【0021】
これまでに説明したベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットBとは、それぞれ別に製造され準備されている。
【0022】
ベルトアクチュエータ機構ユニットAの第1プーリー26に架け渡されたタイミングベルト17の長手方向他端部17aは、前述の穴5b1からプーリーケース5の内部へと挿入され、第2プーリー2に架け渡されたのち穴5b2から引き出されてテーブル12に固定される。さらに、モータープーリーユニットBのプーリーケース5の端面5aが、ベルトアクチュエータ機構ユニットAのスライダフレーム9の第2方向側の端面に対して、ボルト30により締結されることにより、ベルトアクチュエータ100が形成される。
【0023】
ベルトアクチュエータ機構ユニットAのエンドプレート21に取り付けられているテンション調整ねじ22は、テンションプレート18に螺合している。テンション調整ねじ22により、一対のベアリング25a及び25bにより軸支されている第1プーリーシャフト20を、テーブル12の直動方向(ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向)に移動させることで、タイミングベルト17のテンションを調整することができる。
【0024】
ベルトアクチュエータ100は、上記のような構成となっているため、モーター1をベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向の延長線上に配置することができる。これにより、モーター1がベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向と直交する方向に突出することがない。つまり、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向と直交する方向の省スペース化を図ることができる。
【0025】
また、図3図4A及び図4Bに示すように、モータープーリーユニットBのモーター1をモーター1Aに変更してなるモータープーリーユニットB-1を準備しておき、このモータープーリーユニットB-1をベルトアクチュエータ機構ユニットAと組み合わせることが可能である。これにより、ベルトアクチュエータ100とは特性の異なる、ベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットB-1とを備えたベルトアクチュエータ101が構成される。
【0026】
さらに、ベルトアクチュエータ機構ユニットも、ストローク(ガイドレールの長さ)の異なるものなどを複数準備しておき、いずれか一つを選択してモータープーリーユニットと組み合わせることで、それぞれの用途に応じたベルトアクチュエータを容易に構成することができる。
【0027】
[作用]
続いて上記実施形態の作用を説明する。図1A及び図1Bに示したように、ベルトアクチュエータ100は、ベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットBとを備えている。モータープーリーユニットBのモーター1の出力軸1aが回転することにより、モーターピニオン1a1と噛合しているフェースギヤ3と第2ブーリーシャフト4とを介して第2プーリー2がモーター1の出力軸1aと直交する鉛直方向の軸を回転軸として回転する。
【0028】
第2プーリー2とベルトアクチュエータ機構ユニットAの第1プーリー26とには、両端部がテーブル12に固定されているタイミングベルト17が架け渡されている。テーブル12は、ガイドレール10に直動案内されたガイドブロック11に結合されている。モーター1が回転することにより、第2プーリー2が回転し、第2プーリー2及び第1プーリー26に架け渡されたタイミングベルト17が稼働し、タイミングベルト17の両端部が固定されたテーブル12が直線方向(ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向)に動く。ベアリングハウジング19には、第2方向側に突出したストッパ23が設けられている。ストッパ23は、テーブル12が第1方向に移動したときの限界点を定めるものであり、テーブル12の原点としても利用できる。
【0029】
モータープーリーユニットについては、モーターの種類や、モーターのトルク等の出力、フェースギヤの減速比などを変更することにより、各種の動力特性を持った複数のモータープーリーユニットを構成することができる。その一つがモータープーリーユニットBである。つまり、モータープーリーユニットBを別のモータープーリーユニットに交換することにより、動力特性の異なるベルトアクチュエータを容易に構成することができる。
【0030】
図4A及び図4Bに示したように、ベルトアクチュエータ101は、ベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットB-1とを備えている。モーター1Aは、モーター1に比べ出力が大きい。また、モーター1Aは、モーター1と共通のモーターピニオン1a1を有しているため、フェースギヤ3と噛合することができる。
【0031】
図5A及び図5Bに、ベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットB-2とを備えたベルトアクチュエータ102を示す。モータープーリーユニットB-2内のフェースギヤ3Aはフェースギヤ3よりも、径が大きいため、減速比も大きい。モーター1Bは、モータープーリーユニットB-1と同様に比較的出力が大きいものであるが、モーターピニオン1bは、フェースギヤ3Aと噛合するように構成されている。
モーターは出力を変更する他に、モーターの種類が異なるもの(例えば、ステッピングモーター、サーボモーターやブラシレスDCモーター)を用意することもできる。
【0032】
図6に、モータープーリーユニットを構成する模式図を示す。フェースギヤ3Bは、フェースギヤ3よりも径が小さく、減速比も小さくなる。プーリーケース5に収容されるフェースギヤは、フェースギヤ3、3A及び3Bから選択可能である。モーターは、モーター1、1A及び1Bから選択可能である。この例では、9(=3×3)通りのモータープーリーユニットを構成することができる。
【0033】
また、ベルトアクチュエータ100のモータープーリーユニットBにおいて直交ギヤであるフェースギヤ3を使用することで、モーター1を、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向延長線上に配置することができる。ベルトアクチュエータ100において、モーター1がベルトアクチュエータ機構ユニットAのスライダフレーム9の長手方向と直交する方向に突き出ることのない、省スペース機構にすることができる。
【0034】
他方、モーター1の出力軸のモーターピニオン1aと、フェースギヤ3の周縁部に設けられた歯溝とは、フェースギヤ3の周縁部のどの位置でも噛合することができる。そのため、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向にスペースが取れない場合は、スライダフレーム9の長手方向と直交する方向にモーターを取り付けることもできる。
【0035】
さらに、ベルトアクチュエータ機構ユニットも、複数のストロークのものを用意しておき、要求されたストロークを有するベルトアクチュエータ機構ユニットと、それを要求された動力特性で駆動するモータープーリーユニットとの組合せにより、要求されたベルトアクチュエータを容易に構成することができる。
【0036】
以上説明してきたように、図7に示すような、複数のベルトアクチュエータ機構ユニットからなる第1の群と複数のモータープーリーユニットからなる第2の群とが準備され、それぞれが用途に応じ自由に組合せできるベルトアクチュエータのシリーズが構築される。第1の群内のベルトアクチュエータ機構ユニットA、A-1、及びA-2と、第2の群内のモータープーリーユニットB、Ba、Bb、B-1、B-1a及びB-1bとは、自由に組み合わせることができる。この例では、18(=3×6)通りのベルトアクチュエータのシリーズが構成される。
【0037】
[組付け]
続いて、ベルトアクチュエータ機構ユニットとモータープーリーユニットとの組付けの詳細について説明する。図8に示すように、モータープーリーユニットBの第2プーリー2の外側には、同プーリーと略同心に設けられた略円筒状のベルト案内部8が設けられている。ベルト案内部8には、ベルトアクチュエータ機構ユニットAの長手方向に沿ってプーリーケース5の穴5b1及び5b2とそれぞれ対向するように開口部8b1及び8b2が形成されている。これにより、モータープーリーユニットBを交換する際にタイミングベルト17を簡単に架け渡しすることができる。
【0038】
図3及び図8に示すように、ベルトアクチュエータ機構ユニットAから引き出されたタイミングベルト17の長手方向他端部17aを、モータープーリーユニットBのプーリーケース5における端面5aの穴5b1に通す。そして、プーリーケース5内でベルト案内部8に沿ってタイミングベルト17が曲がり、第2プーリー2の歯とタイミングベルト17の歯とが噛み合いながら第2プーリー2が回転し、プーリーケース5の端面5aの穴5b2からタイミングベルト17の長手方向他端部17aが出てくる。
【0039】
図8においては、内部構造を分かりやすくするため、プーリーケース5及びプーリーフランジ6の図示を省略している。タイミングベルト17の長手方向他端部17aをモータープーリーユニットBのプーリーケース5の端面5aの穴5b1に通すと、ベルト案内部8の開口部8b1からベルト案内部8の中空部へと長手方向他端部17aが入り、ベルト案内部8の内周面に沿って曲がることで、第2プーリー2の歯とタイミングベルト17の歯とが噛み合う。さらに、タイミングベルト17を押し進めていくと、タイミングベルト17と噛み合っている第2プーリー2が回転し、タイミングベルト17が、ベルト案内部8の開口部8b2とプーリーケース5の端面5aの穴5b2とを経て、プーリーケース5の外部へと出てくる。その後、タイミングベルト17の長手方向他端部17aを固定部12a(後述)に固定する。ボルト30によりベルトアクチュエータ機構ユニットAとモータープーリーユニットBとを締結することでベルトアクチュエータ100が構成される。
【0040】
タイミングベルト17の長手方向他端部17aを、テーブル12に固定する際の詳細について説明する。ベルトアクチュエータ機構ユニットAのガイドブロック11及びテーブル12を、モータープーリーユニットBが取り付けられる側に移動させる。エンドプレート21のテンション調整ねじ22を緩め、テンションプレート18を外した状態にする。このとき、テンションプレート18とベアリングハウジング19とにより保持されていたベアリング25a及び25bによって軸支されている第1プーリーシャフト20と第1プーリー26とが移動できる状態にある。一端部がテーブル12に固定されているタイミングベルト17が第1プーリー26に架け渡しされているため、テーブル12も一緒に移動できる状態にある。
【0041】
これにより、図9に示すように、ガイドブロック11及びテーブル12がスライダフレーム9から第2方向側に引き出すことができる。テーブル12には、タイミングベルト17の長手方向他端部17aが固定されることになる固定部12aが設けられている。この固定部12aに対し、第2プーリー2に架け渡されてプーリーケース5から引き出されたタイミングベルト17の長手方向他端部17aが固定される。
【0042】
その後、ガイドブロック11及びテーブル12をスライダフレーム9に戻し、エンドプレート21のテンション調整ねじ22とテンションプレート18とを螺合して、モータープーリーユニットBをスライダフレーム9の端部に対してボルト30により締結する。さらに、タイミングベルト17のテンションが適切となるように、テンション調整ねじ22によりテンションプレート18を調整する。
【0043】
以上のように、タイミングベルト17を架け渡す際にモータープーリーユニットを分解する必要がない。そのため、ベルトアクチュエータ機構ユニットとモータープーリーユニットとを簡単に組み付けることができ、交換も容易である。
【0044】
モーターピニオン1a1とフェースギヤ3の周縁部に設けられた歯溝3aとは、グリースで潤滑されている。モーター1の出力軸1a及びフェースギヤ3が回転すると、グリースが飛散して第2プーリー2及びタイミングベルト17に付着する場合がある。グリースが付着することで、タイミングベルト17及び第2プーリー2の早期に劣化する可能性がある。
【0045】
そこで、第2プーリー2の下端部には径方向外側に突出した鍔部2aを形成し、ベルト案内部8の下端部には径方向内側に突出した鍔部8aを形成することができる(図2C)。鍔部2aの先端部の下方に、鍔部8aの先端部が位置している。このように、鍔部2aが鍔部8aにより覆われるようにすることで、第2プーリー2とタイミングベルト17との接触部分にグリースが入り込むことが防止されるようになっている。
【0046】
また、定期的なメンテナンス等においても、ベルトアクチュエータ機構ユニットとモータープーリーユニットとがそれぞれ独立したユニットであるため、それぞれの交換を容易に行うことができる。さらに、ベルトアクチュエータの使用に伴い劣化したタイミングベルト17の交換も簡単に行うことができる。
【0047】
[他の実施例]
前述の実施形態においては、モータープーリーユニットBのプーリーケース5の端面5aに二つの穴(5b1及び5b2)が設けられ、ベルト案内部8に二つの開口部(8a及び8b)が設けられている。他の実施形態においては、二つの穴をまとめて単一の穴とし、二つの開口部をまとめて単一の開口部とすることができる。
【0048】
図10にモータープーリーユニットB-10を示す。同ユニットのプーリーケース50の第1方向側の端面50aには、水平方向に延びる長穴50bが一つだけ設けられている。この穴50bを通してタイミングベルト17の入出力が行われる。このようなプーリーケース50をプーリーケース5に代えて用いることができる。
【0049】
また、図11に示すように、プーリーケース50内に配置されるベルト案内部80には、周方向に延びる細長の開口部80bが一つだけ設けられている。この開口部80bを通してタイミングベルト17の入出力が行われる。このようなベルト案内部80をベルト案内部8に代えて用いることができる。
【0050】
なお、単一の穴50bが形成されたプーリーケース50内に、2つの開口部8b1及び8b2が形成されたベルト案内部8を配置してもよい。また、2つの穴5b1及び5b2が形成されたプーリーケース5内に、単一の開口部が形成されたベルト案内部80を配置してもよい。
【0051】
[効果]
以上説明してきたように、本発明によれば、以下に列挙する効果が得られる。
・ベルトアクチュエータ機構ユニットとモータープーリーユニットとをそれぞれ独立した構成とし、少なくとも一方を交換することで、ギヤ比などの動力特性の違うベルトアクチュエータを構成することができる。
・モータープーリーユニットを交換する際に、ベルト案内部により、モータープーリーユニットを分解することなく、簡単にベルトを架け渡すことができる。
・ベルト案内部は、モーターピニオンとフェースギヤとの潤滑のためのグリースが、タイミングベルトとプーリーとの接触部分へ進入することを抑制することもできる。
・ベルトアクチュエータの定期メンテナンス時に、ベルトアクチュエータ機構ユニット及びモータープーリーユニットの一方を簡単に交換することができる。
・タイミングベルトの交換が容易である。
【0052】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
ベルトと第1プーリーとを有するベルトアクチュエータ機構ユニットと、
前記ベルトを駆動するためのモーターとフェースギヤと第2プーリーとを有するモータープーリーユニットと
を備え、
前記ベルトアクチュエータ機構ユニットが、複数のベルトアクチュエータ機構ユニットからなる第1の群から選択され、
前記モータープーリーユニットが、複数のモータープーリーユニットからなる第2の群から選択される、
ベルトアクチュエータのシリーズ。
[付記2]
前記第1の群に含まれる複数の前記ベルトアクチュエータ機構ユニットは、直線状のガイドレールと、前記ベルトの一端部が固定され前記ガイドレールに沿って移動可能なガイドブロックとを備え、前記ベルトが前記第1プーリーに架け渡されており、
前記ベルトアクチュエータ機構ユニットによって前記ガイドレールの長さが異なる、
付記1に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
[付記3]
前記第2の群に含まれる複数の前記モータープーリーユニットにおいて、前記第2プーリー及び前記フェースギヤが軸支されており、前記モーターの出力軸に設けられたピニオンと前記フェースギヤとが噛合している、付記1又は2に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
[付記4]
前記第2の群において、前記モータープーリーユニットによって前記フェースギヤの径が異なる、付記1~3のいずれか一項に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
[付記5]
前記第2の群に含まれる複数の前記モータープーリーユニットは、前記ベルトアクチュエータ機構部との組付けの際に前記ベルトアクチュエータ機構ユニットから引き出された前記ベルトを前記モータープーリーユニット内でガイドするベルト案内部を備えている、付記1~4のいずれか一項に記載のベルトアクチュエータのシリーズ。
【0053】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100、101、102 ベルトアクチュエータ

A ベルトアクチュエータ機構ユニット
9 スライダフレーム
10 ガイドレール
11 ガイドブロック
12 テーブル
17 タイミングベルト
18 テンションプレート
19 ベアリングハウジング
20 第1プーリーシャフト
21 エンドプレート
22 テンション調整ねじ
23 ストッパ
24 防塵シート
25a、25b ベアリング
26 第1プーリー

B モータープーリーユニット
1 モーター
1a 出力軸
1a1 モーターピニオン
2 第2プーリー
3 フェースギヤ
3a 歯溝
4 第2プーリーシャフト
5 プーリーケース
5a 端面
5b1、5b2 穴
6 プーリーフランジ
7a、7b ベアリング
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11