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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】車両用サイドドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021145640
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038759
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 安剛
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-326532(JP,A)
【文献】特開2010-023572(JP,A)
【文献】特開2018-114936(JP,A)
【文献】特開2007-269118(JP,A)
【文献】特開2019-156384(JP,A)
【文献】特開2011-110945(JP,A)
【文献】特開2014-162301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外板を構成するアウタパネル、および、前記アウタパネルと対向して前記アウタパネルよりも車両幅方向の内側に配置されるインナパネルを有するパネルセットと、
前記インナパネルと前記アウタパネルとの間に配置されて車両前後方向に延びるドアビーム、および、前記ドアビームと前記インナパネルを車両方向の前端で接続するブラケットを有する補強部品と
を備え、
周縁部において前記アウタパネルと前記インナパネルとは接合しており、
前記ブラケットは、前記アウタパネルとは異なる位置で前記インナパネルと接続される第1接続部と、前記ドアビームと接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間の中間部とを有し、
前記第1接続部と前記第2接続部はそれぞれ前記中間部との境界に稜線部を有し、
前記中間部は、折れ曲がった少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記パネルセットの材質の線膨張係数と前記ドアビームの材質の線膨張係数は、異なっている、車両用サイドドア。
【請求項2】
前記少なくとも1つの屈曲部は、前記第2接続部よりも車両幅方向の内側に配置されている、請求項1に記載の車両用サイドドア。
【請求項3】
前記少なくとも1つの屈曲部は、前記第2接続部よりも車両幅方向の外側に配置されている、請求項1に記載の車両用サイドドア。
【請求項4】
前記少なくとも1つの屈曲部は、複数の屈曲部を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項5】
前記複数の屈曲部の1つは、前記第2接続部よりも車両幅方向の内側に配置され、
前記複数の屈曲部の別の1つは、前記第2接続部よりも車両幅方向の外側に配置されている、請求項4に記載の車両用サイドドア。
【請求項6】
前記パネルセットは、アルミニウム合金製であり、
前記ドアビームは、鋼鉄製である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項7】
前記パネルセットは、鋼鉄製であり、
前記ドアビームは、アルミニウム合金製である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項8】
前記パネルセットの材質の線膨張係数は、前記ドアビームの材質の線膨張係数の2倍以上または半分以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項9】
前記屈曲部の少なくとも一つは鋭角に折れ曲がっている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項10】
車体の外板を構成するアウタパネル、および、前記アウタパネルと対向して前記アウタパネルよりも車両幅方向の内側に配置されるインナパネルを有するパネルセットと、
前記インナパネルと前記アウタパネルとの間に配置されて車両前後方向に延びるドアビーム、および、前記ドアビームと前記インナパネルを接続するブラケットを有する補強部品と
を備え、
前記ブラケットは、前記インナパネルと接続される第1接続部と、前記ドアビームと接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間の中間部とを有し、
前記中間部は、折れ曲がった少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記屈曲部の少なくとも1つは鋭角に折れ曲がっており、
前記パネルセットの材質の線膨張係数と前記ドアビームの材質の線膨張係数は、異なっている、車両用サイドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用サイドドアは、インナパネルおよびアウタパネルからなるパネルセットの内部にドアビームなどの補強部品を配置し、強度を向上させることがある。例えば、特許文献1には、そのような補強構造を有する車両用サイドドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-162301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用サイドドアでは、重量やコスト等の制約から、パネルセットとドアビームが異なる材質からなる場合がある。この場合、両者の材質の線膨張係数が異なることに起因して昇温時の伸びに違いが生じ、熱ひずみが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、線膨張係数が異なる材質からなるパネルセットとドアビームを含む車両用サイドドアにおいて、熱ひずみを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車体の外板を構成するアウタパネル、および、前記アウタパネルと対向して前記アウタパネルよりも車両幅方向の内側に配置されるインナパネルを有するパネルセットと、
前記インナパネルと前記アウタパネルとの間に配置されて車両前後方向に延びるドアビーム、および、前記ドアビームと前記インナパネルを接続するブラケットを有する補強部品と
を備え、
前記ブラケットは、前記インナパネルと接続される第1接続部と、前記ドアビームと接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間の中間部とを有し、
前記中間部は、折れ曲がった少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記パネルセットの材質の線膨張係数と前記ドアビームの材質の線膨張係数は、異なっている、車両用サイドドアを提供する。
【0007】
この構成によれば、パネルセットの材質の線膨張係数とドアビームの材質の線膨張係数は異なっているため、昇温時の伸びに違いが生じる。しかし、ブラケットの中間部に屈曲部が設けられているため、中間部は屈曲部を起点に撓むことができる。即ち、ブラケットは、柔軟性を有している。このように柔軟性を有するブラケットを使用することにより、パネルセットとドアビームの伸びの違いを吸収でき、即ち熱ひずみを抑制できる。
【0008】
前記少なくとも1つの屈曲部は、前記第2接続部よりも車両幅方向の内側に配置されてもよい。また、前記少なくとも1つの屈曲部は、前記第2接続部よりも車両幅方向の外側に配置されてもよい。
【0009】
これらの構成によれば、屈曲部の位置を規定することにより、所望のレイアウトを実現できる。特に、屈曲部を第2接続部よりも車両幅方向の内側に配置すると、中間部を長く確保できる傾向があり、より大きな柔軟性を確保できる。
【0010】
前記少なくとも1つの屈曲部は、複数の屈曲部を含んでもよい。
【0011】
この構成によれば、1つの屈曲部が設けられている場合に比べて、屈曲の自由度が向上するため、ブラケットが柔軟に変形できる。
【0012】
前記複数の屈曲部の1つは、前記第2接続部よりも車両幅方向の内側に配置されてもよく、
前記複数の屈曲部の別の1つは、前記第2接続部よりも車両幅方向の外側に配置されてもよい。
【0013】
この構成によれば、中間部の長さを長く確保できるとともに様々に屈曲させることができるためブラケットの柔軟性を向上できる。
【0014】
前記パネルセットは、アルミニウム合金製であってもよく、
前記ドアビームは、鋼鉄製であってもよい。
【0015】
この構成によれば、アルミニウム合金および鋼鉄は車両用サイドドアの材質として実用的であるため、実用的な車両用サイドドアを構成できる。また、仮に、柔軟性を有していないブラケットを使用すると、製造工程において昇温時に線膨張係数の大きいパネルセットが伸びようとするとき、線膨張係数の小さいドアビームが抵抗となる。そのため、ブラケットには引っ張りの力がかかり、パネルセットの変形が拘束されて熱ひずみが発生する。しかし、上記構成のように柔軟性を有するブラケットを使用することで、ブラケットが伸び、パネルセットの変形が拘束されることを抑制でき、熱ひずみを抑制できる。
【0016】
前記パネルセットは、鋼鉄製であってもよく、
前記ドアビームは、アルミニウム合金製であってもよい。
【0017】
この構成によれば、アルミニウム合金および鋼鉄は車両用サイドドアの材質として実用的であるため、実用的な車両用サイドドアを構成できる。また、仮に、柔軟性を有していないブラケットを使用すると、製造工程において昇温時に線膨張係数の大きいドアビームが伸びようとするとき、線膨張係数の小さいパネルセットが抵抗となる。そのため、ブラケットには圧縮の力がかかり、ドアビームの変形が拘束されて熱ひずみが発生する。しかし、上記構成のように柔軟性を有するブラケットを使用することで、ブラケットが撓み、ドアビームの変形が拘束されることを抑制でき、熱ひずみを抑制できる。
【0018】
前記パネルセットの材質の線膨張係数は、前記ドアビームの材質の線膨張係数の2倍以上または半分以下であってもよい。
【0019】
この構成によれば、上記熱ひずみの問題が顕在化しやすい材料の組み合わせに対して上記構成が一層有効に機能し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、線膨張係数が異なる材質からなるパネルセットとドアビームを含む車両用サイドドアにおいて、熱ひずみを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用サイドドアの斜視図。
図2図1の車両用サイドドアの分解斜視図。
図3】第1実施形態におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図4】第1実施形態の第1変形例におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図5】第1実施形態の第2変形例におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図6】第2実施形態におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図7】第2実施形態の第1変形例におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図8】第2実施形態の第2変形例におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図9】第2実施形態の第3変形例におけるブラケット付近の模式的な断面図。
図10】第3実施形態におけるブラケット付近の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両用サイドドア1(以降、単にサイドドア1ともいう。)の斜視図を示している。矢印FR、矢印UP、矢印INは、それぞれ車両前後方向の前側、車両上下方向の上側、および車両幅方向の内側を示している。これらは、以降の図でも同様の表記で示す。
【0024】
図示のサイドドア1は、図示しない車体の側部を構成する。なお、車体の種類については特に限定されない。
【0025】
サイドドア1は、上部のウインドウフレーム10と、下部のパネルセット20とを含んでいる。
【0026】
ウインドウフレーム10には、図示しないドアガラスが昇降可能に配置される。
【0027】
パネルセット20は、図示しない車体の外板を構成するアウタパネル21と、アウタパネル21と対向してアウタパネル21よりも車両幅方向の内側に配置されるインナパネル22とを有している。
【0028】
図2は、図1のサイドドア1の分解斜視図を示している。
【0029】
本実施形態では、アウタパネル21は、概ね平坦な板状であり、周縁部21aにおいてインナパネル22の周縁部22aを挟み込むようにヘミング加工が施されている(詳細は図3参照)。インナパネル22は周縁部22aに対して中央部22bが車幅方向内側へ凹んだ形状を有し、周縁部22aにおいてアウタパネル21と接合されている。
【0030】
インナパネル22とアウタパネル21との間には、補強部品30が配置されている。補強部品30は、車両前後方向に延びるドアビーム31と、ドアビーム31とインナパネル22を接続するブラケット40とを有している。
【0031】
ドアビーム31は、パネルセット20を補強する部材である。本実施形態では、ドアビームは、断面円形のパイプ状である。ドアビーム31は、ブラケット40と合わせて、サイドドア1の車両前後方向の概ね全体にわたって延びている。インナパネル22の車両前後方向の後部には、ドアビーム31と相補的な形状を有する載置部23が設けられている。例えば、載置部23は、インナパネル22とは別体の樹脂部材であり、インナパネル22にねじ止めされている。ドアビーム31の車両前後方向の後端31aは、載置部23に載置および固定されている。ドアビーム31の車両前後方向の前端31bは、ブラケット40に接続されている。
【0032】
図3は、第1実施形態におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。図3では、サイドドア1の車両上下方向に垂直な断面が示されている。
【0033】
本実施形態では、ブラケット40は、折り曲げられた板状である。ブラケット40は、インナパネル22と接続される第1接続部41と、ドアビーム31と接続される第2接続部42と、第1接続部41と第2接続部42との間の中間部43とを有している。インナパネル22および第1接続部41は、リベット等を用いた機械的接合、溶融接合又は接着剤を用いた接合がなされている。同様に、ドアビーム31および第2接続部42は、リベット等を用いた機械的接合、溶融接合又は接着剤を用いた接合がなされている。後述の通り、サイドドア1の各部の材質は種々選択可能であり、選択した材料に応じて接合方法を適宜選択可能である。
【0034】
第1接続部41と中間部43と境界は、折り曲げによって形成された稜線部41aによって規定される。なお、稜線部41aは第1接続部41に含まれる。同様に、第2接続部42と中間部43と境界は、折り曲げによって形成された稜線部42aによって規定される。なお、稜線部42aは、第2接続部42に含まれる。
【0035】
本実施形態では、中間部43は、折れ曲がった2つの屈曲部44a,44b(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。なお、稜線部41a,42aは、折れ曲がった形状を有しているが、前述の通り中間部43に設けられたものではないため、屈曲部44とは異なる。
【0036】
本実施形態では、2つの屈曲部44a,44bは、第2接続部42よりも車両幅方向の内側に配置されている。2つの屈曲部44a,44bは、ともに車両幅方向の内側に向かって凸形状を構成するように概ね90度折り曲げられている。
【0037】
以上の構成を有する本実施形態のサイドドア1の各部の材質について例示する。
【0038】
パネルセット20は、例えばアルミニウム合金製である。即ち、インナパネル22およびアウタパネル21は、ともにアルミニウム合金製である。アルミニウム合金の線膨張係数は、約2.36×10-5である。
【0039】
ドアビーム31は、例えば鋼鉄製である。鋼鉄の線膨張係数は、約1.1×10-5である。
【0040】
本実施形態では、パネルセット20の材質(アルミニウム合金)の線膨張係数は、ドアビーム31の材質(鋼鉄)の線膨張係数の2倍以上となっている。
【0041】
本実施形態では、ブラケット40の材質は、鋼鉄またはアルミニウム合金などの金属製であるが、これに限定されず、例えば樹脂製であってもよい。
【0042】
本実施形態によれば、パネルセット20の材質の線膨張係数とドアビーム31の材質の線膨張係数は異なっているため、昇温時の伸びに違いが生じる。しかし、ブラケット40の中間部43に屈曲部44が設けられているため、中間部43は屈曲部44を起点に撓むことができる。即ち、ブラケット40は、柔軟性を有している。このように柔軟性を有するブラケット40を使用することにより、パネルセット20とドアビーム31の伸びの違いを吸収でき、即ち熱ひずみを抑制できる。
【0043】
また、第1接続部を第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置するとともに屈曲部44を第2接続部42よりも車両幅方向の内側に配置しているため、中間部43を長く確保でき、より大きな柔軟性を確保できる。
【0044】
また、2つの屈曲部44a,44bが設けられているため、1つのみ屈曲部が設けられている場合に比べて、屈曲の自由度が向上する。よって、ブラケット40が柔軟に変形できる。
【0045】
また、パネルセット20がアルミニウム合金製であり、ドアビーム31が鋼鉄製であるため、実用的なサイドドア1を構成できる。仮に、柔軟性を有していないブラケット40を使用すると、製造工程において昇温時に線膨張係数の大きいパネルセット20が伸びようとするとき、線膨張係数の小さいドアビーム31が抵抗となる。そのため、ブラケット40には引っ張りの力がかかり、パネルセット20の変形が拘束されて熱ひずみが発生する。しかし、本実施形態のように柔軟性を有するブラケット40を使用することで、ブラケット40が伸び、パネルセット20の変形が拘束されることを抑制でき、熱ひずみを抑制できる。
【0046】
また、アルミニウム合金の線膨張係数は鋼鉄の線膨張係数の2倍以上であるため、何らの工夫をしない場合には熱ひずみの問題が顕在化しやすい。従って、本実施形態の柔軟性を有するブラケット40が一層有効に機能し得る。
【0047】
代替的には、パネルセット20がアルミニウム合金製であり、ドアビーム31が鋼鉄製であってもよい。この場合、パネルセット20の材質の線膨張係数は、ドアビーム31の材質の線膨張係数の半分以下となる。
【0048】
パネルセット20が鋼鉄製であり、ドアビーム31がアルミニウム合金製である場合、実用的な車両用サイドドアを構成できる。このとき、仮に、柔軟性を有していないブラケット40を使用すると、製造工程において昇温時に線膨張係数の大きいドアビームが伸びようとするとき、線膨張係数の小さいパネルセットが抵抗となる。そのため、ブラケット40には圧縮の力がかかり、ドアビーム31の変形が拘束されて熱ひずみが発生する。しかし、本実施形態のように柔軟性を有するブラケット40を使用することで、ブラケット40が撓み、ドアビーム31の変形が拘束されることを抑制でき、熱ひずみを抑制できる。
【0049】
図4は、第1実施形態の第1変形例におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。
【0050】
図4の例では、中間部43は、1つの屈曲部44c(単に屈曲部44ともいう。)を有している。屈曲部44cは、車両幅方向の内側に向かって凸に鋭角に折り曲げられている。
【0051】
図5は、第1実施形態の第2変形例におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。
【0052】
図5の例では、中間部43は、4つの屈曲部44d~44g(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。4つの屈曲部44d~44gのそれぞれは、車両幅方向の内側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。
【0053】
第1変形例および第2変形例に示すように、中間部43の屈曲部44の数の数や形状は特に限定されず、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0054】
(第2実施形態)
図6に示す第2実施形態の車両用サイドドア1は、ブラケット40の形状が第1実施形態と異なる。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0055】
本実施形態では、中間部43は1つの屈曲部44h(単に屈曲部44ともいう。)を有している。屈曲部44hは、第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置されている。屈曲部44hは、車両幅方向の外側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。図示の例では、屈曲部44hは、車両前後方向において中間部43の概ね中央に形成されている。
【0056】
図7は、第2実施形態の第1変形例におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。
【0057】
図7の例では、中間部43は、3つの屈曲部44i~44k(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。屈曲部44i,44jは、第2接続部42と車両幅方向に揃えられている。屈曲部44i,44jは、ともに車両幅方向の内側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。また、屈曲部44kは、第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置されている。屈曲部44kは、車両幅方向の外側に向かって凸に鋭角に折り曲げられている。
【0058】
図8は、第2実施形態の第2変形例におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。
【0059】
図8の例では、中間部43は、2つの屈曲部44l,44m(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。2つの屈曲部44l,44mは、車両幅方向の位置を揃えられ、ともに第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置されている。屈曲部44lは、車両幅方向の内側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。また、屈曲部44mは、車両幅方向の外側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。
【0060】
図9は、第2実施形態の第3変形例におけるブラケット40付近の模式的な断面図を示している。
【0061】
図9の例では、中間部43は、4つの屈曲部44n~44q(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。屈曲部44n,44oの車幅方向の位置は、揃えられている。また、屈曲部44p,44qの車幅方向の位置は、揃えられている。4つの屈曲部44n~44qのいずれも第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置されている。屈曲部44n,44pは、車両幅方向の内側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。屈曲部44o,44qは、車両幅方向の外側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。
【0062】
本実施形態においても、第1~3変形例に示すように、中間部43の屈曲部44の数や形状は特に限定されず、少なくとも1つ以上であればよい。
【0063】
(第3実施形態)
図10に示す第3実施形態の車両用サイドドア1は、ブラケット40の形状が第1,2実施形態と異なる。これに関する構成以外は、第1,2実施形態と実質的に同じである。従って、第1,2実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0064】
本実施形態では、中間部43は、3つの屈曲部44r~44tが設けられている。(これらを区別なく単に屈曲部44ともいう。)を有している。屈曲部44r,44sは、第2接続部42よりも車両幅方向の外側に配置されている。屈曲部44tは、第2接続部42よりも車両幅方向の内側に配置されている。屈曲部44rは、車両幅方向の内側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。屈曲部44sは、車両幅方向の外側に向かって凸に鈍角に折り曲げられている。屈曲部44tは、車両幅方向の内側に向かって凸に鋭角に折り曲げられている。
【0065】
本実施形態によれば、中間部43の長さを長く確保できるとともに様々に屈曲させることができるため、ブラケットの柔軟性を向上できる。また、本実施形態では、第2接続部42よりも車両幅方向の外側および内側に屈曲部44が設けられていればよく、その数や形状は特に限定されない。
【0066】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用サイドドア(サイドドア)
10 ウインドウフレーム
20 パネルセット
21 アウタパネル
21a 周縁部
22 インナパネル
22a 周縁部
22b 中央部
23 載置部
30 補強部品
31 ドアビーム
31a 後端
31b 前端
40 ブラケット
41 第1接続部
41a 稜線部
42 第2接続部
42a 稜線部
43 中間部
44,44a~44t 屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10