(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】冷蔵庫およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20240802BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F25D23/06 L
F25D23/02 305A
(21)【出願番号】P 2021147437
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 舜介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩俊
(72)【発明者】
【氏名】森野 厚司
(72)【発明者】
【氏名】平子 貴之
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-254060(JP,A)
【文献】特開2004-324263(JP,A)
【文献】特開2017-150787(JP,A)
【文献】実開平04-029791(JP,U)
【文献】国際公開第2021/100174(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0178555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/06
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内箱および外箱を有する箱体と、
前記外箱に取り付けられる、左右の回動式の貯蔵室扉と、
一方の前記貯蔵室扉の側面に取り付けられ、扉閉時と扉開時と
の間で回転する回転仕切体と、
貯蔵室の天面を形成する前記内箱に固定され、前記回転仕切体の回転動作を規制する回転仕切体規制部と、
を備えた冷蔵庫であって、
前記回転仕切体規制部は、第1固定部および第2固定部によって、前記内箱に固定され、
前記第1固定部は、前記
回転仕切体規制部の水平方向への移動を許容した仮固定であり、
前記第2固定部は、前記
回転仕切体規制部の水平方向への移動も抑制する本固定であ
り、
前記第1固定部は、前記回転仕切体規制部に形成された左右方向に長い長孔に対して挿入されるネジであって、ネジ頭の直径が、前記長孔の左右方向寸法より長い冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記第2固定部は、一方の前記貯蔵室扉が閉状態のときの前記回転仕切体を鉛直投影上方へ投影したときの投影から外れた場所にある冷蔵庫。
【請求項3】
請求項2に記載の冷蔵庫において、
前記第1固定部は、一方の前記貯蔵室扉が閉状態のときの前記回転仕切体を鉛直投影上方へ投影したときの投影内にある冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記ネジは、段付きネジである冷蔵庫。
【請求項5】
内箱および外箱を有する箱体と、
前記外箱に取り付けられる、左右の回動式の貯蔵室扉と、
一方の前記貯蔵室扉の側面に取り付けられ、扉閉時と扉開時との間で回転する回転仕切体と、
貯蔵室の天面を形成する前記内箱に固定され、前記回転仕切体の回転動作を規制する回転仕切体規制部と、
を備えた冷蔵庫の製造方法であって、
水平方向への移動を許容した状態で前記回転仕切体規制部を前記内箱に仮固定するステップと、
前記回転仕切体規制部に前記回転仕切体を当接させ、一方の前記貯蔵室扉を閉状態とするステップと、
水平方向への移動も許容した状態で前記回転仕切体規制部を前記内箱に本固定するステップと、を含む冷蔵庫の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の冷蔵室に観音開き扉が採用されている場合、左右の扉が閉じたときに、中央に隙間が生じないよう、左右いずれかの扉に回転仕切体が設けられる。この回転仕切体は、その上端に溝部を有しており、溝部が冷蔵室の天面に設けられた回転仕切体規制部(案内突起)と係合することで、扉の開閉動作に合わせて回転する。この回転仕切体規制部に関し、例えば、特許文献1には、「冷蔵室の前面開口中央部に位置する天壁には、その下面に楕円状の案内突起を有する取り付け板がビス止めにより固定されている」と記載されている(段落0018)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷蔵庫など、従来の冷蔵庫は、回転仕切体規制部を冷蔵室天面に固定してから冷蔵室扉の取付を行っている。しかし、回転仕切体規制部は樹脂製の内箱に固定されるのに対し、冷蔵室扉は鋼板製の外箱に固定されるため、回転仕切体規制部と回転仕切体との間にずれが生じる可能性がある。冷蔵室扉の取付後にずれが確認されると、手直し工程が別途必要となる。仮に、手直しを行わないと、冷蔵室扉を閉じても回転仕切体が回転せず、冷蔵室扉間に隙間できてしまう可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題に鑑み、本発明は、内箱および外箱を有する箱体と、前記外箱に取り付けられる、左右の回動式の貯蔵室扉と、一方の前記貯蔵室扉の側面に取り付けられ、扉閉時と扉開時と間で回転する回転仕切体と、貯蔵室の天面を形成する前記内箱に固定され、前記回転仕切体の回転動作を規制する回転仕切体規制部と、を備えた冷蔵庫であって、前記回転仕切体規制部は、第1固定部および第2固定部によって、前記内箱に固定され、前記第1固定部は、前記回転仕切体の水平方向への移動を許容した仮固定であり、前記第2固定部は、前記回転仕切体の水平方向への移動も抑制する本固定である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】左側の冷蔵室扉を閉じ、右側の冷蔵室扉を開いた状態において、冷蔵室の天面中央前側を下方から見た斜視図。
【
図3】左右の冷蔵室扉を開いた状態において、冷蔵室の天面中央前側を下方から見た斜視図。
【
図5】
図4の状態から回転仕切体規制部を取り外したときの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫について、図面を用いて説明する。なお、本明細書における左右の向きは、利用者が冷蔵庫を正面から見たときの左右を意味するものとする。
【0008】
まず、本実施形態に係る冷蔵庫1の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る冷蔵庫1の正面図である。
図1に示すように、冷蔵庫1は、上から、冷蔵室2、製氷室3および上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6に順に、貯蔵室を備える。冷蔵室2を開閉する冷蔵室扉2a,2bは、ヒンジ(図示せず)中心に回動する回動式であるが、製氷室3を開閉する製氷室扉3a、上段冷凍室4を開閉する上段冷凍室扉4a、下段冷凍室5を開閉する下段冷凍室扉5aおよび野菜室6を開閉する野菜室扉6aは、引出式である。なお、引出式の各貯蔵室およびその扉の配置や個数については、
図1の例に限るものではない。
【0009】
図2は、左側の冷蔵室扉2aを閉じ、右側の冷蔵室扉2bを開いた状態において、冷蔵室2の天面中央前側を下方から見た斜視図である。冷蔵庫1の断熱箱体は、鋼板製の外箱7と、樹脂製の内箱8と、を備え、図示は省略するが、外箱7と内箱8とによって形成される空間に、発泡断熱材や真空断熱材が設けられ、断熱箱体内の各貯蔵室と外部とを断熱している。
【0010】
冷蔵室2を開閉する冷蔵室扉2a,2bは、観音開き扉(フレンチ扉)となっており、2枚の冷蔵室扉のうち、左側の冷蔵室扉2aの右側面に、回転仕切体9が設けられている。回転仕切体9は、冷蔵室扉2a,2bが閉じられているときに、冷蔵室扉2aと冷蔵室扉2bの隙間を塞ぎ、冷蔵室2内の冷気が外へ漏れるのを抑制する。
【0011】
回転仕切体9は、一端側が鉛直方向の軸を介して冷蔵室扉2aの右側面に取り付けられており、他端側が軸を中心として回転できるようになっている。ここで、回転仕切体9の回転は、回転仕切体9の上端に設けられた溝部(図示せず)が、冷蔵室2の天面中央前側に設けられた案内部材10aに対して、摺動することによって行われる。
【0012】
また、回転仕切体9は、図示しないバネを有しており、冷蔵室扉2aが開いているときは、バネの付勢力によって、冷蔵室扉2aの平面(意匠面と平行な面)に対して略垂直の状態となる。一方、冷蔵室扉2aが閉じ動作が進み、回転仕切体9の溝部が冷蔵室2の案内部材10aに当接するようになると、バネの付勢力に抗して回転仕切体9が冷蔵室扉2aに対して回転を始める。すると、回転仕切体9は、案内部材10aの曲面形状(
図3参照)に沿って回転を続け、冷蔵室扉2aの閉じ動作が完了したとき、回転仕切体9は、
図2に示すように、冷蔵室扉2aの平面(意匠面と平行な面)に対して略平行の状態となる。
【0013】
次に、冷蔵室2の天面中央前側の構成について、
図3~
図5を用いて詳しく説明する。
図3は、左右の冷蔵室扉を開いた状態において、冷蔵室2の天面中央前側を下方から見た斜視図であり、
図4は、冷蔵室2の天面中央を正面から見た断面図であり、
図5は、
図4の状態から回転仕切体規制部10を取り外したときの斜視図である。
図5に示すように、冷蔵室2を形成する内箱8の天面中央前側には凹部8aが設けられており、この凹部8aに、回転仕切体9の回転動作を規制する回転仕切体規制部10が固定される。回転仕切体規制部10は、前述した案内部材10aと、扉閉時に回転仕切体9の前側を係止するストッパー10bと、を有しており、それぞれが鉛直方向下方へ突出している。なお、冷蔵室扉2aが閉じられた状態(以下「閉状態」と呼ぶ)のとき、ストッパー10bは、
図2に示すように、冷蔵室扉2aの右側端よりも右側に位置するようになっている。
【0014】
本実施形態に係る回転仕切体規制部10は、左右方向への移動を許容した状態で固定する1次固定(仮固定)と、左右方向への移動も抑制するように固定する2次固定(本固定)と、によって内箱8に固定される。
【0015】
回転仕切体規制部10は、
図5に示すように、左側に1次固定用孔10c、右側に2次固定用孔10d、をそれぞれ有する。1次固定用孔10cは、冷蔵室扉2aが閉状態のときに回転仕切体9を鉛直方向上方へ投影したときの投影内または当該投影の近傍にある。一方、2次固定用孔10dは、当該投影から外れた場所、望ましくはストッパー10bより右側にある。また、1次固定用孔10cおよび2次固定用孔10dは、左右方向に長い長孔である。
【0016】
図4に示すように、1次固定用孔10cも2次固定用孔10dも鉛直方向下方からネジが挿入され、内箱8の上側に設けられたブッシュ11に対してネジの上端が締結される。ただし、1次固定用ネジ12c(第1固定部)は、2次固定用ネジ12d(第2固定部)と異なり、段付きネジとなっている。すなわち、1次固定用ネジ12cは、ネジ頭である下端部と、ネジが切られた上端部と、の間に、ネジが切られていない円筒部を有している。さらに、円筒部の軸方向長さは、回転仕切体規制部10の厚さよりも大きい。したがって、1次固定用ネジ12cの上端部がブッシュ11に対して完全に締結された状態のときでも、ネジ頭の上端が回転仕切体規制部10の下面から離間している(
図4のように隙間Xが存在している)。つまり、1次固定用ネジ12cの円筒部に対し、長孔である1次固定用孔10cを介して、回転仕切体規制部10を左右方向にスライドすることが可能である。
【0017】
一方、2次固定用ネジ12dは、ネジ頭と、ネジが切られた部分と、は有しているものの、円筒部は有していない。このため、2次固定用ネジ12cがブッシュ11に対して完全に締結された状態のときは、ネジ頭の上端が回転仕切体規制部10の下面に押付けられており、回転仕切体規制部10を左右方向にスライドできなくなる。
【0018】
以下、回転仕切体規制部10の内箱8への固定手順について、具体的に説明する。まず、外箱7と内箱8の間に発泡断熱材を充填する等して断熱箱体を組み立てる。
【0019】
次に、冷蔵室2を形成する内箱8の天面中央前側の凹部8aを、下方から回転仕切体規制部10で覆い、前述の段付きネジ(1次固定用ネジ12c)を用いた1次固定により、回転仕切体規制部10を内箱8に仮固定する。この仮固定により、回転仕切体規制部10は、鉛直方向および前後方向の移動が抑制される。また、仮固定の位置は、冷蔵室扉2aが閉状態のときの回転仕切体9の鉛直投影内または当該投影の近傍にあるため、冷蔵室扉2aが閉じられるときに、回転仕切体規制部10が冷蔵室扉2aから受ける力に対する強度が高まる。なお、凹部8aの左右方向寸法よりも回転仕切体規制部10の左右方向寸法の方が大きいため、回転仕切体規制部10が左右方向にスライドした場合でも、凹部8aが露出せず、意匠性が担保されている。
【0020】
その後、冷蔵室扉2a,2bを断熱箱体の外箱7に取り付ける。
【0021】
ここで、冷蔵室扉2a,2bは外箱7に取り付けられるのに対し、回転仕切体規制部10は内箱8に固定されるため、冷蔵室扉2aに設けられる回転仕切体9と、回転仕切体規制部10と、の相対位置関係、特に左右方向の相対位置関係にずれが生じる可能性がある。しかし、この段階における回転仕切体規制部10は、内箱8に対する左右方向への移動は許容されている。したがって、冷蔵室扉2aを閉状態とし、回転仕切体9と回転仕切体規制部10との位置関係を確認しながら、回転仕切体規制部10を左右方向にスライドさせて位置調整を行う。
【0022】
位置調整が完了すると、2次固定により、回転仕切体規制部10を内箱8に本固定する。この本固定により、回転仕切体規制部10は、左右方向への移動も抑制される。なお、本固定の位置は、冷蔵室扉2aが閉状態のときの回転仕切体9の鉛直投影の外にあるため、冷蔵室扉2aが閉状態のときでも、ネジ締結の作業が容易となっている。
【0023】
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、前述の実施形態に係る冷蔵庫1は、左側の冷蔵室扉2aに回転仕切体9が設けられているが、回転仕切体9は右側の冷蔵室扉2bに設けられても良い。この場合、回転仕切体規制部10の仮固定は右側で行われ、本固定は左側で行われる。また、前述の実施形態に係る冷蔵庫1は、仮固定の段階で、内箱8に対する回転仕切体規制部10の左右方向への移動を許容するものであったが、前後方向への移動についても許容するもので合っても良い。
【0024】
さらに、前述の実施形態に係る冷蔵庫は、1次固定に段付きネジが用いられたが、1次固定は、爪部など他の方法によって仮固定しても良い。爪部を用いた仮固定の一例としては、回転仕切体規制部10に設けられた爪部を、内箱8に設けられた左右方向の溝部に対して係合させる方法が考えられる。この場合も、鉛直方向と前後方向に移動するのを抑制しつつ、左右方向への移動は許容するような状態で、回転仕切体規制部10を内箱8に仮固定できる。
【符号の説明】
【0025】
1…冷蔵庫、2…冷蔵室、2a…(左側)冷蔵室扉、2b…(右側)冷蔵室扉、3…製氷室、3a…製氷室扉、4…上段冷凍室、4a…上段冷凍室扉、5…下段冷凍室、5a…下段冷凍室扉、6…野菜室、6a…野菜室扉、7…外箱、8…内箱、9…回転仕切体、10…回転仕切体規制部、10a…案内部材、10b…ストッパー、10c…1次固定用孔、10d…2次固定用孔、11…ブッシュ、12c…1次固定用ネジ、12d…2次固定用ネジ